説明

耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物

本発明は、シリコーン-アクリレート複合ゴムをグラフトベースとして含有する第1グラフトポリマーであって、シリコーンゴムの量がグラフトベースに基づき65〜95重量%である該第1グラフトポリマーと、ゴムに対して化学的に結合しない遊離コポリマーを含有し、60000〜150000g/モルの重量平均分子量を有する第2グラフトポリマーとを含有する耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物、成形品の製造における該ポリカーボネート組成物の使用、並びにそれを用いる成形品に関する。本発明に係る組成物および成形組成物は、良好な引裂時伸びと、良好な加水分解安定性と、低い溶融粘度とを最適な組み合わせで備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン-アクリレート複合ゴムをグラフトベースとして含有する第1グラフトポリマー(シリコーンゴムの量が、該グラフトベースに基づき65〜95重量%である)と、遊離コポリマー(すなわちゴムに対して化学的に結合しないコポリマー)を含有し、60000〜150000g/モルの重量平均分子量を有する第2グラフトポリマーとを含有する耐衝撃性改良ポリカーボネート組成物、成形品の製造における該ポリカーボネート組成物の使用、並びにそれを用いる成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2002/077417号A1明細書は、(a)ポリカーボネート、(b)シリコーン-アクリレート複合ゴムを有するグラフトポリマーであって、アクリレートに対するシリコーンの比が99:1〜1:99である該グラフトポリマー、(c)所望の充填剤、例えばタルク、(d)防炎剤としてのリン酸エステル、(e)所望の更なる添加剤、例えばABS、SANおよび滴下防止剤を含有する耐火組成物を開示する。該明細書において、約17重量%のメチルメタクリレート、約9重量%のオルガノシロキサンおよび約74重量%のブチルアクリレートから成る、シリコーン-ブチルアクリレート複合ゴムのグラフトベースを有するグラフトポリマーであるMetablen(登録商標)S-2001を含有する組成物が、例として開示されている。しかしながら、該米国特許出願公開第2002/077417号A1明細書には、グラフトベースに基づきシリコーンゴムの量が65〜95重量%である、グラフトベースとしてのシリコーン-アクリレート複合ゴムを有するグラフトポリマーを含有する組成物が開示されていない。
【0003】
特開平08-259791号公報は、ポリカーボネート、および30〜99%のシロキサンを有するシリコーン-アクリレートゴムを含有する耐火組成物を開示する。
【0004】
特開2000-017136号公報は、ポリカーボネート、1〜40重量%のオリゴマーリン酸エステル、および60〜99重量%のポリオルガノシロキサンを含有するシリコーン-アクリレートゴムのグラフトベースを有するグラフトポリマー、所望のポリテトラフルオロエチレンおよび所望のタルクを含有する組成物を開示する。
【0005】
特開2002-069282号公報は、ポリカーボネート、複合ゴム(例えばMetablen(登録商標)SX-005)、オリゴマーリン酸エステル、シリコーンオイル、所望のポリテトラフルオロエチレンおよび所望の添加剤を含有する組成物を開示する。
【0006】
国際特許出願公開第00/39210号A明細書は、ポリカーボネート、コポリマー、オリゴマーリン酸エステル、ポリオルガノシロキサンの量が3重量%〜90重量%である、グラフトベースとしてのシリコーン-アクリレートゴムを有するグラフトポリマー(例えばMetablen(登録商標)S-2001)、所望のポリテトラフルオロエチレンおよび強化材料、例えばタルクを含有する組成物を開示する。
【0007】
欧州特許出願公開第0641827号A明細書は、芳香族ポリカーボネート、ジエンゴム上のビニルモノマーのグラフトポリマー、リン酸エステル、ポリテトラフルオロエチレン、無機充填剤、例えばタルク、およびシリコーンおよびアクリレートゴムの複合ゴムを含有する組成物を開示する。
【0008】
特開平07-316409号公報は、ポリカーボネート、リン酸エステル、ポリオルガノシロキサンの量が1〜99重量%であり、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴムの量が99〜1重量%である、グラフトベースとしてのシリコーンアクリレートゴムを有するグラフトポリマーを含有する組成物を開示する。
【0009】
しかしながら、上述の先行技術は、遊離コポリマー(すなわちゴムに対して化学的に結合しないコポリマー)を含有し、60000〜150000g/モルの重量平均分子量を有する該第2グラフトポリマーを含有する組成物を開示しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許出願公開第2002/077417号A1明細書
【特許文献2】特開平08-259791号公報
【特許文献3】特開2000-017136号公報
【特許文献4】特開2002-069282号公報
【特許文献5】国際特許出願公開第00/39210号A明細書
【特許文献6】欧州特許出願公開第0641827号A明細書
【特許文献7】特開平07-316409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、良好な引裂時伸びと、良好な加水分解安定性と、低い溶融粘度とを最適な組み合わせで備える、耐衝撃性改良ポリカーボネート成形組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
驚くべきことに、上述の技術目的は、以下の成分A)〜E)を含有する組成物によってもたらされることが判明した:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:いずれの場合も成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、40〜99重量部、好ましくは50〜90重量部、特に好ましくは60〜80重量部、
B)シリコーンアクリレート複合ゴム、好ましい実施態様においては、シリコーンゴムおよびポリアルキル(メタ)アクリレートゴムの相互侵入ゴムをグラフトベースとする第1グラフトポリマーであって、シリコーンゴムの量がグラフトベースに基づき、65〜95重量%、好ましくは75〜95重量%、特に80〜95重量%である該第1グラフトポリマー:いずれの場合も成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0.5〜20重量部、好ましくは3〜13重量部、特に好ましくは8〜13重量部、
C)遊離コポリマー(すなわちゴムに対して化学的に結合しないコポリマー)を含有し、60000〜150000g/モル、好ましくは70000〜130000g/モル、特に好ましくは70000〜90000g/モルの重量平均分子量を有する第2グラフトポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0.5〜40重量部、好ましくは3〜20重量部、特に好ましくは3〜7重量部、
D)ゴム不含ビニル(コ)ポリマーおよびポリアルキレンテレフタレートから成る群から選択される1または複数のポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0〜20重量部、好ましくは0〜16重量部、特に好ましくは3〜16重量部、
E)添加剤:いずれの場合も成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0〜50重量部、好ましくは0.5〜25重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部、
ただし、該組成物は防炎加工剤を含有せず、および
