説明

耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体

【課題】耐熱性と耐衝撃性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性に優れた耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とその成形体を提供すること。
【解決手段】(1)プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択されるプロピレン系重合体であって、前記プロピレン系重合体が、50〜5000μmの粒子径及び0.2〜0.6g/cmの嵩密度を有する多孔質粒子であるプロピレン系重合体と、(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(A) 15〜95質量%、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B) 5〜85質量%、を含むことを特徴とする耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物およびこの組成物を含む成形体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマーに関し、さらに詳しくは耐熱性と耐衝撃性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性に優れた耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
加硫ゴムは、優れた耐熱性と耐衝撃性を備えている。しかし、加硫ゴムの製造において特殊な成形機を必要とし、また、別途加硫工程が必要であった。さらに加硫したゴムは、非溶融性となるので、リサイクル性がなかった。加えて、添加された硫黄成分が、耐環境汚染性の点からも問題であった。
一方、オレフィン系熱可塑性材料は、耐環境汚染性に優れ、かつ耐衝撃性に優れている。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体は、耐熱性に優れている。従って、加硫ゴム代わり、これらオレフィン系熱可塑性エラストマーや4−メチル−1−ペンテン系重合体の使用量が増えている。
特に、オレフィン系熱可塑性エラストマーの耐熱性の問題と4−メチル−1−ペンテン系重合体の耐衝撃性の問題点を改良するべく、オレフィン系熱可塑性エラストマーと4−メチル−1−ペンテン系重合体との混合物が、エラストマー組成物として利用されてきている(特許文献1及び2)。
具体的に、特許文献1(特開2001−181459号公報)は、オレフィン系熱可塑性エラストマーとして、結晶性オレフィン系樹脂とゴムとを架橋剤の存在下に動的に熱処理して得られる熱可塑性エラストマーと4−メチル−1−ペンテンを含む熱可塑性エラストマー組成物が、耐衝撃性に優れ、かつ耐熱性に優れていることが記載されている (請求項1等)。
また、特許文献2(特開平11−269330号公報)は、4−メチル−1−ペンテンに平均粒径100μm以下の架橋ゴムを使用した熱可塑性エラストマーが、耐衝撃性に優れ、かつ耐熱性に優れていることが記載されている (請求項1等)。
【0003】
しかし、これら特許文献1及び2の熱可塑性エラストマー組成物は、いずれも耐摩耗性、耐候性が不十分であり、特に耐摩耗性や耐候性が重視される自動車などの車両部材への適用には限界があった。
【0004】
【特許文献1】特開2001−181459号公報
【特許文献2】特開平11−269330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の第1の目的は、まず特定の多孔質粒子形態のプロピレン系重合体を重合し、続いてエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを重合する多段重合方法で製造されたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、4−メチル−1−ペンテン系重合体とを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を提供することにより、耐衝撃性と耐熱性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性にも優れたエラストマー組成物を提供することにある。
本発明の第2の目的は、上記のようなオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記のような状況のもと、本発明者らは、耐衝撃性と耐熱性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性に優れた熱可塑性エラストマーを得るため鋭意検討した結果、まず多孔質粒子からなるプロピレン系重合体を重合し続いてエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを重合する多段重合方法で製造されたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、4−メチル−1−ペンテン系重合体とを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が、耐衝撃性と耐熱性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性にも優れていることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、(1)プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択されるプロピレン系重合体であって、前記プロピレン系重合体が、50〜5000μmの粒子径及び0.2〜0.6g/cm3の嵩密度を有する多孔質粒子であるプロピレン系重合体と、(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(A) 15〜95質量%、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B) 5〜85質量%、を含むことを特徴とする耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。より具体的には、
[1](1)プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択されるプロピレン系重合体が、50〜5000μmの粒子径及び0.2〜0.6g/cm3の嵩密度を有する多孔質粒子であるプロピレン系重合体;及び
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーからなるエラストマー相、
を含み、まず多孔質プロピレン系重合体を重合し、続いてエラストマーが多孔質プロピレン粒子の孔を埋める形態で重合することでエラストマーが高濃度でかつ微分散しているオレフィン系熱可塑性エラストマー(A) 15〜95質量%、
4−メチル−1−ペンテン系重合体(B) 5〜85質量%、
を含むことを特徴とする耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。
