説明

耐熱性複合型レンズ

【課題】ハンダリフロー工程等に耐え得るカメラモジュール用レンズとして適用可能な耐熱性複合型レンズを提供する。
【解決手段】レンズ基材に樹脂層を接合してなり、少なくとも樹脂層が、[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l(R1及びR2はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であり、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造及び−OCOO−結合の1つもしくは複数含む構造であり、n、m及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数、m及びlは1以上、m+lは2〜2000である)で表され、Mw=5000〜1000000であり、不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種以上の反応性官能基を1分子中に2以上有するシリコーン樹脂を硬化させてなる耐熱性複合型レンズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ基材に樹脂層を接合してなる複合型レンズに関し、例えば携帯電話、デジタルカメラ等に搭載されているレンズ付きCCD(Charge Coupled Device)やレンズ付きCMOS(相補性金属酸化膜半導体)センサーなどのような、半導体とレンズとを一体化したカメラモジュールのレンズ等として好適に使用される耐熱性複合型レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラモジュール用レンズとしては低価格化の目的でプラスチック製レンズが使用されるようになってきている。プラスチック製レンズは、ポリカーボネート樹脂、メタクリル樹脂、脂環式オレフィンポリマー等のような透明樹脂を射出成形することなどにより凸レンズや凹レンズを得ている。
【0003】
近年、電子部品の実装コスト低減の目的でカメラモジュールを他の電子部品と同様にハンダリフローにて一括実装する方法が提案されており、リフロー炉の熱(260℃)に耐えうる必要がある。しかしながら、現状のプラスチック製レンズは耐熱温度が180℃以下であるため、リフロー炉に通すことができない。
【0004】
この課題を解決する手段として、例えば特開2004-133328(特許文献1)に記載されているように、リフロー温度に耐えうる熱又は光硬化性樹脂が候補材料として考えられる。ところが、一般に硬化性樹脂は反応時に生じる硬化収縮により成形過程での成型割れが生じ易く、加えて成型物の金型転写性を安定して確保することが難しいという問題がある。
【0005】
また、例えば特開平2005-60657(特許文献2)に記載されているように、ガラスレンズを母材としてその表面に熱又は光硬化性樹脂を成膜した複合型レンズの適用が考えられる。複合型レンズは成型機を必要とせず、樹脂の使用量が少ないため硬化収縮の光学特性への影響が少ない。
【0006】
しかしながら、上記のような従来の複合型レンズでは、ガラスと樹脂との線膨張係数の差などに起因して、特に湿熱環境下においてガラス−樹脂界面での密着性が低下し易く、耐久性の面から不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004-133328公報
【特許文献2】特開2005-60657公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、例えばハンダリフロー工程に耐え得るような、カメラモジュール用レンズとして適用可能な耐熱性複合型レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、従来のプラスチック製レンズや複合型レンズの問題点を解消させるべく鋭意検討した結果、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂からなる硬化樹脂を少なくとも樹脂層に適用し、更にレンズ基材にこの樹脂層を接合することで、安価でかつハンダリフロー工程に供することが可能な耐熱性複合型レンズが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、レンズ基材に樹脂層を接合してなる複合型レンズであって、レンズ基材および樹脂層が、それぞれ硬化樹脂からなり、少なくとも樹脂層が、下記一般式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(但し、R1及びR2は、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよく、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造及び−OCOO−結合の1つもしくは複数含む構造であり、n、m及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m及びlは1以上であり、m+lは2〜2,000である。)で表されて、重量平均分子量がMw=5,000〜1,000,000であり、不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を1分子中に少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を硬化させてなることを特徴とする耐熱性複合型レンズである。
【0011】
また、本発明における好ましい態様は、更に上記レンズ基材が、一般式(1)で表されるシリコーン樹脂を硬化させてなる耐熱性複合型レンズである。
【0012】
本発明においては、上記シリコーン樹脂に対して、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和基を有する化合物及び/又はヒドロシリル基を有する化合物を配合し、さらにラジカル開始剤及び/又はヒドロシリル化触媒を配合して硬化性樹脂組成物を得た後、この硬化性樹脂組成物を熱硬化又は光硬化させて硬化樹脂を得るようにしてもよい。
【0013】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明におけるレンズ基材及び樹脂層はそれぞれ硬化樹脂からなり、このうち少なくとも樹脂層は以下で具体的に説明するようなシリコーン樹脂を硬化させたものからなる。すなわち、本発明に用いられるシリコーン樹脂は、上記一般式(1)で表されて、構造単位中に籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサン(以下、「籠型ポリオルガノシルセスキオキサン」ともいう)を主成分とする。ここで、構造単位は、具体的には一般式(1)においてmで表される繰返し単位を意味し、構造単位中に籠型構造を有するとは、m及びnが1以上であることを意味する。また、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンは、下記で説明するように、三次元多面体構造骨格とR1、R2により構成されるが、このうち三次元多面体構造骨格の一部が開環したもの(すなわち不完全な籠型構造)も含むものとする。
【0014】
ここで、一般式(1)中のR1及びR2は、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよいが、R1又はR2の少なくとも1つは不飽和基であることが必要である。これらの不飽和基の具体例を示せば、例えば3-メタアクリロキシプロピル基、3-アクリロキシプロピル基等の(メタ)アクリロイル基のほか、アリール基、ビニル基、アリル基、及びスチリル基等の不飽和二重結合を有するものなどが挙げられる。
