説明

耐食性部材

【課題】ウエットプロセス用被処理物搭載用治具、ICP分析用スプレーチャンバー等の耐食性及び液体が残留しにくい性質が要求される装置用の材料の提供。
【解決手段】耐食性及び液体が残留しにくい性質が要求される装置の少なくとも表面を表面粗さ(Ra)が10μm以下のガラス状カーボンで構成する。装置がウエットプロセス用被処理物搭載用治具である場合には、接液面の純度を灰分で50ppm以下及び表面粗さ(Ra)を0.1μm以下とし、装置がICP分析用スプレーチャンバーである場合には、(Ra)を0.1〜10μmとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス状カーボンからなる耐薬液性及び液体の離液性に優れた耐食性部材に関し、より詳細には、ウエットプロセス用被処理物搭載用治具及びICP−MS(誘導結合プラズマ質量分析装置)やICP−AES(誘導結合プラズマ発光分析装置)等のICP分析装置に用いるICP(誘導結合プラズマ)分析用スプレーチャンバーに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の耐食性部材の主な用途としては、ウエットプロセス用被処理物搭載用治具及びICP分析用スプレー用チャンバーを挙げることができるので、以下では、これらの用途における従来技術について述べる。
【0003】
(ウエットプロセス用被処理物搭載用治具)
従来、半導体素子製造に際しては、ウエハーの表面に付着した不純物や異物は半導体素子の性能に悪影響を及ぼすため、ウエハーの製造工程の中に洗浄工程が含まれており、この洗浄工程でウエハーを洗浄することによって不純物や異物を除去している。
また、ウエハーの製造工程においては、インゴットからウエハーが切り出されるときに導入された歪みの解放、ウエハー表裏面のゆがみの修正及びウエハーの表裏面を機械的も研磨して平滑化、鏡面化するときに導入された表面歪み層の除去を目的としてウエハーをエッチングし、その後に洗浄工程でウエハーを洗浄することが行われる。
上記したようなエッチング工程及び洗浄工程では、複数枚の半導体ウエハーを、半導体ウエハー保持治具に装着してエッチング溶液または洗浄液に浸漬することによってエッチング及び洗浄の各処理が行われる。
【0004】
このような工程に使用される半導体ウエハー保持治具の材料としては、フッ化水素酸や塩酸等のエッチング溶液及び洗浄液との反応を避けるため、従来からPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を初めとするフッ素系の樹脂または石英ガラスが用いられている(特許文献1〜3参照)。
しかしながら、石英ガラスを用いた場合、エッチング工程ではフッ化水素酸が使われることが多く、また、洗浄工程ではフッ化水素酸やアルカリを用いることが多いためいずれの工程でも石英は侵食されてしまう。
【0005】
また、PTFEなどの樹脂を用いると、樹脂が浸透性を有するため、エッチング工程及び洗浄工程で樹脂に薬液がしみ込んで、半導体ウエハー保持治具が槽から槽に移動した場合に前の槽の薬液や汚れが次の槽に持ち込まれてしまうという問題がある。この問題は特に減圧を利用したプロセスにおいて顕著である。
【0006】
特許文献4には、半導体ウエハーの洗浄工程に用いられる洗浄容器内や各工程間の搬送に用いられる搬送容器内等で発生する半導体ウエハーの静電気による帯電を除去するために、高純度のガラス状炭素の幅方向に半導体ウエハー支持用の1ヶ以上の溝を形成すると共に、さらに先端の長さ方向に、半導体ウエハーに生じた静電気を放電させるための突起部を形成してなる半導体ウエハー帯電除去用治具を用いることが記載されている。
しかしながら、特許文献4記載のものは帯電除去を目的としたものであって、半導体ウエハー保持治具が槽から槽に移動した場合における薬液や汚れの次の槽への持ち込みに関しては何らの考慮も払われていない。
【0007】
(ICP分析用スプレー用チャンバー)
ICP分析用スプレーチャンバーの一例としてスコット型スプレーチャンバーの基本的な構成を図1に示す。ICP分析装置の噴霧装置1においては、溶液試料6をプラズマトーチ9に導入するために、溶液試料6をキャリアーガス5によって吸い上げて噴霧するネブライザー(霧化器)3と噴霧された溶液ミストの液滴の大きさを選別するスプレーチャンバー(噴霧室)2が用いられる。
このうちスプレーチャンバー2では、粒子径の小さい液滴のみをプラズマトーチ9に送り、径の大きい粒子はドレイン4として捨てられる。
