説明

耕耘爪固定構造

【課題】たとえ手動であっても、耕耘回転軸に設けた取付部から耕耘爪の着脱を容易にし、複数の耕耘爪を均等な力で前記取付部に固定することを目的とする。
【解決手段】耕耘回転軸に設けた取付部2と、耕耘爪1と、前記取付部と耕耘爪との固定器具3とを具備し、前記取付部2に耕耘爪1を遊嵌し、前記取付部2と耕耘爪1の間に挟まれた前記固定器具3を180度未満の角度で回転させ、前記固定器具3の張出上面部35と前記取付部2を押圧し、且つ前記固定器具3の張出部の下面又は固定器具凸部33と前記耕耘爪1を押圧することにより、前記取付部2と前記耕耘爪1を固定することを特徴とする耕耘爪固定構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた取付部と、耕耘爪と、前記取付部と耕耘爪との固定器具による固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、耕耘爪が使用限界に達した時や耕土の状況や使用目的に応じて、また打壊したときなどに交換しやすくするために、耕耘爪は着脱が可能なように耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた取付部に固定されるものが考えられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた円盤状の取付部に耕耘爪をボルトとナットを用いて、固定する構造が記載されている。また、特許文献2では、耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた爪ホルダに耕耘爪を挿嵌し継手部材を介しボルトとナットを用いて、固定する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−176676号公報(段落0005、図1)
【特許文献2】特開2006−254782号公報(段落0014、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1ないし2に記載の耕耘爪固定構造では、耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた取付部と耕耘爪をボルトとナットで締結する構造を採用しているためボルト又はナットを何回転もしなければならず、耕耘爪が使用限界に達した際の交換又は使用目的に応じて耕耘爪を取り換える又は堅い木の根や岩に接触することによる打壊により耕耘爪を取り換える際に時間を要する。さらには、長期の使用によりボルトとナットの少なくとも一方が錆びている場合、耕耘爪を取り換える作業には、より一層の時間を要することとなる。
【0006】
また、複数存在する耕耘爪を耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた取付部に同様な力で固定することは困難であるため、ボルトとナットの螺嵌圧力が小さい個所ではボルトとナットが緩み、前記取付部の摩耗又は破損さらには作業中に耕耘爪が脱離するという危険を内包していた。
【0007】
ボルトとナットを螺嵌するために電動工具も活用されるものの、実際に作業する田圃や畑などの農地では電動工具を作動させるための電源は存在しないのが一般的である。また充電式の電動工具についても充電を行うことを忘れている場合や、充電池の自己放電により作業に必要十分な電気量が残存していない場合もあり、その様な場合には手動にてボルトとナットを螺嵌し耕耘爪を固定しなければならず、耕耘爪の着脱に時間を要し、また各耕耘爪を均等な力で固定することも困難であった。
【0008】
そこで、本発明では、前述した課題に対し、たとえ手動であっても、耕耘爪の着脱を容易にし、複数の耕耘爪を均等な力で耕耘作業機の耕耘回転軸に設けた取付部に固定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係る耕耘爪固定構造は、耕耘回転軸に設けた取付部と、田畑を耕すための耕耘爪と、前記取付部と前記耕耘爪との固定器具とを具備し、前記取付部及び前記耕耘爪のうちいずれか一方が前記取付部及び前記耕耘爪のうちの他方に遊嵌し、前記取付部と前記耕耘爪の間に挟まれた前記固定器具を180度未満の角度で回転させ、前記固定器具の一部と前記取付部を押圧し、且つ前記固定器具の他の部分と前記耕耘爪を押圧することにより、前記取付部と前記耕耘爪を固定することを特徴とする耕耘爪固定構造である。
【0010】
このようなものであれば、以下の作用効果を奏する。
【0011】
すわなち、まず取付部と耕耘爪の間に挟まれるように固定器具を配置した際には、互いに容易に動くことができる状態(以下、第一状態ともいう)であるが、固定器具を180度未満の角度で回転させ、固定器具の一部と取付部を押圧し、且つ固定器具の他の部分と耕耘爪を押圧することにより、取付部と耕耘爪を固定した状態(以下、第二状態ともいう)にすることができるため、ボルトとナットに比べ極めて少ない回転で固定することができ、たとえ手動であっても、取付部と耕耘爪を容易に着脱することができる。
