説明

肥料散布機の散布カバー

【課題】 堆、厩肥を散布する肥料散布機によって粉、粒体の肥料を散布する形態では、散布口から前方へ拡散放出される肥料が風によって吹き飛ばされ易く、目的位置への散布が困難で、作業者に飛散して不衛生となり易い。
【解決手段】 拡散羽根1の回転により肥料を散布させる散布口2の前側上部にシート支枠3を設け、このシート支枠3には、これら散布口2の前上部及び外周部を覆うシートカバー4を支持させることを特徴とする肥料散布機の散布カバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
堆、厩肥や、粉粒肥料等を圃場面に拡散、散布する肥料散布機において、強風時等でも散布口から圃場面へ広く拡散して、的確な肥料散布を行わせる散布カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
堆、厩肥を散布する肥料散布機の散布口の上側部を覆うビータカバーや、散布口の左右両側部を覆うサイドカバー等を設ける技術(例えば、特許文献1,2参照)が知られている。
【特許文献1】特開第2912060号公報(第3項、図2)
【特許文献2】実公平7−51850号公報(第3項、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
堆、厩肥を散布する肥料散布機によって粉、粒体の肥料を散布する形態では、散布口から前方へ拡散放出される肥料が風によって吹き飛ばされ易く、目的位置への散布が困難で、作業者に飛散して不衛生となり易い。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に記載の発明は、拡散羽根1の回転により肥料を散布させる散布口2の前側上部にシート支枠3を設け、このシート支枠3には、これら散布口2の前上部及び外周部を覆うシートカバー4を支持させることを特徴とする肥料散布機の散布カバーの構成とする。肥料散布機は拡散羽根1の回転によって、ホッパーから繰出される肥料が散布口2を前方へ拡散放出されて、前方へ左右広域幅にわたって飛散される。このとき散布肥料が風の影響を受け易いときは、シートカバー4を散布口2の前側上部に取付ける。散布口2の前側上部にシート支枠3を取付けて、このシート支枠3にシートカバー4を取付けて、散布口2の前側上部及び外周部を散布域にわたって覆う。散布口2から前方へ排出される肥料はこのシートカバー4内域に案内されて、所定の散布域内に散布される。例え、強風が吹いても、風がシートカバー4内に通り難く、直接散布口2に当ることも少く、シートカバー4の上側部や外周部への肥料飛散を防止する。
請求項2に記載の発明は、前記シート支枠3は散布口2上方部に折畳収納可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の肥料散布機の散布カバーを特徴とするものである。シートカバー4を取付けるときは、散布口2の上方部に収納されているシート支枠3を開いて、散布口2の前側上部に位置させ、このシート支枠3にシートカバー4を取付けて、散布口2の前側上部を覆う。又、このシートカバー4を不要とするときは、シート支枠3を折畳んで散布口2の上部に収納保持させる。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の発明は、散布口2の前側上部から外周部をシートカバー4で覆うため、シート支枠3によって広域にわたって、シートカバー4を被覆させることができ、シートカバー4内への通風や、散布口2部への直接の風当りを防止して、散布肥料の上方乃至外方への飛散を少くして、的確な肥料散布を行わせると共に、衛生的な散布作業を行うことができる。
請求項2に記載の発明は、シート支枠3を散布口2の上側部に収納支持させているため、シートカバー4使用時の取出、シートカバー4不使用時の収納を簡単、容易に行わせることができ、収納状態においても邪魔にならない形態とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面に基づいて、肥料散布機の概要構成は、左右一対のクローラ8を有する車台9上前部に、肥料を収容するホッパー10や、繰出ロータ11,12及び拡散羽根1等からなる散布装置13を設け、この後部に伝動機構14、エンジン15、及びハンドル16等を設けて、このハンドル16の把持操作により前進走行しながら、拡散羽根1の回転により散布口2から前方へ肥料を拡散散布させる。ホッパー10は、左右両側壁17部と前壁18部と後壁19部を有する。これら前壁18は、前側へ水平状に回動させて開くことができ、前側から肥料の供給を容易に行わせる。又、後壁19はハンドル20を有して、前後に揺動させて肥料の繰出流下を円滑に行わせることができる。このホッパー17内には、底部の繰出口21上に繰出ロータ11を軸22装し、更にこの上方で傾斜の緩い後壁19側上に上部繰出ロータ12を軸23装する。
【0007】