【0008】
従来、ICPによる分析をおこなう場合には、その測定する試料によりスプレーチャンバーの材質を使い分けなければならなかった。すなわち、スプレーチャンバーの材質としては、ICP−AESにて高濃度試料の分析に使用されるパイレックス(登録商標)ガラス、パイレックス(登録商標)ガラスでは対応できない微量試料分析時に使用される純度の高い石英ガラス等のガラスが通常用いられている。しかしフッ化水素酸、リン酸等を含む試料を分析する場合にはガラス類は使用できない。そこでスプレーチャンバーをPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)PFA(テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテルコポリマー)等の樹脂製のものに交換する必要があった。
【0009】
また試料溶液中の元素がスプレーチャンバー等の壁面に付着し、次の測定試料中に混入して測定誤差が生じるという問題もある。つまり前回分析した試料がスプレーチャンバー2内に残留しているので、最初は前回分析した試料が分析結果に影響を与える(メモリー効果)。特に樹脂製のスプレーチャンバーを使用した場合、浸透性が高いため、洗浄液を試料液噴射用ノズルから供給し壁面を洗浄しても、メモリー効果がなくならない場合もある。この場合はスプレーチャンバーを取り外し、酸等に浸漬して汚れを除去する必要があった。
上記のようなスプレーチャンバーの交換作業には、プラズマを消灯、再点灯させる等、単なる交換作業以外にも手間がかかり、交換後次の測定を行うまでには予想以上に時間がかかるという問題があった。
【0010】
特許文献5には噴霧装置の内面にノズルを付着させ、そこから洗浄液を液体又は霧状にて導入し、前回測定の残存試料を洗浄する装置が開示されている。また特許文献6には試料液噴射用ノズルとは別に洗浄液噴射用ノズルを略直交に配設し試料液と洗浄液を交互に霧化室内に噴射供給する装置が開示されている。
これらはそれぞれ洗浄液を供給する特別の洗浄液供給口を設けたもので、スプレーチャンバー内の洗浄時間短縮にはそれなりに効果があると思われるが、装置の精密な改造が必要となるものである。また試料の種類によるスプレーチャンバー交換については従来通り必須となる。
【0011】
【特許文献1】特許第3117591号公報
【特許文献2】特許第3174496号公報
【特許文献3】特開平11−130467号公報
【特許文献4】特開平7−230891号公報
【特許文献5】特開平9−239298公報
【特許文献6】特開平8−201294公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、上記事情に鑑みてなされたものであり、腐食性のある薬液と接触する部位に用いられる部材において、耐薬液性に優れると共に薬液等が部材の表面に残留することのない(離液性にすぐれた)材料を提供することにある。
より詳細には、本発明の課題は、薬液の種類による交換が不要で、液切れのよいウエットプロセス用被処理物搭載用治具を提供することであり、また、試料の種類による交換が不要で、かつ特別な装置の改良をしなくても、壁面に付着した試料がドレンとして排出されやすい(メモリー効果が小さい)交換頻度を減らすことが可能なICP分析用スプレーチャンバーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記目的を達成するため、従来のガラス製部材の長所(メモリー効果の小ささ)を保持またはより向上させつつ、その欠点である試料種類による交換の必要性がない材料につき鋭意検討した。その結果、部材の少なくとも接液面をガラス状カーボンにすることにより、耐薬品性を保持しつつ、表面に試料が残留しにくくなり、このため特別な装置改良をせず定法で洗浄した場合でも洗浄に時間がかからず、また、被処理物搭載用治具やスプレーチャンバーの交換頻度を減らすことが出来ることを見出し、本発明をなすに至った。
すなわち本発明は以下に記載するとおりのものである。
【0014】
(1)少なくとも表面が表面粗さ(Ra)が10μm以下のガラス状カーボンで構成されてなる離液性に優れた耐食性部材。
(2)上記(1)記載の耐食性部材からなるウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
