説明

肥料の製造方法、肥料

【課題】低含水率、低塩素、低カリウムの肥料を提供する。かつ衛生上安全で、低コストで製造が可能な肥料の製造方法を提供する。
【解決手段】家畜排泄物に水を加えて混合し有機廃棄物のスラリーを形成する(S1)。スラリーを脱水機11に入れ、所定の含水率になるまで脱水を行う。脱塩有機廃棄物を乾燥機に投入し、熱風などによって少なくとも60℃以上に加熱し乾燥させる(S3)。脱塩有機廃棄物は、含水率が5質量%以上かつ20質量%以下となる。乾燥機の熱源となる排熱は、例えば、セメント製造工程(工場)のセメントキルンで生じた排熱を利用すれば良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物を含む有機廃棄物を用いた低含水率、低塩素、低カリウムの肥料を用いて、含水率、塩素濃度、カリウム濃度を調整した肥料およびその製造方法に関し、更に詳しくは、家畜排泄物を含む有機廃棄物を肥料化する際に、低含水率、低塩素、低カリウムの肥料を用いて、含水率、塩素濃度、カリウム濃度を最適化した肥料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物は、好気性発酵させて堆肥を製造すると、その含水率は鶏糞で20〜30質量%程度、牛糞で50質量%程度、豚糞で40質量%程度である。
【0003】
また、従来、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物は、好気性発酵させて堆肥を製造すると、鶏糞では、塩素濃度10000ppm、カリウム濃度30000〜40000ppm、牛糞では、塩素濃度8000ppm、カリウム濃度30000〜55000ppm、豚糞では、塩素濃度7000ppm、カリウム濃度25000〜30000ppm程度である。
【0004】
家畜排泄物を発酵させて堆肥を製造する際に、家畜排泄物をそのまま好気性発酵させようとしても、家畜排泄物は含水率が高い(例えば含水率80質量%以上)ので、発酵が進みにくい。このため、例えば、天日乾燥やドライヤー乾燥などによって、家畜排泄物の含水率を下げた後、発酵させて堆肥を得る方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。また、家畜排泄物に、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させて家畜排泄物の含水率を下げた後、発酵させて堆肥を得る方法も知られている。
【0005】
また、含水率が20〜30質量%程度の鶏糞堆肥、含水率が50質量%程度の牛糞堆肥、含水率が40質量%程度の豚糞堆肥を混合して、含水率を下げる方法も知られている。これらの堆肥の粒径は、含水率が低いほど小さくなるが、鶏糞でウズラ卵〜鶏卵ほどの直径(20〜80mm)、豚糞で握りこぶし大(100mm程度)、牛糞では人頭径(200mm程度)の大きさの塊が混在する。
【0006】
有機化合物は、畜舎構造によって、糞尿分離、糞尿混合、飼料と糞尿、混合など多様な形態で堆肥が製造されるが、糞には少なくとも尿が少なくとも10重量%以上は混ざった状態である。
【0007】
堆肥化の発酵熱を60℃以上、2日間で雑草種子は死滅することが知られているが、これは塊の部分では死滅が期待できず、少なくとも100mm径以上の塊では死滅していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−4033号公報
【特許文献2】特開平11−77095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、家畜排泄物の含水率を下げて、堆肥として鶏糞で20〜30質量%程度、牛糞で50質量%程度、豚糞で40質量%程度の含水率にするために、家畜排泄物を天日乾燥させる方法では、寒冷地や冬季、多湿気候などの環境下では充分に含水率を下げることが困難であり、また、所定の含水率まで水分を蒸発させるのに時間がかかるという課題があった。
【0010】
また、ドライヤー乾燥により家畜排泄物の含水率を下げる方法では、化石燃料や多量の電力が必要となるため、製造コストが高くなり、また、温室効果ガスの排出量が増加して環境にも好ましくない。一方、おが屑、籾殻、バーク材等を混合させて家畜排泄物の含水率を下げる方法は、近年、これらの材料の発生量が減少した結果、こうしたおが屑、籾殻、バーク材等を低コストで大量に入手することが困難になりつつあり、やはり、製造コストが高くなるという課題があった。さらに、おが屑、籾殻、バーク材等は、発酵が家畜排泄物に比べて進まないために、未発酵で残るために品質の悪い堆肥が製造されるという課題もあった。