前記ホッパー10の底部繰出口21は、左右の側壁17間のホッパー幅にわたって広く形成されて、繰出ロータ11によって繰出される肥料を下側の拡散羽根1の回転する拡散室26内に流下することができる。又、この繰出口21には前後動して開閉するシャッター27が設けられて、ハンドル16部の操作レバー28によって、連動ロッド29、及びリンク機構30等を経て開閉される。拡散室26には、左右一対の拡散羽根1が上下方向の拡散軸31の周りに回転連動される。この拡散室26の前側に散布口2が形成される。この拡散羽根1の回転により、繰出口21から繰出される肥料を受けて散布口2から前方へ放出させて散布させる。この散布口2の中央部には肥料を左右両側へ案内する分岐板32を設け、散布口2の両側前方には、サイドガイド板33が設けられる。ホッパー10の前壁18、及び後壁19の内面にはゴムマット34,35が敷設されて、肥料の繰出を円滑に行わせる。
【0008】
この散布口2の前方にシートカバー4を設ける。このシートカバー4は合成樹脂製シートのような軽薄シートであるため、細材からなるシート支枠3によって支持、乃至吊持させる構成とする。シート支枠3は、針金材で軽量に構成され、散布幅にわたって幅広く形成される。又、ホッパー10の前壁18部に沿って折畳収納される。略散布口2幅の方形状に形成されるセンタフレーム38と、この左右両側に折畳回動可能に形成されるサイドフレーム39とを主体として、ホッパー10の前側に吊下フレーム40、鎖41、及びワイヤー42等を介して吊下げる。このサイドフレーム39の内辺部は蝶番43によって内側へ折畳回動可能に連結され、後辺部は散布口両側部から前方外側にわたるように傾斜させている。センタフレーム38の後端左右両部にはフック44を設けて、ホッパー10の側壁18面のピン45に係合させて取付けることができる。このセンタフレーム38の前辺部にはソケット46を設け、前記吊下フレーム40のエルボ部47を嵌合させて、ヘアピン等で抜止め構成する。この吊下フレーム40の先端左右両側部には鎖41を係合連結するフック48を設ける。サイドフレーム39の前辺部には、前記ワイヤー42のフック49を係合するフック穴50を複数形成のフックブラケット51を設ける。このフック穴50にフック49を掛け替えてワイヤー42の張りを調節することができる。
【0009】
前記鎖41、及びワイヤー42のホッパー10に対する取付構成は、前壁18の閉鎖位置を固定するロックハンドル52のロックレバー53を利用して、着脱可能に構成している。ロックハンドル52は、側壁17の左右外側前端縁部に固定のロックブラケット54の穴55に、ロックバー53部を挿通して、回動及び左右に摺動自在に支持する。このロックバー53の外側端部にはストッパナット56を螺合させて、内側への移動位置を停止することができる。更に、このロックバー53の外側端部には直結プレート57の穴58を嵌合させて、外側からナット59を螺合して抜止めする。前壁18は下端部を側壁17の後端下部の支軸60の周りに前後に回動させて開閉することができるが、この前壁18の前面左右両側端縁部には、該ロックバー53に対向する位置に切欠部61を形成するロックプレート62を固定している。左右のロックハンドル52を外側へ移動させた状態で、前壁18を前後に回動して開閉することができる。前壁18を閉鎖させてロックするときは、この前壁18を閉めてロックプレート62をロックブラケット54の真横に合せて、ロックハンドル52を切欠部61に合せて内側へ移動させる。このロックバー53の移動がストッパナット56でロックブラケット54に停止された状態で、このロックハンドル52を前側下方へ回動することによって前壁18の前倒れを阻止して、閉鎖固定状態となる。
【0010】
このようなロックハンドル52に対して前記鎖41を連結するには、この鎖41の先端部63をロックブラケット54の外側辺部に嵌合させてから、ロックバー53を穴55に挿通して抜止めする。又、前記このロックバー53の外側端部に嵌合する連結プレート57には、ピン穴64が形成されて、前記ワイヤー42の先端部のエルボ状ピン65を嵌合させて、ヘアピン66で抜止めする。
【0011】
シートカバー4は、合成樹脂製シート状に薄い形態で、シート支枠3の上面に嵌合する広さ形状の上面部70と、この外周部を覆う前周面部71、左右側周面部72、及び散布口2に対向する開口部73の左右両側に位置する後周面部74等から形成される。この上面部70の前端部には、前記シート支枠3のソケット46や、フックブラケット51に嵌合させるシート穴75,76を形成し、このシートカバー4をシート支枠3上に嵌合させた状態で、これらソケット46やフックブラケット51等をシート穴75,76から上側へ突出させることができ、これらソケット46に対する吊下フレーム40の取付けや、フックブラケット51に対するワイヤー42、フック49の取付けを可能とする。このシートカバー4の各周面部71,72,74の下端縁には針金状の重鍾77を一体的に取付けて、強風等によって上方へ吹き上げられないように構成している。
