説明

肺ガンの治療

被験者の肺ガンを治療し、予防し、抑制し、または減少させるために、免疫調節化合物が投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本願は、2007年8月23日に出願された米国仮出願連続番号第60/957,530号の利益を主張する。当該仮出願の開示はその全体がここに引用により援用される。
【0002】
発明の分野
この発明は、肺ガンの治療の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
背景技術の説明
肺ガンは肺組織の悪性転換および拡大であり、世界中で年間130万人の死亡に関与している。それは、男性ではガンに関する死亡の最大の原因であり、女性では2番目に多い原因である。
【0004】
肺ガンのリスクに対して最大の影響を有する要因は、吸入された発ガン物質、特に煙草の煙に長期間さらされることであることを、現在の研究は示唆している。他の場合の肺ガンの発生(10分の1未満)は、遺伝的要因の組合せによるものと思われる。ラドンガスおよび空気汚染も肺ガンの進行に寄与する場合がある。
【0005】
治療および予後は、ガンの組織型、段階(広がり具合)、および患者の一般状態に依存する。現在の治療は外科手術、化学療法、および放射線治療を含む。全体的に、5年生存率は約14%である。
【0006】
肺ガンには、顕微鏡で組織病理学者が見る悪性細胞の大きさおよび外観によって分類される2つの主な種類がある。すなわち、非小細胞肺ガン(80%)および小細胞(ほぼ20%)肺ガンである。この分類は、単純な組織学的基準に基づいているものの、この病気の臨床管理および予後にとって非常に重要な意味合いを有する。
【0007】
非小細胞肺ガン(NSCLC)は、それらの予後および管理がほぼ同じであるため、一緒にグループ化されている。肺扁平上皮ガン、腺ガン、および大細胞肺ガンという3つの主なサブタイプがある。
【0008】
肺ガンの29%を占める扁平上皮ガンもより大きい気管支で始まるが、よりゆっくりと成長する。これらの腫瘍の大きさは診断によって異なる。
【0009】
腺ガンは、NSCLCのうち最も多いサブタイプであり、肺ガンの32%を占める。それは、肺のガス交換表面近傍で始まる形態である。腺ガンの大抵の場合は喫煙に関連している。しかしながら、喫煙したことがない人々(喫煙未経験者)の中で、腺ガンは肺ガンの最も多い形態である。腺ガンのサブタイプである細気管支肺胞上皮ガンは、女性の喫煙未経験者により多く見られ、治療に対して異なる反応を有する場合がある。
【0010】
大細胞ガンは、肺ガンの9%を占める、肺の表面近傍で成長する、成長が急な形態である。
【0011】
小細胞肺ガン(SCLC、「燕麦細胞ガン」とも呼ばれる)は、肺ガンのあまり一般的でない形態である。それはより大きい呼吸管で始まる傾向があり、急速にかなり大きく成長する。最もよく関与しているガン遺伝子はL−mycである。「燕麦」細胞は密な神経分泌顆粒を含み、それらはこれに内分泌腫瘍随伴症候群関連を与える。それは当初、化学療法により敏感だが、最終的には予後が悪く、発現時には転移性であることが多い。この種類の肺ガンは、喫煙に強く関連している。
【0012】
他の種類の肺ガンは、カルチノイド、腺様嚢胞ガン(円柱腫)、および粘膜上皮ガンを含む。
【0013】
転移ガン
肺は、身体の他の部分におけるガンからの転移がよくある場所である。副腎、肝臓、脳、および骨は、原発性肺ガン自体からの転移が最もよくある部位である。
【0014】
当該技術分野において、肺ガンを治療し、予防し、抑制し、または減少させるための治療の方法に対する要望が依然としてある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
この発明によれば、被験者における、肺ガン、その転移、または肺における肺外部のガンからの転移を治療し、抑制し、減少させ、または少なくとも部分的に予防するための、もしくは、肺ガン細胞の成長、その転移、または肺における肺外部のガン細胞からのガン細胞の転移を治療し、抑制し、減少させ、または少なくとも部分的に予防するための治療の方法は、治療に有効な量の式Aの免疫調節剤化合物を被験者に投与するステップを含み、
【0016】
【数1】

【0017】
式中、nは1または2であり、Rは水素、アシル、アルキル、またはペプチド断片であり、Xは芳香族または複素環アミノ酸もしくはその誘導体であり、被験者における、前記肺ガン、その転移、または肺における肺外部のガンからの転移を治療し、抑制し、減少させ、または少なくとも部分的に予防するようにし、もしくは、被験者における、前記肺ガン細胞の成長、その転移、または肺における肺外部のガン細胞からのガン細胞の転移を治療し、抑制し、減少させ、または少なくとも部分的に予防するようにする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施の形態の一研究における異なる投与量での腫瘍成長をグラフで示す図である。
【図2】一実施の形態の研究における異なる投与量での腫瘍重量をグラフで示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好ましい実施の形態の説明
一実施の形態によれば、この発明は、哺乳類の被験者、好ましくは人間の患者に免疫調節剤化合物を投与することによって、肺ガンを治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるための治療の方法に関する。
【0020】
いくつかの実施の形態では、病気は、肺ガン、その転移、または肺における肺外部のガンからの転移である。この発明は、被験者における、肺ガン細胞の成長、その転移、または肺における肺外部のガン細胞からのガン細胞の転移を治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるために利用可能である。いくつかの実施の形態では、この発明の化合物での治療の前、最中、または後に、原発性肺ガン腫瘍、またはその主な部分が、外科手術により除去される。
【0021】
この発明に従った免疫調節剤化合物は、式Aの免疫調節剤を含む。
【0022】
【数2】

