説明

肥満の治療又は予防用のメトホルミン及びオルリスタットの使用

【課題】本発明は、肥満症患者を治療するためのメトホルミン及びオルリスタットの使用に関する。
【解決手段】本発明は、肥満の治療又は予防用薬剤の製造における、メトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肥満症患者を治療するためのメトホルミン及びオルリスタット(orlistat)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
テトラヒドロリプスタチン(tetrahydrolipstatin)(「THL」)は膵リパーゼの阻害剤であり、オルリスタットの商品名で知られる。薬剤(特に肥満治療薬)としてのTHLの使用、及び、有効成分としてTHLを含む医薬組成物が、特許文献1中に記載されている。また、オルリスタットの調製方法が、特許文献2中に記載されている。オルリスタット及びシブトラミン(sibutramine)を含む医薬組成物が特許文献3中に記載されている。
【0003】
メトホルミンは主としてその抗高血糖活性によって知られるビグアニドであり、インシュリン非依存性糖尿病の治療において広く使用されている;また、メトホルミンはインシュリンと併用して患者に投与可能である。
【0004】
しかし、メトホルミンがオルリスタットの抗肥満作用の増強を示すことを発見した。
【特許文献1】米国特許No.4598089
【特許文献2】米国特許No.4983746
【特許文献3】PCT特許WO99/33450
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記より、メトホルミンとオルリスタットの併用投与が肥満又は太りすぎの患者に対して有効であることが予想外にも発見された。
【0006】
メトホルミン及びオルリスタットの併用投与により、肥満又は太りすぎの患者の体重調節を著しく改善可能である。より具体的には、メトホルミンとオルリスタットの併用投与によって、肥満又は太りすぎの患者の体重調節又は体重減少に対する相乗的な効果が得られた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、メトホルミン及びオルリスタットの有効量の併用投与を含む肥満の治療又は予防法に関する。
【0008】
別の実施形態において、本発明は、メトホルミン及びオルリスタットの有効量の併用投与を含む肥満の治療又は予防法であって、メトホルミンの有効量が一日当たり約100〜約3000mgである方法を含む。
【0009】
別の実施形態において、オルリスタットの有効量は一日当たり約50〜約1440mgである。
【0010】
別の実施形態において、メトホルミン及びオルリスタットの有効量の併用投与を含む肥満の治療又は予防法において、メトホルミンとオルリスタットとを同時に投与する。
【0011】
肥満の治療又は予防法の別の実施形態において、メトホルミンとオルリスタットとを順次投与する。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、オルリスタットで既に治療した患者に対する肥満の治療又は予防法であって、メトホルミンの有効量を患者に投与することを含む方法を含む。上述したように、メトホルミンとオルリスタットとは同時に又は順次投与する。
【0013】
更に別の実施形態において、本発明は、肥満の治療又は予防法であって、フィブラート系薬剤及び/又はスタチンの有効量の併用投与を更に含む方法を含む。フィブラート系薬剤及び/又はスタチンは同時に又は順次投与可能である。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、肥満の治療又は予防用薬剤の製造における、メトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体の使用を含む。
【0015】
本明細書中に記載するように、メトホルミンとオルリスタットの使用について、オルリスタットをメトホルミンと併用投与するとより効率的に体重を調節できるという予想外に好ましい結果が得られた。
【0016】
本明細書中において、「併用投与」とは、約3〜約4時間までの間に二種以上の化合物を一人の患者に投与することを意味する。例えば、併用投与とは、(1)第一の化合物と第二の化合物とを同時に投与すること;(2)第一の化合物を投与し、その約2時間後に第二の化合物を投与すること;及び、(3)第一の化合物を投与し、その約4時間後に第二の化合物を投与すること;を包含する。本明細書中に記載するように、本発明は、患者にメトホルミンとオルリスタットとを併用投与することを包含する。
【0017】
メトホルミンは、例えばGlucophage(登録商標)850として市販されており、入手可能である。化学的には、メトホルミンは1,1−ジメチルビグアニドである。
【0018】
