説明

耐熱性エラストマー形成性組成物

【課題】 柔軟性および溶剤溶解性、耐アルカリ性、耐熱性に優れる耐熱性エラストマーを与える、耐熱性エラストマー形成性組成物を提供する。
【解決手段】 下記の(A)と(B)を含有してなる耐熱性エラストマー形成性組成物。(A)炭素数20〜48のダイマー酸が主成分の(ポリ)カルボン酸およびジアミンを構成単位としてなるポリアミド
(B)末端に水酸基を有するジエン(共)重合体、およびポリイソシアネートを構成単位としてなる末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は耐熱性エラストマー形成性組成物に関する。さらに詳しくはポリアミドおよびウレタンプレポリマーを含有してなる耐熱性エラストマー形成性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアミド樹脂は、耐熱性に優れるという有利な特性を有する一方、溶剤溶解性に劣る、柔軟性に欠けるという不利な特性をも有する。従来、ポリアミド樹脂に柔軟性を付与する方法としては、該樹脂にグラフト変性した熱可塑性エラストマーをゴム成分としてブレンドする方法(例えば特許文献1、2参照)、可塑剤を添加する方法(例えば特許文献3参照)、これらの両者を組み合わせる方法、あるいは、ポリアミド樹脂の末端にポリエーテル等のソフトセグメントを導入してエラストマー化する方法(例えば特許文献4参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−228407号公報
【特許文献2】特公平6−045748号公報
【特許文献3】特開2006−089760号公報
【特許文献4】特開2004−352794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、グラフト変性した熱可塑性エラストマーをブレンドした場合は、溶剤溶解性に劣るという問題;可塑剤の添加は耐熱性の低下を招きやすく、多量に添加した場合は成形品表面からブリードするという問題;また、ソフトセグメントの導入によるポリアミド樹脂のエラストマー化においては、ポリアミド樹脂および導入したソフトセグメントに起因して、耐アルカリ性、耐熱性の低下を招きやすいという問題があった。また、電子材料の分野では、エラストマー化されたポリアミド樹脂がエポキシ樹脂との相溶性に優れることから、エポキシ樹脂のフィルム化に汎用されるものの、該問題があることから強く改善が求められていた。
本発明の目的は、柔軟性に優れ、しかも溶剤溶解性、耐アルカリ性、耐熱性およびエポキシ樹脂との相溶性にも優れる耐熱性エラストマーを与える耐熱性エラストマー形成性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、下記の(A)と(B)を含有してなる耐熱性エラストマー形成性組成物である。
(A)炭素数20〜48のダイマー酸が主成分の(ポリ)カルボン酸およびジアミンを構成単位としてなるポリアミド
(B)末端に水酸基を有するジエン(共)重合体、およびポリイソシアネートを構成単位としてなる末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー
【発明の効果】
【0006】
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物は下記の効果を奏する耐熱性エラストマーを与える。
(1)柔軟性に優れる。
(2)溶剤溶解性、耐アルカリ性、耐熱性およびエポキシ樹脂との相溶性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[ポリアミド(A)]
本発明におけるポリアミド(A)は、炭素数(以下Cと略記)20〜48のダイマー酸が主成分の(ポリ)カルボン酸(a1)およびジアミン(a2)を構成単位としてなる。
【0008】
(ポリ)カルボン酸(a1)は、C20〜48(好ましくは32〜40)のダイマー酸を主成分とするものであり、該ダイマー酸以外にその他のジカルボン酸が含まれていてもよい。
従って、ここにおける(ポリ)カルボン酸(a1)は、ダイマー酸とダイマー酸以外のその他のジカルボン酸、それらの無水物、塩および低級(C1〜4)アルキルエステル、またはそれらの少なくとも2種の混合物を含むものであることを意味し、該塩にはアルカリ金属、アルカリ土類金属およびアミン(C1〜6)の塩が含まれる。
また、「主成分とする」とは(a1)中の該ダイマー酸の含有量が50重量%以上、好ましくは75〜100重量%であることを意味するものとする。
ダイマー酸の炭素数はC20〜48であり、Cが20未満では得られるポリアミド(A)が柔軟性に劣ることとなり、48を超えると(A)の溶剤溶解性が悪くなる。また、(a1)中のダイマー酸の含有量が50重量%未満では(A)の溶剤溶解性が悪くなり、(A)の高分子量化に不利となる。
【0009】
上記ダイマー酸は、二重結合を持つ脂肪族モノカルボン酸、例えば植物性不飽和脂肪酸を加熱して二量重合させた高分子量二塩基酸の総称であり、トリマー酸やモノマー酸も少量含まれる。
ダイマー酸の市販品としては、「エンポール」[商品名、ヘンケルジャパン(株)製]、「ハリダイマー200F」[商品名、ハリマ化成(株)製]等が挙げられる。
【0010】
上記ダイマー酸以外のその他のジカルボン酸としてはC2〜20の、脂肪族、芳香環含有および脂環含有ジカルボン酸、それらの無水物、塩および低級(C1〜4)アルキルエステルが挙げられる。
【0011】
脂肪族ジカルボン酸としては、C2〜20、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジ酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、グルタコン酸、イタコン酸が挙げられる。
【0012】
芳香環含有ジカルボン酸としては、C8〜20、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、フェニルマロン酸、ホモフタル酸、フェニルコハク酸、β−フェニルグルタル酸、α−フェニルアジピン酸、β−フェニルアジピン酸、ビフェニル−2,2’−ジカルボン酸、ビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、3−スルホイソフタル酸カリウムが挙げられる。
【0013】
脂環含有ジカルボン酸としては、C6〜20、例えば1,2−および1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジ酢酸、ジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、2,5−ノルボルネンジカルボン酸(無水物)が挙げられる。
これらのダイマー酸以外のその他のジカルボン酸は1種単独でも2種以上の混合物でも使用することができる。
【0014】
上記ダイマー酸以外のその他のジカルボン酸のうち、(A)の柔軟性の観点から好ましいのは脂環含有ジカルボン酸、さらに好ましいのは1,2−、1,3−および1,4−シクロヘキサンジ酢酸およびジシクロヘキシル−4,4’−ジカルボン酸である。
【0015】