【0023】
式Aにおいて、nは1または2であり、Rは水素、アシル、アルキル、またはペプチド断片であり、Xは芳香族または複素環アミノ酸もしくはその誘導体である。好ましくは、XはL−トリプトファンまたはD−トリプトファンであり、最も好ましくはL−トリプトファンである。
【0024】
「X」についての芳香族または複素環アミノ酸の適切な誘導体は、アミド、モノ−またはジ−(C1−C6)アルキル置換アミド、アリルアミド、および(C1−C6)アルキルまたはアリルエステルである。「R」についての適切なアシルまたはアルキル部分は、炭素が1〜約6個の分岐または非分岐アルキル基、炭素原子が2〜約10個のアシル基、ならびに、カルボベンジルオキシおよびt−ブチルオキシカルボニルなどの保護基である。好ましくは、式Aに示すCH基の炭素は、nが2の場合、Xの立体構造とは異なる立体構造を有する。
【0025】
好ましい実施の形態は、γ−D−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−Nin−ホルミル−L−トリプトファン、N−メチル−γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、N−アセチル−γ−L−グルタミル−L−トリプトファン、γ−L−グルタミル−D−トリプトファン、β−L−アスパルチル−L−トリプトファン、およびβ−D−アスパルチル−L−トリプトファンなどの化合物を利用している。特に好ましい実施の形態は、SCV−07とも呼ばれるγ−D−グルタミル−L−トリプトファンを利用している。これらの化合物、ならびに、これらの化合物、これらの化合物の医薬的に受容可能な塩、およびそれらの医薬製剤を調製するための方法は、ここに引用により援用される米国特許第5,916,878号に開示されている。
【0026】
SCV−07、すなわちγ−D−グルタミル−L−トリプトファンは、ロシアの科学者により発見され、いくつかの徴候における有効性について米国でサイクローン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド(SciClone Pharmaceuticals, Inc.)により調査されているγ−グルタミルまたはβ−アスパルチル部分を有する免疫調節薬物の部類の1つである。SCV−07は、多くの体内および体外免疫調節活性を有する。SCV−07は、Con−A誘導胸腺細胞およびリンパ球の増殖を増加させ、Con−A誘導インターロイキン−2(IL−2)産生、および脾臓リンパ球によるIL−2受容体発現を増加させ、骨髄細胞におけるThy−1.2の発現を刺激する。体内で、SCV−07は、5−FU−免疫抑制動物に対し、およびヒツジ赤血球を用いた免疫付与のモデルにおいて、強力な免疫調節効果を有する。
【0027】
式Aの化合物は、任意の効果的な投与量、たとえば約0.001〜1000mg、好ましくは約0.1〜100mgの範囲、最も好ましくは約10mgの投与量で投与されてもよい。投与量は1週間に1回以上、たとえば毎日投与されてもよく、1日に1回以上投与されてもよい。投与は、経口、経鼻、経皮、舌下、注射、周期的注入、持続注入などを含む好適な方法によって行なわれ得る。投与量は筋肉注射によって投与されてもよいが、他の形態の注射および注入が利用されてもよく、経口または経鼻吸入もしくは経口摂取といった他の形態の投与が採用されてもよい。エアゾール、溶液、懸濁液、分散液、錠剤、カプセル、シロップなどが利用されてもよい。
【0028】
投与量はまた、ミリグラム/キログラム単位で測定されてもよく、約0.00001〜1000mg/kgの範囲、より好ましくは約0.01〜100mg/kgの範囲内、さらにより好ましくは約0.1〜50mg/kg、およびさらにより好ましくは約1〜20mg/kgであってもよい。
【0029】
SCV−07と実質的に類似した生物活性を有する、置換、削除、伸張、代替、または他の態様で改質された部分を有する生物活性類似物、たとえば、SCV−07と実質的に同じ活性で実質的に同様に機能するような、SCV−07との十分な相同性を有するSCV−07由来ペプチドが含まれる。
【0030】
一実施の形態によれば、治療または予防期間中、被験者の循環系において有効量の式Aの化合物を実質的に連続して保つように、式Aの化合物が被験者に投与されてもよい。この発明によればはるかにより長い治療期間が考えられるが、この発明の実施の形態は、少なくとも約6時間、10時間、12時間、またはそれ以上の治療期間中、患者の循環系において有効量の式Aの化合物を実質的に連続して保つことを含む。他の実施の形態では、治療期間は、少なくとも約1日、さらには数日、たとえば1週間、またはそれ以上である。しかしながら、被験者の循環系において有効量の式Aの化合物が実質的に連続して保たれる、上に定義されたような治療は、同様のまたは異なる長さの非治療期間によって隔てられ得ることが考えられる。
【0031】
一実施の形態によれば、式Aの化合物は、被験者の循環系において有効量の式Aの化合物を実質的に連続して保つように、治療期間中、たとえば静脈内注入によって被験者へと連続して注入される。注入は、ミニポンプなどのような好適な手段によって行なわれてもよい。また、これに代えて、被験者の循環系において有効量の式Aの化合物を実質的に連続して保つように、式Aの化合物の注射計画を維持することが可能である。好適な注射計画は、治療期間中、被験者の循環系において有効量の免疫調節剤化合物ペプチドを実質的に連続して保つよう、1時間、2時間、4時間、6時間ごとなどに注射することを含んでいてもよい。
【0032】
式Aの化合物の連続注入中、投与が実質的により長い期間にわたることが考えられるが、一実施の形態によれば、式Aの化合物の連続注入は、少なくとも約1時間の治療期間にわたる。より好ましくは、連続注入は、より長い期間、たとえば少なくとも約6時間、8時間、10時間、12時間、またはそれ以上の期間、行なわれる。他の実施の形態では、連続注入は、少なくとも約1日、さらには数日間、たとえば1週間またはそれ以上の期間にわたる。
【0033】
いくつかの実施例では、式Aの化合物は、注射用の水、生理食塩水といった医薬的に受容可能な液状担体内に、約0.001〜1000μg/ml、より好ましくは約0.1〜100μg/mlの範囲内の濃度で存在する。
【0034】
有効量の式Aの化合物は、慣例的な用量漸増実験によって決定され得る。
式Aの化合物はまた、他の薬剤を用いて投与され得る。たとえば、ガンの治療では、そのような薬剤は、化学療法薬剤および/または放射線を含む。
【0035】
放射線は、好適な方法により、当該技術分野において投与される好適な投与量および投与量計画で投与されてもよい。たとえば、放射線は約1Gy/分の線量率で投与可能であり、放射線は、たとえば、放射線を投与しない日を挟んだ別々の投与日に、たとえば約4Gy/1回分の投与を、1日に2回投与可能である。
【0036】
治療計画において式Aの化合物とともに投与され得る化学療法薬剤は、シスプラチン、5−フルオロウラシル(5−Fu)、DTICなどを一例として含む好適な化学療法薬剤を含む。そのような化学療法薬剤は、ここの実施例で示すものを含む、好適な投与量および/または投与量計画で投与されてもよい。
【実施例】
【0037】
実施例1
略語
CTX シクロホフォスファミド
F 女性
g グラム
IR 抑制率
Ip 腹腔内
Kg キログラム
L 長さ
M 男性
mL ミリリットル
sc 皮下
sd 標準偏差
W 幅
概要
この研究では、SCV−07が、C57/BL6マウスにおけるマウス肺腫瘍の成長に対するその抑制効果について試験した。全部で70匹のマウスにマウスルイス肺ガン(LLC)細胞を皮下移植し、次に、SCV−07またはシクロフォスファミド(CTX)を単独で用いて、もしくは併用して、連続14日間治療した。SCV−07を毎日、sc注射により投与し、一方、CTXを1日おきにip注射により投与した。群1:媒体、群2:CTX 20mg/kg、群3:CTX 40mg/kg、群4:SCV−07 5mg/kg、群5:SCV−07 10mg/kg、群6:SCV−07 5mg/kgプラスCTX 20mg/kg、群7:SCV−07 10mg/kgプラスCTX 20mg/kgという、全部で7つの群を用いた。腫瘍体積および体重を3日ごとに測定し、腫瘍重量を研究終了時の第16日目(解剖日)に測定した。
【0038】
研究期間全体を通して、どの群でも動物の死亡は見られなかった。さらに、体重の統計結果は、SCV−07のみの群と媒体対照群との有意差を示さず、動物の成長に対してSCV−07が影響を及ぼさないことを表わしている。これに対し、第6日目以降、CTX治療群は、特に高投与量のCTXを投与された群において、体重の著しい減少を示した。
【0039】
腫瘍の成長については、第3日目に、群4を除くすべての群が、群1(媒体対照)と比べ、腫瘍体積の統計学的に有意な抑制を示した。第6日目に、群2および群3のみが抑制を示した。第9日目に、群2、群3、および群7が抑制を示した。第12日目に、群4を除くすべての群が抑制を示した。第15日目に、すべての群の平均腫瘍サイズが、群1よりも統計学的に有意に小さくなった。第16日目に、すべての治療群の平均腫瘍重量が、媒体対照群よりも低くなった。群2、群3、群4、群5、群6、および群7の腫瘍重量抑制率は、それぞれ、45.54%(p<0.01)、90.25%(p<0.01)、18.08%(p=0.07)、30.60%(p<0.01)、48.57%(p<0.01)、および62.63%(p<0.01)であった。
【0040】
結論として、媒体群が顕著な腫瘍成長を示し、一方、陽性対照薬物CTXが腫瘍成長を効果的に減少させたので、この研究で使用された腫瘍モデルは有効である。SCV−07(10mg/kg)を毎日、14日間投与することは、腫瘍成長を著しく抑制した。治療された動物における腫瘍重量は、媒体対照群のものと比べて著しく減少した。さらに、次善の投与量(20mg/kg)のCTXと高投与量(10mg/kg)のSCV−07との併用治療は、抗腫瘍効果の増加を示した。
【0041】
前書き
この研究は、SCV−07の抗腫瘍効果を、肺ガンにおける抗腫瘍薬物としてのその可能性を探求するために、マウス肺ガンモデルを用いて試験する。陽性対照としてCTXを使用する。SCV−07とCTXとの併用効果も、相加効果または相乗効果があるかどうかを判断するために試験する。
【0042】
材料および方法
試験および対照物質
陰性対照物質(媒体)としてPBSを使用し、陽性対照としてCTXを使用した。CTXをシグマ−アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社から購入し、10mg/バイアルに等分した。PBSを、研究設計表に示されたような適正な投与量レベルを達成するよう添加した。製剤を冷蔵し、光から保護し、すぐに使用した。試験物質(SCV−07)を、研究設計表に示されたような適正な投与量レベルを達成するようPBSに溶解させ、冷蔵し、光から保護し、1週間以内に使用する。
【0043】
試験システムおよび動物の飼育管理
マウス肺ガン細胞(LLC)
マウスルイス肺ガン細胞を、中国医学科学院(Chinese Academy of Medical Sciences(CAMS)、北京、中華人民共和国)の細胞培養センター(Cell Culture Center)から入手した。このガン細胞を、実験に使用する前に、C57BL/6マウスに適応させた。細胞適応の詳細については第4.3.1号を参照されたい。
【0044】
試験システム
中華人民共和国、北京、CAMSの実験動物協会(Institute of Laboratory Animal Science)から、実験に未使用の健康なC57BL/6マウスを、雄35匹、雌35匹受取った。研究開始時、これらの動物は、生後6週間で体重が18〜22グラムであった。
【0045】
動物の飼育管理
動物を、寝床材料として加圧滅菌した木片が入った加圧滅菌した靴箱型ケージに、群別に収容した。飼育室の温度を22〜25℃に保ち、相対湿度を40〜60%に保った。研究に関連する事象によって中断される場合を除き、12時間ずつの明暗サイクルが保たれた。動物には、滅菌水および北京KeAoXieLiげっ歯類用餌(認定済)を自由に給餌した。動物をすべて、腫瘍接種前に3日間順応させた。
【0046】
実験手順
腫瘍細胞適応
無菌組織培養手順により、1バイアルのマウス肺ガン細胞を解凍し、1000rpm、20〜25℃で5分間、遠心分離機にかけた。細胞ペレットを0.5mLの生理食塩水(NM)に懸濁し、各マウスの右腋窩に皮下注射した(約1×106細胞/マウス)。腫瘍の直径が約1cmに達すると、動物をCO2窒息で安楽死させ、腫瘍を摘出した。腫瘍細胞を前述のような生理食塩水に懸濁し、細胞適応サイクルをもう1回繰返した。
【0047】
腫瘍細胞接種
体積0.1mLの生理食塩水内の1×106個のLLC細胞を、マウスの右腋窩領域に皮下注射した。腫瘍接種日を第0日目と定義した。
【0048】
研究設計および治療計画
第1日目に、動物をそれらの体重に基づき、平均体重が群間で統計学的に有意に異ならないよう、7つの異なる群に無作為に分けた。投与を第1日目に開始した。SCV−07を、体重20gにつき0.1mLの投与体積で、1日1回、連続14日間、皮下投与により投与し、同じ投与体積のCTXを、1日おきに腹腔内注射により投与した。媒体も、1日1回、連続14日間、同じ投与体積のPBSのsc投与により投与した。すべての群についての治療計画を、表1に概説する。
【0049】
【表1】