【0015】
本発明において少なくとも樹脂層を形成するシリコーン樹脂は、籠型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主成分とするが、少量であれば、一般式(1)のシリコーン樹脂を製造する際に副生される、籠構造を含まないポリオルガノシルセスキオキサンを含んでいてもよい。ただし、その割合は、樹脂層を形成するシリコーン樹脂中で30wt%未満であることが望ましい。
【0016】
本発明では、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(但し、R1及びR2は、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよく、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造及び−OCOO−結合の1つもしくは複数含む構造であり、n、m、lはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m及びlは1以上であり、m+lは2〜2,000である。)で表されて、重量平均分子量Mw=5,000〜1,000,000であり、1分子中に少なくとも2つは不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を有する有機−無機複合体を、複合型レンズを形成する樹脂層に用いるようにし、好ましくは樹脂層とレンズ基材の両方に用いるようにする。
【0017】
上記式(1)で表される有機−無機複合体を得るための好ましい方法としては、下記式(2)
(R1SiO3/2)n(HO2/2)k (2)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、n及びkは平均値であり、nは6〜14の数、kは1〜4の数を示す。)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンと、下記式(3)
HO−X−OH (3)
(但し、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造及び−OCOO−結合の1つもしくは複数含む構造である。)で表される有機ジオール化合物とに対し、下記式(4)
【化1】

(但し、R2は水素原子、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよい。)で表されるジクロロシランをシラノール基含有籠型シロキサン及び有機ジオールの合計モルに対して0.5〜5倍モル、好ましくは0.5〜3.0倍モルの範囲で添加して脱塩酸縮合させて、式(1)で表される有機−無機複合体とすることができる。なお、一般式(2)又は(4)におけるR1とR2のいずれかに不飽和基が含まれ、式(1)で表される有機−無機複合体1分子中にすくなくとも不飽和基を2以上含むようにしておく必要がある。
【0018】
上記式(2)のシラノール基含有籠型シロキサンと上記式(3)の有機ジオール化合物とを、上記式(4)のジクロロシランを用いて脱塩酸により共重合する具体的な反応条件について、好ましくは塩基性条件下で行うようにするのがよい。例えば、シラノール基含有籠型シロキサンと有機ジオール化合物とを溶媒兼塩基としてピリジン、又はテトラヒドロフランとトリエチルアミンの混合液に溶解し、ジクロロシランをピリジンに溶解した溶液を窒素等の不活性ガス雰囲気下、室温で滴下し、その後、室温で2時間以上撹拌を行うようにするのがよい。この際、反応時間が短いと反応が完結しない。反応終了後、トルエンと水を加え、式(1)で表される有機−無機複合体をトルエンに溶解し、副成する塩酸及び塩酸塩を水層に溶解し除去するようにする。また、有機層を硫酸マグネシウム等の乾燥剤を用いて乾燥し、使用した塩基及び溶媒を減圧濃縮によって除去するようにする。
【0019】
下記式(2)
(R1SiO3/2)n(HO2/2)k (2)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって互いに同じか異なるものであってもよく、n及びkは平均値であり、nは6〜14の数、kは1〜4の数を示す。)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンを得る好ましい手段については、下記式(5)
1SiY3 (5)
(但し、R1はビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、Yはアルコキシ基、ハロゲン原子及びヒドロキシル基からなる群から選ばれた加水分解性基を示す。)で表されるケイ素化合物を、単独又は複数用いて、塩基性触媒をR1SiY3:塩基性触媒=3〜7モル:1モルとなる範囲の塩基性触媒存在下、極性溶媒又は非極性溶媒あるいはこれらの混合溶媒中で加水分解すると共に加水分解物を縮合反応させ、更に、シロキサン結合の形成(シラノール基の縮合)と開裂を繰り返す過程(平衡)で、塩基性触媒由来のカウンターカチオンを開裂部と結合せしめた後、酸で処理し、開裂部を水酸基に変換して得ることができる。この際、使用する塩基性触媒が上記範囲より少ないとシラノール基の縮合が優先され、シラノール基が減少する。反対に上記範囲より多いと、シロキサン結合の開裂が優先されて、過剰のシラノール基が増加する。これらのことから塩基性触媒の量が上記範囲から外れた場合、次工程の有機化合物とのジクロロシランの脱塩酸反応を用いての縮合反応で、反応不足やゲル化の原因となる。
【0020】
上記式(2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンを得る際に用いる溶媒については、非極性溶媒と極性溶媒のうち1つもしくは両方を合わせた溶媒である。このうち、非極性溶媒については、ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒が例示される。極性溶媒については、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒が例示される。これらの中でも、反応速度制御の観点から2−プロパノールとトルエンの2相系が好ましい。2−プロパノール/トルエンの体積比は1/2であるのが好ましい。これらの有機溶媒の好ましい使用量は、式(5)のケイ素化合物に対するモル濃度(モル/リットル:M)が0.01〜10Mの範囲であるのがよく、より好ましくは0.01〜1Mであるのがよい。
【0021】
上記式(2)のシラノール基含有籠型シロキサンを合成する際の反応条件について、反応温度は0〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。反応温度が0℃より低いと、反応速度が遅くなり未反応の加水分解性基及びシラノール基が多く残存する結果となる。反対に60℃より高いと、反応速度が速すぎるために複雑な縮合反応が進行し、結果として高分子量化が促進される。また、反応時間は上記式(5)で表される構造のR1によっても異なるが、通常は数分〜数時間であり、好ましくは1〜3時間であるのがよい。
【0022】
式(2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサン化合物の具体例を、下記構造式(6)〜(12)にそれぞれ示す。構造式(6)はn=6,k=2、(7)はn=7,k=3、(8)−1及び(8)−2はn=8,k=2、(9)はn=9,k=1、(10)はn=10,k=2、(11)はn=12,k=2、(12)はn=14,k=2である。但し、式(2)で表される構造単位は、構造式(6)〜(12)に示すものに限らない。また、構造式(6)〜(12)において、R1は式(5)と同じである。
