説明

育毛増進可能な帽子

【課題】遠赤外線の放射によって着用者の頭部を心地よく暖めて頭皮部分の血行を良くしながら、天然育毛成分の放散によって発毛を促進し且つ抜け毛を防止する育毛増進可能な帽子を提供する。
【解決手段】
補強布を介在させた軟質樹脂の積層シートからなり、該シートの裏側に天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを混在させて印刷し、積層シートから所定寸法と数のシート片に裁断して帽子形状に縫製することにより、帽子裏側において、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とが内側に露出して、かぶった際に着用者の頭皮と近接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線の放射によって着用者の頭部を心地よく暖めて頭皮部分の血行を良くしながら、天然育毛成分の放散によって発毛を促進し且つ抜け毛を防止する育毛増進可能な帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる禿げとは脱毛症や禿髪症のことであり,正常に存在すべき有毛部である頭部において毛髪が欠如するか、またはその太さや数が減少してまばらとなった状態をいう。人の頭部が禿げると非常に目立ちやすく、且つ外観において若さとか美しさを明らかに欠くことになるので、頭部の脱毛が進行してくると、実際の効果は小さくても発毛剤や育毛剤を噴霧したり、鬘やヘアピースを着用する人が多い。しかし、脱毛の原因は色々であり、未だに解明されないこともあって、現在のところ統一された治療法は存在しない。
【0003】
主な脱毛症には、毛髪疾患の約70%を占める円形脱毛症があり、これは円形ないし楕円形の脱毛巣が殆ど自覚症状なしに髪のある頭部に出現し、しばしば進行拡大して領域を拡げ、且つ融合して不規則形の病巣を形成する。この病巣が拡大した場合には、悪性脱毛症として頭部全体に及ぶこともあり、さらに重症例では全身の毛が脱落してしまう。禿の原因は不明であり、病巣感染説、神経障害説、遺伝、自己免疫疾患、毛細血管挟窄説、循環男性ホルモン説などの諸説があるが確実なものはない。有力な説のひとつとして毛細血管挟窄説があり、禿げ始めた頭皮はその温度が顕著に低下し、頭皮の皮下血管の細化が毛根への血流量を低下させ、禿げや脱毛の原因となるという説である。現在では、毛細血管挟窄説にかなりの信憑性があるとされ、この説に基づいた育毛療法、育毛用器具または育毛剤などが既に数多く提案されている。
【0004】
毛細血管挟窄説に対する育毛療法として頭皮マッサージが好ましく、この育毛用器具には頭皮マッサージの効率を考慮した育毛用ブラシが存在し、育毛剤としては、血管拡張作用を有する薬剤が提案されている。この育毛用器具は、長時間簡単に使用することが基本であり、このために日頃着用するために通常の衣服や帽子の形状を有することが望ましい。例えば、特開平9−206389号に示す育毛促進用帽子は、第1生地の表面において遠赤外線を含む材料を任意のパターンにプリントし、そのプリント面に第2生地を圧着形成した積層生地を用いる。また、特開2001−276233号の育毛用繊維製品は、帽子、フード、ヘアバンドなどであり、マイナスイオン発生物質を含有または付着した繊維を用いる。
【特許文献1】特開平9−206389号公報
【特許文献2】特開2001−276233号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これら従来の育毛療法、育毛用器具または育毛剤は、いずれも比較的高価であるのに、発毛と脱毛防止の効果が十分に達成されないという問題がある。この原因として、ブラッシングなどの頭皮マッサージで頭皮下の毛細血管が拡張されても、頭皮の温度が上昇している持続時間が短かすぎ、育毛剤を併用する場合でも、頭皮温度の上昇持続時間が長くても20分程度にすぎないからであると推定されている。
【0006】