本発明によれば、メトホルミンは、遊離の塩基として、又は、塩酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、エンボナート(embonate)、クロロフェノキシ酢酸塩、グリコール酸塩、パルモエート(palmoate)、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、パラクロロフェノキシイソブチレート、蟻酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ヘキサン酸塩、オクトノエート(octonoate)、デカン酸塩、ヘキサデカン酸塩、オクトデカノエート(octodecanoate)、ベンゼンスルホン酸塩、トリメトキシ安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、アダマンタンカルボン酸塩、グリコキシレート(glycoxylate)、グルタミン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、1−グルコースリン酸、硝酸塩、亜硫酸塩、ジチオン酸塩若しくはリン酸塩等の医薬品に許容される塩の一種として投与することができる。
【0019】
これらの塩の中で、塩酸塩、フマル酸塩、エンボナート及びクロロフェノキシ酢酸塩が特に好ましい。
【0020】
メトホルミンの医薬品に許容される塩は、本質的に公知の方法で、対応する酸にメトホルミンを作用させることによって得られるものである。
【0021】
オルリスタットはゼニカル(登録商標)として市販されていて入手可能であり、比較的低カロリーな食事と組み合わせて肥満度指数(BMI)30kg/m以上の肥満症患者、又は、危険要因を伴う太りすぎの患者(BMI≧28kg/m)を治療するために使用される。
【0022】
化学的には、オルリスタットは[2S−[2α(R),3β]]−N−ホルミル−L−ロイシン 1−[(3−ヘキシル−4−オキソ−2−オキセタニル)メチル]ドデシルエステルである。また、オルリスタットは、(3S,4S)−3−ヘキシル−4−[(2S)−2−ヒドロキシトリデシル]−2−オキセタノンのN−ホルミル−L−ロイシンエステル、又は、(−)−テトラヒドロリプスタチンとしても知られている。
【0023】
本発明においては、調製物を、カプセル化用担体であるカプセル化物質と活性化合物との調製物であって、他の担体を含む又は含まない活性成分を担体で囲むことによって一体化させた調製物として定義する。経口投与に適した固形の医薬組成物として使用できる、錠剤、粉末、カプセル、丸薬、カシェ剤及びトローチ剤を含む。
【0024】
本発明において、有効量は、治療する病気又は疾患の有害な状態又は徴候を予防又は改善する化合物の量として定義する。患者への投与量、及び、患者への投与頻度は、既知の技術を使用し、かつ、類似状況下における結果を観察することにより、当業者は容易に決定可能である。有効量を決定する際、従事する診断医は、使用する化合物の作用の効能及び持続時間、治療する病気の性質及び重度、治療する患者の性別、年齢、体重、全身の健康状態及び反応性の個人差、並びに、関連する他の条件を含む(これらに限定されない)多くの要因を考慮する。
【0025】
オルリスタットについて、有効量は、約50〜約1440mg/日、好ましくは約120〜約720mg/日、より好ましくは約120〜約360mg/日であり、これを1日あたり1回以上、好ましくは3回に分ける。オルリスタットは食前に経口で投与するのが好ましい。
【0026】
メトホルミンについて、有効量は、約100〜約3000mg/日、好ましくは約500〜約2550mg/日であり、これを1日あたり1回以上、好ましくは2又は3回に分ける。メトホルミンは食事中又は食後に経口で投与するのが好ましい。
【0027】
本発明は、メトホルミンとオルリスタットとを併用投与すると太りすぎ又は肥満症患者(すなわちBMI≧28kg/mの患者)において効果があるという予想外の発見に関する。
【0028】
好ましい実施形態によれば、本発明は、インシュリン非依存性糖尿病と肥満症とを患う患者のサブグループを治療するためのメトホルミンとオルリスタットの併用投与による使用の提供である。
【0029】
別の好ましい実施形態によれば、本発明は、糖尿病は患っていない肥満症患者のサブグループを治療するためのメトホルミンとオルリスタットの併用投与による使用の提供である。
【0030】
従って、好ましい実施形態によれば、本発明は、インシュリン非依存性糖尿病を患う肥満又は太りすぎの患者の体重調節又は体重減少用の薬剤の製造におけるメトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体の使用であって、メトホルミンをオルリスタットの抗肥満作用の増強に使用することを特徴とする使用に関する。
【0031】
更に好ましい実施形態によれば、本発明は、糖尿病を患っていない肥満又は太りすぎの患者の体重調節又は体重減少用の薬剤の製造におけるメトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体の使用であって、メトホルミンをオルリスタットの抗肥満作用の増強に使用することを特徴とする使用に関する。
【0032】
本発明によれば、メトホルミンとオルリスタットは同時に投与してもよいし、順次投与してもよい。本発明の好ましい実施形態において、メトホルミンとオルリスタットを同時に投与する、より好ましくはメトホルミン及びオルリスタットを含む一つの調製物を投与する。
【0033】