ジアミン(a2)としては、C2〜20の、脂肪族、脂環含有および芳香環含有ジアミン並びにこれらの混合物が挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、C2〜20、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミンおよび1,20−エイコサンジアミンが挙げられる。
【0016】
脂環含有ジアミンとしては、C5〜20、例えば1,3−および1,4−シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,8−メンタンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ダイマージアミン(前記ダイマー酸のカルボキシル基をアミノ基に還元したもの)、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルおよび2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパンが挙げられる。
【0017】
芳香環含有ジアミンとしては、C6〜20、例えばp−フェニレンジアミン、2,4−および2,6−トルイレンジアミン、2,2−ビス(4,4’−ジアミノフェニル)プロパン、4−アミノベンジルアミン、キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼンおよびビス(アミノブチル)ベンゼンが挙げられる。
上記(a2)のうち、(A)の柔軟性の観点から好ましいのは脂環含有ジアミン、さらに好ましいのはイソホロンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンである。
【0018】
ポリアミド(A)は、前記(ポリ)カルボン酸(a1)とジアミン(a2)を脱水重縮合反応させることにより製造することができる。
(a1)と(a2)の該反応におけるカルボキシル基とアミノ基の反応当量比は、得られる耐熱性エラストマーの柔軟性、および(A)とウレタンプレポリマー(B)との反応性、得られる耐熱性エラストマーの溶剤溶解性の観点から好ましくは0.6以上1.0未満、さらに好ましくは0.7〜0.9である。
【0019】
該反応の反応温度は、通常140〜240℃、(A)の生産性および副反応抑制の観点から好ましくは160〜220℃、反応時間は、通常4〜24時間、(A)の高分子量化および生産性の観点から好ましくは6〜15時間である。
該反応の反応終点は、反応生成物の酸価(単位はmgKOH/g。以下数値のみを示す。)またはアミン価(単位はmgKOH/g。以下数値のみを示す。)を測定することにより判断することができる。
(A)の酸価は、通常10以下、生産性および(A)の高分子量化の観点から好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下;アミン価は、(A)と後述するウレタンプレポリマー(B)との反応性および(A)の高分子量化の観点から好ましくは5〜150、さらに好ましくは10〜120である。
該(A)の酸価およびアミン価は、前記(a1)と(a2)の該反応におけるカルボキシル基とアミノ基の反応当量比を調整することにより上記好ましい範囲とすることができる。
【0020】
ポリアミド(A)の末端基は、後述するウレタンプレポリマー(B)との反応性の観点から好ましいのは少なくとも1つの末端基がアミノ基、さらに好ましいのはすべての末端基がアミノ基である場合である。
【0021】
(A)の重量平均分子量[以下、Mwと略記。測定はゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)法による。]は、耐熱性および溶剤溶解性の観点から好ましくは200〜20,000、さらに好ましくは500〜10,000;また、(A)の数平均分子量[以下、Mnと略記。測定はGPC法による。]は、Mwの場合と同様の観点から好ましくは200〜12,000、さらに好ましくは400〜6,000である。
【0022】
[ウレタンプレポリマー(B)]
本発明におけるウレタンプレポリマー(B)は、末端に水酸基を有するジエン(共)重合体(b1)、およびポリイソシアネート(b2)を構成単位としてなる、末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。
【0023】
末端に水酸基を有するジエン(共)重合体(b1)は、ジエン(共)重合体の末端にアルキレンオキシド(以下AOと略記)[C2〜12、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド(以下それぞれEO、POと略記)]を付加して得られる。(b1)には、ジエン(共)重合体のジエン部分の一部または全部が水素化(以下において水添ということがある。)された水素化体も含まれる。
(b1)としては、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、ブチルゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体(SBR)、ジエン(共)重合体のジエン部分の一部または全部が水素化された水素化体[水素化ブタジエンゴム、水素化イソプレン、スチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEPS:SISの水素化体)、スチレン−(エチレン−ブチレン)−スチレンブロック共重合体(SEBS:SBSの水素化体)、スチレン−エチレン−(エチレン−プロピレン)−スチレンブロック共重合体(SEEPS:スチレン−ブタジエン−イソプレン−スチレンブロック共重合体の水素化体)、水素化SBR等]、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)等の末端水酸基変性体が挙げられる。
【0024】
これらのうち後述の耐熱性エラストマーの溶剤溶解性および柔軟性の観点から好ましいのは末端水酸基ジエン(共)重合体、さらに好ましいのは、ブタジエンゴムおよび水素化ブタジエンゴムの各末端水酸基変性体である。
(b1)の市販品としては、例えば水添ポリブタジエングリコール〔商品名「GI−3000」(Mw3,000)、商品名「GI−1000」(Mw1,000)[いずれも日本曹達(株)製]等〕が挙げられる。
【0025】
(b1)のMwは、後述の耐熱性エラストマーの柔軟性および溶剤溶解性の観点から好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは750〜10,000;また、(b1)のMnは、同様の観点から好ましくは300〜12,000、さらに好ましくは400〜6,000である。
【0026】
本発明におけるウレタンプレポリマー(B)を構成する、末端に水酸基を有するものとしては前記(b1)の他に必要によりポリ(2〜8またはそれ以上、好ましくは2〜3)オールを併用することができる。
【0027】
該ポリオールは、好ましくは250〜3,000またはそれ以上のOH当量(OH価に基づく、OH当りの分子量);好ましくは500 〜5,000またはそれ以上、さらに好ましくは700〜4,500のMn;並びに、好ましくは500〜6,000、さらに好ましくは700〜4,000のMwを有する。
