説明

耐腐食性多段式真空ポンプ

【課題】 流通ガス(腐食性ガス)と接触するロータ,ケーシング,段間仕切板やサイドフレームの部位には隙間を設けて厚肉のテフロンライニングが設けると共に隣接ケーシング間にテフロンライニングのない部位を形成して隙間保持とテフロンライニングの変位を防止する耐腐食性多段式真空ポンプを提供する。
【解決手段】 例えば、第1段ケーシング9Aと第2段ケーシング9Bとの接触面の一部(◎印で示す)にはテフロンライニングが施されていない部位があり、金属接触するように形成される。これにより、締結固定時においてもテフロンライニングの変形が防止され、隙間5を所定の寸法に保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腐食性の流通ガスを使用する多段式真空ポンプにおいて前記流通ガスと接触する部位に厚肉のテフロンライニングを施すと共にロータや段間仕切板との間やケーシングやサイドフレームと間に内部性能保持のための微少隙間を形成保持する構造の耐腐食性多段式真空ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
多段式真空ポンプとしては各種のものがあるが本発明と同一の出願人の製作している多段式真空ポンプとしては「非特許文献1」に示すものが挙げられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】CATALOG No 109(図4に示されている) この「非特許文献1」は図4に示すようにシャフトに挿着されている3段のロータとこれを囲むケーシングとロータ及びケーシング間に介設されている中間仕切板(段間仕切板とも言う)やロータやケーシングに接触している両側のサイドフレーム等とからなり、冷却液や吸気は図4の矢印等で示す経路で流通している。 なお、この多段式真空ポンプの各構成要素の材質や構造としては標準材料や標準材料にニッケルメッキをしたものやステンレス材を用いたものや標準材料に20μ乃至30μのテフロンコーティング膜を形成したものがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の適用される多段式真空ポンプとしては図3に示すものが一例として挙げられる。この多段式真空ポンプは、シャフト7に挿着されている第1段ロータ8A,第2段ロータ8B,第3段ロータ8C及び第4段ロータ8Dからなり、これ等は第1段ケーシング9A,第2段ケーシング9B,第3段ケーシング9C及び第4段ケーシング9D内に回転可能に収納されている。また、夫々のロータ8A等やケーシング9A等間には段間仕切板10AB,10BC,10CDが夫々介設されている。また、第1段ロータ8Aや第1段ケーシング9A及び第4段ロータ8Dや第4段ケーシング9Dは夫々両側のサイドフレーム11,11に当接して配設される。なお、図3におけるその他の各構成要素についての構造の説明や冷却水や吸気(ガス)の流通経路等については特別のものではなく、その説明を省略する。
【0005】
夫々のロータとケーシングや段間仕切板やサイドフレーム間には熱変位等による夫々の部材の直接接触を防止するための微少隙間(例えば、0.15mm乃至0.3mm程度)が設けられている(図3には明示されていない)。
【0006】
流通ガスとしては腐食性ガスでないものもあるが、腐食性ガスが流通ガスとして使用される場合には前記した標準材料や標準材料にニッケルメッキしたものやステンレス材では腐食性ガスにより腐食され長時間使用できない問題点がある。このためテフロンライニングを施す必要があるが、従来ではこのテフロンライニングは20μ乃至30μ程度の厚みのものであった。この20μ乃至30μのテフロンコーティングは腐食性を有するものではあるが多数のピンホールが存在し、長時間の耐腐食性を保持することができない問題点があった。
【0007】
一方、テフロンライニング(テフロンコーティングで150μを越えるものはテフロンライニングとも称している)の厚みを例えば300μのものを採用すると4段の多段式真空ポンプの場合には全体のテフロンライニングの厚みが0.3mm×10=3mmとなる。また、テフロンライニングは組立時における締結固定によってクリープ減少を起こして変形して薄くなり、前記の厚み3mmが大きく変化し1mm乃至2mm程度の厚みになる。この厚み変化が発生すると各構成部材間に0.15mm乃至0.3mmの隙間を保持することができない問題点がある。
【0008】
本発明は、以上の問題点を解消すべく発明されたものであり、各構成部材間に必要の隙間を保持すると共に腐食性ガスに対しても十分の耐腐食性を有する厚肉のテフロンライニングを部材間に設けることが出来る耐腐食性多段式真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以上の目的を達成するために、請求項1の発明は、ロータと段間仕切板とケーシング及びサイドフレームとの間に微少隙間を保持し隣接する前記ケーシング間及び前記サイドフレームと前記ケーシングとを締結固定してなる多段式真空ポンプの流通ガスと接触する部位に、隣接する前記ケーシング間及びケーシングとサイドフレームとの間の締結面の一部を除いて厚肉のテフロンライニングを施すことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2の発明は、前記テフロンライニングの厚みが150μ以上であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3の発明は、隣接する前記ケーシングのテフロンライニングを施している接合面間にガス洩れ防止のためのOリングを介設することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1の耐腐食性多段式真空ポンプによれば、各構成部材には肉厚の厚いテフロンライニングが施されているため腐食性ガスに対しても各構成部材を腐食から防ぐことができ、耐腐食性の向上が図られると共に、隣接するケーシングやケーシングとサイドフレームとの接触部位の一部にテフロンライニングを施さない部分を形成し、金属接触させることによりそれ以上のテフロンライニングの圧縮を防止することができ、各構成部材間の隙間を0.15mm乃至0.3mm程度に保持することができる。
【0013】
また、請求項2の耐腐食性多段式真空ポンプによれば、テフロンライニングの肉厚を150μ以上にすることによりテフロンライニング内のピンホールの発生を防止することができ、強耐腐食性を保持することができる。
【0014】
