説明

肥満及びそれに関連する疾患の治療及び予防のためのプロバイオティック微生物の使用

満腹感シグナル伝達をモジュレートするために被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの株の微生物及び/又はその代謝産物の使用であって、支持物質は薬剤学的に許容される支持物質又は食品である、上記使用。適切には、少なくとも1つの微生物及び/又はその代謝産物は、過剰体重及び/又は過剰体重により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のために被験体に投与することができる。同様に、少なくとも1つの株の微生物及び/又はその代謝産物は、肥満及び/又は肥満により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のために被験体に投与される。好ましくは、微生物はプロバイオティック微生物である。適切には、微生物は乳酸菌であることができる。ある実施形態において、微生物は、ラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp)、及び/又はビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp)、例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.クルバツス(L. curvatus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及び/又はB.ラクチス(B. lactis)の株である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は食欲の満腹感に関する。
【0002】
ある実施形態において本発明は、満腹感シグナル伝達をモジュレートするために、好ましくは満腹感を誘導するためにヒト又は動物に投与される支持物質(support)を調製するための、少なくとも1つの微生物株、好ましくは乳酸菌、好ましくはプロバイオティック細菌、例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)(例えば、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及び/又はL.クルバツス(L. curvatus))、及び/又はビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp.)(例えば、B.ラクチス(B. lactis))の使用に関する。
【0003】
本発明はさらに、過剰体重の治療又は低減又は管理、及び/又は過剰体重が引き起こす疾患の治療、特に肥満及び/又は肥満関連疾患の治療における、少なくとも1つの微生物株、好ましくは乳酸菌、好ましくはプロバイオティック細菌、例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)(例えば、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及び/又はL.クルバツス(L. curvatus))、及び/又はビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp.)(例えば、B.ラクチス(B. lactis))の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
技術的背景
美的(美容的)理由のためのダイエットと体重減少は、世界中の人々の間で行われている。科学者、薬剤開発者、及び食品開発者は、体重を減らしたいというダイエット者たちを援助するため、過去10年間にわたって種々の食欲抑制剤及び/又は体重減少剤及び/又は「健康」食品群を売り出してきた。
【0005】
ダイエットはヒトに限定されず、他の動物も含み、ペットに対するダイエット計画は一般的である。
【0006】
進化的観点からは、動物(ヒトを含む)は腹一杯食物を食べ、飢饉に備えてエネルギーを保存するように適応してきた。しかし残念ながら、これは食物が乏しい時は有用であったが、いつでも食べられる現在は、これが体重超過につながり、ある場合には肥満を招いている。
【0007】
肥満は、大きな公の健康問題になっている。肥満により引き起こされるか悪化する健康状態には、高血圧、真性糖尿病、睡眠時無呼吸、肥満関連換気低下、腰と関節の問題、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、及び胃食道逆流疾患などがある。
【0008】
体格指数(BMI)(体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ったものとして計算される)は、体重超過及び/又は肥満のための最も一般的に認められている測定値である。BMIが25を超えると体重超過とみなされ、肥満はBMIが30又はそれ以上であり、BMIが35又はそれ以上である場合は重症の併存疾患とみなされ、BMIが40又はそれ以上は病的肥満とみなされる。
【0009】
オベスタチンは、ヒトを含む数種の哺乳動物の胃及び小腸の内壁の細胞で産生されるペプチドホルモンであり、これはマウスで食欲を劇的に低下させ、ヒトでも同じことが起きると考えられる。
【0010】
驚くべきことにオベスタチンは、グレリン(これは食欲を増加するペプチドホルモンである)をコードする遺伝子と同じ遺伝子によりコードされる。グレリンとオベスタチンはいずれも、同じ遺伝子により産生されるプロホルモンから得られ、翻訳後プロセシングにより切断される。この機構の目的は不明であるが、これは、マウスからグレリン遺伝子を除去してもその食欲が大きく低下しなかったという以前の知見を説明している。
【0011】
オベスタチンは、肥満に対する薬剤としての使用が考えられているが、このペプチドは胃液により破壊されるため、鼻噴霧剤として又は注射により投与しなければならないであろう。
【0012】
現在、肥満にはいくつかの治療法がある。アメリカ合衆国で使用が認可されている2つの薬剤のうち、RocheのXenicalTM(これは脂肪の消化を阻止する)は体重減少を促進するのに比較的有効であるが、いくつかの好ましくない副作用を有する。アメリカ合衆国で使用が認可されている他の薬剤は、Abbot LaboratoriesのMeridiaTMであり、これはあまり有効ではないことが証明されたといわれている(非特許文献1)。
【0013】
現在治験中の1つの実験薬剤は、RimonabantTM(カンナビノイド受容体アンタゴニスト)であり、これはヒトの欲求を抑え、従って肥満患者の食欲を低下させるといわれている。
【非特許文献1】Schaffer A. www.slate.com/id/2117332, 26 April 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って体重を低下させ、体重増加を防ぎ、体重減少を促進し、及び/又は肥満を治療するのに有効なツールに対するニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
微生物、特に細菌の中で、いくつかは免疫系に対して良好な作用を有し、特に乳酸菌及びビフィドバクテリアは「プロバイオティック」細菌又は株と記載される。
【0016】
一般に、プロバイオティック細菌又は株とは、生きたまま摂取されると、宿主の健康又は生理機能に対して有益な影響を及ぼす非病原性微生物を意味する。これらのプロバイオティック株は、一般に消化管上部を通過しても生き残る能力を有する。これらは非病原性で非毒性であり、一方では消化管中の常在菌叢との生態学相互作用を介して、他方では「GALT」(消化管関連リンパ組織)による良好な様式で免疫系に影響を及ぼす能力を介して、健康に有益な影響を及ぼす。プロバイオティックスの定義にもよるが、これらの細菌は充分な数がある時、腸を通過しても生き延びる能力を有するが、これらは腸バリアを通過できず、従ってその主要な作用は消化管の管腔及び/又は壁で誘導される。これらは次に、投与期間中に常在菌叢の一部を構成する。このコロニー形成(又は一過性コロニー形成)は、プロバイオティック細菌が有益な作用(例えば、菌叢中に存在する病原性になる可能性のある微生物の抑制、及び腸の免疫系との相互作用)を及ぼすことを可能にする。
【0017】
特に乳製品において、最も一般的に使用されるプロバイオティック株は、主に以下の属の細菌と酵母である:ラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、ストレプトコッカス・エスピーピー(Streptococcus spp.)、エンテロコッカス・エスピーピー(Enterococcus spp.)、ビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp.)、サッカロミセス・エスピーピー(Saccharomyces spp.)。
【0018】
これらの細菌について記録されているプロバイオティック作用の中で、例えば乳糖耐性の改善、免疫機能の増強、消化管及び尿生殖器感染症の予防又は治療、及び癌リスクの低減を挙げることができる。
【0019】
態様の要約
本発明の独創的な知見は、本発明の微生物、特に乳酸菌及び/又はプロバイオティック微生物及び/又はプロバイオティック乳酸菌、及び/又はそれらの代謝産物が、被験体の満腹感、特に食後の満腹感を引き起こすことである。
【0020】
特に本発明の独創的な知見は、乳酸菌[例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、例えばPTA-4797株;ラクトバシルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus);ラクトバシルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius);及び/又はビフィドバクテリウム・ラクチス(Bifidobacterium lactis)]及び/又はそれらの代謝産物が、被験体の満腹感、特に食後の満腹感を引き起こすことである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
詳細な態様
本発明の詳細な態様を以下に説明する。詳細な態様の一部は別のセクションで考察される。これは参照を容易にするためであり、決して限定するものではない。
【0022】
1つの態様において本発明は、満腹感シグナル伝達をモジュレートする(例えば小腸において)ために被験体に投与される少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0023】
1つの態様において本発明は、満腹感シグナル伝達をモジュレートする(例えば小腸において)ために被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0024】
本明細書において使用する用語「満腹感シグナル伝達をモジュレートする」は、満腹感に関連する神経及び/又は内分泌シグナル伝達の振幅及び/又は頻度を変化させることを示す。
【0025】
ある実施形態において「満腹感シグナル伝達をモジュレートする」は、満腹感マーカーの振幅及び/又は頻度を変化させることを指す。
【0026】
本明細書において使用する用語「満腹感」は、満腹である又は食欲が満たされている状態、すなわち欲求が無いほど満足しているか又は充分に満足している状態を意味する。
【0027】
さらなる態様において本発明は、満腹感を誘導するために被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの微生物株又はその代謝産物の使用を提供する。
【0028】
別の態様において本発明は、過剰体重(肥満を含む)及び/又は過剰体重が引き起こす疾患もしくは障害(肥満関連疾患もしくは障害を含む)の治療及び/又は予防用の薬剤の製造における、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の使用を提供する。
【0029】
さらに別の態様において本発明は、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の有効量を被験体に投与することを含む、被験体の満腹感シグナル伝達をモジュレートする(例えば小腸において)方法を提供する。
【0030】
さらなる態様において本発明は、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の有効量を被験体に投与することを含む、被験体の満腹感を誘導する方法を提供する。
【0031】
さらに別の態様において本発明は、被験体における過剰体重(肥満を含む)及び/又は過剰体重が引き起こす疾患もしくは障害(肥満関連疾患を含む)を治療及び/又は予防する方法であって、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の有効量を被験体に投与することを含む方法を提供する。
【0032】
さらなる態様において本発明は、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の有効量を被験体に投与することを含む、非肥満被験体の過剰体重を低下させる美容的方法を提供する。
【0033】
別の実施形態において本発明は、満腹感を誘導するために非肥満被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの微生物株又はその代謝産物の美容的使用を提供する。
【0034】
さらなる実施形態において本発明は、満腹感を誘導する及び/又は過剰体重(肥満を含む)を治療するために被験体に投与される微生物及び/又はその代謝産物を選択する方法であって:
a) 微生物及び/又はその代謝産物を少なくとも1つの上皮細胞と接触させる工程、
b) 少なくとも1つの上皮細胞中の満腹感マーカー(例えばタンパク質チロシンチロシン(PYY))の発現を検出する工程、
を含む方法を提供する。
【0035】
さらなる実施形態において本発明は、満腹感を誘導する及び/又は過剰体重(肥満を含む)を治療するために被験体に投与される支持物質を調製するための微生物及び/又はその代謝産物を選択する方法であって:
a) 微生物及び/又はその代謝産物を少なくとも1つの上皮細胞と接触させる工程、
b) 少なくとも1つの上皮細胞中の満腹感マーカー(例えばタンパク質チロシンチロシン(PYY))の発現を検出する工程、
を含む方法を提供する。
【0036】
工程a)又はb)で使用される上皮細胞は、好ましくはCaco-2細胞株由来である。これは結腸癌細胞株である。これらはまた、ヒトでの手術からの要素の生検試料から単離し精製することもできる。Caco-2細胞は多くの細胞株カタログで公に入手でき、例えばATCC(American Type Culture Collection)から番号HTB-37で得られる。
【0037】
工程a)は、好ましくは少なくとも1つの上皮細胞で試験される上皮細胞1個当たり1〜100個の微生物細胞を使用して行われる。
【0038】
工程a)中の接触時間は、0時間〜24時間の範囲で変動してもよく、好ましくは約3時間又は少なくとも3時間である。
【0039】
一般に工程a)に従う細胞への接触は、当業者に周知の標準的温度、改変空気、及び無菌条件下で、特にin vitroでの上皮細胞培養条件下で行われる。
【0040】
本発明の選択方法の工程(b)は、好ましくは満腹感マーカー(例えばPYY)のメッセンジャーRNAの発現、及び場合によりそのレベルを、例えばPCR、特に定量的PCRにより、又は免疫組織化学もしくはラジオイムノアッセイによって検出することにより行う。mRNAの検出及びその測定について当業者に周知の他の方法を使用してもよい。
【0041】
ある実施形態に関し、本発明の微生物は生存可能であり得る。
【0042】
ある実施形態に関し、本発明の微生物は死滅していてもよいし又は生存活性がなくてもよい。
【0043】
理論に拘束されることを望まないが、微生物に関連している、例えば微生物が産生する代謝産物、例えば可溶性代謝産物は、微生物の有益な作用を引き起こすことがあると考えられる。したがって、ある態様に関し、微生物細胞が標的細胞と直接接触することは必要ない。
【0044】
ある態様において、微生物に関連している、例えば微生物が産生する、1つ又はそれ以上の代謝産物は、本明細書に記載の有益な作用を達成するのに適していると考えられる。このような場合に、微生物自体を含有させることは必要かもしれない。
【0045】
本明細書において使用する用語「その代謝産物」は、本発明の微生物から抽出されるか、又は本発明の微生物が培養されるか又は培養された培地から得られる1つ又はそれ以上の化合物を意味する。ある態様において代謝産物は、培養培地及び/又は微生物の粗抽出物でもよい。適切には、ある態様において代謝産物は、培養培地及び/又は微生物から単離及び/又は精製された1つ又はそれ以上の化合物でもよい。
【0046】
ある実施形態において、適切には代謝産物は可溶性代謝産物であることができる。
【0047】
ある実施形態において、代謝産物は水溶性代謝産物でもよい。
【0048】
ある実施形態において、代謝産物は脂溶性代謝産物でもよい。
【0049】
適切には代謝産物は、US5,578,302に教示される及び/又は本明細書に教示する実施例に従う方法を使用して、微生物の培養物から単離される上清相中に存在する代謝産物であり得る。
【0050】
