耐震補強鉄骨枠の組立方法及び構造物
【課題】 耐震補強鉄骨枠には、表裏、側面、内面、斜め材の溶接があり、下向溶接を主体にするために、立てたり、寝かしたりしながら反転・回転させて溶接を実施するのである。その為、そのクレーンの待ち時間や使用時間が製作上大きなロスとなっている。このようなロスをなくすために、耐震補強鉄骨枠を異動や回転させずに製作することが課題である。
【解決手段】上部ガセットプレートを溶接部分で分解して、溶接を裏当金又はその一部とすること、上部ガセットプレートとフレームのフランジとの溶接を最終段階に持ってくることにより、耐震補強鉄骨枠の製作が据え置き状態にして、組立と溶接が可能になっている。
【解決手段】上部ガセットプレートを溶接部分で分解して、溶接を裏当金又はその一部とすること、上部ガセットプレートとフレームのフランジとの溶接を最終段階に持ってくることにより、耐震補強鉄骨枠の製作が据え置き状態にして、組立と溶接が可能になっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の既存建築の耐震補強を行うための鉄骨構造枠及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐震補強鉄骨枠は、図1に示すように、通常は圧延H形鋼によるフレーム1と圧延H形鋼によるブレース2からなっており、該フレーム1とブレース2との交差部即ち接合部3は仕口であり、図2に示すように、座屈止めブレース6がついているものもある。図1及び図2に示すように、フレーム1は、フランジ5とウエブ4から圧延又は溶接により製作され、交差部は、ガセットプレート7とウエブ4により組立て溶接により製作される。図3に示すように、運搬又は現場組立の便宜のために、フレーム及びグレースの中間にボルト接合部8を有しているものもある。
【0003】
現在、この耐震補強鉄骨枠は、交差部の内部と外部の溶接、ガセットプレートとフレームの溶接を組立及び本溶接で、立てたり、寝かしたりしながら反転・回転させて溶接を実施するのであるが、重量物綱なのでクレーンを頻繁に使用する。その為、そのクレーンの待ち時間や使用時間が製作上大きな損失となっている。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】(1)(財)日本建築総合試験所:「枠付き鉄骨ブレース耐震補強設計・施工指針」2002.2 (2)(社)日本建築学会:「JASS6−鉄骨工事」2007.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐震補強鉄骨枠は、それ自身、表裏、側面、内面、斜め材の溶接があり、下向溶接を主体にした場合、立てたり、寝かしたりしながら反転・回転させて溶接を実施するのであるが、重量物綱なのでクレーンを頻繁に使用する。その為、そのクレーンの待ち時間や使用時間が製作上大きなロスとなっている。このようなロスをなくすために、耐震補強鉄骨枠を移動や回転させずに製作することが課題であり、また、ガセットプレートの内部の狭い場所での溶接もある。その為に、溶接作業性が悪く、部品の変更や組立方法や溶接方法等を変更する必要がある。また、耐震補強鉄骨枠は建物に設置した場合に、外部から見える部分であり、溶接ビード等が見えない方が美しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような諸課題は種々研究した結果、上部ガセットプレートを溶接部分で分解して、溶接を裏当金又はその一部とすること、上部ガセットプレートとフレームのフランジとの溶接を最終段階に持ってくることにより、耐震補強鉄骨枠の製作が据え置き状態にして、組立と溶接が可能になっている。また、外部から見える溶接部分の裏当金を半円形、半楕円形、又は山形にすることにより美しい外観となる。
【0007】
請求項1に係る発明の構成は、先ず第1に、鉄骨補強枠部材の交差接合部の下側フランジ板を最下段として水平に設置して、該フランジ板の上に、ウエブ板を垂直に立てて、該フランジに溶接接合することであり、このことは、上側のフランジ板が無い状態で溶接することが特徴であり、
第2に、交差接合部の下側フランジ板を最下段の該フランジ板よりも小板に分割し、該小板端部をウエブ上端部に設置して、ウエブ上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させることであり、第3に、該ウエブ上端と該小板端部とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させることであり、上部のフランジ板を小板に分割してウエブと小板を外面から溶接することが特徴であり、
