説明

育苗ポット押さえバンド、育苗トレー、及び、押さえバンド付き育苗トレー

【課題】複数の育苗ポットを育苗トレーの開口上方から押さえるために用いる育苗ポット押さえバンド、該育苗ポット押さえバンドに対応する育苗トレー、及び、該育苗ポット押さえバンドを有する押さえバンド付き育苗トレーを提供する。
【解決手段】柔軟性と平面維持性とを有する素材で帯状に形成されている育苗ポット押さえバンド10は、育苗トレー20の開口を架け渡すことができる長さ、及び、隣接する各育苗ポット30の開口部の一部を覆うことができる幅を有する押さえ部11と、育苗トレー20の一対のスリット22の縁部に係合可能な一対の係止爪13を有し、スリット22に撓み変形して差し込み可能な、押さえ部11の長手方向の両端に設けられた係止部12とを備えている。各係止部12を各スリット22に差し込むことで、育苗ポット押さえバンド10は、育苗ポット30が収容されている育苗トレー20に固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、育苗トレーに縦横に配列した状態で収容された複数の育苗ポットを育苗トレーの開口上方から押さえるために用いる育苗ポット押さえバンド、当該育苗ポット押さえバンドに対応する育苗トレー、及び、当該育苗ポット押さえバンドを有する押さえバンド付き育苗トレーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、育苗ポットの出荷に伴う運搬においては、個々の育苗ポットが一個ずつ収容されるように仕切られた箱状の育苗トレー、又は、仕切りのない箱状の育苗トレーに、複数の育苗トレーが纏めて詰め込まれた状態で、個々の育苗ポットが転倒しないように育苗トレーは運搬される。
【0003】
しかしながら、トラック等の車両による輸送時に生じる振動や、積み降ろし時の強い衝撃を受けて、育苗ポットが育苗トレーから飛び出してしまい、苗を傷つけてしまう問題がある。
【0004】
これに対して、育苗ポットの飛び出しを防止するための手段が種々提案されている。例えば、特許文献1の育苗ポット用トレー構造(1。以下、特許文献1で用いられている符号を()内に示す。)は、育苗ポット(4)を収容する上部が開口した、開口縁部(8,10)を有する箱形のトレー(6)と、板状突起(14)及び両端に係合部(12)を有する覆い部材(13)とを備えている。
【0005】
幅方向に隣接する育苗ポット(4)間に覆い部材(13)の板状突起(14)を配置し、覆い部材(13)の各係合部(12)を開口縁部(8,10)に係合させ、覆い部材(13)をトレー(6)に取り付けることで、覆い部材(13)が幅方向に隣接する育苗ポット(4)の上縁部の一部を覆って、育苗ポット(4)がトレー(6)から外に飛び出さないように押さえている(特許文献1の図1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−121089
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の育苗用トレー構造(1)では、開口縁部(8、10)に係合部(12)を引っ掛けるだけで覆い部材(13)をトレー(6)に固定しているので、激しい振動や衝撃によって、覆い部材(13)に対して幅方向の力や捻れ方向の力が加えられると、覆い部材(13)が縁部(8、10)上をスライドしたり、縁部(8、10)から外れたりして、育苗ポットの押さえが不安定になるという問題がある。
【0008】
さらに、育苗トレーに育苗ポット収容用の仕切りのある場合は、板状突起(14)が育苗トレーの仕切りに干渉するので、仕切りがある育苗トレーに使用することができないという問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、育苗ポット収容用の仕切りを有する育苗トレーにも対応可能であり、強固に育苗トレーに固定され、育苗トレーに縦横に配列して収容された複数の育苗ポットを育苗トレーの開口上方から安定した状態で押さえることができる育苗ポット押さえバンド、当該育苗ポット押さえバンドに対応する育苗トレー、及び、当該育苗ポット押さえバンドを有する押さえバンド付き育苗トレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の育苗ポット押さえバンドは、開口を有する箱体であり前記開口上端を区画する外枠の端縁に前記開口を挟んで設けられた少なくとも一対のスリットを有する育苗トレーに、縦横に配列した状態で収容された複数の育苗ポットを前記育苗トレーの開口上方から押さえるために用いる、柔軟性と平面維持性とを有する素材で帯状に形成された育苗ポット押さえバンドであって、
