説明

耐熱性生物活性組成物

生物活性組成物は、ヒドロゲルマトリックスを含む。少なくとも1つのタンパク質は、該ヒドロゲルマトリックス中に固定化される。消化タンパク質は、対応する遊離消化タンパク質の半減期よりも少なくとも1000倍長い半減期を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本願は、2008年5月9日に出願した米国特許出願第12/118,171号における優先権を主張する。その内容は参考により本明細書中に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野
本発明は、生物活性材料を安定化するための組成物及びその方法、特にヒドロゲルに固定化された生物活性材料を安定化するための熱処理に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の背景
生物活性高分子、例えばタンパク質、核酸及び機能酵素は、生物医学的及び工業的な適用の様々な観点において広く利用されている。例えば、核酸はポリメラーゼ連鎖反応のための遺伝子の鋳型として利用されており、一方タンパク質は、洗剤の分解洗浄能力を亢進するために洗剤混合物において使用されている。
【0004】
洗剤産業において、タンパク質は生物学的成分を有するステインを洗浄するための洗剤添加剤として使用することができる。生物学的なステインは、自動車用途、例えば自動車の内部及び外部表面の両方において存在しうる。自動車の表面の例としては、コーティング、ペイント及びシート布を含み、これら表面は、鳥の糞、虫の死骸、針葉樹の樹脂、微生物、ガム等に長期間暴露されると汚染される可能性がある。一定のステイン、例えば昆虫由来のステインは、通常のブラシのない自動車洗浄で除去することは困難である。内部表面及びコーティングはまた、食品及び飲料中の油、タンパク質、糖及びほかの成分により容易に染色される可能性がある。生物学的ステイン、例えばトリの糞、植物樹脂、及び虫の死骸は堆積すると自動車のペイント表面を損傷しうる。さらに、損傷、例えば長期のステイン暴露による亀裂又は隆起は、熱処理によって回復させることはできない。したがって、当業界においては、このようなステインの適時の除去が必要とされる。
【0005】
これに応じて、表面のステイン堆積を減少させ、そしてブラシのない自動車洗浄に代わる代替物を製造するために自己洗浄技術が発展してきた。しかしながら、疎水性又は親水性コーティングとして知られる自己洗浄技術は、無機的な汚れの除去には有効であるが、様々な種類の有機ポリマーからなり、しばしばコーティングの表面下に広範囲に拡散しうる生物学的ステインには有効ではない。
【0006】
タンパク質、例えば消化タンパク質又は酵素は、有機分子を触媒し分解することが知られている。消化タンパク質は、有機媒体中で活性かつ活発である可能性があり、多くの基質を利用することができる。該基質が水に不溶性であるか、あるいは僅かにしか溶けない場合、水溶液中では消化タンパク質の最大活性を達成することができない。先行技術における非水性媒体中の消化タンパク質活性の研究は、反応物及び/又は生成物が水溶性でない反応の触媒作用に対する消化タンパク質の利用性を拡大するための必要性が主な動機となる。
【0007】
タンパク質、例えば消化タンパク質又は酵素は有機ステイン分子を分解することができるが、これらは一般的に、上昇温度及び乾燥又は非水性条件下において熱的に安定ではない。したがって、当業界においては、上昇温度かつ乾燥条件下において使用することができる熱安定性の生物活性組成物が必要とされる。さらに、当業界においては、様々な環境ストレス、例えば上昇温度及び酸性に対して安定である生物活性組成物及び該生物活性組成物を製造するための方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0008】
ある観点において、本明細書には、多孔性ヒドロゲルマトリックスを含む生物活性組成物が開示される。該多孔性ヒドロゲルマトリックス中に少なくとも1つのタンパク質が固定化される。該タンパク質は、対応する遊離消化タンパク質の半減期よりも少なくとも1000倍長い半減期を有する。
【0009】
ほかの観点において、本明細書には、体積V1を定義するヒドロゲルマトリックスの細孔(pore)を含む生物活性組成物が開示される。該タンパク質の集合的な3次元サイズにより定義される全体積V2を有する少なくとも1つのタンパク質が該細孔に固定化される。(V1−V2)/V1の割合は20%以下である。
【0010】
ほかの観点において、本明細書には、生物活性組成物を安定化するための方法であって、タンパク質分子の周囲にヒドロゲルマトリックス細孔を形成する工程;及びヒドロゲルマトリックス細孔内の水分含有量を低下させるが、タンパク質分子の生物学的活性を保持する工程を含む方法が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ヒドロゲル構造中に捕捉された消化タンパク質を有するヒドロゲル構造を表す図である。
【0012】
【図2】アクリルアミドモノマー、N,N−メチレンビスアクリルアミド架橋化合物及び過硫酸アンモニウムとテトラメチレンジアミンの重合開始剤についてのヒドロゲル構造中に捕捉された消化タンパク質中のヒドロゲル構造の形成を表す図である。