第3に、交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとを溶接接合させると共に、交差接合部の上側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼上側フランジとを溶接接合させることを特徴とすることである。交差接合部のフランジ板と補強枠フレームのH形鋼上側フランジとの溶接は順序として最後にする必要はない。また、小板に分割した上部ガセットプレートは、ウエブを両側から挟み込む形で突き合わせ溶接してもよい。
【0008】
請求項2に係る発明の構成は、第一の構成として、請求項1に係る発明があり、第2に、交差接合部のフランジ板の最下段と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとの溶接接合の際、該交差接合部のフランジ板端部の下部又は耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジ端部下部又はその両部材側に予め肉盛溶接をしておき、下向溶接用に上に開いた開先を形成させることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、1台の耐震補強鉄骨枠に対して、従来、20〜40回の回転・反転のクレーンの使用回数があったが、回転・反転のクレーンの使用がなくなり耐震補強鉄骨枠の製作工数が半減できる。鉄骨補強枠部材の交差接合部の内部の溶接を外部から実施する作業性の難しい溶接を無くして、交差部のウエブの溶接を全て作業性の良い下向突合せ溶接又はすみ肉溶接で実施することが出来る。
請求項2に係る発明では、下フランジの溶接に裏当金を使わずに、下面の表側溶接量を最小にして施工することができる。外観が裏当金よりも美麗になる。
請求項3では、下フランジの溶接に断面が矩形の裏当金を使わないので、外観が美麗になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図2】座屈止め付き鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図3】ボルト接合部及び座屈止め付き鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図4】ボルト接合部及び座屈止め付き鉄骨補強枠部材の上側ガセットプレートが無い状態の1次仮組み製作時の上面図
【図5】交差部とフレームの溶接で、フランジ継手の溶接及び交差部ウエブとフレームウェブの溶接を示す断面図
【図6】座屈止めブレースとフレームの溶接で、フランジ継手の溶接及び座屈止めブレースウエブとフレームウエブの溶接を示す断面図
【図7】交差部とフレームの溶接で、裏面に肉盛溶接をしたフランジ継手の溶接及び交差部ウエブとフレームウェブの溶接を示す断面図
【図8】分割型ガセットプレトート及び裏当金(側当て金)のL型セット法。(イ)は交差部上面図を示し、(ロ)は(イ)のA−A断面を示す。
【図9】分割型ガセットプレトート及び裏当金(側当て金)のW型セット法。(イ)は交差部上面図を示す
【図10】耐震補強枠フレーム端部又は座屈止めのフレーム端部フランジをウエブから切除した図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
実施例1
図3及び図4に示すように、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接接合又はボルト接合させた後に、
鉄骨補強枠部材の交差接合部3の下側フランジ板5を最下段として水平に設置して、
該フランジ板5の上に、ウエブ板4を垂直に立てて、該フランジ5に突合せ溶接又はすみ肉溶接で溶接接合し、
該交差接合部3の上側ガセットプレート7を最下段の該ガセットプレート7よりも小板に分割し、
該小板端部をウエブ4上端部に設置して、ウエブ上端部4を底とし小板端部を側面とした溝を形成させて、
該ウエブ4上端と該小板端部7とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させ、
交差接合部3のガセットプレート7最下段と耐震補強鉄骨枠フレーム1のH形鋼下側フランジ5とを溶接接合させると共に、交差接合部3のフランジ板5の最上段と耐震補強鉄骨枠フレーム1のH形鋼上側フランジと5を溶接接合させることを特徴とする組立方法又は構造物である。上記耐震補強鉄骨枠フレーム1はロール材のH形鋼を通常用いるが、フランジとウエブを溶接で接合したビルトHで用いることができる。この場合は、フランジとウエブの板厚の組合せを自由に選択できるというメリットがある。
【0012】
実施例2
上記実施例1で、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接接合又はボルト接合させる代わりに、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接せずに一体化するために、図10に示すように、耐震補強枠フレーム端部のフランジをウエブから切除する方法を用いる。