従って、別の実施形態によれば、本発明は、メトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体を含む医薬組成物に関する。上記組成物が各有効化合物を治療上有効量含むことは当然であろう。
【0034】
「治療上有効」という表現は、代替療法では通常生じる副作用を回避すると同時に、疾患を予防、又は、その疾患の重度を緩和可能な化合物の効能を示す。「治療上有効」という表現は、「治療、予防又は抑制に有効」という表現と同等の意味を有することは明らかであり、また、これら両表現は、体重調節又は肥満治療を改善可能な併用療法における各化合物の使用量について限定するための表現である。
【0035】
医薬組成物中における各化合物の相対量は様々であってよく、また、上記の量であってもよい。医薬組成物中における上記メトホルミン及びオルリスタットの含有量は、一回投与分、例えば注射一回若しくはカプセル一個によって、又は、投与形態を上限二回若しくはそれ以上投与することによって両成分を好ましい量投与できるような量であってよい。
【0036】
上述するように、本発明の実施形態は、メトホルミンとオルリスタットとの組み合わせの治療上有効量、及び、少なくとも一種の医薬品に許容される担体、佐剤又は希釈剤、及び、必要であれば他の有効化合物を含む医薬組成物に関する。
【0037】
従って、別の実施形態によれば、本発明の医薬組成物は、フィブラート系薬剤及び/又はスタチン等の別の有効化合物を更に含む。
【0038】
本発明の範囲内において、フィブラート系薬剤を、フィブリン酸(fibric acid)誘導体並びにこのフィブリン酸誘導体の医薬品に許容される塩及びエステルを含むPPARαアゴニスト(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体αアゴニスト)として定義する。フィブリン酸誘導体は、VLDL等のトリグリセリド高含有リポタンパク質値を低減し、HDL値を上昇させ、LDL値に様々な影響を及ぼす。VLDL値に対する効果は主に、特に筋肉中における、リポタンパク質リパーゼ活性の増大に起因するようである。これにより、含まれているVLDLトリグリセリドの加水分解が増大し、VLDLの異化も増大する。また、フィブリン酸薬剤は、例えば肝臓におけるアポC−III(リポタンパク質リパーゼ活性の阻害剤)の産生を減少させることにより、VLDLの組成を変える可能性がある。また、これらの化合物については、おそらく脂肪酸の合成阻害及び脂肪酸の酸化促進によって、肝臓におけるVLDLトリグリセリドの合成を減少させることについても報告されている。
【0039】
フィブラート系薬剤は、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート、ベザフィブラート、クロフィブラート、シプロフィブラート、ベクロブラート(beclobrate)、ビニフィブラート(binifibrate)、シプロフィブラート(ciplofibrate)、クリノフィブラート、エトフィブラート(etofibrate)、ニコフィブラート(nicofibrate)、ピリフィブラート(pirifibrate)、ロニフィブラート(ronifibrate)、シンフィブラート(simfibrate)、テオフィブラート(theofibrate)、フィブリン酸誘導体(例えばフェノフィブリン酸(fenofibric acid)又はクロフィブリン酸)、又は、上記フィブリン酸誘導体の医薬品に許容される塩若しくはエステルからなる群より選択可能である。
【0040】
フィブラート系薬剤はフェノフィブラート、フェノフィブリン酸、又は、フェノフィブリン酸の医薬品に許容される塩若しくはエステルであることが好ましい。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、フィブラート系薬剤はフェノフィブラートである。本明細書中において用語「フェノフィブラート」は、(2−[4−(4−クロロベンゾイル)フェノキシ]−2−メチル−プロパン酸1−メチルエチルエステル)又はその塩を示す。
【0042】
フィブラート系薬剤の粒子径は小さくてもよく、例えば、フィブラート系薬剤粒子の平均粒子径は約20μm未満、好ましくは約10μm未満である。フィブラート系薬剤は微粉化又は界面活性剤と共微粉化されていてよい。
【0043】
フィブラート系薬剤の有効量は、約10〜約3000mg/日を1回以上に分けて、好ましくは約50〜約1200mg/日、より好ましくは約50〜約300mg/日である。当業者であれば、上記フィブラート系薬剤の有効量はフィブラート系薬剤の効能に応じて変化するであろうということを理解し認識できるであろう。
【0044】
本発明の範囲内において、スタチンはヒドロキシメチルグルタリル補酵素A(HMG−CoA)還元酵素阻害剤として定義される。HMG−CoAレダクターゼ(3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリルCoA)は、コレステロール生合成における律速反応(メバロン酸塩)を触媒するミクロソーム酵素である。HMG−CoAレダクターゼ阻害剤はHMG−CoAレダクターゼを阻害し、従ってコレステロール合成を阻害する、又は、妨げる。コレステロール合成が阻害されると、血中コレステロール値が減少する可能性がある。