前記育苗トレーの前記開口を横断または縦断して架け渡すことができる長さ、及び、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を同時に覆うことができる幅を有する、長手方向に延びる帯状の押さえ部と、
前記スリットの縁部に係合可能な一対の係止爪を有し、前記スリットに撓み変形して差し込み可能である、前記押さえ部の長手方向の両端に設けられた係止部と、を備えていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の育苗ポット押さえバンドは、請求項1の育苗ポット押さえバンドにおいて、係止部と押さえ部との間に所定長の幅狭部を有し、前記幅狭部の幅はスリット長に対応させたものであって、前記押さえ部の幅は前記スリット長より大きいことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の育苗ポット押さえバンドは、請求項1又は2の育苗ポット押さえバンドにおいて、押さえ部の略端部から係止部の略中央部にかけて長手方向に切り込み形成されているフラップ部を備え、前記フラップ部は前記係止部側に位置する自由端及び前記押さえ部側に位置する固定端を有しており、
前記係止部を前記スリットに差し込むとき、前記フラップ部を前記スリットに挿通させずに前記自由端を引っ張ることで、係止部が撓み変形して前記スリットに差し込み可能であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の育苗ポット押さえバンドは、請求項1から3のいずれかの育苗ポット押さえバンドにおいて、係止部はテーパー状に延びる先端部を有していることを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の育苗トレーは、開口及び当該開口上端を区画する外枠を有する箱体であり、請求項1から4の育苗ポット押さえバンドの両端を前記外枠に固定可能であり、前記育苗ポット押さえバンドの各係止部を差し込み可能な少なくとも一対のスリットを備えている、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で収容可能な育苗トレーであって、
前記育苗ポット押さえバンドの押さえ部が、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を覆って、開口上方から同時に押さえることができるように、一対の前記スリットが前記外枠の端縁に前記開口を挟んでそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の押さえバンド付き育苗トレーは、開口及び当該開口上端を区画する外枠を有する箱体である押さえバンド付き育苗トレーであって、
縦横に配列した状態で収容されている複数の植栽された育苗ポットと、
前記外枠の端縁に前記開口を挟んでそれぞれ設けられている少なくとも一対のスリットと、
各係止部が一対の前記スリットに差し込まれ、押さえ部が、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を覆って、開口上方から同時に押さえるように、前記育苗トレーの開口を横断または縦断して架け渡って前記外枠に固定されている請求項1から4の育苗ポット押さえバンドと、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載の育苗ポット押さえバンドによれば、育苗ポット押さえバンドは、柔軟性と平面維持性とを有する素材で帯状に形成されている。また、育苗トレーの開口を横断または縦断して架け渡すことができる長さ、及び、隣接する各育苗ポットの開口部の一部を同時に覆うことができる幅を有する長手方向に延びる帯状の押さえ部と、スリットの縁部に係合可能な一対の係止爪を有し、スリットに撓み変形して差し込み可能な係止部とを備えている。
【0017】
該柔軟性により、各係止部を撓み変形させて育苗トレーの各スリットに差し込むことができる。さらに、該平面維持性により、変形した各係止部は元の形状に復元し、係止爪がスリット縁部に係合可能となり、育苗ポット押さえバンドに対して育苗トレー開口上方に力が加えられた場合、係止部はスリット縁部に係止される。
【0018】