(3)少なくとも接液面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とする上記(2)に記載のウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
(4)少なくとも接液面のガラス状カーボンの純度が灰分で50ppm以下であることを特徴とする上記(2)又は(3)記載のウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
(5)上記(1)記載の耐食性部材からなることを特徴とするICP分析用スプレーチャンバー。
(6)ガラス状カーボンの表面粗さ(Ra)が0.1〜10μmであることを特徴とする上記(5)記載のICP分析用スプレーチャンバー。
【発明の効果】
【0015】
本発明のガラス状カーボン製の材料を装置構成用部材として用いることにより、接触する薬液等に侵食されず、しかも、薬液等が装置の部材表面に残留することがないという効果が奏される。
本発明のウエットプロセス用被処理物搭載用治具は洗浄液の種類による交換が不要であり、また、表面に洗浄液が残留することがないので、次の洗浄槽への薬液の持ち込みがなくなる。
本発明のICP分析用スプレーチャンバーは試料の種類による交換が不要で、かつ特別な装置の改良をしなくても、壁面に付着した試料がドレンとして排出されやすいため、次の測定に悪影響を与えることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は液体と接触する部位に用いる材料としてガラス状カーボンを用いる。
ガラス状カーボンは、セルロース、フルフリルアルコール、フェノール樹脂、アセトン、ポリカルボジイミド樹脂、フラン樹脂、フルフラール樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、その他の熱硬化性樹脂、あるいはそれらの混合樹脂を主成分として、これを成形、又はパーツに含浸、被覆等して、硬化した後、不活性雰囲気中又は真空下で焼成炭化して得られるものである。
【0017】
このようにして得られたガラス状カーボンは、高純度かつ緻密質であり、耐薬品性、耐摩耗性に優れており発塵性がないという性質を有しているので、フッ化水素酸やアルカリを用いる半導体の製造工程におけるウエットプロセス用被処理物搭載用治具の材料やICP分析用スプレー用チャンバーの材料として適している。
【0018】
ガラス状カーボンは製造工程上、板状体としては厚さが5mmまでのものを製造するのが限界であり、5mmを超える厚さの大型の立体形状のものを製造するのは困難である。
ウエットプロセス用被処理物搭載用治具やICP分析用スプレー用チャンバーは複合材雑な立体的な形状を有しているため、これらをガラス状カーボン製のものとするには、いくつかのパーツに分けてガラス状カーボン部材を作製してから組み立てるという方法をとることが好ましい。
【0019】
各パーツはパーツ全体をガラス状カーボンで作製してもよく、パーツをアルミ材料、黒鉛材料等で形成し、その全面をガラス状カーボンにて被覆してもよい。またその液体と接触する面のみをガラス状カーボンで被覆してもよい。
パーツ全体をガラス状カーボンで作製する場合には、各パーツを樹脂で作製したのち、液状の樹脂を用いて各パーツを貼り合わせた後焼成してもよいし、各パーツを焼成後に嵌め合わせが可能な形状としておいて焼成後に嵌め合わせてもよい。
個々のパーツの成形は、液状の樹脂を型に入れて硬化させる方法、粉末状の樹脂を加熱プレス成形する方法又は粉末状の樹脂を射出成形する方法のいずれによっても行うことができる。
精密な寸法が要求される部分については焼成後に機械加工を行ってもよい。
また、強度が要求される部分については、中ぐりのガラス状カーボンを作製し、芯材としてアルミニウムやSUS等の金属を入れてもよい。
【0020】
パーツの表面のみをガラス状カーボンとする方法としては、ガラス状カーボンをフィルム状に形成して、このフィルムをパーツに貼り合わせる方法、ガラス状カーボンの原料となる樹脂をパーツに含浸、被覆、或いは含浸と被覆の両処理を施し、それを炭素化することによりパーツに被覆する方法等を挙げることができる。
このガラス状カーボンの被膜の厚さは好ましくは1〜1000μm、より好ましくは2〜100μmである。薄すぎると被膜の耐久性に問題があり、厚すぎてもあまり意味がない。
【0021】
本発明においては、上記のようにして得られたガラス状カーボン部材の表面の粗さ(Ra)を10μm以下とする。
ガラス状カーボンは、その表面粗さにより疎水性と親水性の度合いを変えることができるので、その用途により適宜に表面粗さを調節する。