【0050】
抗腫瘍効果の評価
研究期間全体を通して、すべての動物の腫瘍サイズおよび体重を3日ごとに測定した。腫瘍サイズは測径器により、体重は実験室の天秤により測定した。動物の死亡率および罹患率を毎日監視し、記録した。第16日目に、動物をCO2窒息により安楽死させ、腫瘍を摘出し、分離し、重量を量った。
【0051】
腫瘍体積を、以下の式を用いて計算した。
腫瘍体積=長さ×幅×幅/2
腫瘍体積抑制率(IR)を、以下の式に従って計算した。
【0052】
【数3】

【0053】
式中、TVは測定日の腫瘍体積であり、「媒体」はPBSを受ける群を示し、「薬物で治療」はSCV−07および/またはCTXを受ける群を示す。
【0054】
単独で使用された、またはCTXと併用されたSCV−07の抗腫瘍効果も、腫瘍重量によって評価した。各マウスの腫瘍重量を安楽死の後で記録し、腫瘍重量の抑制率を以下の式に従って計算した。
【0055】
【数4】

【0056】
平均偏差および標準偏差を、エクセルを用いて計算した。
統計的分析
スチューデントのt検定を用いて、腫瘍体積、腫瘍重量、および体重について、群内での比較を行なった。0.05未満のP値は統計学的に有意であると考えた。
【0057】
結果および論議
死亡率
この研究において、動物の死亡は観察されなかった。
【0058】
腫瘍サイズ
腫瘍サイズの生測定データを付録1〜10に列挙する。計算された腫瘍抑制率、および媒体群に対する各治療群の統計比較を表2〜6に列挙する。腫瘍成長曲線を図1に示す。腫瘍体積データに基づくと、第3日目に、群4を除くすべての群が腫瘍成長の著しい抑制を示した。第6日目に、群2および群3が抑制を示した。第9日目に、群2、群3、および群7の平均腫瘍サイズが、群1(媒体)よりも統計学的に有意に小さくなった。第12日目に、群4を除くすべての治療群の平均腫瘍サイズが、群1よりも統計学的に有意に小さくなった。第15日目に、すべての群の平均腫瘍サイズが、群1よりも統計学的に有意に小さくなった。併用治療群の中では、高投与量のSCV−07がCTXとの相加効果を示した。
【0059】
腫瘍重量
腫瘍重量の生データを付録11に示した。一方、各治療群と媒体対照群との統計比較結果を表7に示す。表7に示すように、第16日目に測定されたすべての治療群の平均腫瘍重量は、媒体対照群よりも低かった。群2、群3、群4、群5,群6、および群7における腫瘍抑制率は、それぞれ、45.54%(p<0.01)、90.25%(p<0.01)、18.08%(p=0.07)、30.60%(p<0.01)、48.57%(p<0.01)、および62.63%(p<0.01)であった。群2(CTX 20mg/kg)と群6(CTX 20mg/kg+SCV−07 5mg/kg)とでは、腫瘍抑制において統計学的に有意な差はなかった。これに対し、群7(CTX 20mg/kg+SCV−07 10mg/kg)の抑制率は、群2(CTX 20mg/kg)よりも統計学的に有意に大きく、CTXをSCV−07と併用した場合の相加効果を表わしている。
【0060】
図2は、研究終了時(第16日目)での全群についての腫瘍重量を示す。
体重
体重測定の生データを付録12〜17に列挙した。媒体群に対する各治療群の統計比較の結果を表8〜13に列挙している。
【0061】
表に示すように、第3日目では、各治療群と媒体対照群との有意差はない。第6日目に、群3(CTX 40mg/kg)は10.82%(P<0.05)の体重抑制率を呈した。他の群については体重の有意差はなかった。第9日目では、群2(CTX 20mg/kg)、群3(CTX 40mg/kg)、および群6(CTX 20mg/kg+SCV−07 5mg/kg)についての抑制率は、それぞれ、12.35%(p<0.01)、16.12%(p<0.01)、および7.22%(p<0.01)であった。群6にSCV−07を添加すると、体重増加の抑制率が減少した。他の群については体重の有意差はなく、動物の体重増加にSCV−07が影響を及ぼさないことを表わしている。第12日目では、群2(CTX 20mg/kg)、群3(CTX 40mg/kg)、および群6(CTX 20mg/kg+SCV−07 5mg/kg)についての抑制率は、それぞれ、14.83%(p<0.01)、21.97%(p<0.01)、および10.28%(p<0.01)であった。第15日目に、群3(CTX 40mg/kg)の抑制率は25%(p<0.01)であった。他の群については体重の有意差はなかった。この結果は、CTXはおそらくその毒性により体重増加を抑制し、SCV−07はおそらくそのCTX毒性の緩和により、抑制を部分的に保留し得ることを表わしている。
【0062】
結論および論議
結論として、陽性対照薬物CTXによって腫瘍成長が抑制可能なので、この研究で使用された腫瘍モデルは有効である。試験物質であるSCV−07を毎日10mg/kg、14日間投与することも、腫瘍成長に対して効果的である。第12日目以降、SCV−07で治療されたすべての群の動物の腫瘍サイズは、媒体対照群のものと比べて著しく減少した。第16日目に測定された腫瘍重量も、10mg/kgのSCV−07のみを受けた群、および併用治療を受けた群では著しく減少したが、5mg/kgのSCV−07のみを受けた群ではそうでもなかった。さらに、10mg/kgのSCV−07と20mg/kgのSCV−07との併用は、10mg/kgのSCV−07または20mg/kgのCTXを単独で使用した場合に得られる30.6%および45.54%の抑制に比べ、合わせて62.63%の腫瘍成長の抑制を生み出した。これらの結果は、SCV−07とCTXとの併用が腫瘍成長抑制に向けて相加効果を生み出すことを示唆している。
【0063】
CTX治療群における動物の平均体重は著しく減少し、毒性効果を表わしている。しかしながら、併用治療群におけるSCV−07の添加により、CTXの毒性効果はSCV−07によって少なくとも部分的に弱められ得るようである。この減少は、20mg/kgのCTXの単独使用が体重増加の統計学的に有意な抑制を生み出すものの、併用治療群(CTX 20mg/kg+SCV−07 10mg/kg)では抑制がない第9日目において明らかである。体重増加のより顕著な抑制を生み出す、より高い投与量のCTX(すなわち40mg/kg)と併用したSCV−07の保護効果は、試験しなかった。さらなる研究によって検証されれば、SCV−07の保護効果は、SCV−07とCTXとの併用治療を検討する際に非常に有用であろう。総合すれば、高投与量(10mg/kg)のSCV−07と次善の投与量(20mg/kg)のCTXとの併用は、抗腫瘍効果の増加および毒性の低下を示した。
【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
【表4】

