肢体用保温部材
【課題】肢体を十分に保温できるようして、冷えに起因した疼痛を緩和できるようにする。
【解決手段】肢体に装着される肢体用保温部材1が、酸化チタン、トルマリン及びゲルマニウムの少なくとも1つで構成された血行促進部を備えている。血行促進部によって肢体の血行が促進されて、疼痛が緩和される。
【解決手段】肢体に装着される肢体用保温部材1が、酸化チタン、トルマリン及びゲルマニウムの少なくとも1つで構成された血行促進部を備えている。血行促進部によって肢体の血行が促進されて、疼痛が緩和される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手や足に装着される肢体用保温部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、慢性腎不全患者は、1週間に2〜3回、人工透析を受けるために病院に通っている。1回の人工透析に要する時間は、患者の状態によって異なるが、3〜5時間程度の長時間に及ぶ。この間、患者は、ベッドに横になったままじっとして待つ必要がある。
【0003】
また、慢性腎不全患者は、肢体の血流が悪化している場合が多く、人工透析を受けている間に、冷えに起因した足の疼痛を訴える場合がある。このような場合に、例えば、特許文献1に開示されているような靴下を履かせて保温することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−68588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の靴下は、単に繊維を編んで構成されているだけなので、肢体の十分な保温が行われず、疼痛の緩和が困難であることが考えられる。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、肢体を十分に保温できるようして、冷えに起因した疼痛を緩和できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明では、肢体に装着される肢体用保温部材であって、血行促進部を備えている構成とする。
【0008】
この構成によれば、血行促進部によって血行が促進されるので、肢体が温まる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、血行促進部は、酸化チタンを含んでいる構成とする。
【0010】
この構成によれば、生体適合性の良好な酸化チタンによって血行促進効果を得ることが可能になる。また、酸化チタンが有する光触媒作用によって抗菌効果も得ること可能となる。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいる構成とする。
【0012】
この構成によれば、酸化チタンが有する光触媒作用が十分に得られるようになる。
【0013】
第4の発明では、第1の発明において、血行促進部は、トルマリンを含んでいる構成とする。
【0014】
第5の発明では、第1の発明において、血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいる構成とする。
【0015】
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、下肢の足首からつま先側を覆うように形成された第1カバーと、下肢の足首からふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えている構成とする。
【0016】
この構成によれば、使用者がつま先にのみ冷えを感じていて、ふくらはぎ側に冷えを感じていない場合には、第1カバーのみを用いてつま先の血行を促進することが可能になり、また、つま先や足裏の冷えを感じていない場合には、第2カバーのみを用いてつま先や足裏を露出させておくことが可能になる。さらに、下肢の全体に冷えを感じている場合には、第1カバーと第2カバーを下肢に装着することで、全体の血行を促進することが可能になる。
【0017】
第7の発明では、第6の発明において、第2カバーは、筒状に形成され、径を調整する調整部を有している構成とする。
【0018】
この構成によれば、第2カバーの径を使用者の下肢の太さに適した大きさにすることが可能になる。
【0019】
第8の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、下肢のつま先から少なくともふくらはぎ部分までを覆うブーツ形状をなしている構成とする。
【0020】
この構成によれば、下肢の広範囲の血行を促進することが可能になる。
【0021】
第9の発明では、第6から8のいずれか1つの発明において、血行促進部がつま先に対応するように配置されている構成とする。
【0022】
この構成によれば、冷えやすいつま先の血行を効果的に促進することが可能になる。
【0023】
第10の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、肢体に巻き付けられるように形成されている構成とする。
【0024】
この構成によれば、肢体が効果的に加温される。
【0025】
第11の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、履き物の中敷き形状とされている構成とする。
【0026】
この構成によれば、血管が密集した足の裏を効果的に加温することが可能になる。
【0027】
第12の発明では、第1から11のいずれか1つの発明において、肢体用保温部材が人工透析の際に用いられるものである。
【0028】
この構成によれば、人工透析を受けている患者の肢体の血行を促進することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、肢体用保温部材が血行促進部を備えているので、肢体の血行を促進して温めることができ、よって、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0030】
第2の発明によれば、生体適合性の良好な酸化チタンにより肢体の血行を促進することができるので、使用者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンの抗菌効果によって肢体用保温部材を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
【0031】
第3の発明によれば、酸化チタンが有する光触媒作用を十分に得ることができ、抗菌効果を高めることができる。
【0032】
第4、5の発明によれば、使用者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。
【0033】
第6の発明によれば、下肢の足首よりもつま先側を覆うように形成された第1カバーと、下肢の足首よりもふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えているので、第1カバーと第2カバーとを選択的に使用することができ、使用者に適した血行促進効果を得ることができる。
【0034】
第7の発明によれば、第2カバーの径を使用者の下肢の太さに合うように調整することができ、使用感を良好にすることができる。
【0035】
第8の発明によれば、肢体用保温部材がブーツ形状をなしているので、下肢の広範囲に亘って血行を促進し、疼痛を緩和することができる。
【0036】
第9の発明によれば、つま先の血行を効果的に促進することができる。
