説明

肺疾患の感染性を低下させる処方物

例えば、ヒトにおけるウイルス感染、特に結核、SARS、インフルエンザおよびRSウイルス、ならびに動物における口蹄疫などの疾患の感染性を処置または低下させるため、またはアレルギーもしくは他の肺疾患の症状を低減させるための肺送達のための処方物を開発した。肺投与のための処方物は、等張な生理食塩水および必要に応じてキャリアであり得る、肺粘液管壁流体の表面張力および表面弾性などの物理的特性を顕著に変化させる物質を含む。その処方物は、溶液、懸濁液、エアロゾルまたは粉末として投与され得、その粒子は、基本的に浸透圧的に活性な溶質から構成される。薬物、特に抗ウイルス薬または抗生物質が必要に応じて処方物に含有され得る。これらは、処方物と一緒に、または処方物に組み入れられて投与され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2004年6月14日出願の米国仮特許出願第60/579,425号、2004年5月19日出願の米国仮特許出願第60/572,631号、2004年4月21日出願の米国仮特許出願第60/564,189号、2004年4月7日出願の米国仮特許出願第60/560,470号、2004年3月5日出願の米国仮特許出願第60/550,601号、および2004年11月17日出願の米国仮特許出願第10/990,996号の優先権を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、バイオエアロゾル吐出(exhalation)の頻度を減少させるための処方物およびシステムの分野内にある。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
ウイルス感染および細菌感染は、特に呼吸によって伝播する場合、高い伝染性を有することが多い。現在はコロナウイルスによって引き起こされることが公知である重症急性呼吸器症候群(「SARS」)に関する最近の報告は、感染が空気接触を介して伝染する場合、感染がいかに迅速に拡散し得るかの証拠である。インフルエンザのような他の疾患は、空気接触により拡散し、迅速に大流行に達し、高齢の集団および免疫無防備な集団に多数の死者が出る。
【0004】
SARSは、最近アジア、北アメリカおよびヨーロッパで報告された呼吸性疾患である。2003年4月20日の時点においてSARSの疑いのある症例が約198例、およびSARSの可能性のある症例が38例米国で報告されている。一般に、SARSは、100.4°F(>38.0℃)より高い熱を伴なって発症する、他の症状としては、頭痛、全身の不快感および身体の疼痛が挙げられ得る。軽い呼吸器の症状を経験するヒトもいる。2〜7日後、SARS患者は、乾性の咳を発症し、呼吸障害を有し得る。
【0005】
SARSは、主にヒトとヒトとの近い接触により伝播するようである。ほとんどのSARSの症例は、SARSを有するヒトの看護をしたヒトかまたはSARSを有するヒトと一緒に住んでいたヒトに関係していたか、またはSARSを有するヒト由来の感染性の物質(例えば、呼吸器の分泌物)と直接接触していた。SARSが伝播され得る可能性のある経路としては、感染性の液滴で汚染した他のヒトの皮膚または物体に触れ、次いで眼、鼻または口に触れることが挙げられる。このことは、SARSにかかったヒトが咳またはくしゃみをし、液滴がそのヒト自身、他のヒトまたは近くの表面に落ちるときに起こり得る。SARSは、空気を介して、または現在知られていない他の方法により、より広く拡散され得る可能性もある。現時点では、支持的な療法以外にSARSの処置または予防の手段は存在しない。
【0006】
TBすなわち結核は、細菌Mycobacterium tuberculosisにより引き起こされる疾患である。この細菌は、身体のいずれの部分も攻撃し得るが、通常は肺を攻撃する。TBは、かつては米国での主な死因であった。1940年代には、科学者は、TBを処置するために現在使用されているいくつかの薬物の内の最初のものを発見した。結果として、TBは米国ではゆっくりと消滅し始めた。最近TBは、復活した。1985年と1992年との間に、TBの症例の数が増加し、2000年だけで米国では16,000より多い症例が報告された。
【0007】
TBは、1人のヒトから別のヒトへ空気を介して伝播する。細菌は、肺または喉にTBを有するヒトが咳またはくしゃみをする場合に空気中に分散される。近くのヒトは、これらの細菌の中で呼吸し、感染し得る。
【0008】
Mycobacterium tuberculosisがいる中でヒトが呼吸する場合、細菌は、肺の中に定着し、増殖し始め得る。細菌は、そこから血液を介して身体の他の部分(例えば、腎臓、脊椎および脳)に拡散し得る。TBを有するヒトは、毎日のように接触するようになるヒトにTBを拡散するようである。潜伏したTBを感染するヒトは、病気を自覚せず、無症候性であり、TBを拡散し得ないが、将来のある時点でTBを発症し得る。細菌は、感染性疾患の唯一の源ではない。ウイルスはまた高度に伝染性であり、封じ込め以外に有効な処置は存在しない。例えば、RSウイルス(RSV)は、軽い風邪に似た症状を成人および年上の健康な小児に引き起こす非常に一般的なウイルスである。二歳までに、ほとんど全ての乳児は、RSVに感染する。RSVは、乳児、特に早産の乳児、心臓疾患もしくは肺疾患を有する乳児または免疫無防備状態の乳児に重篤な呼吸性の感染を引き起こし得る。
【0009】
急性呼吸器疾患の季節的な発生は、秋に起こり、春に終わる。RSVは、物理的接触によって容易に拡散する。伝染は、通常フォーマイト(foamite)と呼ばれる汚染した分泌物と接触することによる。この分泌物は、非常に小さい液滴または液滴が触れた物体を含み得る。RSVは、ヒトの手の上では、半時間以上生存し得る。このウイルスはまた、調理台上で5時間まで生存し得、使用したティッシュ上で数時間生存し得る。RSVは、多くの場合、多人数の世帯および介護施設で非常に迅速に伝播する。毎年、最大125,000人の乳児が、重篤なRSV疾患に起因して入院し、これらの乳児の約1〜2%が死亡する。RSウイルス細気管支炎を有する乳児における外因性の界面活性物質の補充は有益であった(非特許文献1)。処置の原則的な手段は、支持的な療法のままであり、隔離以外に拡散を制限する手段は、存在しない。
【0010】
インフルエンザは、有効な処置が存在しない別の一般的なウイルス感染であり、封じ込めが疾患の伝播を制限するための唯一の選択肢である。インフルエンザは、3種のウイルス−インフルエンザA型、インフルエンザB型およびインフルエンザC型により引き起こされる。A型は通常、大きな発生の原因であり、最も変異しやすい。A型ウイルスの新規の株が定期的に発生し、数年毎に新しい流行を引き起こす。B型の発生はより小さく、C型は通常は軽い疾患を引き起こす。米国では、インフルエンザA型およびインフルエンザB型による感染により毎年20,000人が死亡し、100,000人以上が入院する。インフルエンザは、ヒトがくしゃみまたはせきをするときに形成される伝染性の液滴によりヒトからヒトに伝染する。6ヶ月と17歳との間の年齢の約800万人の小児および青年が、インフルエンザに関連する合併症の危険性を増加させる一種以上の病状を有する。このような小児としては、心臓または肺の慢性障害(例えば、ぜん息および.嚢胞性線維症)を有する小児、慢性代謝病(糖尿病が挙げられる)、腎不全、鎌状赤血球貧血または免疫抑制に起因して前年に定期的医学的追跡または入院を必要とした小児が挙げられる。
【0011】
既知のインフルエンザを有するヒトに曝露された予防接種していない個体については、特に曝露された個体が危険因子を有する場合、2週間を越える抗ウイルス薬物の見込みの使用および予防接種が疾患の予防を補助し得る。高い危険性を有さないヒトにおける軽い疾患については、インフルエンザの処置は、多くの場合、単なる支持的な療法であって、ベッドでの療養、筋肉の痛みおよび疼痛のための鎮痛薬および流体の摂取の増加が挙げられる。処置は通常小児には必須ではないが、疾患が初期であると診断され、患者が、より重篤な感染に進行する危険性がある場合、処方され得る。高い危険性の群の個体(高齢、免疫抑制、慢性の心臓、肺もしくは腎臓の状態)の間では、インフルエンザは、非常に重篤になり得、合併症または死をもたらし得る。