【0011】
本発明は、段落「0002」項の含水率よりさらに低い含水率の肥料の製造を目的としているため、段落「0008」項、段落「0009」項の理由より、本発明の低含水率の堆肥の製造は、効率やコストの面から不可能とされてきた。
【0012】
一方、含水率を25%質量とした堆肥の製造は、堆肥をペレット化して、減容と高価格で販売を目的とした場合には実用化されているが、上記課題とペレット製造装置の高価格のために厳しい状況にある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、堆肥の含水率を適切に調整し、低含水率の肥料を、低コストかつ効率的に製造することが可能な肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、堆肥の利用に際しては、肥料の効果と土壌改良の効果を求めることが多い。特に、土壌改良の効果を主として求める場合には、予め雨にさらして塩素濃度やカリウム濃度を下げることが行われてきた。または、おが屑、籾穀、バーク材等を多く混合させて十分に発酵させた堆肥が好まれた。
【0015】
近年の家畜排泄物法の施行により堆肥の野ざらしが禁止されたことにより、塩素濃度やカリウム濃度が高く、野菜作、水田作では予期せぬ肥料の発現により、土壌肥料の従来の知見に基づく栽培が大きく乱され、収量や病害虫の発生に結びつくこともある。特に、塩素濃度10000ppm以上、カリウム濃度40000ppm以上の堆肥は、発芽障害や連用では土壌の高塩素濃度化が生じやすく、土壌改良を求める農家からは敬遠されており、塩素濃度5000ppm以下、カリウム濃度20000ppm以下の堆肥が望まれている。
【0016】
堆肥の利用は、環境やエネルギー問題から推奨され、できるだけ多くの堆肥を利用したい。一方、堆肥の肥料成分は、近年の有機農業や肥料の高騰により要望されているが、一般に堆肥は、肥料成分が作物の必要量に対してバランスが悪く、特に肥料設計で一般に基準とする窒素成分を満たすと、カリウム濃度が過剰になり、カリウム濃度が施用量の制限要因となっている。このため、堆肥の散布と窒素成分を補うための化成肥料の散布を行う、2重の手間が必要とされ、堆肥の施用が敬遠される問題があった。また、ビニールハウス等の降水を利用しない施設栽培では施用された堆肥の塩類濃度が蓄積し、塩類障害が問題となっている。
【0017】
肥料効果を期待して、より大量の堆肥を施用したい場合には、カリウム濃度が30000ppm以下の堆肥は、窒素成分を基準とした施用が可能となり、通年施用により有機農業が容易になるなど、カリウム濃度30000ppm以下の堆肥が望まれている。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、肥料の塩素濃度、カリウム濃度を適切に調整し、低塩素、低カリウムの堆肥を、低コスト、かつ効率的に製造することが可能な肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【0019】
次に、段落「0005」項記載の方法では、家畜排泄物の含水率が高い(例えば含水率80質量%以上)場合では、できた堆肥の25質量%以上も副資材として利用することとなり、加えてこの方法でできた堆肥は、段落「0003」項記載の塩素濃度10000ppm以上、カリウム濃度で30000ppm以上の高塩素、高カリウムの堆肥が製造される。
【0020】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、低含水率かつ低塩素、低カリウムの肥料を副資材として高含水率の家畜排泄物に混ぜることにより、低含水率、低塩素、低力リウムの肥料を、低コスト、かつ効率的に製造することが可能な肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【0021】
段落「0006」項記載の塊がある堆肥では、そのままでは、専用の堆肥散布機を用いる必要があること、塊内の含水率が高いこと、塊内の種子の死滅が保障されていないことなどから、できるだけ均質な堆肥が望まれていた。また、塊を篩いで選別すると製造される堆肥の量が少なくなり、コストが高くなる等の問題がある。
【0022】