【0037】
第10、11の発明によれば、肢体を効果的に加温できる。
【0038】
第12の発明によれば、人工透析中の患者が肢体に感じる疼痛を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係る肢体用保温部材の使用状態を説明する図である。
【図2】実施形態1に係る肢体用保温部材の斜視図である。
【図3】肢体用保温部材を構成する布材の拡大断面図である。
【図4】ふくらはぎ側カバーを展開した状態を示す図である。
【図5】ふくらはぎ側カバーの平面図である。
【図6】変形例に係るつま先カバー部の斜視図である。
【図7】変形例に係るつま先カバー部の平面図である。
【図8】変形例に係るつま先カバー部の側面図である。
【図9】変形例に係る図4相当図である。
【図10】変形例に係るふくらはぎカバー部を筒状にする場合を示し、(a)は、斜視図であり、(b)は、平面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る肢体用保温部材の斜視図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る肢体用保温部材の平面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る図1相当図である。
【図14】本発明の実施形態4に係る肢体用保温部材及び履き物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態に係る肢体用保温部材1の使用状態を示している。この肢体用保温部材1は、人工透析を受ける患者の足Lに装着されるものであり、足首からつま先側を覆うように形成されたつま先側カバー(第1カバー)10と、足首からふくらはぎ側を覆うように形成されたふくらはぎ側カバー(第2カバー)20とで構成されている。
【0042】
図2に示すように、つま先側カバー10は、所定形状に裁断された布材を縫製してなるものであり、つま先部分を覆うように形成されたつま先カバー部11と、足裏を覆うように形成された足裏カバー部12と、足の甲を覆うように形成された甲カバー部13と、足首のくるぶし及びその近傍を覆う足首カバー部14とを有している。足首カバー部14には、足をつま先側カバー10内に入れるための足入れ孔15が形成されている。この足入れ孔15の周囲には、環状のゴム16が縫い付けられている。このゴム16の径は、患者の足首の径よりも小さめに設定されている。ゴム16の代わりに、紐の設けておき、紐を縛ることによって足入れ孔15の径を小さくするようにしてもよい。
【0043】
つま先側カバー10を構成する布材は、図3に示すように、重ね合わされた2枚の不織布2、2と、これら不織布2、2の間に挟みこまれた金属粉末(血行促進部)3とで構成されている。金属粉末3の表面には酸化チタンの皮膜が形成されている。
【0044】
ふくらはぎ側カバー20は、図2示すように使用状態では、筒状をなす一方、図4に示すように、展開した状態では四角形をなす布材で構成されている。このふくらはぎ側カバー20を構成する布材は、つま先側カバー10を構成する布材と同じものであり、同様な金属粉末を有している。ふくらはぎ側カバー20の長さは、図1に示すように、患者の足首から膝近傍までの寸法と同じくらいに設定されている。また、ふくらはぎ側カバー20の径は、足首側に行くほど小さくなるように設定されている。この径の変化に対応するように、布材の幅は、足首側に行くほど狭くなっている(図4参照)。
【0045】
ふくらはぎ側カバー20の幅方向一側の裏面には、面ファスナー21の一方の部材を構成するフックテープ21aが貼り付けられている。このフックテープ21aは、ふくらはぎ側カバー20の長さ方向両端部近傍に亘って連続して延びている。ふくらはぎ側カバー20の幅方向他側の表面には、面ファスナー21の他方の部材を構成する複数のループテープ21b、21b、…が貼り付けられている。ループテープ21b、21b、…は、ふくらはぎ側カバー20の長さ方向に間隔をあけて配置され、ふくらはぎ側カバー20の幅方向に延びている。そして、図5に示すように、フックテープ21aのループテープ21bに対する固定位置によって、ふくらはぎ側カバー20の径が調整可能となっている。また、複数のループテープ21b、21b、…が間隔をあけて配置されているので、ふくらはぎ側カバー20の径は、ふくらはぎの上側に対応する部分と下側に対応する部分とで変えることができるようになっている。尚、面ファスナー21が、本発明の調整部を構成している。また、フックテープ21a及びループテープ21bの数、形状及び位置は、任意に設定することが可能である。
【0046】
次に、上記つま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20を構成する布材の製造方法について説明する。まず、酸化チタン被膜が形成された金属粉末3を得る。この金属粉末3は、例えば、特開2000−61314号公報や特開2004−344687号公報に開示されている装置及び方法を用いて製造することができる。すなわち、図示しないが、製造装置としては、重力式ブラスト装置を用意する。また、酸化チタンの被膜を形成する前の金属粉末からなる被処理材も用意しておく。尚、ブラスト装置は、エア式であれば、吸い込み式のサイホン型や、他の形式であってもよい。
【0047】
そして、被処理材をブラスト装置の処理室に配置し、チタン粉末を圧縮空気により噴射ノズルを介して被処理材へ向けて噴射する。このチタン粉末の平均粒径は、40μm〜100μmの範囲である。また、噴射圧力は、0.4MPa〜0.6MPaの範囲で設定され、噴射ノズルと被処理材との間隔は、100mm〜250mmの範囲で設定されている。また、噴射ノズルの内径は5mm〜7mmの範囲で設定されている。
【0048】
上記噴射ノズルから噴射されたチタン粉末が被処理材に当たると被処理材の表面への衝突前後の速度変化により、熱エネルギーが生じ、局部的に温度上昇が起こる。これにより、チタン粉末が被処理材の表面で加熱されて、チタン粉末中のチタンが被処理材の表面に活性化吸着するとともに、大気中の酸素と酸化反応を起こす。その結果、酸化チタン被膜が形成された金属粉末3が得られる。この酸化チタン被膜を形成する際には、チタン粉末が温度上昇することにより、チタンが被処理材に浸透していく。このため、被処理材の表面から内部に入るに従って酸素が欠乏気味になり、酸化チタン被膜は、酸素欠乏傾斜構造と呼ばれる構造を呈することになる。すなわち、被処理材の表面では、酸化チタン被膜はTiO2であるのに対し、表面から内部に入った箇所では、TiOとなる。このようにして得られた金属粉末3を2枚の不織布2、2の間に配置して、これら不織布2、2を互いに接着するとともに、金属粉末3を不織布2に接着する。金属粉末3は不織布2、2の繊維間から露出するようになっている。
【0049】
上記のように構成された布材を裁断して縫製し、足入れ孔15の周縁部にゴム16を縫い付けることで、つま先側カバー部材10が得られる。また、裁断した布材に面ファスナー21のフックテープ21aとループテープ21b、21b、…を貼り付けることで、ふくらはぎ側カバー20が得られる。これらフックテープ21a及びループテープ21b、21b、…は、接着剤で貼り付けるようにしてもよいし、糸で縫い付けるようにしてもよいし、熱溶着するようにしてもよい。
【0050】