ある実施形態において代謝産物は、細菌[好ましくは、乳酸菌、好ましくはプロバイオティック細菌、例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)(例えば、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及び/又はL.クルバツス(L. curvatus))、及び/又はビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp.)(例えば、B.ラクチス(B. lactis))]を、培養物のλ600でのODが少なくとも0.6、好ましくは0.6〜1.5になるまで培養し;遠心分離及び/又はろ過(例えば、25℃、5分、3000gでの遠心分離、及び/又は無菌ろ過)により細菌を除去して、該代謝産物を含むろ液を得ることによって取得可能である(好ましくは得られる)。
【0051】
適切には代謝産物は、1.0%糖を含むか又は糖を含まないMRS培地を使用して得ることができる(好ましくは得られる)。適切には代謝産物は、細菌を37℃で培養することにより得ることができる(好ましくは得られる)。適切には代謝産物は細菌を嫌気的に培養することにより得ることができる(好ましくは得られる)。
【0052】
in vitroアッセイにおいて、ろ液の形態の代謝産物は、組織培養培地中の組織培養細胞と随時混合してもよい。好ましくは、代謝産物を含有するろ液は、ろ液/組織培養培地混合物が少なくとも10%v/vのろ液と最大90%v/vの組織培養培地を含むように、組織培養培地と混合される。
【0053】
代謝産物が支持物質に加えられる時、好ましくはろ液/支持物質混合物の比は1:10又はそれ以上である。
【0054】
本発明の微生物は適切には、可溶性画分の移動を可能にするように1つ又はそれ以上の標的細胞とともに同時培養することができる。
【0055】
適切には微生物は、標的細胞と細胞同士が接触していなくてもよい。
【0056】
適切には本発明の微生物又はその代謝産物は、乾燥型、凍結乾燥型、又は凍結型の濃縮物の形で凍結する前又は後に、細菌懸濁液の形態であってもよい。使用される形態とは無関係に、菌株は凍結することができる。
【0057】
適切には本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、異なる添加物を含有してもよい。適切には添加物は、その乾燥の間及び/又は凍結乾燥の間に加えることができる。
【0058】
本発明で使用される微生物[例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)の株、例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、及び/又はラクトバシルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)の株、及び/又はビフィドバクテイウム(Bifidobacterium)、例えば、B.ラクチス(B. lactis)の株]は、支持物質1g当たり106〜1012CFUの細菌、さらに好ましくは支持物質1g当たり108〜1012CFUの細菌、好ましくは凍結乾燥型について109〜1012CFU/gを含む。
【0059】
適切には本発明で使用される微生物[例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)の株、例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、及び/又はラクトバシルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)の株、及び/又はビフィドバクテイウム(Bifidobacterium)、例えば、B.ラクチス(B. lactis)の株]は、約106〜約1012CFUの微生物/投与、好ましくは約108〜約1012CFUの微生物/投与の用量で投与することができる。「/投与」という用語は、1日に又は1回の摂取で、好ましくは1日にこの量の微生物が被験体に投与されることを意味する。例えば微生物が食品支持物質中(例えばヨーグルト中)で投与される場合、ヨーグルトは好ましくは約108〜約1012CFUの微生物を含有するであろう。あるいはしかし、この量の微生物は、それぞれがより少量の微生物量からなる複数回投与に分割してもよい;ただし、ある特定の時間(例えばそれぞれ24時間の期間)に被験体が摂取する微生物の全体量が、約106〜約1012CFUの微生物、好ましくは約108〜約1012CFUの微生物である場合に限る。
【0060】
本発明において、少なくとも1つの微生物株の有効量は、少なくとも106CFUの微生物/投与、好ましくは約106〜約1012CFUの微生物/投与、好ましくは約108〜約1012CFUの微生物/投与でありうる。
【0061】
ある実施形態において、好ましくは本発明で使用される微生物[例えばラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)の株、例えば、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、L.サリバリウス(L.salivarius)、及び/又はラクトバシルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)の株、及び/又はビフィドバクテイウム(Bifidobacterium)、例えば、B.ラクチス(B. lactis)の株]は、約106〜約1012CFUの微生物/日、好ましくは約108〜約1012CFUの微生物/日の用量で投与することができる。従って、この実施形態において有効量は、約106〜約1012CFUの微生物/日、好ましくは約108〜約1012CFUの微生物/日でありうる。
【0062】
CFUは「コロニー形成単位」を意味する。支持物質1グラムは、好ましくは食品又は薬剤学的に許容される支持物質を意味する。
【0063】
有利には本発明は、体重増加を低下させる、及び/又は体重減少を促進する、及び/又は肥満を治療又は予防する、及び/又は肥満もしくは体重超過であることに関連するか又はこれに引き起こされる疾患もしくは障害を治療又は緩和するのに有効なツールである。
【0064】
理論に拘束されることを望まないが、微生物及び/又はその代謝産物は、小腸で満腹感シグナル伝達を増加することにより、体重減少を仲介する及び/又は満腹感を引き起こすことができる。
【0065】
理論に拘束されることを望まないが、微生物及び/又は代謝産物は、消化管ホルモン及び/又は消化管中に存在する1つ又はそれ以上の受容体へのその作用を介して、体重減少を仲介する及び/又は満腹感を引き起こすことができる。
【0066】
食欲の末梢レギュレーター(消化管ホルモンを含む)の一部は、Stanley et al Physiol. Review 85: 1131-1158, 2005で考察されている。
【0067】
理論に拘束されることを望まないが、微生物及び/又はその代謝産物は、満腹感マーカー(例えば消化管ホルモンペプチドチロシンチロシン(PYY))へのその作用を介して、体重減少を仲介する及び/又は満腹感を引き起こすことができる。
【0068】
満腹感
本明細書において使用する用語「満腹感」は、満腹であるか又は食欲が満たされている状態、すなわち欲求が無いほど満足しているか又は充分に満足している状態を意味する。
【0069】
適切には本発明は満腹感を増加させるためものでありうる。
【0070】
好ましくは本発明は、食後の満腹感を誘導する及び/又は増加させるためのものである。
【0071】
当業者は、満腹感及び食後の満腹感は多くの手法で測定できることを理解するであろう。
【0072】
例えば理論に拘束されることを望まないが、満腹感マーカー(例えば、血液又は消化管中の消化管ホルモンPYY)のレベルと満腹感のレベルとの間には関連がある。
【0073】
従って、満腹感及び/又は食後の満腹感は、1つ又はそれ以上の満腹感マーカー(例えば被験体の血液中及び/又は被験体の消化管中のPYY)のレベルを決定することにより測定できる。適切には、サンプルは、被験体が特定の食事を摂る前にある間隔で、及びその後にある間隔で採取することができる。例えばPYYの発現レベルの増加及び/又はPYYのレベルの増加は満腹感を示すことがある。他の満腹感マーカーと満腹感との関係は、当業者に公知である。
【0074】
さらに又は別に、満腹感及び/又は食後の満腹感は、動物の食物摂取、及び/又は動物の食物摂取の時間間隔、及び/又は動物の体重を測定することにより、動物試験で測定することができる。動物の食物摂取及び/又は体重の低下は満腹感を示す。さらに又は別に、動物の食物摂取の時間間隔の増加は満腹感を示す。
【0075】
さらに又は別に、満腹感及び/又は食後の満腹感は、被験体に以下のような質問:「あなたはどの程度空腹ですか」、「あなたはどの程度満腹ですか」、「あなたはどれくらい食べられますか」、及び「あなたは何が食べたいですか」を訪ねるアンケートを使用して、被験体により主観的に測定してもよい。これらの認識は100mmの視覚的アナログ尺度で0(最も低い)から10(最も高い)で評価することができる(Stock et al J. of Clinical Endocrinology & Metabolismに教示される、これは最初にdoi:10.1210/jc.2004.1251として2005年1月18日に公表された)。この文献は参照することにより本明細書に組み込まれる。被験体はこのアンケートを、特定の食事を摂る前にある間隔で、及びその後にある間隔で記入し終わるように求められることが好ましい。
【0076】
ある実施形態において満腹感は以下の1つ又はそれ以上を意味しうる:
a) 食後の満腹感;
b) 食前の空腹感の低下;
c) 食事満腹感の強化による食事量の減少;及び/又は
d) 満腹感の平均状態間の増加(これは、代償性の食事回数の増加を防ぎ、及び/又は間食を減少しうる)。
【0077】
ある実施形態において満腹感は以下の1つ又はそれ以上として測定することができる:
i) 比較対象の試験被験体と比較した、及び/又は被験体の処置前と比較した、被験体による食物摂取の低下;
ii) 被験体の処置前と比較した被験体の体重の減少;
iii) 比較対象の試験被験体と比較した、及び/又は被験体の処置前と比較した、肥満の低下。
【0078】
満腹感マーカー
本明細書において使用される用語「満腹感マーカー」は、食欲及び/又は食物摂取の調節に関与する化合物及び/又は消化管ホルモンを示す。
【0079】
満腹感マーカーには、特に限定されないが、膵臓ポリペプチド(PYY)、コレシストキニン(CCK)、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、インスリン、レプチン、グレリン、オレキシン、食欲促進性の視床下部ニューロペプチドY(NPY)、酢酸、アミリン、及びオキシントモジュリンなどがある。
【0080】
ある実施形態において満腹感マーカーは好ましくは消化管ホルモンである。
【0081】
ある実施形態において満腹感マーカーは、PYY、CCK、GLP-1、インスリン、レプチン、グレリン、オレキシン、食欲促進性の視床下部ニューロペプチドY(NPY)、アミリン、又はオキシントモジュリンの1つ又はそれ以上でありうる。
【0082】
適切には、満腹感マーカーは、以下のいずれか1つ又はそれ以上から選択される:PYY、CCK、GLP-1、及びインスリン。
【0083】
理論に拘束されることを望まないが、本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、以下のいずれか1つ又はそれ以上の血漿レベルを増加することにより満腹感を誘導することができる:PYY、CCK、GLP-1、及びインスリン。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない同等の対照と比較される。
【0084】
ある実施形態において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、消化管における以下のいずれか1つ又はそれ以上のレベルを増加することにより満腹感を誘導することができる:PYY、CCK、GLP-1、及びインスリン。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0085】
理論に拘束されることを望まないが、本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、末梢血中のレプチンのレベルを増加することにより、及び/又は脳中のレプチンのレベルを低下することにより、満腹感を誘導することができる。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0086】
ある実施形態において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、PYYのレベルを増加することができる。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0087】
別の又はさらなる実施形態において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、CCKのレベルを増加することができる。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0088】
別の実施形態において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、消化管及び/又は血漿中の1つ又はそれ以上の消化管ホルモン(グレリン及びオレキシンのいずれか1つ以上など)のレベルを低下することにより満腹感を誘導することができる。この低下は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0089】
別の実施形態において満腹感マーカーは酢酸であることができる。この実施形態において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、血液中の酢酸のレベルを増加することにより満腹感を誘導することができる。この増加は、微生物及び/又はその代謝産物を投与されていない対照と比較される。
【0090】
支持物質
本発明の使用に用いられる支持物質は、好ましくは薬剤学的に許容される支持物質又は食品である。食品と医薬についてのさらなる情報は後述される。
【0091】
薬剤学的に許容される支持物質は、例えば圧縮錠剤、錠剤、カプセル剤、軟膏剤、坐剤、又は飲用液剤の形態の支持物質でありうる。他の適切な形態は後述される。
【0092】
好ましくは本発明の使用に用いられる支持物質は、食品、例えば補助食品、ミルクベースの飲料又は粉末である。好ましくは、これは動物又は植物起源の乳製品である。後述されるように本明細書において用語「食物」は、その最も広い意味で使用され、ヒトの食物ならびに動物の食物(すなわち飼料)を含む。
【0093】
本明細書において使用される用語「乳製品」は、動物及び/又は植物起源のミルクを含む媒体などを含む。動物起源のミルクとしては、牛乳、ヒツジのミルク、ヤギのミルク、又はバッファローのミルクを挙げることができる。植物起源のミルクとしては、本発明で使用することができる植物起源の発酵物質、特に大豆、コメ、又は穀類起源のものを挙げることができる。
【0094】
さらに好ましくは、本発明で使用される支持物質は、発酵ミルク又はヒト化ミルクである。
【0095】
体重超過/肥満
体格指数(BMI)(体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で割ったものとして計算される)は、体重超過及び/又は肥満の最も一般的に認められている測定値である。
【0096】
BMIが25を超えると体重超過とみなされる。
【0097】
肥満はBMIが30又はそれ以上と定義され、BMIが35又はそれ以上である場合は重症の併存疾患とみなされ、BMIが40又はそれ以上は病的肥満とみなされる。
【0098】
本明細書において使用される用語「肥満」は、肥満症、肥満併存症、及び病的肥満を含む。すなわち本明細書において使用される用語「肥満」は、BMIが30又はそれ以上である被験体として定義しうる。
【0099】
ある実施形態において、適切には、肥満の被験体は、BMIが30以上、適切には35以上、適切には40以上でありうる。
【0100】
本明細書において使用される用語「過剰体重」は、被験体の過剰体重を意味する。本明細書において使用される用語「過剰体重」は、被験体が体重超過とみなされることを意味する。本明細書において使用される用語「体重超過」は、被験体が25を超えるBMIを有することを意味する。
【0101】
過剰体重及び/又は肥満はBMIを使用して測定することができる。すなわち過剰体重及び/又は肥満の低下はBMIを使用して測定することができる。
【0102】
過剰体重及び/又は肥満の低下はさらに(又はあるいは)、対照と相対的に、及び/又は本発明の微生物及び/又はその代謝産物の投与前及び投与後と相対的に、被験体の体重を測定することにより、単純に測定することができる。
【0103】
理論に拘束されることを望まないが、血清又は血液の炎症マーカー(例えば、C−反応性タンパク質及び/又はインターロイキン6及び/又はTNF-RII)と肥満とは関連しうる。さらに、血清又は血液の炎症マーカーとBMIとは相関しうる。すなわち、ある実施形態において、被験体の肥満及び/又は肥満の低下を測定するために、血液の炎症マーカーを測定してもよい。
【0104】
過剰体重及び/又は肥満に関連するか又はこれに引き起こされる障害/疾患
肥満により引き起こされるか又は悪化する健康状態(すなわち、障害及び/又は疾患)には、高血圧、真性糖尿病、例えば2型糖尿病、睡眠時無呼吸、肥満関連換気低下、腰と関節の問題、心血管疾患、非アルコール性脂肪肝疾患、及び胃食道逆流疾患などがある。