20mm以下の堆肥で低含水率であれば、堆肥散布機ではなく、粒状の肥料散布機での施肥が可能となる。さらに、加熱前の分級、粉砕、解砕は乾燥効率の向上が期待でき、加熱後の分級、粉砕、解砕はこれら作業効率の向上が期待できる。
【0023】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、粒度が最大粒子径20mm以下の肥料を提供することを目的とする。更に、最小粒度2mm以上の肥料であることが好ましい。
【0024】
家畜排泄物を糞と尿に分離すると、塩素、カリウムは液中にイオンとして存在しており、その大部分は尿中に含まれている。また、尿が混ぎることにより、高含水率の家畜排泄物となる。
【0025】
畜舎設備における糞尿分離畜舎でも、糞尿のハンドリングを主体としたものであり、尿の混入はさほど問題とされなかった。むしろ、糞だけでは扱いが大変なので、糞尿分離畜舎でも尿の混合を許容しなけれぼポンプやスクレーパの抵抗が大きく、設備の損傷が生じることもあり、糞と尿に着目した堆肥化は行われてこなかった。
【0026】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、尿の混入が少ない家畜排泄物による肥料の製造方法と、尿が混入した場合は積極的な加水処理と積極的な固液分離により塩素、カリウム濃度の低い肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【0027】
有機廃棄物の堆肥化では、良好な堆肥化過程を経て製造された堆肥は、これら有機廃棄物に含まれた種子は発芽能力がなく、また腸チフス菌、赤痢菌、ブドウ球菌、大腸菌、回虫(卵)、クリプトスポリジウムなどが死滅する。しかしながら、飼料畑における堆肥を原因とする在来雑草の繁茂、O157の発症における堆肥への嫌疑など、堆肥を取り巻く課題は多くある。
【0028】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、従来の堆肥化過程における正しい発酵の促進に加えて、排熱により加熱することにより、植物種子、微生物、細菌を死滅させる衛生上安全で、かつ低コストな肥料の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
上記課題を解決するために、本発明は次のような肥料及びその製造方法を提供した。
すなわち、本発明の肥料の製造方法は、家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、セメント製造設備、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設、さらに畜産施設の設備から排出される排熱により少なくとも60℃以上に加熱し、その含水率を25質量%以下とした低含水率の肥料を形成する工程を備えたことを特徴とする。
【0030】
畜産施設以外の施設の利用には、段落「0002」項程度の肥料を畜産施設以外の施設に移動させる工程と、本発明の肥料を前記有機廃棄物の発生源に移動させる工程を有することを特徴とする。
【0031】
畜産施設以外の施設で利用される資材を畜産施設以外の施設で添加する、もしくはこの資材を本発明の有機廃棄物の発生源に移動させ、段落「0002」項程度の肥料を製造する工程で添加し、含水率を調整する工程を含むことを特徴とする。
【0032】
本発明の肥料の製造方法は、家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、塩素濃度5000ppm以下、カリウム濃度20000ppm以下とするための、牛糞、豚糞では尿分を除いた肥料化を、尿分が含まれている場合は、加水ならびに固液分際を行う過程を、鶏糞では加水と固液分離を行う工程で低塩素、低カリウムの肥料を形成するエ程を備えたことを特徴とする。
【0033】
前記低含水率、低塩素、低カリウムの肥料を前記有機廃棄物に混合し、水分調整を行った肥料を形成する工程を更に備えていることを特徴とする。
【0034】
前記低含水率、低塩素、低カリウムの肥料の最大粒子径を20mm以下にするために、加熱後は篩い等による分級で、植物種子、微生物、細菌を死滅させた肥料の製造、加熱前の粉砕、解砕で20mm以下の肥料を加熱することが好ましい。
【0035】