【0012】
そして、手動であっても複数の耕耘爪を取付部に固定する際に、いずれの耕耘爪も均等な力で固定することができるため、不十分な力で締結された耕耘爪が緩むことに起因する取付部の摩耗又は破損や作業中に耕耘爪が脱離する危険を回避することができる。
【0013】
そして、取付部と耕耘爪とは、挿嵌方向と平行な少なくとも一つの面において密着しないため、長期使用での錆びの発生による固着で取付部と耕耘爪の着脱が困難になるという状況を大幅に軽減することができる。また、使用中に取付部と耕耘爪との隙間に土や砂利などの固形物が入り込み、耕耘爪の着脱が困難になるという状況も軽減することができる。
【0014】
また、本発明に係る固定器具によれば、必ず一対で使用しなければならないボルトとナットに比べ、運搬、使用及び保存が簡便であり、複数の固定器具を取り扱う際にも混同を生じない。
【0015】
なお、固定器具を容易に回転できるようにするためには、前記取付部が、その側面に前記固定器具の一部を露出することができる少なくとも一つ以上の貫通孔を具備することが望ましい。
【0016】
取付部と、耕耘爪と、固定器具とが、互いに容易に動くことができる第一状態を簡便に確保するためには、前記耕耘爪が、その一端部に前記固定器具と互いに緩やかに嵌合する形状を具備することが望ましい。
【0017】
固定器具を容易に回転させ、且つ取付部と耕耘爪と固定器具とが、互いに容易に動くことができる第一状態を簡便に確保するためには、前記固定器具が、前記取付部の貫通孔より露出する基部と、前記耕耘爪と互いに緩やかに嵌合する形状を有する張出部とを具備することが望ましい。
【0018】
固定器具と耕耘爪を確実に固定し第二状態を簡便に確保するために、前記固定器具の張出部が前記耕耘爪に段差をつけて凹設された耕耘爪凹設部に緩やかに嵌合し、その張出部が耕耘爪凹設部の段差を乗り上げることで、その張出部の上面が前記取付部の内面に押圧される手段が望ましい。
【0019】
取付部と固定器具を確実に固定し第二状態を簡便に確保するために、前記固定器具が、回転することにより前記取付部と接触する面が周方向に連続する張出部を具備することが望ましい。
【0020】
固定器具と耕耘爪を確実に固定し第二状態を簡便に確保するために、固定器具は、張出部にスリット部を有し、このスリット部によって固定器具の回転に際し張出部が弾性変形することが望ましい。
【0021】
取付部と耕耘爪とが確実に固定し、第二状態を簡便に確保するためには、前記取付部と前記耕耘爪とが、前記取付部に穿設された取付部貫通孔と反対側面に設けられた取付部凹部又は取付部貫通孔と、前記耕耘爪に設けられた耕耘爪凸部とを介し、嵌合することが望ましい。
【0022】
耕耘爪と固定器具とが確実に固定し、第二状態を簡便に確保するためには、前記耕耘爪と前記固定器具とが、前記耕耘爪に設けられた耕耘爪凹部又は耕耘爪貫通孔と、前記固定器具の張出部に設けられた固定器具凸部とを介し、嵌合することが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明に係る耕耘爪固定構造及び固定器具によれば、ボルトとナットに比べ極めて少ない回転で固定することができ、たとえ手動であっても、取付部と耕耘爪を容易に着脱することができる。
【0024】
そして、手動であっても複数の耕耘爪を取付部に固定する際に、いずれの耕耘爪も均等な力で固定することができるため、不十分な力で締結された耕耘爪が緩むことに起因する取付部の摩耗による破損や作業中に耕耘爪が脱離する危険を回避することができる。
【0025】
そして、取付部と耕耘爪とは、挿嵌方向と平行な少なくとも一つの面において密着しないため、長期使用での錆びの発生による固着で取付部と耕耘爪の着脱が困難になるという状況を大幅に軽減することができる。また、使用中に取付部と耕耘爪との隙間に土や砂利などの固形物が入り込み、耕耘爪の着脱が困難になるという状況も軽減することができる。
【0026】
また、本発明に係る固定器具によれば、必ず一対で使用しなければならないボルトとナットに比べ、運搬、使用及び保存が簡便であり、複数の固定器具を取り扱う際にも混同を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図。
【図2】本発明の実施例1の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を図1の反対方向から示す模式図。
【図3】同実施形態における第一状態を示す模式図。
【図4】(a)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図。(b)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図。
【図5】本発明の実施例2の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図。
【図6】(a)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図。(b)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図。