【0067】
【表5】

【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
【表8】

【0071】
【表9】

【0072】
【表10】

【0073】
【表11】

【0074】
【表12】

【0075】
【表13】

【0076】
【表14】

【0077】
【表15】

【0078】
【表16】

【0079】
実施例2
腫瘍成長の減少における効果に関する、放射線と併用したSCV−07の評価
概要
この研究では、放射線治療を行なった場合または行なわなかった場合の腫瘍成長に対するSCV−07の影響を、マウスのH146肺ガンモデルを用いて試験した。ガンを持ったマウスが1日1回、20日間、生理食塩水またはSCV−07を用いて、放射線治療を受けて、または受けずに治療された。生存および重量変化の観察に基づくと、SCV−07はこの研究では毒性の証拠を示さず、また、それは放射線に対するH146腫瘍の反応を変化させなかった。単独で投与された場合、SCV−07は投与量に依存して腫瘍成長の減少に効果的であり、1mg/kgのSCV−07を1日2回、20日間受けた動物は9.1%の腫瘍成長抑制を示し、10mg/kgのSCV−07を1日2回、20日間受けた動物は35.9%の腫瘍成長抑制を示した。1回投与の紫外線治療と併用すると、10mg/kgのSCV−07を1日2回、20日間投与した治療は、放射線のみで治療された動物に比べ、78.3%の腫瘍成長抑制、すなわち40.5%のTGIをもたらした。これらの観察に基づくと、SCV−07は、単独で投与された場合、または放射線治療と併用した場合に、肺ガンモデルにおける腫瘍の成長を減少させるのに効果的であると思われる。
【0080】
目的
マウスのNCI H146小細胞肺ガンモデルを用いて、腫瘍成長抑制におけるSCV−07の効果を、単独治療として、および放射線治療と併用して評価する。
【0081】
研究設計
96匹の雌のヌードマウス(nu/nu)を、8つの治療群に無作為に割当てた。各マウスの左脇腹下方に、体積が0.1mLの1×105個のNCI−H146(H146)肺ガン細胞をマトリゲルとともに接種した。腫瘍の体積が一旦75〜125mm3に達すると、治療を開始した。表2.1に詳述するように、媒体、放射線、SCV−07、または放射線およびSCV−07を用いて群を治療した。薬物治療の開始を第1日目と指定した。群1および群4のマウスは、媒体を皮下(sc)注射により20日間受けた。群2〜4および6〜8のマウスは、媒体中のSCV−07を1日1回、sc注射により、第1〜20日目に受け、群6〜8のマウスは放射線を受けた(2回、第0日目および第2日目に4Gy/1回分)。放射は、これらの群のマウスをケタミン(120mg/kg)およびキシラジン(6mg/kg)で麻酔し、腫瘍を有する脇腹の領域が放射線にさらされるようにマウスを鉛遮蔽体の下に配置することによって行なわれた。放射線は、フィリップス(Philips)160kV源を用いて、約40cmの焦点距離、および約1.0Gy/分の線量率で送出された。研究期間全体を通して、腫瘍を1日おきに測定した。群1〜8のマウスは第21日目に犠牲となり、残った腫瘍が摘出され、測定され、重量を量られ、写真を撮られて、後の分析用にホルマリンで固定された。
【0082】
【表17】

【0083】
重量および生存
起こり得る毒性を評価するために、動物の重量を毎日測定し、それらの生存を記録した。研究期間中、開始重量の20%を超える減少を呈した動物を安楽死させた。腫瘍が4000mm3を超えて成長した動物も安楽死させた。
【0084】
材料および方法
組織培養
H146ヒト肺ガン細胞をATCCから入手した。これらの細胞を、10%のウシ胎仔血清(FCS)、1%のペニシリンおよびストレプトマイシン、ならびに2mMのL−グルタミンが補充されたDMEMにおいて成長させた。媒質を除去し、カルシウムおよびマグネシウムを含まない殺菌したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を用いて2回すすぎ、0.25%トリプシン/0.03%EDTA溶液を1〜2ml添加することによって、細胞を二次培養した。細胞が分離するまで、フラスコを37℃で培養した。細胞を次に、1:3の比率で二次培養した。
【0085】
研究実行の場所
この研究は、マサチューセッツ州ウォータータウン(Watertown)のバイオモデルズ(Biomodels)AAALAC公認施設で行なわれた。この研究に関する動物使用許可は、バイオモデルズIACUCから得た。
【0086】
動物
nu遺伝子(nu+/nu+)についてホモであり(チャールズリバーラボ(Charles River Labs))、生後5〜6週間で、治療前の平均体重が24グラムの雌のヌードマウスを使用した。動物に耳パンチを用いて個々に番号を付け、1つのケージにつき6匹ずつの群で収容し、研究開始前に順応させた。少なくとも2日間の順応期間中、不調を呈する動物を除外するために、動物を毎日観察した。
【0087】
飼育室
この研究は、温度が70°F+/−5°F、相対湿度が50%+/−20%の、ろ過空気が供給された飼育室で行なわれた。飼育室は、1時間につき最低で12〜15回の換気を保つように設定された。この飼育室には、薄明無しで12時間オン、12時間オフとなる明暗サイクル用の自動タイマが付いていた。
【0088】
滅菌されたベッド・オ・コブズ(Bed-O-Cobs)(登録商標)寝床を使用した。寝床は少なくとも週に1回交換した。
【0089】
ケージ、蓋、底などを市販の洗剤で洗い、空気乾燥させた。使用前、これらの物品を覆って加圧滅菌した。フードに入れられる面および材料を殺菌するために、市販の殺菌剤を使用した。床は毎日掃除され、少なくとも週に2回、市販の洗剤でモップがかけられた。壁およびケージラックは少なくとも1月に1回、薄めた漂白容器を用いてスポンジで擦られた。研究、投与量、動物番号、および治療群を識別するために必要な適切な情報を記載したケージカードまたはラベルを、すべてのケージに付けた。研究中、温度および相対湿度を記録し、これらの記録を保存した。
【0090】

動物には、無菌ラボダイエット(Labdiet)(登録商標)5053(滅菌前)げっ歯類用餌を給餌し、滅菌水を自由に与えた。
【0091】
動物の無作為化および割当て
治療の開始前、マウスを、無作為にかつ先を見越して8つの群に分けた。各動物を、個々の番号に対応する耳パンチによって識別した。各ケージを識別するためにケージカードを使用し、研究番号(SCI−05)、治療群番号、および動物番号を記載した。
【0092】
結果の評価
治療群間の統計学的差異を、スチューデントのt検定、マン・ホイットニーのU検定、およびカイ二乗分析を用いて、0.05という臨界値で判断した。
【0093】
実験手順
腫瘍を2日に1回、マイクロ測径器で測定し、腫瘍体積を4/3πr3として計算した。ここで、rは長さと幅との和を4で割ったものに等しい。式100−(Vc*100/Vt)を用いて腫瘍成長指標(TGI)を計算した。式中、Vcは対照群における腫瘍の平均体積であり、Vtは試験群における腫瘍の平均体積である。
【0094】
結果および論議
生存
この研究の期間中、治療の直接的な結果としての動物の死亡は起こらなかった。
【0095】
動物の重量
媒体治療群とSCV−07を単独治療として受けた動物(p=0.7)との間、または放射線のみを受けた動物および放射線とSCV−07とを併用して受けた動物(p=0.68)には、平均重量の日別変化に有意差はなかった。媒体のみを受けたマウスは、第21日目までに、平均でそれらの開始重量の13.2%増加した。100μg/kg、1.0mg/kg、または10mg/kgのSCV−07のいずれかで治療されたマウスは、第21日目までに、それらの開始重量の10.2%〜12.3%増加した。媒体で治療され、かつ放射線にさらされたマウスは、第21日目までに、平均でそれらの開始重量の3.2%増加した。100μg/kg、1.0mg/kg、または10mg/kgのSCV−07のいずれかで治療され、かつ放射線にさらされたマウスは、第21日目までに、それらの開始重量の2.8%〜3.6%増加した。
【0096】
各動物の重量変化百分率についての平均の曲線下面積(AUC)を計算し、一元配置分散分析検定を用いて群同士を比較することにより、これらの差異の有意性を評価した。
【0097】
腫瘍体積
1日おきに測定した長さおよび幅の測定値から、長さと幅との和を4で割った平均半径(r)を計算し、式4/3πr3を用いて体積を計算することにより、腫瘍体積を計算した。
【0098】
100μg/mlで治療された動物からの腫瘍は、媒体対照動物よりも速い速度で成長した。放射線を受けなかった動物のうち、10mg/kgのSCV−07で治療されたマウスが、腫瘍成長抑制において最良の改善を示した。媒体で治療された動物についての研究期間終了時の平均腫瘍体積は4436.6mmであり、100μg/kgのSCV−07で治療された動物については4923mm、1mg/kgのSCV−07で治療された動物については4033.4mm、10mg/kgのSCV−07で治療された動物については2842.4mmであった。
【0099】
放射線を受けた動物のうち、10mg/kgのSCV−07で治療されたマウスが、腫瘍成長抑制において最良の改善を示した。媒体で治療された動物についての研究期間終了時の平均腫瘍体積は1618.5mmであり、100μg/kgのSCV−07で治療された動物については1322.3mm、1mg/kgのSCV−07で治療された動物については1923.9mm、10mg/kgのSCV−07で治療された動物については962.8mmであった。
【0100】
各動物の腫瘍体積についての平均の曲線下面積(AUC)を計算し、一元配置分散分析検定を用いて群同士を比較することにより、データのさらなる分析を行なった。この分析は、いずれの治療群と生理食塩水対照群との有意差も明らかにはしなかった(放射線を受けていない動物についてはp=0.13、放射線を受けた動物についてはp=0.14)。しかしながら、マン・ホイットニー順位和分析を用いて媒体治療と10mg/kgのSCV−07とを直接比較すると、有意差がある(p=0.026)。
【0101】
式100−(Vc*100/Vt)を用いて腫瘍成長抑制(TGI)を計算した。式中、Vcは対照群における腫瘍の平均体積であり、Vtは試験群における腫瘍の平均体積である。表2.2は、100μg/kg、1mg/kg、または10mg/kgのSCV−07を単独で用いて、または放射線と併用して治療された動物についての腫瘍成長抑制を示す。放射線を受けなかった対照と比較すると、1mg/kgのSCV−07のみで治療された動物は、9.1%の腫瘍成長抑制を有し、10mg/kgのSCV−07のみで治療された動物は、35.9%の腫瘍成長抑制を有した。放射線のみで治療された動物は、放射線を受けなかった対照と比較すると、63.5%のTGIを有し、一方、SCV−07プラス放射線で治療された動物は、70.2%(100μg/kg)、50.3%(1mg/kg)、およびの78.3%(10mg/kg)TGI値を有した。放射線プラス媒体を受けた群と比較すると、放射線プラスSCV−07で治療された群は、100μg/kgで18.3%、10mg/kgで40.5%のTGIを有した。
【0102】
【表18】