[2]前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、
前記(1)プロピレン系重合体を調製する第1重合段階;及び
続く(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを調製する第2重合段階、
を含む多段重合方法で製造される、[1]に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。
【0008】
[3]前記4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)が、4−メチル−1−ペンテン単独重合体または4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体である、[1]又は[2]に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。
[4]前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、該オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の質量に対して、10〜70質量%のプロピレン系重合体と、30〜90質量%のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとを含む、[1]〜[3]のいずれか1に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に関する。
[5][1]〜[4]のいずれか1に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、特定の多孔質重合体粒子からなるプロピレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー含み、特定の多段重合方法で製造されたオレフィン系熱可塑性エラストマーと、4−メチル−1−ペンテン系重合体とを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を提供することにより、耐衝撃性と耐熱性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性にも優れたエラストマー組成物を提供することができる。
本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が特許文献1及び2の熱可塑性エラストマー組成物に比べて格段に耐摩耗性と耐候性に優れている理由については明確ではない。しかし、本発明では、特許文献1及び2のオレフィン系熱可塑性エラストマーとは異なる、特定の多孔質重合体粒子からなるプロピレン系重合体及びエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を使用している。このような本発明の特定のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、特許文献1及び2のオレフィン系熱可塑性エラストマーと比べ、以下のような特徴を有する。
(1) 特許文献1及び2のオレフィン系熱可塑性エラストマー中のエラストマー成分は架橋しているのに対し、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマーは、架橋してないためプロピレン系重合体との界面親和性がよい。
(2) 特許文献1及び2のオレフィン系熱可塑性エラストマー中の該エラストマー成分はプロピレン重合体とエラストマーを押出機やバンバリーで機械的混練機を用いて分散させているためエラストマーの分散に限界があるのに対して、本発明では重合段階でエラストマーを分散させているため分散粒径が小さい。
このような事実が、特許文献1及び2のオレフィン系熱可塑性エラストマーなどの耐摩耗性や耐候性に悪影響を及ぼしていると考えられる。
【0010】
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、プロピレン系重合体を重合する第1重合段階と、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを重合する第2重合段階とを含む特定の多段重合方法により製造されることが好ましい。このようにして得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)では、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーが未架橋であり、かつ、該エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー成分が多孔質粒子形態であるプロピレン系重合体中で重合されるため、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)中において均一にかつ細かく分散し、エラストマーとプロピレン系重合体との界面親和性に優れている。このようなオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と溶融混合される4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)との改善された親和性を示すと考えられる。その結果、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)とを混合した本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物において、優れた耐摩耗性と耐候性を実現することができたと推定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、上述の通り、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)と、任意のその他の成分(C)とを含む耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその成形体に関する。以下、これら組成物及び成形体を詳細に説明する。
【0012】
(1)耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物
(1-1)オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、プロピレン系重合体とエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを含む。
(1-1-1) プロピレン系重合体
プロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択される。該プロピレンランダム共重合体は、プロピレンとα−オレフィンとのランダム共重合体であり、該α−オレフィンは、式CH2=CHR(式中、Rは水素または直鎖または分岐鎖の炭素数2〜8のアルキル基、またはフェニル基のような炭素数6〜8のアリール基である)で示すことができる。上記α−オレフィンの具体例には、エチレン、1-ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられ、例えばエチレンが好ましい。上記α−オレフィンは、2種以上の異なる上記α−オレフィンの組み合わせであってもよい。プロピレン系重合体が上記ランダム共重合体である場合、上記α−オレフィンは、10質量%まで、好ましくは1〜8質量%の量で存在する。