前記設備の排熱により、前記有機廃棄物を少なくとも60℃以上に加熱し、植物種子、微生物、細菌を死滅させることが好ましい。特に、排熱温度が高湿であることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の肥料、肥料の製造方法によれば、低含水率の肥料を製造する際に、工場設備等で生じた排熱を利用することにより、新たに化石燃料を燃焼させて熱源を発生させることなく、余剰な熱エネルギーを有効に活用できる。これにより、温室効果ガスの発生を抑制して地球環境の保全に役立つと共に、低コストで肥料を製造することが可能になる。
【0037】
低塩素、低カリウムの肥料は、土壌改良効果、温室での利用等肥料の利用が促進される。また、本発明による肥料は、窒素成分とカリウム成分の比が、従来肥料では得ることができない成分比であることから、窒素肥効に基づいた施肥設計による有機農業の促進、段落「0002」項記載の肥料等との混合により肥料の成分調整が容易になる。
【0038】
工場設備等で利用される低含水率の資材を有機廃棄物の発生源に移動(運搬)させ、あるいは工場内において、有機廃棄物に対して低含水率の資材を混合することによって、一層低コストに有機廃棄物の含水率を低減することができる。
【0039】
肥料の含水率を25質量%以下としたので、水分の多い家畜排泄物などの含水率を効果的に低減させ、発酵に適した含水率にすることができる。また、肥料の最大粒子径を20mm以下にすることによって、家畜排泄物との混合を容易に行うことができ、均一な混合物を得ることができる。
【0040】
本製造方法による低コスト、安全な低塩素、低カリウム、低含水率の肥料は、従来にない機能を備えているので、肥料の機能の差別化と用途の拡大が期待できる。特に、高価格での販売が期待できるので、加水処理、固液分離処理、畜舎施設の糞尿分離の促進などの従来、コスト的に不可能と思われた設備、施設への投資が可能となり、畜産環境の改善、畜産物の販売だけでなく、肥料の販売による畜産経営への寄与が期待できる。
【0041】
前記各項記載の肥料の製造方法によれば、固液分離、加水、糞尿分離の徹底など、従来よりエネルギーやコストがかかる作業も、前記各項記載の肥料製造方法により、コストが相殺もしくはより低減できる。さらに、いったん低含水率、低塩素、低カリウムの肥料が製造できれば、これをオガ屑、籾穀、木屑の代わりに用いることで低コストで発酵も進み、さらなる低コスト化が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明における肥料の製造方法の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の肥料の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明の肥料の最良の形態について説明する。
なお、本実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0044】
本発明において、肥料という表記は、堆肥を含むものと定義される。即ち、堆肥とは、一般的に発酵工程を経て製造される肥料の一種であり、以下の肥料という表記は、これら堆肥を含むものである。
【0045】
本発明の肥料は、家畜排泄物を含む有機廃棄物と水とを含有してなるスラリーまたは洗浄水を、脱水し、これによって得られるケーキもしくはこれにより製造される肥料を、設備から排出される排熱により、少なくとも60℃以上、好ましくは85℃以上に加熱して含水率が25質量%以下の肥料が得られる。
【0046】
なお、ここでいう設備(工場)としては、セメント製造設備、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設ならびに畜産施設が挙げられる。設備からの排熱は100℃以上で高熱であればより好適である。
【0047】
肥料の塩素壌度は5000ppm以下が好ましく、より好ましくは2500ppm以下である。カリウム濃度は20000ppm以下が好ましく、より好ましくは窒素濃度と同じ濃度である。
【0048】
本発明の肥料の含水率は、25質量%以下が好ましく、より好ましくは5質量%以上かつ15質量%以下、更に好ましくは、5質量%以上かつ10質量%以下である。この低含水率の肥料を上記の家畜排泄物と混合することにより、水分が多量に含まれた家畜排泄物の含水率を容易に下げることができ、肥料の製造をより好適にすることもできる。
【0049】
また、本発明の肥料は、最大粒子径が20mm以下であるのが好ましい。最大粒子径を20mm以下にすることによって、家畜排泄物との混合を容易にし、均一な混合物を得ることができる。さらに、低塩素、低カリウムの肥料を製造しようとするとき、肥料の塩素濃度が2500ppm以下であることが好ましい。