【0013】
【図3】熱処理後のヒドロゲル多孔率の変化を表す図である。
【0014】
【図4】熱前処理(thermal pretreatment)及び水中再湿潤(rewetting)後のヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ材料の体積変化率を示すダイアグラムである。
【0015】
【図5A】熱前処理前のヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼの多孔率を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5B】熱前処理後のヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼの多孔率を示す走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【0016】
【図6】熱前処理したヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、熱前処理していないヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、及び遊離の非結合性天然グルコースオキシダーゼ分子についての80℃での時間関数としての相対活性を示す図である。
【0017】
【図7】熱前処理したヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、熱前処理していないヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、及び遊離の非結合天然グルコースオキシダーゼ分子についての110℃での時間関数としての相対活性を示す図である。
【0018】
【図8】熱前処理したヒドロゲル捕捉α−キモトリプシン分子、熱前処理していないヒドロゲル捕捉α−キモトリプシン分子、及び遊離の非結合天然α−キモトリプシン分子についての時間関数としての相対活性を示す図である。
【0019】
【図9】熱前処理したヒドロゲル捕捉α−キモトリプシン分子、熱前処理していないヒドロゲル捕捉α−キモトリプシン分子、及び遊離の非結合天然α−キモトリプシン分子についての110℃における時間関数としての相対活性の図である。
【0020】
【図10】熱前処理したヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、熱前処理していないヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ分子、及び遊離の非結合天然グルコースオキシダーゼ分子についての組み合わせた厳しい条件に(harsh condition)における時間関数としての相対活性のプロットである。
【0021】
【図11】活性アッセイ反応混合物についてのヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼディスクの存在の有無における時間関数としての500nmでの吸光度のプロットである。
【0022】
発明の詳細な説明
生物活性高分子は、生体細胞内で生物学的な機能性を有する高分子を意味してよい。生物活性高分子は、核酸、消化タンパク質、及び機能酵素を含んでよい。以下に記載されるそのほかの成分も含んでよい。
【0023】
タンパク質は、生化学反応を選択的に触媒することができる生物活性触媒として作用できる。生物学的成分と反応するために様々なタンパク質を利用することができる。タンパク質は、バイオポリマーの分解を促進し、あるいは脂質及び油を加水分解することができる。例えば、ステインは1つの生物学的成分であってよく、そして虫の死骸、動物の糞尿、食品、ミルク及びほかの飲料、化粧品及びパーソナルケア製品、ならびにほかの生物に基づくステインを含んでよい。また、ステイン以外のほかの生物学的成分も生物活性組成物と反応することができる。様々な生物学的成分は、タンパク質、多糖、脂質又は油を含んでよい。
【0024】
上述のとおり、様々な生物学的成分と反応させるために、様々なタンパク質を利用することができる。例えば、消化タンパク質、例えばタンパク質分子を加水分解するプロテアーゼ、脂質及び脂肪を加水分解するリパーゼ、セルロースを加水分解するセルラーゼ、炭水化物を加水分解するアミラーゼ、ならびにほかの消化タンパク質、例えばペルオキシダーゼ、キモトリプシン、スブチリシン、スーパーオキシドジスムターゼ、アスパラギナーゼ、及びコレステロールオキシダーゼは、生物活性組成物の成分となりうる。
【0025】
生物活性コーティングの活性を定量するために、様々な分析アッセイ及び診断技術を利用することができる。組成物中の消化タンパク質の装填は、熱量アッセイ及び質量平衡計算に基づき推定することができる。組成物又はコーティング中の消化タンパク質の様々な分布は、蛍光顕微鏡を使用して検証することができる。生物活性コーティング中の消化タンパク質の熱安定性は、空気加熱オーブン中でコーティングを劣化させ、活性の変化をモニタリングすることにより評価することができる。
【0026】