【0103】
表2.2. 腫瘍成長抑制(TGI)。TGIは、最新の腫瘍測定値から、式100−(Vc*100/Vt)を用いて計算された。式中、Vcは対照群における腫瘍の平均体積であり、Vtは試験群における腫瘍の平均体積である。**群2および群7の平均腫瘍体積は、媒体対照動物を上回った(それぞれ、9.8%および15.87%)。
【0104】
結論
生存および重量変化の観察に基づくと、SCV−07はこの研究では毒性の証拠を示さなかった。
【0105】
10mg/kgのSCV−07のみで治療された動物は、媒体対照動物と比較すると、腫瘍成長抑制(TGI=68%)の著しい減少を示した(P=0.026)。
【0106】
統計学的に有意ではないものの、100μg/kgのSCV−07のみで、または1mg/kgのSCV−07のみで治療された動物は、媒体のみを受けた動物に比べ、腫瘍成長の減少を示した。
【0107】
統計学的に有意ではないものの、100μg/kgまたは1mg/kgのSCV−07で治療され、放射線を受けた動物は、放射線を受けた動物に比べ、腫瘍成長の減少を示した。
【0108】
【表19】

【0109】
【表20】

【0110】
【表21】

【0111】
【表22】

【0112】
【表23】

【0113】
実施例3
皮下LLC腫瘍を有するマウスにおけるSCV−07およびシスプラチンの併用治療の抗腫瘍効果研究
略語
BW 体重
CO2 二酸化炭素
CDDP シス−ジアミン ジクロロプラチナム(シスプラチン)
g グラム
kg キログラム
L 長さ
LLC ルイス肺ガン
mg ミリグラム
mL ミリリットル
PBS リン酸緩衝生理食塩水
PI パーセント抑制
SD 標準偏差
TV 腫瘍体積
TW 腫瘍重量
VBI バイタル・ブリッジ社(中国)(Vital Bridge (China), Inc.)
W 幅
概要
この研究では、C57/BL6マウスに接種されたマウスルイス肺ガン(LLC)細胞から成長した皮下ガンの成長に対するSCV−07およびシスプラチン(CDDP)の抑制効果を評価した。全部で70匹のマウスにマウスLLC細胞を皮下移植し、次にSCV−07またはCDDPを単独で用いて、もしくは併用して、連続14日間治療した。SCV−07を毎日、sc注射により投与し、一方、CDDPを第1日目、第6日目、および第12日目にip注射により投与した。群1:媒体、群2:CDDP 2mg/kg、群3:CDDP 6mg/kg、群4:SCV−07 10mg/kg、群5:SCV−07 20mg/kg、群6:SCV−07 10mg/kgプラスCDDP 2mg/kg、群7:SCV−07 20mg/kgプラスCDDP 2mg/kgという、全部で7つの群が使用された。体重を3日ごとに記録し、腫瘍サイズを1日おきに測定し、腫瘍重量を研究終了時の第16日目(解剖日)に測定した。
【0114】
研究期間全体を通して、死んだ動物はいなかった。体重の統計結果は、SCV−07単独治療群(群4および5)のいずれかと媒体対照群(群1)との有意差を示さず、動物の成長に対してSCV−07が影響を及ぼさないことを表わしている。これに対し、第3日目以降、6mg/kgのCDDP治療を受けた群(群3)は、体重の統計学的に有意な減少を一貫して示した。2mg/kgのCDDP治療を受けた群である群2は、第15日目のみ体重の統計学的に有意な減少を示し、一方、2mg/kgのCDDPを20mg/kgのSCV−07と併用して受けた群7は、第3日目以降、群1と比較して、体重の統計学的に有意な減少を一貫して呈した。
【0115】
腫瘍測定データは、第6日目に、群2および群3の平均腫瘍体積が群1のものよりも統計学的に有意に小さいことを示した。第8日目、第10日目、第12日目、および第14日目において、すべての群の平均腫瘍体積が群1よりも統計学的に有意に小さかった。第16日目に、すべての治療群の平均腫瘍重量が群1よりも低くなった。腫瘍重量に基づいて計算された腫瘍抑制は、群2、群3、群4、群5、群6、および群7について、それぞれ、58.90%(p<0.01)、77.35%(p<0.01)、16.84%(p<0.05)、37.45%(p<0.01)、40.81%(p<0.01)、および56.13%(p<0.01)であった。
【0116】
要約すると、陽性対照薬物CDDPが腫瘍成長を効果的に減少させたので、この研究で使用された腫瘍モデルは、有効であった。SCV−07(10mg/kgまたは20mg/kg)を用いた治療は、媒体対照群のものと比べてこれらの群で腫瘍体積がより小さく、腫瘍重量がより低かったことに反映されるように、腫瘍成長を抑制した。CDDP(2mg/kg)と併用したSCV−07(10または20mg/kg)の治療計画は、SCV−07単独治療よりも腫瘍成長のより高い抑制をもたらすものの、CDDP単独の場合と比べると、抗腫瘍効果の増加はない(相加効果なし)。
【0117】
前書き
この研究は、マウスルイス肺ガン(LLC)モデルにおいて単独で使用される、またはCDDPと併用されるSCV−07の抗腫瘍効果を、肺ガンの治療に対するその治療可能性を探索する目的で評価するために設計された。CDDPを、このガンモデルを検証する陽性対照薬物としても使用した。
【0118】
材料および方法
試験および対照物質
陰性対照物質(媒体)としてPBSを使用し、陽性対照としてCDDPを使用した。CDDPをPUMC病院から購入した。この薬剤は、Qilu製薬会社(Qilu Pharmaceutical Co., Ltd.)により製造され、各バイアルは10mgのCDDP粉末を含有している。使用前、投与量製剤表(表3.1)に示されたような適正な投与量レベルを達成するよう、PBSを1バイアルのCDDPに添加した。製剤を冷蔵し、光から保護し、すぐに使用した。試験物質(SCV−07)を、表1に示されたような適正な投与量レベルを達成するようPBSに溶解させ、冷蔵し、光から保護し、1週間以内に使用した。
【0119】
【表24】