【0012】
前記シートカバー3を被覆するときは、センタフレーム38に対してサイドフレーム39を外側へ開いた状態で、上側からシートカバー3を嵌合させる。このシートカバー3のソケット46やフックブラケット51をシート穴75,76に嵌合させて、上側に突出させる。このソケット46には吊下フレーム40のエルボ部47を差込んで抜止めする。又、フックブラケット51のフック穴50にはワイヤー42のフック49を係合する。吊下フレーム40をセンタフレーム38部上側に回動位置させて、この左右両端のフック48を前記ロックバー53に係合させた鎖41の前端部に係合させる。この鎖41の張りによってセンタフレーム38は吊上げられて、散布口2の前側上側部に沿って水平状態になる。ここで、前記ロックバー53に連結されたワイヤー42の先端部のフック49を、サイドフレーム39のフックブラケット51に係合させることによって、このサイドフレーム39をセンタフレーム38の左右延長面に吊上げて維持することができる。このようにシートカバー4を吊上げると、周部の前周面部71や、側周面72、及び後周面部74は、重鍾77によって垂下状態になり、下端縁部が略散布口2の下端部乃至これよりも下位に垂れ下る。このようにシートカバー4を被覆した形態で肥料の散布作業を行うときは、拡散羽根1の回転によって散布口2から前方へ排出される肥料は、このシートカバー4の開口部73から上面部70や各周面部71,72,74で覆われる領域内に放出拡散されて、下側の走行圃場面に散布される。各周面部71,72,74の下端縁は土壌面に接近するため、このシートカバー4の外部への肥料飛散を阻止する。又、強風時においてもこのシートカバー4内への吸込みが少く、肥料の散布を的確に円滑に行わせることができる。又、前記シート支枠38は、鎖41と、外側前方に開くように張設されるワイヤー42とで吊持されるため、車体揺動等によっても振動することが少く、安定した姿勢に支持される。
【0013】
このシート支枠3を折畳収納するときは、吊下フレーム40をソケット46及び鎖41から外して、シートカバー4を取付けたままの状態で、サイドフレーム39を蝶番43の周りに上側へ折畳回動A,Bさせて、センタフレーム38部上に重合させる。シートカバー4の上面部70や、周面部71,72,74等の一部を折畳重合させた形態として、フックピン45の周りに上方へ回動させて、前壁18の前面に沿わせることができる。このシートカバー3のシート穴75をソケット46から外して、折畳状態のセンタフレーム38の下側に吊下フレーム40を重ねて、このエルボ部47をソケット46部に差込む。この状態の吊下フレーム40のフック48に鎖41の中間部を付替係合させて保持させる。又、この吊下フレーム40は折畳んだシート支枠3と前壁18との間に挟み込んで保持させて、鎖41をセンタフレーム38の左右両側辺部に巻掛けるようにして通し、この鎖4の先端部81を前記ロックブラケット54上端に突出のフック80等に係合させて保持させる。又、このようなシート枠3の折畳収納は、前記シートカバー4を別に取外した状態として同様にして折畳収納させるように構成することもできる。
【0014】
更には、前記センタフレーム38の取付けを前壁18部に直接取付ける形態(図5参照)とすることもできる。センタフレーム38の前記フック44に代えるエルボ部82を嵌合保持させるソケット83が前壁18の下部左右両側部に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】シート支枠、及びシートカバー部の斜視図。
【図2】シート支枠部の斜視図。
【図3】シートカバー部の斜視図。
【図4】ロックハンドル部の斜視図。
【図5】センタフレーム取付部の別実施形態を示す斜視図。
【図6】肥料散布機の側面図。
【図7】その平面図。
【符号の説明】
【0016】
1 拡散羽根
2 散布口
3 シート支枠
4 シートカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡散羽根(1)の回転により肥料を散布させる散布口(2)の前側上部にシート支枠(3)を設け、このシート支枠(3)には、これら散布口(2)の前上部及び外周部を覆うシートカバー(4)を支持させることを特徴とする肥料散布機の散布カバー。
【請求項2】
前記シート支枠(3)は散布口(2)上方部に折畳収納可能に設けたことを特徴とする請求項1に記載の肥料散布機の散布カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−197805(P2006−197805A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−9727(P2005−9727)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000144980)株式会社アテックス (111)
【Fターム(参考)】