説明

肛門若しくは直腸の診察及び手術のための肛門内視鏡

【課題】肛門若しくは直腸診断及び手術用の複合型肛門内視鏡ユニットを提供すること。
【解決手段】肛門若しくは直腸診断及び手術用の複合型肛門内視鏡ユニットであって、肛門内視鏡2はその中に嵌入される内側案内部材1と、肛門内視鏡2を嵌入するための、終端部が円錐台形中空円殻部18として形成され、短く作られることが好ましい外側固定部材3を備える。前記3部材1、2、3は全てその胴部が円形断面を持つ円錐台形の中空体である。肛門内視鏡2に嵌入されると内側案内部材1はコンパクト且つ滑らかな外面及び湾曲先端部を備えた単体となる。前記外側固定部材3の開口部付近にはスロットを備えた翼部19が肛門周辺の皮膚に固定され、診察や手術中に複合型肛門内視鏡ユニット全体を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肛門若しくは直腸の診察及び手術のための複合型肛門内視鏡に関するものであり、特に相互に挿入される3つの円錐台形状の構成部材からなる複合肛門内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
肛門内視鏡は肛門管や下部直腸を診察する時に使用される外科用器具である。肛門内視鏡は通常円筒のパイプ形状で適当な導入器具によって肛門管に挿入される。
肛門管の診察に加えて痔核切除のような肛門若しくは直腸手術を行うことが可能な1以上の部材を備えた複合型の肛門内視鏡も知られている。
【0003】
例えば、特許文献1(米国特許番号6,126,594号)には、他の円筒状部材を肛門内視鏡に挿入して構成される肛門内視鏡が知られている。前記肛門内視鏡には薄板状の突出部により分割された長手方向スロットが設けられている。このような形状によって直腸の周囲内壁にある複数の痔核を縫合できる。この公知の肛門内視鏡は多くの欠点があり、そのうちの1つは近隣の細胞にダメージを与える可能性がある薄板状の突出部が内側構成部材から突き出ているので肛門管へ導入する際に外傷を伴うことである。更に使用時に肛門内視鏡を適切な位置に配置して固定するシステムは存在しない。
【0004】
また、特許文献2(米国特許番号6,142,933号)より、痔核切除術のときに痔核を縫合するための3つの構成部材よりなる複合型の肛門内視鏡が公知である。また、この公知の肛門内視鏡にも欠点がいくつかあり、そのうちの1つは手術用の開口が1つしかない点である。更に、手術中に肛門管の内側に移動しやすく、肛門縁に対する損傷箇所をはっきりと決定することができない。
【0005】
痔核の治療時と他の肛門若しくは直腸の病気の治療時両方において縫合を正確な深さで行うことは基本的条件である。施術開口が広すぎると手術者が直腸粘膜だけでなく筋肉の被膜をも縫合してしまう危険がある。肛門縁からの縫合の距離もまたこの種の手術においては別の基本的条件である。最後に、周方向の縫合の長さは極めて重要となる。実際に180°に渡って縫合したり、360°縫合しなければならないことがある。
【0006】
【特許文献1】米国特許番号6,126,594号
【特許文献2】米国特許番号6,142,933号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した公知の肛門内視鏡では肛門縁からの距離を正確に評価することができず、正確な外科手術ができるかどうかは執刀医の能力と知識によることになる。これらでは周方向の縫合する長さを正確に評定できないし、肛門縁からの縫合箇所の距離を決めることもできないし、手術中に肛門内視鏡を肛門細胞に固定することもできない。
【0008】
本発明の範囲は上記した欠点のない複合型肛門内視鏡を提供することである。これは、請求項1に詳細に説明した本発明による複合型肛門内視鏡によって達成される。この肛門内視鏡の更なる特徴については従属項で説明されている。
【0009】
本発明による肛門内視鏡の利点は、3つの構成部材は、肛門管に導入される時には、湾曲先端部(ogival tip)と、小型かつ滑らかで肛門管の中の組織が傷つかないよう通過できるように適合されている外面とを有する円錐台形状の単一のボディを構成するということである。
【0010】
本発明の肛門内視鏡による他の利点は、外側構成部材を肛門周囲の皮膚に縫合することにより肛門内視鏡を固定することができるので、手術中に正確に安定して配置できる点である。
【0011】
本発明による肛門内視鏡の他の利点は内面に長手方向及び周方向の標線印(markers)を設けて肛門管内の損傷位置に正確に配置して適切な深さで肛門縁から適切な距離を置いて適切な周方向の長さを縫合できるようにした点にある。
【0012】
本発明による肛門内視鏡の更なる利点は薄板状の突出部が設けられて、その突出部の端部が適切な支持を与えるために湾曲先端部に向けて屈曲しており肛門内視鏡先端部の上に位置する直腸の粘膜に傷を付けることがない点にある。
【0013】
本発明による複合型肛門内視鏡の上記及び他の利点については以下に図面を参照して詳細に説明する実施例から当業者にとって明白である。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
複合型肛門内視鏡であって、
肛門内視鏡(2)と、該肛門内視鏡(2)に挿入される内側構成部材(1)と、それらを挿入される外側構成部材(3)とを備え、前記3つの構成部材は円形の断面を有する中空のボディであり、
前記3つの構成部材(1、2、3)は円錐台形状を有し、
前記内側構成部材(1)は、肛門内視鏡(2)に挿入するとそれと単一のボディを構成し、その外面は滑らか且つコンパクトであり、湾曲先端部を有することを特徴とする複合型肛門内視鏡。
(項目2)
肛門内視鏡(2)は、殻部(12)が設けられ、その端部から先端に向けて屈曲している端部(15)を有する複数の薄板状突出部(14)が延在していることを特徴とする項目1記載の複合型肛門内視鏡。
(項目3)
前記内側構成部材(1)は、殻部(4)が設けられ、そこから複数の長手方向の凹溝(9)が平行且つ等間隔に延び、凹溝は閉塞された湾曲先端部で終端することを特徴とする項目2記載の複合型肛門内視鏡。
(項目4)
前記内側構成部材(1)は、前記肛門内視鏡(2)の方へ侵入するのを防止する手段が設けられることを特徴とする項目3記載の複合型肛門内視鏡。
(項目5)
前記肛門内視鏡(2)は、開口部に複数の貫通穴(16)のパターンを設けたフランジ(10)を備えることを特徴とする項目1〜4のいずれか1項記載の複合型肛門内視鏡。
(項目6)
前記外側構成部材(3)には円錐台形である殻部(18)の直径が最大となる場所で前記殻部(18)に取り付けられたスロット(21)を有する2つの翼部(19、20)が設けられることを特徴とする項目1記載の複合型肛門内視鏡。
(項目7)
前記外側構成部材(3)は、基側の内周側に1以上の突起部(17)が設けられ、前記肛門内視鏡(2)のフランジ(10)の貫通穴(16)に嵌合することを特徴とする項目1記載の複合型肛門内視鏡。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】3つの構成部材を一方を他方に挿入して使用準備ができた状態の複合型肛門内視鏡の斜視図を示す。
【図2】内側構成部材の斜視図を示す。
【図3】肛門内視鏡の斜視図を示す。
【図4】外側構成部材の斜視図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は本発明による複合型肛門内視鏡を示しており、3つの中空の円錐台形状の構成部材からなり、これらは、構成部材同士が相互にきつく挿入されて単一のボディを形成するように適合されている。3つの構成部材の形状及び直径寸法によると、これらを結合した時に器具の外面が滑らかでコンパクトな構成になり、簡単且つ組織を傷付けずに肛門管に導入することができるように構成されている。
肛門内視鏡2は内側構成部材1を挿入する中間部材であり、肛門内視鏡2と内側構成部材1は外側構成部材3に軸方向に挿入される。この順番で1の構成部材を他の構成部材に挿入することができるのは外側構成部材3の直径が肛門内視鏡2の直径よりも僅かに大きいからであり、肛門内視鏡は外側構成部材3に遊びなしで挿入できる。同様に、構成部材1の直径は肛門内視鏡2の直径よりも僅かに小さい。
【0016】
3つの構成部材が円錐台形状であることにより相互に嵌入したり抜き取ったりすることが容易にできて従来技術の肛門内視鏡に見られる円筒形状に特有の取り付けの問題を解決することが出来る。
【0017】
図1は、本発明による複合型肛門内視鏡の湾曲先端部は、肛門内視鏡2の(先端が)切取られた湾曲先端部とその下にある構成部材1の完全な湾曲先端部を特定の方法で嵌合させた結果であることを示している。後に詳細に説明するように、肛門内視鏡2と内側構成部材1の湾曲先端部の寸法及び形状は取り付けた時に相互に一体となる空洞部と立体部のシステムを形成し、単一のボディを形成し、滑らかでコンパクトな外面を有すると考えられるので本発明の元となった課題の1つを解決できる。
【0018】
図2に示す通り、構成部材1は内部が空洞で且つ円錐台形状のボディからなり、その入口にフランジ5が取り付けられて、殻部4と入口の反対側に湾曲先端部6を備える。フランジ5にはハンドル7が備えられ本発明の複合型肛門内視鏡を取り付ける際や肛門内視鏡検査や他の外科手術で使用している最中にも構成部材1を適切に操作できる。本実施例では、内側構成部材1に(舌片状の)スナップピン器具8が設けられて、この態様で肛門内視鏡2と単一のボディを形成できるようにしている。
【0019】
構成部材1の円錐台形状のボディには平行な長手(軸)方向の複数の凹溝9のセットが備えられており、該複数の凹溝9は半径方向にボディの円断面に対して相互に等間隔となるように設けられている。凹溝9は構成部材1の円錐台形状のボディの中間、つまり殻部4の終端部から閉鎖されている湾曲先端部まで延びている。
【0020】
図3に示すように肛門内視鏡2は同様に中空の円錐台形状のボディであり、その入口に取り付けられたフランジ10を備える。フランジ10は少なくとも1のハンドル11を備え、取り付け作業時と使用時に肛門内視鏡を操作する。構成部材1と同様に、肛門内視鏡2は殻部12と、平行に延在されたスロットのセット13が設けられた湾曲先端部とを備え、スロット13により肛門内視鏡2の内部が外周囲空間へと連通する。スロット13は等間隔で配置されており、薄板状突出部14で隔てられている。薄板状突出部14の数は構成部材1の凹溝9の数と同じであり、その結果、使用中に突出部は、周囲空間と肛門内視鏡2の内部とを連通するために、スロットを開閉し得る。
【0021】
薄板状突出部14は、その端部付近で、内側構成部材1の湾曲先端部6にきつくはめ込まれるようにするために、中心側へ向かって屈曲した湾曲部15を備えている。肛門内視鏡2の長手方向スロット13は空洞の円錐台形状の殻部12からほぼ湾曲先端部6まで延在させた薄板状突出部14によって相互に隔てられており、複数の突出部14の湾曲部の間に開口ができる。このように、殻部12が肛門内視鏡2のほぼ前半部分を形成し薄板状突出部14がおよそ後半部分を構成している。
【0022】
構成部材1を肛門内視鏡2に導入する際に薄板状突出部14がそれ自体のもっている弾性力によって凹溝9の中をスライドして完全に凹溝9内に嵌合することによって図1に示すようなコンパクトで滑らかな外面を備え湾曲先端部を終端とする中空空洞で円錐台形状のボディが形成される。このように独特の嵌合により得られた滑らかでコンパクトな外面によって、本発明の複合型肛門内視鏡は組織を傷つけることなく肛門管に挿入することができる。
【0023】
本発明による肛門内視鏡を使用する際には薄板状突出部14がその下の構成部材1の凹溝9に嵌めこまれて肛門若しくは直腸の粘膜や直腸の筋肉被膜が凹溝9に入るのを防ぐ。つまり、損傷部の正確な場所を見つけて診察する際に薄板状突出部14が肛門若しくは直腸の粘膜や直腸の筋肉被膜を支持する。
【0024】
好ましくは肛門内視鏡2の内面に周方向及び長手方向に設けられた標線印を所定の間隔で設ける。そのような目印によって損傷部分の肛門縁からの距離を正確に示すことができ長手方向及び周方向の両方において完璧に手術部分に焦点を当てて施術できる。
【0025】
肛門内視鏡2のフランジ10は複数の貫通穴16のパターンを好ましくは等間隔に配置し、外側構成部材3の内側で肛門内視鏡2が回転しないようにする。後に説明するように外側構成部材3には貫通穴16に嵌合する適切な突起部17が設けられている。
【0026】
次に図4を参照して、構成部材3は他の構成部材1及び2よりもかなり短く、基本的に殻部18で形成される円錐台形状のボディであり、その外径に取り付けられた翼部材19、20が設けられている。内側構成部材1の殻部4と肛門内視鏡2の殻部12と外側構成部材3の殻部18の長さは図1に示すようにほぼ同じである。翼部材19及び20はハンドルとして使用して肛門部分の内側で複合型肛門内視鏡全体が正確に配置されるようにする。更に、翼部材19及び20は肛門管に複合型肛門内視鏡を挿入する際に台座として機能する。このように翼部材19及び20には二重の機能がある。1つは肛門内視鏡を肛門管に挿入するときのハンドルであり、2つ目は器具が肛門部分に接触した時に挿入工程の終端を示す台座となる機能である。
【0027】
翼部19及び20にあるスロット21は、外側構成部材3を肛門周辺の皮膚に縫合することにより手術中に本発明の複合型肛門内視鏡を固定するために用いることができる。上記スロットにより固定されると外側構成部材3は肛門内視鏡2及び内側構成部材1の支持および軸方向のガイドの両方を提供する。
【0028】
肛門内視鏡2が構成部材3内に軸方向に挿入されると、その内側にある突起部17は肛門内視鏡2のフランジ10に設けられた貫通穴16に嵌合して2つの構成部材の間の相対的な回転を防止する。このように肛門内視鏡2の角度位置は構成部材3に対して固定されるので本発明の複合型肛門内視鏡を普通に使用している時はその位置を維持することができる。フランジ10の貫通穴の数と構成部材3の開口内側の対応する突起部17の数が多ければ多いほど、構成部材3と肛門内視鏡2の相対的な位置規定は精度が良くなることは明白である。
【0029】
複合型肛門内視鏡は外側構成部材3によって肛門周辺部の皮膚に固定していても、スナップピン器具8の係合を解除することによりハンドル7で内側構成部材1を軸方向に引き抜くことができる。このように肛門内視鏡2の内側は全く固定されていないので肛門及び肛門若しくは直腸部分を診察することができる。
【0030】
本発明の肛門内視鏡は3つの構成部材が相互にきつく挿入されて、図1に示すような滑らかでコンパクトな外面が設けられた単一のボディを形成してから肛門管に挿入される。穴の空いた翼部19及び20を縫合することにより肛門周辺の皮膚に外側構成部材3を固定した後に内側構成部材1を外すことができる。次に、外側構成部材3のキャビティの中で肛門内視鏡2を回転させて直腸壁の関連部分の粘膜が薄板状の突出部14間のスロットから脱出するように肛門内視鏡2の位置を調整することができる。この段階では、外側構成部材3の突起部17を肛門内視鏡2のフランジ10に設けられた貫通穴16に嵌合させて肛門内視鏡2を外側構成部材3に固定している。このようにして肛門内視鏡は肛門管にしっかりと固定されているので、手術中ずっと関連部分を固定可能なシステムを実現できる。この方法により肛門縁から正確な距離で且つ円周方向の所定の長さを縫合できる。更に、肛門内視鏡2は最終的には固定された外側構成部材3から引き抜かれて、何れにせよその他の手術用器具を導入できるように肛門管を開いた状態にする。
【0031】
上記で説明した発明の実施例に、当業者により同一発明となる範囲内で更なる変形及び/又は追加が加えられてもよい。例えば、肛門内視鏡2及び内側構成部材1のハンドルの形を本発明と同機能を有する範囲内で変化させてもよい。同様に3部材の構成に使用される材料を変更してもよい。構成に適した材料であればどのような材料を使用してもよいが、好ましくはポリエチレン・テレフタレート(PET)とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−206558(P2011−206558A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−130162(P2011−130162)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【分割の表示】特願2008−537318(P2008−537318)の分割
【原出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(507364377)コヴィディエン・アクチェンゲゼルシャフト (62)
【Fターム(参考)】