説明

耐錆性評価試験装置

【課題】再現性のある耐錆性促進試験を短期間で行うことが可能な耐錆性評価試験装置を提供する。
【解決手段】試験槽は、ある温度湿度に保たれた槽内の空気を短時間で他の温度湿度条件に切り換えるために、槽内の空気をポンプで減圧排出する通路と、槽外より一定の温度湿度の空気をポンプにより加圧導入する通路を設けると共に、開閉弁を設けて双方の通路を開閉可能とした耐錆性評価試験装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製の被試験体、特に家電製品、事務用機器、自動車、工業製品等の部品、家電製品、事務用機器、電気・電子機器それ自体及びそれらに使用されるめっき鋼板、塗装鋼板等を被試験体とし、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う耐錆性評価試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属製の被試験体、家電製品、事務用機器、自動車、工業製品等の部品に使用されるめっき鋼板、塗装鋼板等の耐錆性を評価するには、使用環境を模擬した大気環境条件下でめっき鋼板、塗装鋼板等を暴露し、金属製の被試験体の表面に生じた錆の面積率を測定するなどして耐錆性を評価することが行われている。
めっき鋼板、塗装鋼板等の耐錆性を評価するには、塩水噴霧試験装置がよく用いられている。また塩水噴霧・乾燥・湿潤等の工程を組み合わせた複合サイクル試験装置が、めっき鋼板、塗装鋼板等を被試験体とし、塩分を影響因子とする耐錆性促進試験を行うために使用される場合もある。
【0003】
ところで最近まで、結露を影響因子とする被試験体とし、試験は、実際の使用環境条件における長期間暴露試験が行われてきたが、より迅速に耐錆性の試験結果を得るために図7に示すような、2つの試験槽100、200を具備した耐錆性評価試験装置により金属製の被試験体300の耐錆性促進試験を行う方法が検討されている。
図7に示す耐錆性評価試験装置を用いて耐錆性促進試験を行う場合には、先ず被試験体300を試験槽100内で所定の時間保持した後、被試験体300を試験槽100内から試験槽200内へ移送し、試験槽200内において所定の時間保持することを1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返す。その際、1サイクル終了毎に被試験体300は試験槽100内に戻す。なお図7は、被試験体300を試験槽100内から試験槽200内へ移送する途中の状態を示す。移送前は2つの扉400a、400bは両方とも閉状態とされている。
【0004】
また特許文献1には、金属材の耐食性を評価する方法に関して、金属材の表面に塩化物イオンを含む塩分を付着させる(A)の工程と、金属材に温度と相対湿度をステップ状に変化させて設定した乾燥工程と湿潤工程を1乃至複数回行う(B)の工程とを行うことを1サイクルとし、このサイクルを1乃至複数回繰り返す金属材の耐食性評価方法が開示されている。
【特許文献1】特開2003−329573号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし特許文献1には、金属材の耐食性評価方法について開示されているものの、金属材の耐食性評価試験装置に関しては言及されていない。
また図7に示すような、2つの試験槽100、200を具備した耐錆性評価試験装置により結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行った場合には次のような問題がある。
2つの試験槽100、200内の温度と湿度は、被試験体300を試験槽100内から試験槽200内へ移送することにより試験槽200内において被試験体300の表面に結露が生成するように条件が設定されている。
【0006】
ところが被試験体300の移送時には、2つの扉400a、400bを両方とも開ける必要があると共に被試験体300の移送には若干の時間がかかる。
このために2つの試験槽100、200を具備した耐錆性評価試験装置により結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行った場合には、扉400a、400bを両方とも開けることにより設定した条件が変化するから、年間を通じて一定な耐錆性の評価結果を得るにはそのための条件出しをしなければならないという問題がある。
【0007】
また2つの試験槽100、200を具備した耐錆性評価試験装置を用いた場合には、たとえ、条件出しをしたとしても被試験体300の移送には若干の時間がかかるので、移送時に被試験体300が槽外の大気の影響を受け、結露生成条件が変わってしまい、再現性のある耐錆性の評価結果を得ることが困難となる。