【0012】
呼吸器感染の流行は、ヒトに限定されない。口蹄疫ウイルス(FMDV)は、口蹄疫(FMD)の病因となる因子であり、この疾患は、ウシ、ブタおよび他の偶蹄類動物の疾患である。FMDは、感染した動物の舌、鼻、鼻口部および蹄冠帯上の小胞の形成によって特徴づけられる。いくつかの固有の特徴は、このウイルスを今日世界中で最も経済的に甚大な被害をもたらす疾患の1つにする。このウイルスが接触およびエアロゾルによって伝染され得る容易さは、その感染を惹起する強い能力と合わせて、群れの中の全てではないがほとんどの動物がFMDと接触することをほぼ確実にする。感染した動物の組織および器官内でのFMDVの長期の生存は、特に冷却する場合、食品チェーンを介した国内および国際的な伝染の機会を与える。複数の血清型および多数のサブタイプが、ワクチンの有効性および信頼度を低減させる。予防接種した動物およびFMDから回復した動物における保菌者の発生の可能性が新しい発生のさらなる潜在的な供給源を提供する。これらの特徴は、世界中の家畜の作業に大きな経済的な影響を有し得る。英国の家畜における口蹄疫(FMD)流行は、現在も懸念事項のままであり、これまでに冒されていない領域になお新しい症例が生じている(非特許文献2)。疾患伝播の動力学的モデルで得られたパラメータの推定値は、拡張した選別プログラムが、流行の制御をある程度達成するのに必須であったことを示すが、最も効率的な方法が発生の初期に使用されたのに比例して流行が実質的に低減したことを実証する。
【0013】
バイオエアロゾル吐出を介したウイルスの発散は、別の動物またはヒトにより吸入される宿主からの感染の伝達の1つの機構である。制御されていないウイルスの発散が家畜を襲い得る壊滅的な結果が、英国における口蹄疫の発生において見られ、2030の確認された症例が4百万頭の動物の強制的な屠殺という結果を生じた。近年、疾患の突然の発生が米国の家畜に生じるバイオテロリズムおよび類似した危険性の脅威に対する注意がよりなされている。
【0014】
空気伝搬感染は、病原体の伝染の主要な経路の1つである。肺および鼻腔に由来する粘液の液滴からなるエアロゾルが、ヒトまたは動物が咳をするかまたは単に呼吸するときに生成される。これらのバイオエアロゾルは、曝露されたヒトまたは動物による吸入の際に疾患を伝染する病原体を含み得る。さらに、上気道にて生成された呼吸可能な病原体バイオエアロゾルは、宿主によって再度呼吸され得、悪化した疾患の結果を有する実質的感染を生じる。
【0015】
David Edwardsらの特許文献1は、バイオエアロゾルの呼息を抑制する界面活性物質のような物質を送達することによる、吸入された感染物質の伝播を低減するための方法を記載する。この技術は、肺の中の内因性の界面活性物質流体の表面または他の物理的特性を変化させることに基づいて作用し、それにより吐出されるバイオエアロゾル粒子をより少なくする。バイオエアロゾルの形成および/または拡散を制限する他の手段を有することが望ましい。
【特許文献1】国際公開第03/092654号パンフレット
【非特許文献1】Tibbyら、「Am J Respir Crit Care Med」、2000年10月、第162巻(4 Pt 1)、p.1251
【非特許文献2】Fergusonら、「Nature」、2001年、第414巻、第6861号、p.329
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って本発明の目的は、界面活性物質を肺に送達することなく、肺感染(特にウイルス感染または細菌感染)の伝播を低減するか制限するのに使用するための処方物を提供することである。
【0017】
本発明のさらなる目的は、肺感染(特にウイルス感染または細菌感染)の他の動物またはヒトへの伝播を低減するか制限するための処置の方法を提供することである。
【0018】
本発明のさらなる目的は、患者内での肺感染(特にウイルス感染または細菌感染)の伝播を低減するか制限するための処置の方法を提供することである。
【0019】
本発明のさらなる目的は、感染性を制限するためのヒトまたは動物の処置のための処方物を提供することである。
【0020】
本発明のなおさらなる目的は、エアロゾルを吐出する傾向が増強した動物またはヒトを診断するために、吐出された粒子の数および大きさの測定のためのデバイスを製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
任意の経路による送達のための、疾患(例えば、ウイルス感染、特に、ヒトにおける結核、SARS、インフルエンザ、サイトメガロウイルスおよびRSV、ならびに動物における口蹄疫)の感染性を低下させるための処方物が開発された。一実施形態において、投与のための処方物は、非界面活性物質溶液であり、内因性界面活性物質流体の希釈を介して、肺の粘液性管壁流体(mucus lining fluid)の物理的特性(例えば、表面張力、表面弾性、および体積粘性を変化させる。エアロゾル化された物質は、等張生理食塩溶液、高張生理食塩溶液、または浸透圧的に活性な物質を含有する他の溶液であり得る。上記処方物は、粉末として投与され得、この粉末は、本質的に、内因性の界面活性物質流体を希釈する塩または浸透圧的に活性な物質から構成される。上記エアロゾルは、溶液、懸濁液、スプレー、ミスト、蒸気、液滴、粒子、または乾燥粉末であり得、例えば、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶、または連続噴霧器を使用する。上記エアロゾルは、好ましくは、水溶液であり、より好ましくは、等張生理食塩水である。あるいは、上記エアロゾルは、特に有効な浸透圧的に活性な物質(マンニトールなど)含み得る。処方物は、エアロゾル送達のための有機懸濁液または有機溶液であり得る。上記処方物は、蒸気であり得る。代表的な塩または糖の濃度は、5%溶液〜6%溶液までの範囲である。好ましい実施形態において、上記処方物は、粉末またはエアロゾルのいずれかとして、好ましくは、感染、アレルギーもしくは喘息発作の直前、または直後に投与される。上記処方物は、吐出された粒子状物質(特に感染性の粒子状物質)を低減または防止するために投与される。上記処方物は、肺の気道を内張りする(lining)液体における表面不安定性を低減する(すなわち、痰を生じることなく、肺流体からの液滴形成の速度を弱める)のに十分な量で投与される。実施例は、適切な処方および有効量を示す。一実施例は、12分までの期間にわたって、好ましくは2分以上の期間にわたって噴霧された生理食塩水の投与の、ウシにおいて吐出粒子を低減する効力を示す。
【0022】
多くの特長に関して動物またはヒトをスクリーニングする方法としては、呼気と吸気の測定、吐出粒子数の評価、吐出粒子サイズの評価、ならびにサンプリング中の一回換気量および呼吸頻度の評価が挙げられ、この方法は、エアロゾルを吐出する傾向を増加させた動物またはヒトの診断を補助するために考案された。1ミクロン以下のサイズの粒子を正確にカウントするのに十分な感度を有するデバイスが設計され、組み立てられた。このデバイスは、持ち運びでき、電池で作動する。粒子数および粒子サイズは、赤外線分光光度計、レーザー回折、または光散乱によって決定され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(発明の詳細な説明)
肺粘膜線毛クリアランスは、第一の機構であり、この機構によって、気道は、それを覆う液体フィルム中に存在する粒子から保護して清浄に保たれる。誘導気道は、喉頭に向かって粘液層を進めるように波打つ線毛性の内皮によって内張りされている。これによって、24時間、最下部の線毛領域から気道が清浄にされる。流体コーティングは、水、糖、タンパク質、糖タンパク質、および脂質から構成される。これは、気道上皮および粘膜下腺において生成され、そして層の厚さは、ヒト、ラット、およびモルモットにおいては、気管における数ミクロンから遠位気道における約1ミクロンの範囲に及ぶ。
【0024】