【0105】
被験体
本明細書において使用される用語「被験体」は、動物を意味する。好ましくは被験体は哺乳動物であり、例えば家畜(ウシ、ウマ、ブタ、ニワトリ、及びヒツジを含む)及びヒトを含む。本発明のある態様において動物はコンパニオン動物(ペットを含む)、例えばイヌ又はネコである。本発明のある態様において被験体は、適切にはヒトでありうる。
【0106】
薬剤
本明細書において使用される用語「薬剤」は、ヒト及び動物の医薬品においてヒト及び動物の両者に使用するための薬剤を包含する。さらに、本明細書において使用される用語「薬剤」は、治療効果及び/又は有益な効果を提供する任意の物質を意味する。本明細書において使用される用語「薬剤」は、必ずしも販売申請を必要とする物質に限定されず、化粧品、機能性食品、食物(例えば飼料及び飲料を含む)、プロバイオティック培養物、及び自然療法で使用することができる物質を含みうる。さらに本明細書において使用される用語「薬剤」は、動物飼料、例えば家畜飼料及び/又はペットフードへの導入用に設計されるものを包含する。
【0107】
治療
本明細書において処置に関する参照は全て、治療的、緩和的、及び予防的処置を含むと理解すべきである。
【0108】
実質的に純粋な形態及び/又は単離された形態
ある態様において本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、実質的に純粋な形態であってもよいし又は単離された形態でもよい。
【0109】
用語「実質的に純粋な形態」は、本発明の微生物及び/又はその代謝産物が高レベルで存在することを示すのに使用される。微生物及び/又はその代謝産物が実質的に純粋な形態である時、微生物及び/又はその代謝産物は好ましくは組成物中の主要な成分である。好ましくは、これは30%を超える、50%を超える、75%を超える、90%を超える、又はさらには95%を超えるレベルで存在し、このレベルは対象の総組成物に対しての乾燥重量/乾燥重量ベースで決定される。
【0110】
非常に高レベル(例えば、90%を超える、95%を超える、又は99%を超えるレベル)では、成分は「単離されている」とみなすことができる。本発明の生物学的に活性な物質(スクリーニングにより同定された/同定可能なポリペプチド、核酸分子、炭水化物、スクリーニングにより同定された/同定可能な脂質、スクリーニングにより同定された/同定可能な部分など)は、この物質に本来付随するような1つ又はそれ以上の混在物質を実質的に含まない形態で提供することができる。すなわち、例えばこれらは、1つ又はそれ以上の混在の可能性のあるポリペプチド及び/又は核酸分子を実質的に含まないものでありうる。
【0111】
これらは、他の細胞成分(例えば、細胞膜、細胞質など)を実質的に含まない形態で提供することができる。組成物が所与の混在物質を実質的に含まない時、混在物質は低レベル(例えば、上記の乾燥重量/乾燥重量ベースで10%未満、5%未満、又は1%未満のレベル)であろう。
【0112】
微生物
本発明で使用するのに適した生存性微生物には、細菌、カビ、及び/又は酵母などがある。
【0113】
好ましくは本発明で使用される生存性微生物は、生存性細菌である。
【0114】
用語「生存性微生物」は、代謝活性のある微生物を意味する。
【0115】
微生物は天然に存在する微生物であってもよいし、形質転換微生物でもあってもよい。微生物はまた適切な微生物の組合せでもあってもよい。
【0116】
ある態様において本発明の微生物は、以下の1以上でもよい:細菌、真菌、酵母。
【0117】
適切には本発明の微生物は細菌でありうる。
【0118】
適切には本発明の微生物は、以下の1つ又はそれ以上の属の細菌でありうる:ラクトコッカス(Lactococcus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ペディオコッカス(Pediococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、カルノバクテリウム(Carnobacterium)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、及びラクトバシルス(Lactobacillus)。
【0119】
好ましくはある実施形態において本発明の微生物は、プロバイオティック微生物である。適切にはプロバイオティック微生物は以下の属の細菌又は酵母でありうる:ラクトバシルス・エスエスピー(Lactobacillus ssp.)、ストレプトコッカス・エスエスピー(Streptococcus ssp.)、エンテロコッカス・エスエスピー(Enterococcus ssp.)、ビフィドバクテリウム・エスエスピー(Bifidobacterium ssp.)、サッカロミセス・エスエスピー(Saccharomyces ssp.)。
【0120】
ある実施形態において本発明の微生物は乳酸菌でもよい。適切には乳酸菌は以下の属の1つでありうる:ラクトバシルス(Lactobacillus)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、カルノバクテリウム(Carnobacterium)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、及びバゴコッカス(Vagococcus)。このリストは網羅的ではない。
【0121】
ある実施形態において本発明の微生物は、プロバイオティック乳酸菌である。プロバイオティック乳酸菌は、以下の属からの1つでありうる:ラクトバシルス・エスエスピー(Lactobacillus ssp.)、ビフィドバクテリウム・エスエスピー(Bifidobacterium ssp.)、ストレプトコッカス・エスエスピー(Streptococcus ssp.)、及びエンテロコッカス・エスエスピー(Enterococcus ssp.)。
【0122】
本発明で使用することができる他の細菌の属には以下が含まれる:ペディオコッカス(Pediococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、バシラス(Bacillus)、コクリア(Kocuria)、アルスロバクター(Arthrobacter)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)、及びコリネバクテリウム(Corynebacterium)。
【0123】
好ましくは本発明で使用される微生物は、一般に安全であると認識されている微生物であり、これは好ましくはGRAS認可されている。
【0124】
当業者は、本明細書に記載の属の中から、食品産業及び/又はや農業産業で使用されており、一般にヒト及び/又は動物が摂取するのに適しているとみなされている特定の微生物種及び/又は微生物株に容易に気付くであろう。
【0125】
好ましくは本発明で使用される微生物は、ヒト及び/又は動物での摂取に適したものである。
【0126】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス(Lactobacillus)属又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属由来の微生物、又はこれらの混合物である。適切には微生物は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.クルバツス(L. curvatus)、L.ラムノサス(L. rhamnosus)、L.カゼイ(L. casei)、L.パラカゼイ(L. paracasei)、L.サリバリウス(L. salivarius)、B.ラクチス(B. lactis)、B.アニマリス(B. animalis)、B.ロンガム(B. longum)、及び/又はB.ビフィダム(B. bifidum)の種由来の株でありうる。ある実施形態において好ましくは微生物は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.クルバツス(L. curvatus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及び/又はB.ラクチス(B. lactis)の種由来の株でありうる。
【0127】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス(Lactobacillus)属由来である。
【0128】
適切には微生物は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.クルバツス(L. curvatus)、L.ラムノサス(L. rhamnosus)、L.カゼイ(L. casei)、L.パラカゼイ(L. paracasei)、及びL.サリバリウス(L. salivarius)の種由来の株でありうる。ある実施形態において好ましくは微生物は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.クルバツス(L. curvatus)、又はL.サリバリウス(L. salivarius)の種由来の株でありうる。
【0129】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ストレプトコッカス(Streptococcus)属由来である。
【0130】
ある実施形態において好ましくは微生物は、エンテロコッカス(Enterococcus)属由来である。
【0131】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属由来である。
【0132】
適切には微生物は、B.ラクチス(B. lactis)、B.アニマリス(B. animalis)、B.ロンガム(B. longum)、又はB.ビフィダム(B. bifidum)の種由来の株でありうる。好ましくは微生物は、B.ラクチス(B. lactis)種由来の株、例えばB.ラクチス(B. lactis)420又はB.ラクチス(B. lactis)HN019由来の株でありうる。
【0133】
ある実施形態において微生物は、2以上のプロバイオティック微生物(好ましくは2以上のプロバイオティック細菌)の混合物:2以上の乳酸菌の混合物;1又はそれ以上のプロバイオティック微生物(好ましくはプロバイオティック細菌)と1又はそれ以上の乳酸菌との混合物、でもよい。好ましくは混合物は、ラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)及び/又はビフィドバクテリウム・エスピーピー(Bifidobacterium spp.)由来の1以上の株を含んでもよい。
【0134】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)の少なくとも1種の株である。
【0135】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の少なくとも1種の株である。
【0136】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス・クルバツス(Lactobacillus curvatus)の少なくとも1種の株である。
【0137】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ラクトバシルス・サリバリウス(Lactobacillus salivarius)の少なくとも1種の株である。
【0138】
本発明で使用するための微生物、好ましくはラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、例えばL.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及びL.クルバツス(L. curvatus)は、好ましくはグラム陽性株である。有利にはこれはカタラーゼ陰性株であり、同種発酵性代謝により乳酸を産生する。
【0139】
本発明で使用するための微生物、好ましくはラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、例えばL.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及びL.クルバツス(L. curvatus)はまた、他の微生物に対して活性なバクテリオシン、例えばラクタシンを産生することができる。
【0140】
好ましくは本発明で使用するための微生物、好ましくはラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、例えばL.アシドフィルス(L. acidophilus)、L.サリバリウス(L. salivarius)、及びL.クルバツス(L. curvatus)は、酸性pH条件下でペプシンに対して良好な耐性、パンクレアチンに対して良好な耐性、及び/又は胆汁酸塩に対する良好な耐性を有する。
【0141】
ある実施形態において本発明の微生物、好ましくはラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、例えばL.アシドフィルス(L. acidophilus)などは、「疎水性」すなわち極性又は非極性疎水性有機溶媒(例えばn-デカン、クロロホルム、ヘキサデカン、又はキシレンなど)に対する強い親和性を有すると言われている微生物、好ましくはラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)、例えばL.アシドフィルス(L. acidophilus)などでありうる。
【0142】
本発明の好適なラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)は、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)PTA-4797でありうる。このラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)株は、Rhodia Chimie, 26, quai Alphonse Le Gallo, 92 512 BOULOGNE-BILLANCOURT Cedex Franceにより、ブダペスト条約に従ってAmerican Type Culture Collection(ATCC)に登録されており、ここで登録番号PTA-4797で記録されている。
【0143】
本発明で使用するためのラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の株は、他の乳酸菌との混合物の形態でもよい。本発明で適切であろう乳酸菌には、農業産業、食品産業、又は医薬品産業で通常使用される任意の乳酸菌などがある。
【0144】
製造物が食料である時、有利には生存性微生物及び/又は該微生物により産生される可溶性代謝産物は、小売業者による販売用に提供される期間である通常の「有効期限」又は「期限」日まで有効のままであるものとする。好ましくは有効期間は、食品の腐敗が明らかになる通常の新鮮な期間の満了日を超えているものとする。期間及び通常の貯蔵寿命の所望の長さは、食料毎に変わり、貯蔵寿命が食料の種類、食料のサイズ、保存温度、加工条件、パッケージ材料、及びパッケージ装置により変化することを当業者は認識するであろう。
【0145】
ある実施形態において好ましくは微生物は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)ではない。
【0146】
Caco-2細胞ベースの暴露アッセイ
ヒト結腸直腸癌細胞株Caco-2は、20%ウシ胎児血清(FBS, Gibco)、2mM 安定グルタミン(Biochrom AG)及び1X非必須アミノ酸(Biochrom AG)、20Uml-1 ペニシリン(Gibco)、20μg/ml-1 ストレプトマイシン(Gibco)、及び0.5μg/ml-1 アンホテリシン(Gibco)を補充したダルベッコMEM(Biochrom AG)中、37℃、5% CO2で維持される。二次培養するとき、細胞を1xPBS(Gibco)で洗浄し、Tryple Select(Gibco)で分離する。
【0147】
消化管ホルモン(例えばPYY)に対する種々の微生物及び/又はその代謝産物の作用を測定するために、5日間プロトコール(Yamashita et al. 2001, J. Pharm. Sci. 91(3): 669-679)に従ってコラーゲン被覆Transwell細胞培養インサート(Corning)に、6.6x105/cm2 のCaco-2細胞を接種し分化させる。Transwellインサートに接種後、Caco-2細胞を、ダルベッコMEM(Biochrom AG)、10%ウシ胎児血清(FBS, Gibco)、2mM 安定グルタミン(Biochrom AG)、及び1X非必須アミノ酸(しかし抗生物質は無し)からなる培地中で48時間維持する。48時間後、製造業者により提供されたプロトコールに従ってMITO+血清エクステンダー(BD Biosciences)で補充したEnterostim培地(BD Biosciences)を培地に加えて培地を交換する。Transwellインサートへの接種の4日後、又は経上皮電気抵抗が細胞分化を示すレベルに上昇した後、細胞を実験で使用する。すべての実験で、抗生物質も血清も使用されない。代謝産物及び/又は種々の微生物は、インサートの先端側に加えられる。
【0148】