該ポリオールの具体例には、OH末端のポリマー[ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタンおよびビニルポリマー(以下それぞれPT、PS、PD、PUおよびVPと略記)、ポリマーポリオール(以下P/Pと略記)等]、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。これらのうち、エポキシ樹脂(後述)との相溶性の観点から好ましいのはPTおよびPSである。なお、P/Pは、ポリオール(前記のPTおよび/またはPS、または これと後述の多価アルコールとの混合物)中でエチレン性不飽和モノマーをその場で重合させることにより得られるものである。
【0028】
前記PTには、AOの開環重合物、少なくとも2個(2個〜8個またはそれ以上)の活性水素原子を有する開始剤に1種または2種以上のAOを付加させた構造を有するPTポリオール(AO付加物)、およびそれら(同一または異なる)の2分子またはそれ以上をカップリング剤でカップリングさせてなるPTポリオールが含まれる。
【0029】
該開始剤には、多価アルコール、ヒドロキシルアミン、アミノカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸;多価フェノール;並びに、ポリカルボン酸が含まれる。
【0030】
多価アルコールには、以下のものが含まれる。
2価アルコール(C2〜20またはそれ以上)、例えばC2〜12の脂肪族2価アルコール[(ジ)アルキレングリコール、例えばエチレングリコール、 プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール(以下それぞれEG、PG、1,4−BD、1,6−HDと略記)、およびドデカンジオール等];C6〜10の脂環式2価アルコール[1,4−シクロヘキサンジオール等];C8〜20の芳香脂肪族2価アルコール[キシリレングリコール等];
【0031】
3価〜8価またはそれ以上の多価アルコール、例えば(シクロ)アルカンポリオール[グリセリン、トリメチロー ルプロパン、ペンタエリスリトールおよびソルビトール(以下それぞれGR、TMP、PEおよびSOと略記)等]、およびそれらの分子内もしくは分子間脱水物[ソルビタン、ジグリセリンその他のポリグリセリン等]、糖類およびその誘導体[例えば蔗糖、グルコース等];
【0032】
含窒素ポリオール(3級アミノ基含有ポリオールおよび4級アンモニウム基含有ポリオール):含窒素ジオール、例えばC1〜12の脂肪族、脂環式および 芳香族1級モノアミン[メチルアミン、エチルアミン、ベンジルアミン等]のビスヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ビス(2−ヒドロキシエチル)化物、ビス(ヒドロキシプロピル)化物等、たとえば米国特許第4,271,217号明細書に記載の3級窒素原子含有ポリオール]、およびそれらの4級化物[上記米国特許明細書に記載の4級化剤またはジアルキルカーボネート(後述のもの)による4級化物]、例えば上記米国特許明 細書に記載の4級窒素原子含有ポリオール;および3価〜8価またはそれ以上の含窒素ポリオール、例えばトリアルカノール(C2〜4)アミン(トリエタノールアミン等)およびC2〜12の脂肪族、脂環式、芳香族および複素環ポリアミン[例えばエチレンジアミン、アミノエチルピペラジン]のポリヒドロキシアルキル(C2〜4)化物[ポリ(2−ヒドロキシエチル)化物等:例えばテトラキス(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミン]、およびこれらの上記と同様の4級化物;
【0033】
スルホ基含有ポリオール:上記2価および3価〜8価またはそれ以上の多価アルコールにスルホ基を導入してなるもの、例えばスルホグリセリン、スルホヒドロキシメチルヒドロキシエチルベンゼン、およびそれらの塩(後述のアニオン性界面活性剤におけると同様の塩);
【0034】
多価フェノールには、C6〜18の2価フェノール、例えば単環2価フェノール(ハイドロキノン等)、ビスフェノール(ビスフェノールA、F等)、および縮合多環2価フェノール[ジヒドロキシナフタレン(例えば1,5−ジヒ ドロキシナフタレン)等];並びに3価〜8価またはそれ以上の多価フェノール、例えば単環多価フェノール(ピロガロールおよび1価もしくは2価フェノール(フェノール等)のアルデヒドもしくはケトン(ホルムアルデヒド、アセトン)低縮合物(例えばフェノールもしくはクレゾールノボラック樹脂およびレゾルシンとアセトンの縮合反応によって得られるポリフェノール)が含まれる。これらのうち好ましいのは、脂肪族2価アルコールおよびビスフェノール、とくにエチレングリコールおよびビスフェノールAである。
【0035】
開始剤へのAOの付加は、通常の方法で行うことができ、無触媒、または触媒(アルカリ触媒、アミン触媒、酸性触媒等)の存在下(とくにAO付加の後半の段階で)に常圧または加圧下に1段階または多段階で行なわれる。2種以上のAOは、ランダム付加、ブロック付加、両者の組合せ(例えばランダム付加に次いでブロック付加)のいずれでもよい。
AO付加物のカップリング剤には、ポリハライド、例えばC1〜6のアルカンポリハライド(例えばC1〜4のアルキレンジハライド:メチレンジクロライド、1,2−ジブロモエタン等);エピハロヒドリン(エピクロルヒドリン等);およびポリエポキシド(後述のもの)が含まれる。
【0036】
OH末端のPTの例には、PTジオール、例えばポリアルキレングリコール[例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールおよびポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下それぞれPEG、PPGおよびPTMGと略記)、ポリ−3−メチルテトラメチレンエーテルグリコール]、共重合ポリオキシアルキレンジオール〔EO/PO共重合ジオール、テトラヒドロフラン(THF)/EO共重合ジオール、THF/メチルテトラヒドロフラン(MTHF)共重合ジオール等(重量比は例えば1/9〜9/1)〕、芳香環含有ポリオキシアルキレンジオール[ポリオキシアルキレンビスフェノールA(ビスフェノールAのEOおよび/またはPO付加物等)];および3官能以上のPTポリオール、例えばポリオキシプロピレントリオール(GRのPO付加物等);並びにこれらの1種以上をメチレンジクロライドでカップリングしたものが含まれる。
【0037】
OH末端のPSには、縮合PSポリオール、ポリラクトン(以下PLと略記 )ポリオール、ヒマシ油系ポリオール[ヒマシ油(リシノール酸トリグリセリド)およびそのポリオール変性物]、およびポリカーボネートポリオールが含まれる。
縮合PSポリオールは、ポリオールとポリカルボン酸(および必要によりヒドロキシカルボン酸)との重縮合またはポリオールとポリカルボン酸無水物 およびAOとの反応により;PLポリオールはポリオールを開始剤とするラクトンの開環付加(またはポリオールとヒドロキシカルボン酸との重縮合)により;ヒマシ油のポリオール変性物はヒマシ油とポリオールとのエステル交換反応により;そして、ポリカーボネートポリオールはポリオールを開始剤とするアルキレンカーボネートの開環付加/重縮合、ポリオールとジフェニルもしくはジアルキルカーボネートの重縮合(エステル交換)、またはポリオールもしくは2価フェノール(前記のもの:ビスフェノールA等)のホスゲン化により、それぞれ製造することができる。
