説明

肌質改善組成物

【課題】 本発明は、肌のターンオーバーを良好にすることで肌質を改善する肌質改善組成物(剤あるいは食品など)を提供することを目的とする。
【解決手段】大豆たん白を酵素分解して得られる平均分子量500〜15000のペプチド混合物を有効成分とする肌質改善組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大豆たん白を酵素分解して得られるペプチド混合物を有効成分とする肌質改善組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
大豆ペプチド混合物は大豆たん白を原料とし酵素分解したものであり栄養性と吸収性に優れているだけでなく、様々な生理活性効果が見い出され、例えば大豆たん白酵素分解物摂取によるマウスの疲労回復促進・体重増加抑制・血中脂質増加抑制・糖負荷後の血糖上昇抑制などが知られている。
また、ペプチド混合物は化粧品として用いることも知られている。
経口摂取としては、特許文献1(特開平11-075726号公報)に、肌の老化防止などが期待できる平均分子量2000〜10000のコラーゲンペプチドと、寒天等のゲル化剤ゼリー様飲食品が開示されている。
特許文献2(特開2004-238365号公報)には、魚類由来のコラーゲンペプチドを用いた美肌促進剤及び美容健康食品が開示されている。
特許文献3(特開2004-254632号公報)に、セラミドと乳酸菌、好ましくはペプチドを組み合わせた美容食品が開示されている。
しかし、大豆たん白由来のペプチド混合物だけで経口的に摂取して肌がきれいになることは知られていない。
【0003】
ところで、肌は皮脂膜、表皮、真皮、皮下細胞組織からなる。表面部の表皮はさらに、角質層、顆粒層、有棘層、基底層からなり、基底層を構成する基底細胞が真皮の毛細血管を通じて栄養を補給しながら細胞分裂を繰り返し、新しい細胞をつくりながら肌の表面に向けて押し出され角質層に達した後、角質細胞になり、最後は垢としてはがれるターンオーバーを繰り返している。一般に肌質は最表面層の角質層の状態で判断される。
【0004】
ターンオーバーをスムーズにするには、基底層において血液から供給されるたん白質を主体とした栄養や血行の状態を良くすることが大切である。また肌は睡眠の影響が大きく、睡眠のはじめの数時間以内に成長ホルモンが分泌され、このタイミングで肌の再生が活発におこなわれるといわれている。
【0005】
ターンオーバーの速度が遅くなると、肌の再生が落ち、傷の治りも遅くなり、シミもできやすくなる。また、角質層は厚く、角質層以下の表皮は薄くなり、肌がくすむ、硬くなる、乾燥が治りにくい、小じわができるなどの状態が見られるようになる。
【0006】
こうした肌のトラブルを改善、肌状態を良好に維持することなどを目的する様々な化粧品や食品等が開発検討されてきた。
【0007】
これらの化粧品や食品等では、皮膚の構成や組成等を考慮して形成されている場合が多い。表皮部分にはセラミドや天然保湿因子を含み、皮膚の保湿機能に重要な役割を果たしている。このためこれらの天然保湿因子様の物質が保湿剤として化粧品などに利用されてきた。また、セラミドは表皮の保湿性、バリア性を高める作用があると考えられており、シワの形成やきめなど肌状態に影響を与えると考えられており、化粧品や飲料などの食品に利用されてきた。しかし、皮膚の表皮部分と同様の成分を添加や摂取するだけでは肌の健康を総合的に維持することは難しく、肌を劣化させる要因は様々である。
【0008】
一方、ペプチドの原料として美容食品によく利用されているコラーゲンは皮膚の真皮部分に多く存在し、皮膚の弾力性にかかわると共に、加齢にともない減少し、皮膚のシワやタルミの原因となっていることからコラーゲンを補給するよう化粧品の中に含有させる美容化粧品が開発されてきた。近年では、食品として経口摂取により美肌効果をねらった食品等も開発されている。しかし、コラーゲンはプロテインスコアが大豆ペプチド混合物より劣るものであり栄養的には大豆ペプチド混合物に劣るものである。
【0009】
美肌効果を目的とした化粧品や食品の開発は多く行われてきているが、化粧品の場合、発汗、紫外線、など外的要因により有効成分が落ちてしまったり、分解されてしまうことなどにより効果の持続性が困難で、またその効果は局所的である。一方経口摂取の食品では、皮膚の構成成分の摂取により一定の効果が期待できるものの、その美肌効果は充分なものではない。肌の状態は栄養状態、便秘などの内的要因、乾燥、紫外線などの外的要因などにより大きく影響を受けるものである。
【0010】
【特許文献1】特開平11-075726号公報
【特許文献2】特開2004-238365号公報
【特許文献3】特開2004-254632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、肌のターンオーバーを良好にすることで肌質を改善する肌質改善組成物(剤あるいは食品など)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、大豆たん白の酵素分解物のなかで平均分子量15000以下、好ましくは10000以下、更に好ましくは5000以下で約500以上のペプチド混合物を作成し、これを就寝前に摂取することにより肌の状態を改善させることができる知見を得て本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、大豆たん白を酵素分解して得られる平均分子量500〜15000のペプチド混合物を有効成分とする肌質改善組成物である。