【0013】
本発明を構成するプロピレン系重合体は、多孔質粒子の形態である。多孔質粒子であることにより、この多孔質プロピレン系重合体粒子は、0.2〜0.6g/cm3、好ましくは、0.3〜0.5g/cm3、より好ましくは0.4〜0.5g/cm3の嵩密度を有する。嵩密度が0.2g/cm3以上であれば、一定容積のリアクターでの重合体の生産量(重量)が少なすぎることに起因して生産効率が悪くなることもなく、また、嵩密度が0.6g/cm3以下であれば、プロピレン系重合体の生産も容易で、かつ、十分な多孔質性が得られるので好ましい。
また、上記多孔質プロピレン系重合体粒子は、50〜5000μm、好ましくは、100〜4000μm、より好ましくは500〜3500μm、更に好ましくは、1000〜3000μmの粒子径を有する。粒子径が50μm以上であれば、十分な多孔質性が得られるとともに、エラストマー成分の分散も十分となる。また、粒子径が5000μm以下であれば、生産効率に影響することもない。ここで、粒子径は、ASTM−D1921−63に従って測定される粒子径である。
【0014】
(1-1-2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、エチレンと、CH2=CHR(式中、Rは直鎖または分岐鎖の炭素数1〜8のアルキル基またはフェニル基のような炭素数6〜8のアリール基である)で示されるα−オレフィンと、任意のジエンとの共重合体である。上記α−オレフィンの具体例には、プロピレン、1-ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが挙げられ、特に例えばプロピレンおよび1−ブテンが好ましい。上記α−オレフィンは、2種以上の異なる上記α−オレフィンの組み合わせであってもよい。上記ジエンには、ブタジエン、1、4−ヘキサジエン、1、5−ヘキサジエンおよび、エチリデン−ノルボルネン−1が挙げられる。
【0015】
上記エチレンの含有量は、例えば、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
上記α−オレフィンの含有量は、例えば、10〜90質量%、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは40〜60質量%である。
ジエンが存在する場合、ジエンの含有量は、例えば、0.5〜10質量%、より好ましくは1〜8質量%が適当である。但し、上記エチレン、α−オレフィン及び任意のジエンの合計量は100質量%を超えることはない。
エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーは、室温(25℃)でキシレンに可溶性であり、その135℃のテトラヒドロナフタレンでの極限粘度は、例えば、1.5〜10、好ましくは、2.0〜6.0である。
【0016】
(1-1-3)多段重合方法
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、(1) 上記プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択されるプロピレン系重合体を重合する第1重合段階と、(2)上記エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを重合する第2重合段階とを含む多段重合方法で製造される。具体的には、特開平3−205439号公報、特開平3−220251号公報、及び特表2004−510864号公報などに記載された多段重合方法を用いることが適当である。
【0017】
上記多段重合方法は、各重合段階が1段階以上、好ましくは、それぞれ1〜3段階含むことが好ましい。また、本発明の多段重合方法は、液相リアクターのみを用いて行われる多段重合方法、気相リアクターのみを用いて行われる多段重合方法、または液相リアクターと気相リアクターとを組み合わせて行われる多段重合方法を用いてもよい。
ここで、液相重合法とは、溶媒として、例えば、ヘキサン、ヘプタンなどの液状炭化水素やモノマー自身であるプロピレンを液状で用い、モノマー、触媒等を液相リアクターに加え、攪拌下、30℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃の重合温度、1.0〜50MPa、好ましくは3.0〜15MPaの重合圧力で反応させることを言う。
また、気相重合法とは、窒素、アルゴン等の不活性気体のガス流の存在下、触媒存在下にモノマーと分子量調整剤である水素を気相リアクターに加え、30℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃の重合温度、1.0〜50MPa、好ましくは3.0〜15MPaの重合圧力で反応させることを言う。
【0018】
例えば、多段重合方法のすべての段階で液相重合法もしくは気相重合法の何れか一方を用いてもよい。また、第1重合段階では液相重合法を用い、第2重合段階では気相重合法を用いてもよい。好ましくは、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーの重合は気相リアクター中で実施される。特に、エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーの含有量が多い(例えば、35質量%以上)場合、気相リアクターのみからなる多段重合法が好ましい。前記第2重合段階は、第1重合段階で調製されたプロピレン系重合体の存在下で行われる。
好ましい多段重合方法としては、例えば、まず、チーグラー−ナッタ触媒とモノマー自身である液状プロピレンを液相リアクターに加え、攪拌下、50℃〜80℃の重合温度、3.0〜15MPaの重合圧力でポリプロピレン系重合体の液相重合を行う。次いで、得られたプロピレン系重合体を気相リアクターに移し、エチレンとα−オレフィンをこの気相リアクターに加え、窒素ガス流の下、50℃〜80℃の重合温度、3.0〜15MPaの重合圧力でエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーの気相重合を行う。
【0019】
本発明の多段重合方法で好ましく使用される触媒は、チーグラー・ナッタ触媒で代表される立体特異性触媒である。特に、90%を越える、より好ましくは95%を越えるアイソタクチック指数を有するポリプロピレンを製造できるチーグラー−ナッタ触媒を使用することが好ましい。
このような特性を有するチーグラー−ナッタ触媒は、(i)活性型のマグネシウムハロゲン化物で担持された、少なくとも1種のチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物および電子供与体化合物(内部ドナー)を含む固体触媒成分、(ii)アルキルアルミニウム化合物のような有機アルミニウム化合物を含む助触媒、および任意に(iii)外部電子供与体化合物を含む。このような触媒は当事者間で周知であり、米国特許第4,399,054号および第4,472,524号に開示されている。