【0038】
PSの製造に用いるポリオールは、通常1,000以下、好ましくは30〜500のOH当量を有する。その例には、上記の多価アルコール〔ジオール[例えばEG、1,4−BD、ネオペンチルグリコール(NPG)、1,6−HDおよびジエチレングリコール(DEG)]および3価以上のポリオール(GR、TMP、PE等)]、上記PTポリオール(PEG、PPG、PTMG等)、およびこれらの2種以上の混合物が含まれる。
PSのうち、縮合PSポリオールの製造に好ましいのは、ジオール、およびそれと少割合(例えば10当量%以下)の3価以上のポリオールとの併用である。
(b1)の重量に基づく前記ポリオールの使用量は、通常40%以下、本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物と後述するエポキシ樹脂との相溶性および後述する成形品の耐熱性の観点から好ましくは3〜30%、さらに好ましくは5〜20%である。
【0039】
また、電子材料の分野では、エラストマー化されたポリアミド樹脂がエポキシ樹脂との相溶性に優れることから、従来エポキシ樹脂のフィルム化用として汎用されている。
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物から形成されるエラストマーは、溶剤溶解性、耐アルカリ性、耐熱性およびエポキシ樹脂との相溶性に優れることから、該エポキシ樹脂のフィルム化に好適に用いることができる。
該エポキシ樹脂としては、分子中に好ましくは2〜10(さらに好ましくは2〜6)個のエポキシ基を有するもの、例えばフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン含有フェノールノボラック型エポキシ樹脂、およびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。
【0040】
本発明におけるウレタンプレポリマー(B)を構成する、ポリ(2〜3またはそれ以上)イソシアネート(以下PIと略記)(b2)としては、C[NCO基(イソシアネート基)中の炭素を除く、以下同様]6〜20の芳香族PI、C2〜18の脂肪族PI、C4〜15の脂環式PI、C8〜15の芳香脂肪族PI、これらのPIの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基およびトリヒドロカルビルホスフェート基含有変性物等)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。
【0041】
芳香族PIとしては、例えば、1,3−および/または1,4−フェニレンジイソシアネート(ジイソシアネートは以下DIと略記)、2,4−および/または2,6−トリレンDI(TDI)、粗製TDI、2,4’−および/または4,4’−ジフェニルメタンDI(MDI)、粗製MDI[粗製ジアミノフェニルメタン〔ホルムアルデヒドと芳香族アミン(アニリン)またはその混合物との縮合生成物;ジアミノジフェニルメタンと少量(たとえば5〜20%)の3官能以上のポリアミンとの混合物〕のホスゲン化物:ポリアリルポリイソシアネート(PAPI)]、1,5−ナフチレンDI、4,4’,4’’−トリフェニルメタントリイソシアネート、m−およびp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
【0042】
脂肪族PIとしては、例えば、エチレンDI、テトラメチレンDI、ヘキサメチレンDI(HDI)、ドデカメチレンDI、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンDI、リジンDI、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート、2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
【0043】
脂環式PIとしては、例えば、イソホロンDI(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン2,4’−および/または4,4’−DI(水添MDI)、シクロヘキシレンDI、1−メチル−シクロヘキシレン2,4−および/または2,6−DI(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンDIが挙げられる。
【0044】
芳香脂肪族PIとしては、例えば、m−および/またはp−キシリレンDI(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンDI(TMXDI)が挙げられる。
【0045】
また、前記PIの変性物には、例えば、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等)、ウレタン変性TDI(イソシアネート基末端プレポリマー)等のPIの変性物およびこれらの2種以上の混合物[例えば変性MDIとウレタン変性TDIとの併用]が含まれる。
これらのうち後述の耐熱性エラストマーの溶剤溶解性および柔軟性の観点から好ましいのは、C4〜12の脂肪族DI、C4〜15の脂環式DI、さらに好ましいのはHDI、水添MDI、IPDIである。
【0046】
末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマー(B)は、前記の末端に水酸基を有するジエン(共)重合体(b1)とポリイソシアネート(b2)を反応させることにより製造することができる。該反応におけるイソシアネート基(NCO基)とOH基の当量比[NCO/OH]は、後述の耐熱性エラストマーの溶剤溶解性および柔軟性の観点から好ましくは1.1〜3.0、さらに好ましくは1.2〜2.5である。
(B)の製造に際して(b1)と前記ポリオールを併用する場合の該当量比[NCO/OH]も上記範囲と同様であり、この場合のOH基の当量は(b1)と該ポリオールの各当量を合計したものである。
【0047】
ウレタンプレポリマー(B)のNCO含量(重量%)は、後述の耐熱性エラストマーの溶剤溶解性および柔軟性の観点から好ましくは0.5〜20、さらに好ましくは1〜10である。
【0048】
ウレタンプレポリマー(B)のMwは、耐熱性エラストマーの柔軟性および溶剤溶解性の観点から好ましくは750〜30,000、さらに好ましくは900〜20,000;また、(B)のMnは、同様の観点から好ましくは500〜20,000、さらに好ましくは750〜15,000である。
【0049】
[耐熱性エラストマー形成性組成物]
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物は、上記(A)と(B)を含有してなる。
【0050】
該組成物中の(A)と(B)の割合は、(A)の有する末端アミノ基および/またはカルボキシル基と、(B)の有する末端イソシアネート基(NCO基)との反応当量比[(アミノ基および/またはカルボキシル基)/NCO基]が、後述する耐熱性エラストマーの溶剤溶解性および柔軟性の観点から1.2〜2.7となる割合が好ましく、1.3〜2.