【0013】
実施例3
各部材の形状は次の通りである。
(1)フレーム1:H形鋼を使用し、その端部は直角切断とする。フランジ5及び必要によりウエブ4に開先加工を実施する。ウエブは予め交差部ガセット7内に挿入する分のウエブ3板を突合せ溶接で完全融け込み接合しておく。フランジの開先加工は、片方を外向きに行い、反対側を内向きに行う。又は、図10に示すようにウエブは予め交差部3のガセット7内に挿入する分のウエブ板4をH形鋼フレーム1のウエブ4からフランジ5を切除する。フランジ5をウエブ4から切断し、ウエブ4を残す。その場合、ウエブ4に付いたフィレット部を必要により残しておく。
(2)ブレース2:H形鋼を使用し、その端部は直角切断とする。フランジ5及び必要によりウエブ4に開先加工を実施する。ウエブ4は予め交差部3のガセット7内に挿入する分のウエブ板を接合しておく。この場合、ウエブの板厚は、図8に示すように裏当金10がウエブ4の片側にセットされるL型セットでは、梁ウエブの板厚の約6mmアップとし、図7に示すように裏当金がウエブの両側にセットされる。W型セットでは、梁ウエブ4の板厚と同じとする。又は、ウエブは予め交差部ガセット内に挿入する分のウエブ板4をH形鋼フレーム1のウエブ4からフランジ5を切除する。
(3)座屈止めブレース6:H形鋼を使用し、片方の端部を直角切断とし、フランジ5及びウエブ4に開先加工を実施する。他方の端部は、ブレース2内に挿入するため、座屈止めブレース6のフランジ5を切断し、更にフランジ5をウエブ4から切断し、ウエブ4を残す。その場合、フィレット部を必要により残しておく。
(4)ガセットプレート7:下側のガセットプレート7は一枚板とする。上側のガセットプレート7はその下側のウエブ4位置を切断線とした分割型とする。後に、分割型ガセットプレート7とウエブを同時にスロット溶接して一体化させる。即ち、交差接合部3の上側ガセット板7を下側ガセット板7よりも小板に分割し、該小板端部7をウエブ4上端部に設置して、ウエブ4上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させることであり、第3に、該ウエブ4上端と該小板端部7とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させることであり、上部のフランジ板を小板に分割してウエブと小板を外面から溶接する。図8のL型セットでは、上側ガセットプレートがウエブに3mm掛かるように寸法を決める。図9のW型セットでは、ウエブ4から2mm離れてセットするように寸法を決める。
【0014】
実施例4
組立方法は次の通りである。
(1)図4に示すように、ボルト接合部8は仮締め状態にして、定盤上に水平に1次仮組みする。その場合、一枚板のガセットプレート7を下側のみに設置する。
(2)組立溶接及びすみ肉溶接を行う。
ブレースフランジ5同士、ウエブ4と一枚板のガセットプレート7、座屈止めブレース6の組立溶接を行う。フランジ溶接の裏当金10は断面が半丸、半楕円又は山形(φ15〜30程度)でH形鋼の外面(この場合下側フランジの下側)に密着して取り付ける。
1)交差部3において、ウエブ4と一枚板のガセットプレート7のすみ肉溶接を行う。
2)交差部3のウエブ4同士のすみ肉溶接を立向溶接する。
3)ブレース1のウエブ4と座屈止めブレース6のウエブ4を立向きですみ肉溶接する。
4)図5に示すように、少なくとも下側のガセットプレート7とブレース1のフランジ5の突合せ溶接、及び、座屈止めブレース6のフランジ5とブレース1のフランジ5の突合せ溶接を、断面が半丸、半楕円又は山形(φ15〜30程度)の裏当金11付きで行う。この裏当て金の代わりに、セラミックス、フラックス、ガラスファイバーテープ又はこれらの組み合わせの裏当て材を用いて裏波溶接を行ってもよい。
(3)分割型ガセットプレトート7及び裏当金(側当て金)10のセットとスロット溶接を行う。図8に示すように、L型セット法では、分割型ガセットプレトート7はウエブ4位置を切断線とし、下部ガセットプレート7の内側の縁と合うようにして、ウエブ4には3mm程度重なるようにセットして組立溶接と初層溶接を行い、その後スロット溶接の本溶接を行う。
図9に示すように、W型セット法では、分割型ガセットプレトート7はウエブ4側面位置から2mm程度離れた位置を切断線とし、上側ガセットプレート7の端部内側と、ウエブ4側面に取り付ける側当て金という裏当金10とが7mm程度重なるようにセットして組立溶接と初層溶接を行い、その後スロット溶接をウエブ板厚及びガセット板厚ののど厚が確保されるように本溶接を行う。
(4)梁フランジ5の接合
通常の裏当金10(例えば断面寸法25×9mm)を用いて、完全溶け込みの突合せ溶接を実施する。ノンスカラップ溶接とする。
【産業上の利用可能性】
【0015】