【0045】
スタチンは、ロバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、シムバスタチン、プラバスタチン、イタバスタチン(itavastatin)及びロスバスタチンからなる群より選択可能である。スタチンは、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、及び、テトラメチルアンモニウムイオン等のアンモニウム陽イオンからなる群より選択される塩の形状であってもよい。
【0046】
スタチンの有効量は、使用する特定のスタチンに応じて約0.1mg〜約100mg/日である。
【0047】
本発明の組成物は、経腸投与又は非経口投与(非経口投与は、皮下、筋肉内、皮内、乳房内及び静脈内投与、並びに、従来公知の他の投与方法を含む)が好ましく、経口投与が更に好ましいが、例えば直腸内投与等の他の投与経路も除外されない。
【0048】
本発明の化合物で経口用医薬組成物を調製する際、医薬品に許容される不活性担体は固体又は液体のいずれであってもよい。固体調製物には、粉末、錠剤、コーティング錠、糖剤、トローチ、甘味入り錠剤、分散可能な顆粒、カプセル及びサッシェが含まれる。経口使用用の組成物は、従来公知の任意の医薬組成物製造方法によって調製されてよい。
【0049】
固体の担体は、希釈剤、着香料、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、バインダー又は錠剤崩壊剤としても作用可能な一種以上の物質であってよいし、カプセル化剤であってもよい。
【0050】
粉末の場合、担体は微細化した固体状であり、微細化した活性成分と混合された状態である。錠剤は、必要なバインダー特性を有する担体と有効化合物とが適切な割合で混合されて所望の形及び大きさに成形されたものである。
【0051】
適切な担体には、例えば、炭酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ラクトース、糖、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカントゴム、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロースナトリウム等の不活性な希釈剤が含まれる。
【0052】
また、本発明は、メトホルミン及びオルリスタット並びにカプセル化用担体としてのカプセル化剤(カプセル中においてメトホルミン及びオルリスタットが(他の担体と共に又は単独で)担体で覆われており、担体はメトホルミン及びオルリスタットと一体化している)の調製物も含む。同様に、サッシェも含まれる。錠剤、粉末、サッシェ及びカプセルもまた、経口投与に適した固体の投与形態として使用可能である。
【0053】
錠剤は、被覆されていなくてもよいし、公知の方法で被覆して胃腸管内での崩壊及び吸着を遅らせることにより効果を長時間持続可能としたものであってもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリン等の時間遅延用物質を使用してよい。
【0054】
また、経口使用用の調製物は、(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム又はカオリン等の)固体の不活性賦形剤と有効成分とを混合して含むハードゼラチンカプセルであってもよいし、あるいは、有効化合物をそのままで、又は、水若しくは(例えばアラキッド油(arachid oil)、流動パラフィン又はオリーブ油等の)油状媒体と有効化合物とを混合して含むソフトゼラチンカプセルであってもよい。
【0055】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適切な補形薬と有効化合物とを混合して含むものであってよい。このような補形薬には、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアゴム等の懸濁剤;並びに、天然リン脂質(例えばレシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合物(例えばステアリン酸ポリオキシエチレン)、エチレンオキシドと長連鎖脂肪族アルコールとの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又は、エチレンオキシドと脂肪酸及び無水ヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合物(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)等の分散剤又は湿潤剤が含まれる。
【0056】
また、水性懸濁液は、例えばp−ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル等の一種以上の防腐剤、一種以上の着色料、一種以上の着香料、一種以上の甘味料を含んでいてもよい。
【0057】