従って、育苗トレーから育苗ポット押さえバンドが容易に外れることなく、育苗トレーの開口を横断又は縦断して、複数の育苗ポットの開口部を押さえ、育苗トレーから育苗ポットが飛び出すことを防止することができる。
【0019】
また、押さえ部は、その幅方向に隣接する2つの育苗ポットの開口部の一部を同時に覆うことができる幅を有しているので、一本の育苗ポット押さえバンドで、育苗トレーの縦又は横に隣接している2列分の育苗ポットを同時に押さえることができる。さらには、植栽された育苗ポットの開口部から外にこぼれ落ちる土などの植材の量を減少させることもできる。
【0020】
請求項2に記載の育苗ポット押さえバンドによれば、幅狭部の幅をスリット長に対応させたものであり、押さえ部の幅がスリット長より大きいので、押さえ部と幅狭部の間に段差部を形成し、当該段差部とスリット縁部とが係合可能である。
【0021】
即ち、育苗ポット押さえバンドを育苗トレーに取り付けるとき、一方の係止部をスリットに差し込んだ状態で、段差部がストッパーとしての役割を果たし、育苗ポット押さえバンドが下方にずり落ちることなく、一方の係止部が所定位置に保持されるので、一方の係止部の動きに干渉されることなく、他方の係止部をスリットに容易に差し込むことができる。従って、育苗トレーに育苗ポット押さえバンドを容易に取り付けることができる。
【0022】
請求項3に記載の育苗ポット押さえバンドによれば、押さえ部にフラップ部を設け、スリットにフラップ部を挿通させずに係止部を差し込み、育苗トレーの開口外側に向けてフラップ部を引っ張ると、フラップ部として切り込まれた分、係止部全体が内側に向けて撓んで、係止爪を破損するおそれなく簡単且つ確実に係止部をスリットに挿通させることができる。
【0023】
請求項4に記載の育苗ポット押さえバンドによれば、係止部はテーパー状に延びる先端部を有している。スリット長よりも当該先端部の幅は小さいので、先端部をスリットに容易に差し込んで引っ張ることができ、係止部を容易にスリットに差し込むことができる。
【0024】
請求項5に記載の育苗トレーによれば、請求項1から4の育苗ポット押さえバンドを取り付けることができ、請求項1から4の効果を、育苗トレーとして発揮する。
【0025】
請求項6に記載の押さえバンド付き育苗トレーによれば、請求項1から4の育苗ポット押さえバンド、及び、縦横に配列した状態で収容されている複数の育苗ポットを備え、請求項1から4の効果を、押さえバンド付き育苗トレーとして発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の育苗ポット押さえバンドの一例を示す平面図。
【図2】図1の育苗ポット押さえバンドに対応する育苗トレーを示し、(a)は、その平面図、(b)は、その側面図、(c)は(a)のスリット部分の拡大図、(d)は、(c)のA−A断面図。
【図3】図1の育苗ポット押さえバンドにおいて、係止部をスリットに挿通させる様子を示した部分図であって、(a)は係止部をスリット上に配置した状態の図、(b)は係止部の一部がスリットに差し込まれている状態の図、(c)はフラップ部が引っ張られ係止部が変形している状態の図、(d)は係止部がスリットに差し込まれた状態の図。
【図4】図1の育苗ポット押さえバンドにおいて、係止部がスリットに差し込まれた状態の育苗トレーの要部拡大図であって、(a)はその側面図、(b)は図3(d)のB−B断面図。
【図5】図1の育苗ポット押さえバンドを備え、育苗ポットを縦横に配列して収容している押さえバンド付き育苗トレーを示し、(a)は育苗ポット押さえバンドを縦方向に架け渡した状態の斜視図、(b)は育苗ポット押さえバンドを横方向に架け渡した状態の斜視図。
【図6】(a)は、図5の押さえバンド付き育苗トレーに表示板を取り付ける前の状態を示した斜視図、(b)は、取り付けた後の状態を示した斜視図。
【図7】本発明の育苗トレーの他例を示すもので、(a)は、その平面図、(b)は、その側面図、(c)は(a)のスリット部分の要部拡大図、(d)は、(c)のC−C断面図。
【図8】図7の育苗トレーに育苗ポットを収容している押さえバンド付き育苗トレーを示し、(a)は育苗ポット押さえバンドを縦方向に架け渡した状態の斜視図、(b)は育苗ポット押さえバンドを横方向に架け渡した状態の斜視図。
【図9】(a)及び(b)は、育苗ポット押さえバンドの他例を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施形態1】
【0028】