近年大震災が予想されているが、既存の耐震強度の弱い鉄筋コンクリート及び鉄骨建築物に対する補強が緊急の課題である。耐震補強鉄骨枠は、既存のこれらの建物に対し、有効な補強方法であり、本発明にかかる方法は経済性・工期の観点から極めて有効な対策になるものである。
【符号の説明】
【0016】
1 フレーム
2 ブレース
3 交差部又は仕口部
4 ウエブ
5 フランジ
6 座屈止めブレース
7 ガセットプレート又はフランジ
8 ボルト接合部
9 溶接部
10 断面矩形の裏当金
11 断面半丸(φ20程度)又は半楕円の裏当金
12 すみ肉溶接部
13 肉盛溶接
14 山形の裏当金
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の既存建築の耐震補強を行うための鉄骨構造枠及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
耐震補強鉄骨枠は、図1に示すように、通常は圧延H形鋼によるフレーム1と圧延H形鋼によるブレース2からなっており、該フレーム1とブレース2との交差部即ち接合部3は仕口であり、図2に示すように、座屈止めブレース6がついているものもある。図1及び図2に示すように、フレーム1は、フランジ5とウエブ4から圧延又は溶接により製作され、交差部は、ガセットプレート7とウエブ4により組立て溶接により製作される。図3に示すように、運搬又は現場組立の便宜のために、フレーム及びグレースの中間にボルト接合部8を有しているものもある。
【0003】
現在、この耐震補強鉄骨枠は、交差部の内部と外部の溶接、ガセットプレートとフレームの溶接を組立及び本溶接で、立てたり、寝かしたりしながら反転・回転させて溶接を実施するのであるが、重量物綱なのでクレーンを頻繁に使用する。その為、そのクレーンの待ち時間や使用時間が製作上大きな損失となっている。
【0004】
【先行技術文献】
【非特許文献】
【非特許文献1】(1)(財)日本建築総合試験所:「枠付き鉄骨ブレース耐震補強設計・施工指針」2002.2 (2)(社)日本建築学会:「JASS6−鉄骨工事」2007.2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
耐震補強鉄骨枠は、それ自身、表裏、側面、内面、斜め材の溶接があり、下向溶接を主体にした場合、立てたり、寝かしたりしながら反転・回転させて溶接を実施するのであるが、重量物綱なのでクレーンを頻繁に使用する。その為、そのクレーンの待ち時間や使用時間が製作上大きなロスとなっている。このようなロスをなくすために、耐震補強鉄骨枠を移動や回転させずに製作することが課題であり、また、ガセットプレートの内部の狭い場所での溶接もある。その為に、溶接作業性が悪く、部品の変更や組立方法や溶接方法等を変更する必要がある。また、耐震補強鉄骨枠は建物に設置した場合に、外部から見える部分であり、溶接ビード等が見えない方が美しい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような諸課題は種々研究した結果、上部ガセットプレートを溶接部分で分解して、溶接を裏当金又はその一部とすること、上部ガセットプレートとフレームのフランジとの溶接を最終段階に持ってくることにより、耐震補強鉄骨枠の製作が据え置き状態にして、組立と溶接が可能になっている。また、外部から見える溶接部分の裏当金を半円形、半楕円形、又は山形にすることにより美しい外観となる。
【0007】
請求項1に係る発明の構成は、先ず第1に、鉄骨補強枠部材の交差接合部の下側フランジ板を最下段として水平に設置して、該フランジ板の上に、ウエブ板を垂直に立てて、該フランジに溶接接合することであり、このことは、上側のフランジ板が無い状態で溶接することが特徴であり、
第2に、交差接合部の下側フランジ板を最下段の該フランジ板よりも小板に分割し、該小板端部をウエブ上端部に設置して、ウエブ上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させることであり、第3に、該ウエブ上端と該小板端部とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させることであり、上部のフランジ板を小板に分割してウエブと小板を外面から溶接することが特徴であり、
第3に、交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとを溶接接合させると共に、交差接合部の上側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼上側フランジとを溶接接合させることを特徴とすることである。交差接合部のフランジ板と補強枠フレームのH形鋼上側フランジとの溶接は順序として最後にする必要はない。また、小板に分割した上部ガセットプレートは、ウエブを両側から挟み込む形で突き合わせ溶接してもよい。