一方、特開平9−206389号および特開2001−276233号に開示の帽子類では、頭皮の温度上昇の持続時間が長くなる点については十分であっても、単に頭皮を穏やかに加温するだけであり、温熱効果が少なく、発毛および脱毛防止を十分に促進できるまでには至っていない。実際には、毛根が毛細血管から血液の供給を受け、血液の中から毛の原料であるケラチンなどのタンパク質を吸収するには、穏やかな頭皮の加温だけでなく、ある程度の加温温度に加えて蛋白質を吸収できる天然物質が存在することが必要である。
【0007】
本発明は、従来の育毛療法、育毛促進用帽子のような育毛器具などに関する前記の問題点を改善するために提案されたものであり、着用者の頭部を適度に加温しながら、天然育毛成分を頭皮に常時付与する育毛増進可能な帽子を提供することを目的としている。本発明の他の目的は、帽子として肌触りが良く、しかも撥水と防水効果を有する育毛増進可能な帽子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る育毛増進可能な帽子は、補強布を介在させた軟質樹脂の積層シートからなり、該シートの裏側に天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを混在させて印刷する。この積層シートから所定寸法と数のシート片に裁断して帽子形状に縫製することにより、帽子裏側において、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とが内側に露出して、かぶった際に着用者の頭皮と近接する。
【0009】
本発明の育毛増進可能な帽子は、補強布を有する少なくとも3層構造の積層シートからなっていてもよく、該シートの裏側に天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを混在させて印刷してもよい。この積層シートから所定寸法と数のシート片に裁断して帽子形状に縫製することにより、帽子裏側およびつば部裏側において、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とが内側に露出して、かぶった際に着用者の頭皮と近接する。
【0010】
本発明の帽子において、積層シートは、金属微粉末を含有する表面樹脂層と、中間に配置する補強布と、該補強布とラミネートした下側樹脂層との3層構造であり、表面樹脂層および下側樹脂層がいずれも発泡ウレタン樹脂からなると好ましい。
【0011】
本発明を図面によって説明すると、図5に本発明に係る育毛増進可能な帽子1を例示する。帽子1は、図5から図8に示すように着用者の頭部を覆うことができる形状であればよく、頭部にかぶったり巻き付けたりするものをすべて含んでいる。本発明において帽子に包含される帽子には、単なる通常の帽子だけでなく、頭巾、ターバン、キャップ、ハット、フード類などが存在する。
【0012】
本発明に係る育毛増進可能な帽子1は、図1に示すように補強布5を介在させた樹脂シート2で構成し、該積層シートは基本的には少なくとも3層構成である。積層シート2は、ポリエステルやナイロンなどの薄い補強布5を有する少なくとも3層構造であり、通常、3から6層構造であると好ましい。樹脂層3,6は、全体が軟質および軽量の素材であると好ましく、肌触りの点で発泡性の熱可塑性樹脂またはゴム製などが好ましく、特に発泡ウレタン樹脂製であると望ましい。
【0013】
積層シート2は、図1に例示するように、通常、表側に適当な表面模様7を印刷する表面樹脂層3と、中間に配置する補強布5と、該補強布とラミネートした下側樹脂層6との3層構造である。表面樹脂層3には、例えば、ウレタン樹脂などの樹脂中にアルミニウムや銀などの金属微粉末を添加し、且つ補強布5によってシート2の引張り強度を高める。表面樹脂層3では、金属微粉末を添加する代わりに、一方が薄い保護層である2層の樹脂層の間に金属箔や金属フィルムを挟着したり、一方の樹脂表面にアルミニウムや銀などの金属を蒸着してもよい。
【0014】