本明細書における全ての重量部は、組成物中の成分A+B+C+Dの総重量部が100となるように標準化される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
成分A
本発明において適する成分Aに係る芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートは、関連文献に記載されており、または関連文献において記載されている方法により調製してもよい。芳香族ポリカーボネートの調製に関しては、例えば、シュネル著「ポリカーボネートの化学と物理」、インターサイエンスパブリッシャーズ、1964年、ならびに独国特許(DE−AS)1495626号明細書、独国特許出願公開第2232877号A明細書、および同2703376号A明細書、同2714544号A明細書、同3000610号A明細書および同3832396号A明細書を参照されたい。また、芳香族ポリエステルカーボネートの調製に関しては、例えば同3077934号A明細書が参照されたい。
【0014】
芳香族ポリカーボネートの調製は、例えば、ジフェノールと、炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)および/または芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物(好ましくはベンゼンジカルボン酸二ハロゲン化物)を、界面重合法により、必要に応じて連鎖停止剤(例えばモノフェノール)を使用し、また必要に応じて、三官能性以上の分枝剤(例えばトリフェノールまたはテトラフェノール)を用いて反応させることによりおこなわれる。ジフェノールと、例えばジフェニルカーボネートを反応させる溶融重合法による調製も可能である。
【0015】
好ましくは、芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネートを調製するためのジフェノールは、以下の化学式(I)で表される:
【0016】
【化1】

[式中、Aは単結合、C−C−アルキレン、C−Cアルキリデン、C−C−シクロアルキリデン、−O−、−SO−、−CO−、−S−、−SO−、C−C12−アリーレン(該アリーレンには、必要に応じてヘテロ原子を含有する更なる芳香族環を結合させてもよい)、あるいは、以下の式(II)若しくは(III)で表される基を示す;
【0017】
【化2】

【0018】
【化3】

式中、
Bは、いずれの場合もC-C12-アルキル(好ましくはメチル)、ハロゲン(好ましくは塩素および/または臭素)を示し、
xは、いずれの場合も相互に独立して0、1または2を示し、
pは、1または0を示し、および
およびRは、各Xに対して独立して選択され、相互に独立してハロゲンまたはC−C-アルキル、好ましくはハロゲン、メチル若しくはエチルから選択され、
は炭素原子を示し、ならびに
mは、4〜7の整数、好ましくは4または5を示す、但し、少なくとも1つのX原子上においては、RおよびRは同時にアルキルを示す。
【0019】
好ましいジフェノールとしては、以下のものが含まれる:ヒドロキノン、レソルシノール、ジヒドロキシジフェノール、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−アルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)−C−C−シクロアルカン、ビス-(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス-(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス-(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス-(ヒドロキシフェニル)-スルホンおよびα,α-ビス-(ヒドロキシフェニル)-ジイソプロピル-ベンゼン、並びに環を臭素化および/または塩素化させたそれらの誘導体。
【0020】
特に好ましいジフェノールとしては、以下のものが含まれる:4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビスフェノールA、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス-(4−ヒドロキシフェニル)-シクロヘキサン、1,1−ビス-(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、およびこれらのジ−およびテトラ臭素化若しくは塩素化誘導体、例えば2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス-(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)-プロパンまたは2,2−ビス-(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンなど。2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)-プロパン(ビスフェノールA)が特に好ましい。ジフェノールを単独で使用してもよく、任意の混合物として使用してもよい。ジフェノールは文献において既知であり、または文献において既知の方法に従い得ることができる。
【0021】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネート調製するために適当な連鎖停止剤は、例えば、フェノール、p−クロロフェノール、p−tert−ブチルフェノールまたは2,4,6−トリブロモフェノール、並びに長鎖アルキルフェノール、例えば4-[2-(2,4,4-トリメチルペンチル)]-フェノール、4−(1,3−テトラメチルブチル)-フェノール(独国特許出願公開第2842005号A明細書参照)など、またはアルキル置換基中に合計で8個〜20個の炭素原子を有するモノアルキルフェノール若しくはジアルキルフェノール、例えば、3,5−ジ−tert−ブチルフェノール、p−イソオクチルフェノール、p−tert−オクチルフェノール、p−ドデシルフェノール、および2−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールおよび4−(3,5−ジメチルヘプチル)-フェノールである。使用される連鎖停止剤の量は、具体的に使用するジフェノールの合計モル数に基づいて、一般に0.5モル%〜10モル%である。
【0022】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、10000〜20000g/モル、好ましくは15000〜80000g/モル、特に好ましくは24000〜32000g/モルの平均重量平均分子量(MW、例えば、GPC、超遠心分離法または散乱光測定法で測定される)を有する。
【0023】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートは、既知の方法、好ましくは、使用するジフェノールの合計量に基づき0.05〜2.0モル%の三官能価以上の化合物(例えば、3個以上のフェノール基を有する化合物)を組み込む方法により分枝化できる。
【0024】
ホモポリカーボネートおよびコポリカーボネートが適当である。本発明による成分Aのコポリカーボネートを調製するために、ヒドロキシアリールオキシ末端基を有するポリジオルガノシロキサンを、使用されるジフェノールの全量に基づいて1〜25重量%、好ましくは2.5〜25重量%の量で使用することもできる。これらは、米国特許第3419634号明細書において既知であり、他の文献で既知の方法に従って調製してもよい。ポリジオルガノシロキサンを含有するコポリカーボネートの調製は、独国特許出願公開第3334782号A明細書に記載されている。
【0025】
ビスフェノールAに基づくホモポリカーボネートに加えて、好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAと、ジフェノールのモル総量に基づき15モル%以下の、上記好ましいまたは特に好ましいとして上述したもの、特に2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとのコポリカーボネートである。
