説明

聴診棒

【課題】複数の金属管を素早く伸長でき、聴診部位を照射できる聴診棒を提供する。
【解決手段】聴診棒10は、金属管11〜13を相互に連結した伸縮ロッド1とペン型の照明装置2を備える。伸縮ロッド1は、金属管11〜13が延びる方向に力を付勢する圧縮コイルばね11s・12sと、金属管11〜13を相互に係止するストッパ部材12c・13cを有する。ストッパ部材12c・13cに設けた抜け止め片12n・13nを押圧操作すると、金属管11〜13を収縮状態から伸長状態に素早く変化できる。又、聴診棒10は、先頭の金属管13に照明装置2を同軸上に設けているので、別途、照明装置を持参することなく、聴診部位又はその周囲を照明できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴診棒に関する。特に、聴診棒への直接伝導による固体(設備や機械)の振動を測定する聴診棒の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、火力発電所又は原子力発電所などの施設では、ポンプ、モータなどの流体機器又は回転機器が設置されて稼動している。そして、このような設備又は機器が安全に稼動することを確認するために、これらの施設では、定期的に巡回点検を実施している。
【0003】
上記のような定期的な巡回点検では、聴診棒と呼ばれる道具を用いて、設備又は機器から発生する振動音を聴診し、異音の有無などを診断している。一般的に、聴診棒は、金属の細棒で構成されている。そして、聴診棒の先端部を設備や機械の被測定部位に接触し、聴診棒の基端部を測定者の耳にあてて、聴診棒への直接伝導により振動を測定している。
【0004】
上記のような聴診棒としては、測定部位との密着性を高めるため、その先端部が面取りされ、かつ先端部の端面が粗面加工された聴診棒、又はその先端部が粗面体で形成された聴診棒が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
又、上記のような聴診棒としては、現場での携帯に便利なように、同心状に嵌合した複数の金属管により伸縮性を有し、先頭の金属管の先端に接触金具を固定すると共に、末端の金属管の基端部に耳当て具を取り付け、かつ接触金具に着脱自在な安全キャップを被せる構成とした聴診棒が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−038735号公報
【特許文献2】実開昭58−060242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
聴診棒は、いわゆる通常タイプと伸縮タイプの二種類が市販されている。一般に、通常タイプの聴診棒は、特許文献1にも開示されているように、長尺の円柱状金属棒で構成している。一方、伸縮タイプの聴診棒は、特許文献2にも開示されているように、同心状に嵌合が可能な複数の金属管で構成している。
【0008】
通常タイプの聴診棒は、構成が簡易であるが、長尺の通常タイプの聴診棒は、持ち運びに不便であることから、巡回点検などでは、伸縮タイプの聴診棒が好まれている。一方、伸縮タイプの聴診棒は、携帯には便利であるが、複数の金属管を伸長させることが面倒であるという、問題がある。複数の金属管を素早く伸長できる、使いやすい伸縮タイプの聴診棒が求められている。
【0009】
又、上述した巡回点検では、聴診棒を携帯する他に、聴診部位又はその周囲を明るく照らすために、懐中電灯などのライトを携帯しているが、聴診棒とライトの双方を持ち運ぶことは不便であるという問題がある。又、聴診棒とライトの双方を把持して、聴診することは不便であるという問題がある。聴診機能を損なうことなく、聴診部位に光を照射可能な聴診棒が実現できれば便利である。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、複数の金属管を素早く伸長できると共に、聴診機能を損なうことなく、聴診部位を照射可能な使いやすい伸縮タイプの聴診棒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、複数の金属管を伸縮自在に連設した伸縮タイプの聴診棒において、少なくとも末端の金属管に設けたストッパ部材を操作すると、末端の金属管に対して先頭の金属管が突出して、これらの金属管が伸長状態を維持すると共に、先頭の金属管にペン型の照明装置を同軸上に設けて、この照明装置が聴診部位又はその周囲を照明することにより、これらの課題が解決可能であると考え、これに基づいて、以下のような新たな伸縮タイプの聴診棒を発明するに至った。