油性懸濁液は、有効化合物を、オメガ−3脂肪酸、又は、例えばアラキッド油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油等の植物油、又は、流動パラフィン等の鉱物油中に懸濁することによって調製してよい。油性懸濁液は、例えば密蝋、固形パラフィン又はセチルアルコール等の増粘剤を含んでいてよい。
【0058】
甘味料及び着香料を添加することによって味の良好な経口用調製物を調製可能であり、この調製物は、アスコルビン酸等の酸化防止剤を添加することによって保存可能である。
【0059】
水を添加して水性懸濁液を調製するのに適切な分散可能な粉末及び顆粒において、有効化合物は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び一種以上の防腐剤と混合されている。適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤の例としては、既に上述したものが挙げられる。また、上記以外の補形薬、例えば甘味料、着香料及び着色料等を使用してもよい。
【0060】
新規組み合わせを含むシロップ及びエリキシル剤は、甘味料と共に調製可能である。また、このような調製物は、粘滑剤、防腐剤、着香料及び着色剤を更に含んでもよい。
【0061】
液状調製物は、経口投与に適した溶液、懸濁液及びエマルションを含む。経口投与用の水溶液は、有効化合物を水中に溶解し、必要であれば適切な着香料、着色剤、安定化剤及び増粘剤を添加することにより調製可能である。有効化合物の溶解性を改善するために、エタノール、プロピレングリコール及び他の医薬品に許容される非水性溶媒を添加可能である。経口使用用の水性懸濁液は、天然又は合成ゴム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム及び従来の医薬処方において公知の他の懸濁剤等の粘性物質と共に、微細化した有効化合物を水中に分散させることにより調製可能である。
【0062】
医薬調製物は、一回投与分ずつになっていることが好ましい。この形状は、一回投与量に分けられていて、それぞれが適切な量の有効化合物を含むものである。一回投与分は、異なる量の調製物を含有するパッケージ調製物であってよく、例えば錠剤、カプセル、及び、粉末をガラス瓶又はアンプルにパッケージングしたもの等であってよい。また、一回投与分は、これらをそのままカプセル、カシェ剤若しくは錠剤としたものであってもよく、又は、適切な数の任意の上記パッケージ調製物であってもよい。
【0063】
メトホルミンのために開発された処方を、メトホルミン及びオルリスタットを含む本発明の医薬組成物に使用可能である。このようなメトホルミン処方は、次の特許中に記載される:胃保持剤(gastric retentive)(PCT特許WO9855107及びPCT特許WO9907342)、放出制御メトホルミン組成物(PCT特許WO0236100)、一体型の芯(unitary core)を使用した放出制御法(PCT特許WO9947125)、400mg以下のメトホルミンによる治療法(米国特許第6100300号)、新規メトホルミン塩(PCT特許WO9929314)、二相の放出制御運搬システム(PCT特許WO9947128)、メトホルミン調製物(PCT特許WO9608243)、放出制御法(PCT特許WO0103964及びWO0239984)、メトホルミン錠剤(PCT特許WO03004009)、徐放性組成物(PCT特許WO02067905)、放出制御組成物(PCT特許WO0211701)、胃保持剤(PCT特許WO0006129)、運搬改善用の固体の担体(PCT特許WO0137808)、徐放性組成物用のコーティング法(PCT特許WO02085335)、放出調節組成物(PCT特許WO03002151)、メトホルミンの液状調製物(PCT特許WO0247607)、放出制御装置(PCT特許WO02094227)、メトホルミン急速放出錠剤(日本国特許特開2002−326927)。これらの調製物のうち、一日一回使用するためのメトホルミン調製物が好ましい。
【0064】
また、本発明の組成物は、非経口的にあるいは皮下に、静脈内、筋肉内に、胸骨内に、又は、水性若しくは油性の注射用無菌懸濁液の形で点滴によって投与可能である。このような懸濁液は、上記の適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤又は他の許容される薬剤を使用して、公知の方法によって調製可能である。また、上記注射可能な無菌の調製物は、非経口経路において許容される非毒性の賦形剤又は溶媒中に溶解又は懸濁した、注射可能な無菌の溶液又は懸濁液(例えば1,3−ブタンジオール溶液等)であってもよい。許容される媒体及び溶媒のうちで使用できるものとして、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液を挙げることができる。また、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒体として従来から使用される。この目的において、合成のモノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の弱刺激性の不揮発性油を使用可能である。また、注射用薬剤の調製にはn−3系多価不飽和脂肪酸も使用可能である。
【0065】