【化2】

【化3】

【0023】
上記式(5)で表されるケイ素化合物としては、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリエトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、メタクリロキシメチルトリメトキシシラン、メタクリロキシメチルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロへキシルエチル)トリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、p−スチリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等が例示される。中でも原料の入手が容易である、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0024】
上記式(5)の加水分解及び縮合反応に用いられる塩基性触媒としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物、或いはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリエチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が例示される。これらの中でも、触媒活性の高い点からテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましく用いられる。
【0025】
上記式(2)で表されるシラノール基含有籠型シロキサンを得る反応の終了後は、反応溶液を弱酸性溶液で中和する。中性もしくは酸性よりにした後、水または水含有反応溶媒を分離する。その後、有機層を水又は飽和食塩水で十分に洗浄する。その後、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥する。乾燥剤をろ別除去した後、減圧濃縮することで、反応生成物(シラノール基含有籠型シロキサン)を回収できる。減圧濃縮は40℃以下で行う。40℃を超えると反応で生じたシラノール基が縮合し、高分子量化及びゲル化や、次の反応が進行しなくなるという問題が生じる。弱酸性溶液としては硫酸希釈溶液、塩酸希釈溶液、クエン酸希釈溶液、酢酸、塩化アンモニウム水溶液、リンゴ酸溶液、シュウ酸溶液などが例示される。
【0026】
次いで、上記で得られた式(2)シラノール基含有籠型シロキサンと式(3)の有機ジオール化合物とを、式(4)のジクロロシランを用いて共重合することにより籠型シロキサンと有機成分とからなる有機−無機複合体を得ることができる。
【0027】
ここで、式(3)で表される有機ジオール化合物としては、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、下記式(13)〜(20)、
【化4】

(但し、上記式(20)のR3は炭素数5〜10の脂肪族炭化水素及び/又は脂環式炭化水素であり、Mw=500〜2,000である。)等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0028】
式(4)で表されるジクロロシラン化合物としては、アリルジクロロシラン、アリルへキシルジクロロシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルフェニルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジビニルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、メチルプロピルジクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、ブチルメチルジクロロシラン、フェニルジクロロシラン、ジアリルジクロロシラン、メチルペンチルジクロロシラン、メチルフェニルジクロロシラン、シクロへキシルメチルジクロロシラン、ヘキシルメチルジクロロシラン、フェニルビニルジクロロシラン、6−メチルジクロロシリル−2−ノルボルネン、2−メチルジクロロシリルノルボルネン、3−メタクリロキシプロピルジクロロメチルシラン、ヘプチルメチルシラン、ジブチルジクロロシラン、メチル−β−フェネチルジクロロシラン、メチルオクチルジクロロシラン、t−ブチルフェニルジクロロシラン、デシルメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジへキシルジクロロシラン、ドデシルメチルジクロロシラン、メチルオクタデシルジクロロシラン等を例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。またこれらを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
また、本発明においては、樹脂層、又は樹脂層とレンズ基材の両方を形成する硬化樹脂を得る際、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂に対して、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、又は分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物のいずれか一方を配合して硬化性樹脂組成物としてもよく、これら両方を配合して硬化性樹脂組成物としてもよい。そして、このような硬化性樹脂組成物を熱硬化又は光硬化させてレンズ基材又は樹脂層のいずれか一方又は両方を得るようにしてもよい。ここで、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を配合する場合には、硬化性樹脂組成物中にラジカル開始剤を含めるようにするのがよく、分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物を配合する場合には、硬化性樹脂組成物中にヒドロシリル化触媒を含めるようにするのがよい。
【0030】
上記分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物については、一般式(1)のシリコーン樹脂とラジカル共重合が可能な不飽和化合物であればよいが、上記シリコーン樹脂に配合するのに適したものとしては、その構造単位の繰り返し数が2〜20程度の重合体である反応性オリゴマーと、低分子量かつ低粘度の反応性モノマーとに大別される。また、不飽和基を1個有する単官能不飽和化合物と2個以上有する多官能不飽和化合物とにも大別できる。良好な3次元架橋体を得るためには、多官能不飽和化合物を極少量(1%以下程度)含むことがよいが、共重合体の耐熱性、強度等を期待する場合には一般式(1)のシリコーン樹脂1分子当たり平均1.1個以上、好ましくは1.5個以上、より好ましくは1.6〜5個とすることがよい。このためには、単官能不飽和化合物と不飽和基を2〜5個有する多官能不飽和化合物とを混合使用して、平均の官能基数を調整するのがよい。
【0031】