タンパク質に基づく生物活性組成物は、乾燥又は半乾燥環境下で機能を維持するべきである。一般的なタンパク質に基づく系は、水又はタンパク質と生物学的成分の反応を許容するほかの水性成分を含んでよい。さらに、ほかの観点に従うタンパク質に基づく生物活性組成物は、様々な厳しい条件(harsh condition)において安定であり、そしてその生物活性を維持するべきである。厳しい条件は、上昇温度、酸性条件、機械的なせん断、紫外線放射に対する暴露、ならびにほかの環境条件を含んでよい。タンパク質に基づく生物活性組成物は、このような条件下でも分解せず、かつ生物活性を維持するべきである。
【0027】
ある観点において、生物活性組成物は、固体の多孔性材料、例えばモノマーと架橋剤間の重合を介して形成されるヒドロゲル、において分散されるタンパク質を含んでよい。様々なモノマーを利用することができ、そしてこれは炭化水素、例えばアルケン及びアレン物質を含む。様々なモノマーは、フェニルエテン、エタン、アクリルモノマー、例えばアクリル酸、メタクリル酸メチル、及びアクリルアミド、ならびにほかのモノマー、例えばビニルアルコール及びビニルピロリドンを含む。様々な架橋剤を利用することができ、そしてこれは、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ポリアゾニウム化合物、及びグルタルジアルデヒドを含む。様々な重合開始剤を利用することができ、そしてこれは過硫酸アンモニウム及びテトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を含む。重合反応において、該モノマー及び架橋剤はマトリックス細孔を含むヒドロゲルマトリックスを形成することができる。
【0028】
ある観点において、タンパク質はヒドロゲルマトリックス細孔内に取り込まれ、あるいは位置することができる。該ヒドロゲルマトリックス細孔は、1〜10のタンパク質、よりさらに好ましくは1〜2のタンパク質を受け取ることができる様々なサイズを有することができる。該ヒドロゲルマトリックス中に存在する生物活性高分子の濃度は、様々な応用に従い変更することができる。ある観点において、生物活性高分子、例えばタンパク質は、0.05〜7.0乾燥重量%、好ましくは0.07〜6.0乾燥重量%、そしてさらにより好ましくは0.1〜5.0乾燥重量%のレベルにおいて存在することができる。ヒドロゲルマトリックス細孔は、ヒドロゲルマトリックス中に生物学的成分の分散を許容するようにサイズ化され、これによりこれらの上でタンパク質が作用できる。この場合、タンパク質はヒドロゲルマトリックス細孔内に位置し、そして様々な生物学的成分と反応するための生物学的活性を維持する。ヒドロゲルマトリックスは、タンパク質の分解を防ぎ、タンパク質の半減期を遊離の消化タンパク質の半減期よりも少なくとも1000倍増加させる。
【0029】
図1には、細孔中に位置する少なくとも1つのタンパク質を有する細孔を含むタンパク質−ヒドロゲル構造の略図が示されている。1つの例として、図2に示されるとおり、アクリルアミドとN,N’−メチレンビスアクリルアミドの重合反応は、タンパク質がヒドロゲル構造の細孔内に収容されかつ保護されるようなヒドロゲルマトリックスを形成する。
【0030】
様々な添加物、例えば界面活性剤、様々な架橋性化合物、追加的な生物学的組成物、及び様々なほかの生物学的活性剤、治療薬、ならびにほかの添加剤が、該タンパク質−ヒドロゲル構造中に含まれてよい。さらに、ヒドロゲルは、ヒドロゲル形成モノマー、タンパク質、及び架橋剤、例えばポリアゾニウム化合物及びグルタルジアルデヒド等を含有する溶液で遠心力によりコーティングされた表面上で形成されてよい。様々なポリアゾニウム化合物を利用することができ、これは少なくとも2つの側鎖及び/又は末端ジアゾニウム塩基を有するモノマー性又はポリマー性の有機化合物を含んでよい。様々なポリアゾニウム化合物は、ベンジジン−テトラゾニウム塩、例えば塩化ベンジジンテトラゾニウム−塩化亜鉛複塩、ジエチルベンジジンテトラゾニウム塩、例えば塩化ジエチルベンジジンテトラゾニウム−塩化亜鉛複塩又は硫酸ジエチルベンジジンテトラゾニウム、ジクロロベンジジンテトラゾニウム塩、例えば塩化ジクロロベンジジンテトラゾニウム−塩化亜鉛複塩、n−トリジンテトラゾニウム塩、例えばo−塩化トリジンテトラゾニウム−塩化亜鉛複塩又はo−硫酸トリジンテトラゾニウム、o−ジアニシジン−テトラゾニウム塩、例えばo−塩化ジアニシジンテトラゾニウム−塩化亜鉛複塩を含む。
【0031】
様々な界面活性剤は、液体の表面張力を低下させる界面活性試薬を含んでよい。様々な界面活性剤は、ヒドロゲルの特性及び形態を制御し、そしてタンパク質の活性を亢進するために利用することができる。様々な界面活性剤は、アニオン性界面活性剤としてラウリル硫酸及び硫酸オクチル;カチオン性界面活性剤として塩化セチルピリジニウム及び臭化ドデシルトリメチルアンモニウム;ならびに非イオン性界面活性剤としてプルロニックF−68及びTween20を含む。
【0032】
ある観点において、界面活性剤は、ヒドロゲル形成溶液の水性成分の0.5〜5.0重量%で添加することができる。ヒドロゲル溶液のポリマー成分がポリウレタンである場合、ウレタンプレポリマーを1又は複数の種類のタンパク質、界面活性剤、及び緩衝塩を伴う水と混合することができる。
【0033】