チーグラー−ナッタ触媒の(i)固体触媒成分は、(i-1) 活性型のマグネシウムハロゲン化物で担持された、少なくとも1種のチタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物を含む。ここで、活性型のマグネシウムハロゲン化物としては、例えば、MgCl2が挙げられる。
また、チタン−ハロゲン結合を有するチタン化合物としては、例えば、TiCl4、TiBr4、TiI4が挙げられる。
【0020】
チーグラー−ナッタ触媒の(i)固体触媒成分は、電子供与体化合物(内部ドナー)を含む。電子供与体化合物としては、例えば、エーテル、ケトン、ラクトン、N、Pおよび/またはS原子を含む化合物と、モノおよびジカルボン酸のエステルとからなる群から選択された化合物が挙げられる。特に好適な電子供与体化合物は、例えばジシンブチル、ジオクチル、ジフェニルおよびベンジルブチルフタレートのようなフタル酸エステルである。特に、ジイソブチルフタレートが好ましい。他の電子供与体化合物として、特に好適なのは、以下の式の1、3−ジエーテルである。

(式中、RIおよびRIIは、同じか又は異なり、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜18のシクロアルキル基または炭素数7〜18のアリール基である。RIIIおよびRIVは、同じかまたは異なり、炭素数1〜4のアルキル基、または−CAr(Arは、5、6または7個の炭素原子からなり、2つ又は3つの不飽和を含む環状または多環状アルキル基))である。)
【0021】
上記式(I)の1、3−ジエーテルの代表的な例として、2−メチル−イソプロピルー1、3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−シクロペンチル−1,3−ジメトキシープロパン、2−イソプロピル−2−イソアミルー1,3−ジメトキシプロパン、9、9−ビス(メトキシメチル)フルオレンが挙げられる。
【0022】
(ii)アルキルアルミニウム化合物のような有機アルミニウム化合物を含む助触媒としては、例えば、トリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルムニウムやトリプロピルアルムニウムなどが挙げられ、特にトリエチルアルミニウムが好ましい。
(iii)外部電子供与体化合物としては、例えば、ジシクロペンチルジメトキシシランやシクロヘキシルメチルジメトキシシランやジイソプロピルジメトキシシランなどが挙げられる。
【0023】
(1-1-4) オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の特性
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、(1)プロピレン系重合体と(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーのエラストマーとから構成され、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、(1)プロピレン系重合体からなる第1ドメインと(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーからなる第2ドメインとを有し、多孔質粒子であるプロピレン系重合体の孔を埋める形態でエラストマーが配置されている。例えば、プロピレン系重合体中にエラストマーが微分散した海−島構造を形成して存在している。
本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、上記(1)プロピレン系重合体を、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)全体の質量に対して10〜70質量%、好ましくは、15〜50質量%、より好ましくは20〜40質量%含むことがエラストマー(A)の柔軟性、耐衝撃性の点から適当である。また、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)全体の質量に対して、30〜90質量%、好ましくは、50〜85質量%、より好ましくは、60〜80質量%含むことがエラストマー(A)の柔軟性、耐衝撃性の点から適当である。(1)プロピレン系重合体が10質量%以上でかつ(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーが90質量%以下であれば、エラストマー(A)を上記多段重合方法により容易に製造できる。また、(1)プロピレン系重合体が70質量%以下でかつ(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーが30質量%以上であれば、エラストマー(A)として十分な耐衝撃性が得られる。
【0024】
また、本発明のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)は、そのエラストマー成分が架橋してない。即ち、架橋してなくても、エラストマー成分が十分微細な分散状態を得ることができる。
さらに、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)のメルトフローレイト(MFR)は、JIS K6921、230℃、2.16kg荷重で測定した場合、0.1〜20g/10分、好ましくは、0.3〜10g/10分、より好ましくは、0.5〜5g/10分であることが適当である。
【0025】
(1-2) 4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)
本発明で用いられる4−メチル−1−ペンテン系重合体は、4−メチル−1−ペンテン単独重合体または4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体である。4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体とは、20質量%まで、好ましくは0.1〜20質量%の炭素数2〜20、好ましくは炭素数4〜20、より好ましくは炭素数10〜20のα−オレフィンと、4−メチル−1−ペンテンとのランダム共重合体である。α−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセン等が挙げられる。特に好ましいα−オレフィンは、エチレンおよびプロピレン以外の、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンまたは1−エイコセンである。このようなα−オレフィンは、2種類以上用いても良い。耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマーとして要求される柔軟性の点からから4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
【0026】
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(B)のメルトフローレイト(MFR)は、ASTM D 1238、260℃、5kg荷重で測定した場合、0.1〜200g/10分、好ましくは1〜150g/10分の範囲であることが好ましい。