【0026】
芳香族ポリエステルカーボネートを調製するための芳香族ジカルボン酸二ハロゲン化物は、好ましくはイソフタル酸、テレフタル酸、ジフェニルエーテル−4,4'−ジカルボン酸およびナフタレン−2,6−ジカルボン酸の二酸二塩化物である。イソフタル酸のニ酸二塩化物とテレフタル酸の二酸二塩化物を1:20〜20:1の割合で混合させた混合物が特に好ましい。
【0027】
ポリエステルカーボネートを調製する場合、更に炭酸ハロゲン化物(好ましくはホスゲン)を、二官能性の酸誘導体として付随的に使用する。
【0028】
上述したモノフェノールの他に、芳香族ポリエステルカーボネートを調製するために適当な連鎖停止剤としては、以下のものが含まれる:それらのクロロ炭酸エステルおよび芳香族モノカルボン酸の酸塩化物(必要に応じて、C−C22−アルキル基またはハロゲン原子で置換してもよい)、並びに脂肪族C−C22−モノカルボン酸塩化物。
【0029】
連鎖停止剤の量は、フェノール系の連鎖停止剤の場合ジフェノールのモル量に基づき、モノカルボン酸塩化物系の連鎖停止剤の場合ジカルボン酸二塩化物のモル量に基づき、いずれの場合も0.1〜10モル%である。
【0030】
芳香族ポリエステルカーボネートは、芳香族ヒドロキシカルボン酸を組み込んでもよい。
【0031】
芳香族ポリエステルカーボネートは直鎖状であってもよく、既知の方法で分枝化させてもよい(独国特許出願公開第2940024号明細書および同3007934号A明細書の関連部分参照)。
【0032】
分枝剤としては、以下のものが使用できる:例えば、三官能性以上のカルボン酸塩化物、例えばトリメシン酸トリクロリド、シアヌル酸トリクロリド、3,3'-,4,4'−ベンゾフェノン−テトラカルボン酸テトラクロリド、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸テトラクロリド若しくはピロメリット酸テトラクロリドなど、使用したジカルボン酸ジクロリドに基づき0.01〜1.0mol%の量;または三官能性以上のフェノール、例えばフロログルシノール、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−へプト−2−エン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ベンゼン、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−ビス[4,4−ビス(4−ヒドロキシ−フェニル)−シクロヘキシル]−プロパン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル-イソプロピル)-フェノール、テトラ-(4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5'−メチル−ベンジル)−4−メチル−フェノール、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−プロパン、テトラ−(4−[4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル]−フェノキシ)−メタン、1,4−ビス[4',4''−(ジヒドロキシトリフェニル)−メチル]−ベンゼンなど、使用するジフェノールに基づき0.01〜1.0mol%の量。フェノール系分枝剤はジフェノールと共に反応器に導入でき、酸塩化物系分枝剤は酸二塩化物と共に導入できる。
【0033】
熱可塑性の芳香族ポリエステルカーボネートにおけるカーボネート構造単位の含有量は、所望に応じて変化させることができる。好ましくは、カーボネート基の含有量は、エステル基とカーボネート基の合計量に基づき、100モル%以下、特に80モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。芳香族ポリエステルカーボネートに含有されるエステルおよびカーボネートは、ブロック状またはランダムに分布した状態で重縮合生成物中に存在できる。
【0034】
芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートの相対溶液粘度(ηrel)は、1.18〜1.4、好ましくは1.20〜1.32の範囲である(25℃にて、塩化メチレン溶液100mlを用い、ポリカーボネート若しくはポリエステルカーボネートの0.5g溶液を用いて測定した)。
【0035】
熱可塑性の芳香族ポリカーボネートおよびポリエステルカーボネートは、単独で使用してもよく、任意に混合させて使用してもよい。
【0036】
成分B
好ましくは、成分Bは、以下の成分B.1およびB.2から成る:
B.1 5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%、特に10〜50重量%の1種または複数種のビニルモノマー、
B.2 95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、特に50〜90重量%の、グラフトベースとしての1種または複数種のシリコーン-アクリレート複合ゴムであって、該シリコーン-アクリレートゴムは、以下の成分B.2.1およびB.2.2を含有する:
B.2.1 65〜95重量%、好ましくは75〜95重量%、特に80〜95重量%のシリコーンゴムおよび、
B.2.2 5〜35重量%、好ましくは5〜25重量%、特に5〜20重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートゴム、
なお、好ましい実施態様において、上記ゴム成分B.2.1およびB.2.2は、複合ゴム中において相互侵入することにより、実質的に相互に分離できない状態となる。
【0037】
グラフトコポリマーBは、ラジカル重合、例えば乳化重合、懸濁重合、溶液重合または塊重合、好ましくは乳化重合によって調製される。
【0038】
好ましい実施態様において、グラフトポリマーは、ゴム製のコアとビニルポリマー製のシェルを備えるコアシェル構造を有する。
【0039】
適当なB.1モノマーは、ビニルモノマー、例えば、ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンなど)、メタクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、
アリルメタクリレート)、アクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレートなど)、有機酸(例えばアクリル酸、メタクリル酸など)および/またはシアン化ビニル(例えばアクリロニトリルおよびメタアクリロニトリル)および/または不飽和カルボン酸の誘導体(例えば無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸およびN-フェニル-マレイミドなど)である。これらのビニルモノマーを単独で使用してもよく、あるいは、少なくとも2種類のモノマーの混合物として使用してもよい。
【0040】
好ましいモノマーB.1は、スチレン、α-メチルスチレン、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレートおよびアクリロニトリルモノマーのうちの少なくとも1種から選択される。スチレンおよびアクリロニトリルまたはメチルメタクリレートの混合物がモノマーB.1として特に好ましく使用される。特に好ましい実施態様においてメチルメタクリレートが、モノマーB.1として使用される。
【0041】
グラフトベースB.2のガラス転移温度は10℃未満、好ましくは0℃未満、特に好ましくは−20℃未満である。一般に、グラフトベースB.2は、0.05〜10μm、好ましくは0.06〜1μm、特に好ましくは0.08〜0.5μm、特に0.08〜0.25μmの平均粒度(d50値)を有する。