表面模様7は、文字や記号またはこれらを組み合わせた平面図柄であればよい。所望に応じて、積層シート2の間には、熱を遮断する役目の断熱性シート(図示しない)を配置することも可能であり、該積層シートにさらに厚みとクッション性を付与してもよい。この断熱性シートは、樹脂層3,6と同様の平面形状を有するけれども、所望に応じて部分的に配置してもよい。
【0015】
一方、下側樹脂層6は、表面樹脂層3の下方に位置し、表面樹脂層3と加熱融着して完全防水を達成するように、発泡ウレタン樹脂のような表面樹脂層3と同じ素材であると好ましい。下側樹脂層6には、隠蔽力の大きい白色顔料である酸化チタンなどを添加し、光触媒による抗菌性を付与してもよい。下側樹脂層6の表面には、肌触り性を高めるために、裏面模様8の印刷後に、該樹脂層上に薄い布地を貼り付けたり、部分的に植毛加工などを施すことも可能である。
【0016】
下側樹脂層6の裏側には、2種以上の図柄部からなる裏面模様8を印刷する。裏面模様8は、通常、図2から図4に示すように、天然育毛成分を含有する図柄部8aと、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部8bとを2種混在させる。図柄部8a,8bは、格子柄、網目状、水玉模様などの円形や角形からなる単純な平面形状であっても、文字、記号、複雑な幾何学模様や具象図柄またはこれらの組み合わせ形状のいずれでもよく、下側樹脂層6の表面において、図柄部8a,8bの総面積をほぼ対応させることが望ましい。
【0017】
天然育毛成分を含有する図柄部8aは、下側樹脂層6の表面において、一般に、ウレタン樹脂やアクリル樹脂のような樹脂バインダ中に天然育毛成分を添加し、スクリーン印刷法、ロールコータ法またはグラビア印刷法などによって形成する。図柄部8aは、図示のような適宜の模様のほかに、転写ラベルからベースシートごと切り取って下側樹脂層6に図柄転写してもよく、この図柄転写を帽子1に行うと天然育毛成分を適宜補給できる。
【0018】
使用可能な天然育毛成分として、ヒノキチオール、コレステロール、麦芽エキス、D−リネモン、セファランチン(ツヅラフジ科タマサキツヅラフジの根)、酢酸dta・トコフェノール、グリチルリチン酸ジカリウム(マメ科甘草)、パンテノール(プロビタミンD5)が例示できる。さらに、シカカイ(マメ科サポニンの果実)、ジャタマシ(オミナエシの仲間の地下茎)、ブラハミ(セリ科ツボクサの仲間)、バーリンラジ(キク科、別名:タカサブロウ)、クラリセージ、ホップエキス、D−パントテニルアルコール(ビタミン誘導体)、クジンエキス(マメ科の植物クララの根)、センブリエキス、冬虫夏草エキス(昆虫に寄生するキノコの一種)、ボタンエキス(ボタンの根、皮)、オウゴンエキス(コガネバナ科の根)、チャエキス(日本茶の生葉)、ジカプリル酸ピリドキシン(油溶性ビタミンB6)、ソウハクヒエキス(クワ科植物の根皮)、アルニカエキス(キク科アルニカの花や根)、オランダカラシエキス(セリ科オランダカラシの全体)、クオタニウム51,クロレラエキス、ゴボウエキス(キク科ゴボウの根)、ヤグルマギクエキス(キク科のヤグルマギクの花)などが使用でき、これらを1種または2種以上添加することが可能である。
【0019】
好ましくは、ヒノキチオールなどの天然育毛成分は、水への溶解度が低いので、シクロデキストリン類で包接したり、または金属錯体にして界面活性剤を加え、さらにエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールなどの多価アルコールを適宜配合して水性エマルジョンにする。また、この天然育毛成分を1種または2種以上のアミン類と混合した水溶液にしてもよく、このアミン類として、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリエタノールアミンなどが例示できる。
【0020】
前記の天然育毛成分は、ガス徐放性構造のマイクロカプセルに封入されると、該天然育毛成分を徐放することによって有効期間が長期間になるので好ましい。天然育毛成分は、所望に応じて気化抑制処理を施してから、ゼラチン、ユリア、メラミンまたはウレタンなど透過性マイクロカプセルの中に包含し、図柄部8aとして徐放性を持たせる。