【0012】
(1)本発明による聴診棒は、複数の金属管を軸方向に連設すると共に、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を引き出し自在に相互に連結した伸縮ロッドと、複数の前記金属管と同軸状に配置されるように、先頭の前記金属管に固定されたペン型の照明装置と、を備え、前記伸縮ロッドは、相互に連結する末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の間に配置され、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を延びる方向に力を付勢する付勢手段と、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管の一部又は略全てを収容するように、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を係止する、前記付勢手段と同数のストッパ部材と、を有し、前記照明装置は、光を出射できると共に、聴診部位に当接可能な聴診端子を先端部に有し、末端の前記金属管は、前記聴診端子の振動が伝導される耳当て部を基端部に有し、前記ストッパ部材は、先頭側の前記金属管から末端側の前記金属管に向けて外周方向に突出する、弾性変形可能な抜け止め片を有し、前記金属管は、前記抜け止め片が係止して、末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の収縮状態を維持する、末端側に位置する第1係止開口と、前記抜け止め片が係止して、末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の伸長状態を維持する、先頭側に位置する第2係止開口と、を有する。
【0013】
(2)前記ストッパ部材は、先頭側の前記金属管から末端側の前記金属管に向けて外周方向に突出すると共に、末端側の前記金属管の端縁に当接する、弾性変形可能な戻り止め片を更に有することが好ましい。
【0014】
(3)先頭側の前記金属管は、その軸方向に沿って、外周面から内部に向けて窪んだ一つ以上の凹溝を含み、末端側の前記金属管は、前記凹溝に嵌合するように、内部に向けて突出する回り止め凸部を含んでいることが好ましい。
【0015】
(4)前記照明装置は、前記聴診端子に対向するように配置された発光体と、前記発光体に電力を供給する電池と、を内部に備え、前記聴診端子は、光を透過可能な透明体からなることが好ましい。
【0016】
(5)前記照明装置は、前記発光体と前記電池を電気的に接続すると共に、外部から操作が可能なスイッチを更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明による聴診棒は、少なくとも末端の金属管に設けたストッパ部材を操作すると、末端の金属管に対して先頭の金属管が突出して、これらの金属管が伸長状態を維持するので、操作が容易であり、複数の金属管を素早く伸長できる。
【0018】
又、本発明による聴診棒は、先頭の金属管にペン型の照明装置を同軸上に設けているので、別途、照明装置を持参することなく、聴診部位又はその周囲を照明できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態による聴診棒の構成を示す斜視図であり、図1(A)は、聴診棒が伸長した状態図、図1(B)は、聴診棒が収縮した状態図である。
【図2】前記実施形態による聴診棒に備わる照明装置の構成を示す図であり、図2(A)は、照明装置の縦断面図、図2(B)は、図2(A)の右側面図である。
【図3】前記実施形態による聴診棒に備わる照明装置の斜視分解組立図である。
【図4】前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す図であり、図4(A)は、伸縮ロッドの末端部の縦断面図、図4(B)は、伸縮ロッドの中間部の縦断面図、図4(C)は、伸縮ロッドの先頭部の縦断面図である。
【図5】前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す正面図であり、伸縮ロッドが収縮した状態図である。