【0042】
平均粒度(d50値)は、該値の上下の各々に50重量%の粒子が存在する値での粒径である。この値は、超遠心測定によって測定できる(W.スコルタン及びH.ランゲ、「コロイド-ツァイトシュリフト・ウント・ツァイトシュリフト・ヒュア・ポリメーレ(Kolloid,Z.und Z.Polymere)、第250巻(1972年)、第782頁〜第796頁参照)。
【0043】
本発明によると、適当なグラフトベースB.2は、高いシリコーン含有量を有するシリコーン-アクリレートゴムである。このようなシリコーンアクリレートゴムは、グラフト活性部位を有する複合ゴムであり、シリコーンゴム成分を65〜95重量%、好ましくは75〜95重量%、特に80〜95重量%と、ポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分を5〜35重量%、好ましくは5〜25重量%、特に5〜20重量%含有する複合ゴムである。好ましい実施態様において、2つの上述したゴム成分は、複合ゴム中において相互侵入することにより、実質的に相互に分離できない状態で存在する。
【0044】
シリコーン−アクリレートゴムは既知であり、例えば米国特許第5807914号明細書、欧州特許出願第430134号明細書および米国特許第4888388号明細書に記載されている。
【0045】
シリコーン-アクリレートゴムにおける適当なシリコーンゴム成分は、グラフト活性部位を有するシリコーンゴムであり、該ゴムの製造方法は、例えば、米国特許第2891920号明細書、同第3294725号明細書、独国特許(DE-OS)第3631540号明細書、欧州特許第249964号明細書、同第430134号明細書および米国特許第4888388号明細書に記載されている。
【0046】
好ましくは、シリコーンゴムは、シロキサンモノマー構造単位と、架橋剤若しくは分枝剤(IV)および所望によるグラフト剤(V)を使用する乳化重合によって調製される。
【0047】
シロキサンモノマー構造単位として使用される化合物の例には、以下のものが含まれる:例えば、好ましくは、ジメチルシロキサン、または少なくとも3つの環員、好ましくは3〜6の環員を有する環状オルガノシロキサン、例えば、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチル−トリフェニル−シクロトリシロキサン、テトラメチル−テトラフェニル−シクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン。オルガノシロキサンモノマーは単独で使用してもよく、または2種以上のモノマーの混合物として使用してもよい。好ましくは、シリコーンゴムは、シリコーンゴム成分の総重量に基づいて、50重量%以上、特に好ましくは60重量%以上のオルガノシロキサンを含む。
【0048】
好ましくは、架橋剤または分枝剤(IV)として、3官能性または4官能性、特に好ましくは4官能性を示す、シランに基づく架橋剤が使用される。言及される好ましい例としては、以下のものが含まれる:トリメトキシメチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシランおよびテトラブトキシシラン。架橋剤は単独で使用してもよく、または2種以上の架橋剤の混合物として使用してもよい。テトラエトキシシランが特に好ましい。
【0049】
架橋剤は、シリコーンゴム成分の総重量に基づいて0.1〜40重量%の量で使用される。架橋剤の量は、トルエン中で測定されたシリコーンゴムの膨潤度が3〜30、好ましくは3〜25、特に好ましくは3〜15となるように選択される。膨潤度は、25℃のトルエンで飽和させた、シリコーンゴムにより吸収されたトルエンの重量と、乾燥状態のシリコーンゴムの重量の重量比として定義される。膨潤度測定法に関する詳細は、欧州特許第249964号明細書に記載されている。
【0050】
膨潤度が3未満の場合、すなわち、架橋剤の含有量が著しく高い場合、シリコーンゴムは、適切なゴム弾性を有さない。膨潤度が30より大きい場合、シリコーンゴムは、マトリックスポリマー中にドメイン構造を形成できなくなり、その結果、該ゴムは耐衝撃性を改良することができない。そして、この効果は、ポリジメチルシロキサンを単に添加した場合と類似している。
【0051】
上述した範囲内で膨潤度をより簡単に調整できるので、三官能性の分枝剤よりも、四官能性の分枝剤が好ましい。
【0052】
適当なグラフト剤(V)は、以下の式で表される構造を形成することができる化合物である:
【0053】
【化4】

式中、
は、C〜C−アルキル、好ましくはメチル、エチルもしくはプロピル、あるいはフェニルを示し、
は、水素原子またはメチルを示し、
n は、0、1または2であり、および
p は、1〜6の整数である。
【0054】
アクリロイル−またはメタクリロイル−オキシシランは、上記構造(V−1)を形成するために特に適しており、また、高いグラフト効率を有する。これにより、効率的にグラフト鎖を形成することが保証されるので、得られる樹脂組成物の衝撃強さが増加する。
【0055】
言及される好ましい例としては、以下のものが含まれる:β−メタクリロイルオキシ−エチルジメトキシメチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピルメトキシジメチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピルジメトキシメチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピルトリメトキシ−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピルエトキシジエチル−シラン、γ−メタクリロイルオキシ−プロピルジエトキシメチル−シラン、δ−メタクリロイル−オキシ−ブチルジエトキシメチル−シランまたはこれらの混合物。
【0056】
シリコーンゴムの総重量に基づいて、好ましくは0〜20重量%のグラフト剤が使用される。
【0057】
シリコーン−アクリレートゴムにおける適当なポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分は、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)およびグラフト剤(VII)から調製できる。好ましいメタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルの例には、以下のものが含まれる:C−Cアルキルエステル、例えば、メチル、エチル、n-ブチル、tert-ブチル、n-プロピル、n-ヘキシル、n-オクチル、n-ラウリルおよび2-エチルヘキシルエステル;ハロアルキルエステル、好ましくはハロ-C−C-アルキルエステル、例えばクロロエチルアクリレートなど、およびこれらのモノマーの混合物。n−ブチルアクリレートが特に好ましい。
【0058】
シリコーン-アクリレートゴムにおけるポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分に関する架橋剤(VI)には、1つより多くの重合性二重結合を有するモノマーを使用できる。架橋モノマーの好ましい例としては、以下のものが含まれる:3個〜8個の炭素原子を有する不飽和モノカルボン酸のエステルおよび3個〜12個の炭素原子を有する不飽和一価アルコールのエステル、または2個〜4個のOH基と2〜20個の炭素原子を有する飽和ポリオール、例えば、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレートおよび1,4-ブチレングリコールジメタクリレートなど。架橋剤は単独で使用するか、または少なくとも2種類の架橋剤の混合物として使用することができる。
【0059】
好ましいグラフト剤(VII)の例には、アリルメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートまたはこれらの混合物が含まれる。アリルメタクリレートは、架橋剤(VI)としても使用できる。グラフト剤は単独で使用するか、または少なくとも2種類のグラフト剤の混合物として使用できる。