また2つの試験槽100、200を具備した耐錆性評価試験装置を用いた場合には、移送作業を人手によって行うために被試験体300の移送が深夜になることはできるだけ避けねばならず、被試験体300を試験槽100内から試験槽200内へ移送して被試験体300の表面に結露を生成するタイミングを労働時間内とするために、耐錆性の評価結果を得るまでの所要期間が長くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、再現性のある耐錆性の評価結果を短期間で得ることが可能な耐錆性評価試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
1.金属製の被試験体を少なくとも一つ収納できる大きさの一つの試験槽を有し、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う耐錆性評価試験装置であって、前記試験槽は、ある温度湿度に保たれた槽内の空気を短時間で他の温度湿度条件に切り換えるために、槽内の空気をポンプで減圧排出する通路と、槽外より一定の温度湿度の空気をポンプにより加圧導入する通路を設けると共に、開閉弁を設けて双方の通路を開閉可能としたことを特徴とする耐錆性評価試験装置。
2.前記開閉弁が電磁弁とされ、制御装置に接続されていることを特徴とする上記1.に記載の耐錆性評価試験装置。
3.前記槽内に槽内の空気の温度および湿度をそれぞれ検出する検出器が配置されている共に、前記槽内の空気の温度および湿度を調整可能な温度調節器と湿度調節器が設置され、前記検出器および前記温度調節器と湿度調節器が制御装置に接続されていることを特徴とする上記1.または2.に記載の耐錆性評価試験装置。
4.前記槽内に収納した金属製の被試験体に温度検出器と結露検出器が取り付けられていることを特徴とする上記1.〜3.のいずれかに記載の耐錆性評価試験装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の耐錆性評価試験装置によれば、結露生成条件を一定として金属製の被試験体の表面に結露を生成させることができると共に、金属製の被試験体が使用される実際の使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行うことができる。また本発明によれば、金属製の被試験体の移送作業をなくすことができる。
この結果、本発明の耐錆性評価試験装置によれば、再現性のある耐錆性の評価結果を短期間で得ることが可能となる。
【0011】
したがって本発明の耐錆性評価試験装置を用いることにより、金属製の被試験体の耐錆性評価を効率的に行い得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明者らは、金属製の被試験体の耐錆性評価を行うに当たり、結露を影響因子とする耐錆性促進試験条件について鋭意検討した結果、結露生成条件を一定として金属製の被試験体の表面に結露を生じさせることが再現性のある耐錆性の評価結果を得るために重要であるとの知見を得た。
そのために本発明の耐錆性評価試験装置は、一つの試験槽内(以下、単に槽内ともいう)において、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行うことができるように構成することにより、金属製の被試験体の移送作業をなくした。
【0013】
また本発明の耐錆性評価試験装置においては、槽内の空気の減圧排出と同時に、槽外からの一定の温度湿度の空気の加圧導入により、短時間で槽内の空気環境を一変させ、その空気中に含まれる水蒸気によって金属製の被試験体の表面に結露を生成するようにした。
以下、図1、図2を用いて本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置について説明する。
【0014】
本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置は、図1に示すように金属製の被試験体2を少なくとも一つ収納できる大きさの一つの試験槽1を有し、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う装置である。この試験槽1は耐圧性を有する槽とされ、本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置は、該槽に、槽外からの一定の温度湿度の空気の加圧導入通路4と、槽内の空気3を槽外の大気へ排出するための減圧排出通路5を設けると共に、開閉弁11a、11bを設けて双方の通路を開閉可能とした。
【0015】
また図1に示した耐錆性評価試験装置は、槽内の空気3を使用環境を模擬した大気環境条件とすることができるように、試験槽1に空調通路6a、7aが設けてあり、空調通路6aは温度調節器6と、空調通路7aは湿度調節器7と繋げられて槽内の空気3の温度および湿度をそれぞれ調節することができるようになっており、槽内との流通をよくするために循環ファンが設けられている。