肌質改善組成物は剤または食品とすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により肌質改善組成物が完成され、これにより、肌の状態を改善させることが出来るようになったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
まず、大豆たん白を酵素分解して得られる平均分子量500〜15000のペプチド混合物を有効成分とする肌質改善組成物について説明する。
本発明の有効成分であるペプチド混合物の製造法を例示する。
【0015】
ペプチド混合物は大豆たん白を水系下に酵素分解して得ることができる。
大豆たん白は、大豆由来で安価に手に入る材料として、豆乳、濃縮大豆たん白、あるいは分離大豆たん白、脱脂大豆、大豆ホエーたん白などをを用いることができる。
酵素処理に供する大豆たん白溶液の濃度は1重量%〜30重量%とすることができる。
本発明に用いるたん白分解酵素(プロテアーゼ)は、エキソプロテアーゼ又はエンドプロテアーゼを単独又は併用することができ、動物起源、植物起源あるいは微生物起源は問わない。
本発明の加水分解の条件は用いるたん白分解酵素の種類により多少異なるが、概してそのたん白分解酵素の作用pH域、作用温度域で、大豆たん白を加水分解するのに充分な量を用いることができる。
【0016】
加水分解の程度は、たん白成分の15%トリクロロ酢酸可溶率でいう大豆たん白分解率で、20〜98%程度、より好ましくは50〜90%程度になるまで行なうことが適当である。
このようにして得られた大豆ペプチド混合物は平均分子量500〜15000、好ましくは500〜10000、より好ましくは500〜5000以下となる。分子量は吸収性と関与することが想定され、成長ホルモン上昇時に効果のタイミングを合わす上では、平均分子量が500以上であって、かつ、10000以下、更には5000以下が好ましい。
なお、有効成分である前記ペプチド混合物は飲料用途など必要に応じて不溶成分を除去することができる。
【0017】
本発明の肌質改善組成物は前記ペプチド混合物を有効成分として剤または食品とすることができる。例えば、錠剤、粉末状、顆粒状、固形状、流動物状、液状等の形態とすることができる。
【0018】
例えば、本発明の組成物が剤として利用される場合はサプリメントなどの形態に製剤することができる。製剤には公知の担体を用いることができる。担体としては例えば充填剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤等の希釈剤乃至賦形剤等を例示できる。
剤の形態は錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤等の形態とすることは自由である。
【0019】
また、例えば、本発明の組成物が食品の場合は、固形乃至液体の形態とすることは自由である。
固形の場合であれば本発明の大豆ペプチド混合物を含んだ公知の食品とすることができる。
液体の場合であればドリンクなど公知の飲料に本願発明の大豆ペプチド混合物を用いることができる。
【0020】
本発明の肌質改善組成物は就寝前に摂取することが適当である。
睡眠後成長ホルモンの分泌が活発になり、この際に皮膚の肌質を改善する効果を奏するからである。
本発明の肌質改善組成物の摂取量は特に限定するものではないが、有効成分である大豆ペプチド混合物を1日1g以上摂取することが適当である。通常1日3g〜80gが好ましい。食事から得るたん白質の一部を補助的に摂取する上で、サプリメントなどとして摂取する場合であれば好ましくは、2g以上、20g以下摂取すれば効果が得られるものである。
【0021】
本発明の肌質改善剤は、継続的に就寝前摂取することにより肌の状態を改善させることができるものである。大豆ペプチド混合物は吸収性が大豆たん白質よりスムーズになることより、就寝前の摂取でより特徴的な効果がみられるが、就寝前以外に摂取することでも効果が期待できる。肌のハリ、ツヤを与え、化粧のノリを良くし、赤ら顔にもなりにくくし、またキメを細かく、毛穴、色素沈着を目立ち難くする作用など肌質改善効果が期待できる。さらに冷えや疲労感の改善などの健康促進効果も期待できる。
コラーゲンペプチドに比べ本発明の肌質改善組成物の有効成分である大豆ペプチド混合物はプロテインスコアがほぼ100に近く肌質改善効果だけでなく栄養的にも優れるものである。
【0022】
以下に、本発明の有効性を実施例と共に示すが、これらの例示によって本発明の技術思想が限定されるものではない。
【0023】
製造例(有効成分である大豆たん白ペプチド混合物)
分離大豆たん白(不二製油(株)製、「ニューフジプロ−R」)30kgをpH7.0の9%水溶液とし、たん白分解酵素(天野エンザイム(株)製、「プロテアーゼS」)0.6kgを作用させ60℃で5時間加水分解(15%TCA可溶率85%)した後、クエン酸を添加してpH5.5に調製した。この液に8kg/cm2圧の蒸気を吹き込んで95℃に昇温させその温度で1分間保持した後、高速遠心分離機で不溶物を分離除去した。得られた遠心上清液(固形分の収率は72.4%)をpH6.5に調整し、150℃で1分殺菌後、ただちにスプレードライヤーで粉末乾燥させ大豆たん白ペプチド混合物を調整した。尚、この平均分子量は980(平均鎖長7)、粗たん白質は74%であった。
【実施例1】
【0024】