ある観点において、生物活性組成物は、生物活性高分子、例えば凍結乾燥粉末又は水溶液として添加されるタンパク質を含んでよい。ある観点において、生物活性組成物は、少なくとも1つのオキシドレダクターゼ、トランスフェラーゼ、ヒドロラーゼ、リアーゼ、イソメラーゼ、リガーゼ、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、グリコシダーゼ、ヌクレアーゼ、アルドラーゼ、ホスファターゼ、スファターゼ、又はデヒドロゲナーゼを含んでよい。
【0034】
生物活性組成物は、例として、抗体、核酸、脂肪酸、ホルモン、ビタミン、ミネラル、構造タンパク質、酵素、例えばグルコースオキシダーゼ及びアルコホラーゼ、治療薬、例えばヒスタミン遮断薬、及び抗血栓剤、例えばヘパリンを含む少なくとも1つの生化学活性剤を任意に含んでよい。
【0035】
追加的な治療薬は、例として、心臓脈管薬、例えば心臓作用薬及び血管作用薬、血圧上昇薬、血圧降下薬、抗不整脈薬、β−ブロッカー、強心配糖体、合成強心薬、カルシウムアンタゴニスト、循環に影響する薬物、血液利尿薬;神経製剤例えば、神経薬、興奮薬、鎮痛薬、解熱薬、麻酔薬、食欲抑制薬、抗てんかん薬、鎮静薬、局所麻酔薬、パーキンソン病治療薬、統合失調症治療薬、神経遮断薬、骨格筋弛緩薬、鎮痙薬;胃腸薬、例えば、抗潰瘍薬、制吐薬、緩下剤、消化管運動改善薬、モチリン;呼吸器薬、例えば、咳用薬、喘息治療薬、抗アレルギー薬;感染症治療薬例えば、抗生物質、合成化学療法薬、抗真菌薬、駆虫薬、HIV治療薬;内分泌薬、例えばステロイド、ペプチドホルモン、化学避妊薬、甲状腺治療薬、経口抗糖尿病薬;及び種々の薬物、例えば痛風治療薬、免疫治療薬、癌化学療法薬、眼科薬を含む。
【0036】
ある観点において、該タンパク質を含むヒドロゲルは、タンパク質高分子の増大した安定性を供するヒドロゲルタンパク質構造を形成するために、熱処理にかけることができる。上述のとおり、生物活性高分子、例えばタンパク質及び核酸の分解は、これらの構造の変化をもたらす。様々な外部ストレス、例えば酸、塩基、無機塩又は有機溶媒、及び熱は、タンパク質の分解を引き起こしうる。タンパク質の分解は、多くの問題、例えば共同凝集の安定性の喪失、縮合の形成、ならびに3次構造的な完全性の分裂及び生物学的成分の機能の喪失をもたらしうる。
【0037】
上記のヒドロゲルタンパク質組成物は、モノマー架橋及び重合により画定された細孔内に位置する生物活性高分子、例えば消化タンパク質又は核酸を含む。これにより該生物活性分子は上述のとおり細孔内に固定化される。しかしながら、ヒドロゲル組成物の一部は水でありうる。水はヒドロゲル内において、自由にポリマー鎖の格子により画定される細孔内及び細孔間において浮遊するため、生物学的高分子の固定化は、細孔のサイズに対するその分子量、水分含有量、及びヒドロゲル中の水分の流動性に依存しうる。ある観点において、水分含有量又は水分流動性が増大すると、生物学的高分子はヒドロゲルマトリックスポリマーの閉じ込め内の隣接した細孔に対して水とともに移動しうる。このような移動は、高分子の凝集の形成をもたらし、その結果生物学的高分子の不均一な分布を生じうる。さらに、タンパク質が遊離し、かつ結合していない場合、それが部分的に閉じ込められ、又は結合している場合と異なり、タンパク質は3次構造を失い分解される可能性がある。したがって、生物学的高分子の安定性は、ヒドロゲルの水分含有量の操作、例えばヒドロゲル内に存在する遊離水を除去することにより、ヒドロゲルの多孔率の制御を介して改善することができる。
【0038】
さらに、ポリマー物質の多孔率又は凝固を制御するために、ほかの様々な技術、例えば化学組成物の選択、分子量、及び架橋のための様々な基の利用、ならびに様々なポリマーの架橋の程度を利用することもできる。さらに、ほかの様々な要因、例えばポリマー溶液のイオン強度、オスモル濃度及びpH、ならびに様々な粘度改変剤、例えばソルビトール、グリセリン又はスクロール、ならびにほかの物質、例えば脂質又は高度に帯電したポリマーにより、ヒドロゲル細孔内に封入された高分子の表面結合を変化させることができる。ある観点において、固定化された生物学的高分子の機能及び能力を維持し、かつ生物学的高分子の安定性を改善するために、熱前処理手順を利用することができる。
【0039】
ある観点において、熱前処理は、ヒドロゲルから水分を除去するための加熱補助手順を含んでよい。様々な要因、例えば温度の程度、熱処理の時間、ヒドロゲルの出発水分含有量、ならびに標的の生物活性高分子の分子量は、ヒドロゲルマトリックスの安定性に影響を与えるであろう。図3には、細孔内に捕捉されているが、細孔内を転々と移動するためにある程度の自由性を有する高分子の生物剤を有するディスクの形成におけるヒドロゲルの例が示されている。ヒドロゲルマトリックスから水分を除去すると、細孔はより小さな寸法になり、生物学的高分子は、移動性をほとんど又は全く伴わない、よりコンパクトな配置に存在する。これにより、生物学的高分子の構造的分解又は機能的不活性化が減少される。
【0040】
図5A及びBには、図5Aに示される加熱補助水分除去の前、及び図5Bに示される熱前処理後のヒドロゲルを有するヒドロゲルのSEM顕微鏡写真が示されている。これらの図からわかるように、未処理のヒドロゲルは約100〜150nmの細孔サイズを有するのに対して、熱前処理したヒドロゲルマトリックスは、細孔サイズが約30nm以下まで縮小されている。
【0041】