図1に示された育苗ポット押さえバンド10は、開口を有する箱体であり開口上端を区画する外枠の端縁に開口を挟んで設けられた少なくとも一対のスリットを有する育苗トレーに、縦横に配列した状態で収容された複数の育苗ポットを育苗トレーの開口上方から押さえるために用いる育苗ポット押さえバンドであって、柔軟性および平面維持性のある素材で帯状に形成されている。
【0029】
当該育苗ポット押さえバンド10は、所定長さを有する帯状の押さえ部11と、当該押さえ部11の両端に形成されている幅狭部14と、略V字形状に形成されている係止部12とを備えている。
【0030】
係止部12は、後述する育苗トレー20の外枠21の端縁に形成されているスリット22の縁部に係合可能な一対の係止爪13を備えており、幅狭部14から両幅方向にそれぞれ突出している。また、係止部12は長手方向の先端に向かってテーパー状に延びる先端部16を有している。
【0031】
ここで、押さえ部11の幅をD1、両係止爪13間の幅をD2、幅狭部14の幅をD3、そして、育苗トレー20のスリット22の長さをL(図2(c)参照)として定める。
【0032】
当該両係止爪間の幅D2は、育苗トレー20のスリット長Lよりも大きく、押さえ部11の幅D1より小さく設定されている。また、幅狭部14の幅D3は、スリット長Lと対応している。幅D1は幅D3より大きいので、押さえ部11はその長手方向の両端に段差部14aをそれぞれ有している。幅D1は隣接する2列の育苗ポットの開口部の一部を覆うことができる幅に設定されている。
【0033】
そして、育苗ポット押さえバンド10は、押さえ部11の略端部から各係止部12の略中央部にかけて長手方向に切り込み形成されているフラップ部15を備えており、当該フラップ部15は係止部12側に自由端15a、押さえ部11側に固定端15bを有するように形成されている。
【0034】
なお、上述した育苗ポット押さえバンド10には、可撓性プラスチックフィルム、樹脂フィルム、紙材等を用いることが出来る。また、一対の係止爪13、幅狭部14、及び、先端部16は、一様な幅を有する帯状のフィルムに切抜き加工等することで形成されている。
【0035】
図2(a)及び(b)に示された育苗トレー20は、開口を有する箱体であり、開口上端を区画する外枠21と、外枠21の内側を縦6列、横4列にそれぞれ育苗ポット30を収容する個別収容部23を形成するように区画する内枠24を備えている。収容部23は、底部23aと、当該底部23aの外周端部に立設する側部23bとからなり、側部23bの上端には内枠24が固定されており、各収容部23の開口は内枠24によってそれぞれ区画されている。
【0036】
また、外枠21と内枠24とが交差する部分における外枠21の端縁には、育苗トレー20の開口を挟んで、一対のスリット22が形成されている。育苗トレー20の外枠21の縦方向を構成する縦枠21aの端縁には、1つおきに隣接して位置する交差部分に、3対(合計6つ)のスリット22がそれぞれ形成され、他方、外枠21の横方向を構成する横枠21bの端縁には、1つおきに隣接して位置する交差部分に、2対(合計4つ)のスリット22がそれぞれ形成されている。
【0037】
なお、収容部23の縦横の列数、及び、スリット22の数及び箇所は、この例に限定されるものではない。
【0038】
図2(c)に示すとおり、スリット22は外枠21の長手方向に伸びた溝形状に形成されており、スリット長Lを有する。スリット22には、スリット内側にスリット幅方向に突起する小突部22aが設けられている。この例では、小突部22aは、スリット22の外から内向きに溝長手方向長さを4等分する位置に3箇所、スリット22の内から外向きに、3箇所の小突起22aの中間に位置するように2箇所で、合計5つ設けられている。各スリット22は、外枠21の上辺を貫通するものである(図2(d)参照)。
【0039】
なお、育苗トレー20の素材としては、プラスチック、あるいは、生分解性プラスチックが好適である。また、育苗トレーを、パルプを成形したパルプモールドとしてもよい。
【0040】
図3(a)から(d)に、スリット22に係止部12を差し込むときの一連の状態を示す。
【0041】
まず、スリット22に係止部12が入るように位置合わせを行い(図3(a)参照)、先端部16をスリット22に差し込む。ここで、先端部16の幅はスリット22の幅Lよりも小さく設定されているので、スリット22に容易に差し込むことができる。
【0042】