肺を清浄に保つための第二の重要な機構は、空気流から肺を通って、粘液コーティングまで移動する運動量移動(momentum transfer)を介するものである。咳は、この運動量移動を増加させ、したがって身体によって、過剰の粘液の除去を補助するために使用される。多くの疾患状態に関連する粘液過剰分泌のときに起こるように、線毛の波打ちのみによって粘液が適切に除去され得ない場合、これが重要となる。強い咳の間、200m/秒程度の空気速度が、発生され得る。このような空気速度においては、粘液層における不安定な正弦波状の撹乱の発生が観察されている。この撹乱は、空気から粘液への運動量移動の増加をもたらし、結果として、肺からの粘液クリアランスの速度を加速する。実験は、この撹乱が、空気速度が、ある臨界値を超える場合に開始されることを示した。これは、フィルム厚、表面張力、および粘度の働きである(M.Gad−El−Hak,R.F.Blackwelder,J.J.Riley.J.Fluid Mech.(1984)140:257−280)。理論的予測、および粘液様フィルムを使用した実験は、肺において波の撹乱を開始するための臨界速度が、5〜30m/秒の範囲であることを示唆する。
【0025】
PapineniおよびRosenthal(J.Aerosol Med.,1997,10(2):105−116)は、標準的な口および鼻の呼吸の間、または咳の間、正常なヒト被験体は、数十〜数百の液体バイオエアロゾル液滴を吐くことを示した。主に、吐出されたバイオエアロゾル液滴は、1ミクロン未満の直径を有した。咳は、非常に多くの粒子を生じることが示されたが、平均吐出粒子サイズは、依然として、1ミクロンよりもかなり小さかった。これらの粒子の大多数は、ほとんどの吸入性病原よりも大きい(すなわち150nmよりも大きい)。例えば、いくつかの一般的な吸入性病原は、以下の範囲に特徴的サイズを有する:結核菌、1,000〜5,000nm;インフルエンザ、80〜120nm;麻疹、100〜250nm;トリポックス、120〜200nm;FMD、27〜30nm。
【0026】
(I.処方物)
バイオエアロゾル粒子は、気道中の内因性界面活性物質層における不安定性によって形成される。この不安定性は、肺における内因性界面活性物質濃度に依存する。この界面活性物質濃度は、内因性界面活性物質プールを、等張性生理食塩水の送達(しかし、被験体の喀出を引き起こすため、それほど大量ではない)、または高張生理食塩水(これは、肺の気道を内張りする細胞に、水の生成を介して、内因性界面活性物質層をさらに希釈させる)の送達のいずれかを介して単純に希釈することによって変更され得る。
【0027】
本明細書において記載される処方物は、口腔咽頭部または鼻腔からの吐出粒子形成を防止または低減することによって、吐出エアロゾルを低減させるのに有効である。肺の管壁流体の物理的特性を変更するために好ましいエアロゾル溶液は、等張生理食塩水である。生理食塩水は、少量の治療的に活性な薬剤(例えば、β−アゴニスト、コルチコステロイドもしくは抗生物質)とともに、長時間、慢性的に肺に送達される。例えば、VENTOLIN(登録商標)吸入溶液(GSK)は、喘息および運動誘発性気管支痙攣症状の慢性処置において使用される硫酸アルブテロール溶液である。噴霧用VENTOLIN(登録商標)溶液は、1.25〜2.5mgの硫酸アルブテロール(0.25〜0.5mLの水溶液中)を滅菌正常生理食塩水に混合して3mLの総容量を達成することによって、(患者によって)調製される。VENTOLIN(登録商標)噴霧による肺への生理食塩水の送達に伴う副作用は(噴霧時間は、5分〜15分の範囲であり得るが)考えられない。生理食塩水はまた、喀出を誘発するためにより大量で送達される。多くの場合、これらの生理食塩水溶液は、高張である(0.9%より高い濃度の塩化ナトリウム、多くの場合、5%程度)、そして一般的に、これらは、20分間まで送達される。
【0028】
肺における内因性界面活性物質流体の物理的特性(例えば、表面張力)は、生理食塩水溶液の投与によって、ならびに他の物質(例えば、界面活性物質)を含む生理食塩水溶液の投与によって、変更され得ることが見出された。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「エアロゾル」は、粒子の微細なミスト(代表的に、直径10ミクロン未満)の任意の調製物をいう。これは、溶液中または懸濁液中にあり得る。水性処方物エアロゾル粒子の好ましい平均直径は、約3ミクロン(例えば、0.1ミクロンと30ミクロンとの間、最も好ましくは、1ミクロンと10ミクロンとの間)である。エアロゾルは、溶液(例えば、水溶液、最も好ましくは、生理食塩水溶液)のみから構成され得る。あるいは、エアロゾルは、水性懸濁液または乾燥粒子から構成され得る。塩または他の浸透圧的に活性な物質の濃度範囲は、約0.01重量%〜約10重量%の範囲であり、好ましくは、0.9%〜約10%の間である。
【0030】
(A.浸透圧的に活性な物質)
多くの物質が浸透圧的に活性であり得る。これらの物質としては、二成分塩(binary salt)(例えば、塩化ナトリウム)もしくは他の任意の種類の塩、または糖(例えば、マンニトール)が挙げられる。浸透圧的に活性な物質は、通常それらのイオン化およびおそらくサイズに起因して、容易に細胞膜を透過せず、したがって隣接する細胞に浸透圧を及ぼさない。このような浸透圧は、細胞物質の物理的環境に必須であり、そしてこの圧力の調節は、細胞の内または外へ細胞が水をポンプ送りすることによって生じる。肺に送達される等張溶液は、通常、肺流体における浸透圧の不均衡を生ぜず、したがって、水および塩によって天然の内因性肺流体を単純に希釈する。高浸透圧性含有物の溶液(すなわち、高浸透圧性溶液)は、肺流体における高い圧力により、浸透圧の不均衡を生じる。このことは、細胞に、肺流体内に水をポンプ送りさせ、それによって、肺表面活性物質組成物をさらに希釈する。
【0031】
(B.活性成分)
本明細書において開示される処方物は、種々の分子(特に、抗ウイルス分子および抗感染分子であって、抗生物質、抗ヒスタミン薬、気管支拡張薬、鎮咳薬、抗炎症薬、ワクチン、アジュバント、および去痰薬が挙げられる)の送達のために、任意の投与経路で使用され得る。高分子の例としては、治療的、予防的、または診断的活性を有するタンパク質および高分子ペプチド、多糖類およびオリゴ糖、ならびにDNA核酸分子およびRNA核酸分子、ならびにそれらのアナログが挙げられる。核酸分子としては、遺伝子、相補的DNAと結合して転写を阻害するアンチセンス分子、およびリボザイムが挙げられる。好ましい薬剤は、抗ウイルス薬、ステロイド薬、気管支拡張薬、抗生物質、粘液産生インヒビター、およびワクチンである。
【0032】
好ましい実施形態において、活性薬剤の濃度は、約0.01重量%〜約20重量%の範囲である。より好ましい実施形態においては、活性薬剤の濃度は、0.9%〜約10重量%の間の範囲である。
【0033】
(II.投与のためのキャリアおよびエアロゾル)
キャリアは、溶液(液体処方物)を介する投与のためのものと、粒子(乾燥粉末処方物)を介する投与のためのものとに分けられ得る。
【0034】
(A.液体処方物)
気道への治療剤の送達のためのエアロゾルが開発されている。例えば、Adjei,A.およびGarren,J.Pharm.Res.,7:565−569(1990);ならびにZanen,P.およびLamm,J.−W.J.Int.J.Pharm.,114:111−115(1995)を参照のこと。これらは、代表的に、ネブライザーを介して、または定量吸入器(「MDI」)の使用を介して、圧力下で溶液または懸濁液を噴霧化することによって形成される。好ましい実施形態において、これらは、水性の溶液または懸濁液である。
【0035】
(B.乾燥粉末処方物)