【0008】
請求項2に係る発明の構成は、第一の構成として、請求項1に係る発明があり、第2に、交差接合部のフランジ板の最下段と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとの溶接接合の際、該交差接合部のフランジ板端部の下部又は耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジ端部下部又はその両部材側に予め肉盛溶接をしておき、下向溶接用に上に開いた開先を形成させることである。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、1台の耐震補強鉄骨枠に対して、従来、20〜40回の回転・反転のクレーンの使用回数があったが、回転・反転のクレーンの使用がなくなり耐震補強鉄骨枠の製作工数が半減できる。鉄骨補強枠部材の交差接合部の内部の溶接を外部から実施する作業性の難しい溶接を無くして、交差部のウエブの溶接を全て作業性の良い下向突合せ溶接又はすみ肉溶接で実施することが出来る。
請求項2に係る発明では、下フランジの溶接に裏当金を使わずに、下面の表側溶接量を最小にして施工することができる。外観が裏当金よりも美麗になる。
請求項3では、下フランジの溶接に断面が矩形の裏当金を使わないので、外観が美麗になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図2】座屈止め付き鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図3】ボルト接合部及び座屈止め付き鉄骨補強枠部材の製作時の上面図
【図4】ボルト接合部及び座屈止め付き鉄骨補強枠部材の上側ガセットプレートが無い状態の1次仮組み製作時の上面図
【図5】交差部とフレームの溶接で、フランジ継手の溶接及び交差部ウエブとフレームウェブの溶接を示す断面図
【図6】座屈止めブレースとフレームの溶接で、フランジ継手の溶接及び座屈止めブレースウエブとフレームウエブの溶接を示す断面図
【図7】交差部とフレームの溶接で、裏面に肉盛溶接をしたフランジ継手の溶接及び交差部ウエブとフレームウェブの溶接を示す断面図
【図8】分割型ガセットプレトート及び裏当金(側当て金)のL型セット法。(イ)は交差部上面図を示し、(ロ)は(イ)のA−A断面を示す。
【図9】分割型ガセットプレトート及び裏当金(側当て金)のW型セット法。(イ)は交差部上面図を示す
【図10】耐震補強枠フレーム端部又は座屈止めのフレーム端部フランジをウエブから切除した図
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0011】
実施例1
図3及び図4に示すように、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接接合又はボルト接合させた後に、
鉄骨補強枠部材の交差接合部3の下側フランジ板5を最下段として水平に設置して、
該フランジ板5の上に、ウエブ板4を垂直に立てて、該フランジ5に突合せ溶接又はすみ肉溶接で溶接接合し、
該交差接合部3の上側ガセットプレート7を最下段の該ガセットプレート7よりも小板に分割し、
該小板端部をウエブ4上端部に設置して、ウエブ上端部4を底とし小板端部を側面とした溝を形成させて、
該ウエブ4上端と該小板端部7とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させ、
交差接合部3のガセットプレート7最下段と耐震補強鉄骨枠フレーム1のH形鋼下側フランジ5とを溶接接合させると共に、交差接合部3のフランジ板5の最上段と耐震補強鉄骨枠フレーム1のH形鋼上側フランジと5を溶接接合させることを特徴とする組立方法又は構造物である。上記耐震補強鉄骨枠フレーム1はロール材のH形鋼を通常用いるが、フランジとウエブを溶接で接合したビルトHで用いることができる。この場合は、フランジとウエブの板厚の組合せを自由に選択できるというメリットがある。
【0012】
実施例2
上記実施例1で、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接接合又はボルト接合させる代わりに、鉄骨補強枠部材の交差接合部3のウエブ4と耐震補強鉄骨枠フレーム1のウエブ4とを溶接せずに一体化するために、図10に示すように、耐震補強枠フレーム端部のフランジをウエブから切除する方法を用いる。
【0013】
実施例3
各部材の形状は次の通りである。
(1)フレーム1:H形鋼を使用し、その端部は直角切断とする。フランジ5及び必要によりウエブ4に開先加工を実施する。ウエブは予め交差部ガセット7内に挿入する分のウエブ3板を突合せ溶接で完全融け込み接合しておく。フランジの開先加工は、片方を外向きに行い、反対側を内向きに行う。又は、図10に示すようにウエブは予め交差部3のガセット7内に挿入する分のウエブ板4をH形鋼フレーム1のウエブ4からフランジ5を切除する。フランジ5をウエブ4から切断し、ウエブ4を残す。その場合、ウエブ4に付いたフィレット部を必要により残しておく。
