説明

耳用温熱具

【課題】 発熱量が少なくても身体が暖かくなったと感じることができ、しかも、取り扱いおよび持ち運びを容易とする。
【解決手段】 耳介の凹み部12に装着されるイヤホン型のケース11内に温熱体29を収納するとともに、前記温熱体29からの熱をケース11を通じて耳介の凹み部12の表面に直接伝達するようにしたので、熱に敏感な耳介の凹み部12が直接温められ、しかも、耳用温熱具48のケース11は耳介の凹み部12に装着される程度の大きさであるため、耳用温熱具48全体を小型とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耳介の凹み部に装着することができる耳用温熱具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の耳用温熱具としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【特許文献1】実用新案登録第3082758号公報
【0003】
このものは、耳と接触する側が開口し、溝孔が形成されたしきりを設けることで内部が二つの空間に分けられている内カバーと、接触した耳により前記開口部が閉止するとともに、内カバーを外側より覆うカバーと、前記二つの空間のうちの耳と接触する側の空間からなり、カバーと耳とが接触することにより密閉された空間となる耳あて部と、もう一方の空間に収納され、外接式の電源供給箱から通電されることによって発熱する加熱部を有するクリップ式板と、電源供給箱が設けられ、長手方向両端部が前記クリップ式板と噛み合うクリップ式耳のせ部品とを備えたものである。
【0004】
そして、このものは、カバーと耳とが接触したとき、しきりと耳との間に空間である耳あて部を形成することで加熱部が直接耳に接触しないようにするとともに、加熱部からの熱をしきりに形成された溝孔を通して密閉された空間である耳あて部内に伝えることで、即ち、加熱部で発生させた熱を耳あて部内の空気を介して耳の表面に伝播させることで、耳全体を暖めるようにしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の耳用温熱具にあっては、加熱部で発生させた熱で耳あて部内の空気を暖め、この暖まった空気の対流によって耳全体を暖めるようにしているため、温度に極めて敏感な耳介の凹み部に伝達される熱量は少なく、この結果、加熱部において多量の発熱を行ってもあまり暖かく感じないという課題があった。しかも、従来の耳用温熱具は、頭部または首部の外側をほぼ半周に亘って延びる弧状をしたクリップ式耳のせ部品と、この耳のせ部品の両端にそれぞれ、両耳に対応して固定された前記クリップ式板、加熱部、内カバー、カバー等から構成されているため、該耳用温熱具全体が大型化してしまい、これにより、携帯が不便になってしまうという課題があった。
【0006】
この発明は、小型でありながら、身体を効果的に暖かく感じさせることができる耳用温熱具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、空気に接触することによって発熱する発熱組成物、および、該発熱組成物を収納した通気性を有する包袋からなる温熱体と、内部に温熱体を収納する収納空間が形成されるとともに、該収納空間に外気を導く通気孔が設けられ、耳介の凹み部に装着されるケースとを備え、前記温熱体からの熱をケースを通じて耳介の凹み部の表面に直接伝達するようにした耳用温熱具により、達成することができる。
【発明の効果】
【0008】
この発明においては、耳介の凹み部に装着されるケース内に温熱体を収納するとともに、前記温熱体からの熱をケースを通じて耳介の凹み部の表面(皮膚)に直接、即ち伝導により伝達するようにしたので、温度に極めて敏感である耳介の凹み部に温熱体からの熱が多量に伝達され、これにより、温熱体からの発熱量が少なくても身体が暖かくなったと感じることができる。しかも、耳用温熱具のケースは耳介の凹み部に装着される程度の大きさであるため、耳用温熱具全体を小型とすることができ、この結果、取り扱いおよび持ち運びが容易となる。
【0009】
また、ケースを耳介の凹み部に装着すると、該ケースが外耳道の開口部を塞いでしまって音声が大幅に遮断されるおそれがあるが、請求項2に記載のように構成すれば、ケースを耳介の凹み部に装着しても、周囲の音声を音圧を殆ど低下させることなく確実に聴取することができる。
さらに、請求項3に記載のように構成すれば、温熱体の交換作業を容易にすることができるとともに、ケースの繰り返し使用が可能となり、また、請求項4に記載のように構成すれば、温度に極めて敏感である外耳道の表面(皮膚)にも凸部を通じて温熱体からの熱を直接伝導によって伝達することができ、身体がさらに暖かくなったと感じることができる。
【実施例1】
【0010】