ある観点において、初期のヒドロゲルは、55〜95重量%の水分及び0.01〜5.0重量%の生物活性高分子を有するように供される。熱前処理は、出発水分含有量及び生物活性高分子の特定の種類に依存するヒドロゲル物質上で行うことができる。例えばグルコースオキシダーゼを有するヒドロゲル試料は、20〜110℃で24時間〜7日間前処理することができる。α−キモトリプシンを有するヒドロゲル試料は、20〜55℃で24時間〜7日間前処理することができる。水分がヒドロゲルマトリックスから除去されると細孔サイズが低下し、取り込まれた生物活性高分子はより安定となる。
【0042】
ある観点において、熱前処理は、熱前処理前後の重量変化の割合に関して定義することができる。ヒドロゲルはW1の出発重量を有し、そして熱前処理後にW2の重量となる。加熱工程の長さは、(W1−W2)/W1により表される重量変化の割合が20%以上、好ましくは30%以上、そしてより好ましくは50%以上の値となるように標的とされる。
【0043】
さらに、熱処理前後のヒドロゲル組成物は、熱前処理前のマトリックス細孔の体積V1、及び細孔内に収容され、そして生物活性高分子の3次元サイズにより定義される全体積V2を有する1又は複数の生物活性高分子により定義される。体積V1及び体積V2の差は水分子により得ることができる。水分子は熱前処理中で除去されるため、(V1−V2)/V1の割合は変化する。ある観点において、(V1−V2)/V1の割合は、30%以下、好ましくは20%以下、そしてより好ましくは10%以下である。
【0044】
ほかの観点において、ヒドロゲル組成物は、水分及びヒドロゲルマトリックスの細孔内に配置される複数の生物活性高分子を含んでよい。水分含有量はヒドロゲルマトリックスの10重量%以下、好ましくはヒドロゲルマトリックスの5重量%以下である。
【0045】
ほかの観点において、熱前処理は、あらかじめ熱前処理されているが、水溶液中の湿潤適用(wet application)に暴露されているヒドロゲル上で利用される。再生熱前処理は、初期正味重量W1、上述の熱前処理後の初期乾燥重量W2、及び水分適用後の正味重量W3、ならびに熱前処理のほかの適用後の再生された乾燥重量W4を有する第1のヒドロゲル試料に関して定義することができる。(W1−W4)/W1の重量変化割合は、(W1−W2)/W1の重量変化割合の少なくとも70%であり、これによりヒドロゲルは修復される。
【0046】
ヒドロゲルマトリックス及び生物学的高分子の組成物は、ヒドロゲルマトリックス内に存在しない天然のもの又は熱処理されていないヒドロゲル内の高分子に対する高分子の半減期に関して説明することもできる。生物学的高分子の半減期は、熱不活性化の反応速度論を適用することにより計算することができ、そして初期の値の半分に崩壊するための高分子の生物学的活性についての時間として定義される。高分子の半減期に関する計算は例4に供する。実施例においてより詳細に議論されるとおり、外部ストレス、例えば上昇温度に暴露した様々な生物学的高分子の半減期は、上昇温度、例えば80℃に暴露すると急速に分解される保護されていない高分子と比較して改善された半減期を示す。さらに、実施例に記載されるとおり、生物学的高分子のヒドロゲルによる固定化とあわせた熱前処理は、保護されていない生物学的高分子と比較して、高分子の半減期の増加をもたらすことができる。
【実施例】
【0047】
例1−ポリアクリルアミドヒドロゲルへのグルコースオキシダーゼ(GOx)の捕捉
代表的なタンパク質である、グルコースオキシダーゼ(GOx、5mg)を2mlの0.1M、pH7.0のリン酸ナトリウム緩衝液に溶かし、その後1.2mlの脱イオン水、100μlの過硫酸アンモニウム(DI水中10%w/v)及び6.8mlの30%アクリルアミド/ビス溶液(Bio-Rad Laboratoriesから購入)と混合する。ヒドロゲル重合は、4μlのNNN’N’−テトラメチルエチレンジアミン(TEMED)を室温で添加することにより開始する。ピペットを用いてヒドロゲル溶液を注意深くガラスエンクロージャー(8.3×7×0.075cm3)に添加し、そして少なくとも4時間保持し、重合を完了させる。タンパク質含有ヒドロゲルを、16.2mmの直径を有する小ディスクに押し出し、これをさらに使用するためにリンスし、そして乾燥させる。
【0048】
例2−天然及びヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ(GOx)についての活性アッセイ
室温における2共益反応を使用することにより、天然又はヒドロゲル捕捉GOxの活性を測定した:
【化1】

【0049】
GOxは、β−D−グルコースの酸化を触媒し、グルコノラクトン及びH22を産生する。H22は、o−ジアニシジン(還元体)とさらに反応し、そして500nmの波長における分光光度計でモニターされる生成物(酸化o−ジアニシジン)を放出する。ペルオキシダーゼの存在における、還元o−ジアニシジンは、酸化状態に変換し、Cary50分光計により500nmで測定される色を産生する。
【0050】