【0021】
マイクロカプセル化には、無数の小孔を設けた微小なポリエチレン製のボールを製造し、その微小ボールの中に天然育毛成分を封入し、微小ボールの小孔から天然育毛成分を少しずつ放出させてもよい。このようなマイクロカプセル化では、カプセル膜の保護性をより高めるために、例えば、膜の不溶化処理に用いる反応剤を2割程度過剰に加えることもあり、この過剰の反応剤は後処理で中和させる。この反応剤であるホルマリンやグルタールアルデヒドなどは、中和処理を完全にすることによって除去する。
【0022】
図柄部8aで用いる樹脂バインダは、包接処理やマイクロカプセル化した場合には、塗膜形成主要素であり、改質剤や添加剤などの塗膜形成副要素とともに特に種類の制限はなく、常用品を用いることができる。例えば、水溶液型とエマルジョン型があげられ、樹脂成分として、アルキド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂およびこれらの変性樹脂などが例示でき、これらは単独もしくは2種以上組み合わせて用いる。この中には、架橋型アクリルエマルジョンや該エマルジョンと水性ポリウレタン樹脂との併用による架橋型エマルジョンも含まれる。
【0023】
一方、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部8bは、該放射物質を樹脂バインダに添加し、下側樹脂層6の表面に印刷する。図柄部8bにおいて、セラミックス粉末を添加する場合、該セラミックス粉末が波長4〜20μmの遠赤外線を常温域で高度に放射することが必要である。この種のセラミックスとして、例えば、アルミナ系(Al23 )、マグネシア系(MgO)、ジルコニア(ZrO2 )系、チタニア系(TiO2 )、ランタン系のほかに、二酸化ケイ素(SiO2 )、酸化クロム(Cr23 )、フェライト(FeO2 ・Fe34 )、スピネル(MgO・Al23 )、セリア(CeO2 )、ベリリア(BeO)などが使用できる。さらに、抗酸化力を有するEMセラミック(商品名:EM−X、アムロン製)も使用可能である。
【0024】
一般的に、セラミックスの放射特性は、同一の粉末素材でも粒径、粒子形状、表面状態、充填量、充填樹脂、分配構造などによって大幅に変わるため、高度な材料評価技術が不可欠である。例えば、アルミナ−シリカ系セラミックスや酸化物系セラミックスは、樹脂バインダ中に分散しても高い選択放射性を有し、非酸化物系セラミックス粉末は高い全域放射性を有する。
【0025】
図柄部8bに添加する遠赤外線の放射物質として、天然鉱物では、トルマリン、蛇紋石(マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物)、絹雲母、ヒスイ、ゼオライト、セリサイト、水晶、医王石、雲母石などが例示できる。これらは、微粉末になるように粉砕し、それ単独またはセラミックスなどとともに2種以上組み合わせて添加する。
【0026】
図柄部8bには、無機ゲルマニウムを添加することも可能であり、例えば5μm以下の微粉末の形態で使用し、この微粉末を樹脂バインダと均一且つ十分に混練する。また、他の機能性物質として、温泉機能物質を追加することにより、温泉効果を付与することも可能性がある。このような温泉機能物質は、温泉に含まれる有効成分であり、例えば、慢性胃カタルや慢性便秘に効果がある炭酸ナトリウム,炭酸カルシウム,炭酸マグネシウムなどの炭酸塩、慢性湿疹や皮膚病に効果がある重炭酸カルシウム,重炭酸マグネシウム、創傷,火傷,皮膚病,慢性胃カタルに効果がある重炭酸ナトリウム、常習便秘,胆石症に効果のある硫酸ナトリウム(ボウ硝)、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、婦人病,貧血症,慢性リウマチに効果がある重炭酸亜酸化鉄、硫酸亜酸化鉄、慢性皮膚病,多汗症,婦人科疾患に効果があるミョウバン、慢性皮膚病,関節リウマチ,筋肉リウマチ,神経痛に効果があるイオウ、慢性関節リウマチ,筋肉リウマチ,神経痛,慢性胃腸カタル,慢性皮膚病に効果があるラドン、ラジウムなどが存在する。