24時間の暴露後、培地を廃棄し、インサート中の細胞を溶解させ、Qiagen (Germany) のRNeasy Miniキットを使用してRNAを抽出する。同じ製造業者のRNase不含DNaseを使用してDNAを消化する。Superscript III逆転写酵素(Invitrogen)を製造業者の説明書に従って使用して逆転写を行う。ホルモン(例えばPYY)発現パターンは、ABI Prism 7000 配列検出装置 (Applied Biosystems)のデフォルト設定を使用してリアルタイム定量的TaqMan PCR(すなわち、相対的定量法−Holland et al., 1991 Proc. Natl. Acad. Sci. USA Aug 15; 88(16): 7276-80; 及び Livak and Scmittgen, 2001 Methods Dec;25(4):402-8を参照)により、又はオリゴヌクレオチドセットと、ホルモン(例えば、ホモサピエンスPYY)を特異的に認識する標準的オリゴヌクレオチドとを使用して、ABI Prism 7000 Genetic AnalyzerによりTaqMan PCR (Applied Biosystems)のような絶対定量法を使用して、測定する。
【0149】
上記アッセイで使用される微生物懸濁液は、適切な培地上で微生物を培養することにより調製することができる。培養物を遠心分離することにより細胞ペレットを作製することができ、これは次に適切な培地(例えばDMEM)中に懸濁することができる。上記アッセイで使用される代謝産物懸濁液は、適切な培地で微生物を培養することにより調製することができる。培養物は遠心分離することができ、及び/又は培養ブロスをろ過(適切には無菌ろ過)して、代謝産物懸濁液を得ることができる。
【0150】
未処理の対照と比較して、ホルモン発現レベルの改変(例えばPYYの増加)を引き起こす微生物は、本発明の微生物であることができ、及び/又は本発明で使用することができる。
【0151】
当業者は、「Caco-2細胞ベースの暴露アッセイ」を使用してプロバイオティック微生物及び非プロバイオティック微生物をスクリーニングして、本明細書に具体的に教示したもの以外に、請求項に記載の効果を生じることができる特定の微生物を容易に同定することができるであろう。
【0152】
他の成分との組合せ
本発明で使用される微生物及び/又はその代謝産物は、他の成分と組合せて使用してもよい。すなわち、本発明はまた組合せに関する。微生物及び/又はその代謝産物は本明細書において「本発明の組成物」と称することができる。
【0153】
本発明の組合せは、本発明の組成物と、動物又はヒトが摂取するのに適しておりかつ摂取者に医学的又は生理学的利益を提供できる他の成分とを含む。
【0154】
本発明の組合せの他の成分には、ポリデキトロース、例えばLitesse(登録商標)、及び/又はマルトデキストリン及び/又はラクチトールなどがある。これらの他の成分は、乾燥工程を補助し、微生物の生存を助けるために、随時組成物に加えることができる。
【0155】
他の適切な成分のさらなる例として以下の1以上が挙げられる:増粘剤、ゲル化剤、乳化剤、結合剤、結晶改質剤、甘味剤(人工甘味剤を含む)、レオロジー改質剤、安定化剤、抗酸化剤、色素、酵素、担体、ビヒクル、賦形剤、希釈剤、滑沢剤、香味剤、着色物質、懸濁剤、崩壊剤、顆粒結合剤など。これらの他の成分は天然のものでもよい。これらの他の成分は、化学的及び/又は酵素的技術の使用により調製することができる。
【0156】
ある実施形態において微生物及び/又はその代謝産物はカプセル化することができる。
【0157】
ある好適な実施形態において本発明で使用される微生物及び/又はその代謝産物は、1つ又はそれ以上の脂質と組合せて使用することができる。
【0158】
例えば本発明で使用される微生物及び/又はその代謝産物は、1つ又はそれ以上の脂質ミセルと組合せて使用することができる。脂質ミセルは、単純脂質ミセルでも複合脂質ミセルでもよい。
【0159】
脂質ミセルは、両親媒性物質の配向分子の凝集物でもよい。
【0160】
脂質ミセルは、これを形成する化学分子種と溶液中で平衡状態で存在する両親媒性物質の配向分子の、コロイド的大きさの凝集物でもよい。ミセルは一般に荷電している。水溶液中でミセル凝集物の個々の分子は、その極性基が水性媒体に向き、その疎水性部分がミセルの中心に向くように配向している。
【0161】
脂質ミセルは、脂質及び/又は油を含有してもよい。
【0162】
すなわちある実施形態において本発明は、満腹感シグナル伝達をモジュレートするための、及び/又は過剰体重(又は肥満)及び/又は過剰体重(又は肥満)が引き起こす疾患を治療及び/又は予防するための、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物と脂質ミセルとの組合せの使用を提供する。
【0163】
本明細書において使用される用語「増粘剤又はゲル化剤」は、粒子(不混和性液体の液滴、空気、又は不溶性固体のいずれか)の移動を遅延させるか又は防止することにより、分離を防ぐ生成物を意味する。増粘は、個々の水和分子が粘度の増加を引き起こすときに起こり、これにより分離を遅延させる。ゲル化は、水和物分子が連結して粒子を閉じ込める3次元ネットワークを形成するときに起こり、これにより粒子を固定化する。
【0164】
本明細書において使用される用語「安定化剤」は、製造物(例えば食品)が経時的に変化することを防ぐ材料又は材料の組合せとして定義される。
【0165】
本明細書において使用される用語「乳化剤」は、エマルジョンの分離を防ぐ材料(例えば、食品材料)を指す。エマルジョンは2つの不混和性物質であり、一方が液滴形態で存在して他方に含有される。エマルジョンは水中油(ここで液滴又は分散相は油であり、連続相は水である)、又は油中水(ここで水が分散相となり連続相が油である)からなる。フォーム(これは液体中気体である)と懸濁液(これは液体中固体である)もまた、乳化剤の使用により安定化することができる。通気は3相系で起こすことができ、ここでは空気は液体油に捕捉され、次に乳化剤で安定化された凝集脂肪結晶により安定化される。乳化剤は、水に対する親和性(親水性)を有する極性基と油に引きつけられる非極性基(親油性)とを有する。これらは、2つの物質の界面で吸収され、エマルジョンを安定化するように作用する界面膜を提供する。乳化剤の親水性/親油性は分子の構造により影響を受ける。これらの性質は、親水性/親油性バランス(HLB)値により同定される。低HLB値はより大きな親油性傾向を示し、これは油中水エマルジョンを安定化するのに使用される。高HLB値は親水性乳化剤に割り当てられ、典型的には水中油エマルジョンで使用される。これらの値は単純な系から得られる。食品はしばしば乳化性に影響を与える他の材料を含有するため、HLB値は必ずしも乳化剤選択の信頼できる指針ではないかもしれない。
【0166】
本明細書において使用する用語「結合剤」は、物理的又は化学的反応を介して製造物に結合する材料(例えば食品材料)を指す。「ゲル化」中に、例えば水が吸収され、結合作用を与える。しかし結合剤は他の液体(例えば、油)を吸収して、これらをその物質内に保持することができる。本発明の文脈において、結合剤は典型的には固体又は低水分製品(例えば、焼き製品:ケーキ、ドーナツ、パンなど)で使用されるであろう。
【0167】
本明細書において使用される用語「結晶改質剤」は、脂肪又は水の結晶化に影響を与える材料(例えば食品材料)を指す。氷の結晶の安定化は、2つの理由から重要である。その第1は、分離の観点から製造物の安定性に直接関係する。製造物が受ける凍結/融解サイクルが多いほど、氷の結晶はより大きくなる。これらの大きな結晶は、細胞壁の場合のような天然の、又は「イレーション(elation)」によって作製される、製造物の構造を破壊することがある。水はもはや適切な位置に保持されないため、製造物は融解後に離水又は浸出を示すことがある。第2に、凍結したまま摂取される製造物の場合、これらの大きな結晶は、口に不快な砂のような感触を与える。
【0168】
「担体」又は「ビヒクル」は、化合物投与に適した材料を意味し、これには非毒性であり、組成物の成分と有害な様式で反応しない当該分野で公知の任意の物質、例えば任意の液体、ゲル、溶媒、液体希釈剤、可溶化剤などが含まれる。
【0169】
栄養的に許容される担体の例には、例えば水、塩溶液、アルコール、シリコーン、蝋、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエスラール(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがある。
【0170】
賦形剤の例は以下の1つ又はそれ以上を含む:微結晶セルロース及び他のセルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、グリシン、デンプン、ミルク糖、及び高分子量ポリエチレングリコール。
【0171】
崩壊剤の例は以下の1つ又はそれ以上を含む:デンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩。
【0172】
顆粒結合剤の例は以下の1つ又はそれ以上を含む:ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、マルトース、ゼラチン、及びアカシア。
【0173】
滑沢剤の例は以下の1つ又はそれ以上を含む:ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセリル、及びタルク。
【0174】
希釈剤の例は以下の1つ又はそれ以上を含む:水、エタノール、プロピレングリコール、及びグリセリン、及びこれらの組合せ。
【0175】
他の成分は、同時に(例えば、これらが一緒に混合物中にあるとき、又はこれらが異なる経路で送達されるときでさえ)、又は順に(例えば、これらを異なる経路により送達しうるとき)使用することができる。
【0176】
好ましくは本発明の組成物が他の任意の成分と混合されるとき、微生物は生存性を維持する。
【0177】
本明細書において使用される用語「動物又はヒトの摂取に適した成分」は、栄養学的利益を有しうる補助物質として、繊維代用品として本発明の組成物に加えることができる化合物、又は摂取者に対して一般的利益がある化合物を意味する。材料は、不要な粘度が加えられることなく、ゲル化、テクスチャー付与(texturising)、安定化、懸濁化、膜形成及び構造化、ジューシー感の保持が必要な多種類の製造物で使用することができる。好ましくは材料は、生存性培養物の寿命と安定性を改良することができる。
【0178】
成分は、アルギナート、キサンタン、ペクチン、ローカストビーンガム(LBG)、イヌリン、グアーガム、ガラクト−オリゴ糖(GOS)、フルクト−オリゴ糖(FOS)、ポリデキストロース(すなわち、Litesse(登録商標))、ラクチトール、ラクトスクロース、大豆オリゴ糖、パラチノース、イソマルト−オリゴ糖、グルコ−オリゴ糖、及びキシロ−オリゴ糖のようなプレバイオティックでもよい。
【0179】
本発明の組合せで使用される組成物の最適量は、処理される製造物、及び/又は製造物を組成物を接触させる方法、及び/又はその目的用途に依存する。組成物中で使用される生存性微生物の量は、該組成物を含有する食品の香り、風味、やわらかさ、軟度、テクスチャー、こく、口当たり、粘度、きめ及び/又は感覚刺激性、栄養及び/又は健康的利点を改善する上で有効であり、かつ十分な有効性を維持するのに十分な量であるものとする。この有効な期間の長さは、少なくとも製造物の使用期間までは延長されるものとする。
【0180】
濃縮物
本発明で使用される組成物は濃縮物の形態でもよい。典型的にはこれらの濃縮物は、実質的に高濃度の生存性微生物及び/又はその代謝産物を含む。微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書において「本発明の組成物」又は「組成物」と称することができる。
【0181】
濃縮物の形態の粉末、顆粒、及び液体組成物は、水で希釈されるか、又は水若しくは他の適当な希釈剤、例えば適切な増殖培地(例えばミルク又はミネラル油又は植物油)中に懸濁されて、即時使用可能な組成物を与える。
【0182】
濃縮物の形態の本発明の組合せは、当該分野で公知の方法に従って調製することができる。
【0183】
本発明のある態様において製造物は、濃縮された形態の組成物に接触させる。好ましくは製造物は、噴霧乾燥及び/又は再懸濁組成物に接触させる。
【0184】
本発明の組成物は、当該分野で公知の方法により噴霧乾燥又は凍結乾燥してもよい。
【0185】
噴霧乾燥法を使用して粒子を作製する典型的な方法は、固体材料を適切な溶媒(例えば、発酵培地中の微生物の培養物)中に溶解することを含む。あるいは材料は非溶媒に懸濁又は乳化して、懸濁液又はエマルジョンを形成することができる。他の材料(上記)又は成分は(例えば、抗微生物剤、安定化剤、色素、及び乾燥プロセスを助ける物質)は、この段階で随時加えることができる。
【0186】
次に溶液は霧化されて、液滴の細かい霧を形成する。液滴を直ちに乾燥チャンバーに入れ、ここで乾燥気体と接触させる。溶媒は液滴から乾燥気体中に蒸発して、液滴が固化されることにより、粒子が生成される。次に粒子は乾燥気体から分離され、収集される。
【0187】
製造物
前記組成物からの利益を受けることができる任意の製造物を本発明で使用することができる。これらには、特に限定されないが、フルーツジャム、酪農食品、及び酪農食品由来製造物、化粧品、及び医薬品などがある。微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書において「本発明の組成物」又は「組成物」と称することができる。
【0188】
例えば本発明の組成物は、ソフトドリンク、フルーツジュース、又は乳漿タンパク質を含む飲料、健康茶、ココア飲料、ミルク飲料及び乳酸菌飲料、ヨーグルト及び飲用ヨーグルト、チーズ、アイスクリーム、ウォーターアイス及びデザート、菓子類、ビスケットケーキ、及びケーキミックス、スナック食品、バランス食品及び飲料、フルーツ充填物、口薬(care glaze)、チョコレートベーカリー充填物、チーズケーキ風味充填物、フルーツ風味ケーキ充填物、ケーキアンドドーナツアイシング、インスタントベーカリー充填クリーム、クッキー用充填物、即時使用ベーカリー充填物、低カロリー充填物、成人栄養飲料、酸性化大豆/ジュース飲料、無菌/レトルトチョコレート飲料、バーミックス、飲料粉末、カルシウム強化大豆/プレーン及びチョコレートミルク、カルシウム強化コーヒー飲料に、材料として使用することができる。
【0189】
組成物はさらに、アメリカンチーズソース、粉及び細切りチーズ用のアンチケーキング剤、チップディップ、クリームチーズ、乾燥ブレンドホイップトッピング無脂肪サワークリーム、凍結/融解乳ホイッピングクリーム、凍結/融解安定ホイップティッピング、低脂肪及びライトナチュラルチェダーチーズ、低脂肪スイス風ヨーグルト、曝気冷凍デザート(aerated frozen dessert)、圧固アイスクリーム、ラベルフレンドリーな改良された経済的かつ贅沢な圧固アイスクリーム、低脂肪アイスクリーム:ソフトサーブ、バーベキューソース、チーズディップソース、コテージチーズドレッシング、ドライミックスAlfredoソース、ミックスチーズソース、ドライミックストマトソースなどの食品中の材料として使用することができる。
【0190】
いくつかの態様について、好ましくは本発明は、ヨーグルト生産、例えば発酵ヨーグルト飲料、ヨーグルト、飲むヨーグルト、チーズ、発酵クリーム、ミルクベースのデザートなどに関連して使用することができる。
【0191】
適切には本組成物はさらに、1つ又はそれ以上のチーズ用途、肉用途、又は保護的培養物を含む用途における材料として使用することができる。
【0192】
本発明はまた、食物又は食物材料を調製する方法であって、本発明の組成物を別の食物材料と混合することを含む方法を提供する。
【0193】
有利には本発明は、本発明の組成物(及び随時他の成分/材料)と接触させた製造物に関し、その際、該組成物は製造物の栄養及び/又は健康的利益を改善することができる量で使用される。
【0194】
本明細書において使用される用語「接触させる」は、製造物への本発明の組成物の間接的又は直接的な適用を指す。使用しうる適用法の例には、特に限定されないが、前記組成物を含む材料中で製造物を処理すること、前記組成物を製造物と混合することによる直接適用、製造物の表面に前記組成物を噴霧すること、又は組成物の調製物中に製造物を浸漬することなどがある。
【0195】
本発明の製造物が食物である場合、本発明の組成物は好ましくは製造物と混合される。あるいは組成物は、食物のエマルジョン又は生の原料中に含ませることができる。あるいは組成物は、調味料、グレーズ、着色混合物などとして適用することができる。
【0196】
ある用途について、組成物は、影響を受ける/処理される製造物の表面上で又は表面に利用できることが重要である。これは以下の好適な特性の1つ又はそれ以上を組成物に付与することを可能にする:栄養及び/又は健康的利益。
【0197】
本発明の組成物は、生存性微生物の量が制御された製造物に散在させる、被覆する及び/又は注入するために適用することができる。
【0198】
食物
本発明の組成物は、食物として、又は食物の製造に使用することができる。ここで用語「食物」は広い意味で使用され、ヒトの食物ならびに動物の食物(すなわち、飼料)を含む。好適な態様では、食物はヒトによる摂取用である。
【0199】
食物は溶液又は固体の形でもよく、これは用途及び/又は適用様式及び/又は投与様式に依存して変化しうる。
【0200】