【図7】本発明の実施例3の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具等を示す模式図。
【図8】同実施形態における第一状態を示す模式図。
【図9】(a)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図。(b)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図。
【図10】同実施形態における固定器具の底面図。
【図11】本発明の実施例4の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具等を示す模式図。
【図12】同実施形態における第一状態を示す模式図。
【図13】(a)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図。(b)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図。
【図14】本発明の実施例5の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図。
【図15】同実施形態における第一状態を示す模式図。
【図16】(a)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図。(b)同実施形態における耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る耕耘爪固定構造に関する実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨明記されていない限り、これらの形態に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
図1及び図2は、本発明の実施例1の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図である。
【0030】
耕耘爪1は、耕耘回転軸に設けた複数の取付部2に一端部を本発明の固定構造によって各々固定され、他端部が取付部2の外側に突出して、放射状となる。また、その一端部の表面側に、固定器具3の張出部32と緩やかに嵌合するように段差を設けて凹設された耕耘爪凹設部11を有し、耕耘爪凹設部11と耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面とに段差を有する。さらに耕耘爪1は、前記耕耘爪凹設部11の凹設内部に、固定器具3の固定器具凸部33と嵌合するための、円孔からなる耕耘爪貫通孔12を有している。そして耕耘爪1の一端部の裏面側に、略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状で凸設された耕耘爪凸部13を有する。なお実施例の耕耘爪凸部13は、耕耘爪凹設部11の凹設内部を、耕耘爪凹設部11の凹設形状よりも小さい形状でさらに裏面側に押し出すことで形成され、このため耕耘爪凹設部11には、段差を設けた凹設面の面内に、耕耘爪凸部13の形状の窪みが形成される。また、その他端部が直線又は湾曲などの形状を有するため、田畑を耕すことや、雑草を取り去ることができる。
【0031】
取付部2は、耕耘回転軸との一体成型や、耕耘回転軸との溶接などにより、耕耘回転軸の外側に突出して放射状に複数設けられる。また、その側面に取付部貫通孔21と、同形状の反対面の取付部貫通孔21´を有し、耕耘爪1の嵌挿方向に耕耘爪1の端部面16より十分に大きい嵌挿孔22を有する。
【0032】
固定器具3は、前記取付部2と耕耘爪1とを固定するために基部31と張出部32から構成されている器具である。また、張出部32は、耕耘爪1に凹設された耕耘爪凹設部11と緩やかに嵌合する略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状を有しており、その張出部32の下面に、耕耘爪貫通孔12と嵌合するための、円柱又は多角柱からなる固定器具凸部33を有する。また、張出部32の下面には、耕耘爪1と回転しながら接触する張出下面傾斜部34を有する。
【0033】
取付部嵌挿孔22に耕耘爪1の一端部は遊嵌する。略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状の取付部貫通孔21と同形状の反対面の取付部貫通孔21´と、耕耘爪1の一端部に設けられた略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状の耕耘爪凸部13とが嵌合し、取付部2と耕耘爪1とを固定することができる。
【0034】
取付部2と耕耘爪1とを挿嵌した後に、固定器具3を、取付部貫通孔21に通し、耕耘爪1と、耕耘爪1の一端部に凹設された耕耘爪凹設部11及び耕耘爪貫通孔12に嵌合することにより耕耘爪1の挿嵌方向では固定されるが、前記挿嵌方向と垂直方向には互いに容易に動くことができる第一状態を形成することができる。