気道の幾何学的形状は、肺内部の薬物分散に対する主要な障壁である。肺は、呼吸で吸い込まれた外来物質の粒子(例えば、塵)を捕捉するように設計されている。沈積の3つの基本的な機構が存在する。:埋伏、沈降、およびブラウン運動である(J.M.Padfield,1987:D.GandertonおよびT.Jones編、Drug Delivery to the Respiratory Tract,Ellis Harwood,Chicherster,U.K.)。埋伏は、粒子が、特に気道の枝において、気流内にとどまることができない場合に生じる。これらは、気管支壁を覆う粘液層に吸収され、粘液線毛作用によって排出されて浄化される。埋伏は、ほとんどの場合、直径5μmを超える粒子によって生じる。より小さな粒子(<5μm)は、気流内にとどまり得、肺のより深くへと移送され得る。沈降は、多くの場合、気流がより遅い下部呼吸器系において生じる。非常に小さな粒子(<0.6μm)は、ブラウン運動によって沈積し得る。これらのレジメは、望ましくない。なぜなら、沈積物は、肺胞へと標的化されることができないからである(N.WorakulおよびJ.R.Robinson,2002:Polymeric Biomaterials,第2版、S.Dumitriu編、Marcel Dekker.New York)。
【0036】
空気動力学的に軽い粒子についての吸入のための好ましい平均直径は、少なくとも5ミクロン(例えば、直径5ミクロンと30ミクロンとの間、最も好ましくは、直径3ミクロンと7ミクロンとの間)である。粒子は、選択された気道の領域(例えば、深部肺もしくは上気道)へ送達を局所化するために、適切な材料、表面粗さ、直径、およびタップ密度で製造され得る。例えば、上気道送達用には、より高密度またはより大きな粒子が使用され得る。同様に、投与において、異なるサイズの粒子(同じかもしくは異なる治療剤を提供する)が肺の異なる領域を標的するために投与され得る。
【0037】
本明細書中で使用される場合、語句「空気動力学的に軽い粒子」とは、約0.4g/cm未満の平均密度またはタップ密度を有する粒子をいう。乾燥粉末の粒子のタップ密度は、標準的なUSPタップ密度測定によって得られ得る。タップ密度は、外膜密度(envelope mass density)の標準的測定値である。等方性粒子の外膜密度は、粒子の質量を、それが封入され得る最小球外膜体積で割ったものとして規定される。低タップ密度の原因となる特徴としては、不規則な表面テクスチャーおよび多孔性構造が挙げられる。
【0038】
大きな粒子サイズを有する乾燥粉末処方物(「DPF」)は、流動特徴を改善されている(例えば、より凝集しにくい(Visser,J.,Powder Technology 58:1−10(1989))、エアロゾル化しやすい、そして潜在的に食作用を受けにくい。Rudt,S.およびR.H.Muller,J.Controlled Release,22:263−272(1992);Tabata,Y.,およびY.Ikada,J.Biomed.Mater.Res.,22:837−858(1988))。吸入治療のための乾燥粉末エアロゾルは、一般的に、主に5ミクロン未満の範囲の平均直径で生成されるが、好ましい範囲は、空気動力学的直径で、1ミクロンと10ミクロンとの間である。Ganderton,D.,J.Biopharmaceutical Sciences,3:101−105(1992);Gonda,I.「Physico−Chemical Principles in Aerosol Delivery」、Topics in Pharmaceutical Sciences 1991,Crommelin,D.J.およびK.K.Midha編、Medpharm Scientific Publishers,Stuttgart,pp.95−115(1992)。他の考えられる利点の中でも特に、大きな「キャリア」粒子(薬物を含まない)は、治療用エアロゾルとともに同時送達されて、効率的なエアロゾル化を達成するように補助する。French,D.L.,Edwards,D.A.およびNiven,R.W.,J.Aerosol Sci.,27:769−783(1996)。数秒〜数ヶ月の範囲の分解速度および放出速度を有する粒子が、当該分野で確立された方法によって設計および製造され得る。
【0039】
粒子は、浸透圧剤単独、または浸透圧剤と薬物、界面活性物質、ポリマー、もしくはそれらの組み合わせとの組合せで構成され得る。代表的界面活性物質としては、以下が挙げられる:L−α−ホスファチジルコリンジパルミトイル(「DPPC」)、ジホスファチジルグリセロール(DPPG)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホ−L−セリン(DPPS)、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン(DSPE)、1−パルミトイル−2−オレオイルホスファチジルコリン(POPC)、脂肪アルコール、ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、表面活性脂肪酸、ソルビタントリオレアート(Span85)、グリココレート、サーファクチン、ポリオキソマー(poloxomer)、ソルビタン脂肪酸エステル、チロキサポール、リン脂質、およびアルキル化糖。ポリマーは、以下の粒子特徴を最適化するように改造され得る:i)送達されるべき因子と、その因子の安定化および送達の際の活性の保持を提供するポリマーとの間の相互作用;ii)ポリマー分解の速度、したがって、薬物放出プロフィール;iii)表面特徴および化学的修飾を介した標的能力;ならびにiv)粒子多孔性。ポリマー粒子は、単一または二重エマルジョン溶媒蒸発(single and double emulsion solvent evaporation)、噴霧乾燥、溶媒抽出、溶媒蒸発、相分離、単純コアセルベーション(simple coacervation)複雑コアセルベーション(complex coacervation)、界面重合、および当業者に周知の他の方法を使用して調製され得る。粒子は、当該分野で公知のミクロスフェアまたはマイクロカプセルを作製するための方法を使用して作製され得る。製造のための好ましい方法は、噴霧乾燥および凍結乾燥することによる方法である。この方法は、界面活性物質を含む溶液を使用する工程、この溶液を基材に噴霧して所望のサイズの液滴を形成させる工程、および溶媒を除去する工程を伴う。
【0040】
(III.気道への処方物の投与)
(A.投与方法)
気道は、大気と血流との間のガス交換に関与する構造である。肺は、ガス交換が起きる肺胞で最終的に終わる、分枝構造である。肺胞表面領域は、最大の呼吸器系であり、薬物の吸収が起きる場所である。肺胞は、線毛も粘液の覆い(blanket)もなく、薄い上皮によって覆われており、界面活性物質リン脂質を分泌する(J.S.PattonおよびR.M.Platz,1992,Adv.Drug Del.Rev.8:179−196)。
【0041】
気道は、上気道(口腔咽頭および喉頭を含む)、続いて、下気道(気管、それに続いて気管支および細気管支への分岐を含む)を含む。上気道と下気道とは、誘導気道と呼ばれる。次いで、末端細気管支は、最終的な呼吸帯(肺胞または深部肺)へとつながる呼吸細気管支へと分かれる。深部肺または肺胞は、全身薬物送達のための吸入性治療用エアロゾルの主な標的である。
【0042】
処方物は、代表的に、物理的性質(例えば、上気道の内因性流体の表面張力および粘度)を変化させ、それによって肺への送達を増強するため、および/または咳を抑制するため、および/または肺からのクリアランスを改善するための有効量を送達するために、個人に投与される。有効性は、以下に記載されるシステムを使用して測定され得る。例えば、生理食塩水は、正常な成人にたいして1グラムの容量で投与され得る。次いで、粒子の吐出が測定される。次いで、送達が、容量および粒子数を最小化するように最適化される。
【0043】
処方物は、定量吸入器(「MDI])、ネブライザー、エアロゾル化器を使用して、または乾燥粉末吸入器を使用して投与され得る。適切なデバイスは、市販されており、そして文献に記載されている。
【0044】
エアロゾル投薬、処方物、および送達システムは、例えば以下に記載されるように、特定の治療用途に対して選択され得る:Gonda,I.「Aerosols for delivery of therapeutic and diagnostic agents to the respiratory tract」、Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems,6:273−313,1990;およびMoren,「Aerosol dosage forms and formulations」:Aerosols in Medicine,Principles,Diagnosis and Therapy,Morenら編、Esevier,Amsterdam,1985。