4−メチル−1−ペンテン系共重合体(B)は単独でも、2種類以上を組み合わせても使用することができる。
【0027】
(1-3) その他の成分(C)
本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物には、剛性を要求される場合には無機充填剤を配合することができる。無機充填剤としては、タルク、ガラスファイバー、炭酸カルシウム、マイカなど挙げられ、特にタルクとガラスファイバーが好ましい。無機充填剤の配合量は本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物全体の質量に対して、40質量%まで、好ましくは、20質量%まで配合できる。(本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物に含まれる各成分(A,B,C等)の合計は、100質量%を超えることはない。)但し、40質量%以下であれば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)とを容易に溶融混合することができ、また、十分な耐衝撃性を得ることができる。
無機充填剤以外にも、本発明の目的を損なわない範囲で、軟化剤、木粉などの有機充填材を混合できる。また、必要に応じて、通常のポリオレフィンに一般に添加して使用される安定剤、難燃化剤、加工性改良剤、滑剤、帯電防止剤、老化防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、顔料などの添加剤を添加してもよいことはもちろんである。
【0028】
(1-4) 耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の特徴
本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、上記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物全体の質量に対して、15〜95質量%、好ましくは20〜80質量%含む。また、本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)を、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物全体の質量に対して、5〜85質量%、好ましくは20〜80質量%の割合で含む。その配合割合は、用いるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)および4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)の耐熱性と耐衝撃性に応じて決定される。オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が15質量%以上であれば、十分な耐衝撃性が得られ、かつ、良好なリサイクル性が得られる。また、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)が5質量%以上であれば、十分な耐熱性が得られる。
【0029】
耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の耐熱性については、例えばJIS 7244の動的機械特性試験方法に準拠し、周波数が110Hz、引張振動モードで測定した場合に5mm伸びる(変形する)温度(測定が停止する温度)が、例えば、160℃以上であることが好ましく、165℃以上であることがより好ましい。
【0030】
(1-5) 耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法
本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の製造方法には、例えば、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)とをポリオレフィンやゴムの混合および混練の分野で用いられるバンバリーミキサーなどの密閉式混練機や、単軸押出機や二軸押出機などの混練機で溶融混合する方法やオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)とをペレット同士でタンブラーミキサー等でドライブレンドする方法などがあるが、これら製造方法に限定されるものではない。混練温度や成形温度は、用いる4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)の融点によるが、一般に、混練温度や成形温度ともに4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)が溶融する230〜280℃の範囲で選択される。
【0031】
(2)耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体
本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物は、柔軟性と耐熱性にすぐれ、かつ耐摩耗性、耐候性に優れることから、これらの特性が要求される成形体、特に、軟質成形体として使用される。ここで、本発明の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物が使用され得る成形体としては、例えば、バンパー、マッドガードなどの外装材、ドアトリム、インストルメントパネルなどの内装表皮材、ブーツ類などの自動車、車両、船舶等の外装材や内装材、耐圧ホース、ガスケットなどの工業用機械部品、電線ケーブル、被覆材などが挙げられる。これらの成形体は、柔軟性、耐熱性、耐摩耗性、耐候性が強く要請されるものである。
耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体を得る方法としては、ポリオレフィンの成形で一般に使用されているフィルム成形機、シート成形機、中空成形機、圧縮成形、射出成形機などを用いて耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を成形する方法が挙げられる。
耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体としては、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物単体からなる成形品の他に、少なくとも本発明の耐熱性ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を一部に含む複合成形体、または当該組成物の層を少なくとも1層含む多層成形体などの成形体がある。複合成形体や多層成形体を得る方法には、多層フィルム成形、多層シート成形、多層中空成形、二色ロータリー成形、サンドイッチ成形、インサート成形などが挙げられる。
【実施例】
【0032】
[1]試験方法
(耐熱性)
耐熱性は、JIS K7244の動的機械特性試験方法に準拠して以下の方法で評価した。
