説明

耐風力を向上させた傘

【課題】 風に対する抵抗を極力低減させることにより、突風などの強風でも適切に風を通過させて反転などによる破損を防止でき、しかも、安価且つ容易に製造することができる傘を提供する。
【解決手段】 傘を開いた際に内側から受ける風圧を開放する耐風力を向上させた傘であって、傘の生地は、石突を中心とする略円板状の部分生地の周囲に、同心円の輪状に切断した少なくとも2枚以上の部分生地をその内側の所定幅が下になるよう親骨の先端に向かって鎧戸状に重合させ、且つ、前記重合部分の前記親骨が当接する直線部分のみ縫合または接着して一体化している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突風などの強い風を受けても傘が反転して盃状になったりすることない耐風力を向上させた傘に関する。
【背景技術】
【0002】
雨傘などの傘は、開いている際に突風などにあおられると、反転して盃状(所謂、お猪口)になり、親骨が折れたり変形したりして使用不能になることが多い。そのため、これまでにも多くの改良が提案されてきた。従来の改良には2つのタイプがあり、骨組みや轆轤の構造を工夫して、盃状になっても破壊することなく、再度使用できるようにするタイプと、盃状にならないように風圧を開放するタイプとがある(例えば、特許文献1、2又は3を参照)。
【0003】
前者のタイプは、傘に構造上の改良を要するため、通常の傘の製造方法と比較しても製造工程が煩雑となり、製造コストの面から現実的ではない。一方、後者のタイプもこれまで広く普及するに至っていない。この風圧を開放するタイプの傘について、従来技術を分析してみると、いずれも風圧を開放する開口領域が極端に狭く、実際に起こりうる突風下では風圧を十分に開放しきれず破壊する可能性が高いことが判明した。また、前者のタイプと同様、製造工程の煩雑さや製造コスト面に大きな課題があるものもあった。
【0004】
風圧を開放するタイプの傘の従来の課題を具体的に説明する。
【0005】
例えば、特許文献1に開示された傘は、轆轤を2つ設け、傘を開いたときに中心となる領域に開口部を形成した通常の傘の上部に、当該開口部より大きな面積の傘が開かれるように構成したものである。大きな傘と小さな傘との間に空気の通路が形成されるが、空気の通路と比較して風を遮断する生地の部分が大きいため、それが抵抗となり、風速の大きな突風では容易に破壊してしまうという課題があった。また、2つの轆轤を形成しなければ成らず、製造工程が煩雑で、且つ、部品点数も多くなるため、製造コストが著しく高いという問題もあった。
【0006】
次に、例えば、特許文献2に開示された傘は、前記特許文献1に開示された傘と同様、傘を開いたときに中心となる領域に開口部を形成し、その上に別の生地を開口部に重合させて張設したものである。特許文献1に開示された傘と比較して、構成は簡易で製造上のコスト上昇は少ないが、開口部が小さいため、抵抗が大きく、やはり風速の大きな突風では容易に破壊してしまうという課題があった。
【0007】
次に、例えば、特許文献3に開示された傘は、傘の生地を分割し、石突と親骨の先端との間に生地が重合する部分を大きくして張設し、そこから傘の内側に入り込む風を開放しようとするものである。しかし、襞となる部分を形成するために石突(中心)側の生地が複雑な形状になり、この生地の製造が煩雑であるという問題があった。また、親骨と親骨の間を縫合または接着する必要があるため、生地の準備も含め通常の傘の製造とは異なる工程が追加されることととなり、製造上のコストが高いという問題もあった。更に、傘の外周側から吹き上げるような風に対しては襞が膨れ上がり、雨風が内側へ入り込むという問題に加え、最大の課題は、上記2つの開示例と同様に、風速の大きな突風では容易に破壊してしまうということであった。
【0008】
【特許文献1】特開2006−102392号公報(第4−7頁、第1図)
【特許文献2】特開平11−169216号公報(第2−3頁、第4図)
【特許文献3】特開平11−56433号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、風に対する抵抗を極力低減させることにより、突風などの強風でも適切に風を通過させて反転などによる破損を防止でき、しかも、安価且つ容易に製造することができる傘を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の傘は、傘を開いた際に内側から受ける風圧を開放する耐風力を向上させた傘であって、傘の生地は、石突を中心とする略円板状の部分生地の周囲に、同心円の輪状に切断した少なくとも2枚以上の部分生地をその内側の所定幅が下になるよう親骨の先端に向かって鎧戸状に重合させ、且つ、前記重合部分の前記親骨が当接する直線部分のみ縫合または接着して一体化していることを特徴とする。