【図6】前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す斜視分解組立図であり、末端の金属管と中間の金属管を対向配置した状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
[聴診棒の構成]
最初に、本発明の一実施形態による聴診棒の構成を説明する。図1は、本発明の一実施形態による聴診棒の構成を示す斜視図であり、図1(A)は、聴診棒が伸長した状態図、図1(B)は、聴診棒が収縮した状態図である。
【0021】
図2は、前記実施形態による聴診棒に備わる照明装置の構成を示す図であり、図2(A)は、照明装置の縦断面図、図2(B)は、図2(A)の右側面図である。図3は、前記実施形態による枠組足場に備わる一方の伸縮ロッドを示す正面図であり、図3(A)は、前記実施形態による聴診棒に備わる照明装置の斜視分解組立図である。
【0022】
図4は、前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す図であり、図4(A)は、伸縮ロッドの末端部の縦断面図、図4(B)は、伸縮ロッドの中間部の縦断面図、図4(C)は、伸縮ロッドの先頭部の縦断面図である。
【0023】
図5は、前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す正面図であり、伸縮ロッドが収縮した状態図である。図6は、前記実施形態による聴診棒に備わる伸縮ロッドの構成を示す斜視分解組立図であり、末端の金属管と中間の金属管を対向配置した状態図である。
【0024】
(聴診棒の全体構成)
図1を参照すると、本発明の一実施形態による聴診棒10は、伸縮ロッド1とペン型の照明装置2を備えている。伸縮ロッド1は、末端の金属管11、中間の金属管12、及び先頭の金属管13を軸方向に連設している。伸縮ロッド1は、末端の金属管11に対して、先頭の金属管13に向けて、これらの金属管11・12・13を引き出し自在に相互に連結している。
【0025】
図1又は図2及び図4を参照すると、照明装置2は、先頭の金属管13に着脱自在に固定されている。そして、照明装置2は、複数の金属管11・12・13と同軸状に配置されている。照明装置2は、円錐体状の聴診端子2aを先端部に有している。聴診端子2aは、光を出射できると共に、その先端部を図示しない聴診部位に当接できる。
【0026】
一方、図1又は図4及び図5を参照すると、末端の金属管11は、キャップ11aを基端部に取り付けている。そして、キャップ11aの端面は、聴診端子の振動が伝導される耳当て部を構成している。
【0027】
(照明装置の構成)
次に、照明装置2の構成を説明する。図2又は図3を参照すると、照明装置2は、円筒状のフレーム2f、発光体2r、及び電池2bを備えている。フレーム2fは、照明装置2の外殻を構成している。フレーム2fは、雄ねじ部21fを基端部に形成している。雄ねじ部21fは、先頭の金属管13の先端部に形成した雌ねじ部13gに締結できる。つまり、照明装置2は、先頭の金属管13に着脱できる。又、フレーム2fは、雄ねじ部22fを先端部に形成している。雄ねじ部22fは、キャップ2cの基端部に形成した雌ねじ部21cに締結できる。
【0028】
図2又は図3を参照すると、キャップ2cは、貫通穴21hを中心部に設けている。キャップ2cをフレーム2fの先端部に締結すると、聴診端子2aの先端部側を貫通穴21hに挿通でき、聴診端子2aの先端部側をキャップ2cから突出できる。聴診端子2aは、光を透過可能な透明体からなり、透明なガラス体、又は透明な硬質合成樹脂で形成されることが好ましい。
【0029】
図2又は図3を参照すると、発光体2rは、LEDからなることが好ましく、聴診端子2aに対向するように、フレーム2fの内部に配置されている。電池2bは、発光体2rに電力を供給できる。図示された電池2bは、市販されている筒型のリチウム電池を用いている。
【0030】
図2又は図3を参照すると、照明装置2は、円柱状の絶縁体2dを備えている。絶縁体2dは、フレーム2fの内部に配置されている。図2に示されるように、絶縁体2dは、段付きの取り付け穴を中心部に開口しており、この取り付け穴に電池2bを挿入すると、電池2bを保持できる。又、照明装置2を先頭の金属管13から取り外すと、電池2bを交換できる。
【0031】