【0120】
試験システムおよび動物の飼育管理
マウス肺ガン細胞(LLC)
マウスルイス肺ガン細胞を、中国医学科学院(CAMS、北京、中華人民共和国)の細胞培養センターから入手した。このガン細胞を、実験に使用する前に、C57BL/6マウスに適応させた。細胞適応の詳細については第4.3.1号を参照されたい。
【0121】
試験システム
中華人民共和国、北京、CAMSの実験動物協会から、実験に未使用の健康なC57BL/6マウスを、雄35匹、雌35匹受取った。研究開始時、これらの動物は、生後6週間で体重が18〜22グラムであった。
【0122】
動物の飼育管理
動物を、寝床材料として加圧滅菌した木片が入った加圧滅菌した靴箱型ケージに、群別に収容した。飼育室の温度を22〜25℃に保ち、相対湿度を40〜60%に保った。研究に関連する事象によって中断される場合を除き、12時間ずつの明暗サイクルが保たれた。動物には、滅菌水および北京KeAoXieLiげっ歯類用餌(認定済)を自由に給餌した。動物をすべて、腫瘍接種前に3日間順応させた。
【0123】
実験手順
腫瘍細胞適応
1バイアルのLLC細胞を液体窒素ストックから取り出し、37℃の水槽に配置した。バイアルの中身が解凍されるまで、緩やかな旋回を行なった。無菌組織培養手法を用いて、細胞をすぐに1000rpm、20〜25℃で5分間、TD5A−WS遠心分離機にかけた。遠心分離後、細胞を0.1〜0.5mLの生理食塩水(NM)に懸濁し、次に10匹のマウスに皮下注射した(0.1mL/マウス、約1×106個の細胞)。1〜2週間後、腫瘍の直径が約1cmになると、動物をCO2過剰投与で安楽死させ、腫瘍を摘出した。この手順を別の20匹に繰返して、適正な移植可能性を有する十分な数のLLC細胞を生成した。
【0124】
腫瘍細胞接種
腫瘍移植日、0.1mLの1×106個の細胞を、各マウスの右腋窩領域に皮下注射した。腫瘍移植日を第0日目と定義した。
【0125】
研究設計および治療計画
第1日目に、動物を体重が適合する異なる群に無作為に割当て、表3.2に下方計画を用いて投与を開始した。簡潔には、SCV−07を、腫瘍細胞移植部位とは異なる部位に、1日1回、連続14日間、皮下投与により投与し、一方、CDDPを、第1日目、第6日目、および第12日目に腹腔内投与した。
【0126】
抗腫瘍効果の評価
第1日目〜第14日目に、死亡率および罹患率を一日2回チェックし、体重を3日ごとに記録し、腫瘍を測径器を用いて2日ごとに測定した。研究終了時(第16日目)、動物をCO2窒息により安楽死させ、腫瘍を摘出して重量を量った。
【0127】
腫瘍体積を、以下の式を用いて計算した。
腫瘍体積=長さ×幅×幅/2
腫瘍体積抑制(PI)を、以下の式に従って計算した。
【0128】
【数5】

【0129】
式中、TVは測定日の腫瘍体積であり、「媒体」はPBSを受ける群を示し、「薬物で治療」はSCV−07および/またはCDDPを受ける群を示す。
【0130】
単独で使用された、またはCDDPと併用されたSCV−07の抗腫瘍効果も、腫瘍重量によって評価した。各マウスの腫瘍重量を安楽死の後で記録し、腫瘍重量のパーセント抑制を以下の式に従って計算した。
【0131】
【数6】

【0132】
平均偏差および標準偏差を、エクセルを用いて計算した。
【0133】
【表25】

【0134】
統計的分析
スチューデントのt検定を用いて、腫瘍体積、腫瘍重量、および体重について、群内での比較を行なった。0.05未満のP値は統計学的に有意であると考えた。
【0135】
結果および論議
死亡率
研究期間全体を通して、死んだ動物はいなかった。
【0136】
腫瘍サイズ
腫瘍サイズの生測定データを付録3.1〜3.14に示す。計算された平均腫瘍体積、および媒体群に対する各治療群の統計試験結果を表3〜9に示す。第2日目では、どの群でも腫瘍は測定できなかった。第4日目に、群4を除くすべての群の平均腫瘍体積が、群1(媒体対照)のものよりも統計学的に有意に小さくなった。第6日目に、群2および群3のみが、より小さい平均腫瘍体積を示した。第8日目、第10日目、第12日目、および第14日目に、すべての群の平均腫瘍体積が、群1よりも統計学的に有意に小さくなった。
【0137】
腫瘍重量
第16日目に測定した腫瘍重量の生データを付録3.15に示した。腫瘍重量に基づいた計算されたパーセント抑制(PI)値、および各治療群と媒体群との統計比較結果を、表3.10に示す。表3.10に示すように、すべての治療群の平均腫瘍重量は、媒体群のものよりも低かった。群2、群3、群4、群5,群6、および群7のPI値は、それぞれ、58.90%(p<0.01)、77.35%(p<0.01)、16.84%(p<0.05)、37.45%(p<0.01)、40.81%(p<0.01)、および56.13%(p<0.01)であった。併用治療群(すなわち群6および7)は、SCV−07単独治療を受けた対応する群(すなわち群4および5)よりも高いPI値を有するものの、これらのPI値は、CDDP単独治療を受けた群2のものほど高くはなかった。併用治療群のいずれかとCDDP単独治療群(群2)とでは、PIにおいて統計学的に有意な差はなく、CDDPをSCV−07と併用した場合、相加効果がないことを表わしている。
【0138】
体重
体重測定の生データを付録3.16〜3.21に列挙した。媒体群に対する各治療群の統計比較の結果を表3.11〜3.16に示した。
【0139】
表3.11〜3.16に示すように、第0日目では、各治療群と媒体対照群との間に統計学的に有意な差はなかった。第3日目に、群3(CDDP 6mg/kg)および群7(CDDP 2mg/kg+SCV−07 20mg/kg)は、媒体群に対し、それぞれ9.33%(P<0.01)および8.31%(P<0.01)の体重減少を呈した。他の群については、媒体群と比較して体重の有意差はなかった。第6日目では、群3および群7の体重は、媒体群よりも10.45%(p<0.01)および6.58%(p<0.01)低かった。第9日目では、群3、群6、および群7の体重は、媒体群よりもそれぞれ14.51%(p<0.01)、8.70%(p<0.05)、および11.41%(p<0.01)低かった。第12日目では、群3および群7の体重は、媒体群よりもそれぞれ13.62%(P<0.01)および6.65%(P<0.05)低かった。第15日目では、群2、群3、群6、および群7の体重は、媒体群よりもそれぞれ12.51%(p<0.01)、24.37%(P<0.01)、10.42%(P<0.05)、および14.56%(P<0.01)低かった。研究期間全体を通して、SCV−07単独治療を受けた群4および群5の体重には統計学的に有意な差はなく、SCV−07は単独で使用された場合、動物の体重増加に有意な影響を及ぼさなかったことを表わしている。これに対し、CDDP治療は体重の減少に関連し、この所見は特に、高投与量(6mg/kg)のCDDPを受けた群である群3で顕著であった。CDDPとSCV−07との併用は、重量減少を緩和しなかったが、実際には、CDDPに関連する重量減少をより顕著にするであろう。CDDPのみを受けた群2よりも、高投与量のSCV−07と併用してCDDPを受けた群である群7において、より多い重量減少が見られた。
【0140】
結論および論議
結論として、陽性対照薬物CDDPによって腫瘍成長が抑制されたので、この研究で使用された腫瘍モデルは有効であった。試験物質であるSCV−07を毎日10mg/kgおよび20mg/kg投与することは、腫瘍成長に対して効果的であった。第8日目以降、SCV−07で治療されたすべての群の動物の平均腫瘍体積は、媒体対照群のものと比べて著しく減少した。第16日目に測定された腫瘍重量も、10mg/kgまたは20mg/kgのSCV−07のみを受けた群、および併用治療を受けた群では著しく減少した。10mg/kgまたは20mg/kgのSCV−07を単独で使用した場合に得られる16.84%および37.45%の抑制、ならびに2mg/kgまたは6mg/kgのCDDPを単独で使用した場合に得られる58.90%および77.35%の抑制に比べて、10mg/kgまたは20mg/kgののSCV−07と2mg/kgのCDDPとの併用は、40.81%および56.13%の腫瘍成長の抑制を生み出した。これらの結果は、SCV−07とCDDPとの併用が腫瘍成長抑制に向けて相加効果を生み出さないことを示唆した。
【0141】
CDDP治療群における平均体重は著しく減少し、毒性効果を表わしている。単独で使用された場合、SCV−07は、SCV−07で治療されたすべての群において体重の統計学的に有意な減少をもたらさず、動物の体重にSCV−07影響を及ぼさないことを表わしている。しかしながら、SCV−07がCDDPと併用された場合、それはCDDPに関連する重量減少を悪化させるであろう。なぜなら、研究期間全体を通して、高投与量のSCV−07と併用してCDDPを受けた群である群7において、より多い重量減少が見られたためである。
【0142】
【表26】