上記構成によれば、鎧戸状に重合させた生地の複数の部分から効果的に風を逃がすことができる。従って、風に対する抵抗が低減され、傘の反転による破損等を防止することができる。また、傘の生地は、重合部を形成するための縫合または接着箇所が少なく、その他の部分は従来の傘の生地と全く同じであるため、製造工程の大幅な変更や追加などを行うことなく、安価且つ容易に傘を製造することができる。
【0011】
また、本発明の傘は、請求項1に記載の耐風力を向上させた傘であって、前記重合部分の前記親骨の長さ方向に係る幅は、親骨と親骨の間で変化し、中央部分が最も重合幅が小さくなるように前記部分生地の外周が略への字状に切断されていることを特徴とする。
上記構成によれば、傘の内側に風を受けた際、重合部が開きやすくなる。従って、容易に風の通路を形成して風を逃がすことができる。
【0012】
また、本発明の傘は、請求項1又は2に記載の耐風力を向上させた傘であって、前記重合部分は、前記部分生地の親骨の長さ方向の幅の少なくとも10%以上30%以下であることを特徴とする。
上記構成によれば、生地が重合している部分が多い場合に比較して、傘の内側に風を受けた際、重合部が開きやすくなる。従って、容易に風の通路を形成して風を逃がすことができる。
【0013】
また、本発明の傘は、請求項1から3のいずれか一項記載の耐風力を向上させた傘であって、前記生地の少なくとも一部は、透明の素材で形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、傘の耐久性を維持しながら視認性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の傘によれば、反転などによる破損を防止できる。しかも、当該傘を安価且つ容易に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態における耐風力を向上させた傘について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
[実施の形態1]図1および図2は、本発明の実施の形態1における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図である。本発明の実施の形態における傘は、主に、略円板状部分生地1、同心円の輪状部分生地2および3、石突40、親骨41、傘軸42、握柄43、などで構成される。石突40を中心とする略円板状の部分生地1は、分割された生地の一番中央に張設された生地で、輪状の部分生地2との間に重合部12を形成するように張設されている。部分生地1と部分生地2の重合部12のうち、親骨41に当接する部分だけが縫合されており、縫合部10を形成している。生地1,2が伸縮性を有し、また親骨41が弾性を有するため、重合部10は容易に開いて風の通路となる開口部11が親骨41と同じ数だけ形成される。特に、生地1が生地2の上に覆いかぶさるように重合部12が形成されているので、傘の内側に当たる風を開口部11を通過させて放射状に逃がすことができる。
【0017】
尚、重合部12の親骨の長さ方向の幅は、親骨41と親骨41の中央の方(図中A)が親骨近傍(図中B)よりも短くなるように、生地1の外周は略への字状に切断されている。これにより、僅かな風でも中央の方から容易に開口部11が形成される。
【0018】
また、輪状の部分生地3は、分割された生地の一番外側に張設された生地で、同じく輪状の部分生地3との間に重合部22を形成するように張設されている。部分生地2と部分生地3の重合部22のうち、親骨41に当接する部分だけが縫合されており、縫合部20を形成している。生地2,3が伸縮性を有し、また親骨41が弾性を有するため、重合部20は容易に開いて風の通路となる開口部21が親骨41と同じ数だけ形成される。特に、生地2が生地3の上に覆いかぶさるように重合部22が形成されているので、傘の内側に当たる風を開口部21を通過させて放射状に逃がすことができる。
【0019】
尚、重合部22の親骨の長さ方向の幅は、親骨41と親骨41の中央の方(図中C)が親骨近傍(図中D)よりも短くなるように、生地2の外周は略への字状に切断されている。これにより、僅かな風でも中央の方から容易に開口部11が形成される。
【0020】
このように、3枚の生地が鎧戸状に張設されているので、風を通過させるための開口部を非常に多く形成することができる。ここで鎧戸状とは、鎧板を重ね合わせて形成した鎧や、ルーバを重ねたブラインドのような形状を指し、雨の浸入防止や遮光性などを維持しながら通気性や通風性を高める効果的な形状である。
【0021】