【0060】
架橋剤(VI)とグラフト剤(VII)の量は、シリコーンアクリレートゴムにおけるポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分の総重量に基づき、0.1〜20重量%である。
【0061】
原則として、シリコーン-アクリレートゴムは、第1重合工程においてシリコーンゴムを重合し、第2重合工程においてアクリレートゴム成分を重合することによって調製されるか、あるいは逆の順序で調製される。
【0062】
好ましい実施態様にいて、シリコーンアクリレートゴムは、まず、シリコーンゴムを水性のラテックス形態で調製することにより調製される。シリコーンゴムは、例えば米国特許第2891920号明細書および同3294725号明細書において記載されるような、乳化重合によって調製できる。そのために、オルガノシロキサン、架橋剤、および所望のグラフト剤を含有する混合物を、乳化剤、好ましくはスルホン酸に基づく乳化剤、例えばアルキルベンゼンスルホン酸若しくはアルキルスルホン酸の存在下において、例えばホモジナイザーを用いて剪断させながら、水と混合させる。該混合物を十分に重合させることによりシリコーンゴムラッテクスがもたらされる。乳化剤のみならず重合開始剤としても機能するので、アルキルベンゼンスルホン酸が特に適当である。この場合、スルホン酸と、アルキルベンゼンスルホン酸の金属塩またはアルキルスルホン酸の金属塩を混合することが有利である。なぜならば、後のグラフト重合の間に、これらによってポリマーが安定化されるからである。
【0063】
重合の後、アルカリ性水溶液、例えば水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液または炭酸ナトリウム水溶液を添加して、反応混合物を中和させることによって、該反応を停止させる。
【0064】
好ましい実施態様において、次いで、該ラテックスに、使用されるメタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステル、架橋剤(VI)およびグラフト剤(VII)を添加し、重合をおこなう。好ましくは、乳化重合は、ラジカル、例えば過酸化物開始剤、アゾ開始剤またはレドックス開始剤により開始される。レドックス系開始剤、特に、硫酸鉄、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ロンガリット(rongalite)およびヒドロペルオキシドの組合せにより調製されたスルホキシル酸塩系の開始剤を使用することが特に好ましい。
【0065】
シリコーンゴムの調製において使用されるグラフト剤(V)は、シリコーンゴム成分に対してポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分を共有結合させる効果をもたらす。重合中に、二種類のゴム成分が相互侵入することにより、該重合後に、複合ゴム成分をシリコーンゴム成分とポリアルキル(メタ)アクリレートゴム成分とに分離できない該複合ゴムが形成される。
【0066】
シリコーン-アクリレートグラフトゴムBを調製するために、ゴムベースB.2にモノマーB.1をグラフトさせる。
【0067】
例えば欧州特許第249964号明細書、同第430134号明細書および米国特許第4888388号明細書に記載される重合法を使用できる。
【0068】
例えば、グラフト重合は以下に記載の重合法に従っておこなわれる:
ラジカルにより開始される単段式または多段式の乳化重合の場合、水性ラテックス形態で存在するグラフトベースに、所望のビニルモノマーB.1を重合させる。グラフト効率は、可能な限り高くすべきであり、好ましくは10%以上である。グラフト効率は、使用されるグラフト剤(V)または(VII)に大きく依存する。シリコーン-アクリレートグラフトゴムに対する重合の後、水性ラッテクスを、例えば、金属塩(例えば塩化カルシウムまたは硫酸マグネシウム)を予め溶解させた温水に添加する。このようにして、シリコーン-アクリレートグラフトゴムを凝固させて、その後、分離させる。次いで、好ましい実施態様においては、所望により洗浄する。
【0069】
成分C
成分Cは、以下の成分C.1)およびC.2)から成る1または複数のグラフトポリマーである:
C.1)成分Cに基づき5〜95重量%、好ましくは30〜90重量%、特に好ましくは80〜90重量%、特に85〜90重量%の、以下の成分C.1.1)および成分C.1.2)からなる混合物:
C.1.1)C.1に基づき、65〜85重量%、好ましくは70〜80重量%の少なくとも1種のモノマーであって、該モノマーは、ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン)、環置換ビニル芳香族化合物(例えば、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン)およびメタクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート)から成る群から選択され、および、
C.1.2)C.1に基づき、15〜35重量%、好ましくは20〜30重量%の、少なくとも1種のモノマーであって、該モノマーは、シアン化ビニル(例えば、不飽和ニトリル、例えばアクリロニトリルおよびメタクリロニトリル)、(メタ)アクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えば、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート)および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)(例えば無水マレイン酸、およびN-フェニル-マレイミド)、
C.2)成分Cに基づき95〜5重量%、好ましくは70〜10重量%、特に好ましくは20〜10重量%、特に15〜10重量%の含有量であり、0℃未満、好ましくは−20℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種のグラフトベースであって、一般に、該グラフトベースC.2)は、0.05〜10μm、好ましくは0.1〜5μm、特に好ましくは0.15〜2μm、特に0.5〜1.5μmの平均粒度(d50値)を有する。
【0070】
平均粒度(d50値)は、該値の上下の各々に50重量%の粒子が存在する値での粒径である。この値は、超遠心測定によって測定できる(W.スコルタン及びH.ランゲ、「コロイド-ツァイトシュリフト・ウント・ツァイトシュリフト・ヒュア・ポリメーレ(Kolloid,Z.und Z.Polymere)、第250巻(1972年)、第782頁〜第796頁参照)。
【0071】
好ましいモノマーC.1.1は、スチレンモノマー、αメチルスチレンモノマーおよびメチルメタクリレートモノマーのうちの少なくとも1つから選択され、好ましいモノマーC.1.2は、アクリロニトリルモノマー、無水マレイン酸モノマーおよびメチルメタクリレートモノマーのうちの少なくとも1つから選択される。特に好ましいモノマーは、C.1.1の場合スチレンであり、C.1.2の場合アクリロニトリルである。
【0072】
グラフトポリマーC用の適当なグラフトベースC.2は、例えば、ジエンゴム、ジエン-ビニルブロックコポリマーゴム、EP(D)Mゴム、すなわち、エチレン/プロピレンおよび所望によりジエンに基づくゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴム、並びに、このようなゴムの混合物である。ただし、シリコーン-アクリレート(複合)ゴムを除く。
【0073】
好ましいグラフトベースC.2は、以下のものから成る群の少なくとも1種のジエンゴムから選択されるジエンゴムである:ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ジエンゴムのコポリマー、ブタジエンゴムと更なる共重合性モノマー(例えばC.1.1およびC.1.2に準じる)とのコポリマー、並びにイソプレンゴムと更なる共重合性ゴム(例えばC.1.1およびC.1.2に準じる)。純粋なポリブタジエンゴムおよびスチレン-ブタジエンブロックコポリマーゴムが特に好ましい。