0となる割合がさらに好ましい。
【0051】
上記割合を満足する(A)と(B)の重量比は、耐熱性および柔軟性の観点から好ましくは50/50〜85/15、さらに好ましくは55/45〜80/20、とくに好ましくは60/40〜75/25である。
【0052】
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で必要によりさらに種々の添加剤(C)を含有させることができる。
(C)としては、着色剤(C1)、難燃剤(C2)、充填剤(C3)、滑剤(C4)、帯電防止剤(C5)、分散剤(C6)、酸化防止剤(C7)および紫外線吸収剤(C8)からなる群から選ばれる1種または2種以上が挙げられる。
【0053】
着色剤(C1)としては顔料および染料が挙げられる。
顔料としては、無機顔料(アルミナホワイト、グラファイト、酸化チタン、カーボンブラック;有機顔料(アゾレーキ系、モノアゾ系、ジスアゾ系等)が挙げられる。
【0054】
染料としては、アゾ系、アントラキノン系、インジゴイド系、アニリン系等が挙げられる。
【0055】
難燃剤(C2)としては、有機難燃剤〔含窒素系[尿素化合物、グアニジン化合物およびトリアジン化合物等の塩等]、含硫黄系[硫酸エステル、有機スルホン酸、スルファミン酸、有機スルファミン酸、およびそれらの塩、エステル、アミド等]、含珪素系[ポリオルガノシロキサン等]、含リン系[リン酸エステル等]等〕;無機難燃剤〔三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、赤リン、ポリリン酸アンモニム等〕等が挙げられる。
【0056】
充填剤(C3)としては、炭酸塩(炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム等)、硫酸塩(硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム等)、亜硫酸塩(亜硫酸カルシウム等)、金属硫化物(二硫化モリブデン等)、珪酸塩(珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム等)、珪藻土、珪石粉、タルク、シリカ、ゼオライト、およびこれらの混合物等が挙げられる。
【0057】
滑剤(C4)としては、ワックス(カルナバロウワックス等)、高級脂肪酸(ステアリン酸等)、高級アルコール(ステアリルアルコール等)、高級脂肪酸アミド(ステアリン酸アミド等)等が挙げられる。
【0058】
帯電防止剤(C5)としては、下記および米国特許第3,929,678および4,331,447号明細書に記載の、非イオン性、カチオン性、アニオン性および両性の界面活性剤が挙げられる。
(1)非イオン性界面活性剤
AO付加型ノニオニックス、例えば疎水性基(C8〜24またはそれ以上)を有する活性水素原子含有化合物[飽和および不飽和の、高級アルコール(C8〜18)、高級脂肪族アミン(C8〜24)および高級脂肪酸(C8〜24)等]の(ポリ)オキシアルキレン誘導体〔AO付加物およびポリアルキレングリコールの高級脂肪酸モノ−およびジ−エステル]〕;多価アルコールの高級脂肪酸(上記)エステルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体(ツイーン型ノニオニックス等);高級脂肪酸(上記)の(アルカノール)アミドの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;多価アルコールアルキル(C3〜60)エーテルの(ポリ)オキシアルキレン誘導体;およびポリオキシプロピレンポリオール[多価アルコールおよびポリアミン(C2〜10)のポリオキシプロピレン誘導体[プルロニック型およびテトロニック型ノニオニックス];多価アルコール(C3〜60)型ノニオニックス(例えば多価アルコールの脂肪酸エステル、多価アルコールアルキル(C3〜60)エーテル、および脂肪酸アルカノールアミド);並びに、アミンオキシド型ノニオニックス(例えば(ヒドロキシ)アルキル(C10〜18)ジ(ヒドロキシ)アルキル(C1〜3)アミンオキシド)。
【0059】
(2)カチオン性界面活性剤
第4級アンモニウム塩型カチオニックス(テトラアルキルアンモニウム塩(C11〜100)アルキル(C8〜18)トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル(C8〜18)ジメチルアンモニウム塩等);トリアルキルベンジルアンモニウム塩(C17〜80)(ラウリルジメチルベンジルアンモニウム塩等);アルキル(C8〜60)ピリジニウム塩(セチルピリジニウム塩等);(ポリ)オキシアルキレン(C2〜4)トリアルキルアンモニウム塩(C12〜100)(ポリオキシエチレンラウリルジメチルアンモニウム塩等);およびアシル(C8〜18)アミノアルキル(C2〜4)もしくはアシル(C8〜18)オキシアルキル(C2〜4)トリ[(ヒドロキシ)アルキル(C1〜4)]アンモニウム塩(サパミン型4級アンモニウム塩)[これらの塩には、例えばハライド(クロライド、ブロマイド等)、アルキルサルフェート(メトサルフェート等)および有機酸(下記)の塩が含まれる];並びにアミン塩型カチオニックス:1〜3級アミン[例えば高級脂肪族アミン(C12〜60)、脂肪族アミン(メチルアミン、ジエチルアミン等)のポリオキシアルキレン誘導体(EO付加物等)、およびアシルアミノアルキルもしくはアシルオキシアルキル(上記)ジ(ヒドロキシ)アルキル(上記)アミン(ステアロイロキシエチルジヒドロキシエチルアミン、ステアラミドエチルジエチルアミン等)]の、無機酸(塩酸、硫酸、硝酸およびリン酸等)塩および有機酸(C2〜22)塩。
【0060】
(3)アニオン性界面活性剤
高級脂肪酸塩(ラウリル酸ナトリウム等)、エーテルカルボン酸[EO(1〜10モル)付加物のカルボキシメチル化物等]、およびそれらの塩;硫酸エステル塩(アルキルおよびアルキルエーテルサルフェート等)、硫酸化油、硫酸化脂肪酸エステルおよび硫酸化オレフィン;スルホン酸塩[アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、スルホコハク酸ジアルキルエステル型、α−オレフィン(C12〜18)スルホン酸塩、N−アシル−N−メチルタウリン(イゲポンT型等)等];並びにリン酸エステル塩(アルキル、アルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテルホスフェート等)。
【0061】
(4)両性界面活性剤:
カルボン酸(塩)型アンフォテリックス[アミノ酸型アンフォテリックス(ラウリルアミノプロピオン酸(塩)等)、およびベタイン型アンフォテリックス(アルキルジメチルベタイン、アルキルジヒドロキシエチルベタイン等)等];硫酸エステル(塩)型アンフォテリックス[ラウリルアミンの硫酸エステル(塩)、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル(塩)等];スルホン酸(塩)型アンフォテリックス[ペンタデシルスルホタウリン、イミダゾリンスルホン酸(塩)等];並びにリン酸エステル(塩)型アンフォテリックス[グリセリンラウリル酸エステルのリン酸エステル(塩)等]。
【0062】
上記のアニオン性および両性界面活性剤における塩には、金属塩、例えばアルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)およびIIB族金属(亜鉛等)の塩;アンモニウム塩;並びにアミン塩および4級アンモニウム塩が含まれる。
【0063】
分散剤(C6)としては、Mn1,000〜20,000のポリマー、例えばビニル樹脂{ポリオレフィン〔ポリエチレン、ポリプロピレン等]、変性ポリオレフィン[酸化ポリエチレン(ポリエチレンをオゾン等で酸化し、カルボキシル基、カルボニル基および/または水酸基等を導入したもの)等]等〕および上記ポリオレフィン以外のビニル樹脂〔ポリハロゲン化ビニル[ポリ塩化ビニル、ポリ臭化ビニル等]、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメチルビニルエーテル、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸エステル[ポリ(メタ)アクリル酸メチル等]およびスチレン樹脂[例えばポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン(AS)樹脂等〕等};並びに、前記(D2)として例示したポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0064】
酸化防止剤(C7)としては、ヒンダードフェノール系[p−t−アミルフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ノルジヒドログアヤレチック酸(NDGA)、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)、2−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHA)、6−t−ブチル−2,4,−メチルフェノール(24M6B)、2,6−ジ−t−ブチルフェノール(26B)等];
【0065】
含イオウ系[N,N’−ジフェニルチオウレア、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジラウリルチオジプロピオネート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−m−クレゾール)、ジステアリルチオジプロピオネート、6−(4−オキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)2,4−ビス(n−オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−o−クレゾール)等];
【0066】
含リン系[2−t−ブチル−α−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−p−クメニルビス(p−ノニルフェニル)ホスファイト、ホスファイトエステル樹脂、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジオクタデシル−4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルベンジルホスホネート等]等が挙げられる。
【0067】
紫外線吸収剤(C8)としては、サリチレート系[フェニルサリチレート等];ベンゾフェノン系[2,4−ジヒドロキシゼンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)−ベンゾトリアゾール等]等が挙げられる。
【0068】
前記耐熱性エラストマー形成性組成物中の(C)全体の含有量は、該組成物の全重量に基づいて、通常20%以下、各(C)の機能発現および工業上の観点から好ましくは0.05%〜5%である。
該組成物の重量に基づく各添加剤の使用量は、(C1)は通常5%以下、好ましくは0.1〜3%;(C2)は通常8%以下、好ましくは1〜3%;(C3)は通常5%以下、好ましくは0.1〜1%;(C4)は通常8%以下、好ましくは1〜5%;(C5)は通常8%以下、好ましくは1〜3%;(C6)は通常1%以下、好ましくは0.1〜0.5%;(C7)は通常2%以下、好ましくは0.005〜0.5%;(C8)は通常2%以下、好ましくは0.005〜0.5%である。
【0069】
上記(C1)〜(C8)の間で添加剤が同一で重複する場合は、それぞれの添加剤が該当する添加効果を奏する量の他の添加剤としての効果に関わりなく使用するのではなく、他の添加剤としての効果も同時に得られることをも考慮し、使用目的に応じて使用量を調整するものとする。
【0070】
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物の製造方法としては、とくに制限されるものではなく、通常、前記ポリアミド(A)、ウレタンプレポリマー(B)、および必要により添加剤(C)を無溶剤下または溶剤(トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジメチルホルムアミド、アセトン、メチルエチルケトン、N−ピロリドン等)の存在下で、一括混合して製造する方法が挙げられる。
【0071】
[耐熱性エラストマー成形品]
本発明の耐熱性エラストマー成形品は、前記耐熱性エラストマー形成性組成物を反応させた後、さらにこれを成形することにより得られる。
該反応の条件は、前記耐熱性エラストマー形成性組成物を無溶剤下または前記溶剤の存在下で反応させる。該反応温度は、通常10〜150℃、生産性および副反応抑制の観点から好ましくは20〜120℃、反応時間は、通常1〜48時間、耐熱性エラストマーの高分子量化および生産性の観点から好ましくは2〜24時間である。該反応の終了後、本発明の耐熱性エラストマーは固体または溶液状態で得られ、これを後述の方法で成形することにより成形品が得られる。
【0072】
本発明の耐熱性エラストマー成形品中には、前記ウレタンプレポリマー(B)に由来するウレタン基、および前記ポリアミド(A)と該ウレタンプレポリマー(B)との反応に由来するウレア基が含まれる。該成形品中のウレタン基とウレア基の合計含量は、溶剤溶解性および耐熱性の観点から好ましくは0.3〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜
20重量%である。該成形品中のウレタン基とウレア基の合計含量は、1H−NMR(核
磁気共鳴)、固体NMRを用いることにより測定することができる。
【0073】
該成形方法としては、押出法、カレンダー成形法、溶媒キャスト法、射出成形法、真空成形法、パウダースラッシュ成形法および加熱プレス法等が挙げられる。目的に応じて単層成形または多層成形等の手段も取り入れた任意の方法で成形してシートまたは積層体を得ることができる。
【0074】
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物を反応させた後、成形してなる成形品(シート、積層体等)は優れた耐熱性を有すると共に、良好な塗装性および印刷性を有し、該成形品に塗装および/または印刷を施すことにより成形物品を得ることができる。
成形品の塗装方法としては、例えばエアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、浸漬塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
塗料としては、例えば、ポリエステルメラミン樹脂塗料、エポキシメラミン樹脂塗料、アクリルメラミン樹脂塗料、アクリルウレタン樹脂塗料等のプラスチック製品等の塗装用として一般的に用いられる塗料が挙げられる。
塗装膜厚(乾燥後膜厚)は、目的に応じて適宜選択することができるが塗装効果および工業上の観点から好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは、10〜50μmである。
【0075】
また、該成形品、または成形品に塗装を施した上にさらに印刷する方法としては、プラスチック製品等の印刷に一般的に用いられる印刷方法であればいずれも用いることができ、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、ドライオフセット印刷およびオフセット印刷が挙げられる。
印刷インキとしてはプラスチック製品等の印刷用に通常用いられるもの、例えばグラビアインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、パッドインキ、ドライオフセットインキおよびオフセットインキが使用できる。
【実施例】
【0076】
以下実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の部は重量部、モル%以外の%は重量%を表す。
【0077】
製造例1
窒素導入管、溜去管および撹拌装置を備えた反応容器に、ダイマー酸[商品名「エンポール1061」、ヘンケルジャパン(株)製、以下同じ。]76.0部、イソホロンジアミン12.7部、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン15.7部を仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら220℃で脱水重縮合反応させ、酸価0.8mgKOH/g(以下数値のみを示す)、アミン価23.2mgKOH/g(以下数値のみを示す)、Mw10,000、Mn5,000のポリアミド(A−1)を得た。
【0078】
製造例2
製造例1においてダイマー酸76.0部、イソホロンジアミン12.7部および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン15.7部に代えて、ダイマー酸60.6部、イソホロンジアミン17.6部および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン21.8部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、酸価0.7、アミン価111.5、Mw2,000、Mn1,000のポリアミド(A−2)を得た。
【0079】
製造例3
製造例1においてダイマー酸76.0部、イソホロンジアミン12.7部および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン15.7部に代えて、ダイマー酸50.3部、ドデカンジ酸[商品名「1,12−ドデカン二酸」、宇部興産(株)製]16.2部、イソホロンジアミン15.0部および4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン18.5部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、酸価0.7、アミン価23.2、Mw10,000、Mn5,000のポリアミド(A−3)を得た。
【0080】
製造例4
窒素導入管、排ガス溜去管、冷却管および撹拌装置を備えた反応容器に、水添ポリブタジエングリコール[商品名「GI−3000」、日本曹達(株)製、Mw3,000、水添化率93%。以下同じ。]87.7部およびHDI 12.3部を仕込み、気相部分に窒素を通気しながらマントルヒーターにて加熱溶融し、撹拌しながら100℃で重付加反応させ、NCO含量2.5%、Mw5,000、Mn3,400のウレタンプレポリマー(B−1)を得た。
【0081】
製造例5
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、水添ポリブタジエングリコール[商品名「GI−1000」、日本曹達(株)製、Mw1,000、水添化率97%。]60.9部を用いたこと以外は製造例4と同様に行い、NCO含量1.4%、Mw9,000、Mn6,000のウレタンプレポリマー(B−2)を得た。
【0082】
製造例6
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、同79部、PTMG[商品名「PTMG−3000」、三菱化学(株)製、Mw3,000]8.7部を用いたこと以外は製造例4と同様にして、NCO含量2.5%、Mw5,000、Mn3,400のウレタンプレポリマー(B−3)を得た。
【0083】
製造例7
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、同79部、ポリエチレングリコール[商品名「PEG−1000」、三洋化成工業(株)製、Mw1,000]8.7部を用いたこと以外は製造例4と同様に行い、NCO含量1.4%、Mw9,000、Mn6,000のウレタンプレポリマー(B−4)を得た。
【0084】
製造例8
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、同79部、ポリプロピレングリコール[商品名「ニューポール PP−3000」、三洋化成工業(株)製、Mw3,000]8.7部を用いたこと以外は製造例4と同様に行い、NCO含量2.5%、Mw5,000、Mn3,400のウレタンプレポリマー(B−5)を得た。