【0027】
これらの遠赤外線の放射物質は、図柄部8bを構成する樹脂バインダが所定の機械的強度を備え、耐磨耗性を保持させるために、平均粒径が約5μm以下であると好ましい。また、平均粒径が10μm程度であっても、ロールミル(図示しない)によって樹脂と練磨・分散する際に、必然的に平均粒径を5μm程度まで粉砕する。これらの放射物質は、図柄部8bにおいて総量で15〜35重量%添加する。遠赤外線の放射物質の含量が15重量%未満であると量的に遠赤外線を高度に放射しにくく、一方、その含量が35重量%を超えると、樹脂中の充填分が多くなりすぎ、機械的強度が低下して所定の耐磨耗性と耐洗濯性を保持しにくい。
【0028】
図柄部8bに関して、セラミックス粉末などの遠赤外線の放射物質は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエスエル樹脂やナイロン樹脂などの樹脂バインダ中に添加する。この樹脂バインダ溶液は、遠赤外線の放射物質および無機ゲルマニウムの微粉末を均一に混練できれば、樹脂ラテックス、樹脂エマルジョン、樹脂懸濁液、親水性共重合体、化学反応性の水溶性樹脂などのいずれでもよい。例えば、ポリウレタン系樹脂またはこれと同等の軟質樹脂に添加し、該樹脂は熱架橋性または経時架橋性である。ポリウレタン系樹脂は、一般に密度が小さいため、他の樹脂に比べて波長4〜20μmの遠赤外線の透過性が良好である。ポリウレタン系樹脂は、伸び、耐磨耗性、反発弾性および圧縮疲労強さが優れており、繊維製品における使用時に層剥離や亀裂の発生が少ない。
【0029】
図柄部8bは、スクリーン印刷法またはロールコータ法などによって形成する。実際には、遠赤外線の放射物質に対する樹脂バインダの調合割合は、使用する印刷機によって異なり、シルクスクリーン印刷などを行うのに適した粘度のインク状に定める。シルクスクリーン印刷では、準備した樹脂バインダの混練物を使用して、シルクスクリーン印刷機を用いて下側樹脂層6上に印刷する。
【0030】
図柄部8bの厚みは8〜40μmであると、所定の遠赤外線放射の効果を得る。図柄部8bにおける遠赤外線の放射物質は、帽子内部の発汗による水分の存在によってマイナスイオンを発生し、マイナスイオンの有する細胞の新陳代謝と細胞機能賦活を相乗的に高めるばかりでなく、例えば、血行促進、抗菌性などの効能も発揮する。
【0031】
本発明の帽子1は、積層シート2を適宜に裁断してから、ミシン縫製によって製造する。帽子1の防水性と断熱性を高めるために、完全または部分的に高周波ウェルダ、インパルス溶接法や超音波溶接法の圧子による加熱融着を用い、さらにこの融着に熱線溶接法または誘導加熱法などを利用してもよい。好ましくは、ミシン縫着線に沿ってテープで包み込み、防水性を阻害しないように、このテープを下側樹脂層6に融着すればよい。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る育毛増進可能な帽子は、軟質の積層シート製であるから肌触りが良くて帽子内の温熱を逃がすことが殆どない。一方の図柄部からは遠赤外線を放射し、この内部放射によって着用者の頭部を心地よく暖めて頭皮部分の血行を良くし、同時に他方の図柄部から天然育毛成分を徐々に放出することにより、発毛を促進し且つ抜け毛を防止する。
【0033】
本発明の帽子では、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを分離している。この結果、放出度および効果持続時間が異なる天然育毛成分と遠赤外線の放射物質について、両者をそれぞれ頭皮に作用する最適の放出条件に設定でき、着用者の発毛促進と抜け毛防止をいっそう効果的に増進できる。
【0034】
本発明の育毛増進可能な帽子は、補強布を有する軟質の積層シート製によって破れにくいうえに、伸縮性が多少あるのでかぶりやすい。本発明の帽子は、多層構造の積層シート製であるから撥水と防水を達成し、着用者の頭皮から発汗すると、この水分の存在によってマイナスイオンを発生する。発生したマイナスイオンが着用者の頭皮に作用すると、頭部において血液中のナトリウムやカルシウムのイオン化を促進し、酸性化している血液を弱アルカリ性にし、血液の新陳代謝を活発化して頭部の細胞の賦活作用を高める。特に、マイナスイオンとともに遠赤外線を放射する場合には、これらの作用を相乗的に高める効果があり、毛髪の健康促進などにとって有益である。