次に、上記のように構成された肢体用保温部材1を使用する場合について説明する。ベッドに横になっている患者が、例えば、つま先から膝近傍まで冷えを感じている場合には、つま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20の両方を足Lに装着する。すなわち、つま先側カバー10の足入れ孔15を拡げながら、患者のつま先を足入れ孔15からつま先側カバー10内へ入れていき、つま先側カバー10を履かせた状態にする。また、ふくらはぎ側カバー20は、面ファスナー21を外して図4に示す展開状態にした後、すねからふくらはぎを覆うように配置してから、フックテープ21aをループテープ21b、21b、…に重ね合わせて面ファスナー21を固定状態にする。このとき、ループテープ21b、21b、…がふくらはぎ側カバー20の幅方向に延びるものであるため、ふくらはぎ側カバー20の径をふくらはぎの太さに合うように調整することが可能である。このようにしてつま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20を装着すると、金属粉末3の表面が患者の皮膚に接触し、下肢の膝近傍からつま先にかけて酸化チタンによって血行が促進される。
【0051】
また、患者がつま先にのみ冷えを感じていて、ふくらはぎ側に冷えを感じていない場合には、つま先側カバー10のみを用いてつま先の血行を促進することが可能である。さらに、ふくらはぎにのみ冷えを感じていて、つま先や足裏の冷えを感じていない場合には、ふくらはぎ側カバー20のみを用いてふくらはぎの血行を促進し、つま先を露出させておくことが可能になる。
【0052】
以上説明したように、この実施形態1に係る肢体用保温部材1によれば、酸化チタンによって足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0053】
また、酸化チタンは、生体適合性が良好であるため、患者に副作用が起こり難く安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンが有する光触媒作用により抗菌効果を得ることができるので、肢体用保温部材1を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
【0054】
また、肢体用保温部材1をつま先側カバー10とふくらはぎ側カバー20とで構成したので、患者の状態に合わせて、つま先側とふくらはぎ側を選択的に血行促進することができ、患者に適した血行促進効果を得ることができる。
【0055】
また、ふくらはぎ側カバー20の径を面ファスナー21によって調整できるので、ふくらはぎ側カバー20の径を患者の足に合うように調整することができ、使用感を良好にすることができる。
【0056】
尚、図示しないが、ふくらはぎ側カバー20にボタンを設け、ボタンを留めることによって筒状にするようにしてもよい。また、ふくらはぎ側カバー20にファスナーを設け、ファスナーを留めることによって筒状にするようにしてもよい。
【0057】
また、つま先側カバー10のみで肢体用保温部材1を構成してもよいし、ふくらはぎ側カバー20のみで肢体用保温部材1を構成してもよい。
【0058】
また、つま先側カバー10の形状及びふくらはぎ側カバー20の形状を、図6〜図10に示す実施形態1の変形例のような形状としてもよい。この変形例のつま先側カバー10は、熱溶着可能な樹脂材等からなる布材を複数枚組み合わせて構成されている。甲カバー部13、つま先カバー部11及びかかとを覆う部分には、布材を溶着した跡である溶着部17、17、17がそれぞれ設けられている。また、足入れ孔15の周囲は、環状のゴム16が入るように形成されている。ふくらはぎカバー部20は、図9に示すような四角形状とされている。ふくらはぎカバー部20の一方の側縁部近傍には、複数のフックテープ21a、21a、…が側縁部の長手方向に間隔をあけて貼り付けられている。ふくらはぎカバー部20の他方の側縁部近傍には、上記フックテープ21aの間隔と同じ間隔でループテープ21b、21b、…が貼り付けられている。各フックテープ21aの長手方向は、側縁部の延びる方向と一致しており、また、各ループテープ21bの長手方向は、フックテープ21aの長手方向と直交する方向となっている。このふくらはぎカバー部20は、図10(a)、(b)に示すように筒状にして、フックテープ21aとループテープ21bとを重ね合わせて面ファスナー21を固定状態にして使用する。
【0059】
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2に係る肢体用保温部材30を示している。この実施形態2の肢体用保温部材30は、実施形態1のものに対し、つま先側から膝近傍まで一体的に覆うブーツ形状とされている点で異なっている。
【0060】
すなわち、肢体用保温部材30は、実施形態1と同じ布材を所定形状に裁断した後に縫製してなるものである。この肢体用保温部材30は、つま先部分を覆うように形成されたつま先カバー部31と、足裏を覆うように形成された足裏カバー部32と、足の甲を覆うように形成された甲カバー部33と、足首のくるぶし及びその近傍を覆う足首カバー部34と、ふくらはぎ及びすねを覆うふくらはぎカバー部35とを有している。ふくらはぎカバー部35には、足を内部に入れるための足入れ孔36が形成され、この足入れ孔36の周縁部には、環状のゴム37が縫い付けられている。
【0061】
ふくらはぎカバー部35には、その長さ方向に延びる切れ込み部35aが形成されている。このふくらはぎカバー部35における切れ込み部35a近傍の内面には、面ファスナー38のフックテープ38aが貼り付けられている。このフックテープ38aは、ふくらはぎカバー部35の長さ方向に連続して延びている。また、このふくらはぎカバー部35における切れ込み部35a近傍の外面には、フックテープ38aに対応して複数のループテープ38b、38b、…が貼り付けられている。ループテープ38b、38b、…は、ふくらはぎカバー部35の長さ方向に間隔をあけて配置され、ふくらはぎカバー部35の周方向に延びている。従って、この面ファスナー38によって、実施形態1のふくらはぎ側カバー20と同様に、ふくらはぎカバー部35の径を調節することが可能である。
【0062】
この実施形態2の肢体用保温部材30を使用する場合には、患者の足を足入れ孔36から内部に入れていく。このとき、患者がふくらはぎにも冷えを感じている場合には、肢体用保温部材30を膝近傍まで上げた状態にしておく。また、患者がふくらはぎに冷えを感じていない場合には、肢体用保温部材30を足首近傍までずらしておけばよい。
【0063】
したがって、この実施形態2に係る肢体用保温部材30によれば、実施形態1のものと同様に、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0064】
また、肢体用保温部材30がブーツ形状をなしているので、足Lの広範囲の血行を促進して疼痛を緩和することができる。
【0065】
尚、上記実施形態1、2では、肢体用保温部材1、30の全体に酸化チタンを配置して足Lの広範囲の血行を促進できるようにしているが、これに限らず、例えば、冷えやすいつま先を覆うつま先カバー部11、31にのみ酸化チタンを配置するようにして効果的な血行促進を図るようにしてもよいし、くるぶしを覆う部分にのみ酸化チタンを配置するようにしてもよい。このようにすることで、肢体用保温部材1、30を低コストにすることができる。
【0066】
《発明の実施形態3》
図12は、本発明の実施形態3に係る肢体用保温部材40を示している。この実施形態3の肢体用保温部材40は、足首に巻き付けることができる形状となっている点で実施形態1のものと異なっている。