天然のGOxを測定するために、反応混合物(1.1ml)は、50mMのpH5.1の酢酸ナトリウム緩衝液中に0.1モルのグルコース、7μgの西洋ワサビペルオキシダーゼ、0.17mMのO−ジアニシジン、及び35μlの酵素(0.4〜0.8ユニット/ml)を含有する。一方、ヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼの活性を測定するために、乾燥したヒドロゲルディスクを脱イオン水に少なくとも2時間浸し、活性試験前に完全に膨張した状態に達成させる。各々のヒドロゲルディスクを、0.14mgの西洋ワサビペルオキシダーゼ及び1.1mgのO−ジアニシジンを含有する20.7mlの0.1M グルコース溶液中に加える。ヒドロゲル捕捉GOxとの反応は、20mlバイアル中で行う。各々1mlのアリコットを定期的に採取し、そして500nmにおけるUV吸光度を使用して生成物の濃度を測定した後すぐに再度混ぜる。
【0051】
式:An/Am(式中、Amは最初の時点における活性を表し、Anは2番目又はその後の時点における活性を表す)により計算される、残留活性の読取に基づき比較を行う。
【0052】
例3−ポリアクリルアミドヒドロゲル中に捕捉されたグルコースオキシダーゼ(GOx)で観察された増大した熱安定性
遊離GOxと比較して、捕捉されたGOxの場合には増大した熱安定性が観察される。熱安定性の分析は温度調節オーブン中で行う。ヒドロゲル−タンパク質ディスクを80℃で様々な時間インキュベートし、そしてこれらの残留活性を例5に記載されるプロトコルに従い測定する。天然の乾燥タンパク質の安定性もまた対照として試験する。
【0053】
例4−遊離非結合性高分子及びヒドロゲルマトリックスを介して捕捉された高分子の半減期の計算
【0054】
半減期t1/2は、熱不活性化の反応速度論を適用することにより実験データから計算され、そしてこれは初期値の半分に減少するための生物活性高分子の活性についての時間として定義される。
【0055】
遊離非結合性高分子及び事前に高分子に対しては、異なる公式及びシミュレーション法が適用される。天然酵素の熱不活性化は、古典的な一次失活メカニズムに従うものと仮定される。
【化2】

ここで、Eは活性酵素状態であり、Edは全体的な不活性化酵素を表し、そしてkdは1次不活性化速度定数である。酵素活性についての式は、分析的に導かれ、そして速度論的なパラメーターについて解かれる。したがって、時間に依存した活性の喪失は以下のとおり表される。
【化3】

ここで、Atは時間=tにおける残留活性であり、そしてA0は時間=0における初期活性である。これに伴うAt及びA0は実験における測定可能な成分である。ここで、kdの刺激された値を得るために最小二乗法を使用した。したがって、天然酵素についての半減期t1/2は以下の等式により定義され、そして計算される。
【化4】

ヒドロゲル捕捉酵素は、非1次失活メカニズムにしたがい、ヒドロゲルに補助された捕捉の影響が考慮される。低下した活性α1を伴う中間体酵素状態E1、及び低下した活性α1を伴う酵素の失活形態(E2)の存在を仮定し、k1及びk2は異なる工程の速度定数である:
【化5】

したがって、上記等式は以下の式に変形される:
【化6】

【0056】
上記等式にA及びA0の実験値を代入し、関連パラメーター値、α1、α2、k1及びk2を得るための非線形等式行列を解くために、コンピューターソフトフェアMatlabプログラムを使用する。したがって、A/A0が0.5となるときに、半減期がシミュレートされ、そして得られる。
【0057】
図6には、ヒドロゲルに捕捉されたGOxタンパク質のプロットが示される。蛍光顕微鏡を使用して、ヒドロゲルに捕捉されたGOxが凝集を示さず、改善された分散が示された。図に示されるとおり、ヒドロゲル捕捉GOxの熱安定性は驚くほど高い。この試験において、80℃で3000時間後に約20%以下の活性の低下が観察されている。試験結果の推定に基づき、該半減期はおよそ500日であると推定される。該半減期は、遊離消化タンパク質が1時間未満の半減期であるのと比較して、有意に増加している。この増加は遊離消化タンパク質の約12,000倍である。
【0058】
例5−ポリアクリルアミドヒドロゲル中のα−キモトリプシン(α−CT)の捕捉
ポリアクリルアミドヒドロゲル中のα−CTの捕捉は、以下の手順により行われる:0.5〜10mgのα−CTを0.42mlの0.01MのpH7.5の酢酸ナトリウム緩衝液に添加し、その後該緩衝液混合物を9.33mlの30%アクリルアミド/ビス溶液及び0.25mlのDI H2Oと混合し、全モノマー濃度がT=28%及び架橋剤濃度がC=5%である10mlの溶液を作成する。重合は、100μlの新しく調製した過硫酸アンモニウム(脱イオン水中10%w/v)及び4μlのTEMEDを室温で添加することにより、ガラスエンクロージャー(8.3×7×0.075cm3)中で開始する。ヒドロゲル中に酵素を捕捉するための完全なゲル化に少なくとも4時間は必要とする。ガラスエンクロージャーから生じたヒドロゲルプレートを、さらなる試験のために16mmの直径を伴う小ディスクに押し出した。
【0059】
例6−天然及びヒドロゲル捕捉α−キモトリプシン(α−CT)についての活性アッセイ
天然酵素のために、50μlの酵素溶液(1mg/ml)を2.44mlの酢酸ナトリウム緩衝液及び13μlの160mM SAAPPN(N−スクシニル−Ala−Ala−Pro−Phe−p−ニトロアニリド)原液をキュベット中で混合する。反応活性は、410nmの吸光度をモニタリングすることにより測定する。