【実施例1】
【0035】
次に、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。帽子1(図5)に用いる積層シート2は、図1に示すように、発泡ウレタン系の表面樹脂層3と、中間に配置するポリエステル薄布の補強布5と、該補強布とラミネートした発泡ウレタン系の下側樹脂層6との3層構造である。積層シート2の厚さは、約1mmであればよい。
【0036】
積層シート2の表面樹脂層3には、ウレタン系樹脂中にアルミニウム微粉末が所定量添加されており、全体が銀白色である。表面樹脂層3の表面には、文字や図形からなる適当な表面模様7を印刷する。この表面模様は、積層シート2の裁断前に印刷しても、帽子縫製後に帽子全体に印刷してもよく、転写シート(図示しない)などによって図柄を転写してもよい。
【0037】
下側樹脂層6の裏面模様8は、図2に示すように、天然育毛成分を含有する白色の図柄部8aと、遠赤外線の放射物質を含有する黒色の図柄部8bとを混在させ、下側樹脂層6の表面にスクリーン印刷法によって塗布する。例えば、裏面模様8は図2のような水玉模様であり、図柄部8a,8bは同じ直径10mmの円形平面で均一に分散させる。
【0038】
図柄部8aには、例えば、天然育毛成分としてヒノキチオールを添加する。ヒノキチオールは、ヒノキの精油中に含まれる化合物の1種であり、抗菌作用および育毛促進作用があり、保存剤としても使用する。ヒノキチオールは、ナトリウム塩としてから、その水溶液に対しMCl2 (M=Zn、Ni、Cu)を撹拌しながら加え、水洗後に乾燥してヒノキチオールの金属錯体にする。
【0039】
ヒノキチオールエマルジョン8〜20重量%には、アクリル系樹脂エマルジョン20〜40重量%を加え、さらにスチレンマレイン酸共重合体エマルジョン、低分子量ポリエチレンエマルジョン、グリコールエーテル、トリブトキシエチルホスフェイト、白色顔料の酸化チタン、消泡剤を添加する。得た樹脂バインダにおいて、ヒノキチオール自身を直接水系溶液に添加した際に発生する沈殿現象が起こらず、安定な樹脂バインダになる。この樹脂バインダを用いて、150メッシュのスクリーン版によって、図柄部8aを下側樹脂層6の上に間欠的に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約20μmにする。
【0040】
図柄部8bには、例えば、遠赤外線の放射物質として、平均粒径1.2μmのアルミナ−シリカ系セラミックスであるセラミックス粉末を添加する。20重量%のアルミナ−シリカ系セラミックス粉末は、固形分20%のポリウレタン系樹脂溶液70〜90重量%と混合する。この混合溶液100gにシリカゲル2g、有機溶剤5gおよび黒色顔料を加えて攪拌し、さらにイソシアネートを5g添加する。図柄部8bは、180メッシュのスクリーン版によって、下側樹脂層6の上で図柄部8aの間に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約11μmにする。
【0041】
裏面模様8を全面に印刷した積層シート2は、図5に例示するように、6枚の三角形状の帽子片10と、2枚の三日月形の帽子片12に裁断する。つば部14では紙芯を入れて2枚合わせにし、これらの帽子片から野球帽1を縫製し、びん皮15を縫着する。野球帽1では、鳩目孔を設けないことにより、着用者が帽子をかぶった際に頭部の温熱効果を高め、且つ完全防水性を達成する。
【0042】