【0085】
製造例9
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、同79部、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール[商品名「ニューポール PE−64」、三洋化成工業(株)製、Mw3,000]8.7部を用いたこと以外は製造例4と同様に行い、NCO含量2.5%、Mw5,000、Mn3,400のウレタンプレポリマー(B−6)を得た。
【0086】
比較製造例1
製造例1においてダイマー酸76.0部に代えて、ドデカンジ酸31.8部を用いたこと以外は製造例1と同様に行い、酸価0.8、アミン価23.2、Mw10,000、Mn5,000のポリアミド(比A−1)を得た。
【0087】
比較製造例2
製造例4において「GI−3000」87.7部に代えて、1,6−ヘキサンジオール7.8部を用いたこと以外は製造例4と同様に行い、NCO含量2.4%、Mw3,900、Mn3,000のウレタンプレポリマー(比B−1)を得た。
【0088】
実施例1〜9、比較例1〜6
窒素導入管、排ガス留出管、撹拌装置および冷却管を備えた反応容器に、表1に示した配合組成(部)で仕込み、さらにトルエン720部、メチルエチルケトン180部を加え、撹拌しながら90℃で2時間反応させた。その後、減圧下(1.5kPa)でトルエンおよびメチルエチルケトンを留去して、実施例1〜9、比較例1〜6の各耐熱性エラストマーを得た。
各エラストマーをハンマー等の鈍器で約3cm角に粗粉砕した後、加圧プレス機[型番「TABLE TYPE TEST PRESS SA−302」、テスター産業(株)製]を用い、130℃、5.0MPaの条件で溶融、加圧して成形し、膜厚100μmの成形品(シート)にした。得られたシートを以下の試験方法に従って評価した。結果を表1に示す。
【0089】
<試験方法>
[1]耐熱性
上記シートから約5mgを削り取り、これを示差熱熱重量同時測定装置[型番「TG/DTA6200」、エスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製]を用い、窒素雰囲気下、10℃/minの昇温条件で昇温し、300℃での重量の減量割合を測定し、下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎ 重量の減量割合が3%以下
○ 重量の減量割合が3%超5%以下
× 重量の減量割合が5%超
【0090】
[2]耐アルカリ性
上記シートから長方形(タテ1cm×ヨコ3cm)の試験片を切り出し、4%の水酸化カリウム水溶液100ml中に70℃で10分間浸漬した後、試験片の外観を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○ 外観に変化なし
× 表面荒れ、白化が認められる
【0091】
[3]柔軟性
上記シートから[2]と同様の試験片を切り出し、180°折り曲げたときの表裏面外観を下記の基準で評価した。
<評価基準>
○ 外観に変化なし
× クラックの発生、白化が認められる
【0092】
[4]溶剤溶解性
上記シートの30g分を1cm四方に細断したシートを200mLビーカー中80℃のトルエン60g、メタノール10gの混合溶液に投入し、マグネチックスターラー[型番「SR−100」、SANSYO(株)製]を用いて100rpmの条件で1時間撹拌後、25℃まで冷却したときの溶剤溶解性を目視により下記の基準で評価した。
<評価基準>
○ 未溶解物が認められない
× 未溶解物が認められる
【0093】
[5]エポシキ樹脂との相溶性
上記シートの10g分を1cm四方に細断したシートおよびエポキシ樹脂[商品名「EOCN−104S」、日本化薬(株)製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂]10gを100mLビーカー中60℃のトルエン70g/メタノール10gの混合溶液に投入し、マグネチックスターラー[型番「SR−100」、SANSYO(株)製]を用いて100rpmの条件で1時間撹拌後、25℃まで冷却したときのエポキシ樹脂との相溶性を目視により下記の基準で評価した。
<評価基準>
◎ 溶液が透明均一でエポキシ樹脂の分離が認められない
○ 溶液が不透明であるがエポキシ樹脂の分離が認められない
× 溶液が不均一でエポキシ樹脂の分離が認められる
【0094】
【表1】

【0095】
表1中の記号は以下のとおりである。
比A−2:商品名「UBE12ナイロン 3035U」、宇部興産(株)製、市販のポリ
アミド。Mn35,000。
比A−3:商品名「PA−201」、富士化成工業(株)製、市販のポリエーテルエステ
ルアミドで、ポリアミドの末端にポリエーテルのソフトセグメントを導入した
もの。Mn20,000。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の耐熱性エラストマー形成性組成物は、(A)ポリアミドおよび(B)ウレタンプレポリマーを含有してなり、該組成物からなるエラストマーまたはその成形品は優れた、耐アルカリ性、溶剤溶解性、柔軟性、耐熱性およびエポキシ樹脂との相溶性を有することから、これらの特性が求められるシートまたは積層体として、幅広く好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)と(B)を含有してなる耐熱性エラストマー形成性組成物。
(A)炭素数20〜48のダイマー酸が主成分の(ポリ)カルボン酸およびジアミンを構成単位としてなるポリアミド
(B)末端に水酸基を有するジエン(共)重合体、およびポリイソシアネートを構成単位としてなる末端イソシアネート基ウレタンプレポリマー
【請求項2】
(A)と(B)の重量比が50/50〜85/15である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(B)の構成単位として、さらに末端に水酸基を有するポリオールを加えてなる請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか記載の組成物を反応させ成形してなる耐熱性エラストマー成形品。
【請求項5】
該成形品中のウレタン基とウレア基の合計含量が0.3〜30重量%である請求項4記載の成形品。
【請求項6】
請求項4または5記載の成形品に印刷および/または塗装を施してなる成形物品。

【公開番号】特開2011−46940(P2011−46940A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171719(P2010−171719)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】