また、本発明の組成物は、ネブライザー用のエアゾール若しくは溶液の形で吸入によって、又は、薬剤と適切な非刺激性補形薬とを混合することにより調製された坐薬(常温では固体であるが、直腸温では液体であるため、直腸内で溶けて薬が放出される)の形で直腸経由で投与することもできる。このような材料には、カカオバター及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0066】
上記組成物は、放出制御組成物であることが好ましい。
【0067】
一日分の投与量は、広い範囲に渉っていてよく、それぞれの特定の場合においてそれぞれ必要とされる量に調節されるであろう。一般的に、大人への投与については、適切な一日分の投与量は上述したが、便宜上、上記好ましい範囲を超過してもよい。一日分の投与量は、一回で投与されてもよいし、何回かに分けて投与されてもよい。
【0068】
各化合物の投与量は、患者の年齢、症状の重度及び患者の既往症を含む多くの要因によって異なるであろう。各単位投与量は一般的に(1)メトホルミン約100〜1000mg及び/又は(2)オルリスタット約50〜約720mg、好ましくは約120〜約360mgを含む。通常の一回投与分は好ましくはメトホルミンを500mg、850mg又は1000mg(特に好ましくは850mg)、及び/又は、オルリスタットを120mg含む。しかし、当然のことながら、上記の好ましい投与量と生物学的に同等の投与量のメトホルミン及び/又はオルリスタットを含む調製物は本発明の範囲内である。例えば、Glucophage(登録商標)850調製物と生物学的に同等の投与量のメトホルミンを含む調製物は添付の請求項に包含される。
【0069】
医薬組成物がフィブラート系薬剤を含む場合、各単位投与量は一般的にフィブラート系薬剤約10〜約1000mg、好ましくは約50〜約600mg、より好ましくは約50〜約200mgを含む。医薬組成物がスタチンを含む場合、各単位投与量は一般的にスタチンを約0.1〜100mg、例えば0.1、0.3、0.8、1、2、5、10、20、40又は80mg含む。
【0070】
本発明は更に、上述の治療方法を実施における使用に適切なキットにも関する。一実施形態において、キットは、同時に又は連続して投与するための、本発明の方法を実施するのに十分な量の、(i)一回分以上の投与量のメトホルミン、(ii)一回分以上の投与量のオルリスタット、(iii)任意に一回分以上の投与量のフィブラート系薬剤、及び、(iv)任意に一回分以上の投与量のスタチンを含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
以下に例を示して本発明を更に詳細に説明するが、この例は本発明を制限するものではなく、本発明の好ましい特徴のいくつかを単に説明するものである。
【実施例1】
【0072】
<メトホルミンとオルリスタットの併用投与が体重に及ぼす影響>
この研究は、メトホルミンとオルリスタットの併用が体重に及ぼす影響を調べるために設計したものである。
【0073】
この試験で得られたデータ(表1中にまとめる)は、(1)メトホルミン単独で又はオルリスタット単独で治療したマウスと標準飼料を与えたマウスとの間には有意差があること(治療したマウスの体重は正常になっていない)、及び、(2)メトホルミンとオルリスタットとで併用治療したマウスと標準飼料を与えたマウスとの間には有意差がないこと(治療したマウスの体重は正常になった)を示す。
【0074】
従って、オルリスタットをメトホルミンと併用投与すると、体重をより良好に調節できる。
【0075】
方法
動物:体重約20gのC57BL/6 EOPS雄マウスを試験で使用した。C57BL/6 EOPSマウスは、高脂肪食を与えると肥満して高血糖を発症する正常なマウスである。マウスは5匹ずつ別のケージに入れ、温度、湿度及び光を調節した部屋に静置した(21〜23℃±2℃、明暗サイクル12時間)。マウスには研究用標準飼料又は高脂肪飼料を与え、水を自由に飲ませた。順応させた後、体重に応じてマウスを20匹ずつの群に無作為に分けた。
【0076】
実験群は以下のとおりである。
*1群:標準飼料を与えたマウス
*2群:オルリスタット2mg/kgを高脂肪飼料に混合して経口投与したマウス
*3群:メトホルミン100mg/kgを高脂肪飼料に混合して経口投与したマウス
*4群:オルリスタット2mg/kgを高脂肪飼料に混合して経口投与したマウス、及び、メトホルミン100mg/kgを高脂肪飼料に混合して経口投与したマウス
【0077】
体重を試験の初め、並びに、治療して1週間後及び3週間後にそれぞれ記録した。
統計:データは全て平均±標準誤差で示す。結果を共分散分析に供して基準線に基づいて補正し、その後Turkey−Kramer補正により多重比較を実施した。p<0.1の場合に有意差があると考えた(標準飼料に対して)。
【0078】
【表1】

【0079】
p<0.1;**p<0.05;***p<0.0001;°=有意差がない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肥満の治療用薬剤の製造における、メトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体の使用。