野球帽1を着用者の頭部に被ると、図6に示す帽子裏側において、図柄部8aから育毛成分を徐々に放出し、且つ図柄部8bから遠赤外線が放射される。帽子内部では、遠赤外線の放射で温度上昇し、この熱は積層シート2を通過しようしても、金属粉を添加した表面樹脂層3で反射され、着用者の頭皮の全体に遠赤外線を万遍なく当てることになる。遠赤外線の放射と体温による温熱効果により、放出される育毛成分の毛包部に対する浸透性が高められる。また、頭皮の発汗によってマイナスイオンが発生し、かぶった際に着用者の頭皮と近接する育毛成分がイオン化され、各成分の毛包部に対する浸透性が高まることにより、毛髪の発毛・育毛効果が高められる。
【実施例2】
【0043】
図3に示す積層シート14では、シート裏側の裏面模様15は、天然育毛成分を含有する白色の図柄部16aと、遠赤外線の放射物質を含有する赤色の図柄部16bとを格子状に混在させ、該シートの下側樹脂層の表面にスクリーン印刷法によって塗布する。例えば、裏面模様15では、図柄部16a,16bは同じ1辺10mmの正方形平面である。
【0044】
図柄部16aには、例えば、天然育毛成分としてコレステロールを添加する。コレステロールは、潤いと柔軟効果がある成分であり、ヘアケアについて育毛の働きがある。コレステロールは、樹脂溶液中で0.01〜20重量%であると好ましく、0.02〜10重量%であるといっそう好ましい。
【0045】
コレステロールは、同量のヘキシレングリコールを加えて調合した包含物を加熱し、pHを4〜5に調節された5%ゼラチン水溶液に乳化し粒径20〜30μとする。次に、2%アラビアゴム水溶液を加え混ぜ合せ、水温を保ちながらpHを再度4〜5に調整し、その状態で60分間保持させ、そして室温まで徐冷する。この後に、10℃以下まで冷却してから、カプセル膜の硬化処理のために25%グルタールアルデヒドを加え、さらに冷却下で攪拌し、コレステロールを主成分として包含するゼラチン膜のマイクロカプセル水溶液を得る。このマイクロカプセル水溶液はカプセル分20%、水分80%である。このマイクロカプセル水溶液には、酢酸ビニル樹脂30〜50重量%を加え、さらにポリビニルアルコール、白色顔料の酸化チタン、クレー、キシレン、ジブチルフタレート、界面活性剤、金属塩を添加する。この樹脂バインダを用いて、200メッシュのスクリーン版によって、シート14の下側樹脂層の上に間欠的に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約22μmにする。
【0046】
図柄部16bには、例えば、遠赤外線の放射物質として、EMセラミック粉末を添加する。30重量%のEMセラミックス粉末は、固形分20%のポリウレタン系樹脂溶液70〜90重量%と混合する。この混合溶液100gにシリカゲル2g、有機溶剤5gおよび黒色顔料を加えて攪拌し、さらにイソシアネートを5g添加する。図柄部16bは、180メッシュのスクリーン版によって、下側樹脂層の上で図柄部16aの間に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約11μmにする。
【0047】
図7に示すように、積層シート14を6枚の三角形状および2枚のドーナツ形に裁断してから、ドーナツ形のつば部では紙芯を入れて2枚合わせにし、全周縁部の周辺に環状ワイヤを縫い込み、リボン18を付けて椀部19およびドーナツ形つば部20を有する丸ハット22を縫製する。丸ハット22では、天然育毛成分のコレステロールが徐々に放出されて育毛効果が長期間持続し、さらに着用者が帽子をかぶった際に頭部の温熱効果を高め、且つ完全防水性を達成する。
【実施例3】
【0048】
図4に示す積層シート24では、シート裏側の裏面模様25は、天然育毛成分を含有する黒色の図柄部26aと、遠赤外線の放射物質を含有する黒色の図柄部26bとを混在させ、該シートの下側樹脂層の表面にスクリーン印刷法によって塗布する。例えば、裏面模様25では、図柄部26a,26bは同じ多重の同心円形平面である。
【0049】
図柄部26aには、例えば、天然育毛成分としてヒノキチオールを添加する。ヒノキチオールには、アンモニア水および精製水を30分間混合し、淡黄色の均一溶液を得る。
【0050】