(2)ブレース2:H形鋼を使用し、その端部は直角切断とする。フランジ5及び必要によりウエブ4に開先加工を実施する。ウエブ4は予め交差部3のガセット7内に挿入する分のウエブ板を接合しておく。この場合、ウエブの板厚は、図8に示すように裏当金10がウエブ4の片側にセットされるL型セットでは、梁ウエブの板厚の約6mmアップとし、図7に示すように裏当金がウエブの両側にセットされる。W型セットでは、梁ウエブ4の板厚と同じとする。又は、ウエブは予め交差部ガセット内に挿入する分のウエブ板4をH形鋼フレーム1のウエブ4からフランジ5を切除する。
(3)座屈止めブレース6:H形鋼を使用し、片方の端部を直角切断とし、フランジ5及びウエブ4に開先加工を実施する。他方の端部は、ブレース2内に挿入するため、座屈止めブレース6のフランジ5を切断し、更にフランジ5をウエブ4から切断し、ウエブ4を残す。その場合、フィレット部を必要により残しておく。
(4)ガセットプレート7:下側のガセットプレート7は一枚板とする。上側のガセットプレート7はその下側のウエブ4位置を切断線とした分割型とする。後に、分割型ガセットプレート7とウエブを同時にスロット溶接して一体化させる。即ち、交差接合部3の上側ガセット板7を下側ガセット板7よりも小板に分割し、該小板端部7をウエブ4上端部に設置して、ウエブ4上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させることであり、第3に、該ウエブ4上端と該小板端部7とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させることであり、上部のフランジ板を小板に分割してウエブと小板を外面から溶接する。図8のL型セットでは、上側ガセットプレートがウエブに3mm掛かるように寸法を決める。図9のW型セットでは、ウエブ4から2mm離れてセットするように寸法を決める。
【0014】
実施例4
組立方法は次の通りである。
(1)図4に示すように、ボルト接合部8は仮締め状態にして、定盤上に水平に1次仮組みする。その場合、一枚板のガセットプレート7を下側のみに設置する。
(2)組立溶接及びすみ肉溶接を行う。
ブレースフランジ5同士、ウエブ4と一枚板のガセットプレート7、座屈止めブレース6の組立溶接を行う。フランジ溶接の裏当金10は断面が半丸、半楕円又は山形(φ15〜30程度)でH形鋼の外面(この場合下側フランジの下側)に密着して取り付ける。
1)交差部3において、ウエブ4と一枚板のガセットプレート7のすみ肉溶接を行う。
2)交差部3のウエブ4同士のすみ肉溶接を立向溶接する。
3)ブレース1のウエブ4と座屈止めブレース6のウエブ4を立向きですみ肉溶接する。
4)図5に示すように、少なくとも下側のガセットプレート7とブレース1のフランジ5の突合せ溶接、及び、座屈止めブレース6のフランジ5とブレース1のフランジ5の突合せ溶接を、断面が半丸、半楕円又は山形(φ15〜30程度)の裏当金11付きで行う。この裏当て金の代わりに、セラミックス、フラックス、ガラスファイバーテープ又はこれらの組み合わせの裏当て材を用いて裏波溶接を行ってもよい。
(3)分割型ガセットプレトート7及び裏当金(側当て金)10のセットとスロット溶接を行う。図8に示すように、L型セット法では、分割型ガセットプレトート7はウエブ4位置を切断線とし、下部ガセットプレート7の内側の縁と合うようにして、ウエブ4には3mm程度重なるようにセットして組立溶接と初層溶接を行い、その後スロット溶接の本溶接を行う。
図9に示すように、W型セット法では、分割型ガセットプレトート7はウエブ4側面位置から2mm程度離れた位置を切断線とし、上側ガセットプレート7の端部内側と、ウエブ4側面に取り付ける側当て金という裏当金10とが7mm程度重なるようにセットして組立溶接と初層溶接を行い、その後スロット溶接をウエブ板厚及びガセット板厚ののど厚が確保されるように本溶接を行う。
(4)梁フランジ5の接合
通常の裏当金10(例えば断面寸法25×9mm)を用いて、完全溶け込みの突合せ溶接を実施する。ノンスカラップ溶接とする。
【産業上の利用可能性】
【0015】
近年大震災が予想されているが、既存の耐震強度の弱い鉄筋コンクリート及び鉄骨建築物に対する補強が緊急の課題である。耐震補強鉄骨枠は、既存のこれらの建物に対し、有効な補強方法であり、本発明にかかる方法は経済性・工期の観点から極めて有効な対策になるものである。
【符号の説明】
【0016】
1 フレーム
2 ブレース
3 交差部又は仕口部
4 ウエブ
5 フランジ
6 座屈止めブレース
7 ガセットプレート又はフランジ
8 ボルト接合部
9 溶接部
10 断面矩形の裏当金