【0045】
送達は、数種の方法のうちの1つによって達成される(例えば、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶、または連続噴霧器を使用する)。例えば、患者は、溶媒で予め懸濁された治療剤の乾燥粉末を混合し、次いでそれを噴霧し得る。予め霧状にされた溶液を使用し、投与される投薬量を調節し、そして懸濁液の損失の可能性を回避することが、より適切であり得る。霧状にされた後、エアロゾルを加圧し定量吸入器(MDI)を介して投与されるようにすることが可能であり得る。ネブライザーは、溶液または懸濁液から微細なミストを生成し、これは患者によって吸引される。Lloydらの米国特許第5,709,202号に記載されるデバイスが使用され得る。MDIは、代表的に、定量バルブを有する加圧されたキャニスターを備え、このキャニスターは、溶液または懸濁液、および噴霧剤で充填されている。溶媒そのものが噴霧剤として機能し得るか、または組成物は、噴霧剤(例えば、FREON(登録商標)(E.I.Du Pont De Nemours and Co.Corp.))と組み合わせられ得る。組成物は、キャニスターから送達される場合、加圧下で放出されることに起因して、微細なミストである。噴霧材および溶媒は、圧力の低減に起因して、全体的または部分的に蒸発し得る。
【0046】
代替的な実施形態では、処方物は、塩または浸透圧的に活性な物質の粒子の形態をとる。これらは、不活性な基質上かまたはその中で分散され、鼻および/または口ならびに吸入される処方物粒子上に配置される。不活性な基質は、好ましくは、生分解性かまたは使い捨て可能な織った布または不織布であり、そしてより好ましくは、この布は、セルロース型材料から形成される。1つの例は、現在市販されている組織であり、これらは、頻繁な使用の後の刺激を最小にするローションを含む。これらの処方物は、パッケージ化されてそして個々に市販され得るか、あるいは、ティッシュペーパーに類似したパッケージ中かまたは赤ちゃん用ウエットティッシュパッケージ中に存在し得る。これらは、溶液または懸濁液を伴う使用に容易に適合される。
【0047】
処置されるべき個体としては、感染の危険性がある個体、ウィルス性感染または細菌性感染を有する個体、アレルギー患者、喘息患者、および免疫無防備状態の患者または感染した患者とともに働いている個体が挙げられる。
【0048】
上記処方物は、ヒトまたは動物(例えば、競走馬、飼育している家畜、または捕えられた絶滅寸前の動物)へと投与され、ウィルスの発散による感染からこれらの動物を保護し得る。これは、ネブライザーシステムを水場の近くに配置し、そして動物が水場に近づくかまたは離れるかの何れかの際にエアロゾルの生成を引き起こすことによって、達成され得る。処方物は、動物が滑降斜面路を通ってかまたは囲い通って歩く際に、動物の上に噴霧され得るか、あるいは、噴霧トラックからかまたは空中散布型飛行機からでも噴霧され得る。殺虫剤を噴霧するために現在使用されている個々の電池動力付き噴霧器は、バイオエアロゾル処方物および/または散布を最小にするために動物に溶液を投与する使用に適合され得る。
【0049】
上記処方物は、ウィルスまたは細菌の発生の開始において、ヒトまたは動物に投与されて、流行レベルまで疾患が伝播することを防止し得る。FMD発生の半径10km以内の動物は、一般に、感染したと判断される。これらの動物は、その後、屠殺され、そして消毒される。このエアロゾルシステムは、この発生の半径10km区域内で、そしてさらに、発生の封じ込めを確実にするためにこの領域の外側の所定緩衝区域内で、直ちに動物に投与され得る。エアロゾルは、次いで、確実に成功させるのに必要である限り(すなわち、一次感染と症状の発現との間の標準的な期間を越えるまで)、投与され得る。
【0050】
上記処方物は、水環境を構築することによってヒトまたは動物に投与され得る。この場合において、ヒトおよび動物は、移動するか、または肺に十分に水分を与えるために十分な期間留まる。この状況は、ネブライザーまたはさらに加湿器の使用によって構築され得る。
【0051】
肺投与の参考文献で主に記載されているが、上記処方物は、吸入を介してか;非経口投与、経口投与、直腸投与、膣投与または局所投与か;あるいは眼の空間へ投与することによって、個々の動物またはヒトに投与され得ることが理解される。
【0052】
(IV.「過剰生産者(over producer)」をスクリーニングするための方法およびデバイス)
(A.方法)
エアロゾルを吐出する傾向が増強した動物またはヒト(本明細書中で、「過剰生産者」、「超生産者(super producer)」、または「超拡散者(superspreaders)」といわれる)の診断は、呼気および吸気の測定、吐出された粒子数の評価、吐出された粒子の大きさの評価、サンプリングの間の呼吸量および呼吸の頻度の評価、ならびにウィルスおよび細菌の感染性の評価を含む、多くの因子をスクリーニングすることによってなされ得る。吐出された粒子数の評価は、1分間あたり約10〜約120L(LPM)の呼吸流量で行われる。
【0053】
(B.デバイス)
サブミクロンサイズの粒子を正確に計数するのに十分な感度を有するデバイスを、実施例に記載されるように、設計し組み立てた。好ましくは、このデバイスは、携帯型であり、そして電池で作動する。粒子数および粒子の大きさの測定は、赤外分光法、レーザー回折、または光散乱によってなされ得る。
【0054】
(バイオエアロゾル伝播のインビトロでの試験)
以下のインビトロでの方法は、生理食塩水または他の浸透圧的に活性な物質の溶液を送達することの、気道内でのバイオエアロゾルの生成への有効性を試験するために使用され得る。「咳機械(cough machine)」(M.King、J.M.Zahm、D.Pierrot、S.Vaquez−Girod、E.Puchelle. Biorheology.(1989)26:737−745)は、気道の擬似粘液管壁(simulated mucus lining)で経験した気流速度を制御するために使用される。標識したナノ粒子は、流体中に組み入れられ得、そして、フィルターが、生成されたエアロゾルの飛沫を収集するために、咳機械の出口に配置された。種々の化合物が、ずり粘度、伸長粘度(elongational viscosity)、および表面張力を変化させるために添加され得る。試験は、種々の気流速度(25m/s以下、25m/sを含む、25m/s以上)にて繰り返される。
【0055】
(毒性研究)
投与されるべき化合物は、無毒性について試験され得る。例えば、インビトロでの予備研究は、単層の線維芽細胞に加える際の溶液の毒性を試験するために行われ得る。NIH 3T3線維芽細胞を、ガラスLab−TekTMカバーグラスチャンバー(NUNC,Rochester,NY)上にプレートし、そしてコンフルーエンスまで増殖する。細胞を、次いで、10%FBS DMEM中の溶液に10秒間曝し、そしてDMEM中の10%FBSで数回洗浄した後、インキュベーターに戻す。15分後、この細胞を、10μM Cell−TrackerTMGreen CMFDA(Molecular Probes,Eugene,OR)に30分間、曝す。細胞を、次いで、DMEM中の10%FBSで数回洗浄し、そして37℃、5%のCO顕微鏡チャンバーに配置する。CMFDA染色液は細胞に容易に入り込み、そして細胞が生きている場合は、この染色液は酵素学的に改変されて、細胞から出て行くことが出来ない。従って、生存可能な細胞は明るく蛍光を発するが、一方で死んだ細胞では起こらない。細胞は、倒立蛍光顕微鏡を用いて画像化される。
【0056】
インビボでの毒性研究は、インビトロでの研究で最も有効な処方物のうちのどれが最も毒性が低いかを決定する。動物に、調製された処方物を投与し、そして静脈内の血液サンプルを収集する。また、気管洗浄は、調製物の投与の結果生じる肺組織の損傷についての情報を提供する。
【0057】