また、請求項3の耐腐食性多段式真空ポンプによれば、隣接するケーシング間のテフロンライニングを施してある部位にOリングを設けることにより各部材間の隙間からのガスの漏洩を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の耐腐食性多段式真空ポンプの主要構成要素の全体構造を示す軸断面図。
【図2】図1におけるテフロンライニングを施してある部位やケーシング間の金属接触の状態やOリングまわりの詳細構造を示す拡大部分断面図。
【図3】本発明の適用される多段式真空ポンプの全体構造を示す軸断面図。
【図4】従来の多段式真空ポンプの全体構造を示す非特許文献1を示す構造説明図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の耐腐食性多段式真空ポンプの実施の形態を図面を参照して詳述する。
【実施例】
【0017】
まず、図1により本発明の耐腐食性多段式真空ポンプの全体構造を説明するが、本発明に関連しない各構成要素や冷却水や流通ガスの流通経路についての説明は省略する。
【0018】
第1段ロータ8A乃至第4段ロータ8Dのガスと接触する部位には例えば300μのテフロンライニングが設けられている(符号として各段のテフロンライニング1A,2A,3A,4Aとする)。また、各段のケーシング9A等のガスと接触する部位には図示における◎印の部位を除き300μのテフロンライニングが設けられている(符号として各段のテフロンライニングを1B,2B,3B,4Bとする)。また、段間仕切板10AB,10BC,10CD等のガスと接触する部位には300μのテフロンライニングが設けられている(符号として各段用のテフロンライニングを1C,2C,3Cとする)。
また、サイドフレーム11のロータ8A等やケーシング9Aと接触する部位にも300μのテフロンライニングが設けられている(符号としてこのテフロンライニングを1D,4Dとする)。
【0019】
サイドフレーム11のテフロンライニング1Dと第1段ロータ8Aのテフロンライニング1Aとの間やサイドフレーム11のテフロンライニング4Dと第4段ロータ8Dのテフロンライニング4Aとの間には約0.15mm乃至0.3mmの隙間5が形成されている。また、夫々のロータ8A等やケーシング9A等との間やロータ8A等及びケーシング9A等と段間仕切板10AB等の夫々のテフロンライニング(符号を省略する)間にも0.15mm乃至0.3mmの隙間5が設けられている。
【0020】
次に、テフロンライニングが施されていないケーシング9A等やサイドフレーム11の部位における構造を図2により説明する。図2はケーシング9B等間における構造についてのみ説明されているがケーシング9A等とサイドフレーム11との間についても同一の構造のものからなるが重複説明を省略する。
【0021】
図2に示すように、例えば第2段目のケーシング9Bと第3段目のケーシング9Cとの接触部位の一部にはテフロンライニングが施されていない部位(◎で示す)が形成されている。このため、この部位は金属接触することになり、ケーシング間はこれ以上の締め込みを防止することができる。この◎印の部位のテフロンライニングのない状態により、テフロンライニングの施されている部位は余分の変形が防止され、0.15mm及び0.3mmの隙間5を保持することができる。
【0022】
隣接するケーシング9A,9B等間が以上のように金属接触し板としてもこの面間からがガスの漏洩を防止するためテフロンライニングの施されているケーシング間の部位にはOリング6が介設され、ガス洩れの防止を図っている。
なお、ケーシング9A等のテフロンライニングを除去した金属接触面の形成についての形成手段についてはノウハウ的の内容でもあり、説明を省略する。
【0023】
以上のように、隣接するケーシング9A,9B等間の一部にテフロンライニングを施さない部位を形成する比較的簡便の手段により、従来の大きな問題点であった腐食性の大巾の改善ができ、本発明の価値が大きいことが証明される。
なお、本発明は、以上の内容のものではあるが、同一技術的範疇のものが適用されることは勿論である。又,以上の実施例ではテフロンライニングの厚みを300μとしたがこれに限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は多段式真空ポンプのすべてのタイプのものに適用可能であり、更に、腐食性を問題とするガス接触部位を有するその構造体にも適用可能であり、その利用範囲は広い。
【符号の説明】
【0025】
1A テフロンライニング
2A テフロンライニング
3A テフロンライニング
3D テフロンライニング
1B テフロンライニング
2B テフロンライニング
3B テフロンライニング
4B テフロンライニング
1C テフロンライニング
2C テフロンライニング
3C テフロンライニング
1D テフロンライニング
4D テフロンライニング
5 隙間
6 Oリング
7 シャフト
8A 第1段ロータ
8B 第2段ロータ
8C 第3段ロータ
8D 第4段ロータ
9A 第1段ケーシング
9B 第2段ケーシング
9C 第3段ケーシング
9D 第4段ケーシング
10AB 段間仕切板
10BC 段間仕切板
10CD 段間仕切板
11 サイドフレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと段間仕切板とケーシング及びサイドフレームとの間に微少隙間を保持し隣接する前記ケーシング間及び前記サイドフレームと前記ケーシングとを締結固定してなる多段式真空ポンプの流通ガスと接触する部位に、隣接する前記ケーシング間及びケーシングとサイドフレームとの間の締結面の一部を除いて厚肉のテフロンライニングを施すことを特徴とする耐腐食性段式真空ポンプ。
【請求項2】
前記テフロンライニングの厚みが150μ以上であることを特徴とする請求項1に記載の耐腐食性段式真空ポンプ。
【請求項3】
隣接する前記ケーシングのテフロンライニングを施している接合面間にガス洩れ防止のためのOリングを介設することを特徴とする請求項1に記載の耐腐食性段式真空ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−79616(P2013−79616A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220558(P2011−220558)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(505420301)株式会社四葉機械製作所 (4)
【Fターム(参考)】