図2又は図3を参照すると、発光体2rは、長いリード端子r1と短いリード端子r2を有している。リード端子r1は、絶縁性の袴部材21rを貫通して、絶縁体2dの中心開口に突出している。そして、リード端子r1を電池2bの先端部に突出したピン状のマイナス(−)端子21bに接触している。
【0032】
一方、図2又は図3を参照すると、リード端子r2は、袴部材21rを貫通して、スイッチ2sに電気的に接続している。スイッチ2sは、帯板状の電極2eに電気的に接続している。電極2eは、絶縁体2dに保持されていると共に、絶縁体2dの取り付け穴の内壁に露出している。そして、電極2eは、電池2bの外周に形成されたプラス端子22bに接触できる。つまり、リード端子r2は、スイッチ2sを介して、電池2bのプラス端子22bに電気的に接続できる。
【0033】
図2又は図3を参照すると、照明装置2は、上述したように、発光体2rと電池2bを電気的に接続するスイッチ2sを更に備えている。スイッチ2sは、例えば、超小型のディプスイッチを用いることができる。
【0034】
図3に示されるように、スイッチ2sは、フレーム2fの外周に設けた長穴23fから挿入して、スイッチ2sの接続端子をリード端子r2及び電極2eに実装(はんだ接合)できる。そして、スイッチ2sが実装された後に、長穴23fが絶縁性の接着剤で充填されることが好ましい。
【0035】
図2又は図3を参照すると、スイッチ2sは、外部から操作が可能なスライドボタン21sを有している。スライドボタン21sを一方の方向に移動すると、発光体2rと電池2bを接続でき、発光体2rが点灯して、聴診端子2aから光を出射できる。スライドボタン21sを他方の方向に移動すると、発光体2rと電池2bが電気的に断絶され、発光体2rを消灯できる。
【0036】
(伸縮ロッドの構成)
次に、伸縮ロッド1の構成を説明する。図4を参照すると、伸縮ロッド1は、付勢手段となる圧縮コイルばね11sと圧縮コイルばね12sを備えている。圧縮コイルばね11sは、相互に連結する末端の金属管11と中間の金属管12の間に配置されている。圧縮コイルばね11sは、末端の金属管11に対して、中間の金属管12を延びる方向に力を付勢している。
【0037】
図4を参照すると、実態として、圧縮コイルばね11sは、末端の金属管11の内部に収容されている。又、中間の金属管12の基端部には、栓12pを取り付けている。圧縮コイルばね11sは、その一端部が栓12pに当接し、その他端部がキャップ11aに当接するように配置されている。そして、中間の金属管12を末端の金属管11の内部に向かって移動すると、圧縮コイルばね11sが圧縮されて、末端の金属管11に対して、中間の金属管12を突出させる力を蓄勢できる。
【0038】
又、図4を参照すると、圧縮コイルばね12sは、相互に連結する中間の金属管12と先頭の金属管13の間に配置されている。圧縮コイルばね12sは、中間の金属管12に対して、先頭の金属管13を延びる方向に力を付勢している。
【0039】
図4を参照すると、実態として、圧縮コイルばね12sは、中間の金属管12の内部に収容されている。又、先頭の金属管13の基端部には、栓13pを取り付けている。圧縮コイルばね12sは、その一端部が栓13pに当接し、その他端部が後述するストッパ部材12cに当接するように配置されている。そして、先頭の金属管13を中間の金属管12の内部に向かって移動すると、圧縮コイルばね12sが圧縮されて、中間の金属管12に対して、先頭の金属管13を突出させる力を蓄勢できる。なお、図4では、一部の構成部品を重複して記載している。
【0040】
図4を参照すると、伸縮ロッド1は、ストッパ部材12cとストッパ部材13cを備えている。ストッパ部材12cは、中間の金属管12の基端部側に配置されている。ストッパ部材12cは、末端の金属管11に対して中間の金属管12の一部又は略全てを収容するように、末端の金属管11に対して中間の金属管12を係止できる(図1又は図5参照)。
【0041】
又、図4を参照すると、ストッパ部材13cは、先頭の金属管13の基端部側に配置されている。ストッパ部材13cは、中間の金属管12に対して先頭の金属管13の一部又は略全てを収容するように、中間の金属管12に対して先頭の金属管13を係止できる(図1又は図5参照)。
【0042】
図4を参照すると、ストッパ部材12cは、一方の弾性アーム121と他方の剛性アーム122が結合して、弓形に屈曲した板ばねからなり、中間の金属管12の内部に収容されている。ストッパ部材12cは、一方の弾性アーム121の端部に微小突起12tを有している。微小突起12tは、中間の金属管12の内壁に係止されている。