処置は、疾患の感染または伝播の危険がある限り、ウィルスの発散を予防するかまたは制限する必要がある場合に処置が繰り返される状態で続けられる。喘息、アレルギーおよびその他の肺疾患の場合は、処置は、所望の肺パラメーター(pulmonary parameter)を維持するために続けられる。
【0058】
本発明は、以下の非限定的な実施例を参照することによってさらに理解される。
【実施例】
【0059】
(実施例1:インビトロ模擬実験)
図1に示されるように、シミュレーション咳機械システム(simulated cough machine system)を、King.Am.J.Respir.Crit.Care Med.156(1):173−7(1997)によって記載されるものと同様に、設計した。デジタル圧力計および安全弁を備えた気密6.25Lプレキシグラスタンクを、肺のキャパシタンス機能として働くように構築した。タンクを加圧するために、調整器を備えた等級別(grade)乾燥圧縮空気シリンダーを、注入口に接続した。タンクの排出口では、十分なCvフロー係数を有するAsco双方向正常時閉鎖電磁弁(8210G94)を、ガス放出のために接続した。電磁弁を、代表的な120V、60Hzの電灯のスイッチを使用して配線した。電磁弁のアウトフローへは、Fleisch第4番呼吸気流計であった。これは、「咳」プロファイルを試験するために必要なPoiseuilleフローを生成した。Fleischチューブの排出口を、本発明者らの気管モデルへの1/4’’NPT入口に接続した。Validyne DP45−14圧力差変換器は、Fleischチューブを通して圧力低下を測定した。Validyne CD15正弦波搬送復調器を、このシグナルをデータ取得ソフトウェアへ増幅するために使用した。気管気管支の粘液と類似した流体力学的性質を有する弱い重合体のゲルを、Kingら、Nurs Res.31(6):324−9(1982)によって記載されるように調製した。ローカストビーンガム(LBG)(Fluka BioChemika)溶液を、四ホウ酸ナトリウム(Na)(J.T.Baker)と架橋した。2重量/体積%のLBGを、煮沸Milli−Q蒸留水中に溶解した。濃縮四ホウ酸ナトリウム溶液を、Milli−Q蒸留水中で調製した。LBG溶液を室温まで冷却した後、少量の四ホウ酸ナトリウム溶液を加え、その混合物を、1分間、緩徐に回転させた。静止水性粘液類似物(still watery mucus simulant)を、次いで、単純な幾何学的くぼみに基づいた類似した深さを作製する気道モデルへとピペッティングした。粘液類似層を、「咳」実験を開始する前に30分間、架橋させた。この点において(t=0分)、時点を測定し、t=30分およびt=60分まで、時点を測定した。四ホウ酸ナトリウムの最終濃度は、1〜3mMの範囲であった。アクリル製の気道モデルを、1.6cmの内部幅および高さを有する30cmの長さに設計した。気道モデルは、フィットさせるために別個の上端を備える長方形の形をしたチューブを形成し、粘液類似層へ容易に接近することを可能にした。ガスケットおよびCクランプを気密シールを作製するために使用した。長方形の横断面を、均一な粘液類似物の高さを可能にし、そして円管および重力排水と関連する問題を回避するために選択した。気道モデルの横断面領域はまた、生理学的に関連性があった。気道モデルの端部は、気圧に対して解放したままであった。噴霧した溶液を、PARI LCジェットネブライザーおよびProneb Ultra圧縮機を介して、粘液類似物に送達した。処方物は、等張性生理食塩水中に懸濁した7/3重量%の標準の等張性0.9%生理食塩水(VWR)および100mg/mLの合成リン脂質である、1,2−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン/1−パルミトイル−2−オレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホグリセロール(DPPC/POPG)(Genzyme)を含有した。3mLの選択した処方物を、ネブライザー内へとピペットし、そしてネブライザーが、オープンエンドであるが粘液類似物の層上のクランプされた気道モデルのくぼみを通して吐き出すまで、エアロゾル化した。気道モデルを、次いで、t=0分での実験の前に、Fleischチューブの排出口にとりつけた。同様にして、(投薬後)t=30分およびt=60分での実験を実施した。
【0060】
SympatecHELOS/KFレーザー回折粒子径測定器を、作製された粘液類似バイオエアロゾルを寸法で分類するために使用した。回折される粒子を寸法で分類するためにFraunhoffer法を使用した。HELOSは、0.25〜87.5μmの範囲を測定することが可能なR2サブミクロンウィンドウモジュールを備えた。「咳」実験の前に、気道モデルの端部を、レーザービームからわずか3cmのところに調節した。同様に、気道モデルの底面を、支持ジャックおよびレベルを使用して、2.2mmのレーザービームに位置を調整した。分散したバイオエアロゾルを、HEPAフィルターが、後に続く慣性サイクロンに接続して吸引器(vacuum)を使用して、回折ビームを通って通過した後に、収集した。各実行の前に、レーザーを、5秒間、周囲条件に基準を合わせた(referenced)。測定を、光学濃度(Copt)が0.2%以上のトリガー条件を指定した後で開始し、そして、0.2%以下のCoptの2秒後に停止した。Sympatec WINDOXソフトウェアを、粒子の大きさの体積の対数に対する累積密度分布グラフを作成するために使用した。
【0061】
代表的な咳プロファイルは、空気の二相性のバーストからなり、粘液類似物の1.5mmの層を越えて通過した。初期フローまたは空気は、30〜50msの間、約12L/秒の流速を保有した。第二層は、200〜500ms続き、そして次いで、急速に減衰した。代表的な実際の咳プロファイルは、図2のシミュレートした咳プロファイル(5psiのタンク圧)と比較される。
【0062】
3回の咳の後のバイオエアロゾル粒子濃度を、乱されない粘液類似物の場合、そして生理食塩水の送達の場合(図3)および界面活性物質の送達の場合(示さず)において、長期にわたって測定した(図3)。乱されなかった場合では、バイオエアロゾルの大きさは、約400ナノメートルの平均の大きさの状態で、長期間にわたって一定のままである。生理食塩水を添加し、バイオエアロゾル粒子の大きさは、1ミクロン(t=0)から約60ミクロン(t=30分)まで増加し、そして次いで、30ミクロンまで減少する(t=60分)。
【0063】
これらのインビトロの結果は、粘液層へと送達された生理食塩水が、崩壊の際に粒子サイズの実質的な増加もたらす。これは、おそらく表面張力の増加が原因である。インビボでの結果によって示されるように、より大きなサイズの飛沫ほど、より口を出ていくことができない。従って、溶液の送達は、吐出された粒子の数を顕著に減少させるのに役に立つ。
【0064】
(実施例2:人の研究において吐出されたエアロゾル粒子の減少)
吐出されたエアロゾル粒子の生成の概念研究の証明を、12個体の健康な被験体を使用して実施した。本研究の目的は、(1)吐出されたバイオエアロゾル粒子の性質(大きさの分布および数)を決定すること;(2)吐出された粒子を正確に計数するのに十分な感度であるデバイスの有用性を確証すること;(3)健康な肺から吐出された粒子のベースライン計数を評価すること;および(4)吐出された粒子の計数の抑制に対する外因的に投与された2つの処置エアロゾルの効果を測定することである。実験を、健康なヒト被験体について、1Lあたりの平均粒子および平均の粒子の大きさを決定するために、異なる粒子検出器を用いて実施した。粒子を含まない空気を吸った後、健康な被験体は、1Lあたり1〜5粒子ほど少ない粒子を吐き出した。この粒子は、直径200〜400nmの平均の大きさを有する。粒子数における有意な変動が、被験体ごとに生じて、その結果、何人かの被験体が1Lあたり30,000粒子ほど多くの粒子を吐き出した。この粒子の大部分はまた、サブミクロンの粒子の大きさである。サブミクロンの大きさの粒子を正確に計数するのに十分な感度を有するデバイスを、設計し、そして組み立てた。このデバイスのレーザーコンポーネントを、製造元の手順(Climet Instruments Company,Redlands,CA)に従って較正した。このデバイスは、1粒子/Lの感度で150〜500nmの範囲内で粒子を正確に測定した。一連のフィルターは、全てのバックグラウンド粒子ノイズを除去した。