まず、試料をプレス成形して100μm厚のフィルムを作製した。次いで、このフィルムから2mm幅、40mm長の短冊サンプルを切り出した。東洋ボールドウィン製のバイブロンII型を用い、チャック間30mm、周波数が110Hz、液体窒素ガス雰囲気、−150〜200℃温度範囲、2℃/分の昇温速度、引張振動モードで、上記短冊サンプルの動的機械特性を測定した。この動的機械特性データに基づいて昇温過程でサンプルが引張方向に5mm変形した(伸びた)ときに測定を終了し、この測定終了時の温度を耐熱性の指標とした。
【0033】
(耐衝撃性)
耐衝撃性は、JIS K7110のアイゾッド衝撃試験法に準拠して以下の方法で評価した。
射出成形で長さ63.5mm、幅12.7mm、厚み3.2mmの試料を作製した。この試料に、切欠き深さ2.54mm、切欠き半径0.25mm、切欠き角 22.5°の切欠き部を設け、削ノッチ付の試験片を用意した。この試験片を用い、−30℃におけるアイゾット衝撃強度(kJ/m)を測定した。
【0034】
(耐摩耗性)
摩耗性は、JIS K 7204の摩耗試験方法に準拠して以下の方法で評価した。
射出成形で作製した2mm厚の平板から直径115mmの円板を切り出し、摩耗輪にCS17を用い、7.5Nの条件で摩耗させた。1000回転後の試験片の質量減少量を測定した。
【0035】
(耐候性)
耐候性は、JIS K 7350のサンシャインカーボンアークランプによる暴露試験方法に準拠して以下の条件で評価した。
射出成形で作製した3mm厚の平板からサンプルを切り出し、光源としてオープンフレームカーボンアークランプを用い、ブラックパネル温度を83℃とし、水噴霧条件を噴霧18分間−停止102分のサイクルとして上記サンプルを暴露した。試験前と2000時間試験を行った後の色差(ΔE)をスガ試験機の変角測色機で測定した。
【0036】
(リサイクル性)
神戸製鋼所製の二軸押出機(KTX37)を用い、試料 10kgを260℃の温度条件で溶融押出を10パス行い、1パス後と10パス後の230℃、2.16kg荷重のMFR(JIS K 6921)を測定した。
【0037】
[2]オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の調製
3段の気相リアクターからなる多段重合方法を用いてオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を調製した。触媒としては、高立体規則性のチーグラーナッタ触媒であってMgCl2上にTiとジイソブチルフタレート(内部ドナー)を担持させたものを使用した。具体的には、以下の(A−1)および(A−2)のオレフィン系熱可塑性エラストマーを調製した。
【0038】
(A―1)1段目の気相リアクターに、上記チーグラーナッタ触媒とプロピレンを導入して気相重合反応を行い、ASTM D 1238、260℃、5kg荷重で測定した粒子径が2000μm、嵩密度が0.45g/cm3の多孔性のプロピレン単独重合体を重合した。
続いて2段目の気相リアクターに、1段目で得られた重合体を移し、プロピレンとエチレンを導入してエチレン−プロピレン共重合体エラストマーの気相重合反応を行い、
【0039】
さらに続いて3段目の気相リアクターに、2段目で得られた重合体を移し、2段目と同様にしてエチレン−プロピレン共重合体エラストマー気相重合反応を行い、プロピレン単独重合体40質量%と、50質量%のエチレンを含むエチレン−プロピレン共重合体エラストマー60重量%との混合物であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)は、プロピレン単独重合体からなるマトリックス中にエチレン−プロピレン共重合体エラストマーが微分散していた。このオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)は、MFR(JIS K 6921、230℃、2.16kg)が2.5g/10分であった。
また、エチレン−プロピレン共重合体エラストマーの135℃のテトラヒドロナフタレンでの極限粘度は、3.5であった。
【0040】
(A−2)1段目の気相リアクターに、上記チーグラーナッタ触媒、エチレン、プロピレンを導入して気相重合反応を行い、エチレンを2.5質量%共重合した、ASTM D 1238、260℃、5kg荷重で測定した粒子径が2000μm、嵩密度が0.45g/cm3の多孔性のランダムプロピレン共重合体を重合した。
続いて2段目の気相リアクターに、1段目で得られたランダムプロピレン共重合体を移し、エチレンとプロピレンを導入してエチレン−プロピレン共重合体エラストマーの気相重合反応を行い、さらに続いて3段目の気相リアクターに、2段目で得られた重合体を移し、エチレンとプロピレンを導入し、気相重合反応を行い、ランダムプロピレン共重合体20質量%と、60質量%のエチレンを含むエチレン−プロピレン共重合体エラストマー80重量%との混合物であるオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)を得た。得られたオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)は、ランダムプロピレン共重合体中にエチレン−プロピレン共重合体エラストマーが微分散していた。このオレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)は、MFR(JIS K 6921、230℃、2.16kg)が0.8g/10分であった。
【0041】
[3]4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)の調製
4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)として、以下の(B−1)の4−メチル−1−ペンテン系重合体を使用した。
(B−1)融点が222℃で、MFR(ASTM D 1238、260℃、5kg荷重)が23g/10分の4−メチル−1−ペンテン重合体(三井化学社製、MX002)
【0042】
[5]混合方法
溶融混合法
神戸製鋼所製の二軸押出機(KTX37)を用い、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)を温度250℃の条件で溶融混合する方法である。
ドライブレンド法
ペレット状のオレフィン系熱可塑性エラストマー(A)と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)のペレットを100リットルのタンブラーミキサーに加え、室温(25℃)で混合する方法である。
【0043】
[6]耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物の調製
実施例1
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)50質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)50質量%とを上記溶融混合法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
実施例2
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)75質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)25質量%とを上記溶融混合法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0044】