【0043】
又、図4を参照すると、ストッパ部材12cは、他方の剛性アーム122の端部に抜け止め片12nを有している。抜け止め片12nは、中間の金属管12から末端の金属管11に向けて、外周方向に突出している。
【0044】
図4を参照すると、ストッパ部材12cは、中間の金属管12の内壁に当接した支点部12fを抜け止め片12nの反対側に形成している。抜け止め片12nを押圧すると、一方の弾性アーム121には、支点部12fを支点とする曲げ応力が発生し、抜け止め片12nが弾性復帰する力を蓄勢する。
【0045】
図4を参照すると、末端の金属管11は、末端側に位置する第1係止開口11jと先頭側に位置する第2係止開口11kを開口している。そして、抜け止め片12nが第1係止開口11jに係止すると、末端の金属管11と中間の金属管12の収縮状態を維持することができる。一方、抜け止め片12nが第2係止開口11kに係止すると(図6参照)、末端の金属管11と中間の金属管12の伸長状態を維持することができる。
【0046】
又、図4を参照すると、ストッパ部材13cは、先頭の金属管13の基端部側に配置されている。ストッパ部材13cは、中間の金属管12に対して末端の金属管11の一部又は略全てを収容するように、末端の金属管11に対して中間の金属管12を係止できる(図1又は図5参照)。
【0047】
又、図4を参照すると、ストッパ部材13cは、先頭の金属管13の基端部側に配置されている。ストッパ部材13cは、中間の金属管12に対して先頭の金属管13の一部又は略全てを収容するように、中間の金属管12に対して先頭の金属管13を係止できる(図1又は図5参照)。
【0048】
図4を参照すると、ストッパ部材13cは、一方の弾性アーム131と他方の剛性アーム132が結合して、弓形に屈曲した板ばねからなり、先頭の金属管13の内部に収容されている。ストッパ部材13cは、一方の弾性アーム131の端部に微小突起13tを有している。微小突起13tは、先頭の金属管13の内壁に係止されている。
【0049】
又、図4を参照すると、ストッパ部材13cは、他方の剛性アーム132の端部に抜け止め片13nを有している。抜け止め片13nは、先頭の金属管13から中間の金属管12に向けて、外周方向に突出している。なお、ストッパ部材13cの抜け止め片13nとストッパ部材12cの抜け止め片12nとは、相反する向きに突出している(図5参照)。
【0050】
図4を参照すると、ストッパ部材13cは、先頭の金属管13の内壁に当接した支点部13fを抜け止め片13nの反対側に形成している。抜け止め片13nを押圧すると、一方の弾性アーム131には、支点部13fを支点とする曲げ応力が発生し、抜け止め片13nが弾性復帰する力を蓄勢する。
【0051】
図4を参照すると、中間の金属管12は、末端側に位置する第1係止開口12jと先頭側に位置する第2係止開口12kを開口している。そして、抜け止め片13nが第1係止開口12jに係止すると、中間の金属管12と先頭の金属管13の収縮状態を維持することができる。一方、抜け止め片13nが第2係止開口12kに係止すると、中間の金属管12と先頭の金属管13の伸長状態を維持することができる。
【0052】
図4を参照すると、ストッパ部材12cは、抜け止め片12nに隣接した鉤状の戻り止め片12mを更に有している。戻り止め片12mは、中間の金属管12から末端の金属管11に向けて、外周方向に突出している。そして、戻り止め片12mが中間の金属管12から突出した状態では、戻り止め片12mが末端の金属管11の端縁に当接して、中間の金属管12が末端の金属管11に向けて移動することを困難にしている。
【0053】
図4を参照すると、ストッパ部材13cは、抜け止め片13nに隣接した鉤状の戻り止め片13mを更に有している。戻り止め片13mは、先頭の金属管13から中間の金属管12に向けて、外周方向に突出している。そして、戻り止め片13mが先頭の金属管13から突出した状態では、戻り止め片13mが中間の金属管12の端縁に当接して、先頭の金属管13が中間の金属管12に向けて移動することを困難にしている。
【0054】
図6を参照すると、中間の金属管12は、その軸方向に沿って、外周面から内部に向けて窪んだ一対の凹溝12d・12dを形成している。一方、末端の金属管11は、その軸方向に沿って、内部に向けて突出した一対の回り止め凸部11e・11eを形成している。
【0055】