【0067】
肢体用保温部材40は、帯状に形成されており、図示しないが、伸縮性を有する布製の基材と、酸化チタン被膜を有する金属粉末を担持させた不織布とを積層し一体化して構成されている。肢体用保温部材40には、面ファスナー41のフックテープ41aとループテープ41bとが上記実施形態2の面ファスナー21と同様に設けられている。
【0068】
上記肢体用保温部材40を使用する場合には、図13に示すように、足首に巻き付けてた後、フックテープ41aとループテープ41bとを重ね合わせて面ファスナー41を固定状態とする。
【0069】
以上説明したように、この実施形態3に係る肢体用保温部材40によれば、酸化チタンによって足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0070】
尚、肢体用保温部材40は、足首以外にも、手首に巻き付けることができる。
【0071】
《発明の実施形態4》
図14は、本発明の実施形態4に係る肢体用保温部材50を示している。この実施形態4の肢体用保温部材50は、履き物51の中敷き形状となっている点で実施形態1のものと異なっている。
【0072】
肢体用保温部材50は、履き物51の底に対応する形の板状をなしており、図示しないが、吸湿性を有する布製の基材と、酸化チタン被膜を有する金属粉末を担持させた不織布とを積層し一体化して構成されている。酸化チタン被膜を有する金属粉末は、肢体用保温部材50に対し均一に分散させてもよいし、また、例えば、つま先に対応する部分やかかとに対応する部分の金属粉末の密度を他の部分よりも高めてもよい。
【0073】
上記肢体用保温部材50を使用する場合には、履き物51の内部に入れるだけでよく、簡単に使用できる。
【0074】
以上説明したように、この実施形態4に係る肢体用保温部材50によれば、酸化チタンによって血管の密集した足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0075】
尚、肢体用保温部材50は、スリッパやルームシューズ等の室内履き以外にも、運動靴等の屋外で履く履き物の中敷きとしても使用できる。
【0076】
また、肢体用保温部材1、30、40、50を構成する材料としては、不織布以外にも、例えば、綿布、化学繊維からなる布やガーゼ等であってもよい。また、これら材料に親水化処理を施して患者の汗を吸い取らせるようにしてもよい。肢体用保温部材1、30、50を構成する材料としては、伸縮性を有する布材であってもよい。
【0077】
また、酸化チタンを粒状に加工して、2枚の不織布2、2の間に多数配置するようにしてもよい。また、金属粉末3や粒状の酸化チタンを、1枚の不織布2に接着剤等によって接着するようにしてもよい。また、上記金属粉末3や、粒状の酸化チタンを練り込んだ樹脂材をフィルム状またはシート状に加工し、これを用いて肢体用保温部材1、30、40、50を構成してもよい。
【0078】
また、本発明の肢体用保温部材1、30、40、50は、人工透析を受ける患者だけでなく、各種治療を受ける患者をはじめ、家庭で肢体に冷えを感じる場合にも使用することができる。
【0079】
また、上記実施形態1、2では、肢体用保温部材1、30が下肢用である場合について説明したが、形状を変更することによって上肢用としても使用可能である。
【0080】
また、上記実施形態1、2では、血行促進部を酸化チタン被膜を有する金属粉末3で構成しているが、これに限らず、トルマリンやゲルマニウムで構成してもよい。
【0081】
トルマリンは、電気石とも呼ばれており、細かく粉砕した場合に、トルマリン結晶の両端にプラス極とマイナス極とが存在する性質を持っている。このトルマリンの微弱電流は、例えば、人体の細胞に含まれる水分に流れることによって、人体に極めて弱い電気刺激を与えることができる。これにより血行が効果的に促進される。
【0082】
上記トルマリンは、原石のまま不織布2に接着剤等によって担持させてもよいし、原石を細かく砕いて粒状にして不織布2に担持させてもよい。
【0083】
また、ゲルマニウムを用いる場合には、ゲルマニウムから放出される電子の作用によって、血行が促進される。ゲルマニウムは、粒状にして不織布に担持させてもよい。
【0084】
また、トルマリンやゲルマニウムの微粉末を樹脂に練り込んでシート状に加工し、これを用いて肢体用保温部材1、30を構成するようにしてもよい。また、酸化チタン、トルマリン及びゲルマニウムのうち、全てを組み合わせて血行促進部を構成してもよいし、任意の2つを組み合わせて血行促進部を構成してもよい。また、血行促進部は、これらに限られるものではなく、例えば、発熱体で構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る肢体用保温部材は、例えば、人工透析を受ける患者の下肢に装着するのに適している。
【符号の説明】
【0086】
1、30、40、50 肢体用保温部材
3 金属粉末(血行促進部)
10 つま先側カバー(第1カバー)
20 ふくらはぎ側カバー(第2カバー)
21、38 面ファスナー(調整部)
21a、38a フックテープ
21b、38b ループテープ
L 足
【技術分野】
【0001】
本発明は、手や足に装着される肢体用保温部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、慢性腎不全患者は、1週間に2〜3回、人工透析を受けるために病院に通っている。1回の人工透析に要する時間は、患者の状態によって異なるが、3〜5時間程度の長時間に及ぶ。この間、患者は、ベッドに横になったままじっとして待つ必要がある。
【0003】
また、慢性腎不全患者は、肢体の血流が悪化している場合が多く、人工透析を受けている間に、冷えに起因した足の疼痛を訴える場合がある。このような場合に、例えば、特許文献1に開示されているような靴下を履かせて保温することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−68588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の靴下は、単に繊維を編んで構成されているだけなので、肢体の十分な保温が行われず、疼痛の緩和が困難であることが考えられる。
【0006】
本発明は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、肢体を十分に保温できるようして、冷えに起因した疼痛を緩和できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明では、肢体に装着される肢体用保温部材であって、血行促進部を備えている構成とする。
【0008】
この構成によれば、血行促進部によって血行が促進されるので、肢体が温まる。
【0009】
第2の発明では、第1の発明において、血行促進部は、酸化チタンを含んでいる構成とする。
【0010】
この構成によれば、生体適合性の良好な酸化チタンによって血行促進効果を得ることが可能になる。また、酸化チタンが有する光触媒作用によって抗菌効果も得ること可能となる。
【0011】
第3の発明では、第2の発明において、血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいる構成とする。
【0012】
この構成によれば、酸化チタンが有する光触媒作用が十分に得られるようになる。
【0013】
第4の発明では、第1の発明において、血行促進部は、トルマリンを含んでいる構成とする。
【0014】