【0143】
【表27】

【0144】
【表28】

【0145】
【表29】

【0146】
【表30】

【0147】
【表31】

【0148】
【表32】

【0149】
【表33】

【0150】
【表34】

【0151】
【表35】

【0152】
【表36】

【0153】
【表37】

【0154】
【表38】

【0155】
【表39】

【0156】
【表40】

【0157】
【表41】

【0158】
【表42】

【0159】
【表43】

【0160】
【表44】

【0161】
実施例4
B16、LLC、およびRenCa細胞株の増殖に対するSCV−07の体外効果
略語
5−Fu 5−フルオロウラシル
CV 変動係数
DMEM ダルベッコ変法イーグル培地
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DTIC 5−(3,3−ジメチル−1−トリアゼノ)イミダゾール−4−カルボキサミド
FBS ウシ胎児血清
LLC ルイス肺ガン
MTT メチルチアゾリルジフェニル−テトラゾリウムブロミド
NA 適用不可
OD 光学密度
PPS リン酸緩衝生理食塩水
RPMI ロズウェルパーク記念研究所(Roswell Park Memorial Institute)
SD 標準偏差
SDS ドデシル硫酸ナトリウム
SOP 標準作業手順
VBI バイタル・ブリッジ社(中国)
Vs 対
概要
この研究は、B16、LLC、およびRenCa細胞に対するSCV−07の体外細胞毒性効果を評価するために行なわれた。
【0162】
SCV−07または陽性対照薬物(すなわちDTIC、5−Fu、およびシスプラチン)の存在下で、B16、LLC、またはRenCa細胞を、ブランク対照を含む12種の異なる濃度で、96ウェルのプレートで培養した。SCV−07の濃度は、以前の体内研究の有効投与量から近似された血漿濃度に基づいて選択した。5−Fuおよびシスプラチンの濃度は、文献で報告されたそれらのそれぞれのIC50値によって選択した。SCV−07および陽性対照薬物の培養時間は、24〜72時間までさまざまであった。細胞増殖に対する薬物の抑制効果は、MTT法によって判断した。
【0163】
5−Fuおよびシスプラチンの治療は、対応する細胞株において著しい細胞毒性効果をもたらした。B16細胞の増殖を抑制する5−FuについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて0.26、0.38、および0.26μg/mLであると概算された。RenCa細胞では、5−FuについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて0.03、0.04、および0.04μg/mLであると概算された。LLC細胞の増殖を抑制するシスプラチンについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて3.26、3.07、および3.10μg/mLであると概算された。SCV−07は、すべての試験濃度(0.05〜100μg/mL)で、培養されたB16、LLC、およびRenCa細胞において培養増殖を抑制しなかった。SCV−07についてのIC50値は、その濃度−抑制曲線の不適合度のため、得られなかった。
【0164】
結論として、この研究は、SCV−07が、培養されたB16、LLC、およびRenCa腫瘍細胞に対する体外細胞毒性効果を有してないことを実証した。
【0165】
前書き
この発明の目的は、B16、LLC、およびRenCa細胞に対するSCV−07の体外細胞毒性効果を評価することであった。
【0166】
SCV−07は免疫調節剤である。マウスの皮下に移植された腫瘍細胞(B16、LLC、またはRenCa)の成長を抑制することが、以前の体内研究において既に実証されている(1-3)。この研究では、これらの腫瘍細胞株に対するSCV−07の体外細胞毒性効果を評価した。
【0167】
SCV−07または陽性対照薬物(すなわちDTIC、5−Fu、もしくはシスプラチン)の存在下で、B16、LLC、およびRenCa細胞を、96ウェルのプレートで培養した。異なる細胞株の薬物の培養時間は、24〜72時間までさまざまであった。細胞増殖の抑制の評価には、MTTアッセイを使用した。
【0168】
材料および方法
材料
SCV−07
SCV−07(ロット番号RR002101)がスポンサーによって提供された。8.4mLの滅菌ダルベッコのPBS(インビトロゲン(Invitrogen)、カタログ番号14190−144)に4.2mgのSCV−07を溶解することによって、0.5mg/mLの濃度のSCV−07の貯蔵液を調製した。次に貯蔵液を滅菌ろ過し、2〜8℃で貯蔵し、錫箔を用いて光から保護した。使用前、貯蔵液を、培地を用いてさまざまな濃度にさらに希釈した。
【0169】
DTIC
DTICをシグマ社(Sigma)から購入した(カタログ番号D2390、ロット番号026K1363)。500μLの0.1N HCLに8.8mgのDTICを溶解することによって、10mg/mLの貯蔵液を調製し、次に380μLのミリQ水を添加した。貯蔵液を一旦調製すると、滅菌ろ過し、2〜8℃で貯蔵し、錫箔を用いて光から保護した。使用前、貯蔵液を、培地を用いてさまざまな濃度にさらに希釈した。
【0170】
5−Fu
5−Fuをシグマ社から購入した(カタログ番号F6627、ロット番号125K1499)。9.6mLの滅菌ダルベッコのPBS(インビトロゲン、カタログ番号14190−144)に4.8mgの5−Fuを溶解することによって、0.5mg/mLの貯蔵液を調製した。貯蔵液を一旦調製すると、滅菌ろ過し、2〜8℃で貯蔵し、錫箔を用いて光から保護した。使用前、貯蔵液を、培地を用いてさまざまな濃度にさらに希釈した。
【0171】
シスプラチン
シスプラチンをQilu製薬会社から購入した。10mLの滅菌ダルベッコのPBS(インビトロゲン、カタログ番号14190−144)に10mgのシスプラチンを溶解することによって、1mg/mLの貯蔵液を調製した。貯蔵液を一旦調製すると、滅菌ろ過し、2〜8℃で貯蔵した。使用前、貯蔵液を、培地を用いてさまざまな濃度にさらに希釈した。
【0172】
他の材料
MTTをシグマ社から購入した(カタログ番号M2128)。FBS,ペニシリン−ストレプトマイシンDMEM、およびRPMI−1640媒質を、インビトロゲン社から購入した。ファルコン(Falcon)(登録商標)96ウェル平底プレート(BD、カタログ番号353072)は、フィッシャー・サイエンティフィック(Fisher Scientific)社から購入した。
試験システム
B16細胞株
B16メラトーマ細胞株を、中国医学科学院、上海細胞バンク(Shanghai Cell Bank)から入手した。これらの細胞を、10%のFBS、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補充されたRPMI−1640媒質において培養した。
【0173】
LLC細胞株
LLC細胞株を、中国医学科学院、上海細胞バンクから入手した。これらの細胞を、10%のFBS、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補充されたDMEMにおいて培養した。
【0174】
RenCa細胞株
RenCa細胞株を、中国軍事医学科学院(Chinese Military Academy of Sciences)から入手した。これらの細胞を、10%のFBS、100単位/mLのペニシリン、および100μg/mLのストレプトマイシンが補充されたRPMI−1640媒質において培養した。
【0175】
MTTアッセイ
VBI SOP 65.026に従って、MTTアッセイを行なった。簡潔に、上述の対応する培地を用いて、B16、LLC、またはRenCa細胞の懸濁液を調製した。ファルコン(登録商標)96ウェル平底プレートの各ウェルに、100μLの細胞懸濁液を播種した。播種密度は、10000細胞/ウェル(B16およびLLC細胞株)、または7000細胞/ウェル(RenCa細胞株)であった。プレートに25μLの薬物を添加し、次に37℃で5%のCO2を用いて、予め規定された時間、プレートを培養することにより、薬物処理を行なった(薬物処理の詳細については、表4.1を参照されたい)。薬物を、ブランク対照を含む12種の濃度で処理し、各濃度を4通りに試験した。SCV−07の濃度は、以前の体内研究の有効投与量から近似された血漿濃度に基づいて選択した。5−Fuおよびシスプラチンの濃度は、対応する細胞株について文献で報告されたそれらのそれぞれのIC50値によって選択した。薬物処理後、MTTを1mg/mLの最終濃度で各ウェルに添加し、細胞培養を4時間続けた。MTT培養の終了時、SDSおよびDMFからなる抽出緩衝液をプレートに添加して、生存細胞によってMTTから変換されたホルマザンを可溶化した。次に、各ウェルのODを、テカンインフィニット(Tecan Infinite)M200プレートリーダを用いて570nmで測定した。
【0176】
【表45】