【0035】
そして、固定器具の基部31に嵌合する器具を挿し込み、時計回り又は反時計回りに90度の角度で固定器具3を回転させることにより、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない第二状態を形成することができる。この場合、基部31と嵌合する器具として、汎用な工具であるソケットレンチ用ソケット(JIS B 4636)等を使用することができるが、固定器具3を回転させることができれば汎用な工具に限られない。
【0036】
固定器具の回転の角度は、当該実施例に限定されるものではなく、耕耘爪1と取付部2と固定器具3を固定させるため、0度より大きく180度より小さい角度で回転させることが好ましく、30度以上120度以下がさらに好ましく、60度以上120度以下が最も好ましい。
【0037】
なお、本実施例では、固定器具3の基部31の一端部が六角形の形状を有しているが、本発明においてはこの形状に限らず、他の多角形の形状や平板状の突起物など種々の形状を有していても良く、この場合汎用な工具であるスパナ(JIS B 4630)、めがねレンチ(JIS B 4632)、モンキレンチ(JIS B 4604)、ペンチ(JIS B 4623)等やこれらを改良した工具を用いて、前記突起物を挟み回転させることができる。
【0038】
図3は、図1又は図2に記載の各部を前述した方法により組合せた図であり、第一状態を示す模式図である。
【0039】
図4の(a)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と固定器具3とは緩く嵌合しているので、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる。
【0040】
図4の(b)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない。
【0041】
固定器具3を回転させるに従って、張出部32の下面に設けられた張出下面傾斜部34が、耕耘爪1に段差をつけて凹設された耕耘爪凹設部11と耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面との段差を乗り上げることにより、張出部32の下面が耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面を押圧する(図4(b))。また、耕耘爪1と取付部2の固定位置を定めるため、及び使用により耕耘爪1が取付部2から抜けることを確実に防止するために、耕耘爪貫通孔12と固定器具3の固定器具凸部33が嵌合する。
【0042】
また、同様に固定器具3を回転させるに従って、張出上面部35が、取付部2の内面と接触し取付部2を押圧する。
【0043】
耕耘爪1、取付部2、固定器具3に使用される少なくとも1つ以上の部材の素材は、特に限定されないが、強度・耐久性・靭性から金属であることが好ましく、鋼であることがさらに好ましく、ばね鋼材であることがもっとも好ましい。
【実施例2】
【0044】
図5は、本発明の実施例2の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図である。
【0045】
耕耘爪1は、耕耘回転軸に設けた複数の取付部2に一端部を本発明の固定構造によって各々固定され、他端部が取付部2の外側に突出して、放射状となる。また、その一端部に固定器具3の張出部32と緩やかに嵌合するように段差を設けて凹設された耕耘爪凹設部11を有し、耕耘爪凹設部11と耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面とに段差を有する。さらに耕耘爪1は、固定器具3の固定器具凸部33と嵌合する耕耘爪貫通孔12を有している。また、その他端部が直線又は湾曲などの形状を有するため、田畑を耕すことや、雑草を取り去ることができる。
【0046】
取付部2は、耕耘回転軸との一体成型や、耕耘回転軸との溶接などにより、耕耘回転軸の外側に突出して放射状に複数設けられる。また、その側面に取付部貫通孔21と、同形状の反対面の取付部貫通孔21´を有し、耕耘爪1の嵌挿方向に耕耘爪1の端部面16より十分に大きい嵌挿孔22を有する。
また、固定器具3の回転を容易にするために、嵌挿孔22に取付部貫通孔21及び反対面の取付部貫通孔21´方向へ対照な膨らみが形設される。
【0047】
固定器具3は、前記取付部2と耕耘爪1とを固定するために基部31と張出部32から構成されている器具である。また、張出部32は、耕耘爪1に凹設された耕耘爪凹設部11と緩やかに嵌合する略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状を有しており、その張出部32の下面に、耕耘爪貫通孔12と嵌合する固定器具凸部33を有する。また、張出部32の下面には、耕耘爪1と回転しながら接触する張出下面傾斜部34を有する。また、張出部32に水平方向に外側より線状に切り込まれたスリット部39を有する。