具体的には、反応性オリゴマーとして、例えばエポキシアクリレート、エポキシ化油アクリレート、ウレタンアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ビニルアクリレート、ポリエン/チオール、シリコーンアクリレート、ポリブタジエン、ポリスチリルエチルメタクリレート等を例示することができる。これらには、単官能不飽和化合物と多官能不飽和化合物があり、反応性の単官能モノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、N−ビニルピロリドン、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、n−デシルアクリレート、イソボニルアクリレート、ジシクロペンテニロキシエチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート等を例示することができる。また、反応性の多官能モノマーとしては、一般式(2)以外の不飽和化合物であるトリプロピレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等を例示することができる。
【0032】
また、本発明において硬化性樹脂組成物を得る際に使用することができる、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、上記で例示したもの以外に、各種反応性オリゴマー又はモノマーを用いることができる。また、これらの反応性オリゴマーやモノマーは、それぞれ単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。これらをラジカル共重合することにより、同様に、シリコーン樹脂共重合体を得ることができる。
【0033】
分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物と共に配合されるラジカル開始剤としては、光重合開始剤又は熱重合開始剤を用いるようにすればよい。ここで、光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系、アシルホスフィンオキサイド系等の化合物を好適に使用することができる。具体的には、トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-フェニル-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、カンファーキノン、ベンジル、アンスラキノン、ミヒラーケトン等を例示することができる。また、光重合開始剤と組み合わせて効果を発揮する光開始助剤や鋭感剤を併用することもできる。これら光重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0034】
また、上記目的で使用される熱重合開始剤としては、ケトンパーオキサイド系、パーオキシケタール系、ハイドロパーオキサイド系、ジアルキルパーオキサイド系、ジアシルパーオキサイド系、パーオキシジカーボネート系、パーオキシエステル系など各種の有機過酸化物を好適に使用することができる。具体的にはシクロヘキサノンパーオキサイド、1,1-ビス(t-ヘキサパーオキシ)シクロヘキシサノン、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキサイド、t-ブチルパオキシー2-エチルヘキサノエート等を例示する事ができるが、これに何ら制限されるものではない。また、これら熱重合開始剤は単独で使用しても、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0035】
ラジカル開始剤として光重合開始剤又は熱重合開始剤を配合する場合、その添加量は硬化性樹脂組成物100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲とするのがよく、0.1〜3重量部の範囲とするのがより好ましい。この添加量が0.1重量部に満たないと硬化が不十分となり、得られるレンズの強度や剛性が低くなる。一方、5重量部を超えるとレンズの着色等の問題が生じるおそれがある。
【0036】
一方、上記分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物について、好ましくは、分子中に少なくとも1つ以上のヒドロシリル化可能な水素原子をケイ素原子上に有しているオリゴマー及びモノマーであるのがよい。ケイ素原子上に水素原子を有しているオリゴマーとしては、ポリハイドロジェンシロキサン類、ポリジメチルヒロドシロキシシロキサン類及びその共重合体、末端がジメチルヒドロシロキシで修飾されたシロキサン等が挙げられる。また、ケイ素原子上に水素原子を有しているモノマーとしては、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ペンタメチルシクロペンタ等の環状シロキサン類、ジヒドロジシロキサン類、トリヒドロモノシラン類、ジヒドロモノシラン類、モノヒドロモノシラン類、ジメチルシロキシシロキサン類等を例示することができる。これらについては2種類以上混合してもよい。
【0037】
分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物と共に配合されるヒドロシリル化触媒については、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトンとの錯体、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金とビニルシロキサンとの錯体、ジカルボニルジクロロ白金及びパラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒が挙げられる。これらの中で、触媒活性の点から、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、及び白金とビニルシロキサンとの錯体から選ばれたものが好ましい。また、これらを単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0038】
上記ヒドロシリル化触媒を配合する場合、その添加量は、硬化性樹脂組成物の重量に対し、金属原子として1〜1000ppm、より好ましくは20〜500ppmの範囲で添加するのがよい。また、ヒドロシリル化触媒を単独で使用してもよく、先に説明したラジカル開始剤と組み合わせて2種類以上併用して用いることもできる。
【0039】
上述したように、本発明において、上記シリコーン樹脂を含んだ硬化性樹脂組成物を得る際には、シリコーン樹脂を硬化させて樹脂層又は樹脂層とレンズ基材の両方を形成して複合型レンズを得る目的や、複合型レンズの物性を改良する目的から、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物、ラジカル開始剤、ヒドロシリル化触媒等を適宜選択して配合すればよい。すなわち、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物やヒドロシリル基を有する化合物を配合した場合には、反応を促進する添加剤としてヒドロシリル化触媒やラジカル開始剤(熱重合開始剤や光重合開始剤)を配合すればよく、更に、熱重合促進剤、光開始助剤、鋭感剤等を配合してもよい。また、本発明の目的から外れない範囲であれば、有機/無機フィラー、可塑剤、難燃剤、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、離型剤、発泡剤、核剤、着色剤、架橋剤、分散助剤、樹脂成分等の各種添加剤を添加することもできる。
【0040】
また、本発明においては、レンズ基材として、上述した一般式(1)で表されるシリコーン樹脂を硬化させたもの以外のものを用いて形成してもよい。この場合、例えば、上述したような、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物を硬化させたものを用いるのがよい。