実施例3
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)25質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)を75質量%とを上記溶融混合法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
実施例4
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)50質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)50質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0045】
実施例5
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)90質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)10質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
実施例6
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)50質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)50質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0046】
実施例7
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)75質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)25質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
実施例8
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)25質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)75質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0047】
比較例1
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)を使用せず、4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)のみを含む組成物を使用した。
比較例2
市販の熱可塑性エラストマー(商品名:ミラストマーM2400、三井化学(株)製、MFR=0.23g/10分)を使用した。
【0048】
比較例3
4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)50質量%と市販の熱可塑性エラストマー(商品名:ミラストマーM2400、三井化学(株)製、MFR=23g/10分)50質量%を上記溶融混合法により混合してオレフィン系熱可塑性エラストマーを得た。
比較例4
4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)を使用せず、オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−1)のみを含む組成物を使用した。
【0049】
比較例5
オレフィン系熱可塑性エラストマー(A−2)10質量%と4−メチル−1−ペンテン系重合体(B−1)90質量%とを上記ドライブレンド法により混合し、耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を得た。
【0050】
上記実施例1〜8および比較例1〜5の組成および混合方法を、下記表1−1〜1−3に示す。
表1−1






【0051】
表1−2

【0052】
表1−3

【0053】
また、上記実施例1〜8および比較例1〜5の試験結果を下記表2−1〜2−3に示す。
表2−1

【0054】
表2−2

【0055】
表2−3

【0056】
表2−1〜表2−3の結果からあきらかなように、各実施例の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物とその成形体は、耐熱性、耐衝撃性に優れ、しかも耐摩耗性、耐候性、リサイクル性に優れており、自動車内外装材などの軟質部品用途の素材に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体から選択されるプロピレン系重合体であって、前記プロピレン系重合体が、50〜5000μmの粒子径及び0.2〜0.6g/cm3の嵩密度を有する多孔質粒子であるプロピレン系重合体と、(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとを含むオレフィン系熱可塑性エラストマー(A) 15〜95質量%、
4−メチル−1−ペンテン系重合体(B) 5〜85質量%、
を含むことを特徴とする耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項2】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、
前記(1)プロピレン系重合体を重合する第1重合段階;及び
続く(2)エチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーを重合する第2重合段階、
を含む多段重合方法で製造される、請求項1に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記4−メチル−1−ペンテン系重合体(B)が、4−メチル−1−ペンテン単独重合体または4−メチル−1−ペンテン・α−オレフィンランダム共重合体である、請求項1又は2に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)が、該オレフィン系熱可塑性エラストマー(A)の質量に対して、10〜70質量%のプロピレン系重合体と、30〜90質量%のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマーとを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐熱性オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物を含む成形体。

【公開番号】特開2009−62455(P2009−62455A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−231669(P2007−231669)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(597021842)サンアロマー株式会社 (27)
【Fターム(参考)】