食物(例えば機能性食品)として又は食物の製造に使用される時、本発明の組成物は、栄養的に許容される担体、栄養的に許容される希釈剤、栄養的に許容される賦形剤、栄養的に許容されるアジュバント、栄養的に許容される活性材料の1つ又はそれ以上とともに使用することができる。
【0201】
好ましくは組成物は、ミルク又はショ糖強化ミルク、又はショ糖及び/又はマルトースを含む乳媒体を発酵するのに使用され、ここで、得られる媒体は組成物のすべての成分、すなわち本発明の微生物を含み、ヨーグルトミルクに材料として適切な濃度(例えば最終製造物中で1日用量が106〜1010cfuになるような濃度)で加ることができる。本発明の微生物はヨーグルトの発酵の前又は後に使用することができる。
【0202】
いくつかの態様について本発明の微生物は、動物飼料、例えば家畜飼料、特に家禽(例えばニワトリ)の飼料、又はペット飼料として、又はその製造に使用される。
【0203】
食物材料
本発明の成分は、食物材料及び/又は飼料材料として使用することができる。
【0204】
本明細書において使用される用語「食物材料」又は「飼料材料」は、栄養補助物質として機能性食品又は食物であるか、又はこれに加えることができる調製物などである。
【0205】
食物材料は溶液又は固体の形態であることができ、これは用途及び/又は適用様式及び/又は投与様式に依存して変化する。
【0206】
食品補助物質
本発明の組成物は、食品補助物質であるか又は食品補助物質に加えてもよい。
【0207】
機能性食品
本発明の組成物は、機能性食品であるか又は機能性食品に加えてもよい。
【0208】
本明細書において使用される用語「機能性食品」は、栄養的作用を与えるのみでなく、別の有効な作用を摂取者に与えることができる食品を意味する。
【0209】
従って機能性食品は、食物に特定の機能(例えば、純粋な栄養効果以外の医学的又は生理学的利益)を付与する、成分又は材料(例えば本明細書に記載のものなど)が導入された通常の食品である。
【0210】
機能性食品の法的定義は無いが、当該分野に興味のある関係者の大部分は、これは基本的な栄養的作用を超えた特定の健康作用を有するとして市販されている食品である、という点で意見が一致している。
【0211】
いくつかの機能性食品は栄養補助食品である。ここで用語「栄養補助食品」は、栄養的作用及び/又は味の満足感のみでなく、消費者に治療(又は他の有益な)作用を与えることができる食物を意味する。栄養補助食品は、食物を医薬の伝統的な境界線にまたがっている。
【0212】
調査は、消費者が心臓疾患との関連を謳う機能性食品に最も関心を置いていることを示唆している。癌を予防することは、消費者が大きな関心を抱く栄養素の別の態様であるが、興味深いことに、これは消費者がほとんどコントロールできないと考えている領域である。実際、世界保健機構(World Health Organization)によると、癌症例の少なくとも35%は食事に関係している。さらに骨粗鬆症、消化管の健康、及び肥満効果に関連する宣伝文句は、機能性食品の購入を誘導し、市場の発展を牽引する傾向のある重要な要因である。
【0213】
プロバイオティック
いくつかの用途について、本発明の組成物中の生存性乳酸微生物はプロバイオティック培養物作用を示すことができると考えられている。さらにプロバイオティック及び/又はプレバイオティックを本発明の組成物に加えることも、本発明の範囲内である。
【0214】
ここでプレバイオティックは:
「1つ又は限定された数の有益な細菌の増殖及び/又は活性を選択的に刺激することにより、宿主に有益に作用する非消化性の食物材料」である。
【0215】
本明細書において使用される用語「プロバイオティック培養物」は、例えば十分な数が摂取されるか又は局所的に投与されると、宿主生物に1つ又はそれ以上の明らかな健康上の利益を付与することにより、宿主生物に有益な作用を及ぼす生存微生物(例えば細菌又は酵母を含む)を指す。プロバイオティックは、1つ又はそれ以上の粘膜表面の微生物バランスを改善することができる。例えば粘膜表面は、小腸、尿路、呼吸器、又は皮膚でありうる。本明細書において使用される用語「プロバイオティック」はまた、免疫系の有益な支系(branch)を刺激することができ、同時に粘膜表面(例えば消化管)の炎症反応を低下させることができる生存微生物を包含する。
【0216】
プロバイオティック摂取量に下限も上限も無いが、1日用量として少なくとも106〜1012、好ましくは少なくとも106〜1010cfuが、好ましくは108〜109cfuが、宿主生物(例えばヒト)で有益な健康作用を達するのに有効であるといわれている。
【0217】
本発明の微生物が有しうるプロバイオティック作用以外に、組成物と組合せて含ませることができる他の化合物としてプレバイオティックを提供することも本発明の範囲内である。本発明の微生物及び/又はその代謝産物は本明細書において「組成物」と称することができる。本発明の組成物を含む組合せのプレバイオティック成分は、大腸内でのゆっくりとした発酵が特徴である。このようなプレバイオティックは、消化管中の菌叢、特に大腸の左側(これは特に大腸癌や潰瘍性大腸炎のような疾患に罹りやすい消化管の領域)で有益な作用を示すことができる。
【0218】
プレバイオティックは典型的には非消化性炭水化物(オリゴ糖又は多糖)又は糖アルコールであり、これは上部消化管で分解も吸収もされない。市販品で使用され、本発明で有用な既知のプレバイオティックには、イヌリン(フルクトオリゴ糖又はFOS)及びトランスガラクトオリゴ糖(GOS又はTOS)などがある。他の適切なプレバイオティックには、パランチノースオリゴ糖(palantinoseoligosaccharide)、大豆オリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴマー(xylooligomer)、非分解性デンプン、ラクトサッカロース、ラクツロース、ラクチトール、マルチトール、ポリデキストロース(すなわちLitesse(登録商標))などがある。
【0219】
ある実施形態において本発明は、本発明の微生物及び/又はその代謝産物とプレバイオティックとの組合せに関する。
【0220】
この組合せで使用されるプレバイオティックは以下の1つ又はそれ以上でもよい:イヌリン(フルクトオリゴ糖又はFOS)及びトランスガラクトオリゴ糖(GOS又はTOS)。他の適切なプレバイオティックには、パランチノースオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴマー、非分解性デンプン、ラクトサッカロース、ラクツロース、ラクチトール、マルチトール、ポリデキストロース(すなわちLitesse(登録商標))、又はラクチトール。
【0221】
プレバイオティックは、本発明の微生物及び/又はその代謝産物と同時に(例えば、混合物で、又は同じか又は異なる経路で同時に送達される)、又は順に(例えば同じか又は異なる経路で)投与することができる。
【0222】
本発明は、満腹感を誘導するのに及び/又は過剰体重もしくは肥満を治療又は予防するのに使用される薬剤の製造における、プレバイオティックと組合せた微生物及び/又はその代謝産物の使用を意図する。
【0223】
シンバイオオティック
本発明はまた、組合せるとシンバイオティックになる、本発明の組成物と組合せた材料としてのプレバイオティック及びプロバイオティックの使用を意図する。本発明の微生物及び/又はその代謝産物は、本明細書において「組成物」と称することができる。この目的は、新しい有益な細菌の作用と体内の有益な細菌の刺激とを組合せることである。かかる混合物の一部は強力な相乗的栄養効果及び/又は健康効果を示すことがあるため、これらの開発と摂取は大きな可能性がある。
【0224】
したがって、本発明の組成物は特に、消費者にシンバイオティック作用を与えることができる異なる成分を含有するように設計することができる。
【0225】
医薬
本発明の組成物は、医薬として、又はその製造に使用することができる。ここで用語「医薬」は広い意味で使用され、ヒト用の医薬ならびに動物用の医薬(すなわち獣医学的用途)を包含する。好適な態様において、医薬は、ヒトでの使用及び/又は畜産用である。
【0226】
医薬は治療目的でもよい(これは、実際には治療的、緩和的、又は予防的でもよい)。医薬は診断目的でもよい。
【0227】
医薬として、又は医薬の製造に使用される時、本発明の組成物は、薬剤学的に許容される担体、薬剤学的に許容される希釈剤、薬剤学的に許容される賦形剤、薬剤学的に許容されるアジュバント、薬剤活性材料の1つ又はそれ以上と組合せて使用してもよい。
【0228】
医薬は溶液又は固体の形態でもよく、これは用途及び/又は適用様式及び/又は投与様式に依存して変化する。
【0229】
医薬材料
本発明の微生物は医薬材料として使用してもよい。ここで組成物は単一の活性成分でも、多くの(すなわち2以上の)活性成分の少なくとも1つでもよい。
【0230】
医薬材料は溶液又は固体の形態でもよく、これは用途及び/又は適用様式及び/又は投与様式に依存して変化する。
【0231】
形態
本発明の微生物及び/又はその代謝産物は任意の適切な形態で使用することができ、単独でも又は他の成分又は材料と組合せで存在する。本発明の微生物及び/又はその代謝産物は本明細書において「組成物」と称することができる。同様に本発明の組成物と他の成分及び/又は材料(すなわち、材料−例えば食物材料、機能性食品材料又は医薬材料)を含む組合せは任意の適切な形態で使用することができる。
【0232】
本発明の微生物は固体又は液体調製物又はその代替物の形態で使用することができる。固体調製物の例には、特に限定されないが、錠剤、カプセル剤、粉剤、顆粒剤、及び粉末剤などが挙げられ、湿潤性の、噴霧乾燥されたもしくは凍結乾燥されたものでもよい。液体調製物の例には、特に限定されないが、水溶液、有機溶液、又は水性−有機溶液、懸濁液、及びエマルジョンなどがある。
【0233】
形態の適当な例には、即時的、遅延的、修飾的、持続的、パルス的、制御放出的用途用の、錠剤、丸剤、カプセル剤、腔坐剤、液剤もしくは懸濁剤の1つ又はそれ以上(これらは香味剤又は着色剤を含有してもよい)がある。
【0234】
例えば、本発明の組成物が錠剤形態として(例えば機能性材料として使用するために)使用される場合、錠剤は以下の1つ又はそれ以上をさらに含有してもよい:賦形剤、例えば微結晶セルロース、乳糖、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、及びグリシン;崩壊剤、例えばデンプン(好ましくは、トウモロコシ、ジャガイモ、又はタピオカデンプン)、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、及び特定の複合ケイ酸塩;顆粒結合剤、例えばポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ショ糖、ゼラチン、及びアカシア;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ベヘン酸グリセロール、及びタルク。
【0235】
形態の調製に使用される栄養的に許容される担体の例には、例えば水、塩溶液、アルコール、シリコーン、蝋、ワセリン、植物油、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、リポソーム、糖、ゼラチン、乳糖、アミロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、界面活性剤、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリド及びジグリセリド、ペトロエスラール(petroethral)脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなどがある。
【0236】
形態の好適な賦形剤には、乳糖、デンプン、セルロース、ミルク糖、又は高分子量ポリエチレングリコールなどがある。
【0237】
水性懸濁剤及び/又はエリキシル剤について、本発明の組成物は、種々の甘味剤又は香味剤、着色物質もしくは色素と、乳化剤及び/又は懸濁剤と、希釈剤(例えば水、プロピレングリコール、及びグリセリン、及びこれらの組合せ)と、及びこれらの組合せと、混合してもよい。
【0238】
形態はまた、ゼラチンカプセル剤;ファイバーカプセル剤、ファイバー錠剤など;又はファイバー飲料などでもよい。
【0239】
形態のさらなる例は、例えばクリームの形態である。ある態様において微生物及び/又はその代謝産物は、例えば医薬及び/又は化粧品クリーム、例えば日焼けクリーム及び/又は日焼け後クリームに含有させることができる。
【0240】
1つの態様において本発明の組成物は、例えば呼吸器への投与のために、例えば鼻噴霧剤によりエアロゾルで投与することができる。
【実施例】
【0241】
実施例
ここで本発明を例示目的でのみ説明するが、ここで以下の図面を参照することができる:
図1は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)で処理したCaco-2細胞中のペプチドYY(PYY)の遺伝子発現パターンを示す。データはRNA量に対して標準化した。差の倍数は、Livak and Schmittgen, 2001に記載のように計算した。
【0242】
図2は、Caco-2細胞中のPYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)ならし培地の作用を示す。
【0243】
図3は、プロバイオティック性を有する異なる微生物への暴露後のPYYの遺伝子発現を示す。
【0244】
図4は、分化したCaco-2細胞中のPYY発現に対する、L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞、単純脂質ミセル、及びこれらの組合せの作用を示す。
【0245】
図5は、分化したCaco-2細胞中のPYY発現に対する、L.アシドフィルス(L. acidophilus)代謝産物、複合脂質ミセル、及びこれらの組合せの作用を示す。
【0246】
図6は、PYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細胞不含上清及び細菌の作用を示す。
【0247】
図7は、PYY発現に対するL.クルバツス(L. curvatus)853の作用を示す。
【0248】
実施例1
L.アシドフィルス(L. acidophilus)で処理したCaco-2中のペプチドYY(PYY)の遺伝子発現パターンの分析

方法
ヒト結腸癌細胞株Caco-2を半多孔性細胞培養インサート上で培養し、MITO+血清エクテンダーを補充しているが抗生物質を含有しないEntero-STIMからなる分化培地(DM)を使用して5日間分化プロトコールに従って分化させた。分化は、TER測定とアルカリホスファターゼ活性測定を使用してモニターした。
【0249】
ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)(PTA-4797株)細菌を、OD600が0.6〜0.7になるまで1%(重量/容量)グルコースを補充したMRSブロスで培養した。L.アシドフィルス(L. acidophilus)処理物を細胞培養インサートの先端側に加え、24時間インキュベートした。RNeasyミニキット(Qiagen)に提供されたプロトコールに従って細胞からRNAを単離し、Superscript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。ABI Prism 7000 Genetic AnalyzerとともにSYBR Green (Applied Biosystems) を使用して、ホモサピエンスペプチドYYに特異的なプライマーにより、遺伝子発現パターンをモニターした。正方向プライマーは、5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3' であり、逆方向プライマーは 5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3' であった。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、Livak et al. (2001)の方法を使用して相対的発現値に変換した。
【0250】
対照としてCaco-2細胞を、L.アシドフィルス(L. acidophilus)によって処理していない細胞培養インサート上で同様に増殖させた。
【0251】
結果
アルカリホスファターゼ活性ならびにTER測定の結果は、細胞が十分に分化していることを示す(データは示していない)。
【0252】
遺伝子発現分析は、満腹感マーカーペプチドYY(PYY)の発現を示す。Caco-2細胞をL.アシドフィルス(L. acidophilus)で処理すると、ペプチドYY(PYY)発現は対照と比較して255%上昇した(p<0.05、ANOVA)(図1)。
【0253】
Caco-2細胞のL.アシドフィルス(L. acidophilus)処理は、満腹感マーカーであるペプチドYYの発現を増加させた。この結果は、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の摂取が、小腸での満腹感シグナル伝達を増加することにより、食後満腹感を増加することができることを示す。
【0254】
実施例2
グルコースを含む食事を模倣するin vitro実験
分化Caco-2細胞を用いる実験。種々の量のグルコースで処理した細胞中のL.アシドフィルス(L. acidophilus)ならし培養ブロスの作用
