説明

耐酸化性の複合逆浸透膜

【課題】耐用年数が短く頻繁に交換を必要とし膜性能が低下しやすいポリアミド系逆浸透膜において、その酸化性物質に対する耐久性が向上した複合ポリアミド系逆浸透膜とその製造するプロセスを提供する。
【解決手段】多孔質支持体と、前記支持体の上に形成されるポリアミド層とを備える複合逆浸透膜であって、ポリアミド層を過硫酸塩系薬剤によって改質することで、約2,000ppmから30,000ppmの濃度を持つNaClO水溶液に約1時間さらされた後に少なくとも85%の塩排除を保持する、酸化抵抗性を有する複合逆浸透膜となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は逆浸透膜に関し、より詳細には、改質されたポリアミド層を備える新規な複合逆浸透膜、およびその製造プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透技術は、特定の分子に対して選択的な透過性を持つ半透過性膜、すなわち逆浸透膜(RO膜)により、溶液の浸透圧を超える圧力下で、溶解した物質を溶液から分離するのに使用される。従って、逆浸透は液体の精製および濃縮に広く使用され、特に、高度に精製された水を得るために、無機イオン、バクテリア、ウィルス、有機コロイド物質などの汚染物質を逆浸透によって原水から除去する必要がある水処理において広く使われてきた。
【0003】
複合膜は逆浸透膜の1つであり、多孔質支持体と、その支持体上に形成された薄いポリアミド層とを備えている。典型的には、ポリアミド層は多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重合によって形成される。
【0004】
米国特許第4,277,344号は複合ポリアミド逆浸透膜を開示し、この膜は、少なくとも2つの第1級アミノ置換基を持つ芳香族多官能アミンと、少なくとも3つのハロゲン化アシル置換基を持つ芳香族酸ハロゲン化物との界面反応生成物である。
【0005】
米国特許第4,983,291号には複合逆浸透膜が開示され、この逆浸透膜は、多孔質支持体を多官能アミンの水溶液と多官能酸ハロゲン化物の有機溶液とに連続して接触させ、その後、乾燥の前に酸または塩で処理することによって製造される。
【0006】
米国特許第6,723,422号は膜を開示し、この膜は、(i)少なくとも2つの反応性アミノ基を持つ1つ以上の化合物を含む溶液Aを多孔質支持体上にコーティングして層を形成し、(ii)この層を、1つ以上の多官能酸ハロゲン化物の化合物を含む溶液Bと接触させ、そして(iii)その層をさらに、溶液Bよりも濃度の高い1つ以上の多官能酸ハロゲン化物の化合物を含む他の溶液Cと接触させて多孔質支持体上にポリアミド皮膜層を形成することによって製造される。
【0007】
米国特許公開第2006−219,628号はポリアミド膜を開示し、このポリアミド膜は、(i)多官能アミンを含む水溶液と、(ii)多官能酸ハロゲン化物、多官能ハロゲン化スルホニル、および多官能イソシアネートからなる群から選択されるアミン反応性反応剤を含む有機溶液との反応生成物を含有し、有機溶媒溶液はさらに少なくとも1つの極性エーテル化合物を含んでいる。
【0008】
上述のすべての参照文献は、それらを全部引用することにより明示的に本願に取り入れられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、現行のポリアミドRO膜には、短期間の水処理に使用された後に水中に存在する有機または無機物質によって汚染されるという欠点がある。例えば、無機イオン、バクテリア、ウィルス、有機コロイド物質などの原水中に存在する汚染物質が膜に吸着され、これにより膜の上にコロイド付着および/または生物付着を形成し、それが膜の水分流動を大幅に減少させてしまう。さらに、現行のRO膜は酸化物質に非常に敏感であるため、比較的低い濃度でも膜の性能を著しく劣化させ、膜の塩排除を急速に低下させる。たいていの水源は汚染され、それらのいくつかは前処理された排水であるため、RO膜を使って処理されるべき原水は常に大量の酸化性殺菌剤を含んでいる。その結果、このような原水の処理に使用される現行のRO膜は通常、耐用年数が短く、頻繁に交換を必要とし、そのため、処理コストが高くなると同時に膜の効率を低下させることになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
従来技術の逆浸透膜の欠点を考慮して、本発明は、酸化および有機物付着に対する抵抗性に優れた新規な複合逆浸透膜、およびその製造のためのプロセスを提供するものである。
【0011】
本発明の一局面によれば、a)多孔質支持体と、b)前記支持体の上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜が提供され、前記ポリアミド層は薬剤によって改質されることで、前記膜が、約2,000ppmから30,000ppmの濃度を持つNaClO水溶液に約1時間さらされた後に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の塩排除を保持する。
【0012】
本発明の特定の実施態様では、前記薬剤は過硫酸塩であり、前記ポリアミド層は調製された後に改質される。
【0013】
本発明の他の特定の実施態様では、薬剤は多官能ハロアリール酸ハロゲン化物であり、前記ポリアミド層はその調製中に改質される。