【0074】
グラフトポリマーのゲル含有量は、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%、特に好ましくは20〜40重量%(アセトン中で測定)である。グラフトポリマーのゲル含有量は、適当な溶媒中で25℃にて測定した(M.ホフマン、H.クルーマー、R.カーン著、ポリマー分析(Polymeranalytik I und II)、ゲオルグ・テーメ-バーグ、シュトゥットガルト、1977年参照)。
【0075】
特に好ましいポリマーCは、例えば、ラジカル重合によって調製されたABSポリマー(乳化、塊状、溶液および懸濁ABSポリマー)であり、例えば、独国特許出願公開第2035390号A明細書(=米国特許(US-PS)第3644574号明細書)、独国特許公開第2248242号A明細書(=英国特許(GB-PS)第1409275号明細書)、または、「ウルマンズ工業化学百科事典」第19巻(1980年)、第280頁以降に記載されている。特に好ましいポリマーCは、塊状重合、溶液重合、または懸濁重合によって調製されたABSポリマーである。
【0076】
グラフトポリマーCは、C.1.1およびC.1.2から成る遊離コポリマー(すなわちゴムベースに対して化学的に結合しないコポリマー)を含有し、適当な溶媒(例えば、アセトン)中で溶解できることによって区別される。
【0077】
好ましくは、成分Cは、60000〜150000g/モル、好ましくは70000〜130000g/モル、特に好ましくは70000〜90000g/モルの、ゲル透過クロマトグラフィーによって測定した重量平均分子量(Mw)を有するC.11およびC.1.2から成る遊離コポリマーを含む。
【0078】
成分D
成分Dは、1種または複数種の熱可塑性ビニル(コ)ポリマーD.1および/またはポリアルキレンテレフタレートD.2を含有する。
【0079】
適当なビニル(コ)ポリマーD.1は、以下のものから成る群から選択される少なくとも1種のモノマーのポリマーである:ビニル芳香族化合物、シアン化ビニル(不飽和ニトリル)、(メタ)アクリル酸(C-C)-アルキルエステル、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸の誘導体(例えば、無水物およびイミド)。以下の成分D.1.1)および成分D1.2)を含有する(コ)ポリマーが特に適当である:
D.1.1) ビニル芳香族化合物および/または環置換ビニル芳香族化合物(例えばスチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレンなど)、および/または(メタ)アクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレートなど);50〜99重量部、好ましくは60〜80重量部、特に70〜80重量部、および
D.1.2) シアン化ビニル(不飽和ニトリル)(例えばアクリロニトリルおよびメタアクリロニトリルなど)および/または(メタ)アクリル酸(C-C)-アルキルエステル(例えばメチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレートなど)および/または不飽和カルボン酸(例えば、マレイン酸など)、および/または無水物およびイミドのような不飽和カルボン酸の誘導体、例えば無水マレイン酸およびN-マレイミドなど;1〜50重量部、好ましくは20〜40重量部、特に20〜30重量部。
【0080】
ビニル(コ)ポリマーD.1は、樹脂様、熱可塑性およびゴム不含である。特に好ましいコポリマーD1.1はスチレンであり、D1.2はアクリロニトリルである。
【0081】
D.1に係る(コ)ポリマーは既知であり、ラジカル重合、特に乳化重合、懸濁重合、溶液重合および塊重合により調製できる。好ましくは、(コ)ポリマーは、15000〜200000、特に好ましくは60000〜150000g/モル、特に70000〜130000g/モルの平均分子量Mw(光散乱法および沈降法により測定される重量平均分子量)を有する。
【0082】
成分D.2のポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸またはそれらの反応性誘導体、例えばジメチルエステルまたは無水物などと、脂肪族ジオール、脂環式ジオールまたは芳香脂肪族(araliphatic)ジオールとの反応生成物、並びにこのような反応生成物の混合物である。
【0083】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ジカルボン酸成分に基づき少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%のテレフタル酸基と、ジオール成分に基づき少なくとも80重量%、好ましくは少なくとも90重量%のエチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオール基を含有する。
【0084】
テレフタル酸基に加えて、好ましいポリアルキレンテレフタレートは、8〜14個の炭素原子を有する他の芳香族若しくは脂環式ジカルボン酸、または4〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、例えば、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、4,4'-ジフェニルジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸およびシクロヘキサンジ酢酸などの基を、20モル%以下、好ましくは10モル%以下含有してもよい。
【0085】
好ましいポリアルキレンテレフタレートは、エチレングリコール、1,3-プロパンジオールまたは1,4-ブタンジオール基に加えて、3〜12個の炭素原子を有する他の脂肪族ジオール、または6〜21個の炭素原子を有する脂環式ジオール、例えば、1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール、3-メチル2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、および2-エチル-1,6-ヘキサンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,5−ヘキサンジオール、1,4−ジ−(β−ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)−プロパン、2,4−ジヒドロキシ−1,1,3,3−テトラメチル−シクロブタン、2,2−ビス−(3−β−ヒドロキシエトキシ−フェニル)−プロパンおよび2,2−ビス−(4−ヒドロキシプロポキシフェニル)−プロパン(独国特許出願公開第2407674号A明細書、同第2407776号明細書、および同第2715932号明細書参照)の基を、20モル%以下含むことができる。
【0086】
例えば独国公開特許第1900270号A明細書および米国特許3692744号明細書に規定される、3価−若しくは4価アルコールまたは3塩基−若しくは4塩基カルボン酸を比較的少量取り込ませることにより、ポリアルキレンテレフタレートを分岐させることができる。好ましい分岐剤の例は、トリメシン酸、トリメリット酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンならびにペンタエリトリトールである。
【0087】
テレフタル酸およびそれらの反応性誘導体(例えばそれらのジアルキルエステル)と、エチレングリコールおよび/または1,4-ブタンジオールから単に調製されたポリアルキレンテレフタレート、およびこれらのポリアルキレンテレフタレートの混合物が特に好ましい。
【0088】