【0016】
試験槽1の大きさは、耐錆性促進試験を行う金属製の被試験体2の寸法に応じて決定する。例えば図1に示した耐錆性評価試験装置により、寸法が板厚1.6mm×幅50mm×長さ100mmの亜鉛めっき鋼板を金属製の被試験体2として、結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う場合には、ステンレス鋼板を用いることにより、幅1.0m×奥行き1.0m×高さ1.0mの耐圧性を有する槽を構成することができる。
【0017】
ここで開閉弁11a、11bは電磁弁とし、制御装置10に接続するのが好ましい。この理由は、耐錆性促進試験中、制御装置10内に予め記憶させた時刻に制御装置10からの信号により開閉弁11a、11bの開、閉を確実にかつ短時間に行うことができるからである。
また温度調節器6と湿度調節器7は制御装置10に接続されているのが好ましい。この理由は、温度調節器6と湿度調節器7を制御装置10に接続することにより、耐錆性促進試験を行う際に、槽内の空気3の温度および湿度を制御装置10内に予め記憶させた設定値となるように制御することができるからである。温度調節器6は、槽内の空気3の加熱、槽内の空気3の冷却を行うことができるものとするのが広範囲にわたる使用環境条件を模擬することができるので望ましく、また湿度調節器7は、槽内の空気3の加湿、槽内の空気3の除湿を行うことができるものとするのが広範囲にわたる使用環境条件を模擬することができるので望ましい。
【0018】
また耐錆性評価試験装置には、各種センサを設けて試験状態を測定すると共に記録することができるようにするのが好ましい。この理由は、図1には図示しない、例えば槽内の空気3の温度を検出する温度検出器や槽内の空気3の湿度を検出する湿度検出器を設置して、前記の制御装置10に接続することにより試験時の槽内の空気3の温度や槽内の空気3の湿度を測定すると共に記録することができるために、耐錆性促進試験を行った後に制御装置10内に予め記憶させた設定条件のように耐錆性促進試験が行われてたか、否かを確認することができるからである。
【0019】
また結露センサ8や金属製の被試験体2の温度を検出する温度検出器9を、槽内に収納した金属製の被試験体2の表面に取り付けるのが好ましい。例えば結露センサ8としてはACMセンサ(北斗電工製等)があり、金属製の被試験体2の温度を検出する温度検出器9としては例えばCA熱電対がある。このような結露センサ8および金属製の被試験体2の温度を検出する温度検出器9としてCA熱電対を槽内に収納した金属製の被試験体2の表面に取り付けて前記の制御装置10に接続することが好ましい理由は、耐錆性促進試験中にそれらの検出器からの出力を制御装置10に記録することにより、耐錆性促進試験を行った後に槽内に収納した金属製の被試験体2の表面に結露が生成していたか、否かを確認することができ、また同様に金属製の被試験体2の温度と槽内の空気3の温度を比較することができるからである。図1中、12は耐錆性促進試験中、槽内に収納した金属製の被試験体2を保持する保持台を示す。この保持台12は、被試験体2より大きな熱容量を持つことにより、槽内の空気3の急激な温度変化による被試験体2への熱影響をできるだけ少なくするよう保持台12から伝熱されるよう工夫されている。
【0020】
以上説明した本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置の作用について図2〜図4により説明する。
ただし図1に示した耐錆性評価試験装置により結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う場合には、第1の環境条件P下で暴露する低温保持工程、それに続く結露生成工程と乾燥工程を経た後に第2の環境条件Qで暴露する促進工程を行うことを1サイクルとし、このサイクルを複数回繰り返して行うことを標準とする。
【0021】
図2は、図1に示した耐錆性評価試験装置による槽内の空気3の環境条件を例示した図であり、図2中、Pは第1の環境条件を示し、Qは第2の環境条件を示す。
図3は、同図1に示した耐錆性評価試験装置による耐錆性促進試験条件の一例を示す図であり、図3中、Aは第2の環境条件Qからの移行過程を含む第1の環境条件P下で暴露する低温保持工程の区間を示し、Bは区間Cの条件からの移行過程を含む第2の環境条件Qで暴露する促進工程の区間を示す。そして区間Cは、槽内に収納した金属製の被試験体2の表面に結露を生成する結露生成工程とそれに続く乾燥工程の区間を示す。
【0022】
また図4-a〜図4-bは、結露生成条件を説明する図である。
図4-a〜図4-bに示すように槽内の空気3の圧力、槽内の空気3の相対湿度、槽内の空気3の温度、槽内に収納した金属製の被試験体2の温度が変化して、図5に示すように確実に金属製の被試験体2の表面に十分な結露が生成している。