第5の発明では、第1の発明において、血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいる構成とする。
【0015】
第6の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、下肢の足首からつま先側を覆うように形成された第1カバーと、下肢の足首からふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えている構成とする。
【0016】
この構成によれば、使用者がつま先にのみ冷えを感じていて、ふくらはぎ側に冷えを感じていない場合には、第1カバーのみを用いてつま先の血行を促進することが可能になり、また、つま先や足裏の冷えを感じていない場合には、第2カバーのみを用いてつま先や足裏を露出させておくことが可能になる。さらに、下肢の全体に冷えを感じている場合には、第1カバーと第2カバーを下肢に装着することで、全体の血行を促進することが可能になる。
【0017】
第7の発明では、第6の発明において、第2カバーは、筒状に形成され、径を調整する調整部を有している構成とする。
【0018】
この構成によれば、第2カバーの径を使用者の下肢の太さに適した大きさにすることが可能になる。
【0019】
第8の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、下肢のつま先から少なくともふくらはぎ部分までを覆うブーツ形状をなしている構成とする。
【0020】
この構成によれば、下肢の広範囲の血行を促進することが可能になる。
【0021】
第9の発明では、第6から8のいずれか1つの発明において、血行促進部がつま先に対応するように配置されている構成とする。
【0022】
この構成によれば、冷えやすいつま先の血行を効果的に促進することが可能になる。
【0023】
第10の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、肢体に巻き付けられるように形成されている構成とする。
【0024】
この構成によれば、肢体が効果的に加温される。
【0025】
第11の発明では、第1から5のいずれか1つの発明において、履き物の中敷き形状とされている構成とする。
【0026】
この構成によれば、血管が密集した足の裏を効果的に加温することが可能になる。
【0027】
第12の発明では、第1から11のいずれか1つの発明において、肢体用保温部材が人工透析の際に用いられるものである。
【0028】
この構成によれば、人工透析を受けている患者の肢体の血行を促進することが可能になる。
【発明の効果】
【0029】
第1の発明によれば、肢体用保温部材が血行促進部を備えているので、肢体の血行を促進して温めることができ、よって、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0030】
第2の発明によれば、生体適合性の良好な酸化チタンにより肢体の血行を促進することができるので、使用者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンの抗菌効果によって肢体用保温部材を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
【0031】
第3の発明によれば、酸化チタンが有する光触媒作用を十分に得ることができ、抗菌効果を高めることができる。
【0032】
第4、5の発明によれば、使用者に副作用が起こり難く、安全に血行促進効果を得ることができる。
【0033】
第6の発明によれば、下肢の足首よりもつま先側を覆うように形成された第1カバーと、下肢の足首よりもふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えているので、第1カバーと第2カバーとを選択的に使用することができ、使用者に適した血行促進効果を得ることができる。
【0034】
第7の発明によれば、第2カバーの径を使用者の下肢の太さに合うように調整することができ、使用感を良好にすることができる。
【0035】
第8の発明によれば、肢体用保温部材がブーツ形状をなしているので、下肢の広範囲に亘って血行を促進し、疼痛を緩和することができる。
【0036】
第9の発明によれば、つま先の血行を効果的に促進することができる。
【0037】
第10、11の発明によれば、肢体を効果的に加温できる。
【0038】
第12の発明によれば、人工透析中の患者が肢体に感じる疼痛を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施形態1に係る肢体用保温部材の使用状態を説明する図である。
【図2】実施形態1に係る肢体用保温部材の斜視図である。
【図3】肢体用保温部材を構成する布材の拡大断面図である。
【図4】ふくらはぎ側カバーを展開した状態を示す図である。
【図5】ふくらはぎ側カバーの平面図である。
【図6】変形例に係るつま先カバー部の斜視図である。
【図7】変形例に係るつま先カバー部の平面図である。
【図8】変形例に係るつま先カバー部の側面図である。
【図9】変形例に係る図4相当図である。
【図10】変形例に係るふくらはぎカバー部を筒状にする場合を示し、(a)は、斜視図であり、(b)は、平面図である。
【図11】本発明の実施形態2に係る肢体用保温部材の斜視図である。
【図12】本発明の実施形態3に係る肢体用保温部材の平面図である。
【図13】本発明の実施形態3に係る図1相当図である。
【図14】本発明の実施形態4に係る肢体用保温部材及び履き物の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0041】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態に係る肢体用保温部材1の使用状態を示している。この肢体用保温部材1は、人工透析を受ける患者の足Lに装着されるものであり、足首からつま先側を覆うように形成されたつま先側カバー(第1カバー)10と、足首からふくらはぎ側を覆うように形成されたふくらはぎ側カバー(第2カバー)20とで構成されている。
【0042】
図2に示すように、つま先側カバー10は、所定形状に裁断された布材を縫製してなるものであり、つま先部分を覆うように形成されたつま先カバー部11と、足裏を覆うように形成された足裏カバー部12と、足の甲を覆うように形成された甲カバー部13と、足首のくるぶし及びその近傍を覆う足首カバー部14とを有している。足首カバー部14には、足をつま先側カバー10内に入れるための足入れ孔15が形成されている。この足入れ孔15の周囲には、環状のゴム16が縫い付けられている。このゴム16の径は、患者の足首の径よりも小さめに設定されている。ゴム16の代わりに、紐の設けておき、紐を縛ることによって足入れ孔15の径を小さくするようにしてもよい。
【0043】
つま先側カバー10を構成する布材は、図3に示すように、重ね合わされた2枚の不織布2、2と、これら不織布2、2の間に挟みこまれた金属粉末(血行促進部)3とで構成されている。金属粉末3の表面には酸化チタンの皮膜が形成されている。
【0044】
ふくらはぎ側カバー20は、図2示すように使用状態では、筒状をなす一方、図4に示すように、展開した状態では四角形をなす布材で構成されている。このふくらはぎ側カバー20を構成する布材は、つま先側カバー10を構成する布材と同じものであり、同様な金属粉末を有している。ふくらはぎ側カバー20の長さは、図1に示すように、患者の足首から膝近傍までの寸法と同じくらいに設定されている。また、ふくらはぎ側カバー20の径は、足首側に行くほど小さくなるように設定されている。この径の変化に対応するように、布材の幅は、足首側に行くほど狭くなっている(図4参照)。