ヒノキチオールとアンモニアの混合水溶液8〜20重量%には、アクリル系樹脂含有エマルジョン25〜70重量%を加え、さらにヒドロキシエチルセルロース、白色顔料の酸化チタン、界面活性剤を添加する。この添加物として、スチレンマレイン酸共重合体エマルジョン、低分子量ポリエチレンエマルジョン、グリコールエーテル、トリブトキシエチルホスフェイト、消泡剤、レベリング剤の組み合わせでもよい。アクリル樹脂系エマルジョンであるこの樹脂バインダを用いて、180メッシュのスクリーン版によって、図柄部8aを下側樹脂層6の上に間欠的に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約20μmにする。
【0051】
図柄部26bには、例えば、遠赤外線の放射物質として、トルマリン粉末を添加する。30重量%のトルマリン粉末は、固形分20%のポリウレタン系樹脂溶液70〜90重量%と混合する。この混合溶液100gにシリカゲル2g、有機溶剤5gおよび黒色顔料を加えて攪拌し、さらにイソシアネートを5g添加する。図柄部26bは、180メッシュのスクリーン版によって、下側樹脂層の上で図柄部26aの間に分散形成され、同じスクリーン版で2回刷りして厚さを約11μmにする。
【0052】
図8に示すように、積層シートを円形、帯形状および2枚のドーナツ形に裁断してから、ドーナツ形のつば部では紙芯を入れて2枚合わせにし、全周縁部の周辺に環状ワイヤを縫い込み、リボン28を付けて円筒部30およびドーナツ形つば部32を有するハット34を縫製する。ハット34では、着用者が帽子をかぶった際に頭部の温熱効果を高め、且つ完全防水性を達成する。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明で用いる積層シートを拡大して示す概略断面図である。
【図2】図1の積層シートの裏側の裏面模様を示す平面図である。
【図3】シート裏側の裏面模様の変形例を示す平面図である。
【図4】シート裏側の裏面模様の別の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明に係る帽子の一例を示す斜視図である。
【図6】図5の帽子の裏側を示す斜視図である。
【図7】本発明の帽子の他の例を示す側面図である。
【図8】本発明の帽子の別の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 育毛増進可能な帽子
2 積層シート
3 表面樹脂層
5 補強布
6 下側樹脂層
7 表面模様
8 裏面模様
8a,8b 図柄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補強布を介在させた軟質樹脂の積層シートからなり、該シートの裏側に天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを混在させて印刷し、積層シートから所定寸法と数のシート片に裁断して帽子形状に縫製することにより、帽子裏側において、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とが内側に露出して、かぶった際に着用者の頭皮と近接する育毛増進可能な帽子。
【請求項2】
補強布を有する少なくとも3層構造の積層シートからなり、該シートの裏側に天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とを混在させて印刷し、積層シートから所定寸法と数のシート片に裁断して帽子形状に縫製することにより、帽子裏側およびつば部裏側において、天然育毛成分を含有する図柄部と、遠赤外線の放射物質を含有する図柄部とが内側に露出して、かぶった際に着用者の頭皮と近接する育毛増進可能な帽子。
【請求項3】
積層シートは、金属微粉末を含有する表面樹脂層と、中間に配置する補強布と、該補強布とラミネートした下側樹脂層との3層構造であり、表面樹脂層および下側樹脂層がいずれも発泡ウレタン樹脂からなる請求項1または2記載の帽子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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