Caco-2を、半多孔性細胞培養インサート上で培養し、MITO+血清エクテンダーを補充しているが抗生物質を含有しないEntero-STIMからなる分化培地(DM)を使用して、5日間分化プロトコールに従って分化させた。分化は、TER測定とアルカリホスファターゼ活性測定を使用してモニターした。実験の4日目に、インサートの両側で培地をグルコースを含有しない培地と交換し、細胞のグルコースを24時間枯渇させた。
【0255】
Caco-2細胞の処理は、対照細胞(これは、0.5mM及び5mMグルコースを含有する培地で先端側で処理した)と試験細胞(これは、0.5mM及び5mMグルコースを含有する培地と共に同時にL.アシドフィルス(L. acidophilus)処理を加えて先端側で処理した)から構成された。さらに、先端側でのグルコース含有培地の添加のない対照Caco-2細胞も含めた。すべてのウェルで、基部側に5mMグルコースを加えた。細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0256】
L.アシドフィルス(L. acidophilus)細菌を、OD600が0.6〜0.7になるまで、糖を含有しないMRSブロスで培養した。細胞を遠心分離し、培養ブロスを無菌ろ過し、試験培地で使用した。
【0257】
RNeasyミニキット(Qiagen)に提供されたプロトコールに従ってCaco-2細胞からRNAを単離し、Superscript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。ABI Prism 7000 Genetic AnalyzerとともにTaqMan probe chemistry (Applied Biosystems) を使用して、ホモサピエンスPYYを特異的に認識するオリゴヌクレオチドセットを使用して、PYYの遺伝子発現パターンをモニターした。
【0258】
オリゴヌクレオチドは以下を含有した:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3'、逆方向プライマー:5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3'、及びプローブ:Universal ProbeLibrary プローブ #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−1次関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi et al.,2005 Nutrition & Cancer 51 (1): 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0259】
結果
アルカリホスファターゼ活性、ならびにTER測定、からの結果は、細胞が十分に分化したことを示す(データは示していない)。
【0260】
結果は図2に示す。
【0261】
L.アシドフィルス(L. acidophilus)培養ブロスの添加は、それぞれ同量のグルコースを含有する対照と比較して、PYYの発現が、0.5mMグルコースを含有するサンプルでは1.3倍増加(p<0.05, ANOVA)し、5mMグルコースを含有するサンプルでは2倍増加(p<0.05)した。L.アシドフィルス(L. acidophilus)をCaco-2細胞と同時培養すると、それぞれ同じグルコース値を有する対照細胞と比較して、PYYの発現が、0.5mMグルコースを含有するサンプルでは1.7倍増加し、5mMグルコースを含有するサンプルでは2倍増加した。
【0262】
実施例3
他のプロバイオティックを用いるin vitro実験
Caco-2を、半多孔性細胞培養インサート上で培養し、MITO+血清エクテンダーを補充しているが抗生物質を含有しないEntero-STIMからなる分化培地(DM)を使用して、5日間分化プロトコールに従って分化させた。分化は、TER測定とアルカリホスファターゼ活性測定を使用してモニターした。
【0263】
Caco-2細胞の処理は、対照細胞(これは、Caco-2培地で処理した)と試験細胞(これは、Caco-2培地中のプロバイオティック培養ブロスで処理した)から構成された。さらにCaco-2培地で希釈したMRSブロスが添加された対照Caco-2細胞を含めた。細胞を37℃、5%CO2で24時間インキュベートした。
【0264】
プロバイオティック細菌を、OD600が0.6〜0.7になるまで、1%(重量/容量)グルコースを補充したMRSブロスで培養した。細胞を遠心分離し、培養ブロスを無菌ろ過し、試験培地で使用した。試験したプロバイオティック株は以下の市販の株を含んだ:B.ラクチス(B. lactis)420 (Daniscoから)、B.ラクチス(B. lactis)HN019 (商品名 Howaru(登録商標)Bifido-Danisco A/S) 及びL.サリバリウス(L. salivarius)Ls-33 (Daniscoから)。
【0265】
RNeasyミニキット(Qiagen)に提供されたプロトコールに従ってCaco-2細胞からRNAを単離し、Superscript III逆転写酵素(Invitrogen)を使用してcDNAを合成した。ABI Prism 7000 Genetic AnalyzerとともにTaqMan probe chemistry (Applied Biosystems) を使用して、ホモサピエンスPYYを特異的に認識するオリゴヌクレオチドセットを使用して、PYYの遺伝子発現パターンをモニターした。
【0266】
オリゴヌクレオチドは以下を含んだ:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3'、逆方向プライマー:5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3'、及びプローブ:Universal ProbeLibrary プローブ #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−1次関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi et al.,2005 Nutrition & Cancer 51 (1): 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0267】
結果
結果を図3に示す。
【0268】
B.ラクチス(B. lactis)420 (Daniscoから)及びB.ラクチス(B. lactis)HN019の添加は、対照と比較してPYY発現をそれぞれ76%及び68%増加させた。L.サリバリウス(L. salivarius)33の処理は、対照と比較してPYY発現を67%増加させた。従ってL.アシドフィルス(L. acidophilus)以外の細菌は同じ満腹感誘導作用を有することができる。
【0269】
実施例4
ラットの血液中の満腹感シグナル伝達の測定
この試験ではヒトモデルとしてラットを使用したが、いくつかの生理学的な差が存在する。ヒトの胃と異なり、ラットの胃の近位部は、細菌が生存してそこで食物を発酵することを可能にする胃液がほとんど無い。これは、ヒトとラットとで満腹感に差を引き起こす可能性がある。すなわち下記のプロトコールを使用して得られるラット血漿は、胃(グレリン、レプチン)、小腸(CCK、GLP-1、PYY、オレキシン)から生じる神経内分泌シグナル、又は血液循環中の代謝産物(酢酸、グルコース)、及びそのホルモン応答(インスリン)について分析される。
【0270】
消化管は、食事摂取に関連する管腔内刺激に応答した満腹感増加ペプチドであるコレシストキニン(CCK)、及びペプチドYY(PYY)を合成し分泌する、内分泌及び神経細胞に富む。CCKは食物摂取を迅速に阻害し、阻害の持続は比較的短時間である。消化管微生物により産生される短鎖脂肪酸は、満腹感誘導性消化管ホルモンPYYを誘導することも知られている。プロバイオティックはまた、食欲刺激ペプチドであるグレリンとオレキシンの低下を引き起こしうる。これらの血漿濃度は食事前にピークに達し、その後急速に低下する。
【0271】
従ってプロバイオティック補給後の短時間食物摂取の制御の指標として、満腹感増加性ペプチドであるCCKとPYY、及びさらに食欲刺激ペプチドであるグレリン又はオレキシンの血漿レベルが注目されている。さらに血漿中の発酵生成物のレベルを調べるために、酢酸の血漿濃度が分析される。
【0272】
実験の開始時に体重248g(STDEV 12.1g)のオスのWistarラット(HsdRddHan:WIST)を、水道水は自由に飲ませつつ21℃で12時間の明/暗サイクルに収容した。馴化期間(14日間)中、正常なサイクルを逆転させ、午前8時の暗サイクルの開始から5時間以内にすべての食餌(20g/日)を摂取するようにラットを訓練した。使用したFormulab Diet 5008は高エネルギー高タンパク質食であり、消化性炭水化物49.5 5と繊維をと含有した。ラットをランダムに2つの処理群(各20匹)と1つの群(5匹)に割り当てた。後者の群を食事の前に午前8時に麻酔して絶食血液サンプルを採取した。残りの群は以下の通りであった:Bifido 420 (1010)、NCFM (1010)、NCFM(1010) + ラクチトール (2g)、ラクチトール(2g)のみ、及び対照群。ラクチトールは食後に循環PYY濃度を増加させることが知られているためこれを含めた。すべての試験項目は、チューブによる給餌により2.5mlの無菌水/動物の用量で投与した。対照群には、同じ条件下で補助物質の無い無菌水を与えた。投与後に動物には同じ標準食を与えた。各試験群を5つのサブグループに分け、次に各サブグループを、暗サイクルの開始後1、5、10、及び24時間に血液サンプリングのために麻酔した。ラットは心穿刺による血液サンプリングのために二酸化炭素で麻酔した。
【0273】
PYY濃度はGee and Johnson (2005)に従って血漿から分析される。他のホルモン、例えばGLP-1は、Deacon et al (2002) Am. J. Physiol. Endocrinol. Metab. 282:E873-E879に従ってラジオイムノアッセイ(RIA)により、グレリンはRIAにより、CCKは、Paloheimo & Rehfeld (1995), orexin according to Heinonen et al (2005)により、そして酢酸はHPLCにより分析される。すべての血液サンプルは、心穿刺によりEDTAチューブ中に採取される。サンプルを1,600xg、4℃で15分遠心分離した。血漿画分を除去し、新鮮な試験管に移して、分析するまで-70℃で保存する。
【0274】
食事中の食物摂取をモニターするための試験
上記のオスのWistarラットを使用する。各群で10匹のラットを使用する(ラットの対照群と食餌給餌試験群)。
【0275】
ラットをまず10日間試験に馴化させ、その後試験を開始し10日間継続する。ラットを5群に分ける(1つは対照群で4つは試験群)。すべての群でラットに対照食餌を自由に与えた。対照群は1日に1回胃管栄養法により食塩水を投与し、試験群には1日に1回胃管栄養法により、108〜1010の量のL.アシドフィルス(L. acidophilus)を投与する。好ましくは暗サイクル中にラットに食物を与える。
【0276】
各ラットについて各暗サイクル後に、食物摂取と体重増加をモニターする。
【0277】
予備調査は、ラットの食物への微生物の添加及び特にプロバイオティック株の添加は、これらのラットによる食物摂取を低下させることを示唆する。
【0278】
臨床治験:ヒトについての食後満腹感シグナル伝達試験
15〜20名の志願者(ヒト被験者)で試験的研究を行うことができる。被験者は自身でコントロールする(対照飲料又は試験飲料で2つの別々の試験)。
【0279】
好ましくは被験者は、同数の中年の健康男性又は女性である(体格指数(BMI)は約25)。
【0280】
被験者は一晩の絶食を受ける。
【0281】
次に彼らは試験飲料(本明細書に開示の目的の1つ又はそれ以上の株を含む)及び対照飲料(目的の株を含まない)を与えられる。
【0282】
次に、0、2、及び5時間目に静脈血液サンプルを採取する。
【0283】
各被験者に試験飲料又は対照飲料を与えられた後の空腹感と満腹感に関するアンケートを記入させるべきである。
【0284】
平行して、血漿からPYY濃度を測定する(Peninsula Laboratories, San Carlos, CA, USA)。
【0285】
実施例5
分化Caco-2細胞を用いる実験。脂質で処理した細胞におけるL.アシドフィルス(L. acidophilus)ならし培養ブロスの作用
本実験は、脂肪酸を含む食事を模倣するために行われる。
【0286】
実験は、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化したCaco-2細胞を用いて行った。細胞は、経皮電気抵抗(TEER)が200オーム×cm2を超えるまで分化させた。Chateau, D., Pauquai, T., Delers, F., Rousset, M., Chambaz, J. & Demignot, S. (2005) J. Cell Physiol 202, 767-776に従って、10% L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物を含むか又は含まない複合脂質ミセルを調製した。Caco-2細胞を脂質ミセルで3時間処理し、次に該細胞からのPYY発現を測定した。
【0287】
材料と方法
20% FBS(Invitrogen)、2mM 安定グルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、20U/ml ペニシリン(Invitrogen)、20μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)、及び0.5μg/ml-1 アンホテリシン(Invitrogen)を補充したダルベッコー改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen Carlsbad, CA, US)からなる基本培養培地中、37℃、加湿5% CO2空気下で、Caco-2細胞(HTB-37、American Type Culture Collection、ATCC)を維持した。
【0288】
Caco-2細胞は26継代で使用し、6.6x105細胞/cm2として12ウェル細胞培養インサート(BIOCOAT HTS, BD Biosciences, Le Pont de Claix, France)上で平板培養し、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化させた。
【0289】
簡単に説明すると、平板培養後、抗生物質を含まない基礎細胞培養培地中、加湿5% CO2空気下、37℃で一晩細胞をインキュベートし、次に培地を吸引し、MITO+血清エクステンダー(BD Biosciences)を250μl/250ml培地で補充した分化培地(Entero-STIM, BD Biosciences)で交換した。培養4日目に培地を交換し、5日目に脂質ミセルを用いて実験を行った。
【0290】
L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM(Danisco Cultures, Paris, France製)を、OD600が0.6〜0.7に達するまで、1.0%グルコースを補充したMan, Rogosa and Sharpe (MRS)ブロス中、37℃で嫌気的に培養した。既に記載されているように(Apajalahti, J. H., Kettunen, H., Kettunen, A., Holben, W. E., Nurminen, P. H., Rautonen, N. & Mutanen, M. (2002) Appl. Environ. Microbiol. 68, 4986-4995)、フローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson, San Jose, CA, US)により、細菌の細胞密度を測定した。細胞無含上清を遠心分離(25℃、5分、3000g)により集め、上清を除去した。L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細胞無含上清(以後L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物と呼ぶ)ならびにMRS対照を分化培地で10%(v/v)に希釈し、得られた培地中に複合脂質ミセルを調製した(後述)。
【0291】
複合脂質ミセルを分化培地中で24mMタウロコール酸(Sigma, St Louis, MO, USA)中に調製した。使用した複合ミセルの組成は以下の通りである:0.6mM オレイン酸−2mM タウロコール酸−0.2mM 2-モノ-オレイルグリセロール−0.05mM コレステロール−0.2mMホスファチジルコリン。無菌ガラスチューブ中でオレイン酸(100mMストックを6μl)を他の脂質(2μl)と混合して1mlのミセルを調製した。脂質を窒素ガス下、周囲温度で乾燥させ、残渣を分化培地中24mM タウロコール酸 83μlに溶解し、分化培地のみ、10%(v/v) MRSからなる分化培地、又は10%(v/v)L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物からなる分化培地により、容量を1mlにした。
【0292】