【0048】
取付部嵌挿孔22に耕耘爪1の一端部は遊嵌する。略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状の取付部貫通孔21と同形状の反対面の取付部貫通孔21と、耕耘爪1の一端部に設けられた略楕円形の短軸方向に対照な膨らみを有する形状の耕耘爪凸部13とが嵌合し、取付部2と耕耘爪1とを固定することができる。
【0049】
取付部2と耕耘爪1とを嵌挿した後に、固定器具3を、取付部貫通孔21に通し、耕耘爪1と、耕耘爪1の一端部に凹設された耕耘爪凹設部11及び耕耘爪貫通孔12に嵌合することにより耕耘爪1の挿嵌方向では固定されるが、前記挿嵌方向と垂直方向には互いに容易に動くことができる第一状態を形成することができる。
【0050】
そして、固定器具の基部31に嵌合する器具を挿し込み、時計回り又は反時計回りに90度の角度で固定器具3を回転させることにより、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない第二状態を形成することができる。この場合、基部31と嵌合する器具として、汎用な工具であるソケットレンチ用ソケット(JIS B 4636)等を使用することができるが、固定器具3を回転させることができれば汎用な工具に限られない。
【0051】
図6の(a)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と固定器具3とは緩く嵌合しているので、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる。
【0052】
図6の(b)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない。
【0053】
固定器具3を回転させるに従って、張出部32の下面に設けられた張出下面傾斜部34が、耕耘爪1に段差をつけて凹設された耕耘爪凹設部11と耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面との段差を乗り上げることにより、張出部32の下面が耕耘爪1の耕耘爪凹設部11の形成面を押圧する(図6(b))。また、耕耘爪1と取付部2の固定位置を定めるため、及び使用により耕耘爪1が取付部2から抜けることを確実に防止するために、耕耘爪貫通孔12と固定器具3の固定器具凸部33が嵌合する。
【0054】
また、同様に固定器具3を回転させるに従って、張出上面部35が、取付部2の内面と接触し取付部2を押圧する。なお、スリット部39を設けているため、取付部2の内面と接触する張出部32が弾性変形し、固定器具3を回転させやすくなる。
【実施例3】
【0055】
図7は、本発明の実施3の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具等を示す模式図である。
【0056】
ここで、固定器具3とは、前記取付部2と耕耘爪1とを固定するための基部31と張出部32から構成されている器具である。また、耕耘爪1と緩やかに嵌合及び押圧するため張出部32の下面に固定器具凸部33を有する。
【0057】
取付部貫通孔21に、固定器具3の基部31は遊嵌するが、張出部32は貫通しない構造を有している。その基部31を取付部貫通孔21から露出するよう遊嵌することができる。取付部貫通孔21より露出したC形止め輪溝37にC形止め輪4を嵌合し、取付部2と固定器具3とを遊嵌することができる。
【0058】
そして、嵌挿孔22は、耕耘爪1の端部面16より十分大きいため、耕耘爪1の一端部を嵌挿孔22に容易に挿入することができる。少なくとも2つの傾斜面14と固定器具凸部33とが緩く嵌合するため、スライドさせながら容易に耕耘爪1の一端部を嵌挿孔22に挿入することができる。このように、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる第一状態を形成することができる。
【0059】
ここでC形止め輪とは、その両末端が穿設されている止め輪(JIS B 2804)であって、固定器具3に巻装させ、取付部2と固定器具3を遊嵌する器具である。
【0060】
そして、固定器具貫通孔36に嵌合する部分を有する器具を挿し込み、時計回り又は反時計回りに90度の角度で固定器具3を回転させることにより、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない第二状態を形成することができる。この場合、嵌合する部分を有する器具として、汎用な工具であるソケットレンチ用ラチェットハンドル(JIS B 4641)、ソケットレンチ用スピンナハンドル(JIS B 4638)等を使用することができるが、固定器具3を回転させることができれば汎用な工具に限られない。
【0061】
そして、前記嵌合する部分を有する器具の一端部が、固定器具貫通孔36を貫通し、耕耘爪貫通孔12に挿入されることにより、固定器具3を耕耘爪1の一端部の所定の位置で固定しながら、固定器具を回転することができる。
【0062】