【0014】
本発明の他の局面によれば、a)多孔質支持体と、b)前記支持体上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜が提供され、前記ポリアミド層は過硫酸塩によって改質される。
【0015】
本発明の好ましい実施態様では、前記ポリアミド層は、多官能アミンと、多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって形成される。より好ましくは、多官能酸ハロゲン化物試薬は多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む。
【0016】
本発明のさらに他の局面によれば、a)多孔質支持体と、b)前記支持体の上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜が提供され、前記ポリアミド層は、多官能アミンと、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって形成される。
【0017】
本発明のさらなる局面によれば、約2,000ppmから30,000ppmの濃度を持つNaClO水溶液に約1時間さらされた後に、少なくとも85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%の塩排除を保持することができる逆浸透膜を製造するためのプロセスが提供される。このプロセスは、i)多孔質支持体を設ける工程、ii)前記支持体上にポリアミド層を形成する工程、およびiii)前記ポリアミド層を薬剤によって改質する工程を具備する。
【0018】
本発明の特定の実施態様では、前記薬剤は過硫酸塩であり、ポリアミド層は調製された後に改質される。
【0019】
本発明の他の特定の実施態様では、前記薬剤は多官能ハロアリール酸ハロゲン化物であり、ポリアミド層は調製中に改質される。
【0020】
本発明のさらに他の局面によれば、逆浸透膜を製造するためのプロセスが提供され、このプロセスは、i)多孔質支持体を設ける工程、ii)前記支持体上にポリアミド層を形成する工程、およびiii)前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程を具備する。
【0021】
本発明のさらに他の局面によれば、逆浸透膜を製造するためのプロセスが提供され、このプロセスは、i)多孔質支持体を設ける工程、およびii)多官能アミンと、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって、前記支持体上にポリアミド層を形成する工程を具備する。
【0022】
本発明の好ましい実施態様では、前記プロセスは、さらに、iii)前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程を具備する。
【0023】
本発明のさらに他の局面によれば、ポリアミド層を有する逆浸透膜の性能を改善するためのプロセスが提供され、このプロセスは、前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程を具備する。
【発明の効果】
【0024】
従来技術におけるこれまでのRO膜と比較すると、本発明のRO膜は、酸化および有機物付着に対する抵抗性が改善されており、使用条件下においてより長い耐用寿命を持っている。さらに、本発明のRO膜は、比較的より高い塩排除性および水分流動性を有し、簡単に製造しおよび使用することができ、洗浄の間隔を比較的より長くすることができる。本発明のRO膜は、水処理ならびに逆浸透をともなうその他の分野での使用に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明で使用される多孔質支持体は本発明に重要ではなく、典型的には微孔質支持体である。本発明での使用に適した具体的な微孔質支持体はポリマー性材料であってもよく、その孔径は、透過物を通過させるには十分なサイズを有するが、その上に形成されるポリアミド膜の架橋を妨げるほど大きくはない。支持体の孔のサイズは一般には1nmから500nmの範囲であり、好ましくは1nmから300nmの範囲である。本発明の微孔質支持体の例としては、これらに限定されるわけではないが、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、およびポリフッ化ビニリデンなどのさまざまなハロゲン化ポリマーから得られるものが挙げられる。別の微孔質支持体材料は本願で引用した参照文献に見出すことができる。
【0026】
好ましくは、採用される多孔質支持体はポリスルホンフィルムであり、不織布で補強されていてもよい。逆浸透膜に使用するのに適した従来の不織布であればどのようなものでも、本発明において使用することができる。
【0027】
微孔質支持体の厚みは本発明にとって重要ではなく、一般には約25μmから125μmの範囲であり、好ましくは約40μmから75μmの範囲である。
【0028】
本発明で使用される多官能アミンは本発明にとって重要ではなく、単独の多官能アミンでもよく、またはその組み合わせであってもよい。使用される好ましい多官能アミンは、本質的には少なくとも2つのアミン官能基、より好ましくは2つから3つのアミン官能基を持つモノマーアミンである。アミン官能基は、典型的には第1級または第2級アミン官能基であり、好ましくは第1級アミン官能基である。