Caco-2分化の5日目に、脂質ミセルを細胞の先端側に適用し、細胞と3時間反応させた。対照として、10%(v/v)MRSと、L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物を含まない複合脂質ミセルとを使用した。これらは分化培地中に調製した。
【0293】
処理後、細胞培養培地を吸引し、1%β−メルカプトエタノール(Sigma)を補充したRA1(Macherey-Nagel, Duren, Germany)150μlで溶解した。細胞溶解物からのRNAを、製造業者(Macherey-Nagel)の説明書に従ってNucleospin 96 RNA単離キットを用いて集めた。製造業者(Invitrogen)の説明書に従ってSuperscript IIIを使用し、ランダムプライマーを用いて第1鎖cDNA合成を行った。サンプル中のPYY発現パターンを、ABI PRISM配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用し、ホモサピエンスPYYを特異的に検出するオリゴヌクレオチドを使用して分析した。オリゴヌクレオチドは以下を含んだ:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3';逆方向プライマー: 5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3';及びプローブ:Universal ProbeLibrary probe #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−1次関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi et al.,2005 Nutrition & Cancer 51 (1): 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0294】
統計解析はスチューデントt検定を用いて行った。
【0295】
結果
結果を図5に示す。
【0296】
Caco-2細胞をL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物のみで処理したか、又は複合脂質ミセルと組合せて処理した時、満腹感マーカーペプチドYY(PYY)の発現は増加した。
【0297】
複合脂質ミセル(0.6mM オレイン酸、2mM 2-モノ-オレイルグリセロール、0.2mM コレステロール、及び0.05mM L-α-ホスファチジルコリンからなる)を用いた実験では、複合脂質ミセル混合物と組合せたMRSブロスは、複合脂質ミセルのみによる処理と比較して、PYY発現を誘導しなかった。L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物は、対照と比較してPYYの発現を増加させた(複合脂質ミセル単独と比較してp<0.05、及び10% MRS単独と比較してp=0.05)。複合脂質ミセルを10% L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物と組合せると、これはPYY発現をさらに増加させた(複合脂質ミセル処理又は10% MRS処理と比較してp<0.05)。
【0298】
実施例6
脂質で処理した分化Caco-2細胞に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞の作用
この実験は、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化したCaco-2細胞を用いて行った。細胞は、経皮電気抵抗(TEER)が200オーム×cm2を超えるまで分化させた。Chateau, D., Pauquai, T., Delers, F., Rousset, M., Chambaz, J. & Demignot, S. (2005) J. Cell Physiol 202, 767-776に従って、L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM代謝産物を含むか又は含まない複合脂質ミセルを、細菌細胞50対Caco-2細胞1の比率で調製した。Caco-2細胞を脂質ミセルで3時間処理し、次に該細胞からのPYY発現を測定した。
【0299】
材料と方法
20% FBS(Invitrogen)、2mM 安定グルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、20U/ml ペニシリン(Invitrogen)、20μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)、及び0.5μg/ml アンホテリシン(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen Carlsbad, CA, US)からなる基本培養培地中、37℃、加湿5% CO2空気下で、Caco-2細胞(HTB-37、American Type Culture Collection、ATCC)を維持した。
【0300】
Caco-2細胞は26継代で使用し、6.6x105細胞/cm2として12ウェル細胞培養インサート(BIOCOAT HTS, BD Biosciences, Le Pont de Claix, France)上で平板培養し、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化させた。簡単に説明すると、平板培養した後、抗生物質を含まない基礎細胞培養培地中、加湿5% CO2空気下、37℃で一晩細胞をインキュベートし、次に培地を吸引し、MITO+血清エクステンダー(BD Biosciences)を250μl/250ml培地で補充した分化培地(Entero-STIM, BD Biosciences)で交換した。培養4日目に培地を交換し、5日目に脂質ミセルを用いて実験を行った。
【0301】
L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM(Danisco Cultures, Paris, France製)を、OD600が0.6〜0.7に達するまで、1.0%(重量/容量)グルコースを補充したMan, Rogosa and Sharpe (MRS)ブロス中、37℃で嫌気的に培養した。既に記載されているように(Apajalahti, J. H., Kettunen, H., Kettunen, A., Holben, W. E., Nurminen, P. H., Rautonen, N. & Mutanen, M. (2002) Appl. Environ. Microbiol. 68, 4986-4995)、フローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson, San Jose, CA, US)により、細菌の細胞密度を測定した。細菌細胞を遠心分離(25℃、5分、3000g)により集め、上清を除去した。L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞を分化培地で1回洗浄し、細菌を用いて単純脂質ミセルを調製した(後述)。
【0302】
単純脂質ミセルを分化培地中で24mMタウロコール酸(Sigma, St Louis, MO, USA)中に調製した。単純ミセルの組成は以下の通りであった:0.6mM オレイン酸−2mM タウロコール酸。無菌ガラスチューブ中でオレイン酸(100mMストックを6μl)から1mlのミセルを調製した。オレイン酸を窒素ガス下、周囲温度で乾燥させ、残渣を分化培地中24mM タウロコール酸 83μlに溶解し、分化培地のみ、10%(v/v) MRSからなる分化培地、又は細菌細胞50対Caco-2細胞1の比率のL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞からなる分化培地により、容量を1mlにした。
【0303】
Caco-2分化の5日目に、脂質ミセルを細胞の先端側に適用し、細胞と3時間反応させた。対照として、10%(v/v)MRSと、L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞を含まない単純脂質ミセルとを使用した。これらは分化培地中に調製した。
【0304】
処理後、細胞培養培地を吸引し、1%β−メルカプトエタノール(Sigma)を補充したRA1(Macherey-Nagel, Duren, Germany)150μlで溶解した。細胞溶解物からのRNAを、製造業者(Macherey-Nagel)の説明書に従ってNucleospin 96 RNA単離キットを用いて集めた。製造業者(Invitrogen)の説明書に従ってSuperscript IIIを使用し、ランダムプライマーを用いて第1鎖cDNA合成を行った。サンプル中のPYY発現パターンを、ABI PRISM配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用し、ホモサピエンスPYYを特異的に検出するオリゴヌクレオチドを使用して分析した。オリゴヌクレオチドが以下を含んだ:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3';逆方向プライマー: 5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3';及びプローブ:Universal ProbeLibrary probe #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−線形関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi et al.,2005 Nutrition & Cancer 51 (1): 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0305】
統計解析はスチューデントt検定を用いて行った。
【0306】
結果
結果を図4に示す。
【0307】
Caco-2細胞をL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞単独で処理したか、又は単純脂質ミセルと組合せて処理した時、満腹感マーカーペプチドYY(PYY)の発現は増加した。
【0308】
単純脂質ミセル(2mM タウロコール酸中の0.6mM オレイン酸からなる)を用いる実験では、単純脂質ミセル混合物と組合せたMRSブロスは、脂質ミセルのみによる処理と比較して、PYY発現を誘導しなかった。L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞は、対照と比較してPYYの発現を増加させた(脂質ミセル単独と比較したとき及び10% MRS単独と比較したとき、p<0.05)。脂質ミセルをL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞(細菌細胞50対Caco-2細胞1の比率)と組合せると、PYY発現は同様に誘導されたが、大きな変動は統計的に有意な低下を引き起こした(複合脂質ミセル処理と比較したときp=0.08)。
【0309】
実施例7
PYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFMの作用(時間シリーズ)
試験の概要
この実験は、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化したCaco-2細胞を用いて行った。細胞は、経皮電気抵抗(TEER)が200オーム×cm2を超えるまで分化させた。細胞を、細菌細胞(微生物50対Caco-2細胞1)又はCaco-2培養培地で希釈した0.1%(v/v)、1%(v/v)、及び10%(v/v)の細胞無含上清で処理した。PYY発現研究用のサンプルを2つの時点(試験物質の投与後3時間と24時間)に収集した。
【0310】
材料と方法
20% FBS(Invitrogen)、2mM 安定グルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、20U/ml ペニシリン(Invitrogen)、20μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)、及び0.5μg/ml アンホテリシン(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen Carlsbad, CA, US)からなる基礎培養培地中、37℃、加湿5% CO2空気下で、Caco-2細胞(HTB-37、American Type Culture Collection、ATCC)を維持した。
【0311】
Caco-2細胞は58継代で使用し、6.6x105細胞/cm2として12ウェル細胞培養インサート(BIOCOAT HTS, BD Biosciences, Le Pont de Claix, France)上で平板培養し、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化させた。簡単に説明すると、平板培養後、抗生物質を含まない基礎細胞培養培地中、加湿5% CO2空気下、37℃で一晩細胞をインキュベートし、次に培地を吸引し、MITO+血清エクステンダー(BD Biosciences)を250μl/250ml培地で補充した分化培地(Entero-STIM, BD Biosciences)で交換した。培養4日目に培地を交換し、5日目に細菌ならびに細胞無含上清を用いて実験を行った。
【0312】
L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM(Danisco Cultures, Paris, France)を、OD600が1.0〜1.5に達するまで、1.0%(w/v)グルコースを補充したMan, Rogosa and Sharpe (MRS)ブロス中、37℃、嫌気的条件下で新たに培養した。遠心分離(25℃、5分、3000g)により細胞無含上清を集め、分化培地で 0.1%(v/v)、1%(v/v)、及び10%(v/v)に希釈し、0.2μm無菌シリンジフィルターユニット(Sartorius, Goettingen, Germany)でろ過した。OD値に基づいて細菌細胞密度を評価し、これらをEnteroStimで1回洗浄し、細菌細胞50対Caco-2細胞1の比率でEnteroStim中に再懸濁した。試験物質をCaco-2細胞の先端側に適用した。
【0313】
処理後、細胞培養培地を吸引し、1%β−メルカプトエタノール(Sigma)を補充したRA1(Macherey-Nagel, Duren, Germany)150μlで細胞を溶解した。PYY発現分析のためのサンプルをL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFMサンプルから、3時間及び24時間インキュベーション後に採った。細胞溶解物からのRNAを、製造業者(Macherey-Nagel)の説明書に従ってNucleospin 96 RNA単離キットを用いて集めた。製造業者(Invitrogen)の説明書に従ってSuperscript IIIを使用し、ランダムプライマーを用いて第1鎖cDNA合成を行った。サンプル中のPYY発現パターンを、ABI PRISM配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用し、ホモサピエンスPYYを特異的に検出するオリゴヌクレオチドを使用して分析した。オリゴヌクレオチドは以下を含んだ:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3';逆方向プライマー: 5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3';及びプローブ:Universal ProbeLibrary probe #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−1次関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi, J. T., Puolakkainen, P. A. & Rautonen, N. E. (2005) Nutr Cancer 51, 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0314】
統計分析はANOVAを用いて行った。
【0315】
結果
図6は、PYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細胞無含上清及び細菌の作用を示す。細胞無含上清の3つの異なる希釈(0.1%(v/v)、1.0%(v/v)、及び10%(v/v))を使用した。PYY発現研究のためのサンプルを、試験物質の適用3時間及び24時間後に採った。p<0.05、Enterostim(培地)対照と比較;LA NCFM bact=L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌
L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞は、細菌の適用3時間及び24時間後の両方の時点でPYY発現を増加させた。
【0316】
細胞無含上清は3時間インキュベーション後に10%希釈率でPYY発現を増加させた。
【0317】
処理の用量ならびに時間がPYY発現に影響を与える。細菌細胞(特に生存能力のある細菌細胞)は、代謝産物よりPYY発現に対してより持続性の効果を有することができる。