以下、この発明の実施例1を図面に基づいて説明する。
図1、2、3において、11は耳珠および対珠に引っ掛かることで、人の耳介の凹み部(耳甲介腔)12に装着されるイヤホン型をしたケースであり、このケース11は熱可塑性樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエチレン等からなり、射出成型法等により一体成型で形成されている。前記ケース11は凸部14を有する厚肉で略円盤状の本体部15と、薄肉円盤状のカバー部16と、これら本体部15とカバー部16との外周縁部同士を周上1箇所で連結する屈曲容易なヒンジ片17とから構成され、前記ヒンジ片17の折れ曲がりによりカバー部16が揺動することで、ケース11は開閉する。
【0011】
なお、前記ヒンジ片17は熱可塑性樹脂から構成されているため、繰返し曲げに対して強く、ケース11の繰り返しの開閉によっても殆ど破損することはない。そして、前記ケース11は耳介の凹み部12に装着されることで、外耳道13の入り口を塞ぎ、外耳道13側に周囲の空間から遮蔽された遮蔽空間を形成するが、このとき、前記凸部14は、本体部15の一側面から一側に向かってケース11の軸線に略平行に延びているため、外耳道13に挿入される。なお、ケース11を耳介の凹み部12に装着するとき、凸部14を外耳道13に挿入し易くするため、該凸部14の形成位置をケース11の中心線(本体部15、カバー部16の軸線)から若干半径方向外側にずらしている。
【0012】
20は前記本体部15に形成された中空孔であり、この中空孔20は、一端が凸部14の先端で開口するとともに、他端が本体部15の他側面に開口することで、該本体部15を軸方向に貫通している。21は銅、アルミニウム等の熱伝導率が高い金属からなる略円筒状の伝熱材であり、この伝熱材21は本体部15の内部に設けられ、前記中空孔20に外周が密着しながら軸方向に延びている。
【0013】
そして、この伝熱材21の軸方向長さを中空孔20の軸方向長さより若干短くするとともに、伝熱材21の軸方向一側端を中空孔20の軸方向一側端(凸部14の先端)より軸方向他側に位置させることで、伝熱材21の軸方向一側端を凸部14の先端部で覆うようにしている。ここで、伝熱材21の軸方向一側端を凸部14の先端部で覆うようにしたのは、伝熱材21が凸部14の先端まで延びていると、ケース11を耳介の凹み部12に装着(凸部14を外耳道13に挿入)したとき、熱伝導率の高い金属である伝熱材21が外耳道13に直接接触することで、外耳道13に低温火傷を負わせてしまうおそれがあるとともに、傷を付けてしまうおそれもあるからである
【0014】
25は略三日月状をした弧状凹部であり、この弧状凹部25は本体部15の他側面に形成されている。そして、ケース11が閉止されたとき、即ち本体部15の他側面とカバー部16の一側面とが当接したとき、前記カバー部16は、前記弧状凹部25の他端開口を閉止することで、本体部15との間に収納空間26を形成する。27は通気性を有する、例えば不織布から構成された包袋であり、この包袋27内には空気に接触することによって発熱する発熱組成物28が収納されている。
【0015】
ここで、前記発熱組成物28としては例えば、鉄粉等の金属粉、活性炭、水、保水剤、食塩等からなるものを使用することができる。前述した包袋27と発熱組成物28とは全体として、温熱体29を構成し、この温熱体29は包袋27を通過した外気(空気)が発熱組成物28に接触することで熱を発生する。なお、前述した通気性を有する包帯として、合成樹脂からなるフィルムあるいは柔軟性を有する熱可塑性シート等を用いることもできる。
【0016】
33は前記ケース11と同一材料からなり収納空間26と同一形状である交換ケースであり、この交換ケース33は、該収納空間26に出入可能に嵌合されているとともに、少なくとも一部、ここでは凹側側面が伝熱材21の外周に当接している。また、この交換ケース33には、前記温熱体29が空隙なく収納されるとともに、温熱体29(発熱組成物28)に外気を導く複数の通気孔34が形成されている。
【0017】
32は前記交換ケース33の通気孔34を塞ぐように貼り付けられた剥離可能な封止シールであり、この封止シール32は前記通気孔34を通じて外気が温熱体29に導かれることを防止、即ち温熱体29を外気から遮断している。このように、封止シール32によって温熱体29を外気から遮断すれば、交換ケース33の内部に収納された温熱体29を未使用状態で長期保存することができる。
【0018】
そして、前述した封止シール32を剥離すると、外気が通気孔34を通じて温熱体29に導かれるため、該温熱体29は発熱するが、このとき耳介の凹み部12にケース11を装着すると、該温熱体29からの熱は交換ケース33、ケース11を介して耳介の凹み部12の表面に直接伝達される。このとき、前述のように温熱体29が収納された交換ケース33が伝熱材21に当接していると、温熱体29(発熱組成物28)で発生した熱は伝熱材21を通じて凸部14に効率的に直接伝達される。