【0045】
ふくらはぎ側カバー20の幅方向一側の裏面には、面ファスナー21の一方の部材を構成するフックテープ21aが貼り付けられている。このフックテープ21aは、ふくらはぎ側カバー20の長さ方向両端部近傍に亘って連続して延びている。ふくらはぎ側カバー20の幅方向他側の表面には、面ファスナー21の他方の部材を構成する複数のループテープ21b、21b、…が貼り付けられている。ループテープ21b、21b、…は、ふくらはぎ側カバー20の長さ方向に間隔をあけて配置され、ふくらはぎ側カバー20の幅方向に延びている。そして、図5に示すように、フックテープ21aのループテープ21bに対する固定位置によって、ふくらはぎ側カバー20の径が調整可能となっている。また、複数のループテープ21b、21b、…が間隔をあけて配置されているので、ふくらはぎ側カバー20の径は、ふくらはぎの上側に対応する部分と下側に対応する部分とで変えることができるようになっている。尚、面ファスナー21が、本発明の調整部を構成している。また、フックテープ21a及びループテープ21bの数、形状及び位置は、任意に設定することが可能である。
【0046】
次に、上記つま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20を構成する布材の製造方法について説明する。まず、酸化チタン被膜が形成された金属粉末3を得る。この金属粉末3は、例えば、特開2000−61314号公報や特開2004−344687号公報に開示されている装置及び方法を用いて製造することができる。すなわち、図示しないが、製造装置としては、重力式ブラスト装置を用意する。また、酸化チタンの被膜を形成する前の金属粉末からなる被処理材も用意しておく。尚、ブラスト装置は、エア式であれば、吸い込み式のサイホン型や、他の形式であってもよい。
【0047】
そして、被処理材をブラスト装置の処理室に配置し、チタン粉末を圧縮空気により噴射ノズルを介して被処理材へ向けて噴射する。このチタン粉末の平均粒径は、40μm〜100μmの範囲である。また、噴射圧力は、0.4MPa〜0.6MPaの範囲で設定され、噴射ノズルと被処理材との間隔は、100mm〜250mmの範囲で設定されている。また、噴射ノズルの内径は5mm〜7mmの範囲で設定されている。
【0048】
上記噴射ノズルから噴射されたチタン粉末が被処理材に当たると被処理材の表面への衝突前後の速度変化により、熱エネルギーが生じ、局部的に温度上昇が起こる。これにより、チタン粉末が被処理材の表面で加熱されて、チタン粉末中のチタンが被処理材の表面に活性化吸着するとともに、大気中の酸素と酸化反応を起こす。その結果、酸化チタン被膜が形成された金属粉末3が得られる。この酸化チタン被膜を形成する際には、チタン粉末が温度上昇することにより、チタンが被処理材に浸透していく。このため、被処理材の表面から内部に入るに従って酸素が欠乏気味になり、酸化チタン被膜は、酸素欠乏傾斜構造と呼ばれる構造を呈することになる。すなわち、被処理材の表面では、酸化チタン被膜はTiO2であるのに対し、表面から内部に入った箇所では、TiOとなる。このようにして得られた金属粉末3を2枚の不織布2、2の間に配置して、これら不織布2、2を互いに接着するとともに、金属粉末3を不織布2に接着する。金属粉末3は不織布2、2の繊維間から露出するようになっている。
【0049】
上記のように構成された布材を裁断して縫製し、足入れ孔15の周縁部にゴム16を縫い付けることで、つま先側カバー部材10が得られる。また、裁断した布材に面ファスナー21のフックテープ21aとループテープ21b、21b、…を貼り付けることで、ふくらはぎ側カバー20が得られる。これらフックテープ21a及びループテープ21b、21b、…は、接着剤で貼り付けるようにしてもよいし、糸で縫い付けるようにしてもよいし、熱溶着するようにしてもよい。
【0050】
次に、上記のように構成された肢体用保温部材1を使用する場合について説明する。ベッドに横になっている患者が、例えば、つま先から膝近傍まで冷えを感じている場合には、つま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20の両方を足Lに装着する。すなわち、つま先側カバー10の足入れ孔15を拡げながら、患者のつま先を足入れ孔15からつま先側カバー10内へ入れていき、つま先側カバー10を履かせた状態にする。また、ふくらはぎ側カバー20は、面ファスナー21を外して図4に示す展開状態にした後、すねからふくらはぎを覆うように配置してから、フックテープ21aをループテープ21b、21b、…に重ね合わせて面ファスナー21を固定状態にする。このとき、ループテープ21b、21b、…がふくらはぎ側カバー20の幅方向に延びるものであるため、ふくらはぎ側カバー20の径をふくらはぎの太さに合うように調整することが可能である。このようにしてつま先側カバー10及びふくらはぎ側カバー20を装着すると、金属粉末3の表面が患者の皮膚に接触し、下肢の膝近傍からつま先にかけて酸化チタンによって血行が促進される。
【0051】
また、患者がつま先にのみ冷えを感じていて、ふくらはぎ側に冷えを感じていない場合には、つま先側カバー10のみを用いてつま先の血行を促進することが可能である。さらに、ふくらはぎにのみ冷えを感じていて、つま先や足裏の冷えを感じていない場合には、ふくらはぎ側カバー20のみを用いてふくらはぎの血行を促進し、つま先を露出させておくことが可能になる。
【0052】
以上説明したように、この実施形態1に係る肢体用保温部材1によれば、酸化チタンによって足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0053】
また、酸化チタンは、生体適合性が良好であるため、患者に副作用が起こり難く安全に血行促進効果を得ることができる。また、酸化チタンが有する光触媒作用により抗菌効果を得ることができるので、肢体用保温部材1を清潔に保つことができ、医療現場に適したものとすることができる。
【0054】
また、肢体用保温部材1をつま先側カバー10とふくらはぎ側カバー20とで構成したので、患者の状態に合わせて、つま先側とふくらはぎ側を選択的に血行促進することができ、患者に適した血行促進効果を得ることができる。
【0055】
また、ふくらはぎ側カバー20の径を面ファスナー21によって調整できるので、ふくらはぎ側カバー20の径を患者の足に合うように調整することができ、使用感を良好にすることができる。
【0056】
尚、図示しないが、ふくらはぎ側カバー20にボタンを設け、ボタンを留めることによって筒状にするようにしてもよい。また、ふくらはぎ側カバー20にファスナーを設け、ファスナーを留めることによって筒状にするようにしてもよい。
【0057】
また、つま先側カバー10のみで肢体用保温部材1を構成してもよいし、ふくらはぎ側カバー20のみで肢体用保温部材1を構成してもよい。
【0058】