11 断面半丸(φ20程度)又は半楕円の裏当金
12 すみ肉溶接部
13 肉盛溶接
14 山形の裏当金
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐震補強鉄骨枠において、
鉄骨補強枠部材の交差接合部のウエブと耐震補強鉄骨枠フレームのウエブとを溶接接合又はボルト接合させるか、又は、
耐震補強枠フレーム端部のフランジをウエブから切除して、
鉄骨補強枠部材の交差接合部の下側フランジ板を最下段として定盤上に水平に設置して、該交差接合部のフランジ板の上に、ウエブ板を垂直に立てて、該交差接合部の下側フランジ上面に溶接接合し、該交差接合部の上側フランジ板を小板に分割し、該小板端部をウエブ上端部に設置して、ウエブ上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させて、
該ウエブ上端と該小板端部とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させ、
交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとを溶接接合させると共に、交差接合部の上側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼上側フランジとを溶接接合させることを特徴とする組立方法又は鉄骨構造物
【請求項2】
請求項1に係る発明において、交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとの溶接接合の際、該交差接合部のフランジ板端部の下部又は耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジ端部下部又はその両部材側に予め肉盛溶接をしておき、下向溶接用に上に開いた開先を形成させることを特徴とする組立方法又は構造物
【請求項3】
請求項1に係る耐震補強鉄骨枠の組立時に、鉄骨補強枠部材の交差接合部の少なくとも下側においてフランジと耐震補強鉄骨枠H形鋼フランジとを溶接接合時に裏当金の断面が半円、半楕円又は山形の形状にしておくことを特徴とする組立方法又は構造物
【請求項1】
耐震補強鉄骨枠において、
鉄骨補強枠部材の交差接合部のウエブと耐震補強鉄骨枠フレームのウエブとを溶接接合又はボルト接合させるか、又は、
耐震補強枠フレーム端部のフランジをウエブから切除して、
鉄骨補強枠部材の交差接合部の下側フランジ板を最下段として定盤上に水平に設置して、該交差接合部のフランジ板の上に、ウエブ板を垂直に立てて、該交差接合部の下側フランジ上面に溶接接合し、該交差接合部の上側フランジ板を小板に分割し、該小板端部をウエブ上端部に設置して、ウエブ上端部を底とし小板端部を側面とした溝を形成させて、
該ウエブ上端と該小板端部とを下向溶接することにより該ウエブ板上端と該小板とを接合・一体化させ、
交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとを溶接接合させると共に、交差接合部の上側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼上側フランジとを溶接接合させることを特徴とする組立方法又は鉄骨構造物
【請求項2】
請求項1に係る発明において、交差接合部の下側フランジ板と耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジとの溶接接合の際、該交差接合部のフランジ板端部の下部又は耐震補強鉄骨枠フレームのH形鋼下側フランジ端部下部又はその両部材側に予め肉盛溶接をしておき、下向溶接用に上に開いた開先を形成させることを特徴とする組立方法又は構造物
【請求項3】
請求項1に係る耐震補強鉄骨枠の組立時に、鉄骨補強枠部材の交差接合部の少なくとも下側においてフランジと耐震補強鉄骨枠H形鋼フランジとを溶接接合時に裏当金の断面が半円、半楕円又は山形の形状にしておくことを特徴とする組立方法又は構造物
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2010−43523(P2010−43523A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−163166(P2009−163166)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(503318518)株式会社アークリエイト (16)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(503318518)株式会社アークリエイト (16)
【Fターム(参考)】
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