【0029】
本発明で使用できる適切な多官能アミンとしては、これらに限定されるわけではないが、m−フェニレンジアミン(MPDA)、p−フェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、2,4−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノアニソール、アミドール、およびキシレンジアミンなどの芳香族多官能アミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、およびトリス(2−アミノエチル)アミンなどの脂肪族多官能アミン;および1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、および4−アミノメチルピペラジンなどの脂環式多官能アミンが挙げられる。その他の適切な多官能アミンは本願で引用する参照文献の中に見出すことができる。本発明で使用される好ましい多官能アミンは芳香族第1級ジアミンであり、より好ましくはm−フェニレンジアミンである。
【0030】
本発明の特定の実施態様では、使用される多官能アミンは水溶液の形態である。水溶液中の多官能アミンの濃度は重要ではなく、典型的には約0.1重量%から20重量%の範囲であり、より好ましくは0.5重量%から8重量%の範囲であり、さらにより好ましくは0.5重量%から5重量%の範囲である。
【0031】
多官能アミン水溶液は、膜の形成を容易にするための、または得られる複合逆浸透膜の特性を改善するための添加剤をさらに含んでいてもよい。適切な添加剤としては、これらに限定されるわけではないが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンおよびポリアクリル酸などのポリマー;ソルビトールおよびグリセロールなどの多価アルコール;ハロゲン化テトラ−アルキルアンモニウムまたはトリアルキルアミンと有機酸との塩などのアミン塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、およびラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤;および米国特許第6,723,422号に開示されているようなその他の成分が挙げられる。好ましくは、多官能アミン溶液はさらに、界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムをさらに含んでおり、これは多孔質支持体への多官能アミン溶液の吸着を改善するのに有効なものである。より好ましくは、水溶液中の界面活性剤の濃度は約0.05〜1重量%である。
【0032】
本発明に使用するのに適した多官能酸ハロゲン化物試薬としては、これらに限定されるわけではないが、塩化トリメソイル(TMC)、塩化イソフタロイル(IPC)、塩化テレフタロイル(TPC)、塩化ビフェニルジカルボン酸、二塩化ナフタレンジカルボン酸、塩化ベンゼントリスルホン酸、塩化ベンゼンジスルホン酸、塩化クロロスルフォニウムベンゼンジカルボン酸、2−ヨード−塩化イソフタロイル、4−ヨード−塩化イソフタロイル、5−ヨード−塩化イソフタロイル、および6−ヨード−塩化イソフタロイルなどの芳香族多官能酸ハロゲン化物;塩化プロパントリカルボン酸、塩化ブタントリカルボン酸、塩化ペンタントリカルボン酸、ハロゲン化グルタリル、およびハロゲン化アジポイルなどの脂肪族多官能酸ハロゲン化物;および塩化シクロプロパントリカルボン酸、塩化シクロブタンテトラカルボン酸、塩化シクロペンタントリカルボン酸、塩化シクロペンタンテトラカルボン酸、塩化シクロヘキサントリカルボン酸、塩化テトラヒドロフランテトラカルボン酸、塩化シクロペンタンジカルボン酸、塩化シクロブタンジカルボン酸、塩化シクロヘキサンジカルボン酸、および塩化テトラヒドロフランジカルボン酸などの脂環式多官能酸ハロゲン化物が挙げられ、これらは単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
【0033】
好ましくは、使用される多官能酸ハロゲン化物試薬は、芳香族多官能酸ハロゲン化物、特に芳香族多官能酸塩化物である。
【0034】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、多官能酸ハロゲン化物試薬は、多官能アリール酸ハロゲン化物、より好ましくは塩化トリメソイル、塩化イソフタロイル、および塩化テレフタロイルなどの多官能フェニール酸塩化物を含む。
【0035】
本発明の他の好ましい実施態様では、使用される多官能酸ハロゲン化物試薬は、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物、より好ましくは多官能ハロアリール酸塩化物を含む。
【0036】
本発明のさらに好ましい実施態様では、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、多官能酸ハロゲン化物試薬の約5重量%から100重量%、より好ましくは約5重量%から80重量%、さらにより好ましくは20重量%から70重量%である。
【0037】