そして、フラップ部15の自由端15aをスリット22に挿通させずに、一対の係止爪13が開口上方からスリット22の縁部と当接するまで、係止部12の一部をスリット22に差し込む(図3(b)参照)。
【0043】
次に、フラップ部15の自由端15aを育苗トレー20の開口外側方向に引っ張ると、係止部12全体がその内側に向けて撓む(図3(c)参照)。この状態で、先端部16を開口下方に引っ張ると、係止部12がスリット22に容易に挿通されて、係止部12がその平面維持性により復元することで、一対の係止爪13がスリット22の縁部に開口下方から係合可能に、育苗ポット抑えバンド10が育苗トレー20に接続される(図3(d)参照)。
【0044】
ここで、フラップ部15に対応する切り込みの分、係止部12が無理なく内側に向けて撓むので、スリット22の縁部に当接する一対の係止爪13を破損するおそれなく簡単且つ確実に係止部12をスリット22に挿通させることができる。
【0045】
図4(a)は、育苗ポット押さえバンド10と育苗トレー20との接続部の拡大図である。幅D3とスリット長Lとは対応している。そして、育苗ポット押さえバンド10が育苗トレー20の開口上方に移動したとき、一対の係止爪13とスリット22の縁部とが係合し、他方、育苗ポット押さえバンド10が開口下方に移動したとき、段差部14aとスリット21の縁部とが係合する。即ち、育苗ポット押さえバンド10は上下方向に幅狭部14の長さ分だけ自由に動くことができるように育苗トレー20に接続されている。
【0046】
従って、育苗ポット押さえバンド10を育苗トレー20に取り付けるとき、一方の係止部12をスリット22に差し込んだ状態で、段差部14aがストッパーとしての役割を果たし、育苗ポット押さえバンド10が開口下方にずり落ちることがなく、一方の係止部12は所定位置に保持される。
【0047】
即ち、一方の係止部12の動きに干渉されることなく、他方の係止部12をスリット22に容易に差し込むことができる。従って、育苗トレー20に育苗ポット押さえバンド10を容易に取り付けることができる。
【0048】
さらに、幅狭部14の長さ分の遊びを設けているので、育苗トレーの外枠の上辺の厚さが異なる場合においても、余裕をもって、育苗ポット押さえバンド10を育苗トレーに取り付けることが可能である。
【0049】
図4(b)が示すとおり、育苗ポット押さえバンド10の係止部12は、育苗トレー20のスリット22に設けられた小突部22aにより、その差し込み方向とは直交する方向に波形状に屈曲されている。
【0050】
これにより、たとえ、育苗ポット押さえバンド10が薄いものであっても、この薄さに対して広めのスリット22の中で、係止部12がスリット22の幅方向にがたつくことがない。従って、育苗ポット押さえバンド10が薄くても、安定した状態で育苗ポット30を押さえて、育苗トレー20内に収容することができる。
【0051】
図5は、育苗ポット押さえバンド10に押さえられた植栽住み育苗ポット30を収容している押さえバンド付き育苗トレー100の外観斜視図である。
【0052】
図5(a)において、育苗トレー20の外枠21の横方向を構成する横枠21bの端縁に、2つの育苗ポット押さえバンド10が固定されている。育苗ポット押さえバンド10の押さえ部11が、縦枠21aに平行して育苗トレー20の開口上方を架け渡って、横方向に隣接する2列の育苗ポット30の開口部の一部を同時に覆っている。即ち、1つの育苗ポット押さえバンド10が縦2列分(合計12個)の育苗ポット30を同時に押さえつけ、育苗トレー20から飛び出すことを防止している。
【0053】
ここでは、図示した所定位置で、2つの育苗ポット押さえバンド10を育苗トレー20に固定することで、育苗トレー20に収容されている全ての育苗ポット30を、育苗ポット押さえバンド10によって押さえることができ、育苗トレー20から育苗ポット30が飛び出すことを防止している。
【0054】
図5(b)において、育苗トレー20の外枠21の縦方向を構成する縦枠21aの端縁に、3つの育苗ポット押さえバンド10が固定されている。同様に、育苗トレー20に収容されている全ての育苗ポット30を、育苗ポット押さえバンド10によって押さえることができ、育苗トレー20から育苗ポット30が飛び出すことを防止している。
【0055】
このように、縦横自由に育苗ポット押さえバンド10を固定する位置を選択して、育苗ポット押さえバンド10を育苗トレー20に固定することができる。なお、当然ながら、育苗トレー20の縦枠21a及び横枠21bの両方の端縁に、育苗ポット押さえバンド10を固定することもでき、押さえ部11が縦方向及び横方向に交差して育苗ポット30の開口部を押さえて、より安定して育苗ポット30を育苗トレー20に保持することも可能である。