【0065】
プロトコルIRBで承認後、12個体の健康な被験体を本研究に登録した。包含する基準とは、健康で、18〜65歳であり標準的な肺機能(FEV予測値が80%より高い)であり、インフォームドコンセントを受け、そして測定を実施する能力があるというものであった。排除する基準とは、重大な肺疾患(例えば、喘息、COPD、嚢胞性線維症)、心臓血管疾患、気道の急性感染または慢性感染が存在するかまたはこれらの病歴があるか、および妊娠しているかまたは授乳中の女性であるというものであった。1個体の個体は、全ての投与計画を完了し得なかったので、データ分析から除外した。
【0066】
身体試験を完了した後で、被験体を、2つの群に無作為化した:初期にプロトタイプ処方物1を受容する被験体群と、プロトタイプ処方物2を受容する被験体群。ベースラインの吐出された粒子の生成を、デバイス上で2分間の「洗浄(wash out)」期間の後で、測定した。この評価を、2分間にわたって行い、2分間の平均から1分間あたりの計数を導いた。ベースライン測定の後で、プロトタイプ処方物を、市販の水性ネブライザー(Pari Respiratory Equipment,Starnberg,Germany)を使用して、6分間にわたって投与した。処方物1は、等張性生理食塩水溶液から構成される。処方物2は、等張性生理食塩水ビヒクル中に懸濁したリン脂質の組み合わせから構成される。投与の後で、吐出された粒子の計数を、単回投与の5分後、30分後、1時間後、2時間後、および3時間後に評価した。
【0067】
図4Aに示されるように、実質的な被験体間での可変性をベースラインの粒子計数において見出した。示したデータは、試験エアロゾルのうちの1つを投与する前に得た測定値である。このベースラインの吐出された粒子の結果は、吐出されたエアロゾルの「超生産者」の存在を指し示す。本研究において「超生産者」は、ベースライン測定において、1,000粒子/Lよりおおく吐出する被験体として定義された。図4Bは、処方物1を受容する被験体についての個々の粒子の計数を示す。このデータは、外因的に適用されたエアロゾルの単一の処方物が、吐出された粒子の計数を抑制し得ることを示唆する。
【0068】
図5Aは、このグループ中のベースラインにおいて見出された2体の「超生産者」に対する、プロトタイプ処方物1の効果を示す。これらのデータは、プロトタイプ処方物が超生産者へのより明白な効果を及ぼし得ることを示す。
【0069】
同様の結果が、処方物2の送達についても見出された。図5Bは、2つの処置群中で同定された「超生産者」についての累積的な吐出された粒子の計数の(ベースラインに対する)変化率を要約する。
【0070】
本研究からの結果は、吐出された粒子がレーザー検出システムを使用して正確に測定され得ること、これらの粒子の大部分が直径1ミクロン未満であること、そしてこれらの粒子の数が被験体ごとに実質的に変動することを示す。「超生産する(super producing)」被験体は、肺の管壁流体の表面の物理学的特性を改変する、エアロゾルの送達に最も顕著に応答する。このような超生産者は、病原体の発散および感染した患者集団中での伝染についての重大な責任を負う。これらのデータはまた、エアロゾルの吐出を抑制することが、比較的単純かつ安全に外因的に投与されたエアロゾル処方物を用いて実際的であることを示す。
【0071】
(実施例3:大型動物の研究)
7頭のホルスタインの雄の子ウシを、麻酔し、挿管し、そして光レーザー計数によってベースラインの粒子吐出についてスクリーニングした。引き続いて、動物を処置しなかったか(偽)、または3種類の用量(1.8分間、6.0分間、または12.0分間)のうちの1つで、生理食塩水の噴霧されたエアロゾルで処置した。偽投薬の間は、動物を、等張性生理食塩水溶液の投薬が施された場合と同じ様式で扱った。ある動物には、毎日投薬し、そしてネブライザーの用量を、曝露期間全体にわたって無作為化した(投薬スケジュールについては表1を参照のこと)。各動物に、研究期間の間、全ての用量が受容されるように予定した。各用量の投与の後で、吐出された粒子の計数を、180分間を通して個々の時点(0分、15分、30分、45分、60分、90分、120分)で、モニタリングした。
【0072】
本研究に含まれた動物についての曝露マトリックスが、表1に見出される。投薬を、57日間にわたり、投薬の間に少なくとも7日間の間隔をあけて、行った。各動物(n=7)は、投薬の持続期間の間に少なくとも1回、各用量を受容した。ただし、6.0分間の1回の用量(動物番号1736を参照のこと)および12.0分間の1回の用量(動物番号1735を参照のこと)の欠落は除く。これらの2つは、通風機および/または麻酔装置の予期できない問題に起因して除いた。
【0073】
(表1:大型動物のための投与計画)
【0074】
【表1】

(結果)
図6Aは、各動物が偽投薬量を受容した後の、各動物についての長期にわたる粒子計数を示す。各時点は、代表的には、少なくとも3つの粒子計数の定量の平均を示す。図6Aのデータは、特定の個々の動物が生得的に、他の動物よりも多くの粒子を生成することを示す(「超拡散者」)。さらに、このデータは、評価期間の全体にわたって、呼吸が静止状態の麻酔された動物が、比較的安定した吐き出された粒子の排出量を維持することを示す(例えば、動物番号1731、1735、1738、1739、および1741を参照のこと)。
【0075】
図6Bは、各処置の後での、長期にわたる吐出された粒子の計数における変化率の平均値を表す。各データ点は、処置群からの6〜7個の測定値の平均値を表す。全ての動物は、処置の180分後までにベースラインに戻った。このデータは、6.0分間の処置期間が、処置後少なくとも150分間に、粒子の吐出を防止する適切な用量を提供することを示唆する。他の処置は、エアロゾル吐出の抑制を効果的に長く続かせるには、短すぎるかまたは長すぎるかのいずれかであるように見える。
【0076】
(結論)
ウシにおいて行った本研究は、家畜群に関連する自発的に呼吸する動物において、吐出されたエアロゾルの処方物に対する等張性生理食塩水の有効性を示す。結果に基づくと、等張性生理食塩水の送達は、用量反応性の様式で、吐出されたエアロゾル粒子の数を顕著に減少し得る。さらに、この大型動物投薬システムは、制御された曝露を繰り返すことを可能にする。毎日の前曝露ベースラインおよび偽曝露によってその動物自体のコントロールとして各動物を自己制御しながら、各動物を使用することによって、粒子吐出と関連する固有の可変性が、理解され得る。このデータは、6.0分間の生理食塩水噴霧が、ウシにおいて、最小でも120分間粒子吐出を減少することを示唆する。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】図1は、咳シミュレーション機械装置の図である。
【図2】図2は、実際の咳プロフィール 対 シミュレーションされた咳のプロフィールを示す。
【図3】図3は、t=0分、t=30分およびt=60分において、単なる粘液擬態物についてと生理食塩水送達後とに長時間にわたって測定された、3つの咳の後の粒子濃度を示す。
【図4】図4Aは、粒子を含まない空気を吸入する間に個体(n=11)によって吐出された、ベースライン粒子数(150nmより大きい)の図表である。
【図5】図5は、生理食塩水(約1g)がエアロゾルの形態で肺に投与された後の、個体(n=11)によって吐出された粒子数(150nmより大きい)の、時間(分)に対するグラフである。
【図6】図6は、等張生理食塩溶液(約1g溶液)がエアロゾルの形態で肺に投与された後の、処置前に(粒子を含まない空気を吸入する一方)1000粒子/リットルよりも大きいベースライン吐出を有する個体(n=2)によって吐出された、粒子数(150nmより大きい)の、時間(分)に対するグラフである。