【0050】
家畜排泄物の内、できるだけ尿が混ざっていない状態、例えば乳牛では糞だけの塩素濃度は3500ppmであり、この糞を肥料化することで塩素濃度が3500ppm以下の肥料が容易に得られる。カリウム洪度についても同様なことがいえる。尿だけについては、圃場への直接施肥や水処理も簡単になり、家畜糞尿処理コストの低減化が図れる。
【0051】
糞尿混合設備から排出された有機廃棄物は、塩素渡度が5000ppm以上、カリウム濃度20000ppm以上であることから、従来のようにこのまま肥料化するとこれらの濃度が高いままの肥料が製造されるので、加水や固液分離を行った固形分について肥料化を行う。
【0052】
以下、本発明に係る肥料の製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の肥料の製造方法に用いられる装置の構成を示すブロック図である。また、図2は、本発明の肥料の製造方法を示すフローチャートである。
図1において、11は上記の家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水に含まれる有機廃棄物の脱塩を行う脱塩設備(装置)(但し、図1では脱水機と表示する)、12は脱塩された有機廃棄物の乾燥を排熱を利用して行う乾燥設備(装置)(但し、図1では乾燥機と表示する)、13は乾燥後の有機廃棄物の粉砕、分級などを行う粉砕機、15は有機廃棄物の発酵を行う発酵設備である。
【0053】
脱塩設備(脱水機)11は、上記の家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水を貯留する槽と、これを固液分離するスクリュープレス等からなる固液分離機とを備えている。乾燥設備(乾燥機)12は、セメント製造設備のセメントキルン、仮焼炉、クリンカクーラー、サスペンションプレヒーター等で生じた排熱を用いて乾燥または加熱乾燥する。
【0054】
発酵設備15は、脱塩有機廃棄物を発酵させる際に生じる発酵熱を用いて、この脱塩有機廃棄物を乾燥または加熱乾燥させる設備であり、例えば、縦型密閉式発酵槽、横型開放式発酵槽、横型開放式肥料舎等が好適に用いられる。
【0055】
粉砕機13は、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行うことにより直径20mm以下の粒子状とする分級機能を有するもの、例えば、自動乳鉢、解砕機、スタンパ、ニーダー、ロールミル等が好適に用いられる。
【0056】
本発明の肥料を製造する際には、まず、鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物(有機廃棄物)を用意する。次に、例えば、この家畜排泄物に水を加えて混合し有機廃棄物のスラリーを形成する(S1)。このような水の添加は、家畜排泄物(有機廃棄物)の含水率が低い場合に行えば良い。有機廃棄物のスラリーとしては、例えば、豚の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、牛の糞や尿を含む排泄物を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、鶏のケージ等を水洗により洗浄した排泄物含有処理水、豚糞尿、牛糞尿、鶏糞尿等の畜糞尿を等量以上かつ20倍量以下の水に投入・撹拌して得られる畜糞尿含有スラリー等が挙げられる。これら高含水率有機廃棄物は、その用途によっては、2種類以上を混合してもよい。また、豚や牛の糞尿のように含水率が80質量%以上と高含水率になっている場合、特に洗浄水を加えなくても良い。
【0057】
このスラリー中の水には、家畜排泄物に含まれる塩素が溶出される。このスラリーを脱水機11に入れ、所定の含水率になるまで脱水を行う。これにより、塩素やカリウムを溶解した水分が脱水され、低塩素、低カリウム(以下、脱塩有機廃棄物)が得られる(S2)。
【0058】
家畜排泄物含有処理水、食品廃棄物含有処理水等の高含水率有機廃棄物を脱塩設備の1次槽に一旦貯留し、送液ポンプ等を用いて1次固液分離機に投入し、この高含水率有機廃棄物をケーキ(固形分)と1次スラリー(水溶液)に固液分離する。次いで、この固液分離により生じた1次スラリーを調整槽に投入して貯留し、この1次スラリーを調整槽の計量槽等の定量供給装置を介して1次曝気槽に導入し、この1次スラリーに1次曝気処理を施す。