ポリアルキレンテレフタレートの混合物は、1〜50重量%、好ましくは1〜30重量%のポリエチレンテレフタレートと、50〜99重量%、好ましくは70〜99重量%のポリブチレンテレフタレートを含有する。
【0089】
一般的に使用される好ましいポリアルキレンテレフタレートは、ウベローデ粘度計を用い、25℃にてフェノール/o-ジクロロベンゼン(1:1重量部)で測定した場合、0.4〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gの極限粘度を有する。
【0090】
ポリアルキレンテレフタレートは、既知の方法によって調製できる(例えば、プラスチックハンドブック(Kunststoff-Handbuch)第VIII巻、第695頁以降、カール・ハンサー、バーグ社、ミュンヘン、1973年)。
【0091】
成分E
組成物は、商業的に入手可能な添加剤を更に含有でき、該成分Eには以下のものが含まれる:滑剤、離型剤(例えば、ペンタエリトリトールテトラステアレート)、核形成剤、安定剤、耐電防止剤(例えば導電性ブラック、カーボン繊維カーボンナノチューブおよび有機耐電防止剤、例えばポリアルキレンエーテル、アルキルスルホネートまたはポリアミド含有ポリマー)、酸、充填剤、および強化材料(例えば、ガラスまたはカーボン繊維、マイカ、カオリン、タルク、CaCOおよびガラスフレーク)、並びに着色剤および顔料。
【0092】
成形組成物の調製および成形品の製造
本発明に係る熱可塑性成形組成物は、既知の方法で各成分を混合し、常套の装置、例えば内部ニーダー、押出機および二軸押出し機などで220℃〜320℃、好ましくは240℃〜300℃で、該混合物を溶融配合および溶融押出しすることによって調製される。
【0093】
各成分の混合は既知の方法で行うことができ、連続的または同時におこなってもよく、約20℃(室温)またはより高い温度で行うことができる。
【0094】
また、本発明は、成形組成物の調製方法、成形品の製造における該成形組成物の使用、およびそれらの成形品を提供する。
【0095】
本発明に係る成形組成物は、あらゆる種類の成形品の製造において使用できる。これらは、射出成形法、押出成形法、ブロー成形法によって製造できる。更なる加工形態は、予め製造したシートまたはフィルムを深絞りすることによって成形品を製造する形態である。
【0096】
このような成形品の例としては以下のものが含まれる:フィルム、異形材、任意の種類の外被部品、例えば家庭用電気器具(例えば、テレビ、果汁搾り機、コーヒーメーカーおよびミキサーなど)、事務機器(例えば、モニター、フラットスクリーン、ノートパソコン、プリンターおよびコピー機など)、シート、チューブ、電気設備用の導管、窓、ドアおよびその他の建築領域の異形材(屋内備品および屋外用品)、並びに電気部品および電子部品(例えば、スイッチ、プラグおよびソケット)、並びに市販の車両(特に自動車)のボディー部品および内装品。
【0097】
特に、本発明による成形組成物は、例えば、以下の成形品または鋳造物の製造においても使用できる:鉄道車両、船舶、航空機、バスおよびその他の動力車用の内部設備品、小型変圧器を備える電気装置の外装、情報の処理および伝達用装置の外装、医療機器、マッサージ機器およびこれらの外装用の外装および被覆品、子供用乗物玩具、組立壁板、安全装置およびテレビ用の外装、断熱性輸送コンテナ、衛生器具用の成形品および浴室用装備品、換気口用の被覆格子および園芸設備用の外装。
【0098】
以下の説明は、本発明を更に説明する。
【実施例】
【0099】
成分A
25℃および0.5g/100mlの濃度で、溶媒としてCHClを用いて測定した相対溶液粘度ηrel=1.28を有するビスフェノールAに基づく非分岐鎖状ポリカーボネート。
【0100】
成分B-1
耐衝撃性改良剤、以下の成分B-1.1およびB-1.2から成るグラフトポリマー:
B-1.1 11重量%のメチルメタクリレート、
B-1.2 89重量%の、グラフトベースとしてのシリコーンアクリレート複合ゴム、該シリコーンアクリレートゴムは、以下の成分B-1.2.1およびB-1.2.2を含有する;
B-1.2.1 92重量%のシリコーンゴム、および
B-1.2.2 8重量%のポリブチルアクリレートゴム、
なお、2つの上述したゴム成分B-1.2.1およびB-1.2.2は、該複合ゴム中において相互侵入することにより、実質的に相互に分離できない。
【0101】
成分B-2
耐衝撃性改良剤、以下の成分B-2.1およびB-2.2から成るグラフトポリマー:
B-2.1 17重量%のメチルメタクリレート、
B-2.2 83重量%の、グラフトベースとしてのシリコーンアクリレート複合ゴム、該シリコーンアクリレートゴムは、以下の成分B-2.2.1およびB-2.2.2を含有する;
B-2.2.1 11重量%のシリコーンゴム、および
B-2.2.2 89重量%のポリブチルアクリレートゴム、
なお、2つの上述したゴム成分B-2.2.1およびB-2.2.2は、該複合ゴム中において相互侵入することにより、実質的に相互に分離できない。
【0102】
成分C-1
スチレン含有量が26重量%のポリブタジエン-スチレンブロックコポリマーゴムを、ABSポリマーに基づき18重量%存在させた条件下で、24重量%のアクリロニトリルと76重量%のスチレンとの混合物を、ABSポリマーに基づき82重量%用いて塊状重合によって調製したABSポリマー。ABSポリマー中の遊離SANコポリマー成分の重量平均分子量Mは、80000g/モルである(THF溶媒、GPCを用いて測定した)。ABSポリマーのゲル含有量は、24重量%である(アセトンを用いて測定した)。
【0103】
成分C-2
塊状重合によってABSポリマーを調製した。アクリロニトリル:ブタジエン:スチレンの重量比は20:16:64である。ABSポリマー中の遊離SANコポリマー成分の重量平均分子量Mは、168000g/モルである(THF溶媒、GPCを用いて測定した)。ABSポリマーのゲル含有量は、30重量%である(アセトンを用いて測定した)。
【0104】
成分D
塊状法によって調製した、重量平均分子量Mが130kg/モル(GPCを用いて測定)である、77重量%のスチレンと23重量%のアクリロニトリルから成るコポリマー。
【0105】
成分E
成分E-1:ペンタエリトリトールテトラステアレート
成分E-2:Irganox(登録商標)B900(製造者:チバ・スペシャリティケミカルズ社、バーゼル、スイス)。
【0106】
成形組成物の調製および試験
表1〜表2に記載した各物質を、2軸押出機(ZSK-25)(Werner und Pfleiderer社)を用いて、装置温度260℃にて、225rpmの速度で配合し、20kg/hの量で押出し、次いで粒状化した。
【0107】
得られた粒状物を、射出成形機を用いて、対応する試験片に加工した(溶融温度260℃、金型温度80℃、フローフロント速度240mm/s)。性質の評価は、DIN EN ISO 527(引裂き時伸び、引張り試験によって測定した)、ISO 11443(260℃および1000s-1の剪断速度での溶融粘度)、およびDIN EN ISO 1133(260℃および5kgのダイス荷重でのメルトボリュームフローレートMVR)に従っておこなった。
【0108】
100%の相対大気湿度および95℃の条件下で7日間粒状物を貯蔵(「FWL貯蔵」)し、260℃および5kgのダイス荷重でISO 1133に従い測定したMVR変化量は、調製した組成物の加水分解安定性を測定するために用いる。貯蔵前のMVR値と比較したMVR値の増加量は、以下の式によって定義されるΔMVR(加水分解)として算出される
【0109】
【数1】

【0110】
本発明による実施例1および実施例3における本発明に係る組成物は、比較例の組成物と比べて、より高い加水分解安定性と、より高い引裂き時伸びと、より低い溶融粘度を有することが、表1から判る。
【0111】
【表1】

【0112】
本発明に係るABSポリマーC-1と比べより高いモル質量を有するABSポリマーC-2は、遊離コポリマー(すなわち、ゴムに結合しないコポリマー)を含有する。本発明に係る成分C-1を含有する組成物(実施例5および7)は、成分C-2を含有する比較例6および比較例8の組成物と比べて、より高い加水分解安定性と、より高い引裂き時伸びと、より低い溶融粘度を有することが、表2から判る。