このように本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置によれば、結露生成条件を一定として金属製の被試験体2の表面に結露を確実に生成させることができると共に、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行うことができる。また本発明によれば、金属製の被試験体の移送作業をなくすことができる。
【0023】
図1に示した耐錆性評価試験装置により、第1の環境条件P下で暴露する低温保持工程、それに続く結露生成・乾燥工程および第2の環境条件Qで暴露する促進工程を行う際には、開閉弁11a、11bを次の状態にする。
(1) 第1の環境条件P下で暴露する低温保持工程:開閉弁11a、11bは両方共に閉
(2) 結露生成工程
槽外の空気の加圧導入過程:開閉弁11aは開、11bは閉
槽内の空気3を減圧排出過程:開閉弁11a、11bは両方共に開
(3) 乾燥工程:開閉弁11aは閉、11bは閉
(4) 第2の環境条件Qで暴露する促進工程:開閉弁11aは閉、11bは閉
なお図1に示した耐錆性評価試験装置により結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う際には、試験が終了するまでの間、図示しない扉は閉めた状態に維持されており、開閉弁11a、11bを両方共に閉とすると試験槽1は密閉された密閉槽となる。
【0024】
槽外の空気の加圧導入過程の時間、および槽内の空気3を減圧排出し、第2の環境条件Qに到達する時点までの所要時間は、5分以内が必要である。さらに2分以内であれば好ましいが、1分以内であればさらに好ましい。
槽外から加圧導入する空気は、あらかじめ、第2の環境条件Qに同じ温度湿度であることが望ましいが、前記時間内で一定に到達するならば、第2の環境条件Qに対して温度湿度が多少上下してもかまわない。また加圧導入する空気を貯える方法は特に限定しないが、コンプレッサーや貯槽タンクなどを設けることで対応できる。ただし、圧縮された空気は、急激に解放すると、温度が下がるので、加熱加湿を行った空気を槽内に導入する必要がある。槽内の空気を減圧排気する際は、真空ポンプ等により排気を行う。加圧導入と減圧排気をバランスよく行う必要があるが、加圧導入により第1の環境条件Pから第2の環境条件Qへの移行が充分速やかに行われれば、排気能力をそれほど必要としない。
【0025】
なお図1に示した本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置には、必要に応じて実際の使用環境を模擬した金属製の被試験体2の耐錆性促進試験を行うために、水や塩、海塩等を金属製の被試験体2に予め塗布してから試験槽1内に収納してもよいし、塩水をアトマイザー等により噴霧する噴霧装置や、NO、SOなどを含むガスや関東ローム層などの微細な赤土・粉塵等を導入する導入通路を試験槽1に設けることができる。
【0026】
ただし、NO、SOなどを含むガスを槽内に導入して金属製の被試験体2の耐錆性促進試験を行う場合には、試験槽1に設けた圧力解放通路5からNO、SOなどを含むガスを直接大気に放出するのは地球環境上問題があるから、その排気対策を施した装置とすることが好ましい。
【実施例】
【0027】
図1に示した耐錆性評価試験装置により亜鉛めっき鋼板(Zn目付量20g/m:板厚1.6mm×幅50mm×長さ100mm)を金属製の被試験体2とし、結露を影響因子とする亜鉛めっき鋼板の耐錆性促進試験を行った。
使用環境を模擬した環境条件は、図2、図3、図4-a〜図4-bと同じとした。第1の環境条件は、槽内の空気3の温度を15℃、槽内の空気3の相対湿度を70%とし、第2の環境条件は、槽内の空気3の温度を30℃、槽内の空気3の相対湿度を85%とした。
【0028】
結露生成条件は、図7に示すように、幅10cm、長さ15cm、高さ5cmの保持台上に幅10cm、長さ2cm、高さ4.5cmの保持台の間に被試験材をはさみ、端部を5mm程露出させて、結露させ、露出させた端部の上面を観察面とした。被試験材の端部の保持台からの露出率(B/A)は、この場合1/10とした。被試験材の露出した部分の重量は保持台に対して0.06%程度である。
【0029】
また図3に示すように第2の環境条件Qからの移行過程を含む第1の環境条件P下で暴露する低温保持工程の時間を150分、区間Aの条件からの移行過程を含む第2の環境条件Qで暴露する促進工程の時間を138分とし、この一連の工程を1サイクル(4.8時間/サイクル=5サイクル/日)として表1に示すように最多で40サイクル行った。
このような金属製の被試験体2の耐錆性促進試験を2月と8月に行って金属製の被試験体2の耐錆性を評価した。
【0030】
【表1】

【0031】
金属製の被試験体2の耐錆性は、図6に示すような、せん断面2b+破断面2aの全断面(ばりを含む)における赤錆発生面積率を目視により測定して評価した。図6中、hは板厚を示す。