【0059】
次いで、この1次曝気処理が施されたスラリーを、送液ポンプ等を用いて2次固液分離機に投入し、このスラリーをケーキ(固形分)と2次スラリー(水溶液)に分離し、この固液分離により生じた2次スラリーを2次曝気槽に投入し、2次曝気処理を施す。次いで、この2次曝気処理されたスラリーを膜浸漬槽に投入して膜浸漬処理を施し、汚泥と処理水とに分離する。次いで、この汚泥を脱水処理装置に導入して、脱水処理を施し、更にケーキ(余剰汚泥)を得る。
【0060】
これにより、高含水率有機廃棄物は、前記一連の固液分離により効果的に脱塩処理が施され、含水率が90質量%以下、好ましくは80質量%以下のケーキ状の脱塩有機廃棄物となる。この膜浸漬槽及び脱水処理装置から排出される処理水は、処理水受槽に一旦貯留された後、放流される。
【0061】
このような脱水機11、即ち脱塩設備を経て得られた脱塩有機廃棄物は、例えば含水率が90質量%以下、残留塩素濃度が5000ppm以下である。
【0062】
次に、脱塩有機廃棄物に、本発明によって得られた肥料(低塩素、低カリウム(塩素濃度が5000ppm以下、カリウム濃度が20000ppm以下のもの))を添加し、含水率を50質量%〜70質量%に調整した後、発酵熱により乾燥され、例えば、含水率50質量%以下になる。
【0063】
更に、これを乾燥機12に投入し、例えば、セメント製造設備から排出される排熱によって脱塩有機廃棄物を少なくとも60℃以上、好ましくは80℃以上に加熱させ、所定の含水率まで水分を蒸発させる。乾燥機12の熱源となる排熱は、セメント製造設備のセメントキルンで生じた排熱の他、各種製造業における設備(工場)、発電所、リサイクル設備などでの製造、処理、発電などの過程で生じる排熱を乾燥機12の熱源として利用できる。具体例としては、バイオマス発電所、製紙工場、製鉄所、および廃棄物処理施設などから排出される排熱が挙げられる。
【0064】
以上のような乾燥機12で乾燥された脱塩有機廃棄物は、含水率が25質量%以下となる。また、最大粒子径が20mm以下、塩素濃度が5000ppm、カリウム濃度が20000ppm以下である。
【0065】
なお、排熱の発生源としてセメント製造設備を利用する場合、セメント製造設備で生じる資材、例えば石灰等を有機廃棄物に混合し、含水率の低減(乾燥)を促進させることも好ましい。こうしたセメント製造設備で生じる、例えば含水率が5〜15質量%の石灰を混合することによって、含水率の低減を促進できるだけでなく、有機廃棄物の消毒、滅菌を行うこともできる。また、他の設備(工場)で生じる低含水率の各種資材を混合することも好ましい。
【0066】
こうして製造した、低含水率の肥料を、例えば、水分の多い(例えば含水率80質量%以上)家畜排泄物に混合することにより発酵肥料を得る。鶏糞、牛糞、豚糞等の畜糞尿を含む家畜排泄物と、低含水率の肥料とを、例えば混合機に投入し、混合する(S5)。これによって、例えば含水率80質量%以上の家畜排泄物の含水率を50〜70質量%まで下げる。
【0067】
次に、低含水率の肥料を混合して含水率を低減させた家畜排泄物を発酵設備16に入れて、好気性発酵させる(S6)。こうした発酵時に、含水率を50〜70質量%まで下げた家畜排泄物を用いることによって、発酵が効果的に促進される。以上の工程を経て、発酵肥料が形成される(S7)。
【0068】
以上のように、本発明の肥料の製造方法によれば、家畜排泄物を含む有機廃棄物の含水率を調整する低含水率の肥料を得るための乾燥工程で、例えば、セメント製造工程などの各種設備(工場)で生じた排熱を利用することにより、新たに化石燃料を燃焼させて熱源を発生させることなく、余剰な熱エネルギーを有効に活用できる。これにより、温室効果ガスの発生を抑制して地球環境の保全に役立つと共に、低コストで肥料を製造することが可能になる。
【0069】
また、有機廃棄物の含水率を調整する低含水率の肥料の含水率を5質量%以上かつ25質量%以下とすることによって、水分の多い家畜排泄物などの含水率を効果的に低減させ、肥料の発酵に適した含水率にすることができる。
更に、最大粒子径を20mm以下にすることによって、家畜排泄物との混合を容易にし、均一な混合物を得ることができる。そして、肥料の塩素濃度が5000ppm以下、カリウム濃度が20000ppm以下にすることによって、肥料中の塩素濃度を低減し、肥料として最適な濃度を保つことができる。
【0070】