【0318】
実施例8
PYY発現に対するL.クルバツス(L. curvatus)853細菌細胞の作用
この実験は、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化したCaco-2細胞を用いて行った。細胞は、経皮電気抵抗(TEER)が200オーム×cm2を超えるまで分化させた。細胞をL.クルバツス(L. curvatus)853細菌細胞(微生物50対Caco-2細胞1)で処理した。4時間処理後に、遺伝子発現分析用のサンプルを採取した。
【0319】
材料と方法
20% FBS(Invitrogen)、2mM 安定グルタミン(Invitrogen)、1x非必須アミノ酸(Invitrogen)、20U/ml ペニシリン(Invitrogen)、20μg/ml ストレプトマイシン(Invitrogen)、及び0.5μg/ml アンホテリシン(Invitrogen)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM、Invitrogen Carlsbad, CA, US)からなる基礎培養培地中、37℃、加湿5% CO2空気下で、Caco-2細胞(HTB-37、American Type Culture Collection、ATCC)を維持した。
【0320】
Caco-2細胞は58継代で使用し、6.6x105細胞/cm2として12ウェル細胞培養インサート(BIOCOAT HTS, BD Biosciences, Le Pont de Claix, France)上で平板培養し、5日間プロトコール(Yamashita, S., Konishi, K., Yamazaki, Y., Taki, Y., Sakane, T., Sezaki, H. & Furuyama, Y. (2002) J Pharm Sci 91, 669-79)に従って分化させた。簡単に説明すると、平板培養後、抗生物質を含まない基礎細胞培養培地中、加湿5% CO2空気下、37℃で一晩細胞をインキュベートし、次に培地を吸引し、分化培地(MITO+血清エクステンダー(BD Biosciences)を250μl/250ml培地で補充したEntero-STIM(BD Biosciences))で交換した。培養4日目に培地を交換し、5日目に細菌細胞による実験を行った。
【0321】
L.クルバツス(L. curvatus)853を、OD600が1.0〜1.5に達するまで、1.0%グルコースを補充したMan, Rogosa and Sharpe (MRS)ブロス中、37℃、嫌気的条件下で新に培養した。遠心分離(25℃、5分、3000g)により細胞無含上清を集め、取り出した。OD値に基づいて細菌細胞密度を測定し、これらをEnteroStimで1回洗浄し、希釈し、Caco-2細胞の先端側に適用した。
【0322】
4時間処理後、細胞培養培地を吸引し、1%β−メルカプトエタノール(Sigma)を補充したRA1(Macherey-Nagel, Duren, Germany)150μlで細胞を溶解した。細胞溶解物からのRNAを、製造業者(Macherey-Nagel)の説明書に従ってNucleospin 96 RNA単離キットを用いて集めた。製造業者(Invitrogen)の説明書に従ってSuperscript IIIを使用し、ランダムプライマーを用いて第1鎖cDNA合成を行った。サンプル中のPYY発現パターンを、ABI PRISM配列検出システム(Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を使用し、ホモサピエンスPYYを特異的に検出するオリゴヌクレオチドを使用して分析した。オリゴヌクレオチドは以下を含んだ:正方向プライマー:5' GGA GGC CTC AGC TTG ACC 3';逆方向プライマー: 5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG 3';及びプローブ:Universal ProbeLibrary probe #10 (Roche)。得られた閾値サイクル(Ct)(これは蛍光強度がバックグランド閾値を横断するPCRサイクルである)を、コピー数とPCRサイクルとの間の逆対数−1次関係を示す標的転写産物のアンチセンス配列である定量合成オリゴヌクレオチドからの標準曲線を使用して、絶対定量値に変換した(Nurmi, J. T., Puolakkainen, P. A. & Rautonen, N. E. (2005) Nutr Cancer 51, 83-92)。この標準的オリゴヌクレオチドの配列は、5' TGC GCA CGA ACA CCA TAG CGA TAG CTT GTG AAG CAG ACG AGC AGG AGG TGG AAG GCG AGG GAA GTC CCA AGG GCT GCA CTG CCG CAG GTC AAG CTG AGG CCT CC 3’である。
【0323】
統計分析はANOVAを用いて行った。
【0324】
結果
図7は、PYY発現に対するL.クルバツス(L. curvatus)853の作用を示す。PYY発現研究のためのサンプルを、試験物質の適用4時間後に採った。p<0.05、培地のみの対照と比較。
【0325】
L.クルバツス(L. curvatus)853細菌細胞は、4時間のインキュベート後にPYY発現を増加させた。
【0326】
上記明細書で言及したすべての刊行物は、参照することにより本明細書に組み込まれる。本発明の範囲と精神を逸脱することなく、本発明の記載の方法及びシステムの種々の修飾態様及び変更態様が当業者には明らかであろう。本発明を具体的な好適な実施形態に関連して説明したが、本発明はこのような具体例に限定されるものではないことを理解されたい。実際に、生化学やバイオテクノロジー又は関連分野の当業者に明らかな本発明を実施するための記載の様式の種々の修飾は、特許請求の範囲内にあることが意図される。
【0327】
参考文献


【図面の簡単な説明】
【0328】
【図1】図1は、L.アシドフィルス(L. acidophilus)で処理したCaco-2細胞中のペプチドYY(PYY)の遺伝子発現パターンを示す。
【図2】図2は、Caco-2細胞中のPYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)ならし培地の作用を示す。
【図3】図3は、プロバイオティック性を有する異なる微生物への暴露後のPYYの遺伝子発現を示す。
【図4】図4は、分化したCaco-2細胞中のPYY発現に対する、L.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細菌細胞、単純脂質ミセル、及びこれらの組合せの作用を示す。
【図5】図5は、分化したCaco-2細胞中のPYY発現に対する、L.アシドフィルス(L. acidophilus)代謝産物、複合脂質ミセル、及びこれらの組合せの作用を示す。
【図6】図6は、PYY発現に対するL.アシドフィルス(L. acidophilus)NCFM細胞不含上清及び細菌の作用を示す。
【図7】図7は、PYY発現に対するL.クルバツス(L. curvatus)853の作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
満腹感シグナル伝達をモジュレートするために被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の使用。
【請求項2】
微生物及び/又はその代謝産物は1つ又はそれ以上の満腹感マーカーをモジュレートする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
モジュレーションは食後に起きる、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
微生物及び/又はその代謝産物は、以下:
PYY、CCK、グレリン、レプチン、GLP−1、オレキシン、食欲促進性の視床下部ニューロペプチドY、酢酸、アミリン、及びオキシントモジュリン
よりなる群から選択される満腹感マーカーの1つ又はそれ以上をモジュレートする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
血漿及び/又は消化管中で、以下:
PYY、CCK、GLP−1、レプチン(末梢血中)、インスリン、及び酢酸
の満腹感マーカーの1つ又はそれ以上のレベルが増加する、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
以下:
グレリン、オレキシン、及びレプチン(脳中)
の満腹感マーカーの1つ又はそれ以上のレベルが低下する、請求項4に記載の使用。
【請求項7】
支持物質は薬剤学的に許容される支持物質又は食品である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の使用。
【請求項8】
使用は美容的使用であり、支持物質は非肥満被験体に投与される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の使用。
【請求項9】
支持物質は薬剤である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の使用。
【請求項10】
少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物は、過剰体重及び/又は過剰体重により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のために被験体に投与される、請求項1〜9のいずれか1項に記載の使用。
【請求項11】
少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物は、肥満び/又は肥満により引き起こされる疾患の治療及び/又は予防のために被験体に投与される、請求項1〜10のいずれか1項に記載の使用。
【請求項12】
微生物はプロバイオティック微生物である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の使用。
【請求項13】
微生物は乳酸菌である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の使用。
【請求項14】
微生物はプロバイオティック乳酸菌である、請求項1〜13のいずれか1項に記載の使用。
【請求項15】
微生物はラクトバシルス・エスピーピー(Lactobacillus spp.)の株である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の使用。
【請求項16】
微生物はラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の株である、請求項1〜15のいずれか1項に記載の使用。
【請求項17】
微生物はラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)PTA−4797株である、請求項10に記載の使用。
【請求項18】
微生物及び/又はその代謝産物は、1つ又はそれ以上の脂質及び/又は1つ又はそれ以上の脂質ミセルと組合せて使用される、請求項1〜17のいずれか1項に記載の使用。
【請求項19】
微生物及び/又はその代謝産物はプレバイオティックと組合せて使用される、請求項1〜18のいずれか1項に記載の使用。
【請求項20】
プレバイオティックは、以下:
イヌリン、トランスガラクトオリゴ糖、パランチノースオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、オキシロオリゴマー、非分解性デンプン、ラクトサッカロース、ラクツロース、ラクチトール、マルチトール、又はポリデキストロース
の1つ又はそれ以上である、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
満腹感を誘導するために被験体に投与される支持物質の製造における、少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の使用。
【請求項22】
少なくとも1つの微生物株及び/又はその代謝産物の有効量を被験体に投与することを含む、被験体の満腹感シグナル伝達をモジュレートする方法。
【請求項23】
微生物及び/又はその代謝産物は1つ又はそれ以上の満腹感マーカーをモジュレートする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
モジュレーションは食後に起きる、請求項22又は請求項22に記載の方法。
【請求項25】
微生物及び/又はその代謝産物は、以下:
PYY、CCK、グレリン、レプチン、GLP−1、オレキシン、食欲促進性の視床下部ニューロペプチドY、酢酸、アミリン、及びオキシントモジュリン
よりなる群から選択される満腹感マーカーの1つ又はそれ以上をモジュレートする、請求項22〜24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
血漿及び/又は消化管中で、以下:
PYY、CCK、GLP−1、レプチン(末梢血中)、インスリン、及び酢酸
の満腹感マーカーの1つ又はそれ以上のレベルが増加する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
以下:
グレリン、オレキシン、及びレプチン(脳中)
の満腹感マーカーの1つ又はそれ以上のレベルが低下する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
微生物は支持物質中に取り込まれている、請求項22〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
支持物質は薬剤学的に許容される支持物質又は食品である、請求項22〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
非肥満被験体の過剰体重を減少させる美容的方法である、請求項22〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
支持物質は薬剤である、請求項29又は請求項30に記載の方法
【請求項32】
過剰体重及び/又は過剰体重により引き起こされる疾患を治療及び/又は予防する方法である、請求項22〜31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
肥満及び/又は肥満により引き起こされる疾患を治療及び/又は予防する方法である、請求項22〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
微生物はプロバイオティック微生物である、請求項22〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
微生物は乳酸菌である、請求項22〜34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
微生物はプロバイオティック乳酸菌である、請求項22〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
微生物はラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)の株である、請求項22〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
微生物及び/又はその代謝産物はプレバイオティックと組合せて投与される、請求項22〜37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
プレバイオティックは、以下:
イヌリン、トランスガラクトオリゴ糖、パランチノースオリゴ糖)、大豆オリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、オキシロオリゴマー、非分解性デンプン、ラクトサッカロース、ラクツロース、ラクチトール、マルチトール、又はポリデキストロース
の1つ又はそれ以上である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
満腹感を誘導するために及び/又は肥満を含む過剰体重を治療するために被験体に投与される支持物質を製造するための微生物及び/又はその代謝産物を選択する方法であって、
1) 微生物及び/又はその代謝産物を少なくとも1つの上皮細胞と接触させる工程、
2) 少なくとも1つの上皮細胞中の満腹感マーカーの発現を検出する工程、
を含む、前記方法。
【請求項41】
明細書及び図面を参照してそこに一般的に記載される方法。
【請求項42】
明細書及び図面を参照してそこに一般的に記載される使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2009−524640(P2009−524640A)
【公表日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551907(P2008−551907)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/IB2007/001186
【国際公開番号】WO2007/085970
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(508226285)
【出願人】(507210373)カンピナ ネーデルランド ホールディング ビー.ブイ. (4)
【Fターム(参考)】