【0060】
ヒドロゲル捕捉α−CTのために、乾燥したゲルディスクを脱イオン水に少なくとも2時間浸し、活性試験前に完全に膨張した状態に達成させる。20mlの各々の反応バイアルは、5mMの酢酸カルシウムを伴う4.975ml、pH7.5、10mMの酢酸ナトリウム緩衝液、及び25μl、160mMのSAAPPN原液を含有する。反応は、200rpmで攪拌しながらヒドロゲル捕捉酵素を添加することにより開始する。各々1mlのアリコットを定期的に採取し、そして410nmにおけるUV吸光度を使用して生成物の濃度を測定した後すぐに再度組み合わせる。
【0061】
例7−ヒドロゲル捕捉消化タンパク質に関する非漏出実験
例4及び6に記載される活性試験において、冠水したヒドロゲルディスクを数分間反応混合物から取り出し、その後各々の反応バイアル中に再び浸す。この工程は、活性アッセイを行う間、何回か繰り返すことができる。ヒドロゲルディスクの取り出し(withdrawal)直後の反応混合物の吸光度は、ヒドロゲル捕捉GOxについて500nmにおけるUV−Vにより測定され、そしてヒドロゲル捕捉α−CTについて410nmにおけるUV−Vにより測定される。図11からわかるように、それぞれの取り出し後において吸光度の有意な増加は何ら観察されなかった。この観察は、活性アッセイにおいてディスクから反応溶液への明らかなタンパク質の漏出が存在しないことを示す。
【0062】
例8−ヒドロゲル捕捉生物活性高分子の熱前処理
例1及び5に示されるとおり、ヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ(GOx)及びα−キモトリプシンを調製した。治験比較目的のために、生じたヒドロゲルディスクを以下に示す処理にかけた。
【0063】
特定の温度下におけるオーブン中のインキュベーション − ヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼのために、有効な前処理温度は、具体的には20℃〜80℃の間である。新しいヒドロゲルディスクをペトリ皿に置き、そしてオーブン中80℃で24時間インキュベートした。その後生じた乾燥ヒドロゲルディスクをさらなる試験のために移した。図4に示されるとおり、84重量%の水分及び0.2乾燥重量%の捕捉されたグルコースオキシダーゼを含有するアクリルアミドヒドロゲルマトリックスを、グラフ中に示される期間にわたり80℃のオーブン中で本発明の熱前処理にかける。体積縮小比は、あらかじめ熱前処理した再湿潤化ヒドロゲルマトリックスにおける重量変化の割合として定義する。各々のデータ点は4回の再現の平均を表す。図4に示されるとおり、水分の除去は、最初の30分で急速に生じ、そしてその後有意に衰える。この観察は、ヒドロゲルマトリックス中に過熱により急速に揮発する多量の遊離水が存在するという理解に一致する。最初の30分後の延長した熱処理は、ヒドロゲルポリマー内に留まっていた残留水分子を除去する。
【0064】
ヒドロゲル捕捉α−キモトリプシンのために、有効なオーブン温度は20℃〜55℃の範囲である。新しいヒドロゲルディスクをオーブン中55℃で24時間インキュベートし、そして生じた乾燥ヒドロゲルディスクをさらなる試験のために移した。
【0065】
図6は、80℃のオーブン中で延長期間熱前処理したヒドロゲル−捕捉グルコースオキシダーゼの相対活性のプロットである。熱前処理グルコースオキシダーゼ分子の推測される半減期は、遊離の結合していない天然のグルコースオキシダーゼが分単位であるのと比較して、500日以上である。
【0066】
図8は、80℃のオーブン中で延長期間熱前処理したヒドロゲル−捕捉α−キモトリプシンの相対活性のプロットである。熱前処理α−キモトリプシン分子の推測される半減期は、遊離の結合していない天然のα−キモトリプシンが125時間であるのと比較して、約700日である。
【0067】
図9は、110℃のオーブン中で延長期間熱前処理したヒドロゲル−捕捉α−キモトリプシンの相対活性のプロットである。熱前処理α−キモトリプシン分子の推測される半減期は、遊離の結合していない天然のα−キモトリプシンが約1日であるのと比較して、約1年である。
【0068】
例9−組み合わせた厳しい条件下における熱前処理ヒドロゲル捕捉グルコースオキシダーゼ(GOx)の安定性
例1に示されるとおり、生物活性高分子、例えばGOxを含有するヒドロゲルディスクを調製し、そして例3に示されるとおり熱処理した。高温度及び極性溶媒の組み合わせを含む厳しい条件下において安定性を調査した。具体的には、前処理したヒドロゲルディスクを10mlの純粋なエタノール中でインキュベートする。エタノール中に最大1時間浸漬させ、その後これらのディスクを75℃の温度のオーブンに置いた。ディスクは、活性測定のためにオーブン内から定期的に移動させた。
【0069】
図10に示されるとおり、75℃の乾燥加熱及びエタノールの存在を組み合わせた厳しい条件は、分単位で分解し、そして即座に不活性化する天然のGOxと比較して、前加熱したGOxにおいては、調査した1200時間にわたり何ら有意な影響を与えなかった。該図中の熱前処理GOxのデータは、この組み合わせた厳しい条件下において約4,500時間の半減期を示すことが推定される。
【0070】
例10−UV光下におけるヒドロゲル捕捉GOxの安定性