なお、各種設備で生じた資材、例えば、セメント製造設備で生じる資材、例えば石灰、または、製造した低含水率の肥料を、トラックなどの運搬手段で有機廃棄物の発生源、例えば農場、牧場、養鶏場に移動(運搬)し、この移動の戻り時に有機廃棄物の発生源で生じた有機廃棄物を各種設備に移動(運搬)させるのが好ましい。
【0071】
資材や低含水率の肥料を往路の運搬物として有機廃棄物の発生源に運搬し、有機廃棄物を復路の運搬物として各種設備に運搬するようなサイクルを確立すれば、運搬経費の削減ができると共に、有機廃棄物の回収から低含水率の肥料の製造、そして低含水率の肥料によって水分を調整した肥料の提供に至るまで、一連のサイクルとして安定して運用することが可能になる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
(実施例1)
含水率80質量%の豚糞を、セメント工場へ運搬し、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥し、含水率15質量%の乾燥肥料を得た。これを分級、および解砕して、平均粒径5mm、最大粒径20mmの低含水率の肥料を得た。
【0073】
(実施例2)
含水率50質量%の発酵牛糞を、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率10質量%の乾燥発酵牛糞を得た。これを分級、および解砕して平均粒径3mm、最大粒径20mmの低含水率の肥料を得た。
【0074】
(実施例3)
浄化設備を有する養豚場にて、原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水機にて脱水し、含水率80重量%、塩素濃度2000ppm、カリウム濃度10000ppmの脱水ケーキを得た。この脱水ケーキを、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率15質量%、塩素濃度2000ppm、カリウム濃度10000ppmの乾燥肥料を得た。これを分級、および解砕して平均粒径5mm、最大粒径20mmの低含水率の肥料を得た。
【0075】
(実施例4)
浄化設備を有する養豚場にて、原水槽より汲み上げた豚糞スラリーを脱水機にて脱水し、含水率80質量%、塩素濃度1500ppm、カリウム濃度8000ppmの脱水ケーキを得て、これを開放式直線型肥料舎にて肥料化し含水率40重量%、塩素温度1500ppm、カリウム濃度8000ppmの発酵肥料を製造した。この脱水ケーキを、セメント工場の300℃のキルン排熱を熱源として用い、ロータリードライヤーで乾燥して含水率10質量%、塩素濃度1500ppm、カリウム濃度8000ppmの乾燥物を得た。これを分級、および解砕して平均粒径2mm、最大粒径20mmの低含水率の肥料を得た。
【0076】
(実施例5)
含水率80質量%、塩素濃度5000ppm、カリウム濃度20000ppmの豚糞100kgに対して、含水率5質量%、塩素濃度2500ppm、カリウム濃度10000ppmの肥料を44kgの割合で添加して、含水率60質量%に調整した。これを開放式直線型肥料舎にて肥料化した。その結果、塩素濃度3300ppm、カリウム濃度13600ppmの良質な肥料を得た。
【0077】
(比較例1)
含水率80質量%、塩素濃度10000ppm、カリウム濃度40000ppmの豚糞100kgを開放式直線型肥料舎にて乾燥させると、塩素濃度10000ppm、カリウム濃度40000ppmの高塩素、高カリウム濃度の肥料ができた。
【0078】
(比較例2)
含水率80質量%の豚糞を化石燃料の燃焼によるロータリードライヤーで乾燥して含水率45質量%の乾燥肥料を得た。これを分級、および解砕して粒度調整を試みたが、含水率が高く、湿潤状態のため良好な調整ができなかった。
【0079】
(実施例6)
セメント工場等で生じた含水率が5〜15質量%の資材を、有機廃棄物の引取りに従来は空荷であった運搬車に積載し、有機廃棄物の発生源である養豚場に運搬した。そして、この養豚場で生じた含水率が80質量%の豚糞に資材を混合または肥料化することによって、含水率20質量%、塩素濃度2000ppm、カリウム濃度10000ppmの良好な肥料が得られた。
【0080】
(実施例7)
塩素濃度が5000ppmの糞をそのまま肥料化すると、塩素渡度が5000ppmの低塩素肥料が製造できた。また、すでに製造された低含水率の肥料、5質量%以上かつ25質量%以下の肥料を水分調整剤として利用すると、おが屑、籾穀、木屑などの難分解性の調整材を用いないで、しかも単一の材料からなる低含水率の肥料が製造できた。