【0056】
図6(a)及び(b)に示すとおり、草花の品種名等を表示する表示部41及び係止部12と類似の形状を有する差し込み片42を備えている表示板40を、押さえバンド付き育苗トレー100に取り付けることができる。即ち、育苗ポット押さえバンド10の係止部12とともに表示板40の下端に形成されている差し込み片42をスリット22に差し込むことができ、育苗ポット押さえバンド10と表示板40を取り付けるのにスリット22を兼用することができる。
【0057】
ここで、図6(b)に示すとおり、押さえバンド付き育苗トレー100のスリット22に差し込み片42を差し込むとき、フラップ15を手前にめくり上げるようにすることで、差し込み片42をフラップ15に干渉させずにスリット22に差し込むことができる。
【0058】
また、図4(b)と同様に、表示板40の差し込み片42は、育苗トレー20のスリット22に設けられた小突部22aにより、その差し込み方向とは直交する方向に波形状に屈曲され、表示板40が薄い場合でも、差し込み片42がスリット22の幅方向にがたつかず、表示板40の立姿勢がきちんと保持された状態に保たれる。
【0059】
従って、育苗ポット押さえバンド10を押さえバンド付き育苗トレー100から外して育苗ポット30を個別に販売する場合や、育苗ポット30を収容している押さえバンド付き育苗トレー100をそのまま製品として販売する場合などにおいて、草花の品種名等を表示部41に有効に表示することができる。
【0060】
なお、図6では、スリット22に係止片12と差し込み片42が同時に差し込まれているが、係止片12が差し込まれていないスリット22に表示板40を取り付けることも可能であり、使用者が適宜選択することができる。
【実施形態2】
【0061】
図7は、本発明の育苗トレーの他例を示すもので、(a)は、その平面図、(b)は、その側面図、(c)は(a)の表示板受け溝部分の拡大図、(d)は、(c)のC−C断面図である。
【0062】
この育苗トレー20Aは、図2の育苗トレー20と比べて、個別の収容部23がない点が異なっている。図7(a)及び(b)に示すとおり、育苗トレー20Aは、外枠21Aにより開口が区画されている箱体であり、矩形状の底面23aAと、その4辺の縁から上方に延在する側壁枠23bAと、側壁枠23bAの上端に連結されている外枠21Aから構成されている。即ち、外枠21Aの内側を区画する内枠がなく、育苗ポット30は、この外枠21Aの内側に区画されることなく縦横に配列されて収容される。
【0063】
また、図7(c)に示すとおり、スリット22Aは、図2(c)に示した小突起22aを有していないが、スリット22Aに育苗ポット押さえバンド10の係止部12を差し込むことで、育苗ポット押さえバンド10と育苗トレー20Aとを強固に固定することができる。
【0064】
図8にバンド付き育苗トレー100Aを示す。育苗トレー20Aに縦横に配列された育苗ポット30の開口部の一部を、隣接する列に渡って、育苗ポット押さえバンド10の押さえ部11が覆っている。即ち、図6に示したバンド付き育苗トレー100と同様に、全ての育苗ポット30を育苗ポット押さえバンド10で押さえ、育苗トレー20Aから育苗ポット30が飛び出すことを防止している。
【0065】
従って、本発明の育苗ポット押さえバンドと押さえバンド付き育苗トレーとは、育苗トレーの内側部分の構成、具体的には、区画の有無、個別収容部の有無には拘束されないものである。
【0066】
これら育苗トレー20A及びバンド付き育苗トレー100Aによれば、実施形態1と同様の効果が、育苗ポット押さえバンド、育苗トレー、バンド付き育苗トレーとして発揮される。即ち、実施形態2の構成とすることは本発明の課題を解決することを妨げない。
【実施形態3】
【0067】
図9(a)に変形例として育苗ポット押さえバンド10Aを示す。図1の育苗ポット押さえバンド10と比べて、育苗ポット押さえバンド10Aは、係止部12Aにおいて、幅狭部14、フラップ部15及びテーパー状の先端部16を有していない。
【0068】
この構成でも、育苗トレー20のスリット22に係止部12Aを差し込むことで、係止爪13Aがスリット22の縁部と係合して、育苗ポット押さえバンド10Aが抜けることなく、強固に育苗トレー20に固定され得る。
【0069】