図8は、図7に記載の各部を前述した方法により組み合わせた図であり、第一状態を示す模式図である。
【0063】
図9の(a)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と固定器具3とは緩く嵌合しているので、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる。
【0064】
図9の(b)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない。
【0065】
固定器具3を回転させるに従って、固定器具凸部33が緩く嵌合していた少なくとも2つの傾斜面14を擦り上がり、固定器具凸部33が耕耘爪1を押圧する。また、使用により耕耘爪1が抜けることを確実に防止するため耕耘爪の抜け止め15が設けられる。
【0066】
また、固定器具3の回転で固定器具凸部33が少なくとも2つの傾斜面14を擦り上がることにより、張出上面部35が取付部2の内面を押圧する。張出上面部35は、取付部2の内面としっかり押圧させるため接触面積が広いことが好ましく、接触面が周方向に連続していることがより好ましい。
【0067】
図10は、固定器具3の下面側からの図である。固定器具凸部33が、第一状態では耕耘爪1に設けられた少なくとも2つの傾斜面14と緩く嵌合し、第二状態では、耕耘爪1を押圧する。
【実施例4】
【0068】
図11は、本発明の実施例4の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具等を示す模式図である。
【0069】
取付部貫通孔21に、固定器具3の基部31は遊嵌するが、張出部32は貫通しない構造を有している。その基部31を取付部貫通孔21から露出するよう遊嵌することができる。取付部貫通孔21より露出したC形止め輪溝37にC形止め輪4を嵌合し、取付部2と固定器具3とを遊嵌することができる。
【0070】
そして、嵌挿孔22は、耕耘爪1の端部面16より十分大きいため、耕耘爪1の一端部を嵌挿孔22に容易に挿入することができる。線状スライド溝17と固定器具凸部33とが緩く嵌合するため、スライドさせながら容易に耕耘爪1の一端部を嵌挿孔22に挿入することができる。このように、耕耘爪1の一端部と取付部2と固器具3とは、互いに容易に動くことができる第一状態を形成することができる。
【0071】
そして、固定器具貫通孔36に嵌合する部分を有する器具を挿し込み、時計回り又は反時計回りに90度の角度で回転させることにより、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない第二状態を形成することができる。
【0072】
固定器具3を回転させると固定器具凸部33が線状スライド溝17を擦り上がり、固定器具凸部33が耕耘爪1を押圧する。また、使用により耕耘爪1が抜けることを確実に防止するため耕耘爪の抜け止め15が設けられる。
【0073】
また、固定器具3の回転で固定器具凸部33が線状スライド溝17を擦り上がることにより、張出上面部35が取付部2の内面を押圧する。
【0074】
図12は、図11に記載の各部を前述した方法により組み合わせた図であり、第一状態を示す模式図である。
【0075】
図13の(a)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と固定器具3とは緩く嵌合しているので、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる。
【0076】
図13の(b)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない。
【実施例5】
【0077】
図14は、本発明の実施例5の形態に係る取付部と、耕耘爪と、固定器具を示す模式図である。
【0078】
取付部貫通孔21に、固定器具3の基部31は遊嵌するが、張出部32は貫通しない構造を有している。その基部31を取付部貫通孔21から露出するよう遊嵌することができる。そして、嵌挿孔22は、耕耘爪1の端部面16より十分大きいため、耕耘爪1の一端部を嵌挿孔22に容易に挿入することができる。このように、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる第一状態を形成することができる。
【0079】
そして、固定器具貫通孔36に嵌合する部分を有する器具を挿し込み、時計回り又は反時計回りに90度の角度で回転させることにより、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない第二状態を形成することができる。
【0080】
固定器具3を回転させると固定器具凸部33が環状スライド溝19を擦り下がり、固定器具凸部33が耕耘爪凹部18に嵌合し、耕耘爪1を押圧する。
【0081】
また、固定器具3の回転で固定器具凸部33が環状スライド溝19を擦り下がることにより、張出上面部35に設けられた張出上面傾斜部38が同程度の傾斜角を設けられた取付部2の内面を押圧する。
【0082】