表1に示した配合の原材料を用い、常法により、100g/本の飲料を調整した。なお、大豆たん白ペプチドは、製造例で調製したものを用いた。この飲料を10人の女性被験者(年齢36〜49歳)に3週間継続して就寝前に摂取させ、摂取前と摂取3週間後にアンケートによる体感調査とともにロボスキンアナライザー(株式会社インフォワード製)とUSB Microscope M2(スカラ株式会社製)、Image Factory Ver.5.2 肌診断版(アイエムソフト有限会社製)による肌質測定を実施した。なお、体感調査は1〜5の得点方式で、点数が高くなる程、各項目に対し思う度合いが強くなる方式で行った。また、USB Microscope M2、Image Factory Ver.5.2 肌診断版では、USB Microscope M2で撮影した画像をImage Factory Ver.5.2 肌診断版の計測メニューの面積出力(白)を使用し、肌のキメ測定を行った。体感調査の結果は表2、ロボスキンアナライザーの結果は表3、USB Microscope M2、Image Factory Ver.5.2 肌診断版の結果は表4に示した。
【0025】
(表1)
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原材料 配合
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大豆たん白ペプチド 11.00%
転化型液糖 7.00
アップル果汁 2.00
クエン酸 1.40
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水にて全量を100とする。
・ 転化型液糖:ハイスイート・デラックス/三菱化学フーズ株式会社
・ アップル果汁:1/5濃縮りんご果汁/フードマテリアル株式会社
・ クエン酸:くえん酸(1水和物) 食品添加物/キシダ化学株式会社
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【0026】
(表2)
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摂取前 3週間摂取後
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肌にはりがある 2.5 3.2
肌につやがある 2.5 3.0
顔色が明るい 2.5 3.1
くすみが目立たない 2.3 2.6
目の下のクマが目立たない 2.4 2.9
肌がすべすべしている 2.7 3.4
化粧のりが良い 2.3 3.1
赤ら顔にならない 2.1 2.8
顔の肌の調子が良い 2.6 3.2
疲労や疲労感が残りにくい 2.0 3.1
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【0027】
(表3)
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摂取前 3週間摂取後
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目立つ毛穴(数) 1026 963
開きが目立つ毛穴(数) 96 87
黒ずみが目立つ毛穴(数) 342 338
色素沈着 小(数) 187 173
色素沈着 大(数) 249 236
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【0028】
(表4)
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摂取前 3週間摂取後
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キメ面積 12.2 11.0
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【0029】
以上より、大豆たん白ペプチド混合物の肌質改善能の有効性が確認された。大豆たん白ペプチド混合物を就寝前に摂取することにより、肌質の改善とともに、体感においても望ましい状態にすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の肌質改善組成物は就寝前に摂取することにより、肌質の改善とともに、体感においても望ましい状態にすることができるものである。
また、本発明の肌質改善組成物の有効成分は天然の食品である大豆から得られる大豆たん白を加水分解して得ることができるので、多量摂取しても副作用がなく安心である。
また、本発明の肌質改善組成物の有効成分は大豆たん白を酵素を用いて加水分解して工業的に生産効率よく得ることができるので、産業の発達にも大いに寄与するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大豆たん白を酵素分解して得られる平均分子量500〜15000のペプチド混合物を有効成分とする肌質改善組成物。
【請求項2】
肌質改善組成物が剤または食品である請求項1記載の肌質改善組成物。

【公開番号】特開2007−254398(P2007−254398A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81837(P2006−81837)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】