好ましくは、本発明で使用される多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、2−ヨード−塩化イソフタロイル、4−ヨード−塩化イソフタロイル、5−ヨード−塩化イソフタロイル、6−ヨード−塩化イソフタロイル、2−ブロモ−塩化イソフタロイル、4−ブロモ−塩化イソフタロイル、5−ブロモ−塩化イソフタロイル、6−ブロモ−塩化イソフタロイル、2−ヨード−塩化テレフタロイル、2−ブロモ−塩化テレフタロイル、またはそれらの混合物などの多官能ハロフェニル酸塩化物が挙げられる。
【0038】
本発明の特に好ましい実施態様では、使用される多官能酸ハロゲン化物試薬は、0〜95重量部の塩化トリメソイルおよび5〜100重量部の多官能ハロフェニル酸塩化物を含む。
【0039】
本発明のさらに好ましい実施態様では、多官能酸ハロゲン化物試薬は、20〜95部の塩化トリメソイルおよび5〜80部の多官能ハロフェニル酸塩化物を含んでいる。
【0040】
本発明の別のさらに好ましい実施態様では、多官能酸ハロゲン化物試薬は、30〜80部の塩化トリメソイルおよび20〜70部の多官能ハロフェニル酸塩化物を含んでいる。
【0041】
本発明の特定の実施態様では、使用される多官能酸ハロゲン化物試薬は有機溶液の形態である。溶液中における多官能酸ハロゲン化物試薬の典型的な濃度は、0.01重量%から5重量%の範囲であり、より好ましくは0.05重量%から1重量%の範囲である。
【0042】
酸ハロゲン化物試薬の有機溶液で好ましく使用される溶媒は、水と混ざり合わない有機溶媒である。かかる溶媒のうち、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、およびシクロヘキサンなどの炭化水素、および四塩化炭素、トリクロロトリフオロエタン、およびジフルオロテトラクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素が特に好ましい。その他の適切な溶媒は本願で引用する参照文献中に見出すことができる。
【0043】
本発明の好ましい実施態様では、使用される過硫酸塩は無機過硫酸塩であり、より好ましくは、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの過硫酸アルカリ金属塩およびア過硫酸ンモニウムからなる群から選択される。
【0044】
本発明の好ましい実施態様では、使用される過硫酸塩は、濃度が0.5〜10重量%で、pHが7.5〜8.5の水溶液の形態である。より好ましくは、過硫酸塩の水溶液は、濃度が0.5〜3重量%である。
【0045】
本発明のいくつかの好ましい実施態様では、過硫酸塩による改質は、約10〜120分間行われる。
【0046】
本発明によって複合ポリアミド逆浸透膜を製造するには、上述の多孔質支持体に上述の多官能アミン水溶液を、好ましくは手作業のコーティングまたは連続的な作業のいずれかを利用してコーティングし、その後、余分な溶液を、好ましくは圧延、スポンジ吸い取り、エアナイフ、またはその他の適切な技術によって支持体から除去する。これに引き続き、コーティングした支持体材料を、好ましくは浸漬または噴霧により、上述の酸ハロゲン化物の有機溶液と接触させて、所定時間、好ましくは約5秒から約10分間、より好ましくは約20秒から4分間、放置する。そして、得られた生成物を、好ましくは室温から100℃の範囲の温度で空気乾燥によって乾燥させ、もし所望であれば過硫酸塩でさらに処理することで、本発明の複合逆浸透膜が得られる。
【0047】
以後、本発明を以下の実施例によって詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではないとみなすべきである。
【実施例】
【0048】
以下の実施例で使用される多孔質支持体は、どのような従来技術の方法によっても、例えばポリスルホン(米国のSolvay Advanced Polymers社製P−3500、数平均分子量20,000〜50,000)のDMF中での16%溶液を不織布上に拡散させることにより、得ることができる。
【0049】
(比較例1)
0.1重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を含むm−フェニレンジアミンの2.5%溶液中に、多孔質支持体を約1分間浸漬した。次いで、支持体を水切りしニップ圧延して余分な水溶液を取り除いた。その後、処理した支持体を、エチルヘキサン中での0.1%(重量/体積)塩化トリメソイル溶液と50秒間接触させてポリアミド層を形成し、そしてオーブン中で40℃の温度で10分間乾燥させて、複合ポリアミド逆浸透膜を得た。
【0050】
得られたRO膜の初期性能を、pH7.5の塩化ナトリウムの2,000ppm溶液を使って、225psiの下で測定した。その後、膜を、NaClOの2,000ppm溶液中に30時間浸漬し、処理した膜の性能を上述と同じ条件下で再び測定した。結果を以下の表1に示した。
【0051】
(実施例1−2)
比較例1で調製した複合RO膜を、リン酸カリウム緩衝液によってpH8に維持した過硫酸カリウムの1%水溶液に、以下の表1に示すように時間を変えて浸漬し、その後オーブン中で140℃の温度で5分間乾燥させることで本発明の複合RO膜を得た。RO膜の性能を比較例1で記載したように測定し、結果を表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すデータより、RO膜の酸化に対する抵抗性は、過硫酸カリウムによる処理によって大幅に改善されたことがわかる。
【0054】
(実施例3−8)