【0022】
次に本発明の耐食性部材を好適な用途である、ウエットプロセス用被処理物搭載用治具及びICP分析用スプレー用チャンバーに用いた場合について説明する。
(ウエットプロセス用被処理物搭載用治具)
図2は半導体製造工程におけるウエハー洗浄工程を示す概略図である。
ウエハー11はウエハー搭載用治具12に搭載されて洗浄槽13で薬液14によって洗浄され、その後、次の洗浄槽13に移送される。前記ウエハー搭載用治具12の材料としてガラス状カーボンを用いる。この場合、ガラス状カーボンの表面は表面粗さ(Ra)0.1μm以下、好ましくは鏡面(0.05μm以下)とする。このような表面状態にすることにより、水切れがよくなり次の槽への洗浄液の持ち込みがなくなる。また、この洗浄工程では薬液としてフッ化水素酸が用いられるが、ガラス状カーボンはフッ化水素酸に浸食されることがなく、また、高純度、かつ緻密質であり、発塵性もないため、次の槽への洗浄液や不純物の持ち込みもない。
【0023】
図3はウエハーを搭載して搬送するための搭載用治具の一例を示す図である。図3に示したものにおいては、搭載用治具12は、ウエハーを水平方向に保持するための側部保持体と該側部保持体に対して平行に配置されてウエハーを下側から垂直方向に保持するための底部保持体とを具えており、側部保持体及び底部保持体にはウエハーを固定するための溝が複数個所定間隔で形成されている。
【0024】
また、ガラス状カーボンは室温付近での使用においてはいかなる薬品に対しても侵食されないので、薬液の種類によって治具の材質を変更する手間がなく、また、密度が石英、PTFEに比べて低いため、自動装置の場合、機械にかかる負荷が小さくなり省エネ効果がある。また、ガラス状カーボンはPTFEに比べて曲げ強さが大きいので、偏荷重がかかってもPTFEのようにたわむことがない。
【0025】
(ICP分析用スプレー用チャンバー)
本発明のICP分析用スプレー用チャンバーはスプレーチャンバーの少なくとも内壁面をガラス状カーボンから構成されている。
ガラス状カーボンは前述したように、耐薬品性に優れるため、ガラス類では対応できない試料の測定も可能であり、また表面をガラス並もしくはそれ以上に緻密に調整可能であることから、表面に試料が残留しにくくなる。このため特別な装置改良をせず定法で洗浄した場合でも洗浄に時間がかからず、スプレーチャンバーの交換頻度を減らすことが出来る。
【0026】
ガラス状カーボンの表面は、メモリー効果を小さくするために親水性を持つことが望ましく、このため、表面粗さは好ましくはRa=0.1〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmである。表面粗さが小さ過ぎると撥水性となり、また表面粗さが大きすぎると表面に測定試料が残存する場合がある。
本発明によるスプレーチャンバーは、スコット型、サイクロン型等、各種のICP分析用スプレーチャンバーに使用が可能である。
【実施例】
【0027】
次に、実施例を挙げて本発明の構成及び効果をより詳細に述べる。
以下では、ウエハー洗浄用治具及びスプレーチャンバーを例として説明したが、本発明はこれらの例に限られるものではない。
【0028】
<ウエハー洗浄用治具の用途についての試験例>
[実施例1]
ウエハー洗浄用治具は、ウエハーを搭載するための溝のあるプレート部と、これを支えるプレート部と、機械に設置するプレート部からなっており、ガラス状カーボンの板を各プレートに加工し、接液部を表面粗さRa0.05μmまで磨き、鏡面とした。これらの各プレートをそれぞれ、原料であるフェノール樹脂で接着し、再度不活性ガス中で焼成することで、接合部もガラス状カーボン製のウエハー洗浄用治具を得た。
これにウエハーを50枚搭載し、5%フッ化水素酸に浸漬し、超音波洗浄器にて10分間洗浄し、引上げ後治具からの液切れの状態とウエハーのがたつき、たわみを確認し、これを1000回繰り返した。
【0029】
[比較例1]
実施例1と同様にガラス状カーボンの板を各プレートに加工し、表面状態をRa0.5μmの状態に仕上げた。これらの各プレートをそれぞれ、原料であるフェノール樹脂で接着し、再度不活性ガス中で焼成することで、接合部もガラス状カーボン製のウエハー洗浄用治具を得た。
これを用いて実施例1と同様の試験を行なった。
【0030】
[比較例2]
石英(GE Quartz社製 品番GE−012)の板を加工して、実施例1と同様に各プレートを作製し、それぞれを溶接後、アニール処理を行い石英製のウエハー洗浄用治具を得た。