【0019】
また、ケース11の収納空間26に交換ケース33(温熱体29)を出入可能に収納しているので、カバー部16を揺動してケース11を開放したとき、収納空間26内の交換ケース33(温熱体29)を交換することができる。このように交換ケース33に温熱体29を収納してカセット式とすれば、温熱体29の交換作業を容易にすることができるとともに、ケース11の繰り返し使用が可能となる。なお、前述のように伝熱材21の一部を交換ケース33と直接当接、即ち弧状凹部25に伝熱材21の一部を露出させず、弧状凹部25に対向する部位の伝熱材21を本体部15を構成する薄肉の熱可塑性樹脂によって覆うようにしてもよい。
【0020】
35は前記ヒンジ片17から周方向に 180度離れた本体部15の他側部外周に形成された窪み部であり、この窪み部35の底面には溝36が形成されている。40はヒンジ片17から 180度離れたカバー部16の一側面から一側に向かって延びる係止片であり、この係止片40には、ケース11が閉止されたとき、前記溝36に挿入されることで該溝36に係止される突起41が形成されている。そして、この係止片40の先端と前記窪み部35の軸方向一側端との間には、係止片40を窪み部35から抜き出すための間隙37が形成されている。
【0021】
42はカバー部16(ケース11)に形成され、該カバー部16の一側面と他側面とを連通する複数の通気孔であり、該通気孔42は、ケース11が閉止されたとき、前記収納空間26に外気を導くことができる。そして、この通気孔42の一側端が少なくとも前記通気孔34の他側端の一部と重なり合うことで、通気孔34、42同士は連通され、これにより、外気は前記温熱体29(発熱組成物28)に導かれることになる。
【0022】
43はカバー部16に形成され、該カバー部16の一側面と他側面とを連通する貫通した中空孔であり、この中空孔43は、ケース11が閉止されたとき、その一側端が前記中空孔20の他側端と重なり合うことで、中空孔20、43同士は連通される。前述した中空孔20、43は全体として、ケース11が耳介の凹み部12に装着されたとき、外耳道13側に形成された遮蔽空間と周囲の空間とを連通させる貫通した通音孔44を構成する。
【0023】
ここで、ケース11を前述のように耳介の凹み部12に装着すると、該ケース11が外耳道13の開口部を塞いでしまって音声が大幅に遮断されるおそれがあるが、前述のようにケース11に通音孔44を設ければ、ケース11を耳介の凹み部12に装着しても、周囲の音声を音圧を殆ど低下させることなく確実に聴取することができる。45は本体部15の一側面に固着された保護部材としてのシリコンゴムであり、このシリコンゴム45は、ケース11を耳介の凹み部12に装着したとき、その粘着力によりケース11と凹み部12との接触面積を増大させるとともに、該ケース11のずれ、脱落を防止する。
【0024】
前述したケース11、伝熱材21、温熱体29、交換ケース33およびシリコンゴム45は全体として、耳介の凹み部12に装着されたとき、温熱体29からの熱をケース11を通じて耳介の凹み部12の表面(皮膚)に直接伝達する、即ち耳介の凹み部12を直接温める耳用温熱具48を構成する。
【0025】
次に、前記実施例1の作用について説明する。
この耳用温熱具48を使用する場合には、まず、ケース11を開放するとともに、温熱体29が収納されている交換ケース33に貼り付けられた封止シール32を剥離する。これにより、外気が通気孔34を通過して温熱体29(発熱組成物28)に導かれ、該温熱体29が発熱を開始、即ち発熱組成物28が外気(空気)に接触することによって発熱を開始する。次に、ケース11(本体部15)の弧状凹部25に交換ケース33を嵌合した後、ケース11を閉止するが、このようなケース11の閉止によって突起41が溝36に係止され、その後、ケース11は閉止状態を保持する。
【0026】
このとき、ケース11の通気孔42と交換ケース33の通気孔34とが重なり合うので、ケース11内の温熱体29には通気孔34、42を通じて外気が導かれ続けることとなり、温熱体29の発熱は維持される。このようして温熱体29が発生し続ける熱は交換ケース33を介してケース11全体に伝導されるが、凸部14は温熱体29(収納空間26)から離隔した位置に形成されているため、該凸部14に伝達される熱量は小さいと考えられる。しかしながら、前述のように交換ケース33に当接している伝熱材21が凸部14の先端付近まで延びているため、温熱体29からの熱は効率的に凸部14に伝達される。
【0027】