【0041】
本発明の複合型レンズを形成する樹脂層は、レンズ曲面を形成する機能をするものであり、その形状や厚み等については用途によっても異なるため、特に制限されないが、例えば球面レンズ、非球面レンズのいずれも形成することができる。一方、レンズ基材は、レンズ厚みを調節するなどの機能をするものであり、その形状や厚み等については用途によっても異なるため、特に制限されないが、例えば平板であっても、擬似レンズ形状であってもよい。また、樹脂層は、レンズ基材を介してその両面に備えるようにしてもよく、レンズ基材の片側のみに形成されるようにしてもよい。
【0042】
本発明の複合型レンズは、レンズ基材上に上記シリコーン樹脂を加熱又は光照射によって硬化することにより、レンズ基材上に樹脂層を形成することによって得ることができるが、加熱によってレンズ基材を製造する場合、その成形温度は、熱重合開始剤や促進剤等の選択により、室温から200℃前後までの広い範囲から選択することができる。この場合、例えば金属板やガラス板上に一般式(1)のシリコーン樹脂(又はこれを含んだ硬化性樹脂組成物)をキャストし、加熱硬化することでシート状のレンズ基材を得ることができる。
【0043】
また、光照射によってレンズ基材を製造する場合、波長100〜400nmの紫外線や波長400〜700nmの可視光線を照射することで、成形体(レンズ基材)を得ることができる。用いる光の波長は特に制限されるものではないが、なかでも波長200〜400nmの近紫外線が好適に用いられる。紫外線発生源として用いられるランプとしては、低圧水銀ランプ(出力:0.4〜4W/cm)、高圧水銀ランプ(40〜160W/cm)、超高圧水銀ランプ(173〜435W/cm)、メタルハライドランプ(80〜160W/cm)、パルスキセノンランプ(80〜120W/cm)、無電極放電ランプ(80〜120W/cm)等を例示することができる。これらの紫外線ランプは、各々その分光分布に特徴があるため、使用する光重合開始剤の種類に応じて選定される。また、前記の加熱によって製造する方法と同様に、例えばガラス板上に一般式(1)のシリコーン樹脂(又はこれを含んだ硬化性樹脂組成物)をキャストし、光硬化することでシート状のレンズ基材を得ることができる。
【0044】
上述したように、本発明の複合型レンズを構成する樹脂層は、一般式(1)のシリコーン樹脂(又はこれを含んだ硬化性樹脂組成物)を上記レンズ基材上に載置し(液状物の場合にはキャスト等による場合も含む)、加熱又は光照射によって硬化させることにより形成することができる。
【0045】
また、レンズ基材や樹脂層を所定の形状や厚さにするために、従来公知の方法を用いることもできる。例えば、所定の形状に加工された金型(例えば球面形状の凹部を備えた金型等)に樹脂層となる一般式(1)のシリコーン樹脂(又はこれを含んだ硬化性樹脂組成物)を所定量充填し、その上部側に予め硬化させたレンズ基材を設置した状態で加熱または光照射し硬化することで、レンズ形状の成型物を得ることができる。この成型物によって複合型レンズとすることも可能であるが、レンズ基材の残りの面にも同様にして所定の形状をした樹脂層を設けて、レンズ基材の両面に2つの樹脂層が接合してなる複合型レンズとしてもよい。なお、予め硬化させた樹脂層に、所定の形状をした金型を設置し、一般式(1)のシリコーン樹脂(又はこれを含んだ硬化性樹脂組成物)を充填してレンズ基材を形成するようにしてもよい。
【0046】
また、複合型レンズを得る際に、必要に応じて反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、防曇性付与等の改良を行う目的で、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、調光処理等の公知の物理的又は化学処理を施すようにしてもよい。
【発明の効果】
【0047】
本発明の複合型レンズは、少なくとも樹脂層が、一般式(1)で表されるかご型構造を有するポリオルガノシルセスキオキサンを主たる成分とするシリコーン樹脂からなるため、耐熱性に優れる。また、レンズ基材と同様に樹脂層についても上記シリコーン樹脂から形成することで、レンズ基材−樹脂界面での密着性を上げることができる。そのため、ハンダリフロー工程に供することが可能であり、例えば携帯電話、デジタルカメラ等に搭載されているレンズ付きCCDやレンズ付きCMOSセンサー等のような、半導体とレンズとが一体化したカメラモジュールのレンズ等として好適に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】図1は本発明の耐熱性複合型レンズの製造方法を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、実施例等に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例等によりその範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を示す。なお、下記実施例で使用したシリコーン樹脂は、以下の合成例に示した方法で得たものである。
【0051】
[合成例1]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物14.3gを加え、水17gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;KBM1003)23.4g、及びエチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;LS−890)23.7gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温でビニルトリメトキシシランとエチルトリメトキシシランの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。次に、反応容器にディンスターク、冷却管を備え、トルエン95mLを加え、オイルバスを用いて90℃で2−プロパノール、及び加水分解の際に生じたメタノールの除去を行った。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、水を除去しながらトルエンを過熱還流し、再縮合反応を行った。トルエン還流後、3時間撹拌した後、室温に戻して反応を終了とした。反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(23)25.5g(98%)を得た。
【0052】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(23)のGPCを測定した結果から、Mw=1136、Mw/Mn=1.390であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=659、Mw/Mn=1.084であった。次に、1H−NMRを測定した結果、5.8〜6.2ppmのビニル基によるマルチプレットピーク、0.4〜1.2ppmのエチル基によるマルチプレットピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、ビニル基1に対してエチル基1、シラノール基0.189であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式(2)
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1はビニル基:エチル基=1:1)であることが示唆された。
