説明

耐熱性シート

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は耐熱性シートに関するものであり、更に詳しく述べるならば耐熱性にすぐれ、かつ縫製性および耐屈曲性にすぐれ、柔軟でフレキシブルな繊維シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ポリエステル繊維(融点255〜260℃)、ポリアミド繊維(融点215〜260℃)等からなる繊維性基布に、熱可塑性樹脂、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC、耐熱温度66〜79℃)、ポリウレタン(耐熱温度90〜120℃)、アクリル樹脂(耐熱温度60〜88℃)、ポリエチレン(耐熱温度80〜120℃)、ポリプロピレン(耐熱温度120〜160℃)、ポリアミド(耐熱温度80〜150℃)又はポリエステル(耐熱温度約120℃)を被覆して得られるシート材料が知られている。この場合、繊維性基布の融点が比較的低いため、これを被覆する被膜材料としては、繊維性基布が耐え得る程度の加工温度で被覆加工し得るものでなければならず、このため、被膜材料も、前記のように、比較的耐熱性の低い樹脂が用いられている。しかしながら、近時においては、繊維シート材料を、例えば、火夫服、耐熱衣料、膜状建材等に使用される機会が多くなり、火炎や火傷その他の熱的災害から安全を保つために、不燃・難燃などの要求が高まってきている。このため耐熱性シート材料の開発が強く望まれている。
【0003】上述のような要求に応じて、特開昭58−120677号および特開昭58−127757号には、チタン酸アルカリおよびシリコーン樹脂を含んでなる高温断熱塗料および耐火断熱フィルムが提案されており、また特開昭58−130183号、特開昭58−199791号および特開昭59−35938号には、無機質芯材、例えば、ガラス繊維性基布、アスベスト紙などの表面上にシリコーン樹脂およびチタン酸アルカリを含む被覆層を形成して得られる耐火性シートが開示されている。
【0004】また、特開昭59−26987号および特開昭59−36157号には、ポリオルガノホスフォニトリル化合物にシリコーン樹脂、又はアルキルシリケートなどを混合した耐熱組成物および、この耐熱組成物で無機質芯材を被覆することが開示されている。これらの無機繊維基布を用いた耐熱性シートは、すぐれた耐火断熱性、防汚性、および耐候性などを有していたが、その重量(目付)が大きくて使用や取扱いに不便であり、かつ、縫製しにくく、しかも耐屈曲強さが低いため、使用間特に、振動や、はためきを受ける用途、或は屈曲のはげしい用途に用いられると折損しやすく、またミシン目から裂断しやすいなどの問題点があり、この問題点の解消が強く望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、柔軟で耐熱性のすぐれたシートにおいて、その耐屈曲強さを向上させて振動や、はためきや、或は繰返し屈曲などに耐えられるようにし、縫製しやすくかつミシン目からの裂断を生じにくくするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の耐熱性シートは、無機繊維、および300℃以上の融点、又は加熱分解点を有する耐熱性有機合成繊維を50:50〜90:10の重量比で含んでなる編織物からなる基布と、この基布に含浸又は塗布され、かつ300℃以下の融点を有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロオレフィン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、およびクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる弗素含有樹脂を含む耐熱被覆層とを有することを特徴とするものである。
【0007】
【作用】本発明の耐熱性シートは無機繊維と耐熱性有機合成繊維とを含む編織物からなる基布と、300℃以下の融点を有する弗素含有樹脂を含む耐熱被覆層とを有するものである。
【0008】本発明に用いられる基布を構成する無機繊維は、石綿繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維などから選ぶことができる。
【0009】また、本発明において基布に用いられる有機繊維は、300℃以上の融点、又は加熱分解温度を有する耐熱性有機合成繊維であって、必要により、それとは異なる有機繊維を含んでいてもよい。このような異種有機繊維は、天然繊維、例えば、木綿、麻など、再生繊維、例えば、ビスコースレーヨン、キュプラなど、半合成繊維、例えば、ジ−およびトリ−アセテート繊維など、及び合成繊維、例えば、ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)繊維、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート等)繊維、アクリル繊維、などから選ぶことができる。
【0010】前記高融点、又は高熱分解点を有する耐熱性有機合成繊維を形成するポリマーとしては表1および表2に示すようなものがある。
【0011】
【表1】


【0012】
【表2】


【0013】表1および表2に示された耐熱性ポリマーのうちでは、特にポリメタフェニレンイソフタルアミド及びポリパラフェニレンテレフタルアミドが一般的であり、前記以外のパラ系アラミド繊維として帝人(株)製の「HM−50」等も使用できる。
【0014】かかる繊維に有用な芳香族ポリアミドは、また、少なくとも50モル%の下記式(I)及び(II)、 −(Ar1 −CONH)− (I)
−(Ar1 −CONH−Ar2 −NHCO)− (II)
〔上式中、Ar1 及びAr2 は二価の芳香族基を表わし、これらは互に同一であってもよく又は相異っていてもよい〕で示される単位から選ばれる少なくとも1種を主反復単位として有するものであるのが好ましい。上記式(I)及び(II)において、Ar1 及びAr2 で表わされる二価の芳香族基は、下記式、
【化1】


〔上式中、Aは−O−,−S−,−SO−,−SO2 −,−CO−,−CH2 −又は−C(CH3)2 −を表わす〕で示される芳香族残基群から選ばれるのが好ましい。これらの芳香族残基は、ハロゲン、アルキル基、ニトロ基などの不活性置換基を含んでいてもよい。
【0015】一般に、芳香族ポリアミドとしては、下記式、
【化2】


で示される反復単位を主成分として有するものが更に好ましい。
【0016】耐熱性有機合成繊維としては、以上のもののほか、融点又は加熱分解点が300℃以上のものであれば、弗素系繊維やその他の繊維を用いることもできる。
【0017】耐熱性有機合成繊維が用いられる場合、基布中の耐熱性有機合成繊維の無機繊維に対する重量比は50:50〜90:10の範囲内にあり、50:50〜80:20の範囲内にあることが好ましい。また、耐熱被覆層との接着性およびその他の性能を助長するために、300℃よりも低い融点又は加熱分解点を有する繊維、例えば前記耐熱性有機合成繊維とは異種の有機繊維を基布中に混用することもできる。しかし、基布中に耐熱性繊維(無機繊維および耐熱性有機合成繊維の合計量)が50重量%以上含有されることが好ましく、60重量%以上含有されることが更に好ましい。
【0018】基布中における無機並びに耐熱性有機合成繊維および異種有機繊維は、短繊維紡績糸条、長繊維糸条、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状にあってもよく、また基布は織物、および編物のいずれであってもよい。しかし、縫製部分の強力や、耐屈曲性を考慮すれば、基布としては織物であることが好ましい。また、繊維の形態としては、ストレスに対する伸びが少ない長繊維(フィラメント)の形状のものが好ましく、且つ平織布を形成していることが好ましい。しかし、基布の編織組織やその形態については特に限定はない。耐熱性有機合成繊維は、得られる耐熱性シートの機械的強度を高いレベルに維持するために有用である。
【0019】基布内において、無機繊維と耐熱性有機合成繊維とは、どのように混用されていてもよい。例えば混紡糸、交編織物、交撚糸、引揃え糸などのいづれであってもよい。しかし、基布中に耐熱性有機合成繊維が10〜50重量%含まれており、20〜50重量%含まれることが好ましい。また無機繊維が基布中に90〜50重量%含まれており、80〜50重量%含まれることが好ましい。無機繊維と耐熱性有機合成繊維の混用比において、無機繊維の含有率が50重量%未満になると、得られる耐熱性シートの耐熱性が所望水準に達しないことがあり、また、耐熱性有機合成繊維の含有率が10重量%未満になると、得られる耐熱性シートの耐折強さ、および縫製性が所望水準に達しないことがあり、かつ高価な耐熱性有機合成繊維の含有率が50重量%を超えると、耐熱性シートのコストが高くなり、実用的でなくなる。
【0020】無機繊維としてガラス繊維が用いられる場合、その種類や繊度などに格別の限定はないが、一般に太さが約2〜10μm、特に約3μm程度の、通常ベーターヤーンと称されるものが用いられている。
【0021】本発明の耐熱性シートにおいて、その耐熱被覆層は、300℃以下の融点を有する弗素含有樹脂を含むものである。
【0022】本発明に用いられる弗素含有樹脂は、300℃以下の融点を有するものであって、テトラフルオロエチレン−パーフルオロオレフィン共重合体(例えばテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、およびクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体などから選ばれた少なくとも1種を含んでなるものである。
【0023】上述の弗素含有樹脂の耐候性は極めて良好であるけれども、基布を保護する目的で、これらの樹脂中に紫外線吸収剤を配合してもよい。また、着色剤やその他の性能付与剤を配合してもよいことは勿論である。そして、これらの樹脂からなる被覆層は微多孔質であってもよく、また連続もしくは不連続気泡を有するものであってもよい。
【0024】基布の表面を、上記耐熱被覆層で被覆する方法としては、基布の表面に耐熱被覆用混合物をスプレー塗装、刷毛塗り、ロールコート等の塗工による方法、或は耐熱被覆用混合物を成型加工したフィルムを基布の表面に貼着する方法又は基布を耐熱被覆用混合物中に浸漬し含浸加工する方法等がある。
【0025】本発明の耐熱性シートは、例えば次のようにして製造される。即ち、弗素含有樹脂に適宜反応促進剤及び添加剤を加えた後、更に必要に応じトルエン、キシレン、トリクレン等の有機溶剤を加えて適当な濃度の分散液を調製する。この分散液を浸漬法、噴霧法、ロールコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法等の従来よく知られている含浸、又は塗布手段により基布に含浸するか、或はその一面又は両面に塗布する。
【0026】上記分散液の含浸は上記浸漬法によって行われ、また塗布は、噴霧法、ロールコート法、リバースロールコート法、ナイフコート法などによって施される。含浸法、および塗布法のいづれを用いるかは、基布の組織、厚さ、種類、並びに得られる耐熱性シートの用途、および所望の性能、風合などに応じて適宜に設定すればよい。
【0027】次に、上記のように、弗素含有樹脂含有分散液により含浸、又は塗布された基布を、400℃以下、好ましくは150〜370℃、より好ましくは150〜350℃の範囲内で1〜30分間熱処理することにより前述の基布に耐熱被覆層を一体的に固着せしめる。耐熱被覆層中には、一般に常用されている無機質顔料、無機質の増量用充填材、難燃性を付与する無機粉末等を含有させてもよいが、これら添加無機材料の使用量は弗素含有樹脂100重量部に対し400重量部以下であり、好ましくは300重量部以下である。
【0028】本発明の耐熱性シートの厚さは0.02mm以上であることが好ましく、0.05〜2.0mmの範囲内にあることがより好ましい。
【0029】基布と耐熱被覆層との接着及び耐久性を向上させる目的で、両者間に接着性物質を介在させてもよい。この場合、接着力の向上を図る以上に特に厚く介在させる必要はない。接着性物質は被膜形成のために用いられるのではなく、従って接着剤として公知の物質を用いることができる。例えば、アミノ基、イミノ基、エチレンイミン残基、アルキレンジアミン残基を含むアクリレート、アジリジニル基を含有するアクリレート、アミノエステル変性ビニル重合体、芳香族エポキシ接着剤、アミノ窒素含有メタクリレート重合体、その他の接着剤を併用してもよい。またポリアミドイミド、ポリイミド等の繊維基布を構成する樹脂と同質の樹脂やRFL変性物質等を任意に選択することもできる。
【0030】本発明の耐熱性シートにおいて、耐熱被覆層は片面のみに形成されてもよいが、基布の耐候性の低さ等を補填するために両面に形成されてもよく、使用状況によっては両面形成が必須の条件になることもある。
【0031】耐熱被覆層の厚さは5〜2000μm、特に10〜1500μmであるのが好ましい。本発明の耐熱性シートは、他の材料、例えば発泡体又はマットなどと組合せて使用することもできる。本発明の耐熱性シートは、テープ状又は短冊状に形成されてもよいし、シート状物を切断してテープ状又は短冊状にしてもよい。このようなテープ状耐熱性シートは、電線やケーブルなどの耐熱・難燃性を必要とする用途に、被覆又は巻きつけて使用することができる。また、他の材料、例えば、発泡体、ネット、マットなどと組合せて使用してもよい。
【0032】
【実施例】本発明の耐熱性シートを実施例により更に詳しく説明する。
比較例1基布として、下記組織のガラス繊維布帛を用いた。
DE150 1/2 3.3S ─────────────────── トルコ朱子織 51本/25.4mm×51本/25.4mm 目付 290g/m2 上記基布の両面にアクリル系接着剤(SC462、ソニーケミカル社製)を30g/m2 の塗布量で塗布し乾燥した。
【0033】別に下記組成の弗素含有樹脂組成物を調製した。
組成: 成 分 量(重量部)テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン 100共重合体(FEP、m.p.275℃)の50%水性分散液水溶性アクリル樹脂(増粘剤) 0.65この組成物の粘度は約900センチポイズであった。
【0034】上記基布を、上記組成物中に浸漬して絞り、それを250〜300℃の温度に徐々に昇温乾燥し、次に350℃の温度で被膜を形成した。得られた耐熱被覆層の厚さは両表面ともに約150μmであった。
【0035】得られたシートを特開昭58−130183号に記載されている耐火断熱試験に供した。このときの耐火断熱性の評価基準は下記の通りであった。
A種:厚さ9mmの火花発生用鋼板を溶断する時、発生する火花に対し発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
B種:厚さ4.5mmの火花発生用鋼板を溶断する時、発生する火花に対し発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
C種:厚さ3.2mmの火花発生用鋼板を溶断する時、発生する火花に対し発炎及び防火上有害な貫通孔がないこと。
D種:厚さ3.2mmの火花発生用鋼板を溶断する時、防火上有害な貫通孔が発生。
E種:厚さ3.2mmの火花発生用鋼板を溶断する時発炎。
【0036】比較例1のシートの耐火断熱性はB種であった。比較例1のシートに対し、JIS P8115(1976)「紙および板紙のMIT型試験器による耐折強さ試験法」に準拠する試験を行ったところ、シートは屈曲3000回で破断した。すなわち、比較例1のシートは、ガラス繊維のみからなる基布を使用していたため、振動、はためき、或は屈曲に対し耐久性の低いものであった。
【0037】また、比較例1のシートに対し、シンガー社製112W−115工業用ミシン(2本針、本縫糸送り、テント用)を用い、縫糸としてノーメックスマルチフィラメント糸(500d)を使用し、本縫、直線、2本縫により運針数50ピッチ/10cmで縫製したところ縫製中に縫製部(ミシン目)が裂断した。
【0038】実施例1比較例1に用いた基布の組織において、ガラス繊維糸条1本に対し、芳香族ポリアミド繊維糸条(ケブラー、195デニール/130f)2本の割合で経、緯に用いて、基布を作成した。この基布における無機繊維と耐熱性有機合成繊維との重量混用比は60.5:39.5であった。上記基布に、比較例1と同様の接着剤処理および耐熱被覆剤処理を施して、耐熱性シートを製造した。
【0039】この耐熱性シートの耐火断熱性はC種でありその耐折強さ試験においては、10,000回の屈曲でも折損せず、ほぼ無限大の耐折強さを示した。また、比較例1と同様の縫製を実施したが縫製部(ミシン目)は裂断することなくスムーズに縫製することができた。
【0040】実施例2実施例1と同様の操作を行った。但し、基布において、前記ガラス繊維糸条の代りにカーボン繊維糸条を用いた。この基布における無機繊維と耐熱性有機合成繊維との重量混用比は52.0:48.0であった。得られた耐熱性シートの耐火断熱性はC種であり、耐折強さは10,000回以上であった。また、実施例1と同様に十分な縫製性が得られた。
【0041】実施例3実施例1と同様の操作を行った。但し、基布の経、緯において、ガラス繊維糸条1本に対し、ケブラー繊維糸条1本およびポリエチレンテレフタレートマルチフィラメント糸条1本を交織して用いた。この基布における無機繊維と耐熱性有機合成繊維との重量混用比は65.4:34.5であった。また熱処理温度は、最高280℃とした。得られた耐熱性シートの耐火断熱性はC種であり、10,000回以上の耐折強さを示し、かつ、実施例1と同様の良好な縫製性を示した。
【0042】実施例4実施例1と同様の操作を行った。但し、前記弗素含有樹脂組成物をロールコーターを用いて基布の両面に塗布し、各面に厚さ約150μmの耐熱被覆層を形成した。得られた耐熱性シートの性能及び縫製性は、実施例1とほぼ同じであった。
【0043】比較例2実施例1と同様の操作を行った。但し、弗素含有樹脂組成物の調製において、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体50%水性分散液の代りに、下記組成の難燃処理液を用いた。
成 分 重量部難燃性シリコーン樹脂KR2038(* 1) 100(商標、信越化学工業(株)製、固形分100%)
難燃性シリコーン架橋剤D2038 2(商標、信越化学工業(株)製)
トルエン 40液粘度(B型6号、20r.p.m ) 35ポイズ〔註:(*)1 …ビニル基含有オルガノシロキサン〕
基布を上記処理液に浸漬し、絞り、100℃において2分間乾燥し、200℃において1分間熱処理した。得られた耐熱性シートの耐折強さは10,000回であったが、表面を被覆するシリコーン樹脂の表面が柔らかく、かすかな粘着性を示し、脆く、これに起因して耐折強さ試験後の状態を表面観察すると樹脂の剥離が明瞭に認められた。またその耐火断熱性はC種であり、その縫製性は、シートが柔らかく粘着気味であるため、縫製時のシートの送りが悪く、針の通りも摩擦が強くスムーズではなく、作業性の面からも不満足なものであった。
【0044】比較例3実施例1と同様にして耐熱性シートを作製した。但し、弗素含有樹脂組成物の調製において、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体50%水性分散液の代りに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE,m.p.327℃)水性分散液(固形分:60%)を用い、被膜形成温度を480℃にした。得られた耐熱性シートは、それに含まれる有機繊維が劣化および硬化したため、粗硬で脆くなり、その耐折強さは3,000回未満であって実用に供し得るものではなかった。また、被膜形成温度を、350℃にした場合、被膜の形成および固着が不十分であって、基布から容易に剥落し、実用に供し得るものではなかった。
【0045】
【発明の効果】本発明の耐熱性シートは、無機繊維に所要量の耐熱性有機合成繊維が混用され、特定の被覆層が形成されているため、所望の耐熱性を保持しながら、柔軟ですぐれた耐折れ強さを有し、しかもすぐれた縫製性を有するものであって、従って高温で繰り返し屈曲や、はげしい振動やはためきを受ける用途(例えば耐火服、開閉カーテンおよび建築用膜材など)に広く使用することができる。

【特許請求の範囲】
1.無機繊維、および300℃以上の融点、又は加熱分解点を有する耐熱性有機合成繊維を50:50〜90:10の重量比で含んでなる編織物からなる基布と、この基布に含浸又は塗布され、かつ300℃以下の融点を有するテトラフルオロエチレン−パーフルオロオレフィン共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルエチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、およびクロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる弗素含有樹脂を含む耐熱被覆層とを有する耐熱性シート。
2.前記無機繊維が、石綿繊維、セラミック繊維、シリカ繊維、ガラス繊維、カーボン繊維、および金属繊維から選ばれる、特許請求の範囲第1項記載の耐熱性シート。
3.前記基布が、前記耐熱性有機合成繊維とは異なる有機繊維を更に含む、特許請求の範囲第1項記載の耐熱性シート。

【特許番号】第2716380号
【登録日】平成9年(1997)11月7日
【発行日】平成10年(1998)2月18日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−271587
【分割の表示】特願昭60−21826の分割
【出願日】昭和60年(1985)2月8日
【公開番号】特開平7−216747
【公開日】平成7年(1995)8月15日
【前置審査】 前置審査
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−181639(JP,A)
【文献】特開 昭58−130183(JP,A)
【文献】特公 昭58−55279(JP,B2)
【文献】実公 昭51−19111(JP,Y2)
【文献】実公 昭55−2043(JP,Y2)
【文献】実公 昭56−42379(JP,Y2)