次に、このような温熱体29からの熱により暖められたケース11(耳用温熱具48)を耳介の凹み部12に装着するとともに、凸部14を外耳道13内に挿入するが、このとき、温熱体29からの熱はケース11を通じて耳介の凹み部12の表面(皮膚)に直接、即ち伝導により伝達されるので、温度に極めて敏感である耳介の凹み部12には温熱体29からの熱が多量に伝達され、これにより、温熱体29からの発熱量が少なくても身体が暖かくなったと感じることができる。これは、耳介の凹み部12が脳に極めて近いため、該凹み部12が暖められることで、身体全体が暖くなったと脳が認識するためであると考えられる。
【0028】
しかも、耳用温熱具48のケース11は耳介の凹み部12に装着される程度の大きさであるため、耳用温熱具48全体を小型とすることができ、この結果、取り扱いおよび持ち運びが容易となる。また、前述のように温熱体29からの熱を凸部14に伝える伝熱材21を設けたので、温度に極めて敏感である外耳道13の表面(皮膚)にも凸部14を通じて温熱体29からの熱が直接伝導によって伝達される、即ち凸部14により外耳道13を直接温めることができ、身体がさらに暖かくなったと感じることができる。
【0029】
なお、前述した温熱体29の発熱時間、温度は、例えば、通気孔34、42の孔径、数あるいは包袋27の空気通気度等を変更することで、適宜コントロールすることができる。そして、前述のような構成の温熱体29は、一定時間熱を発生させ続けると発熱しなくなって温暖効果が消失するが、この場合にはケース11を開放した後、封止シール32を剥離した新しい温熱体29(交換ケース33)と交換することで、再び、使用することができる。
【0030】
なお、前述の実施例においては、本体部15に形成された弧状凹部25をカバー部16で覆うことにより収納空間26を形成したが、この実施例においては、カバー部に弧状凹部を形成、または、本体部およびカバー部の双方に弧状凹部を形成することで、本体部とカバー部との間に収納空間を形成してもよい。また、前述の実施例においては、凸部14の形成位置をケース11の中心線から若干ずらしたが、この実施例においては、凸部の形成位置をケースの中心線上とし、弧状凹部をリング状凹部としてもよい。さらに、前述の実施例では、本体部15とカバー部16とを一体成型としたが、この実施例では、本体部とカバー部とを別体で成型してもよい。
【0031】
また、前述の実施例では、温熱体29が収納された交換ケース33を収納空間26に収納したが、この実施例においては、交換ケースを使用せず、収納空間に温熱体を直接収納してもよい。さらに、この実施例においては、本体部とカバー部との間に通気性を有するシート等を介在させ、貫通した通音孔44を通じて外耳道13に埃が入る事態を防止するようにしてもよく、また、交換ケースと温熱体との間に通気性を有するシート等を介在させ、発熱組成物が交換ケースの外にこぼれ落ちないようにしてもよい。さらに、この実施例においては、ケースの外表面に抗菌加工を施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
この発明は、内部に温熱体を収納した耳用温熱具の産業分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】この発明の実施例1を示す断面図である。
【図2】その斜視図である。
【図3】交換ケースの一部破断斜視図である。
【符号の説明】
【0034】
11…ケース 12…耳介の凹み部
13…外耳道 14…凸部
15…本体部 16…カバー部
21…伝熱材 26…収納空間
27…包袋 28…発熱組成物
29…温熱体 42…通気孔
44…通音孔 48…耳用温熱具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気に接触することによって発熱する発熱組成物、および、該発熱組成物を収納した通気性を有する包袋からなる温熱体と、内部に温熱体を収納する収納空間が形成されるとともに、該収納空間に外気を導く通気孔が設けられ、耳介の凹み部に装着されるケースとを備え、前記温熱体からの熱をケースを通じて耳介の凹み部の表面に直接伝達するようにしたことを特徴とする耳用温熱具。
【請求項2】
前記ケースには、該ケースを耳介の凹み部に装着することで外耳道側に形成される遮蔽空間と周囲の空間とを連通させる貫通した通音孔が設けられている請求項1記載の耳用温熱具。
【請求項3】
前記ケースを、本体部と、通気孔が設けられるとともに、閉止されたとき本体部との間に収納空間を形成するカバー部とから構成し、カバー部を開放したとき収納空間内の温熱体を交換可能とした請求項1または2記載の耳用温熱具。
【請求項4】
前記本体部は外耳道に挿入される凸部を有し、また、該本体部内部に温熱体からの熱を凸部に伝える伝熱材を設けた請求項3記載の耳用温熱具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate