肝細胞癌の予防又は処置のための組成物
【課題】哺乳動物の免疫応答を生成することによって該哺乳動物の癌を予防又は処置するための新規組成物を提供する。
【解決手段】哺乳動物の免疫応答を生成することによって該哺乳動物の癌を予防または処置するための組成物であって、該組成物は、配列番号1の核酸配列からなるαフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入された免疫系細胞を含み、ここで該免疫応答は、αフェトプロテインペプチド特異的Tリンパ球を活性化して、これらの表面マーカーを保有する癌細胞に対して該免疫応答を生成する、組成物とする。
【解決手段】哺乳動物の免疫応答を生成することによって該哺乳動物の癌を予防または処置するための組成物であって、該組成物は、配列番号1の核酸配列からなるαフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入された免疫系細胞を含み、ここで該免疫応答は、αフェトプロテインペプチド特異的Tリンパ球を活性化して、これらの表面マーカーを保有する癌細胞に対して該免疫応答を生成する、組成物とする。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
原発性肝癌は、世界中の癌による死の主要な原因である。肝細胞癌(HCC)は、一年あたり約120万の症例の発生数を有する、最も一般的な型の原発性肝癌である。世界のいくつかの地域(例えば、東南アジアおよび南アフリカ)では、肝細胞癌は、最も一般的な型の悪性疾患の1つである。この疾患の高い頻度は、これらの地域における肝炎の高い発生数に関連するようである。
肝細胞癌の治癒治療は、非転移性疾患を有する個体に現在制限されており、そして肝移植を伴うかまたは伴わない、腫瘍の外科的切除を伴う。しかし、外科的切除および移植でさえも、切除後の再発のために、大部分の腫瘍が治癒しない。治療に対する化学療法剤のアプローチは、今日まで、たいてい、無効であった。最近20年間は、肝細胞癌の処置に重大な進歩はなかった。
それゆえ、肝細胞癌の有効な処置についての必要性が依然として残っている。処置は、理想的には、この疾患の最大の発生数を有する、非先進国における使用に適切であるべきである。さらに、処置は、切除可能でない腫瘍および転移性疾患を有する個体における使用に適切であるべきである。
【非特許文献1】MORINAGA, T., et al., Primary structures of human α-fetoprotein and its mRNA. Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 80(15), PP.4604-4608 (1983)
【非特許文献2】佐藤一夫ら、α-fetoproteinに関する研究(VII)、日大医誌、43(10)、pp.835-842 (1984)
【非特許文献3】平井秀松、α-フェトプロテインによる肝癌の診断と治療、生物物理化学、28(6)、pp.333-341 (1984)
【非特許文献4】TAGA, H., THE EFFECT OF ACTIVE IMMUNIZATION OF RATS WITH HETEROLOGOUS α-FETOPROTEIN UPON HEPATOCARCINOGENESIS INDUCED BY 3'-METHYL-4-DIMETHYLAMINOBENZENE. Gann, 74, pp.248-257 (1983)
【特許文献1】特開平2−218694号公報
【特許文献2】国際公開第96/22787号パンフレット
【発明の開示】
【0002】
本発明の1つの実施態様によれば、ヒトを含む哺乳動物における、肝細胞癌のような癌を予防または処置するための方法が提供される。この方法は、哺乳動物において、少なくともαフェトプロテイン分子のアミノ酸配列の部分に対する免疫応答を生じる工程を含む。
免疫応答を生じる工程は、少なくともαフェトプロテインアミノ酸配列の部分を含むペプチドを含む少なくとも1つの組成物、または少なくとも1つのアミノ酸置換を有する少なくともαフェトプロテインアミノ酸配列の部分を含むペプチドを含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。また、免疫応答を生じる工程は、少なくともαフェトプロテイン分子のcDNA配列の部分を含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。さらに、免疫応答を生じる工程は、αフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入した免疫系の細胞を含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。
本発明の別の実施態様によれば、癌を予防または処置するために、ヒトを免疫するための組成物が提供される。組成物は、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、AFP49、配列番号3および配列番号4からなる群より選択されるペプチドを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
本発明の1つの実施態様によって、癌がその表面上に少なくともαフェトプロテイン分子の部分を保有する哺乳動物(例えば、ヒト)において、少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する哺乳動物における免疫応答を生じさせることによって、癌(肝細胞癌を含む)を予防または処置するための方法が提供される。本方法は、癌を有する哺乳動物を免疫操作または遺伝子操作し、癌細胞の表面上に存在する少なくともαフェトプロテインの部分に対する免疫応答を生じさせる工程を包含する。次いで、罹患した哺乳動物の免疫系は、表面マーカーを保有する癌細胞を破壊させられ、それによって臨床的に癌を予防するか、または確立した癌を処置する。
ヒト肝細胞癌細胞の大部分は、ヒトαフェトプロテイン(hAFP)(609アミノ酸残基のタンパク質、配列番号2)を合成し、これは、通常、およそ誕生の時期までに胎児肝細胞によって産生される。肝細胞癌細胞は、その表面上に、少なくともαフェトプロテイン分子の部分を提示する傾向がある。肝細胞癌におけるαフェトプロテインの存在は、スクリーニングおよび診断目的のためのマーカーが使用されている。
【0004】
αフェトプロテインは、通常、免疫系の発達の間に存在するため、免疫系が、タンパク質に対して免疫学的に応答する能力を保持しないことが当然想定される。本発明の1つの局面は、哺乳動物の免疫系が、外来タンパク質としてのαフェトプロテインに応答するように、および外来細胞としての少なくともαフェトプロテイン分子の部分をその表面上に有する細胞に対して反応され得るという発見を含む。従って、この免疫応答を生じさせることは、哺乳動物免疫系を引き起こし、肝細胞癌細胞を破壊することによって、肝細胞癌を予防するため、および疾患を処置するために使用され得る。
本明細書中に開示されるように、αフェトプロテインに対する免疫は、以下を含む種々の手段によって達成され得る:少なくともαフェトプロテイン配列の部分に基づく合成ペプチドを含む、少なくともαフェトプロテイン配列の部分を含む合成ペプチド(しかし、置換または他の改変を含む)での免疫、少なくともαフェトプロテインのcDNA配列の部分での免疫(それによって、適切な免疫系細胞に対する少なくともαフェトプロテイン分子の部分の産生および提示を引き起こす)、遺伝子操作された抗原提示細胞の哺乳動物への導入、および少なくともαフェトプロテイン分子の部分の発現を引き起こすための、遺伝子治療用ウイルスベクターの使用。この免疫の目的は、αフェトプロテインペプチドに特異的なTリンパ球を活性化し、これらの表面マーカーを保有する細胞に対する免疫応答を引き起こすこと、および好ましくは、それによって細胞障害性Tリンパ球を活性化し、肝細胞癌細胞を破壊することである。
【0005】
1)ヒトにおいて免疫応答を生じさせる、ヒトαフェトプロテインペプチドの決定および生成
ヒトαフェトプロテイン分子のどの部分が、ヒトにおいて免疫応答を生じさせ得るかを決定するために、全ヒトαフェトプロテイン(hAFP)分子(配列番号2)由来の一連のペプチドを試験し、クラスI拘束ペプチドとして、それらが抗腫瘍応答を生じさせ得るか否か、および細胞障害性リンパ球(CTL)についての標的分子として作用し得るか否かを決定した。hAFP由来の潜在的な免疫原性ペプチドを、HLA A2.1クラスI結合グルーブ(groove)に対する潜在的な適合に基づいて選択した。HLAA2.1(世界保健機構(World Health Organization)特殊命名法における、HLA A*0201)は、コーカサス人において最もありふれた対立遺伝子であり、そしてまた他の民族においてよく分布していることから、HLA A2.1を選択した。決定を、以下のように行った。
【0006】
第1に、公開されたコンセンサス配列によって、HLA A2.1に潜在的に結合するhAFP(配列番号2)由来のペプチド配列を同定した。HLA A2.1は、長さが8〜10アミノ酸であるペプチド、しかし好ましくは9マー(mer)のペプチドに結合すると考えられている。アミノ酸のイソロイシン、ロイシン、およびメチオニンは、ペプチド2位における重要なアンカー残基であると考えられており、そしてアミノ酸のイソロイシン、ロイシン、およびバリンは、ペプチド長に依存して、ペプチド9位または10位における重要なアンカー残基であると考えられている。
HLA A2.1クラスI結合モチーフに適合した適切なペプチド配列を、University of Wisconsin Genetics Computer Group Program「find patterns」を用いて同定し、hAFP配列(配列番号2)をスクリーニングし、そして2つの強(strong)結合「アンカー」残基(それぞれ、9および10残基を有するペプチドについて、2位の残基および9位または10位の残基)を含む、9および10マーのペプチド(「強(strong)」ペプチドと命名する);1つのみの強結合(strong binding)アンカー残基を含む、9および10マーのペプチド(「中間(intermediate)」ペプチドと命名する):または強結合アンカー残基を含まないが、他のポジティブな結合残基を含む、9および10マーのペプチド(「弱(weak)」ペプチドと命名する)を同定した。結合を破壊すると考えられる残基を1つより多く含むペプチド配列を、除去した。
【0007】
スクリーニング研究によって、HLA A2.1クラスI結合モチーフに潜在的に結合する、全部で72のペプチド配列を同定したが、これらの配列のうちの6つをさらなる考慮から除外した。なぜなら、この6つの配列は、それらの高疎水性に起因して合成が困難であったからである。残りの66個のペプチド配列を、当業者に公知の技術によるChiron Mimetopes(Victoria,Australia)によって試験するために合成した。これらは、10個の「強」ペプチド配列、43個の「中間」ペプチド配列、および13個の「弱」ペプチド配列を含んだ。ここで表Iに言及するように、ペプチド命名番号、hAFP配列(配列番号2、ペプチド配列によって示される)の残基、および66個のペプチド配列の各々についてペプチドが含むアミノ酸を示す。ペプチド命名番号は、Chironからのペプチドの受領書の順番に基づき、従ってhAFP分子(配列番号2)のアミノ酸配列に関して非連続的である。
【0008】
表I ヒトAFPペプチド配列
【0009】
次に、66個のペプチドの各々を、濃度依存方法でHLA A2.1に結合する能力、およびそれによって以下のようなT2細胞安定化アッセイにおいてHLA A2.1を安定化する能力について試験した。各ペプチドを、TAP1およびTAP2欠失T2細胞とともに一晩インキュベートした。このT2細胞は、前日の晩に室温でインキュベートし、細胞表面MHCクラスI分子の発現を増加させていた。各ペプチドを、0.1μM〜100μMのペプチド濃度の範囲にわたって、HLA A2.1分子を結合する能力について試験した。T2細胞株において、8〜10マーのペプチドで満たされるMHC分子のみが、細胞表面上で安定である。HLA A2.1の安定性を、抗HLA A2抗体BB7.2(ATCC)およびヤギ抗マウスFITCで染色した後にフローサイトメトリーによってアッセイした。結合についてのポジティブコントロールとして、FLUマトリクスペプチド(FLUマトリクス1タンパク質の残基58〜66(GILGFVFTL))およびMART−1ペプチド(全タンパク質についてGenBank登録番号U06452の、MART−1の残基27〜35(AAGIGILTV))を使用した。FLUマトリクスペプチドは、0.5μMの濃度にて、T2細胞上でA2.1分子を一貫して安定化していた。
ここで、表IIに言及するように、66個のhAFPペプチドのうちの22個のリストを示す。第1欄はペプチド命名番号を列挙し、第2欄はhAFP配列(配列番号2、ペプチド配列によって示される)の残基を同定し、そして第3欄は配列内のアンカー残基の数を同定する。
表IIの第4列は、T2細胞へHLA2.1が結合することが要求されるペプチドの最小濃度を示す。見られ得るように、10の「強い(strong)」ペプチド配列のうちの6つおよび43の「中間(intermediate)」ペプチド配列のうちの7つはHLA2.1への結合能力を示した。さらに、13の「弱い(weak)」ペプチド配列のうちの9つはHLA2.1への結合能力を示した。
【0010】
さらに、各々の66のペプチドもまた、EBVリンパ芽球腫細胞オフ(off)速度論アッセイにおいて、経時的に、クラスI分子からのそれらの解離速度について試験した。なぜなら、クラスI分子に結合したペプチドの解離速度であるオフ速度論が、このペプチドの免疫原性の重要な予測であることが見い出されているからである。例えば、ウイルスペプチドHPV 16 E7、EBV LMP2、FLU M1、およびHIV polのような非自己結合ペプチドについて、最も遅いオフ速度論を示している最も強い結合ペプチドが最も免疫原性であることが見い出されている。さらに、gp100、MART−1のようなメラノーマ抗原由来の免疫原性エピトープである多くの公知の自己タンパク質は、1つのアンカー残基を有し、そして可溶性クラスI再構成アッセイによって安定性の少ない結合親和性を有するが、非常に遅いオフ速度論を有することが見い出されている。例えば、Bakker,A.B.ら、Analogues of CTL epitopes with improved MHC class binding capacity elicit anti-melanoma CTL recognizing the wild-type epitope.Int J Cancer,1977.70(3):p.302-9;およびvan der Burg,S.H.ら、Do epitopes derived from autoantigens display low affinity for MHC class I?(letter).Immunol Today,1997.1892):p.97-98;(各々は、それらの全体において参考として本明細書中で援用される)を参照のこと。
【0011】
表II ヒトAFPペプチド配列および結合特性
【0012】
EBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイを、van der Burg,S.H.ら、Immunogenicity of peptides bound to MHC class I molecules depends on the MHC-peptide complex stability.J.Immunology,1996.156(9):p.3308-3314(これはその全体において本明細書中で参考として援用される)中に開示されるように実施した。簡単に言うと、HLA A2.1 EBVリンパ芽球腫細胞を、MHC分子を不安定にする穏やかなpH3.2酸性緩衝液中で、表面クラスIペプチドおよびβ2ミクログロブリンが剥離した。各々のペプチドを、β2ミクログロブリンの存在下で1時間、過剰な200μMで剥離された細胞上にて直接パルスした。次いで、過剰な非結合ペプチドを洗浄除去し、そして続けて細胞を37℃で0、2、4、および6時間インキュベートした。細胞を各時点の終わりに洗浄し、そしてBB7.2抗体でHLA A2について染色した。平均蛍光強度は剥離されたが、ペプチドでパルスされなかった細胞から少なくとも1.5倍増加する場合、ペプチドクラスI複合体を安定であるとした。
T2細胞安定化アッセイおよびEBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイの両方を少なくとも2回、各々のペプチドについて実施した。表IIを再度参照すると、第5列は、EBVリンパ芽球腫細胞におけるペプチド安定性の時間を示す。見られ得るように、わずか3つの強いペプチド(AFP5、AFP14およびAFP22)、43の中間ペプチドのうちの12(AFP49を含む)および弱いペプチドの1つが遅いオフ速度論のレベルを示した。T2細胞安定化アッセイおよびEBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイの両方を考慮すると、両方のアッセイにおいて最も良い結果を提供する7つのペプチド配列は、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP28、AFP38、およびAFP45であった。
【0013】
次に、表IIIの第1列に記載されるペプチドを、次いで、Plebanski,M.ら、Induction of peptide-specific primary cytotoxic T lymphocyte responses from human peripheral blood.Eur J.Immunol.1995.25(6):p.1783-7で開示される方法によってインビトロにおいてペプチド特異的CTLを産生するために用いた。そしてCTLをA2.1陽性、AFP陽性肝細胞癌細胞を溶解するそれらの能力について試験した。溶解は、ペプチドがヒトAFPの天然にプロセスされる免疫原性エピトープであり、そして強力な標的抗原であることを示唆する。HLA A2.1ドナーおよび細胞株をBB7.2(HLA A2)抗体(ATCC)でスクリーニングし、そして当業者に公知の技術により、PCR、およびUCLA Tissue Typing Laboratory(当業者に公知の技術に従って)による直接的配列分析によって、確認およびサブタイプ化した。
簡単にいうと、ペプチド特異的CTLは、以下のような表III AFPペプチドに記載されるペプチドヘ生じた。正常なA2.1ドナー由来の2×107末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll勾配により精製した。これらのPBMCを、37℃で90分間、1mlの無血清培地中で50μg/mlペプチドでパルスした。次いで細胞を一度リンスし、そしてRPMI10%自己血清中のIL−7(10ng/ml)およびKLH(4.5μg/ml)とともに、0日にウェルあたり1.5mlの10%自己血清RPMI培地中、3×106PBMCで24ウェルプレートに配置した。CTLを非接着細胞を除去することにより、ならびにそれを、新鮮な、ペプチドパルス、洗浄、および照射したPBMCに、1:1のPBMC対CTL比で加えることによって、毎週再剌激した。IL−2を10ユニット/mlで毎週2回、加えた。
【0014】
表III ヒトAFPペプチド細胞障害性
【0015】
培養の3週間後、推定のhAFPペプチド産生CTLを、標準の4時間51Cr放出アッセイにおいて細胞障害性について試験した。CTLを、CTLを産生するために使用した特異的hAFPペプチドでパルスしたT2細胞に対してペプチド特異的な殺傷について試験し、そしてFLUマトリックスペプチドまたはコントロールであるMART−1ペプチドでパルスしたT2細胞と比較した。非特異的NK殺傷を、NK感受性標的K562で評価した。CTLをまた、HLA A2.1陽性、AFP陽性ヒト肝細胞癌細胞株であるHepG2に対して試験した。
ここで、表IIIを参照すると、陽性ペプチド細胞障害性結果を提供した正常ドナー由来のCTLを産生するために使用された12のAFPペプチド配列についての試験の細胞障害性結果が示される。第2列は、大容量のリンパ球培養物のCD4/CD8表現型を示す。第3列および第4列はそれぞれ、ペプチドパルスしたT2細胞およびHepG2標的に対して、エフェクター(CTL)対標的の比(E:T)を有する細胞障害性のレベルを示す。
表IIIに見られ得るように、ペプチドAFP22、AFP39、AFP45、AFP49は、高レベルのAFP+HepG2細胞、HLA A2.1+HepG2細胞の特異的殺傷を証明した。AFP22およびAFP49は4つのアミノ酸の重複(hAFP配列番号2の残基547〜550)を有することが留意され得る。さらにAFP22は、AFP23と2つのアミノ酸の重複(AFP23を有する配列番号2の残基555〜556)を有し、最低限のHepG2殺傷を示した。
AFP49を使用して生成したCTLを試験して、そしてHepG2細胞障害性を維持した。さらに新しいAFP49ペプチド産生CTL培養物を、2つの異なる正常なHLA A2.1ドナーを使用して作製した。さらなる標的を、AFP49を使用して観測された細胞障害性がAFP抗原特異的でありそしてクラスI制限化であることを確認するために使用した。
【0016】
ここで図1を参照して、これらの試験の代表的なデータを示す。第1に、観測された細胞障害性がクラスI制限化であることを確認するために、抗β2ミクログロブリン抗体をHepG2細胞へのCTL−T細胞レセプターの相互作用をブロックするために使用した。これは、HepG2溶解物において有意な減少を生じた。次に、非特異的NK/LAK殺傷を除くために、40倍過剰の非標識(コールド)K562細胞を加えた。これは、HepG2溶解物において有意な減少を生じなかった。さらに、MIICクラスI発現が、γIFN(50ユニット/ml)との一晩のインキュベーションによって、HepG2細胞においてアップレギュレートされた。見られ得るように、MHCクラスI発現アップレギュレーションは、HepG2溶解物を増加した。また、AFP+、HLA A2.1+陰性肝細胞癌細胞株、Hep3B、つまりクラスIミスマッチ化肝細胞癌細胞株もまた、標的として用いた。AFP49 CTLは、非常に低いレベルでこれらのHep3B標的を溶解した。この少量の観測されたHep3B溶解物を、コールドK562細胞を加えた場合のHepG2の特異的殺傷の保持とは対照的に、過剰のコールドK562細胞を加えることによって取り除いた。
【0017】
ここで、図2に言及すると、ペプチド標的およびAFP標的の両方に対してアッセイされた正常HLA A2.1ドナー由来のぺプチドパルスされたPBMCから作成したCTLの標準クロム放出アッセイについての標的に対する特異的溶解のパーセントの棒グラフが示される。CTLのペプチド特異性を確認するために、それぞれの培養物を、CTL培養物が作製される特異的ペプチドでパルスされたT2細胞に対して試験し(最も左の棒)、そして異なるHLA A2.1結合ペプチドでパルスされたT2細胞(コントロールとして)と比較した(左から2番目の群の棒)。理解され得るように、AFP49ペプチド培養物、AFP49V9ペプチド培養物、AFP5ペプチド培養物およびコントロールのFLUマトリックスペプチド培養物の全てが、特異的ペプチドでパルスされたT2細胞の溶解によるペプチド特異性を示したが、異なるペプチドでパルスされたT2細胞に対してはペプチド特異性を示さなかった。
再度、図2に言及すると、これらのペプチド特異的CTL培養物のそれぞれをまた、AdVhAFPまたはコントロールのAdVRR5のどちらかで形質導入されたM202(HLAA2.1+/AFP−)メラノーマ細胞の死滅について試験した。AFPペプチドのAFP5およびAFP49、ならびにAFP49の9位に単一のアミノ酸置換を有するペプチドAFP49L9(配列番号3(GVALQTMKL))およびペプチドAFP49V9(配列番号4(GVALQTMKV))のペプチド特異的CTL培養物のそれぞれは、コントロールのRR5で形質導入されたM202細胞の死滅よりもAdVhAFPで形質導入されたM202細胞に有意に多い死滅を示す。FLUペプチド特異的CTL培養物は、M202/AdVhAFPおよぴ4202/RR5の両方を同様の細胞障害性バックグランドレベルで殺傷した。
【0018】
M202細胞は正確にプロセッシングすることが公知であり、HLA A2.1制限免疫優性MART−1ペプチドを提示する。従って、これらは、AdVhAFPで形質導入され、そしてAFP由来の正確なHLA A2.1制限エピトープがプロセッシングされ、表面に提示されることを期待するのに理想的な細胞株である。ゆえに、この実験は、AFP5、AFP49、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)が、天然にプロセッシングされ、そしてAFP+腫瘍を殺傷するCTLを標的化するために使用され得るペプチドを提示することを示す。さらに、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)に見られるように、ペプチド特異的CTL培養物は、AFP49ペプチド特異的CTL培養物よりさらにより効果的にM202/AdVhAFPを殺傷し、従って、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)は、AFP+細胞に対する免疫応答の標的化のための改善されたぺプチドである。
【0019】
従って、この開示から理解され得るように、本発明はヒトを含む哺乳動物における癌の予防または処置を包含する。ここで、癌細胞は、表面マーカーとして少なくともαフェトプロテイン分子の部分を保有する。予防または処置は、少なくともαフェトプロテイン分子の部分を含むペプチドまたは少なくともαフェトプロテイン分子の部分の置換もしくは他の変化により生成されるペプチドを含む組成物を哺乳動物に投与することにより達成される。これらのペプチドには、AFP5、AFP7、AFP13、AFPl4、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、AFP49、AFP49L9(配列番号3)、およびAFP49V9(配列番号4)が挙げられる。
【0020】
2)その表面にαフェトプロテインを保有する細胞(肝細胞性癌細胞を含む)に対する免疫応答の生成のためのαフェトプロテインcDNAを用いる哺乳動物の免疫
αフェトプロテインcDNAを用いる哺乳動物の免疫は、その表面にαフェトプロテインを保有する腫瘍細胞(肝細胞性癌細胞を含む)を用いる試行に対して部分的または完全に保護的である免疫応答を生成する。この効果を以下のように実証した:
ヒトαフェトプロテインcDNAは以下のように作製した。最初に、ヒトαフェトプロテインcDNAを、Trlzol法(LlfeTechnologles,Galthersburg,MD、製造者らの指示に従う)により、そしてRNAzolB法(TelTest,Frlendswood,TX)によって、Hep3B細胞(ATCCから入手可能)から作製された総RNAからPCR技術により生成した。およそ1μgの総RNAを、Perkin Elmer RT−PCRキットおよび公開された配列に基づいたAFP特異的プライマーを用いるRT−PCR反応において使用した。5’プライマーは、5’GCA ACC ATG AAG TGG GTであった。3’プライマーは、5’AAC TCC CAA AGC AGC ACG AGTであった。プライマーは、プライマーに取り込まれた制限エンドヌクレアーゼ部位XbaIを有するコード領域全体(ATG〜停止コドン)、およびPCR後の酵素切断を容易にする6塩基(CTC TCT)を有する終末を含んだ。プライマー配列は、Operon Technologiesにより合成された(50nMスケール、未精製)。
【0021】
上記で作製されたヒトαフェトプロテインのPCR cDNA産物を、アガロースゲル上で分析し、そのサイズをチェックした。正確なサイズの産物を、Qiagen PCR-quick clean-upカラムで精製し、XbaI酵素で消化してその部位をプライマー中に設計し、そして当業者に公知の技術に従って、pRcCMV(ヒト用)またはpCR3.1(マウス用)哺乳動物発現ベクター(Invitorogen,Carlsbad,CA)のいずれかでクローニング反応において使用した。陽性プラスミドを、ミニプレップ分析により同定した。これらの陽性プラスミドを、マキシプレップし、そしてアリコートをUCLAでDNA配列決定の中心の施設(DNA sequencing core facility)により配列決定して、挿入物の配列同一性を確認した。配列データは1つの鎖についてのみであり、AFP挿入物の同一性が確認された。従って、クローニングされたヒトAFP cDNAは、公開されたヒトAFP配列(GenBank受託番号J00077、J00076、V01514、塩基48〜1877(配列番号1))に対して同一であった。
マウスAFP cDNA(mAFP cDNA)を、ヒトAFP cDNAをクローニングするために使用される上記に開示の方法に対応する方法(ただしマウス特異的プライマーを使用)を用いて、クローニングした。5’マウス特異的プライマーは、5’GCC ATG AAG TGG ATC ACAであった。3’マウス特異的プライマーは、TTA AAC GCC CAA AGC ATC Aであった。総RNA単離のために使用されたマウスAFP陽性細胞株は、Hepa16であった。本明細書中に開示される安定なトランスフェクタントおよび筋肉内注射実験の全てを、シグナル配列を含むcDNAクローンを用いて行った。
【0022】
次いで、mAFP cDNAを、真核細胞発現ベクターVR1012(Vical,Inc.,San Diego,CA)に配置した。VR1012発現ベクターは、増強された発現のためのイントロンを含む強い構成性のCMV最初期のプロモーター/エンハンサー、BGH終結およびインビボ発現のためのポリA配列を含む。
C57BL/6マウスにmAFP cDNAを含むVR1002またはコントロールとして生理食塩水100μgの注射を1週間に1回、3週間与えた。最後の注射の1週間後、VR1002mAFP cDNA免疫化マウスおよび非免疫化のコントロールマウス群の両方を、同系のマウスにおいて次第に増殖する腫瘍の単一の細胞懸濁液から得られた4×106個のBWIC3肝細胞性癌細胞(生細胞)で試行した。BWIC3は、mAFP陽性マウス細胞株である。
図3を参照すると、免疫した動物(白四角)は、コントロール動物(黒四角)に比べ、遅延した腫瘍の増殖あるいは完全な保護を示すことが理解され得る。これらの知見は、数度繰り返された。対応する実験において、MART−1メラノーマ抗原を発現するプラスミドベクターの筋肉内注入は、BWIC3肝細胞の癌細胞試行から動物を保護しなかった(データは示さず)。
【0023】
別の1群の実験において、代用物としてのマウス肝細胞癌株は、mAFP cDNAによるEL4(H−2b)リンパ種の安定なトランスフェクションにより構築された。腫瘍株EL4(mAFP)は、親EL4細胞株と同様のインビボ増殖速度論を有していた。RT−PCRを用いたところ、EL4(mAFP)腫瘍細胞株は、BWIC3肝細胞の癌細胞株の1%以下のレベルのAFPを産生するように思われた。
C57BL/6マウスに、mAFP cDNAまたはコントロールとしての生理食塩水を含む100μg VR102lを、週1回、3週間の間、筋肉内注入した。最後の注入の1週間後、VR1012 mAFP cDNAにより免疫化マウスおよび非免疫化コントロールの群の両方を、7.5×105の生存可能なEL4(親)あるいはEL4(mAFP)細胞で試行(challenge)した。
図4を参照すると、免疫した動物細胞(白四角)およびコントロール動物(黒丸)は、EL4(親)細胞による試行の場合、差異を示さない(p=0.07,スチューデントのT検定)ことが理解され得る。しかし、図5に見られるように、免疫した動物(白四角)は、EL4(mAFP)細胞による試行の場合、コントロール動物(黒丸)と比較して、部分的な保護を示した(p=0.07,スチューデントのT検定)。これらの知見はまた、数度繰り返された。
【0024】
さらなる一連の実験において、αフェトプロテインを表面に有する細胞での試行に対する保護は、安定にトランスフェクトされたマウス線維肉腫細胞株を代用物として用いることにより示された。第一に、安定にトランスフェクトされたマウス線維肉腫細胞株は、DOTAPリポフェクション法(Boehringer Mannheim、製造者の指示に従う)またはCaPO4沈殿法(当業者に周知である技法に従う)のいずれかにより産生された。要約すると、DOTAPリポフェクション法は、前日の夜にオーバーナイトで接着させた、6ウェルプレートでウェルあたり1×105の細胞を用いる。2.5μgのプラスミド(マウスのAFP pCR3.1)を25μlの20mM Hepesおよび50μlのHepes中の15μlの脂質を室温で15分間混合する。この溶液を、1mlの培養培地(10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むRPMI1640)中に希釈し、そしてウェル中の細胞に加える。4〜6時間後、溶液を2mlの新たな培養培地で交換する。48〜72時間後、500μg/ml(総濃度、75%活性)のG418(ジェネティシン(geneticin))により、選択を始めた。2〜3週間の選択の後、任意の潜在的なトランスフェクタントを、RT−PCRによりマウスAFP RNAおよびneo−RNAの発現について試験し、マウスAPRT遺伝子発現で半定量した。
哺乳動物におけるAFP免疫の腫瘍産生を防止する効果を以下のように示した。マウスAFP−pCR3.1プラスミドおよびマウスAFP−AdVシャトルベクタープラスミド(pAC CMVpLpA)は、当業者に公知である技法に従い調製し、そしてマウスAFP−VicalベクターVR102lを構築した。マウス線維肉腫細胞株FSA,NFSA,MCAKおよびSVECを、上記mAFP PCR3.1により安定にトランスフェクトした。
【0025】
Qiagenプラスミドプレップキット(50μl PBS中に50μgのプラスミド)によりエンドトキシンを含まずに調製した、neo−含有発現プラスミドであるマウスAFP−AdVシャトルベクターを用い、C3Hマウスを、プラスミドDNAで3週間、毎週筋肉内注射することにより免疫した。次に、C3Hマウスを、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンド(background)の線維肉肺細胞で、あるいはneo発現ベクターのみで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉肺細胞で試行し、AFP抗自己抗原反応が発生するか、あるいはネオマイシンを発現する安定なトランスフェクタントを用いることにより、AFP応答を遮蔽する抗neo(非自己抗原)反応を引き起こすか否か判定した。肺瘍細胞はインビボで継代され、そして単一の細胞懸濁液を腫瘍試行に用いた。
図6を参照すると、腫瘍後18日目の試行までに、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行した免疫したCH3マウス(下部の黒四角)のうち、1つのみが何らかの腫瘍の増殖(3mm×3mmの腫瘍)を示し、その一方で、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行した残り4匹の免疫したCH3マウス(黒丸)は、全く腫瘍の増殖の徴候を示さなかったことが理解され得る。対照的に、5匹中2匹のAFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行(challenge)した非免疫化C3Hマウス(上部の黒四角)は、何らかの腫瘍の増殖を示した(平均6.8mm2)。FSA親腫瘍細胞およびneo−ベクター−FSA(neo-vector-FSA)細胞は、免疫化(黒ダイヤ)および非免疫化(黒逆三角)CH3マウスの両方で、同様に増殖する。このプロトコールは繰り返され、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0026】
第2の実験は、Jackson Labs(Bar Harbor Marine)からのC57L/J(「リーデン(leaden)」)マウスを用い行われた。これらのマウスは、ネオマイシンを含有しないVical(VR1021)由来のプラスミドベクターで免疫し、従って、マウスAFP遺伝子のみを合成する。C57L/Jマウスは、同系のマウス腫瘍細胞株(ATCCからのBWIC3)で試行した。これらBWIC3細胞は、上記のように産生された安定にトランスフェクションしたマウス線維肉腫細胞よりも、かなり高いレベルでマウスAFPを合成した。
C57L/Jマウスを、上記のとおり、mAFP−Vicalベクターを用いて免疫し、そしてマウスあたり1×106のBWIC3細胞による腫瘍試行は、皮下に行われた。図7を参照すると、14日後の腫瘍試行で、非免疫化C57L/Jマウス(黒四角)は、免疫化C57L/Jマウス(黒丸)の腫瘍よりも、平均2倍の大きさの腫瘍を有することが理解され得る。
【0027】
第3の実験で、さらなるC57L/Jマウスを、マウスAFP遺伝子のみを合成するプラスミドベクター(VR1021)で免疫し、上記のとおりl×106のBWIC3細胞で試行した。図8を参照すると、試行後17日までに、全ての5匹の非免疫化(黒丸および黒四角)マウスは、平均の直径11.4mm2の腫瘍を有することが埋解され得る。対照的に、mAFP−Vicalで免疫したマウス5匹中3匹(黒三角)は、平均9mm2の腫瘍を有し、免疫したマウス1匹(黒ダイヤ)は小さい3mm2の腫瘍を有し、1匹のマウス(黒逆三角)は、全く腫瘍を示さなかった。
従って、本開示により評価され得るように、本発明は、癌細胞が表面のマーカーとしての少なくともαフェトプロテイン分子の部分を有する場合、ヒトを含む哺乳動物における癌の予防および処置を包含する。予防および処置は、少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する免疫反応を引き起こすために、少なくともαフェトプロテインcDNAの部分を含む組成物を哺乳動物へ投与することにより達成される。
【0028】
3)細胞表面にαフェトプロテインを有する細胞へと遺伝子操作された樹状細胞(肝細胞癌細胞を含む)を用いる哺乳動物の免疫
マウスAFPαフェトプロテインcDNAを発現する、組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)を用いて形質導入した樹状細胞を用いる哺乳動物の免疫によって、肝細胞癌細胞での試行に対して部分的または完全に保護的である免疫応答がもたらされる。この効果を以下に示す。
第一に、マウスAFPを発現する組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)を、当業者に公知の技術に従って構築した。例えば、Ribas、A.、L.H.Butterfield、W.H.McBride、S.M.Jilani,L.A.Bui、C.M.Vollmer、R.Lau、V.B.Dissette、B.Hu、A.Y.Chen、J.A.Glaspy、およびJ.S.Economou、1997、Genetic immunization for the melanoma antigen MART-1/Melan-A using recombinant adenovirus-transduced murine dendritic cells.Cancer Res 57:2865;ならびにToloza,E.M.、K.Hunt、S.Swisher、W.McBride,.R.Lau、S.Pang、K.Rhoades、T.Drake.A.Belldegrun、J.Glaspy、およびJ.S.Economou.1996、In vivo cancer gene therapy with a recombinant interleukin-2 adenovirus vector,Cancer Gene Ther 3:11(これらは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。次いで、樹状細胞を、当業者に公知の技術に従って、GM−CSFおよびIL−4中で7日間分化させたC57BL/6骨髄から作製した。例えば、Ribas、A.、L.H.Butterfield、W.H.McBride、S.M.Jilani,L.A.Bui、C.M.Vollmer、R.Lau、V.B.Dissette、B.Hu、A.Y.Chen、J.A.Glaspy、およびJ.S.Economou、1997、Genetic immunization for the melanoma antigen MART-1/Melan-A using recombinant adenovirus-transduced murine dendritic cells.Cancer Res 57:2865;ならびにInaba,K、M.Inaba、N.Romani、H.Aya、M.Deguchi.S.Ikehara、S.Muramatsu、およびR.M.Steinman、1992、Generation of large numbers of dendritic cells from mouse bone marrow cultures supplemented with granulocyte/macrophagecolony-stimulating factor.J Exp Med 176:1693(これらは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0029】
ここで図9を参照すると、種々の感染多重度(MOI)でAdVmAFPを用いて形質導入したマウスDCから単離されたmRNAのRT−PCR分析が示されている。左から右へと読むと、レーン1はゲルサイズ標準を示す;レーン2は、ネガティブコントロールとして使用されたmAFPネガティブ細胞についての結果を示す;レーン3はネガティブコントロールとして使用されたマウス樹状細胞についての結果を示す;レーン4〜7は、それぞれ、10、100、1000、および5000のMOIのAdVmAFPを用いて形質導入したマウス樹状細胞についての結果を示す;レーン8は、ポジティブコントロールとして使用されたBWIC3細胞についての結果を示す(およそ1.9kbにおける上の最も目立つ線);ならびにレーン9は、PCR夾雑物についてのテンプレートなしコントロールとしての、二重蒸留水(DDW)についての結果を示す。理解され得るように、マウスAFPを発現する組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)は、樹状細胞に首尾よく形質導入された。
【0030】
次に、5匹のC57BL/6マウスの3つのグループを、2週間にわたって、AdVmAFP、RR5(空のE1欠損アデノウイルス)を用いて100のMOIで形質導入した樹状細胞、または非処理樹状細胞のいずれかを5×105で1週間あたり1回の静注を与えることによって調製した。マウスのこれらの3つのグループおよびコントロールとして供される注射していないマウスの1グループを、最後の注射後1週間で、7×105のEL4(AFP)で試行した。結果を図10に示す。理解され得るように、RRS(黒三角形)、または非処理樹状細胞(黒逆三角形)を注射したマウスのいずれも、コントロールマウス(黒丸)も腫瘍試行に対する保護を示さなかった。対照的に、AdVmAFPを100のMOIで形質導入した5×105樹状細胞を注射したマウス(黒四角)は、腫瘍試行に対して部分的な保護を示した。
さらに、5匹のマウスの別のグループを、2週間にわたって、AdVmAFPで100のMOIで形質導入した5×105樹状細胞の、1週間当たり1回の静注を与えることによって調製した。形質導入樹状細胞の最後の注射後1週間での4×106BWIC3腫瘍細胞での試行に対する、このグループの応答を、同様であるが注射していないコントロールマウスの1グループの応答と比較した。この試験の結果を図11に示す。理解され得るように、免疫したマウス(黒四角)は、コントロールマウス(黒丸)と比較して、腫瘍試行に対して有意な保護を示し、これは、形質導入した樹状細胞での処置の有効性を実証する。
【0031】
従って、本開示から理解され得るように、本発明は、哺乳動物(ヒトを含む)における癌を予防または処置する工程(ここで、癌細胞は、少なくとも、表面マーカーとしてαフェトプロテイン分子の部分を有する)を包含する。この予防または処置は、αフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入した免疫系細胞(例えば、樹状細胞)を含有する組成物を哺乳動物に投与することによって達成される。
【実施例】
【0032】
実施例I 哺乳動物における肝細胞癌の処置
本発明の1つの実施態様によれば、ヒトにおいて少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する免疫応答を生成することによってヒトにおいて肝細胞癌を処置するための方法が提供される。本方法は、本明細書中に開示された方法の一つと同様の方法、または対応する方法においてヒトを免疫する工程、あるいはヒトを遺伝子操作してαフェトプロテインに対する免疫応答を生成する工程を包含する。好ましい実施態様において、肝細胞癌を有するヒトを、少なくともヒトαフェトプロテイン分子(例えば、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、またはAFP49)の部分に対する免疫応答を生成するように免疫する。この免疫によって、ヒトの免疫系が、細胞表面にαフェトプロテイン分子のその部分を有する肝細胞癌細胞を攻撃することを引き起こす。
本発明は特定の好ましい実施態様を参照してかなり詳細に議論したが、他の実施態様も可能である。従って、添付の請求の範囲の精神および範囲は、本明細書中に含まれる好ましい実施態様の記載に制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ヒトAFP49ペプチドを用いて生成されたCTLの相対的細胞障害性を示す、棒グラフである。
【図2】ペプチド標的およびAFP標的の両方に対してアッセイした、正常なHLAA2.1ドナーからのペプチドパルスPBMCから生成されたCTLの標準的なクロム放出アッセイの標的に対する%特異的溶解を示す、棒グラフである。
【図3】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、BWIC3(mAFP陽性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図4】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(親)(非mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図5】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(AFP)(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図6】マウスAFP−Advシャトルベクターneo含有発現プラスミドを用いてプラスミドDNAで免疫したマウス(黒丸、下の黒四角、黒菱形)および免疫しなかったマウス(上の黒四角、逆向きの黒三角)について、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトしたFSA C3Hバックグラウンド線維肉腫細胞またはneo発現ベクターのみで安定にトランスフェクトしたFSA C3Hバックグラウンド線維肉腫細胞の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍直径のプロットである。
【図7】マウスAFP遺伝子を合成したプラスミドベクターで免疫したマウス(黒丸)および免疫しなかったマウス(黒四角)について、BWIC3の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍直径のプロットである。
【図8】マウスAFP遺伝子を合成したプラスミドベクターで免疫したマウス(黒三角、黒菱形、逆向き黒三角)および免疫しなかったマウス(黒丸および黒四角)について、BWIC3の腫瘍試行後の日数に対する平均肺腫直径のプロットである。
【図9】種々のコントロール(レーン2、3、8、および9)と比較した、種々の感染多重度(MOI)でAdVmAFPで形質導入されたマウスDCから単離されたmRNA(レーン4〜7)のRT−PCR分析である。
【図10】AdVmAFP形質導入樹状細胞で免疫したマウス(黒四角)、種々のコントロール物質で免疫したマウス(黒三角および逆向き黒三角)、および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(AFP)(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均肺腫容積のプロットである。
【図11】AdVmAFP形質導入樹状細胞で免疫したマウス(黒四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、BWIC3(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【背景技術】
【0001】
原発性肝癌は、世界中の癌による死の主要な原因である。肝細胞癌(HCC)は、一年あたり約120万の症例の発生数を有する、最も一般的な型の原発性肝癌である。世界のいくつかの地域(例えば、東南アジアおよび南アフリカ)では、肝細胞癌は、最も一般的な型の悪性疾患の1つである。この疾患の高い頻度は、これらの地域における肝炎の高い発生数に関連するようである。
肝細胞癌の治癒治療は、非転移性疾患を有する個体に現在制限されており、そして肝移植を伴うかまたは伴わない、腫瘍の外科的切除を伴う。しかし、外科的切除および移植でさえも、切除後の再発のために、大部分の腫瘍が治癒しない。治療に対する化学療法剤のアプローチは、今日まで、たいてい、無効であった。最近20年間は、肝細胞癌の処置に重大な進歩はなかった。
それゆえ、肝細胞癌の有効な処置についての必要性が依然として残っている。処置は、理想的には、この疾患の最大の発生数を有する、非先進国における使用に適切であるべきである。さらに、処置は、切除可能でない腫瘍および転移性疾患を有する個体における使用に適切であるべきである。
【非特許文献1】MORINAGA, T., et al., Primary structures of human α-fetoprotein and its mRNA. Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 80(15), PP.4604-4608 (1983)
【非特許文献2】佐藤一夫ら、α-fetoproteinに関する研究(VII)、日大医誌、43(10)、pp.835-842 (1984)
【非特許文献3】平井秀松、α-フェトプロテインによる肝癌の診断と治療、生物物理化学、28(6)、pp.333-341 (1984)
【非特許文献4】TAGA, H., THE EFFECT OF ACTIVE IMMUNIZATION OF RATS WITH HETEROLOGOUS α-FETOPROTEIN UPON HEPATOCARCINOGENESIS INDUCED BY 3'-METHYL-4-DIMETHYLAMINOBENZENE. Gann, 74, pp.248-257 (1983)
【特許文献1】特開平2−218694号公報
【特許文献2】国際公開第96/22787号パンフレット
【発明の開示】
【0002】
本発明の1つの実施態様によれば、ヒトを含む哺乳動物における、肝細胞癌のような癌を予防または処置するための方法が提供される。この方法は、哺乳動物において、少なくともαフェトプロテイン分子のアミノ酸配列の部分に対する免疫応答を生じる工程を含む。
免疫応答を生じる工程は、少なくともαフェトプロテインアミノ酸配列の部分を含むペプチドを含む少なくとも1つの組成物、または少なくとも1つのアミノ酸置換を有する少なくともαフェトプロテインアミノ酸配列の部分を含むペプチドを含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。また、免疫応答を生じる工程は、少なくともαフェトプロテイン分子のcDNA配列の部分を含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。さらに、免疫応答を生じる工程は、αフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入した免疫系の細胞を含む少なくとも1つの組成物を哺乳動物に投与する工程を含み得る。
本発明の別の実施態様によれば、癌を予防または処置するために、ヒトを免疫するための組成物が提供される。組成物は、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、AFP49、配列番号3および配列番号4からなる群より選択されるペプチドを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
本発明の1つの実施態様によって、癌がその表面上に少なくともαフェトプロテイン分子の部分を保有する哺乳動物(例えば、ヒト)において、少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する哺乳動物における免疫応答を生じさせることによって、癌(肝細胞癌を含む)を予防または処置するための方法が提供される。本方法は、癌を有する哺乳動物を免疫操作または遺伝子操作し、癌細胞の表面上に存在する少なくともαフェトプロテインの部分に対する免疫応答を生じさせる工程を包含する。次いで、罹患した哺乳動物の免疫系は、表面マーカーを保有する癌細胞を破壊させられ、それによって臨床的に癌を予防するか、または確立した癌を処置する。
ヒト肝細胞癌細胞の大部分は、ヒトαフェトプロテイン(hAFP)(609アミノ酸残基のタンパク質、配列番号2)を合成し、これは、通常、およそ誕生の時期までに胎児肝細胞によって産生される。肝細胞癌細胞は、その表面上に、少なくともαフェトプロテイン分子の部分を提示する傾向がある。肝細胞癌におけるαフェトプロテインの存在は、スクリーニングおよび診断目的のためのマーカーが使用されている。
【0004】
αフェトプロテインは、通常、免疫系の発達の間に存在するため、免疫系が、タンパク質に対して免疫学的に応答する能力を保持しないことが当然想定される。本発明の1つの局面は、哺乳動物の免疫系が、外来タンパク質としてのαフェトプロテインに応答するように、および外来細胞としての少なくともαフェトプロテイン分子の部分をその表面上に有する細胞に対して反応され得るという発見を含む。従って、この免疫応答を生じさせることは、哺乳動物免疫系を引き起こし、肝細胞癌細胞を破壊することによって、肝細胞癌を予防するため、および疾患を処置するために使用され得る。
本明細書中に開示されるように、αフェトプロテインに対する免疫は、以下を含む種々の手段によって達成され得る:少なくともαフェトプロテイン配列の部分に基づく合成ペプチドを含む、少なくともαフェトプロテイン配列の部分を含む合成ペプチド(しかし、置換または他の改変を含む)での免疫、少なくともαフェトプロテインのcDNA配列の部分での免疫(それによって、適切な免疫系細胞に対する少なくともαフェトプロテイン分子の部分の産生および提示を引き起こす)、遺伝子操作された抗原提示細胞の哺乳動物への導入、および少なくともαフェトプロテイン分子の部分の発現を引き起こすための、遺伝子治療用ウイルスベクターの使用。この免疫の目的は、αフェトプロテインペプチドに特異的なTリンパ球を活性化し、これらの表面マーカーを保有する細胞に対する免疫応答を引き起こすこと、および好ましくは、それによって細胞障害性Tリンパ球を活性化し、肝細胞癌細胞を破壊することである。
【0005】
1)ヒトにおいて免疫応答を生じさせる、ヒトαフェトプロテインペプチドの決定および生成
ヒトαフェトプロテイン分子のどの部分が、ヒトにおいて免疫応答を生じさせ得るかを決定するために、全ヒトαフェトプロテイン(hAFP)分子(配列番号2)由来の一連のペプチドを試験し、クラスI拘束ペプチドとして、それらが抗腫瘍応答を生じさせ得るか否か、および細胞障害性リンパ球(CTL)についての標的分子として作用し得るか否かを決定した。hAFP由来の潜在的な免疫原性ペプチドを、HLA A2.1クラスI結合グルーブ(groove)に対する潜在的な適合に基づいて選択した。HLAA2.1(世界保健機構(World Health Organization)特殊命名法における、HLA A*0201)は、コーカサス人において最もありふれた対立遺伝子であり、そしてまた他の民族においてよく分布していることから、HLA A2.1を選択した。決定を、以下のように行った。
【0006】
第1に、公開されたコンセンサス配列によって、HLA A2.1に潜在的に結合するhAFP(配列番号2)由来のペプチド配列を同定した。HLA A2.1は、長さが8〜10アミノ酸であるペプチド、しかし好ましくは9マー(mer)のペプチドに結合すると考えられている。アミノ酸のイソロイシン、ロイシン、およびメチオニンは、ペプチド2位における重要なアンカー残基であると考えられており、そしてアミノ酸のイソロイシン、ロイシン、およびバリンは、ペプチド長に依存して、ペプチド9位または10位における重要なアンカー残基であると考えられている。
HLA A2.1クラスI結合モチーフに適合した適切なペプチド配列を、University of Wisconsin Genetics Computer Group Program「find patterns」を用いて同定し、hAFP配列(配列番号2)をスクリーニングし、そして2つの強(strong)結合「アンカー」残基(それぞれ、9および10残基を有するペプチドについて、2位の残基および9位または10位の残基)を含む、9および10マーのペプチド(「強(strong)」ペプチドと命名する);1つのみの強結合(strong binding)アンカー残基を含む、9および10マーのペプチド(「中間(intermediate)」ペプチドと命名する):または強結合アンカー残基を含まないが、他のポジティブな結合残基を含む、9および10マーのペプチド(「弱(weak)」ペプチドと命名する)を同定した。結合を破壊すると考えられる残基を1つより多く含むペプチド配列を、除去した。
【0007】
スクリーニング研究によって、HLA A2.1クラスI結合モチーフに潜在的に結合する、全部で72のペプチド配列を同定したが、これらの配列のうちの6つをさらなる考慮から除外した。なぜなら、この6つの配列は、それらの高疎水性に起因して合成が困難であったからである。残りの66個のペプチド配列を、当業者に公知の技術によるChiron Mimetopes(Victoria,Australia)によって試験するために合成した。これらは、10個の「強」ペプチド配列、43個の「中間」ペプチド配列、および13個の「弱」ペプチド配列を含んだ。ここで表Iに言及するように、ペプチド命名番号、hAFP配列(配列番号2、ペプチド配列によって示される)の残基、および66個のペプチド配列の各々についてペプチドが含むアミノ酸を示す。ペプチド命名番号は、Chironからのペプチドの受領書の順番に基づき、従ってhAFP分子(配列番号2)のアミノ酸配列に関して非連続的である。
【0008】
表I ヒトAFPペプチド配列
【0009】
次に、66個のペプチドの各々を、濃度依存方法でHLA A2.1に結合する能力、およびそれによって以下のようなT2細胞安定化アッセイにおいてHLA A2.1を安定化する能力について試験した。各ペプチドを、TAP1およびTAP2欠失T2細胞とともに一晩インキュベートした。このT2細胞は、前日の晩に室温でインキュベートし、細胞表面MHCクラスI分子の発現を増加させていた。各ペプチドを、0.1μM〜100μMのペプチド濃度の範囲にわたって、HLA A2.1分子を結合する能力について試験した。T2細胞株において、8〜10マーのペプチドで満たされるMHC分子のみが、細胞表面上で安定である。HLA A2.1の安定性を、抗HLA A2抗体BB7.2(ATCC)およびヤギ抗マウスFITCで染色した後にフローサイトメトリーによってアッセイした。結合についてのポジティブコントロールとして、FLUマトリクスペプチド(FLUマトリクス1タンパク質の残基58〜66(GILGFVFTL))およびMART−1ペプチド(全タンパク質についてGenBank登録番号U06452の、MART−1の残基27〜35(AAGIGILTV))を使用した。FLUマトリクスペプチドは、0.5μMの濃度にて、T2細胞上でA2.1分子を一貫して安定化していた。
ここで、表IIに言及するように、66個のhAFPペプチドのうちの22個のリストを示す。第1欄はペプチド命名番号を列挙し、第2欄はhAFP配列(配列番号2、ペプチド配列によって示される)の残基を同定し、そして第3欄は配列内のアンカー残基の数を同定する。
表IIの第4列は、T2細胞へHLA2.1が結合することが要求されるペプチドの最小濃度を示す。見られ得るように、10の「強い(strong)」ペプチド配列のうちの6つおよび43の「中間(intermediate)」ペプチド配列のうちの7つはHLA2.1への結合能力を示した。さらに、13の「弱い(weak)」ペプチド配列のうちの9つはHLA2.1への結合能力を示した。
【0010】
さらに、各々の66のペプチドもまた、EBVリンパ芽球腫細胞オフ(off)速度論アッセイにおいて、経時的に、クラスI分子からのそれらの解離速度について試験した。なぜなら、クラスI分子に結合したペプチドの解離速度であるオフ速度論が、このペプチドの免疫原性の重要な予測であることが見い出されているからである。例えば、ウイルスペプチドHPV 16 E7、EBV LMP2、FLU M1、およびHIV polのような非自己結合ペプチドについて、最も遅いオフ速度論を示している最も強い結合ペプチドが最も免疫原性であることが見い出されている。さらに、gp100、MART−1のようなメラノーマ抗原由来の免疫原性エピトープである多くの公知の自己タンパク質は、1つのアンカー残基を有し、そして可溶性クラスI再構成アッセイによって安定性の少ない結合親和性を有するが、非常に遅いオフ速度論を有することが見い出されている。例えば、Bakker,A.B.ら、Analogues of CTL epitopes with improved MHC class binding capacity elicit anti-melanoma CTL recognizing the wild-type epitope.Int J Cancer,1977.70(3):p.302-9;およびvan der Burg,S.H.ら、Do epitopes derived from autoantigens display low affinity for MHC class I?(letter).Immunol Today,1997.1892):p.97-98;(各々は、それらの全体において参考として本明細書中で援用される)を参照のこと。
【0011】
表II ヒトAFPペプチド配列および結合特性
【0012】
EBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイを、van der Burg,S.H.ら、Immunogenicity of peptides bound to MHC class I molecules depends on the MHC-peptide complex stability.J.Immunology,1996.156(9):p.3308-3314(これはその全体において本明細書中で参考として援用される)中に開示されるように実施した。簡単に言うと、HLA A2.1 EBVリンパ芽球腫細胞を、MHC分子を不安定にする穏やかなpH3.2酸性緩衝液中で、表面クラスIペプチドおよびβ2ミクログロブリンが剥離した。各々のペプチドを、β2ミクログロブリンの存在下で1時間、過剰な200μMで剥離された細胞上にて直接パルスした。次いで、過剰な非結合ペプチドを洗浄除去し、そして続けて細胞を37℃で0、2、4、および6時間インキュベートした。細胞を各時点の終わりに洗浄し、そしてBB7.2抗体でHLA A2について染色した。平均蛍光強度は剥離されたが、ペプチドでパルスされなかった細胞から少なくとも1.5倍増加する場合、ペプチドクラスI複合体を安定であるとした。
T2細胞安定化アッセイおよびEBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイの両方を少なくとも2回、各々のペプチドについて実施した。表IIを再度参照すると、第5列は、EBVリンパ芽球腫細胞におけるペプチド安定性の時間を示す。見られ得るように、わずか3つの強いペプチド(AFP5、AFP14およびAFP22)、43の中間ペプチドのうちの12(AFP49を含む)および弱いペプチドの1つが遅いオフ速度論のレベルを示した。T2細胞安定化アッセイおよびEBVリンパ芽球腫細胞オフ速度論アッセイの両方を考慮すると、両方のアッセイにおいて最も良い結果を提供する7つのペプチド配列は、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP28、AFP38、およびAFP45であった。
【0013】
次に、表IIIの第1列に記載されるペプチドを、次いで、Plebanski,M.ら、Induction of peptide-specific primary cytotoxic T lymphocyte responses from human peripheral blood.Eur J.Immunol.1995.25(6):p.1783-7で開示される方法によってインビトロにおいてペプチド特異的CTLを産生するために用いた。そしてCTLをA2.1陽性、AFP陽性肝細胞癌細胞を溶解するそれらの能力について試験した。溶解は、ペプチドがヒトAFPの天然にプロセスされる免疫原性エピトープであり、そして強力な標的抗原であることを示唆する。HLA A2.1ドナーおよび細胞株をBB7.2(HLA A2)抗体(ATCC)でスクリーニングし、そして当業者に公知の技術により、PCR、およびUCLA Tissue Typing Laboratory(当業者に公知の技術に従って)による直接的配列分析によって、確認およびサブタイプ化した。
簡単にいうと、ペプチド特異的CTLは、以下のような表III AFPペプチドに記載されるペプチドヘ生じた。正常なA2.1ドナー由来の2×107末梢血単核細胞(PBMC)をFicoll勾配により精製した。これらのPBMCを、37℃で90分間、1mlの無血清培地中で50μg/mlペプチドでパルスした。次いで細胞を一度リンスし、そしてRPMI10%自己血清中のIL−7(10ng/ml)およびKLH(4.5μg/ml)とともに、0日にウェルあたり1.5mlの10%自己血清RPMI培地中、3×106PBMCで24ウェルプレートに配置した。CTLを非接着細胞を除去することにより、ならびにそれを、新鮮な、ペプチドパルス、洗浄、および照射したPBMCに、1:1のPBMC対CTL比で加えることによって、毎週再剌激した。IL−2を10ユニット/mlで毎週2回、加えた。
【0014】
表III ヒトAFPペプチド細胞障害性
【0015】
培養の3週間後、推定のhAFPペプチド産生CTLを、標準の4時間51Cr放出アッセイにおいて細胞障害性について試験した。CTLを、CTLを産生するために使用した特異的hAFPペプチドでパルスしたT2細胞に対してペプチド特異的な殺傷について試験し、そしてFLUマトリックスペプチドまたはコントロールであるMART−1ペプチドでパルスしたT2細胞と比較した。非特異的NK殺傷を、NK感受性標的K562で評価した。CTLをまた、HLA A2.1陽性、AFP陽性ヒト肝細胞癌細胞株であるHepG2に対して試験した。
ここで、表IIIを参照すると、陽性ペプチド細胞障害性結果を提供した正常ドナー由来のCTLを産生するために使用された12のAFPペプチド配列についての試験の細胞障害性結果が示される。第2列は、大容量のリンパ球培養物のCD4/CD8表現型を示す。第3列および第4列はそれぞれ、ペプチドパルスしたT2細胞およびHepG2標的に対して、エフェクター(CTL)対標的の比(E:T)を有する細胞障害性のレベルを示す。
表IIIに見られ得るように、ペプチドAFP22、AFP39、AFP45、AFP49は、高レベルのAFP+HepG2細胞、HLA A2.1+HepG2細胞の特異的殺傷を証明した。AFP22およびAFP49は4つのアミノ酸の重複(hAFP配列番号2の残基547〜550)を有することが留意され得る。さらにAFP22は、AFP23と2つのアミノ酸の重複(AFP23を有する配列番号2の残基555〜556)を有し、最低限のHepG2殺傷を示した。
AFP49を使用して生成したCTLを試験して、そしてHepG2細胞障害性を維持した。さらに新しいAFP49ペプチド産生CTL培養物を、2つの異なる正常なHLA A2.1ドナーを使用して作製した。さらなる標的を、AFP49を使用して観測された細胞障害性がAFP抗原特異的でありそしてクラスI制限化であることを確認するために使用した。
【0016】
ここで図1を参照して、これらの試験の代表的なデータを示す。第1に、観測された細胞障害性がクラスI制限化であることを確認するために、抗β2ミクログロブリン抗体をHepG2細胞へのCTL−T細胞レセプターの相互作用をブロックするために使用した。これは、HepG2溶解物において有意な減少を生じた。次に、非特異的NK/LAK殺傷を除くために、40倍過剰の非標識(コールド)K562細胞を加えた。これは、HepG2溶解物において有意な減少を生じなかった。さらに、MIICクラスI発現が、γIFN(50ユニット/ml)との一晩のインキュベーションによって、HepG2細胞においてアップレギュレートされた。見られ得るように、MHCクラスI発現アップレギュレーションは、HepG2溶解物を増加した。また、AFP+、HLA A2.1+陰性肝細胞癌細胞株、Hep3B、つまりクラスIミスマッチ化肝細胞癌細胞株もまた、標的として用いた。AFP49 CTLは、非常に低いレベルでこれらのHep3B標的を溶解した。この少量の観測されたHep3B溶解物を、コールドK562細胞を加えた場合のHepG2の特異的殺傷の保持とは対照的に、過剰のコールドK562細胞を加えることによって取り除いた。
【0017】
ここで、図2に言及すると、ペプチド標的およびAFP標的の両方に対してアッセイされた正常HLA A2.1ドナー由来のぺプチドパルスされたPBMCから作成したCTLの標準クロム放出アッセイについての標的に対する特異的溶解のパーセントの棒グラフが示される。CTLのペプチド特異性を確認するために、それぞれの培養物を、CTL培養物が作製される特異的ペプチドでパルスされたT2細胞に対して試験し(最も左の棒)、そして異なるHLA A2.1結合ペプチドでパルスされたT2細胞(コントロールとして)と比較した(左から2番目の群の棒)。理解され得るように、AFP49ペプチド培養物、AFP49V9ペプチド培養物、AFP5ペプチド培養物およびコントロールのFLUマトリックスペプチド培養物の全てが、特異的ペプチドでパルスされたT2細胞の溶解によるペプチド特異性を示したが、異なるペプチドでパルスされたT2細胞に対してはペプチド特異性を示さなかった。
再度、図2に言及すると、これらのペプチド特異的CTL培養物のそれぞれをまた、AdVhAFPまたはコントロールのAdVRR5のどちらかで形質導入されたM202(HLAA2.1+/AFP−)メラノーマ細胞の死滅について試験した。AFPペプチドのAFP5およびAFP49、ならびにAFP49の9位に単一のアミノ酸置換を有するペプチドAFP49L9(配列番号3(GVALQTMKL))およびペプチドAFP49V9(配列番号4(GVALQTMKV))のペプチド特異的CTL培養物のそれぞれは、コントロールのRR5で形質導入されたM202細胞の死滅よりもAdVhAFPで形質導入されたM202細胞に有意に多い死滅を示す。FLUペプチド特異的CTL培養物は、M202/AdVhAFPおよぴ4202/RR5の両方を同様の細胞障害性バックグランドレベルで殺傷した。
【0018】
M202細胞は正確にプロセッシングすることが公知であり、HLA A2.1制限免疫優性MART−1ペプチドを提示する。従って、これらは、AdVhAFPで形質導入され、そしてAFP由来の正確なHLA A2.1制限エピトープがプロセッシングされ、表面に提示されることを期待するのに理想的な細胞株である。ゆえに、この実験は、AFP5、AFP49、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)が、天然にプロセッシングされ、そしてAFP+腫瘍を殺傷するCTLを標的化するために使用され得るペプチドを提示することを示す。さらに、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)に見られるように、ペプチド特異的CTL培養物は、AFP49ペプチド特異的CTL培養物よりさらにより効果的にM202/AdVhAFPを殺傷し、従って、AFP49L9(配列番号3)およびAFP49V9(配列番号4)は、AFP+細胞に対する免疫応答の標的化のための改善されたぺプチドである。
【0019】
従って、この開示から理解され得るように、本発明はヒトを含む哺乳動物における癌の予防または処置を包含する。ここで、癌細胞は、表面マーカーとして少なくともαフェトプロテイン分子の部分を保有する。予防または処置は、少なくともαフェトプロテイン分子の部分を含むペプチドまたは少なくともαフェトプロテイン分子の部分の置換もしくは他の変化により生成されるペプチドを含む組成物を哺乳動物に投与することにより達成される。これらのペプチドには、AFP5、AFP7、AFP13、AFPl4、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、AFP49、AFP49L9(配列番号3)、およびAFP49V9(配列番号4)が挙げられる。
【0020】
2)その表面にαフェトプロテインを保有する細胞(肝細胞性癌細胞を含む)に対する免疫応答の生成のためのαフェトプロテインcDNAを用いる哺乳動物の免疫
αフェトプロテインcDNAを用いる哺乳動物の免疫は、その表面にαフェトプロテインを保有する腫瘍細胞(肝細胞性癌細胞を含む)を用いる試行に対して部分的または完全に保護的である免疫応答を生成する。この効果を以下のように実証した:
ヒトαフェトプロテインcDNAは以下のように作製した。最初に、ヒトαフェトプロテインcDNAを、Trlzol法(LlfeTechnologles,Galthersburg,MD、製造者らの指示に従う)により、そしてRNAzolB法(TelTest,Frlendswood,TX)によって、Hep3B細胞(ATCCから入手可能)から作製された総RNAからPCR技術により生成した。およそ1μgの総RNAを、Perkin Elmer RT−PCRキットおよび公開された配列に基づいたAFP特異的プライマーを用いるRT−PCR反応において使用した。5’プライマーは、5’GCA ACC ATG AAG TGG GTであった。3’プライマーは、5’AAC TCC CAA AGC AGC ACG AGTであった。プライマーは、プライマーに取り込まれた制限エンドヌクレアーゼ部位XbaIを有するコード領域全体(ATG〜停止コドン)、およびPCR後の酵素切断を容易にする6塩基(CTC TCT)を有する終末を含んだ。プライマー配列は、Operon Technologiesにより合成された(50nMスケール、未精製)。
【0021】
上記で作製されたヒトαフェトプロテインのPCR cDNA産物を、アガロースゲル上で分析し、そのサイズをチェックした。正確なサイズの産物を、Qiagen PCR-quick clean-upカラムで精製し、XbaI酵素で消化してその部位をプライマー中に設計し、そして当業者に公知の技術に従って、pRcCMV(ヒト用)またはpCR3.1(マウス用)哺乳動物発現ベクター(Invitorogen,Carlsbad,CA)のいずれかでクローニング反応において使用した。陽性プラスミドを、ミニプレップ分析により同定した。これらの陽性プラスミドを、マキシプレップし、そしてアリコートをUCLAでDNA配列決定の中心の施設(DNA sequencing core facility)により配列決定して、挿入物の配列同一性を確認した。配列データは1つの鎖についてのみであり、AFP挿入物の同一性が確認された。従って、クローニングされたヒトAFP cDNAは、公開されたヒトAFP配列(GenBank受託番号J00077、J00076、V01514、塩基48〜1877(配列番号1))に対して同一であった。
マウスAFP cDNA(mAFP cDNA)を、ヒトAFP cDNAをクローニングするために使用される上記に開示の方法に対応する方法(ただしマウス特異的プライマーを使用)を用いて、クローニングした。5’マウス特異的プライマーは、5’GCC ATG AAG TGG ATC ACAであった。3’マウス特異的プライマーは、TTA AAC GCC CAA AGC ATC Aであった。総RNA単離のために使用されたマウスAFP陽性細胞株は、Hepa16であった。本明細書中に開示される安定なトランスフェクタントおよび筋肉内注射実験の全てを、シグナル配列を含むcDNAクローンを用いて行った。
【0022】
次いで、mAFP cDNAを、真核細胞発現ベクターVR1012(Vical,Inc.,San Diego,CA)に配置した。VR1012発現ベクターは、増強された発現のためのイントロンを含む強い構成性のCMV最初期のプロモーター/エンハンサー、BGH終結およびインビボ発現のためのポリA配列を含む。
C57BL/6マウスにmAFP cDNAを含むVR1002またはコントロールとして生理食塩水100μgの注射を1週間に1回、3週間与えた。最後の注射の1週間後、VR1002mAFP cDNA免疫化マウスおよび非免疫化のコントロールマウス群の両方を、同系のマウスにおいて次第に増殖する腫瘍の単一の細胞懸濁液から得られた4×106個のBWIC3肝細胞性癌細胞(生細胞)で試行した。BWIC3は、mAFP陽性マウス細胞株である。
図3を参照すると、免疫した動物(白四角)は、コントロール動物(黒四角)に比べ、遅延した腫瘍の増殖あるいは完全な保護を示すことが理解され得る。これらの知見は、数度繰り返された。対応する実験において、MART−1メラノーマ抗原を発現するプラスミドベクターの筋肉内注入は、BWIC3肝細胞の癌細胞試行から動物を保護しなかった(データは示さず)。
【0023】
別の1群の実験において、代用物としてのマウス肝細胞癌株は、mAFP cDNAによるEL4(H−2b)リンパ種の安定なトランスフェクションにより構築された。腫瘍株EL4(mAFP)は、親EL4細胞株と同様のインビボ増殖速度論を有していた。RT−PCRを用いたところ、EL4(mAFP)腫瘍細胞株は、BWIC3肝細胞の癌細胞株の1%以下のレベルのAFPを産生するように思われた。
C57BL/6マウスに、mAFP cDNAまたはコントロールとしての生理食塩水を含む100μg VR102lを、週1回、3週間の間、筋肉内注入した。最後の注入の1週間後、VR1012 mAFP cDNAにより免疫化マウスおよび非免疫化コントロールの群の両方を、7.5×105の生存可能なEL4(親)あるいはEL4(mAFP)細胞で試行(challenge)した。
図4を参照すると、免疫した動物細胞(白四角)およびコントロール動物(黒丸)は、EL4(親)細胞による試行の場合、差異を示さない(p=0.07,スチューデントのT検定)ことが理解され得る。しかし、図5に見られるように、免疫した動物(白四角)は、EL4(mAFP)細胞による試行の場合、コントロール動物(黒丸)と比較して、部分的な保護を示した(p=0.07,スチューデントのT検定)。これらの知見はまた、数度繰り返された。
【0024】
さらなる一連の実験において、αフェトプロテインを表面に有する細胞での試行に対する保護は、安定にトランスフェクトされたマウス線維肉腫細胞株を代用物として用いることにより示された。第一に、安定にトランスフェクトされたマウス線維肉腫細胞株は、DOTAPリポフェクション法(Boehringer Mannheim、製造者の指示に従う)またはCaPO4沈殿法(当業者に周知である技法に従う)のいずれかにより産生された。要約すると、DOTAPリポフェクション法は、前日の夜にオーバーナイトで接着させた、6ウェルプレートでウェルあたり1×105の細胞を用いる。2.5μgのプラスミド(マウスのAFP pCR3.1)を25μlの20mM Hepesおよび50μlのHepes中の15μlの脂質を室温で15分間混合する。この溶液を、1mlの培養培地(10%ウシ胎仔血清および抗生物質を含むRPMI1640)中に希釈し、そしてウェル中の細胞に加える。4〜6時間後、溶液を2mlの新たな培養培地で交換する。48〜72時間後、500μg/ml(総濃度、75%活性)のG418(ジェネティシン(geneticin))により、選択を始めた。2〜3週間の選択の後、任意の潜在的なトランスフェクタントを、RT−PCRによりマウスAFP RNAおよびneo−RNAの発現について試験し、マウスAPRT遺伝子発現で半定量した。
哺乳動物におけるAFP免疫の腫瘍産生を防止する効果を以下のように示した。マウスAFP−pCR3.1プラスミドおよびマウスAFP−AdVシャトルベクタープラスミド(pAC CMVpLpA)は、当業者に公知である技法に従い調製し、そしてマウスAFP−VicalベクターVR102lを構築した。マウス線維肉腫細胞株FSA,NFSA,MCAKおよびSVECを、上記mAFP PCR3.1により安定にトランスフェクトした。
【0025】
Qiagenプラスミドプレップキット(50μl PBS中に50μgのプラスミド)によりエンドトキシンを含まずに調製した、neo−含有発現プラスミドであるマウスAFP−AdVシャトルベクターを用い、C3Hマウスを、プラスミドDNAで3週間、毎週筋肉内注射することにより免疫した。次に、C3Hマウスを、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンド(background)の線維肉肺細胞で、あるいはneo発現ベクターのみで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉肺細胞で試行し、AFP抗自己抗原反応が発生するか、あるいはネオマイシンを発現する安定なトランスフェクタントを用いることにより、AFP応答を遮蔽する抗neo(非自己抗原)反応を引き起こすか否か判定した。肺瘍細胞はインビボで継代され、そして単一の細胞懸濁液を腫瘍試行に用いた。
図6を参照すると、腫瘍後18日目の試行までに、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行した免疫したCH3マウス(下部の黒四角)のうち、1つのみが何らかの腫瘍の増殖(3mm×3mmの腫瘍)を示し、その一方で、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行した残り4匹の免疫したCH3マウス(黒丸)は、全く腫瘍の増殖の徴候を示さなかったことが理解され得る。対照的に、5匹中2匹のAFP発現ベクターで安定にトランスフェクトされたFSA C3Hバックグラウンドの線維肉腫細胞で試行(challenge)した非免疫化C3Hマウス(上部の黒四角)は、何らかの腫瘍の増殖を示した(平均6.8mm2)。FSA親腫瘍細胞およびneo−ベクター−FSA(neo-vector-FSA)細胞は、免疫化(黒ダイヤ)および非免疫化(黒逆三角)CH3マウスの両方で、同様に増殖する。このプロトコールは繰り返され、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0026】
第2の実験は、Jackson Labs(Bar Harbor Marine)からのC57L/J(「リーデン(leaden)」)マウスを用い行われた。これらのマウスは、ネオマイシンを含有しないVical(VR1021)由来のプラスミドベクターで免疫し、従って、マウスAFP遺伝子のみを合成する。C57L/Jマウスは、同系のマウス腫瘍細胞株(ATCCからのBWIC3)で試行した。これらBWIC3細胞は、上記のように産生された安定にトランスフェクションしたマウス線維肉腫細胞よりも、かなり高いレベルでマウスAFPを合成した。
C57L/Jマウスを、上記のとおり、mAFP−Vicalベクターを用いて免疫し、そしてマウスあたり1×106のBWIC3細胞による腫瘍試行は、皮下に行われた。図7を参照すると、14日後の腫瘍試行で、非免疫化C57L/Jマウス(黒四角)は、免疫化C57L/Jマウス(黒丸)の腫瘍よりも、平均2倍の大きさの腫瘍を有することが理解され得る。
【0027】
第3の実験で、さらなるC57L/Jマウスを、マウスAFP遺伝子のみを合成するプラスミドベクター(VR1021)で免疫し、上記のとおりl×106のBWIC3細胞で試行した。図8を参照すると、試行後17日までに、全ての5匹の非免疫化(黒丸および黒四角)マウスは、平均の直径11.4mm2の腫瘍を有することが埋解され得る。対照的に、mAFP−Vicalで免疫したマウス5匹中3匹(黒三角)は、平均9mm2の腫瘍を有し、免疫したマウス1匹(黒ダイヤ)は小さい3mm2の腫瘍を有し、1匹のマウス(黒逆三角)は、全く腫瘍を示さなかった。
従って、本開示により評価され得るように、本発明は、癌細胞が表面のマーカーとしての少なくともαフェトプロテイン分子の部分を有する場合、ヒトを含む哺乳動物における癌の予防および処置を包含する。予防および処置は、少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する免疫反応を引き起こすために、少なくともαフェトプロテインcDNAの部分を含む組成物を哺乳動物へ投与することにより達成される。
【0028】
3)細胞表面にαフェトプロテインを有する細胞へと遺伝子操作された樹状細胞(肝細胞癌細胞を含む)を用いる哺乳動物の免疫
マウスAFPαフェトプロテインcDNAを発現する、組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)を用いて形質導入した樹状細胞を用いる哺乳動物の免疫によって、肝細胞癌細胞での試行に対して部分的または完全に保護的である免疫応答がもたらされる。この効果を以下に示す。
第一に、マウスAFPを発現する組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)を、当業者に公知の技術に従って構築した。例えば、Ribas、A.、L.H.Butterfield、W.H.McBride、S.M.Jilani,L.A.Bui、C.M.Vollmer、R.Lau、V.B.Dissette、B.Hu、A.Y.Chen、J.A.Glaspy、およびJ.S.Economou、1997、Genetic immunization for the melanoma antigen MART-1/Melan-A using recombinant adenovirus-transduced murine dendritic cells.Cancer Res 57:2865;ならびにToloza,E.M.、K.Hunt、S.Swisher、W.McBride,.R.Lau、S.Pang、K.Rhoades、T.Drake.A.Belldegrun、J.Glaspy、およびJ.S.Economou.1996、In vivo cancer gene therapy with a recombinant interleukin-2 adenovirus vector,Cancer Gene Ther 3:11(これらは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。次いで、樹状細胞を、当業者に公知の技術に従って、GM−CSFおよびIL−4中で7日間分化させたC57BL/6骨髄から作製した。例えば、Ribas、A.、L.H.Butterfield、W.H.McBride、S.M.Jilani,L.A.Bui、C.M.Vollmer、R.Lau、V.B.Dissette、B.Hu、A.Y.Chen、J.A.Glaspy、およびJ.S.Economou、1997、Genetic immunization for the melanoma antigen MART-1/Melan-A using recombinant adenovirus-transduced murine dendritic cells.Cancer Res 57:2865;ならびにInaba,K、M.Inaba、N.Romani、H.Aya、M.Deguchi.S.Ikehara、S.Muramatsu、およびR.M.Steinman、1992、Generation of large numbers of dendritic cells from mouse bone marrow cultures supplemented with granulocyte/macrophagecolony-stimulating factor.J Exp Med 176:1693(これらは、その全体が本明細書中で参考として援用される)を参照のこと。
【0029】
ここで図9を参照すると、種々の感染多重度(MOI)でAdVmAFPを用いて形質導入したマウスDCから単離されたmRNAのRT−PCR分析が示されている。左から右へと読むと、レーン1はゲルサイズ標準を示す;レーン2は、ネガティブコントロールとして使用されたmAFPネガティブ細胞についての結果を示す;レーン3はネガティブコントロールとして使用されたマウス樹状細胞についての結果を示す;レーン4〜7は、それぞれ、10、100、1000、および5000のMOIのAdVmAFPを用いて形質導入したマウス樹状細胞についての結果を示す;レーン8は、ポジティブコントロールとして使用されたBWIC3細胞についての結果を示す(およそ1.9kbにおける上の最も目立つ線);ならびにレーン9は、PCR夾雑物についてのテンプレートなしコントロールとしての、二重蒸留水(DDW)についての結果を示す。理解され得るように、マウスAFPを発現する組換えアデノウイルスベクター(AdVmAFP)は、樹状細胞に首尾よく形質導入された。
【0030】
次に、5匹のC57BL/6マウスの3つのグループを、2週間にわたって、AdVmAFP、RR5(空のE1欠損アデノウイルス)を用いて100のMOIで形質導入した樹状細胞、または非処理樹状細胞のいずれかを5×105で1週間あたり1回の静注を与えることによって調製した。マウスのこれらの3つのグループおよびコントロールとして供される注射していないマウスの1グループを、最後の注射後1週間で、7×105のEL4(AFP)で試行した。結果を図10に示す。理解され得るように、RRS(黒三角形)、または非処理樹状細胞(黒逆三角形)を注射したマウスのいずれも、コントロールマウス(黒丸)も腫瘍試行に対する保護を示さなかった。対照的に、AdVmAFPを100のMOIで形質導入した5×105樹状細胞を注射したマウス(黒四角)は、腫瘍試行に対して部分的な保護を示した。
さらに、5匹のマウスの別のグループを、2週間にわたって、AdVmAFPで100のMOIで形質導入した5×105樹状細胞の、1週間当たり1回の静注を与えることによって調製した。形質導入樹状細胞の最後の注射後1週間での4×106BWIC3腫瘍細胞での試行に対する、このグループの応答を、同様であるが注射していないコントロールマウスの1グループの応答と比較した。この試験の結果を図11に示す。理解され得るように、免疫したマウス(黒四角)は、コントロールマウス(黒丸)と比較して、腫瘍試行に対して有意な保護を示し、これは、形質導入した樹状細胞での処置の有効性を実証する。
【0031】
従って、本開示から理解され得るように、本発明は、哺乳動物(ヒトを含む)における癌を予防または処置する工程(ここで、癌細胞は、少なくとも、表面マーカーとしてαフェトプロテイン分子の部分を有する)を包含する。この予防または処置は、αフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入した免疫系細胞(例えば、樹状細胞)を含有する組成物を哺乳動物に投与することによって達成される。
【実施例】
【0032】
実施例I 哺乳動物における肝細胞癌の処置
本発明の1つの実施態様によれば、ヒトにおいて少なくともαフェトプロテイン分子の部分に対する免疫応答を生成することによってヒトにおいて肝細胞癌を処置するための方法が提供される。本方法は、本明細書中に開示された方法の一つと同様の方法、または対応する方法においてヒトを免疫する工程、あるいはヒトを遺伝子操作してαフェトプロテインに対する免疫応答を生成する工程を包含する。好ましい実施態様において、肝細胞癌を有するヒトを、少なくともヒトαフェトプロテイン分子(例えば、AFP5、AFP7、AFP13、AFP14、AFP18、AFP22、AFP23、AFP28、AFP38、AFP39、AFP45、またはAFP49)の部分に対する免疫応答を生成するように免疫する。この免疫によって、ヒトの免疫系が、細胞表面にαフェトプロテイン分子のその部分を有する肝細胞癌細胞を攻撃することを引き起こす。
本発明は特定の好ましい実施態様を参照してかなり詳細に議論したが、他の実施態様も可能である。従って、添付の請求の範囲の精神および範囲は、本明細書中に含まれる好ましい実施態様の記載に制限されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ヒトAFP49ペプチドを用いて生成されたCTLの相対的細胞障害性を示す、棒グラフである。
【図2】ペプチド標的およびAFP標的の両方に対してアッセイした、正常なHLAA2.1ドナーからのペプチドパルスPBMCから生成されたCTLの標準的なクロム放出アッセイの標的に対する%特異的溶解を示す、棒グラフである。
【図3】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、BWIC3(mAFP陽性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図4】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(親)(非mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図5】マウスAFP cDNAで免疫したマウス(白四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(AFP)(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【図6】マウスAFP−Advシャトルベクターneo含有発現プラスミドを用いてプラスミドDNAで免疫したマウス(黒丸、下の黒四角、黒菱形)および免疫しなかったマウス(上の黒四角、逆向きの黒三角)について、AFP発現ベクターで安定にトランスフェクトしたFSA C3Hバックグラウンド線維肉腫細胞またはneo発現ベクターのみで安定にトランスフェクトしたFSA C3Hバックグラウンド線維肉腫細胞の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍直径のプロットである。
【図7】マウスAFP遺伝子を合成したプラスミドベクターで免疫したマウス(黒丸)および免疫しなかったマウス(黒四角)について、BWIC3の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍直径のプロットである。
【図8】マウスAFP遺伝子を合成したプラスミドベクターで免疫したマウス(黒三角、黒菱形、逆向き黒三角)および免疫しなかったマウス(黒丸および黒四角)について、BWIC3の腫瘍試行後の日数に対する平均肺腫直径のプロットである。
【図9】種々のコントロール(レーン2、3、8、および9)と比較した、種々の感染多重度(MOI)でAdVmAFPで形質導入されたマウスDCから単離されたmRNA(レーン4〜7)のRT−PCR分析である。
【図10】AdVmAFP形質導入樹状細胞で免疫したマウス(黒四角)、種々のコントロール物質で免疫したマウス(黒三角および逆向き黒三角)、および免疫しなかったマウス(黒丸)について、EL4(AFP)(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均肺腫容積のプロットである。
【図11】AdVmAFP形質導入樹状細胞で免疫したマウス(黒四角)および免疫しなかったマウス(黒丸)について、BWIC3(mAFP産生性マウス腫瘍細胞株)の腫瘍試行後の日数に対する平均腫瘍容積のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳動物において免疫応答を生成することによって該哺乳動物における癌を予防または処置するための組成物であって、該組成物は、配列番号1の核酸配列からなるαフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入された免疫系細胞を含み、ここで該免疫応答は、αフェトプロテインペプチド特異的Tリンパ球を活性化して、これらの表面マーカーを保有する癌細胞に対して該免疫応答を生成する、組成物。
【請求項2】
前記免疫系細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌が肝細胞癌である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1ないし3のいずれか一に記載の組成物。
【請求項1】
哺乳動物において免疫応答を生成することによって該哺乳動物における癌を予防または処置するための組成物であって、該組成物は、配列番号1の核酸配列からなるαフェトプロテインcDNAを発現する組換えベクターで形質導入された免疫系細胞を含み、ここで該免疫応答は、αフェトプロテインペプチド特異的Tリンパ球を活性化して、これらの表面マーカーを保有する癌細胞に対して該免疫応答を生成する、組成物。
【請求項2】
前記免疫系細胞が樹状細胞である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記癌が肝細胞癌である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1ないし3のいずれか一に記載の組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−222379(P2010−222379A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150627(P2010−150627)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2006−38626(P2006−38626)の分割
【原出願日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2006−38626(P2006−38626)の分割
【原出願日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】
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