[実施の形態2]図3および図4は、本発明の実施の形態2における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図である。本発明の実施の形態における傘は、実施の形態1のそれと比較して、同心円の輪状部分生地4が付加されている点が異なる。部分生地3と部分生地4の重合部32のうち、親骨41に当接する部分だけが縫合されており、縫合部30を形成している。生地3,4が伸縮性を有し、また親骨41が弾性を有するため、重合部30は容易に開いて風の通路となる開口部31が親骨41と同じ数だけ形成される。特に、生地3が生地4の上に覆いかぶさるように重合部32が形成されているので、傘の内側に当たる風を開口部31を通過させて放射状に逃がすことができる。その他の構成は実施の形態1の傘と同じであるので、詳細な説明を省略する。
【0022】
このように、4枚の生地が鎧戸状に張設されているので、風を通過させるための開口部を非常に多く形成することができる。
【0023】
以上のように、本発明の実施の形態における耐風力を向上させた傘は、従来の風圧を開放するタイプの傘と比較して、非常に多くの開口部が形成されているので、突風などの強風でも適切に通過させて反転などによる破損を防止できる。また、傘の骨組みは従来のものをそのまま流用でき、生地も張設前に極めて簡単な縫合または接着のみを要する形状である。従って、耐風力を向上させた傘を安価且つ容易に製造することができる。
【0024】
尚、上記の実施の形態では、部分生地の枚数が2枚、3枚の場合について例示したが、これにとらわれるものではなく、更に多くの部分生地を縫合または接着して形成したものであってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明にかかわる耐風力を向上させた傘は、反転などによる破損を防止でき、しかも、安価且つ容易に製造できるという効果を有し、量産志向の傘において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】 本発明の実施の形態1における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図
【図2】 本発明の実施の形態1における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図
【図3】 本発明の実施の形態2における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図
【図4】 本発明の実施の形態2における耐風力を向上させた傘の外観を示す斜視図
【符号の説明】
【0027】
1 略円板状部分生地
2 同心円の輪状部分生地
3 同心円の輪状部分生地
4 同心円の輪状部分生地
10 縫合部
11 開口部
12 重合部
20 縫合部
21 開口部
22 重合部
30 縫合部
31 開口部
32 重合部
40 石突
41 親骨
42 傘軸
43 握柄
100 耐風力を向上させた傘

【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘を開いた際に内側から受ける風圧を開放する耐風力を向上させた傘であって、
傘の生地は、石突を中心とする略円板状の部分生地の周囲に、同心円の輪状に切断した少なくとも2枚以上の部分生地をその内側の所定幅が下になるよう親骨の先端に向かって鎧戸状に重合させ、且つ、前記重合部分の前記親骨が当接する直線部分のみ縫合または接着して一体化していることを特徴とする耐風力を向上させた傘。
【請求項2】
前記重合部分の前記親骨の長さ方向に係る幅は、親骨と親骨の間で変化し、中央部分が最も重合幅が小さくなるように前記部分生地の外周が略への字状に切断されていることを特徴とする請求項1に記載の耐風力を向上させた傘。
【請求項3】
前記重合部分は、前記部分生地の親骨の長さ方向の幅の少なくとも10%以上30%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐風力を向上させた傘。
【請求項4】
前記生地の少なくとも一部は、透明の素材で形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項記載の耐風力を向上させた傘。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−125305(P2010−125305A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328670(P2008−328670)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(504204384)有限会社ユイット (32)
【Fターム(参考)】