図6を参照すると、一対の凹溝12d・12dは、スライド自在に一対の回り止め凸部11e・11eと嵌合しているが、末端の金属管11に対して、中間の金属管12は、円周方向に回転することが拘束されている。なお、先頭の金属管13と中間の金属管12とは、上記と同様に構成されており、中間の金属管12に対して、先頭の金属管13は、円周方向に回転することが拘束されている。
【0056】
[聴診棒の作用]
次に、実施形態による聴診棒10の構成を補足しながら、聴診棒10の作用及び効果を説明する。
【0057】
図1(B)又は図5に示すように、実施形態による聴診棒10は、現場での携帯に便利なように、通常、複数の金属管11・12・13が収縮された状態で保持されている。末端の金属管11の外周から突出した抜け止め片12nを押圧操作すると、末端の金属管11と中間の金属管12との係合が解除されて、圧縮コイルばね11sの付勢力により、末端の金属管11に対して中間の金属管12を突出できる(図4参照)。そして、抜け止め片12nの先端部が末端の金属管11の内壁に摺動して、第2係止開口11kに至ると、抜け止め片12nが弾性復帰して、第2係止開口11kに係止する。これにより、末端の金属管11と中間の金属管12の伸長状態を維持できる(図4参照)。
【0058】
次に、図4を参照して、第1係止開口12jに係止した抜け止め片13nを押圧操作すると、中間の金属管12と先頭の金属管13との係合が解除されて、圧縮コイルばね12sの付勢力により、中間の金属管12に対して先頭の金属管13を突出できる。そして、抜け止め片13nの先端部が中間の金属管12の内壁に摺動して、第2係止開口12kに至ると、抜け止め片13nが弾性復帰して、第2係止開口11kに係止する。これにより、先頭の金属管13との伸長状態を維持できる(図1(A)参照)。
【0059】
図1(A)を参照すると、実施形態による聴診棒10は、複数の金属管11・12・13が伸長された状態で保持されているので、測定者から離れた被測定部位を聴診できて便利である。そして、聴診端子2aの先端を聴診部位(図示せず)に当接し、聴診端子2aの振動が伝導されるキャップ11aの端面に耳を当てて、聴診できる。
【0060】
図1(A)を参照すると、聴診端子2aの先端を聴診部位(図示せず)に当接すると、複数の金属管11・12・13には、互いに収縮する力が軸方向に働くことがある。この場合、図4を参照すると、戻り止め片12mが末端の金属管11の端縁に当接していると共に、戻り止め片13mが中間の金属管12の端縁に当接しているので、複数の金属管11・12・13が互いに収縮することが防止される。
【0061】
又、図1から図3を参照すると、実施形態による聴診棒10は、先頭の金属管13にペン型の照明装置2を同軸上に設けているので、聴診部位又はその周囲を明るく照らすことができる。この場合、スライドボタン21sを操作して、発光体2rを点灯又は消灯できる。
【0062】
次に、伸縮ロッド1の復帰動作を説明する。図4を参照して、第2係止開口12kに係止した抜け止め片13nを押圧操作すると共に、先頭の金属管13を中間の金属管12に向かって押し込むと、抜け止め片13n及び戻り止め片13mが先頭の金属管13の内部に没入して、先頭の金属管13を中間の金属管12に収容できる。
【0063】
図4を参照して、圧縮コイルばね12sの付勢力に抗して、先頭の金属管13を中間の金属管12の内部に移動すると、抜け止め片13nが第1係止開口12jに突出して、先頭の金属管13と中間の金属管12との収縮状態を維持できる。
【0064】
続いて、図4を参照して、第2係止開口11kに係止した抜け止め片12nを押圧操作すると共に、中間の金属管12を末端の金属管11に向かって押し込むと、抜け止め片12n及び戻り止め片12mが中間の金属管12の内部に没入して、中間の金属管12を末端の金属管11に収容できる。
【0065】
図4を参照して、圧縮コイルばね11sの付勢力に抗して、中間の金属管12を末端の金属管11の内部に移動すると、抜け止め片12nが第1係止開口11jに突出して、中間の金属管12と末端の金属管11との収縮状態を維持できる。そして、図1(B)又は図5に示すように、伸縮ロッド1は、複数の金属管11・12・13の収縮状態が維持される。
【0066】
このように、実施形態による聴診棒10は、抜け止め片12nと抜け止め片13nを押圧操作すると、末端の金属管11に対して先頭の金属管13が突出して、これらの金属管11・12・13が伸長状態を維持するので、操作が容易であり、複数の金属管11・12・13を素早く伸長できる。