【請求項2】
メトホルミンが医薬品に許容される塩の形状である
ことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記塩が、塩酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、エンボナート、クロロフェノキシ酢酸塩、グリコール酸塩、パルモエート、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、パラクロロフェノキシイソブチレート、蟻酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ヘキサン酸塩、オクトノエート、デカン酸塩、ヘキサデカン酸塩、オクトデカノエート、ベンゼンスルホン酸塩、トリメトキシ安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、アダマンタンカルボン酸塩、グリコキシレート、グルタミン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、1−グルコースリン酸、硝酸塩、亜硫酸塩、ジチオン酸塩又はリン酸塩からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項2に記載の使用。
【請求項4】
メトホルミンが、塩酸塩、フマル酸塩、エンボナート及びクロロフェノキシ酢酸塩からなる群より選択される医薬品に許容される塩の形状である
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
メトホルミンとオルリスタットを同時又は順次投与する
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
メトホルミンの有効量は約100〜約3000mg/日である
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の使用。
【請求項7】
オルリスタットの有効量は約50〜約1440mg/日である
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
メトホルミン、オルリスタット及び医薬品に許容される担体を含む医薬組成物。
【請求項9】
メトホルミンが医薬品に許容される塩の形状である
ことを特徴とする請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記塩が、塩酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、エンボナート、クロロフェノキシ酢酸塩、グリコール酸塩、パルモエート、アスパラギン酸塩、メタンスルホン酸塩、マレイン酸塩、パラクロロフェノキシイソブチレート、蟻酸塩、乳酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、シクロヘキサンカルボン酸塩、ヘキサン酸塩、オクトノエート、デカン酸塩、ヘキサデカン酸塩、オクトデカノエート、ベンゼンスルホン酸塩、トリメトキシ安息香酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、アダマンタンカルボン酸塩、グリコキシレート、グルタミン酸塩、ピロリドンカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、1−グルコースリン酸、硝酸塩、亜硫酸塩、ジチオン酸塩又はリン酸塩からなる群より選択される
ことを特徴とする請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
メトホルミンが、塩酸塩、フマル酸塩、エンボナート及びクロロフェノキシ酢酸塩からなる群より選択される医薬品に許容される塩の形状である
ことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
メトホルミンを約100〜約1000mg含む
ことを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
オルリスタットを約50〜約720mg含む
ことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
メトホルミンを500mg、850mg又は1000mg、かつ、オルリスタットを120mg含む
ことを特徴とする請求項8〜13のいずれか1項に記載の医薬組成物。

【公表番号】特表2007−528886(P2007−528886A)
【公表日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502306(P2007−502306)
【出願日】平成17年3月11日(2005.3.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/002642
【国際公開番号】WO2005/092311
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505199382)フルニエ ラボラトリーズ アイルランド リミテッド (8)
【Fターム(参考)】