説明

肌の乾燥・かゆみ緩和剤

【課題】皮膚の保湿、保護および鎮痒効果に優れ、しかも低刺激でアトピー性皮膚炎などの痒みを伴う乾燥肌に対して有用性の高い肌の乾燥・かゆみ緩和剤の提供。
【解決手段】平均重合度が300以下の低分子ペクチンを有効成分として含有する肌の乾燥・かゆみ緩和剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低分子ペクチンを有効成分として含有する肌の乾燥・かゆみ緩和剤に関する。
【背景技術】
【0002】
かゆみを伴う疾患のひとつとして、乾燥からおこる乾皮症があげられる。この症状は掻くことにより乾燥を増幅させ症状の悪化を招く。この症状を処置すべくさまざまな外用剤が提案されている。たとえば、皮膚の角質層に存在する天然成分の尿素は保湿剤、クロタミトンという成分は皮膚に軽い刺激を与えそれによりかゆみを抑える鎮痒剤として知られ、市販の皮膚外用剤はこれらの成分を複数配合している。しかしながら、従来の保湿剤・鎮痒剤には、抗ヒスタミン剤などが用いられているが、皮膚に刺激を与えるため、アトピー性皮膚炎などの痒みを伴う乾燥肌のように刺激に弱い皮膚には使用することができない、という問題があった。

【0003】
一方、ペクチンは植物の細胞壁に存在しているガラクツロン酸を主体とした酸性多糖類であり、ゲル化剤やタンパク質の安定剤として広く用いられている。主鎖はα−D−ガラクツロン酸がα−1,4結合しており、不均一にラムノース、アラビノース等の中性糖が入り込む形でラムノガラクツロナン鎖を形成している。さらに、分枝してガラクツロン酸や中性糖からなる側鎖を持つと考えられており、平均重合度は200から1000といわれている。
【0004】
また、平均重合度が300以下の低分子ペクチンには乳化作用、平均重合度が10以下の低分子ペクチンには抗菌作用、また、食物繊維としての整腸作用などを有することが知られている。
【0005】
しかしながら、低分子ペクチンが肌に及ぼす影響に関しては、特許文献1に記載の美白効果が公知であるが、乾燥やかゆみを緩和する効果があることは知られていなかった。
【特許文献1】特許第3596953号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のような問題点を鑑み、本発明の目的は、皮膚の保湿、保護および鎮痒効果に優れ、しかも低刺激でアトピー性皮膚炎などの痒みを伴う乾燥肌に対して有用性の高い皮膚塗布剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、低分子ペクチンが肌に対する刺激が少なく安全性に優れ、しかも肌の乾燥の緩和する効果と乾燥によるかゆみが軽減する効果を示すことを見出し、本発明に到達した。即ち、本発明は低分子ペクチンを有効成分として含有することを特徴とする肌の乾燥・かゆみ緩和剤である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いる低分子ペクチンとは、平均重合度が300以下のものをいい、好ましくは平均重合度が3から50のものである。本発明の低分子ペクチンは、公知の方法、例えばペクチンの加水分解や酵素分解によって得られる。
【0009】
本発明の肌の乾燥・かゆみ緩和剤の剤形は、有効成分として低分子ペクチンを含有する限り、特に限定されるものではなく、軟膏、乳化剤、クリーム、ローション、ジェル、パウダー、シート剤、貼付剤等任意の製剤として提供できる。
【0010】
また、本発明の効果を損なわない範囲において、通常用いられる基材(例:ワセリン、ポリエチレングリコール等)、溶剤(例:水、エタノール等)、界面活性剤、香料等の成分を適宜配合することができる。
【0011】
本発明の肌の乾燥・かゆみ緩和剤において低分子ペクチンの含有量は、剤形にもよるが通常1〜50重量%程度が好ましい。
【実施例1】
【0012】
<低分子ペクチンの生成(1)>
ペクチン(UNIPECTINE SS ND:Cargill社製)300gを水3kgに分散させ、オートクレーブ(HIRAYAMA HA-240M)で121℃135分間加圧加熱を行い、低分子ペクチン溶液2453gを得た。この低分子ペクチンの重合度を測定した結果、12であった。
低分子ペクチンは食品、化粧品、医薬品等の成分として用いることができる。得られる低分子ペクチンは水溶液として得られるが、これにエタノールやイソプロパノールを加えて沈殿させたり、減圧濃縮を行うことにより、さらに濃い溶液あるいは粉末として利用することも可能である。
重合度は低分子ペクチンのウロン酸量と還元末端量を定量し、下記式により求めた。ウロン酸量測定方法は、Z. Dische, J. Biol. Chem., 167, 189 (1947)に、還元末端量測定方法は、Y. Milner, G. Avigad, Carbohyd. Res., 4, 359-361 (1967)に、記載される方法によった。

【実施例2】
【0013】
<低分子ペクチンの生成(2)>
ペクチン(UNIPECTINE SS ND:Cargill社製)300gを水3kgに分散させ、オートクレーブ(HIRAYAMA HA-240M)で121℃300分間加圧加熱を行い、低分子ペクチン溶液2453gを得た。この低分子ペクチンの重合度を測定した結果、4であった。
【実施例3】
【0014】
<低分子ペクチンの生成3>
ペクチン(UNIPECTINE SS ND:Cargill社製)0.5kgを水10kgに分散した溶液を調製し、ペクチナーゼ300ppmを添加して35℃で15時間反応させて低分子化した。この溶液を濾過、濃縮、乾燥することで低分子ペクチン350gを得た。この低分子ペクチンの重合度を測定した結果、3であった。
【実施例4】
【0015】
<低分子ペクチンの安全性確認>
実施例1および実施例3で得られた各溶液をサンプルとし、それぞれ各15名、合計30名の被験者で皮膚塗布試験を行った。上腕部内側にスポイト3滴分のサンプルを1日2回1週間皮膚に塗布してもらい、経時変化を見た。その結果皮膚に炎症や痛み等の弊害が出た被験者はなく、低分子ペクチンが安全であることが確認された。
【実施例5】
【0016】
<低分子ペクチンの皮膚の乾燥・かゆみ緩和の効果確認>
実施例1および実施例3で得られた溶液をサンプルとし、30名の被験者に皮膚塗布試験を行った。乾燥の気になる部分に患部を覆う程度に1日2回1週間塗布を行ってもらい、経時変化を見た。その結果、30名中7名が、かゆみがおさまったと回答し、30名中3名が、皮膚の乾燥が緩和されたと回答した。
【0017】
この塗布試験を実施した被験者のその他の感想として、
・指の皮がむけていたのが改善された
・肌の乾燥が減った
・アトピー性の赤くなった状態が良くなった
・髭剃り後に塗布すると効果があった
・虫刺されによる痒み低減に効果があった
・手のアカギレが治った
などがあり、低分子ペクチンの皮膚保護作用の有効性が確認された。
【実施例6】
【0018】
<軟膏の調製>
【表1】

上記組成を均一化し、ワセリン軟膏を調製した。この軟膏は塗布感に優れ、皮膚の保湿、保護および鎮痒効果に優れ、しかも低刺激でアトピー性皮膚炎などの痒みを伴う乾燥肌に対して有用性の高いものであった。




【特許請求の範囲】
【請求項1】
低分子ペクチンを有効成分として含有する肌の乾燥・かゆみ緩和剤。
【請求項2】
低分子ペクチンが平均重合度3から50である請求項1に記載の肌の乾燥・かゆみ緩和剤。


【公開番号】特開2009−23912(P2009−23912A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−185249(P2007−185249)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(306007864)ユニテックフーズ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】