【0053】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(23)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジメチルジクロロシラン19.2g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(24)を35.3g(回収率92%)得た。
【0054】
上記で得た有機−無機複合体(24)のGPCを測定した結果から、Mw=6671、Mw/Mn=2.095であった。従って、得られた有機−無機複合体(24)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基:エチル基=1:1、R2はメチル基、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=13のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0055】
[合成例2]
ジクロロシランとしてジメチルジクロロシランの代わりにジフェニルジクロロシランを用いた以外は合成例1と同様にして合成を行い、無色透明粘性液体の有機−無機複合体(25)を35.3g(回収率92%)得た。
【0056】
上記で得た有機−無機複合体(25)のGPCを測定した結果から、Mw=6263、Mw/Mn=1.849であった。従って、得られた有機−無機複合体(25)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基:エチル基=1:1、R2はフェニル基、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=10のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0057】
[合成例3]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物14.3gを加え、水17gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシキシシラン(信越化学工業株式会社製;KBM503)78.4gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温で3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。次に、反応容器にディンスターク、冷却管を備え、トルエン95mLを加え、オイルバスを用いて90℃で2−プロパノール、及び加水分解の際に生じたメタノールの除去を行った。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、水を除去しながらトルエンを過熱還流し、再縮合反応を行った。トルエン還流後、3時間撹拌した後、室温に戻して反応を終了とした。反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(26)47.4g(98%)を得た。
【0058】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(26)のGPCを測定した結果から、Mw=1575、Mw/Mn=1.222であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=1198、Mw/Mn=1.082であった。次に、1H−NMRを測定した結果、5.4〜6.2ppmのメタクリル基によるピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、メタクリル基1に対してシラノール基0.189であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式(2)
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1は3−メタクリロキシプロピル基)であることが示唆された。
【0059】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(26)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジメチルジクロロシラン19.2g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(27)を35.3g(回収率92%)得た。
【0060】
上記で得た有機−無機複合体(27)のGPCを測定した結果から、Mw=88013、Mw/Mn=8.536であった。従って、得られた有機−無機複合体(27)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1は3−メタクリロキシプロピル基、R2はメチル基、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=88のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0061】
[合成例4]
ジクロロシランとしてジメチルジクロロシランの代わりにジフェニルジクロロシランを用いた以外は合成例3と同様にして合成を行い、無色透明粘性液体の有機−無機複合体(28)を35.3g(回収率92%)得た。
【0062】
上記で得た有機−無機複合体(28)のGPCを測定した結果から、Mw=40025、Mw/Mn=4.769であった。従って、得られた有機−無機複合体(28)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1は3−メタクリロキシプロピル基、R2はフェニル基、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=36のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0063】
[合成例5]
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(23)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジメチルジクロロシラン15.3g、ジフェニルジクロロシラン3.9g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(29)を35.3g(回収率92%)得た。
【0064】
上記で得た有機−無機複合体(29)のGPCを測定した結果から、Mw=6467、Mw/Mn=1.972であった。従って、得られた有機−無機複合体(29)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基:エチル基=1:1、R2はメチル基:フェニル基=8:2、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=12のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0065】
[合成例6]
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(26)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジメチルジクロロシラン15.3g、ジフェニルジクロロシラン3.9g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(30)を35.3g(回収率92%)得た。