また、図9(b)に変形例として育苗ポット押さえバンド10Bを示す。係止部12Bの形状は略V字形状でなくてもよく、角形のものとすることもできる。従って、実施形態3の構成とすることは、本発明の課題を解決することを妨げない。
【0070】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の育苗ポット押さえバンド、育苗トレー、及び、押さえバンド付き育苗トレーは、複数の育苗ポットを収容して運搬等するときに、育苗トレーに育苗ポットを安定して収容することが要請される産業分野に用いることができる。
【符号の説明】
【0072】
10 育苗ポット押さえバンド
11 押さえ部
12 係止部
13 係止爪
14 幅狭部
15 フラップ部
15a 自由端
15b 固定端
16 先端部
20 育苗トレー
21 外枠
22 スリット
30 育苗ポット
100 押さえバンド付き育苗トレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有する箱体であり前記開口上端を区画する外枠の端縁に前記開口を挟んで設けられた少なくとも一対のスリットを有する育苗トレーに、縦横に配列した状態で収容された複数の育苗ポットを前記育苗トレーの開口上方から押さえるために用いる、柔軟性と平面維持性とを有する素材で帯状に形成された育苗ポット押さえバンドであって、
前記育苗トレーの前記開口を横断または縦断して架け渡すことができる長さ、及び、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を同時に覆うことができる幅を有する、長手方向に延びる帯状の押さえ部と、
前記スリットの縁部に係合可能な一対の係止爪を有し、前記スリットに撓み変形して差し込み可能である、前記押さえ部の長手方向の両端に設けられた係止部と、を備えていることを特徴とする育苗ポット押さえバンド。
【請求項2】
係止部と押さえ部との間に所定長の幅狭部を有し、前記幅狭部の幅はスリット長に対応させたものであって、前記押さえ部の幅は前記スリット長より大きいことを特徴とする請求項1に記載の育苗ポット押さえバンド。
【請求項3】
押さえ部の略端部から係止部の略中央部にかけて長手方向に切り込み形成されているフラップ部を備え、前記フラップ部は前記係止部側に位置する自由端及び前記押さえ部側に位置する固定端を有しており、
前記係止部を前記スリットに差し込むとき、前記フラップ部を前記スリットに挿通させずに前記自由端を引っ張ることで、係止部が撓み変形して前記スリットに差し込み可能であることを特徴とする請求項1または2に記載の育苗ポット押さえバンド。
【請求項4】
係止部はテーパー状に延びる先端部を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の育苗ポット押さえバンド。
【請求項5】
開口及び当該開口上端を区画する外枠を有する箱体であり、請求項1から4の育苗ポット押さえバンドの両端を前記外枠に接続可能であり、前記育苗ポット押さえバンドの各係止部を差し込み可能な少なくとも一対のスリットを備えている、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で収容可能な育苗トレーであって、
前記育苗ポット押さえバンドの押さえ部が、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を覆って、開口上方から同時に押さえることができるように、一対の前記スリットが前記外枠の端縁に前記開口を挟んでそれぞれ設けられていることを特徴とする育苗トレー。
【請求項6】
開口及び当該開口上端を区画する外枠を有する箱体である押さえバンド付き育苗トレーであって、
縦横に配列した状態で収容されている複数の育苗ポットと、
前記外枠の端縁に前記開口を挟んでそれぞれ設けられている少なくとも一対のスリットと、
各係止部が一対の前記スリットに差し込まれ、押さえ部が、隣接する各前記育苗ポットの開口部の一部を覆って、開口上方から同時に押さえるように、前記育苗トレーの開口を横断または縦断して架け渡って前記外枠に固定されている請求項1から4の育苗ポット押さえバンドと、を備えていることを特徴とする押さえバンド付き育苗トレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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