【0113】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分A)〜D)を含有し、防炎加工剤を含有しない組成物:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、40〜99重量部、
B)シリコーンゴムおよびポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから成るシリコーンアクリレート複合ゴムをグラフトベースとする第1グラフトポリマーであって、
シリコーンゴムの量がグラフトベースに基づき65〜95重量%である該第1グラフトポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0.5〜20重量部、
C)該ゴムに対して化学的に結合しない遊離コポリマーを含有し、60000〜150000g/モルの重量平均分子量を有する第2グラフトポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0.5〜40重量部、
D)ゴム不含ビニル(コ)ポリマーおよびポリアルキレンテレフタレートから成る群から選択される1種または複数種のポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、0〜20重量部。
【請求項2】
以下の成分B.1およびB.2から成るグラフトポリマーを成分Bとして含有する請求項1に記載の組成物:
B.1 5〜95重量%の1種または複数種のビニルモノマー、
B.2 95〜5重量%の、グラフトベースとしての1種または複数種のシリコーン-アクリレート複合ゴムであって、該シリコーン-アクリレートゴムは、以下の成分B.2.1およびB.2.2を含有する:
B.2.1 65〜95重量%のシリコーンゴムおよび、
B.2.2 35〜5重量%のポリアルキル(メタ)アクリレートゴム
ただし、上記2種類のゴム成分B.2.1およびB.2.2は複合ゴム中において相互侵入することにより、実質的に相互に分離できない。
【請求項3】
ビニルモノマーB.1が、スチレン、α-メチルスチレン、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレートおよびアクリロニトリルから成る群のうちの少なくとも1種から選択される請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
以下の成分C.1)およびC.2)から成るグラフトポリマーを成分Cとして含有する請求項1に記載の組成物:
C.1)以下の成分C.1.1)および成分C.1.2)から成る混合物:成分Cに基づき5〜95重量%:
C.1.1)ビニル芳香族化合物、環置換ビニル芳香族化合物およびメタクリル酸(C-C)-アルキルエステルから成る群から選択される少なくとも1種のモノマー:C.1に基づき65〜85重量%、および
C.1.2)シアン化ビニル、(メタ)アクリル酸(C-C)-アルキルエステルおよび不飽和カルボン酸の誘導体からなる群から選択される少なくとも1種のモノマー:C.1に基づき15〜35重量%、
C.2)0.05〜10μmの平均粒度(d50値)を有し、0℃未満のガラス転移温度を有する少なくとも1種のグラフトベースC.2):成分Cに基づき95〜5重量%。
【請求項5】
グラフトベースC.2が、シリコーンゴムとアクリレートゴムとを含有する混合物を除く、ジエンゴム、ジエン-ビニルブロックコポリマーゴム、エチレン/プロピレンゴム、エチレン/プロピレン/ジエンゴム、アクリレート、ポリウレタン、シリコーン、クロロプレンおよびエチレン/ビニルアセテートゴムから成る群から選択される請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ゴムに対して化学的に結合しない遊離コポリマーを含有し、70000〜90000g/モルの重量平均分子量を有するグラフトポリマーを成分Cとして含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
塊状重合法、溶液重合法または塊状-懸濁重合法によって調製されたグラフトポリマーを成分Cとして含有する請求項4に記載の組成物であって、
成分C.1.1に係るモノマーのうちの少なくとも1種を、グラフトシェルのモノマーに基づき70〜80重量%と、
成分C.1.2に係るモノマーのうちの少なくとも1種を、グラフトシェルのモノマーに基づき20〜30重量%含有するグラフトシェルを有すると共に、
10〜20重量%のゴム含有量(グラフトポリマーC中の成分C.2の含有量)を示す該組成物。
【請求項8】
ゴム不含ビニル(コ)ポリマーD.1およびポリアルキレンテレフタレートD.2から成る群から選択される1種または複数種のポリマーを、成分A+B+C+Dの総重量部に基づき3〜16重量部の量で成分Dとして含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
滑剤、離型剤、核形成剤、安定剤、耐電防止剤、酸、充填剤、および強化材料、並びに着色剤および顔料から成る群から選択される1種または複数種の添加剤を、いずれの場合も成分A+B+C+Dの総重量部に基づき0〜50重量部含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
以下の成分A)〜E)から成る組成物:
A)芳香族ポリカーボネートおよび/または芳香族ポリエステルカーボネート;成分A+B+C+Dの総重量部に基づき40〜99重量部、
B)相互侵入したシリコーンゴムおよびポリアルキル(メタ)アクリレートゴムから成るシリコーンアクリレート複合ゴムをグラフトベースとする第1グラフトポリマーであって、シリコーンゴムの含有量がグラフトベースに基づき65〜95重量%である該第1グラフトポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき0.5〜20重量部、
C)該ゴムに対して化学的に結合しない遊離コポリマーを含有し、60000〜150000g/モルの重量平均分子量を有する第2グラフトポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき0.5〜20重量部、
D)ゴム不含ビニル(コ)ポリマーおよびポリアルキレンテレフタレートから成る群から選択される1種または複数種のポリマー:成分A+B+C+Dの総重量部に基づき、3〜16重量部、および
E)滑剤、離型剤、核形成剤、安定剤、耐電防止剤、酸、充填剤、および強化材料、並びに着色剤および顔料から成る群から選択される1種または複数種の添加剤:A+B+C+Dの総重量部に基づき0.5〜25重量部。
【請求項11】
成分Bの量が、成分A+B+C+Dの総重量部に基づき8〜13重量部であり、
成分Cの量が、成分A+B+C+Dの総重量部に基づき7〜16重量部である請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
成形品の製造における請求項1に記載の組成物の使用
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の組成物を含有する成形品。
【請求項14】
成形品が、自動車、鉄道車両、航空機または船舶の部品、あるいはフィルム、異形材または任意の種類の外被部品であることを特徴とする請求項13に記載の成形品。

【公表番号】特表2012−513503(P2012−513503A)
【公表日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542694(P2011−542694)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008817
【国際公開番号】WO2010/072335
【国際公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】