【0177】
データ分析
平均およびSDの計算
平均およびSDの計算のために、生のODデータをマイクロソフトエクセルにインポートした。
【0178】
IC50の計算
細胞増殖を抑制するためのIC50を、プリズム5.01(グラフパッド・ソフトウェア社(GraphPad Software, Inc.))を用いて計算した。細胞の死滅をもたらした薬物の濃度を、IC50の決定から除外した。以下の式を用いることにより、IC50を概算した。
【0179】
【数7】

【0180】
ここで、Xは薬物の濃度を表わし、Yは対応するODを表わす。Bottomは(細胞成長の最大抑制に対応する)理論的に最も低いODを表わし、一方、Topは理論的に最も高いODを表わす。IC50は、50%の反応を生み出す薬剤の濃度を表わす。X値およびY値をすべて入力すると、Bottom、Top、およびIC50の値が、そのプログラムを介し、内蔵の抑制モデル(すなわちLog[抑制因子]対反応モデル)に適合させることによって自動的に求められた。
【0181】
結果
B16細胞に対するSCV−07の効果
B16細胞の増殖に対するSCV−07および陽性対照薬物の効果を測定した。計算されたIC50値を表4.2に列挙する。生データならびに計算された平均およびSDを付録4.1〜4.4に示す。SCV−07の濃度−抑制曲線は本質的に平坦であり、B16細胞に対するSCV−07の細胞毒性効果(すなわち細胞増殖の抑制)がないことを表わしている。DTICは当初、陽性対照として使用された。しかしながら、細胞毒性効果はより高い濃度(すなわち250および500μg/mL)でのみ顕著であり、IC50は、曲線が収束していないため、定められなかった。これはおそらく、肝細胞に依存した活性化がDTICにないことによるものである。5−Fuについては、0.2〜20μg/mLの濃度範囲で、細胞成長の抑制が観察された。50および100μg/mLで細胞死滅が引起された。それにより、これら2つの濃度はIC50分析から除外された。5−Fuについて、IC50値は、3つのアッセイにおいて0.26、0.38、および0.26μg/mLであると判断された。これに対し、SCV−07については、IC50値は、その濃度−抑制曲線の不適合度のため、得られなかった。
【0182】
【表46】

【0183】
LLC細胞に対するSCV−07の効果
LLC細胞の増殖に対するSCV−07およびシスプラチン(陽性対照薬物)の効果を測定した。計算されたIC50値を表4.3に列挙する。生データならびに計算された平均およびSDを付録4.5〜4.7に示す。SCV−07の濃度−抑制曲線は本質的に平坦であり、LLC細胞における細胞毒性がないことを表わしている。これに対し、シスプラチンについては、1.0μg/mL以上の濃度で細胞毒性効果が観察された。シスプラチンについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて3.26、3.07、および3.10μg/mLであった。一方、SCV−07については、IC50値は、その濃度−抑制曲線の不適合度のため、得られなかった。
【0184】
【表47】

【0185】
RenCa細胞に対するSCV−07の効果
RenCa細胞の増殖に対するSCV−07および5−Fu(陽性対照薬物)の効果を測定した。計算されたIC50値を表4.4に列挙する。生データならびに計算された平均およびSDを付録4.8〜4.10に示す。SCV−07の濃度−抑制曲線は本質的に平坦であり、RenCa細胞におけるSCV−07の細胞毒性がないことを表わしている。一方、5−Fuについては、0.05〜10μg/mLの濃度範囲で細胞毒性効果が観察された。20.50、および100μg/mLで細胞死滅が引起された。それにより、これら3つの濃度はIC50分析から除外された。5−FuについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて0.03、0.04、および0.04μg/mLであった。これに対し、SCV−07については、IC50値は、その濃度−抑制曲線の不適合度のため、得られなかった。
【0186】
【表48】

【0187】
結果および論議
5−Fuおよびシスプラチンの治療は、対応する細胞株において細胞増殖の著しい抑制をもたらし、試験化合物の潜在的な細胞毒性を判断するのにこのアッセイを使用する正当性を認めている。B16細胞の増殖を抑制する5−FuについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて0.26、0.38、および0.26μg/mLであると概算された。RenCa細胞では、5−FuについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて0.03、0.04、および0.04μg/mLであると概算された。LLC細胞の増殖を抑制するシスプラチンについてのIC50値は、3つのアッセイにおいて3.26、3.07、および3.10μg/mLであると概算された。DTICについては、より高い濃度(すなわち250および500μg/mL)で細胞毒性効果は顕著であった。より低い濃度でははっきり認められるほどの細胞毒性がDTICにはないことは、アッセイには含まれていなかった肝細胞によって、DTICのより有毒な代謝物への代謝的変換が要求されていることと一致する。
【0188】
陽性対照薬物による顕著な細胞毒性とはまったく対照的に、SCV−07は、培養されたB16、LLC、またはRenCa細胞において培養増殖の抑制をもたらさなかった。SCV−07についてのIC50値は、その濃度−抑制曲線の不適合度のため、得られなかった。
【0189】
SCV−07に細胞毒性効果がないことは、免疫系の活性化を通して効果を発揮する典型的な免疫調節剤についての作用のメカニズムと一致する。しかしながら、SCV−07から由来する代謝物の細胞毒性効果はまだ突き止められていないことに留意すべきである。DTICと同様に、SCV−07の肝細胞によって中和される代謝活性化は、細胞毒性効果の必要条件かもしれない。SCV−07代謝物を用いた、または肝細胞および腫瘍細胞からなる細胞培養系を用いた研究は、腫瘍治療に対するSCV−07の作用のメカニズムにおける細胞毒性の役割をさらに定義するのに役立つかもしれない。
【0190】
結論として、この研究は、現在の実験条件下では、SCV−07が、培養されたB16、LLC、およびRenCa腫瘍細胞に対して体外細胞毒性効果を有していないことを実証した。
【0191】
【表49】

【0192】
【表50】

【0193】
【表51】

【0194】
【表52】

【0195】
【表53】

【0196】
【表54】

【0197】
【表55】

【0198】
【表56】

【0199】
【表57】

【0200】
【表58】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者における、肺ガン、その転移、または肺における肺外部のガンからの転移を治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるための、もしくは、肺ガン細胞の成長、その転移、または肺における肺外部のガン細胞からのガン細胞の転移を治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるための治療の方法であって、有効量の式Aの免疫調節剤化合物を被験者に投与するステップを含み、
【数1】

式中、nは1または2であり、Rは水素、アシル、アルキル、またはペプチド断片であり、Xは芳香族または複素環アミノ酸もしくはその誘導体であり、被験者における、前記肺ガン、その前記転移、または肺における肺外部のガンからの前記転移を治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるようにし、もしくは、前記肺ガン細胞の成長、その前記転移、または前記肺における肺外部のガン細胞からのガン細胞の前記転移を治療し、少なくとも部分的に予防し、抑制し、または減少させるようにする、方法。
【請求項2】
XはL−トリプトファンまたはD−トリプトファンである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記化合物はSCV−07である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記化合物は、約0.001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記化合物は、約0.01〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.00001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.01〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記化合物はSCV−07であり、約0.001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物はSCV−07であり、被験者の体重1kgにつき約0.00001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記治療は原発性肺ガン用である、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記化合物は、約0.001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記化合物は、約0.1〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.00001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.01〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記治療は肺ガン転移用である、請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記化合物は、約0.001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物は、約0.1〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.00001〜1000mgの範囲内の投与量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記化合物は、被験者の体重1kgにつき約0.01〜100mgの範囲内の投与量で投与される、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記投与量は約10mgである、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記投与量は約10mgである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
式Aの前記化合物は、放射線および化学療法製剤のうち、少なくとも1つの投与を追加的に含む治療計画において投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記化学療法製剤は、シスプラチン、5−FuおよびDTICのうち、少なくとも1つを含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−536854(P2010−536854A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521876(P2010−521876)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/009932
【国際公開番号】WO2009/025830
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(593199563)サイクローン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (17)
【氏名又は名称原語表記】SciClone Pharmaceuticals,Inc.
【住所又は居所原語表記】950 Tower Lane, Suite 900, Foster City, California 94404, United States of America
【Fターム(参考)】