また、つま先側カバー10の形状及びふくらはぎ側カバー20の形状を、図6〜図10に示す実施形態1の変形例のような形状としてもよい。この変形例のつま先側カバー10は、熱溶着可能な樹脂材等からなる布材を複数枚組み合わせて構成されている。甲カバー部13、つま先カバー部11及びかかとを覆う部分には、布材を溶着した跡である溶着部17、17、17がそれぞれ設けられている。また、足入れ孔15の周囲は、環状のゴム16が入るように形成されている。ふくらはぎカバー部20は、図9に示すような四角形状とされている。ふくらはぎカバー部20の一方の側縁部近傍には、複数のフックテープ21a、21a、…が側縁部の長手方向に間隔をあけて貼り付けられている。ふくらはぎカバー部20の他方の側縁部近傍には、上記フックテープ21aの間隔と同じ間隔でループテープ21b、21b、…が貼り付けられている。各フックテープ21aの長手方向は、側縁部の延びる方向と一致しており、また、各ループテープ21bの長手方向は、フックテープ21aの長手方向と直交する方向となっている。このふくらはぎカバー部20は、図10(a)、(b)に示すように筒状にして、フックテープ21aとループテープ21bとを重ね合わせて面ファスナー21を固定状態にして使用する。
【0059】
《発明の実施形態2》
図11は、本発明の実施形態2に係る肢体用保温部材30を示している。この実施形態2の肢体用保温部材30は、実施形態1のものに対し、つま先側から膝近傍まで一体的に覆うブーツ形状とされている点で異なっている。
【0060】
すなわち、肢体用保温部材30は、実施形態1と同じ布材を所定形状に裁断した後に縫製してなるものである。この肢体用保温部材30は、つま先部分を覆うように形成されたつま先カバー部31と、足裏を覆うように形成された足裏カバー部32と、足の甲を覆うように形成された甲カバー部33と、足首のくるぶし及びその近傍を覆う足首カバー部34と、ふくらはぎ及びすねを覆うふくらはぎカバー部35とを有している。ふくらはぎカバー部35には、足を内部に入れるための足入れ孔36が形成され、この足入れ孔36の周縁部には、環状のゴム37が縫い付けられている。
【0061】
ふくらはぎカバー部35には、その長さ方向に延びる切れ込み部35aが形成されている。このふくらはぎカバー部35における切れ込み部35a近傍の内面には、面ファスナー38のフックテープ38aが貼り付けられている。このフックテープ38aは、ふくらはぎカバー部35の長さ方向に連続して延びている。また、このふくらはぎカバー部35における切れ込み部35a近傍の外面には、フックテープ38aに対応して複数のループテープ38b、38b、…が貼り付けられている。ループテープ38b、38b、…は、ふくらはぎカバー部35の長さ方向に間隔をあけて配置され、ふくらはぎカバー部35の周方向に延びている。従って、この面ファスナー38によって、実施形態1のふくらはぎ側カバー20と同様に、ふくらはぎカバー部35の径を調節することが可能である。
【0062】
この実施形態2の肢体用保温部材30を使用する場合には、患者の足を足入れ孔36から内部に入れていく。このとき、患者がふくらはぎにも冷えを感じている場合には、肢体用保温部材30を膝近傍まで上げた状態にしておく。また、患者がふくらはぎに冷えを感じていない場合には、肢体用保温部材30を足首近傍までずらしておけばよい。
【0063】
したがって、この実施形態2に係る肢体用保温部材30によれば、実施形態1のものと同様に、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0064】
また、肢体用保温部材30がブーツ形状をなしているので、足Lの広範囲の血行を促進して疼痛を緩和することができる。
【0065】
尚、上記実施形態1、2では、肢体用保温部材1、30の全体に酸化チタンを配置して足Lの広範囲の血行を促進できるようにしているが、これに限らず、例えば、冷えやすいつま先を覆うつま先カバー部11、31にのみ酸化チタンを配置するようにして効果的な血行促進を図るようにしてもよいし、くるぶしを覆う部分にのみ酸化チタンを配置するようにしてもよい。このようにすることで、肢体用保温部材1、30を低コストにすることができる。
【0066】
《発明の実施形態3》
図12は、本発明の実施形態3に係る肢体用保温部材40を示している。この実施形態3の肢体用保温部材40は、足首に巻き付けることができる形状となっている点で実施形態1のものと異なっている。
【0067】
肢体用保温部材40は、帯状に形成されており、図示しないが、伸縮性を有する布製の基材と、酸化チタン被膜を有する金属粉末を担持させた不織布とを積層し一体化して構成されている。肢体用保温部材40には、面ファスナー41のフックテープ41aとループテープ41bとが上記実施形態2の面ファスナー21と同様に設けられている。
【0068】
上記肢体用保温部材40を使用する場合には、図13に示すように、足首に巻き付けてた後、フックテープ41aとループテープ41bとを重ね合わせて面ファスナー41を固定状態とする。
【0069】
以上説明したように、この実施形態3に係る肢体用保温部材40によれば、酸化チタンによって足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0070】
尚、肢体用保温部材40は、足首以外にも、手首に巻き付けることができる。
【0071】
《発明の実施形態4》
図14は、本発明の実施形態4に係る肢体用保温部材50を示している。この実施形態4の肢体用保温部材50は、履き物51の中敷き形状となっている点で実施形態1のものと異なっている。
【0072】
肢体用保温部材50は、履き物51の底に対応する形の板状をなしており、図示しないが、吸湿性を有する布製の基材と、酸化チタン被膜を有する金属粉末を担持させた不織布とを積層し一体化して構成されている。酸化チタン被膜を有する金属粉末は、肢体用保温部材50に対し均一に分散させてもよいし、また、例えば、つま先に対応する部分やかかとに対応する部分の金属粉末の密度を他の部分よりも高めてもよい。
【0073】
上記肢体用保温部材50を使用する場合には、履き物51の内部に入れるだけでよく、簡単に使用できる。
【0074】
以上説明したように、この実施形態4に係る肢体用保温部材50によれば、酸化チタンによって血管の密集した足Lの血行を促進して温めることができ、よって、患者が人工透析を受ける間、冷えに起因した疼痛を緩和することができる。
【0075】
尚、肢体用保温部材50は、スリッパやルームシューズ等の室内履き以外にも、運動靴等の屋外で履く履き物の中敷きとしても使用できる。
【0076】
また、肢体用保温部材1、30、40、50を構成する材料としては、不織布以外にも、例えば、綿布、化学繊維からなる布やガーゼ等であってもよい。また、これら材料に親水化処理を施して患者の汗を吸い取らせるようにしてもよい。肢体用保温部材1、30、50を構成する材料としては、伸縮性を有する布材であってもよい。
【0077】
また、酸化チタンを粒状に加工して、2枚の不織布2、2の間に多数配置するようにしてもよい。また、金属粉末3や粒状の酸化チタンを、1枚の不織布2に接着剤等によって接着するようにしてもよい。また、上記金属粉末3や、粒状の酸化チタンを練り込んだ樹脂材をフィルム状またはシート状に加工し、これを用いて肢体用保温部材1、30、40、50を構成してもよい。
【0078】
また、本発明の肢体用保温部材1、30、40、50は、人工透析を受ける患者だけでなく、各種治療を受ける患者をはじめ、家庭で肢体に冷えを感じる場合にも使用することができる。
【0079】
また、上記実施形態1、2では、肢体用保温部材1、30が下肢用である場合について説明したが、形状を変更することによって上肢用としても使用可能である。
【0080】
また、上記実施形態1、2では、血行促進部を酸化チタン被膜を有する金属粉末3で構成しているが、これに限らず、トルマリンやゲルマニウムで構成してもよい。
【0081】
トルマリンは、電気石とも呼ばれており、細かく粉砕した場合に、トルマリン結晶の両端にプラス極とマイナス極とが存在する性質を持っている。このトルマリンの微弱電流は、例えば、人体の細胞に含まれる水分に流れることによって、人体に極めて弱い電気刺激を与えることができる。これにより血行が効果的に促進される。
【0082】
上記トルマリンは、原石のまま不織布2に接着剤等によって担持させてもよいし、原石を細かく砕いて粒状にして不織布2に担持させてもよい。
【0083】
また、ゲルマニウムを用いる場合には、ゲルマニウムから放出される電子の作用によって、血行が促進される。ゲルマニウムは、粒状にして不織布に担持させてもよい。
【0084】
また、トルマリンやゲルマニウムの微粉末を樹脂に練り込んでシート状に加工し、これを用いて肢体用保温部材1、30を構成するようにしてもよい。また、酸化チタン、トルマリン及びゲルマニウムのうち、全てを組み合わせて血行促進部を構成してもよいし、任意の2つを組み合わせて血行促進部を構成してもよい。また、血行促進部は、これらに限られるものではなく、例えば、発熱体で構成するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上説明したように、本発明に係る肢体用保温部材は、例えば、人工透析を受ける患者の下肢に装着するのに適している。
【符号の説明】
【0086】
1、30、40、50 肢体用保温部材
3 金属粉末(血行促進部)
10 つま先側カバー(第1カバー)
20 ふくらはぎ側カバー(第2カバー)
21、38 面ファスナー(調整部)
21a、38a フックテープ
21b、38b ループテープ
L 足
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肢体に装着される肢体用保温部材であって、
血行促進部を備えていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項2】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、酸化チタンを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項3】
請求項2に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項4】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、トルマリンを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項5】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
下肢の足首からつま先側を覆うように形成された第1カバーと、
下肢の足首からふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項7】
請求項6に記載の肢体用保温部材において、
第2カバーは、筒状に形成され、径を調整する調整部を有していることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
下肢のつま先から少なくともふくらはぎ部分までを覆うブーツ形状をなしていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
血行促進部がつま先に対応するように配置されていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
肢体に巻き付けられるように形成されていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
履き物の中敷き形状とされていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
人工透析の際に用いられることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項1】
肢体に装着される肢体用保温部材であって、
血行促進部を備えていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項2】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、酸化チタンを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項3】
請求項2に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、粒状に加工された酸化チタンを多数含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項4】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、トルマリンを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項5】
請求項1に記載の肢体用保温部材において、
血行促進部は、ゲルマニウムを含んでいることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
下肢の足首からつま先側を覆うように形成された第1カバーと、
下肢の足首からふくらはぎ側を覆うように形成された第2カバーとを備えていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項7】
請求項6に記載の肢体用保温部材において、
第2カバーは、筒状に形成され、径を調整する調整部を有していることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
下肢のつま先から少なくともふくらはぎ部分までを覆うブーツ形状をなしていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
血行促進部がつま先に対応するように配置されていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項10】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
肢体に巻き付けられるように形成されていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
履き物の中敷き形状とされていることを特徴とする肢体用保温部材。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1つに記載の肢体用保温部材において、
人工透析の際に用いられることを特徴とする肢体用保温部材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−187289(P2012−187289A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53935(P2011−53935)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000153030)株式会社ジェイ・エム・エス (452)
【Fターム(参考)】
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