【0066】
上記で得た有機−無機複合体(30)のGPCを測定した結果から、Mw=64019、Mw/Mn=6.653であった。従って、得られた有機−無機複合体(30)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1は3−メタクリロキシプロピル基、R2はメチル基:フェニル基=7:3、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=64のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0067】
[合成例7]
撹拌機、滴下ロート及び温度計を備えた反応容器に、塩基性触媒として水酸化テトラメチルアンモニウム・5水和物14.3gを加え、水17gに溶解し、続いてトルエン189mLと2−プロパノール95mLを入れた。滴下ロートに、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製;KBM1003)23.4g、及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシキシシラン(信越化学工業株式会社製;KBM503)39.2gを加え、反応容器を撹拌しながら、室温でビニルトリメトキシシランと3−メタクリロキシプロピルトリメトキシキシシランの混合液を3時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。撹拌終了後、撹拌を停止し、1日静止した。次に、反応容器にディンスターク、冷却管を備え、トルエン95mLを加え、オイルバスを用いて90℃で2−プロパノール、及び加水分解の際に生じたメタノールの除去を行った。その後、オイルバスの温度を120℃に設定し、水を除去しながらトルエンを過熱還流し、再縮合反応を行った。トルエン還流後、3時間撹拌した後、室温に戻して反応を終了とした。反応溶液を10%クエン酸水溶液82.9gで中和した。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(31)25.5g(98%)を得た。
【0068】
上記で得た無色透明粘性液体シラノール基含有籠型シロキサン(31)のGPCを測定した結果から、Mw=1707、Mw/Mn=1.369であることが確認された。その中でも面積比70%を占めている低分子側のピークは、Mw=1021、Mw/Mn=1.097であった。次に、1H−NMRを測定した結果、5.8〜6.2ppmのビニル基によるマルチプレットピーク、5.4〜6.2ppmのメタクリル基によるピーク、及び1.6ppmのシラノール基のピーク積分比は、ビニル基1に対してメタクリル基1、シラノール基0.189であった。従って、メインピークである低分子側Mw及び積分比から見積もられた化合物は、下記式(2)
[R1SiO3/2]n[HO1/2]k (2)
として仮定した場合、nが8、及びkが2(R1はビニル基:3−メタクリロキシプロピル基=1:1)であることが示唆された。
【0069】
撹拌機及び滴下ロートを備えた反応容器に、上記で得られたシラノール基含有籠型シルセスキオキサン化合物(31)20.0g、及びシクロヘキサンジメタノール(東京化成株式会社製)4.4gをはかり込み窒素置換し、ピリジン61mLに溶解した。滴下ロートにジメチルジクロロシラン15.3g、ジフェニルジクロロシラン3.9g及びピリジン76mLを入れ、室温で2時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で2時間撹拌した。2時間撹拌後、トルエン140mL、蒸留水70mLを加えた。水層をトルエンで抽出し、有機層を蒸留水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ別し、濃縮することで無色透明粘性液体の有機−無機複合体(32)を35.3g(回収率92%)得た。
【0070】
上記で得た有機−無機複合体(32)のGPCを測定した結果から、Mw=36793、Mw/Mn=4.386であった。従って、得られた有機−無機複合体(32)は、下記式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(R1はビニル基:3−メタクリロキシプロピル基=1:1、R2はメチル基:フェニル基=7:3、及びXはシクロヘキサンジメタノール(CHDM)からなる)で表され、nは6〜14、m+l=47のシリコーン樹脂であることを確認した。
【0071】
上記合成例1〜7で使用した原料に関してまとめたものを表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
[実施例1]
上記合成例1で得られた有機−無機複合体(24)90重量部、及び下記式(33)で表される化合物ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学株式会社製;DCP−A)10重量部を混合し、下記式(34)で表される硬化触媒ジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製;パークミルD)を1重量部混合し、よく撹拌し、実施例1の硬化性樹脂組成物を調製した。
【化5】

【化6】

【0074】
上記で得た硬化性樹脂組成物をガラス板で組んだ型に厚み2mmになるように流し込み、100℃で1時間、120℃で1時間、140℃で1時間、160℃で1時間、及び180℃で2時間加熱して、所定の厚みとしたシート状のシリコーン樹脂成形体(レンズ基材1)を得た。
【0075】
次に、図1に示したように、所定の球面形状に加工された凹部を備えた金属製の金型3に上記硬化性樹脂組成物2を充填し、充填した硬化性樹脂組成物2の表面(液面)に触れるように、先に形成したレンズ基材を設置した状態にて100℃で1時間、120℃で1時間、140℃で1時間、160℃で1時間、及び180℃で2時間加熱硬化させることで、最も厚い部分で厚み0.02mmの樹脂層4をレンズ基材1と接合させた。
【0076】
さらに、レンズ基材1の残りの上面に、上記硬化性樹脂組成物2を同様な方法にて硬化させ、レンズ基材1の両面に樹脂層4が接合された複合型レンズ5を得た。
【0077】
[実施例2、7]
有機−無機複合体(24)の代わりに、それぞれ上記合成例2、7で得られた有機−無機複合体(25)、(32)を70重量部、及び上記式(33)で表される化合物ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学株式会社製;DCP−A)30重量部を混合し、上記式(34)で表される硬化触媒ジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製;パークミルD)を1重量部混合し、よく撹拌し、実施例2、7の硬化性樹脂組成物を調製した。その他は実施例1と同様にして複合型レンズ5を得た。
【0078】
[実施例5]
有機−無機複合体(24)の代わりに、上記合成例5で得られた有機−無機複合体(29)を用いた以外は実施例1と同様にして、実施例5の硬化性樹脂組成物を調製した。その他は実施例1と同様にして複合型レンズ5を得た。
【0079】
[実施例3]
上記合成例3で得られた有機−無機複合体(27)70重量部、及び上記式(33)30重量部を混合し、下記式(35)で表される硬化触媒1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製;Irgacure184)を1重量部混合し、よく撹拌し、実施例3の硬化性樹脂組成物を調製した。
【化7】