多孔質支持体を、0.1重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを含むm−フェニレンジアミン(MPDA)の2.5%溶液中に約1分間浸漬した。そして、支持体を水切りしニップ圧延して余分な水溶液を取り除いた。その後、処理した支持体を、以下の表2に示すように、エチルヘキサン中での0.1%(重量/体積%)酸塩化物溶液と50秒間接触させ、その後オーブン中で40℃の温度で10分間乾燥させてポリアミド逆浸透膜を得た。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を表2に示した。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示すデータから、5−ヨード−塩化イソフタロイルを添加することにより、NaClOによる処理後のRO膜の塩排除および水分流動の変化が小さくなったことがわかる。このことは、膜の酸化に対する抵抗性が大幅に改善されたことを示している。
【0057】
(実施例9)
5−ヨード−塩化イソフタロイルに代えて2−ヨード−塩化テレフタロイルを用いた点を除き、実施例6で説明したプロセスによりRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表3に示した。
【0058】
(実施例10)
5−ヨード−塩化イソフタロイルに代えて5−ブロモ−塩化イソフタロイルを用いた点を除き、実施例6で説明したプロセスによりRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表3に示した。
【0059】
(実施例11)
m−フェニレンジアミンに代えてp−フェニレンジアミンを用いた点を除き、実施例6で説明したプロセスによりRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表3に示した。
【0060】
【表3】

【0061】
(実施例12−17)
多孔質支持体を、0.1重量%のドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)を含むm−フェニレンジアミン(MPDA)の2.5%溶液中に約1分間浸漬した。次いで、支持体を水切りしニップ圧延して余分な水溶液を取り除いた。その後、処理した支持体を、以下の表4に示すように、エチルヘキサン中での0.1%(重量/体積)酸塩化物溶液と50秒間接触させ、そしてオーブン中で40℃の温度で10分間乾燥させて、複合ポリアミド逆浸透膜を得た。
【0062】
次いで、この膜を、リン酸カリウム緩衝液によってpH8に維持されている過硫酸カリウムの1%水溶液で30分間処理し、そしてオーブン中で140℃の温度で5分間乾燥させた。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表4に示した。
【0063】
【表4】

【0064】
表4に示すデータから、過硫酸カリウムによる処理によって、RO膜の酸化抵抗性が大幅に改善されたことがわかる。
【0065】
(実施例18)
5−ヨード−塩化イソフタロイルに代えて2−ヨード−塩化テレフタロイルを用いた点を除き、実施例15で説明したプロセスによってRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表5に示した。
【0066】
(実施例19)
5−ヨード−塩化イソフタロイルに代えて5−ブロモ−塩化イソフタロイルを用いた点を除き、実施例15で説明したプロセスによってRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表5に示した。
【0067】
(実施例20)
m−フェニレンジアミンに代えて3,3−ジアミノシクロヘキサンを用いた点を除き、実施例15で説明したプロセスによってRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表5に示した。
【0068】
【表5】

【0069】
(実施例21−25)
過硫酸カリウムによる処理を表6に示すように時間を変えて行った点を除き、実施例15で説明したプロセスによってRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を以下の表6に示した。
【0070】
【表6】

【0071】
表6に示すデータから、過硫酸カリウムによる処理によってRO膜の酸化抵抗性が大幅に改善されたことがわかる。
【0072】
(実施例26−31)
以下の表7に示すように過硫酸カリウムの水溶液の濃度を変えて処理を行った点を除き、実施例15で説明したプロセスによってRO膜を調製した。膜の性能を比較例1で説明したように測定し、結果を表7に示した。
【0073】
【表7】

【0074】
表7に示すデータから、さまざまな濃度の過硫酸カリウムで処理することにより、特に0.5〜3.0%の濃度での処理により、RO膜の酸化に対する抵抗性がさらに改善されたことがわかる。
【0075】
以上、本発明は、好ましい実施態様および任意の特徴によって具体的に開示されたが、本願で開示された概念の改変および変形が当業者によって行われるものと理解されるべきであり、かかる改変および変形も本発明の範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)多孔質支持体と、b)前記支持体の上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜であって、
前記ポリアミド層は薬剤によって改質されることで、前記膜が、約2,000ppmから30,000ppmの濃度を持つNaClO水溶液に約1時間さらされた後に少なくとも85%の塩排除を保持する逆浸透膜。
【請求項2】
a)多孔質支持体と、b)前記支持体上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜であって、
前記ポリアミド層は過硫酸塩によって改質される逆浸透膜。
【請求項3】
前記過硫酸塩は、無機過硫酸塩である請求項2に記載の逆浸透膜。
【請求項4】
前記無機過硫酸塩は、アルカリ金属過硫酸塩および過硫酸アンモニウムから選択される請求項3に記載の逆浸透膜。
【請求項5】
前記無機過硫酸塩は、過硫酸カリウムの0.5〜10重量%水溶液の形態である請求項3または4に記載の逆浸透膜。
【請求項6】
前記無機過硫酸塩は、0.5〜3重量%水溶液の形態である請求項5に記載の逆浸透膜。
【請求項7】
前記ポリアミド層は、多官能アミンと、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって形成される請求項2〜6のいずれかに記載の逆浸透膜。
【請求項8】
前記多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、多官能ハロフェニル酸塩化物である請求項7に記載の逆浸透膜。
【請求項9】
前記多官能ハロフェニル酸塩化物は、5−ヨード−塩化イソフタロイル、2−ヨード−塩化テレフタロイル、5−ブロモ−塩化イソフタロイル、2−ブロモ−塩化テレフタロイル、およびそれらの混合物からなる群から選択される請求項8に記載の逆浸透膜。
【請求項10】
前記多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、前記多官能酸ハロゲン化物試薬の約20〜70重量%であることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載の逆浸透膜。
【請求項11】
a)多孔質支持体と、b)前記多孔質支持体の上に形成されるポリアミド層とを備える逆浸透膜であって、
前記ポリアミド層は、多官能アミンと、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって形成される逆浸透膜。
【請求項12】
前記多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、請求項8〜10のいずれかに定義されるとおりである請求項11に記載の逆浸透膜。
【請求項13】
i)多孔質支持体を設ける工程、
ii)前記支持体上にポリアミド層を形成する工程、および
iii)前記ポリアミド層を薬剤によって改質する工程
を具備する請求項1に記載の逆浸透膜を製造するためのプロセス。
【請求項14】
i)多孔質支持体を設ける工程、
ii)前記支持体上にポリアミド層を設ける工程、および
iii)前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程
を具備する逆浸透膜を製造するためのプロセス。
【請求項15】
前記過硫酸塩は、請求項3〜6のいずれかに定義されるとおりである請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記改質は、約10〜120分間行われる請求項14または15に記載のプロセス。
【請求項17】
i)多孔質支持体を設ける工程、および
ii)多官能アミンと、多官能ハロアリール酸ハロゲン化物を含む多官能酸ハロゲン化物試薬との反応によって、前記支持体上にポリアミド層を形成する工程
を具備する逆浸透膜を製造するためのプロセス。
【請求項18】
前記多官能ハロアリール酸ハロゲン化物は、請求項8〜10のいずれかに定義されるとおりである請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
さらに、iii)前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程
を具備する請求項17または18に記載のプロセス。
【請求項20】
前記過硫酸塩は、請求項3〜6のいずれかに定義されるとおりである請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
ポリアミド層を有する逆浸透膜の性能を改善するためのプロセスであって、前記ポリアミド層を過硫酸塩によって改質する工程を具備するプロセス。
【請求項22】
前記過硫酸塩は、請求項3〜6のいずれかに定義されるとおりである請求項21に記載のプロセス。
【請求項23】
前記改質は、約10〜120分間行われる請求項21または22に記載のプロセス。

【公開番号】特開2008−100214(P2008−100214A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−220441(P2007−220441)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(507287755)ヴォントロン メンブレイン テクノロジー カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】