これを用いて実施例1と同様の試験を行なった。
【0031】
[比較例3]
PTFEのブロックから削り出し加工を行い、PTFE製のウエハー洗浄用治具を得た。
これを用いて実施例1と同様の試験を行なった。
表1に評価結果を示す。
【0032】
評価は次の方法で行った。
[評価方法]
<液切れ、たわみ>
目視により評価した。
<がたつき>
治具のウエハーを搭載するための保持部分に溝形状を形成するが、この溝形状が100μmエッチングされたときにがたつくものと想定した。
【0033】
【表1】

【0034】
(スプレーチャンバーの用途におけるメモリー効果ついての試験例)
[実施例2]
200℃にて不融化したフェノール樹脂ブロックから、焼成後の収縮率を計算した寸法で、機械加工にて削りだした各パーツを、各々フェノール樹脂にて接着して、再度200℃で不融化の後に、不活性ガス雰囲気で1800℃に焼成して作製したガラス状カーボン製スプレーチャンバーを使用した。接液面の表面粗さRaは0.2μmであった。
B標準液を、10μg/L、100μg/Lに調整し、何も添加しない純水を濃度0とし、10μg/L、100μg/Lの順に試料を導入し検量線を得た。その後50μg/L に調整したB標準液を測定した。
【0035】
[比較例4]
PTFE製スプレーチャンバーを用いた以外は実施例2と同様に実施した。
なおICP−MS装置はセイコーインスツルメンツ社製 SPQ9000、標準試薬はGLサイエンス社製1000μg/Lを使用した。
実施例2及び比較例4の結果を表2に示す。
【0036】
【表2】

【0037】
(スプレーチャンバーの用途における耐フッ化水素酸性についての試験例)
[実施例3]
フェノール樹脂を200℃にて不融化し、不活性ガス雰囲気にて1800℃で焼成して作製した30×30×3mm厚のガラス状カーボン試験片(表面粗さRa0.2μm)を用意し、5%フッ化水素酸に1週間(168時間)浸漬し、エッチング量を測定した。
【0038】
[比較例5]
石英ガラス試験片(GE Quartz社製 品番GE−012)を用いた以外は実施例3と同様に実施した。
実施例3及び比較例5の結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の耐食性部材は、腐食性の液体に対する耐食性が要求され、かつ液体との接触後に液体が残留しないことが要求される装置の部材として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】スコット型スプレーチャンバーの基本的な図である。
【図2】ウエハー洗浄工程の例を示す概略図である。
【図3】洗浄治具の例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0042】
1 噴霧装置
2 スプレーチャンバー
3 ネブライザー
4 ドレイン
5 キャリアーガス
6 試料
7 プラズマガス
8 冷却ガス
9 プラズマトーチ
10 プラズマ
11 ウエハー
12 ウエハー搭載用治具
13 洗浄槽
14 薬液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表面が表面粗さ(Ra)が10μm以下のガラス状カーボンで構成されてなる離液性に優れた耐食性部材。
【請求項2】
請求項1記載の耐食性部材からなるウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
【請求項3】
少なくとも接液面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以下であることを特徴とする請求項2に記載のウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
【請求項4】
少なくとも接液面のガラス状カーボンの純度が灰分で50ppm以下であることを特徴とする請求項2又は3記載のウエットプロセス用被処理物搭載用治具。
【請求項5】
請求項1記載の耐食性部材からなることを特徴とするICP分析用スプレーチャンバー。
【請求項6】
ガラス状カーボンの表面粗さ(Ra)が0.1〜10μmであることを特徴とする請求項5に記載のICP分析用スプレーチャンバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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