比較例は、図7に示した2つの試験槽100、200からなる耐錆性評価試験装置により結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行った。被試験体300としては、本発明例と同じ亜鉛めっき鋼板から採取した供試材(Zn目付量20g/m:板厚1.6mm×幅50mm×長さ100mm)を用いた。第1試験槽100は槽内の空気3の温度を15℃、槽内の空気3の相対湿度を50%に設定し、第2試験槽200は槽内の空気3の温度を30℃、槽内の空気3の相対湿度を85%に設定し、被試験体300を第1試験槽100内で30分から1時間、暴露した後、人手により第2試験槽200内に移送し、第2試験槽200内で23時間、暴露することを1サイクル(1サイクル/日)として最多で40サイクル行った。
【0032】
結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行った後、金属製の被試験体300の耐錆性を発明例と同様に評価した。その結果を合わせて表1に示す。
表1から比較例の場合には、2月と8月で異なる耐錆性の評価結果が得られているのに対して、本発明例では2月と8月で同じ耐錆性の評価結果が得られている。また本発明例では比較例の場合より短期間で耐錆性の評価結果が得られている。
【0033】
このことから本発明の耐錆性評価試験装置によれば、再現性のある耐錆性の評価結果を短期間で得ることができ、金属製の被試験体の耐錆性評価を効率的に行い得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態にかかる耐錆性評価試験装置の模式図である。
【図2】図1に示した耐錆性評価試験装置による結露生成条件を説明する図である。
【図3】図1に示した耐錆性評価試験装置による耐錆性促進試験条件の一例を示す図である。
【図4−a】結露生成条件を説明する図である。
【図4−b】結露生成条件を説明する図である。
【図5】結露生成状態を示す図である。
【図6】実施例に用いた金属製の被試験体の断面を示す模式図である。
【図7】実施例における金属製の被試験体の保持状態を示す模式図である。
【図8】従来の耐錆性評価試験装置の問題点を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0035】
1 試験槽(槽)
2 被試験体
3 槽内の空気
4 加圧導入通路
5 減圧排出通路
6 温度調節器
7 湿度調節器
6a、7a 空調通路
8 結露センサ
9 温度検出器
10 制御装置
11a、11b 電磁弁(開閉弁)
12 保持台
2a 破断面
2b せん断面
A、B、C 条件の区分
100、200 試験槽(槽)
300 被試験体
400a、400b 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の被試験体を少なくとも一つ収納できる大きさの一つの試験槽を有し、使用環境を模擬した大気環境条件下で結露を影響因子とする耐錆性促進試験を行う耐錆性評価試験装置であって、
前記試験槽は、ある温度湿度に保たれた槽内の空気を短時間で他の温度湿度条件に切り換えるために、槽内の空気をポンプで減圧排出する通路と、槽外より一定の温度湿度の空気をポンプにより加圧導入する通路を設けると共に、開閉弁を設けて双方の通路を開閉可能としたことを特徴とする耐錆性評価試験装置。
【請求項2】
前記開閉弁が電磁弁とされ、制御装置に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の耐錆性評価試験装置。
【請求項3】
前記槽内に槽内の空気の温度および湿度をそれぞれ検出する検出器が配置されている共に、前記槽内の空気の温度および湿度を調整可能な温度調節器と湿度調節器が設置され、前記検出器および前記温度調節器と湿度調節器が制御装置に接続されていることを特徴とする請求項1または2に記載の耐錆性評価試験装置。
【請求項4】
前記槽内に収納した金属製の被試験体に温度検出器と結露検出器が取り付けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐錆性評価試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−a】
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【図4−b】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−125991(P2006−125991A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−314261(P2004−314261)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】