【0067】
又、実施形態による聴診棒10は、先頭の金属管13にペン型の照明装置2を同軸上に設けているので、別途、照明装置を持参することなく、聴診部位又はその周囲を照明できる。
【0068】
実施形態による伸縮ロッド1は、三つの金属管を引き出し自在に相互に連結したが、相互に連結する金属管は、二つでもよく、四つでもよく、多様な変形例を考えることができる。
【0069】
又、実施形態による照明装置2は、発光体2rとしてLEDを用い、電池2bとして筒型のリチウム電池を用いる実施例を開示したが、これらに限定されない。発光体には、小型の電球を用いてもよく、電池には、市販の単四の乾電池を用いてもよく、単五の乾電池を二つ直列接続してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 伸縮ロッド
2 照明装置
2a 聴診端子
10 聴診棒
11 金属管(末端の金属管)
11a キャップ(耳当て部)
11j・12j 第1係止開口
11k・12k 第2係止開口
11s・12s 圧縮コイルばね(付勢手段)
12 金属管(中間の金属管)
12c・13c ストッパ部材
12n・13n 抜け止め片
13 金属管(先頭の金属管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属管を軸方向に連設すると共に、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を引き出し自在に相互に連結した伸縮ロッドと、
複数の前記金属管と同軸状に配置されるように、先頭の前記金属管に固定されたペン型の照明装置と、を備え、
前記伸縮ロッドは、
相互に連結する末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の間に配置され、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を延びる方向に力を付勢する付勢手段と、
末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管の一部又は略全てを収容するように、末端側の前記金属管に対して先頭側の前記金属管を係止する、前記付勢手段と同数のストッパ部材と、を有し、
前記照明装置は、光を出射できると共に、聴診部位に当接可能な聴診端子を先端部に有し、
末端の前記金属管は、前記聴診端子の振動が伝導される耳当て部を基端部に有し、
前記ストッパ部材は、先頭側の前記金属管から末端側の前記金属管に向けて外周方向に突出する、弾性変形可能な抜け止め片を有し、
前記金属管は、
前記抜け止め片が係止して、末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の収縮状態を維持する、末端側に位置する第1係止開口と、
前記抜け止め片が係止して、末端側の前記金属管と先頭側の前記金属管の伸長状態を維持する、先頭側に位置する第2係止開口と、を有する聴診棒。
【請求項2】
前記ストッパ部材は、先頭側の前記金属管から末端側の前記金属管に向けて外周方向に突出すると共に、末端側の前記金属管の端縁に当接する、弾性変形可能な戻り止め片を更に有する請求項1記載の聴診棒。
【請求項3】
先頭側の前記金属管は、その軸方向に沿って、外周面から内部に向けて窪んだ一つ以上の凹溝を含み、
末端側の前記金属管は、前記凹溝に嵌合するように、内部に向けて突出する回り止め凸部を含んでいる請求項1又は2記載の聴診棒。
【請求項4】
前記照明装置は、
前記聴診端子に対向するように配置された発光体と、
前記発光体に電力を供給する電池と、を内部に備え、
前記聴診端子は、光を透過可能な透明体からなる請求項1から3のいずれかに記載の聴診棒。
【請求項5】
前記照明装置は、前記発光体と前記電池を電気的に接続すると共に、外部から操作が可能なスイッチを更に備える請求項4記載の聴診棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−208045(P2012−208045A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74786(P2011−74786)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】