例1に示されるとおり、生物活性高分子、例えばGOxを含有するヒドロゲルディスクを調製し、そして例3に示されるとおり熱処理した。前処理後、ヒドロゲル捕捉GOxの安定性をUV光下において調査した。具体的には、前処理したヒドロゲルディスクを、365nmの長波長ランプ(8 watts, UVL-18, UVP, Upland, California, USA)で12時間照射した。UV照射後、残留活性を測定するための活性アッセイのために、該ヒドロゲルディスクを移した。熱前処理ヒドロゲル捕捉GOxについて、UV照射の前後に明らかな活性の喪失は見られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性組成物であって:
多孔性ヒドロゲルマトリックス;
該多孔性ヒドロゲルマトリックス中に固定された少なくとも1つのタンパク質、
を含んで成り、該タンパク質が、対応する遊離の消化タンパク質の半減期よりも少なくとも1000倍長い半減期を有することを特徴とする、生物活性組成物。
【請求項2】
前記タンパク質が、最大110℃の温度に対する暴露後に生物学的活性を維持する、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項3】
前記タンパク質が、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ペルオキシダーゼ、チロシナーゼ、グリコシダーゼ、ヌクレアーゼ、アルドラーゼ、ホスファターゼ、スファターゼ、デヒドロゲナーゼ、及びリゾチーム、ならびにこれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項4】
抗体、核酸、脂肪酸、ホルモン、ビタミン、ミネラル、構造タンパク質、酵素、ならびにヒスタミン遮断薬及びヘパリンを含む治療剤から成る群から選択される生物活性剤をさらに含む、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項5】
前記ヒドロゲルマトリックスの細孔が体積V1を定義し、そして少なくとも1つのタンパク質が該タンパク質の集合的な3次元サイズにより定義される全体積V2を有し、ここで(V1−V2)/V1の割合が20%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つのタンパク質が、約110℃の温度における乾燥加熱に暴露した場合に300日以上の半減期を有する、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項7】
前記ヒドロゲルマトリックスが、該ヒドロゲルマトリックスの10重量%以下の水分含有量を含み、そしてここで前記消化タンパク質が該ヒドロゲルマトリックスの0.2〜5.0乾燥重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の生物活性組成物。
【請求項8】
生物活性組成物を安定化するための方法であって:
タンパク質分子の周りにヒドロゲルの細孔を形成する工程;及び
該ヒドロゲルマトリックスの細孔内の水分含有量を低下させ、その一方でタンパク質分子の生物活性を保持する工程、
を含んでなる方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルマトリックスが、初期水分含有量W1を有し、そして該ヒドロゲルマトリックスを熱前処理にかけ、改変した水分含有量W2を有する改変したヒドロゲルマトリックスを形成する工程を含み、ここで(W1−W2)/W1が30%以上であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記(W1−W2)/W1が50%以上である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記熱前処理が、ヒドロゲルマトリックスを20〜110℃の温度で24時間〜7日間加熱する工程を含んでなる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
生物活性組成物であって:
体積V1を定義するヒドロゲルマトリックスの細孔;
該ヒドロゲルマトリックスの細孔中に固定化される少なくとも1つのタンパク質を含んでなり、ここで該タンパク質が該タンパク質の集合的な3次元サイズにより定義される全体積V2を有し、ここで(V1−V2)/V1の割合が20%以下であることを特徴とする、生物活性組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2010−526540(P2010−526540A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507718(P2010−507718)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/063378
【国際公開番号】WO2008/141263
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(305023366)リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ (39)
【Fターム(参考)】