【0080】
上記で得た硬化性樹脂組成物をガラス板で組んだ型に厚み2mmになるように流し込み、30W/cmの高圧水銀ランプを用い、2000mJ/cm2の積算露光量で硬化させ、所定の厚みとしたシート状のシリコーン樹脂成形体(レンズ基材1)を得た。
【0081】
次に、図1に示したように、所定の球面形状に加工された凹部を備えたガラス製の金型3に、上記硬化性樹脂組成物2を充填し、充填した硬化性樹脂組成物2の表面(液面)に触れるように、レンズ基材1を設置した状態にて30W/cmの高圧水銀ランプを用い、1000mJ/cm2の積算露光量で硬化させることで、最も厚い部分で厚み0.02mmの樹脂層4をレンズ基材1と接合させた。
【0082】
さらに、レンズ基材1の残りの上面に、上記硬化性樹脂組成物2を同様な方法にて硬化させ、レンズ基材1の両面に樹脂層4が接合された複合型レンズ5を得た。
【0083】
[実施例4、6]
有機−無機複合体(27)の代わりに、それぞれ上記合成例4、6で得られた有機−無機複合体(28)、(30)を用いた以外は実施例3と同様にして、実施例4、6の硬化性樹脂組成物を調製した。その他は実施例3と同様にして複合型レンズ5を得た。
【0084】
[比較例1]
ジメタクロキシプロピルポリジメチルシロキサン(アヅマックス株式会社製DMS−R11)50重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDPE−6A)30重量部、及びジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A)20重量部を混合し、上記式(35)で表される硬化触媒1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製;Irgacure184)を樹脂の合計100重量部に対して1重量部混合し、よく撹拌し、比較例1の硬化性樹脂組成物を調製した。その他は実施例3と同様にして複合型レンズ5を得た。
【0085】
[比較例2]
ジメタクロキシプロピルポリジメチルシロキサン(アヅマックス株式会社製DMS−R11)70重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDPE−6A)20重量部、及びジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A)10重量部を混合し、上記式(35)で表される硬化触媒1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製;Irgacure184)を樹脂の合計100重量部に対して1重量部混合し、よく撹拌し、比較例2の硬化性樹脂組成物を調製した。その他は実施例3と同様にして複合型レンズ5を得た。
【0086】
上記実施例及び比較例で得た硬化性樹脂組成物の組成をまとめたものを表2に示す。なお、表中の数値は重量部を表す。また、表2中で使用した記号A〜Fの意味は次のとおりであり、項目Aの数値のうしろの( )は、合成例で得られた具体的なシリコーン樹脂(有機−無機複合体)を示す。
A:合成例で得られたシリコーン樹脂
B:ジメタクロキシプロピルポリジメチルシロキサン(アヅマックス株式会社製DMS−R11)
C:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDPE−6A)
D:ジシクロペンタニルジアクリレート(共栄社化学(株)製ライトアクリレートDCP−A)
E:ジクミルパーオキサイド(日本油脂株式会社製;パークミルD)
F:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン株式会社製;Irgacure184)
【0087】
【表2】

【0088】
上記実施例及び比較例で得られた複合型レンズ5の物性評価は次のようにして行った。その結果を表3に示す。
【0089】
1)全光線透過率(JIS K 7361-1):紫外可視光赤外分光光度計(V-630M日本分光(株)製)を用いて測定した。
2)屈折率:アッベ屈折計(DR-M4アタゴ(株)製)を用いて測定した。
3)吸水率:サンプルを50℃で乾燥させた後、重量を測定し、ついで25℃の温水中に24hr浸漬した。24hr後の重量を測定し、次の式により吸水率を求めた。
吸水率(%)=[(吸水重量−乾燥重量)/乾燥重量]×100
4)線膨張係数:熱機械分析装置(TMA 製)を用いて、昇温速度5℃/min、圧縮荷重0.1Nの条件にて、30℃から200℃の範囲における線膨張係数を測定した。
5)硬化収縮率:硬化前後の比重を測定し体積収縮率を算出した。硬化性樹脂組成物の比重はピクノメーター法(JIS K 7112)、硬化物は水中置換法(JIS K 7112)により求めた。
硬化収縮率=(1−硬化前の樹脂の比重/硬化後の樹脂の比重)×100
【0090】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明における複合型レンズは、例えば携帯電話やデジタルカメラ等に搭載されるレンズ付きCCD、レンズ付きCMOSセンサー等のような、半導体とレンズとが一体化してなるカメラモジュール等のレンズとして好適に利用される。その他、耐熱性が要求される車載用カメラモジュール等のレンズ等にも利用可能である。
【符号の説明】
【0092】
1:レンズ基材
2:硬化性樹脂組成物
3:ガラス製金型
4:樹脂層
5:複合型レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ基材に樹脂層を接合してなる複合型レンズであって、レンズ基材および樹脂層が、それぞれ硬化樹脂からなり、少なくとも樹脂層が、下記一般式(1)
[[(R1SiO3/2)n](R22SiO2/2)]m[[XO2/2](R22SiO2/2)]l (1)
(但し、R1及びR2は、ビニル基、アリル基、アルキル基、アリール基、(メタ)アクリロイル基又はオキシラン環を有する基であって、互いに同じか異なるものであってもよく、Xは炭素数5〜50の脂肪族構造、脂環式構造、芳香族構造及び−OCOO−結合の1つもしくは複数含む構造であり、n、m及びlはそれぞれ平均値を表し、nは6〜14の数であり、m及びlは1以上であり、m+lは2〜2,000である。)で表されて、重量平均分子量がMw=5,000〜1,000,000であり、不飽和二重結合を有するビニル基、アリル基、及び(メタ)アクリロイル基からなる群から選ばれた1種又は2種以上の反応性官能基を1分子中に少なくとも2つ有するシリコーン樹脂を硬化させてなることを特徴とする耐熱性複合型レンズ。
【請求項2】
レンズ基材が、上記一般式(1)で表されるシリコーン樹脂を硬化させてなることを特徴とする請求項1に記載の耐熱性複合型レンズ。
【請求項3】
レンズ基材及び/又は樹脂層が、シリコーン樹脂に対して、分子中に少なくとも1つのエチレン性不飽和二重結合を有する化合物及び/又は分子中に少なくともヒドロシリル基を有する化合物を配合し、さらにラジカル開始剤及び/又はヒドロシリル化触媒を配合して得られる硬化性樹脂組成物を硬化させてなることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐熱性複合型レンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−158797(P2011−158797A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21828(P2010−21828)
【出願日】平成22年2月3日(2010.2.3)
【出願人】(000006644)新日鐵化学株式会社 (747)
【Fターム(参考)】