図15は、図14に記載の各部を前述した方法により組み合わせた図であり、第一状態を示す模式図である。
【0083】
図16の(a)は、耕耘爪1の端部面16側から見た場合の第一状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と固定器具3とは緩く嵌合しているので、耕耘爪1の一端部と取付部2と固定器具3とは、互いに容易に動くことができる。
【0084】
図16の(b)は、耕耘爪の端部面16側から見た場合の第二状態の側面図である。この状態では、耕耘爪1と取付部2と固定器具3は、互いに容易に動くことができない。
【符号の説明】
【0085】
1・・・・・・・・・・耕耘爪
11・・・・・・・・・耕耘爪凹設部
12・・・・・・・・・耕耘爪貫通孔
13・・・・・・・・・耕耘爪凸部
14・・・・・・・・・傾斜面
15・・・・・・・・・耕耘爪の抜け止め
16・・・・・・・・・端部面
17・・・・・・・・・線状スライド溝
18・・・・・・・・・耕耘爪凹部
19・・・・・・・・・環状スライド溝
2・・・・・・・・・・取付部
21・・・・・・・・・取付部貫通孔
21´・・・・・・・・反対面の取付部貫通孔
22・・・・・・・・・嵌挿孔
3・・・・・・・・・・固定器具
31・・・・・・・・・基部
32・・・・・・・・・張出部
33・・・・・・・・・固定器具凸部
34・・・・・・・・・張出下面傾斜部
35・・・・・・・・・張出上面部
36・・・・・・・・・固定器具貫通孔
37・・・・・・・・・C形止め輪溝
38・・・・・・・・・張出上面傾斜部
39・・・・・・・・・スリット部
4・・・・・・・・・・C形止め輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘回転軸に設けた取付部に田畑を耕すための耕耘爪の一端部を固定する耕耘爪固定構造であって、
前記取付部と、前記耕耘爪と、前記取付部と前記耕耘爪との固定器具とを具備し、
前記取付部及び前記耕耘爪のうちいずれか一方が前記取付部及び前記耕耘爪のうちの他方に遊嵌し、前記取付部と前記耕耘爪の間に挟まれた前記固定器具を180度未満の角度で回転させ、前記固定器具の一部と前記取付部を押圧し、且つ前記固定器具の他の部分と前記耕耘爪を押圧することにより、前記取付部と前記耕耘爪を固定することを特徴とする耕耘爪固定構造。
【請求項2】
前記取付部が、その側面に前記固定器具の一部を露出することができる少なくとも一つ以上の貫通孔を具備することを特徴とする請求項1に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項3】
前記耕耘爪が、その一端部に前記固定器具と互いに緩やかに嵌合する形状を具備することを特徴とする請求項1又は2に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項4】
前記固定器具が、前記取付部の貫通孔より露出する基部と、前記耕耘爪と互いに緩やかに嵌合する形状を有する張出部とを具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
【請求項5】
前記固定器具の張出部が前記耕耘爪に段差をつけて凹設された耕耘爪凹設部に緩やかに嵌合し、その張出部が耕耘爪凹設部の段差を乗り上げることで、その張出部の上面が前記取付部の内面に押圧されることを特徴とする請求項3又は4に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項6】
前記固定器具が、回転することにより前記取付部と接触する面が周方向に連続する張出部を具備することを特徴とする請求項4又は5に記載の耕耘爪固定構造。
【請求項7】
前記固定器具は、張出部にスリット部を有し、このスリット部によって前記固定器具の回転に際し張出部が弾性変形することを特徴とする請求項4ないし6のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
【請求項8】
前記取付部と前記耕耘爪とが、前記取付部に穿設された取付部貫通孔と反対側面に設けられた取付部凹部又は取付部貫通孔と、前記耕耘爪に設けられた耕耘爪凸部とを介し、嵌合することを特徴とする請求項2、3又は5のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。
【請求項9】
前記耕耘爪と前記固定器具とが、前記耕耘爪に設けられた耕耘爪凹設部又は耕耘爪貫通孔と、前記固定器具の張出部に設けられた固定器具凸部とを介し、嵌合することを特徴とする請求項3ないし8のいずれかに記載の耕耘爪固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−75(P2012−75A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−140021(P2010−140021)
【出願日】平成22年6月19日(2010.6.19)
【出願人】(000204239)株式会社 太陽 (21)
【Fターム(参考)】