【0081】
(実施例8)
低含水率の製造肥料は、25質量%以下であることから、臭気の発生が少なく、特に高温の工場排熱を用いた乾燥では、臭気を発生する揮発成分が100℃以上の乾燥空気で品温が60℃以上に確実にあげられているため、臭気の少ない肥料が得られた。
【0082】
(実施例9)
180℃の工場排熱を用いた約2秒間の気流乾燥では、品温が80℃に上昇し、35質量%の肥料が22質量%以下に乾燥できた。この乾燥により、臭気も少ない肥料が得られた。さらに、この方法により、輸入飼料中に含まれる雑草の種子の死滅も確認できた。さらに、除草剤等の環境負荷物質、たとえばアトラジンなども揮発性を有することから、これら物質の低減も期待できる。
【0083】
(実施例10)
工場排熱を用いた気流乾燥において、肥料の投入前に、かご型粉砕機で粉砕することにより、20mm以下の最適な粒径と気流温度を肥料表面から内部に確実に伝えることが可能となり、また、バグフィルター等で2mm以下の粒径を除いた2〜20mm粒径の肥料が得られた。この肥料は、一般に乾燥が進むと粉塵が発生しやすく、扱いが難しくなるのに対して、最適な粒度を持った肥料で、粉塵の発生も少なく、肥料の散布、混合が容易であった。また、2mm以下の肥料は工場における燃料として最適な粒径であり、この方法を用いれば、工場設備も低コストに利用できた。
【0084】
(実施例11)
工場排熱を用いた低含水率の肥料は、大腸菌群、サルモネラ菌などの食中毒原因細菌や肥料化細菌も死滅するので、この肥料にEM細菌などの有用細菌を添加するなど、付加価値の高い肥料が得られた。
【0085】
(実施例12)
工場排熱を用いないで、低塩素の肥料を農場内で燃焼させて、低塩素肥料を乾燥させた。燃焼熱は、縦型コンポで利用すれば、含水率35質量%の肥料を含水率25質量%に低コスト、短期間で乾燥できた。また、燃焼炉の塩素による損傷も少なく、燃焼灰も塩素渡度が少ないことから、肥料として従来の燃焼灰より有効に利用できた。
【符号の説明】
【0086】
11 脱水機、12乾燥機、13 粉砕機、16 発酵設備。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、設備から排出される排熱により少なくとも60℃以上に加熱し、その含水率を25質量%以下とした低含水率の肥料を形成する工程を備えたことを特徴とする肥料の製造方法。
【請求項2】
家畜排泄物を含む有機廃棄物またはこれをを含有してなるスラリーまたは洗浄水、もしくは家畜排泄物を発酵させた有機廃棄物を、塩素濃度5000ppm以下、カリウム濃度20000ppm以下とした、低塩素、低カリウムの肥料を形成する工程を備えたことを特徴とする肥料の製造方法。
【請求項3】
前記低含水率の肥料または、低塩素、低カリウムの肥料を前記有機廃棄物に混合し、水分調整を行った肥料を形成する工程を更に備えたことを特徴とする請求項1または2記載の肥料の製造方法。
【請求項4】
前記有機廃棄物を加熱前または加熱後に、分級、粉砕、解砕のいずれか1つまたは2つ以上を行い、粒度を最大粒子径20mm以下に調整することを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の肥料の製造方法。
【請求項5】
前記有機廃棄物は、塩素濃度、カリウム濃度が高い尿分を除いた糞、もしくは糞尿混合の時は加水し、固液分離を行ったものであることを特徴とする請求項1ないし4いずれか1項記載の肥料の製造方法。
【請求項6】
前記設備の排熱により、前記有機廃棄物を少なくとも60℃以上に加熱し、植物種子、微生物、細菌を死滅させることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1項項記載の肥料の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし6いずれか1項記載の肥料の製造方法によって製造したことを特徴とする肥料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−235360(P2010−235360A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83820(P2009−83820)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】