【図7】図7は、リン脂質を含む等張生理食塩溶液(約1g溶液)がエアロゾルの形態で肺に投与された後の、処置前に(粒子を含まない空気を吸入する一方)1000粒子/リットルよりも大きいベースライン吐出を有する個体(n=2)によって吐出された、粒子数(150nmより大きい)の、時間(分)に対するグラフである。
【図8】図8Aは、吐出された全粒子(0.3ミクロンより大きい)の、時間(分)に対するグラフであり、偽処置動物から得られたデータを示している。図8Bは、ベースライン粒子の平均パーセント(%)の、時間(分)に対するグラフであり、噴霧された生理食塩水によって処置された動物から得られたデータを示している(1.8分間(黒四角)、6.0分間(黒三角)、12.0分間(白四角)、および偽(黒菱形))。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトまたは他の動物に投与する場合に、表面張力、表面弾性または体積粘性を変化させ、それによりエアロゾルの吐出を減少させるために、内因性の界面活性物質流体を希釈する、生体適合性非界面活性剤処方物。
【請求項2】
水性溶液、乾燥粉末、蒸気、水性懸濁液、無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液、および乾燥粉末以外の固体投薬形態からなる群より選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項3】
気道、胃腸管、口腔咽頭腔および鼻腔からなる群より選択される領域に投与するために処方される、請求項1に記載の処方物。
【請求項4】
エアロゾルの吐出を減少させるための塩および糖からなる群より選択される化合物の有効量を含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項5】
界面活性物質およびリン脂質からなる群より選択される因子をさらに含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項6】
核酸、タンパク質、炭水化物、合成ポリマー、アミノ酸、無機物質および有機物質からなる群より選択される活性な因子を含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項7】
前記活性な因子の濃度が約0.01重量%〜約20重量%の範囲である、請求項6に記載の処方物。
【請求項8】
前記活性な因子の濃度が0.9%〜約10%の間の範囲である、請求項7に記載の処方物。
【請求項9】
不活性な物質に分散された粒子もしくは不活性な物質中の粒子、不活性な物質に分散された液滴もしくは不活性な物質中の液滴、不活性な物質に分散された蒸気もしくは不活性な物質中の蒸気、および不活性な物質に分散されたミストもしくは不活性な物質中のミストからなる群より選択される形態である、請求項1に記載の処方物。
【請求項10】
前記活性な因子が、抗ウイルス薬、抗生物質、気管支拡張薬、抗ヒスタミン薬、鎮咳薬、抗炎症薬、去痰薬、およびワクチンからなる群より選択される、請求項6に記載の処方物。
【請求項11】
感染因子の感染性を制限するために有効な量の請求項1に記載の処方物。
【請求項12】
前記処方物が生理食塩水である、請求項1に記載の処方物。
【請求項13】
前記処方物が、約0.1ミクロンと約30ミクロンとの間の直径、最も好ましくは約1ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する粒子を含むエアロゾルとして送達される水溶液を含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項14】
前記処方物が、0分間と20分間との間、最も好ましくは0分間と3分間との間吐出されたバイオエアロゾル処方物を抑制するのに有効な持続時間に送達される、請求項1に記載の処方物。
【請求項15】
HFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶および連続噴霧器からなる群より選択されるデバイス内に存在する、請求項1に記載の処方物。
【請求項16】
前記処方物が約10ミクロン未満の空気動力学的粒径の乾燥粉末からなる、請求項1に記載の処方物。
【請求項17】
等張性の乾燥粉末、高張性の乾燥粉末、低張性の乾燥粉末、浸透圧的に活性な賦形剤を含む乾燥粉末、表面張力を変化させる賦形剤の乾燥粉末、粘度を変化させる賦形剤の乾燥粉末、表面圧力を変化させる賦形剤の乾燥粉末または表面エネルギーを変化させる賦形剤の乾燥粉末からなる群より選択される粉末を含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項18】
前記処方物が、単回投与乾燥粉末吸入器および複数回投与乾燥粉末吸入器からなる群より選択されるデバイス内に存在する、請求項1に記載の処方物。
【請求項19】
前記処方物が、蒸発器もしくは蒸発吸入器、またはHFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶および連続噴霧器からなる群より選択されるデバイス内に存在し、該処方物は、浸透圧的に活性な賦形剤を含む蒸気、表面張力を変化させる蒸気、粘度を変化させる蒸気、表面圧力を変化させる蒸気および表面エネルギーを変化させる蒸気からなる群より選択される、請求項1に記載の処方物。
【請求項20】
等張性の懸濁液、高張性の懸濁液、低張性の懸濁液、浸透圧的に活性な賦形剤を含む水性懸濁液、表面張力を変化させる賦形剤の水性懸濁液、表面圧力を変化させる賦形剤の水性懸濁液および表面エネルギーを変化させる賦形剤の水性懸濁液を含む群から選択される懸濁液を含有する請求項1に記載の処方物であって、該処方物が、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶および連続噴霧器からなる群より選択されるデバイスにおいて、約0.1ミクロンと30ミクロンとの間の直径、最も好ましくは約1ミクロンと10ミクロンとの間の直径を有する粒子を含むエアロゾルとして送達される、請求項1に記載の処方物。
【請求項21】
最も好ましくは約1ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する粒子を含む、HFA噴霧剤を含む定量吸入器、非HFA噴霧剤を含む定量吸入器、ネブライザー、加圧缶および連続噴霧器からなる群より選択されるデバイス内に、浸透圧的に活性な賦形剤を含む無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液、表面張力を変化させる賦形剤の無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液、粘度を変化させる賦形剤の無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液、表面圧力を変化させる賦形剤の無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液、表面エネルギーを変化させる賦形剤の無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液およびエアロゾルとして送達される無毒性の有機溶液もしくは有機懸濁液からなる群より選択される溶液または懸濁液を含有する、請求項1に記載の処方物。
【請求項22】
表面張力、表面弾性または体積粘性を変化させ、それによりエアロゾル吐出を減少させるために内因性の界面活性物質流体を希釈するための、鼻もしくは口に投与するための有効量の粒子状組成物を含有する、不活性な基質。
【請求項23】
前記組成物が、塩、糖および他の浸透圧的に活性な物質からなる群より選択される物質を含有する、請求項22に記載の基質。
【請求項24】
前記基質上または前記基質内の前記組成物の濃度が、約0.01重量%〜約20重量%、好ましくは0.9%〜約10%の間の範囲である、請求項23に記載の基質。
【請求項25】
前記基質が生分解性または使い捨て可能な、織った布または不織布を含む、請求項22に記載の基質。
【請求項26】
前記布が、セルロース型材料から形成される、請求項25に記載の基質。
【請求項27】
少なくとも一種の生物活性化合物をさらに含む、請求項22に記載の基質。
【請求項28】
前記生物活性因子が、抗ウイルス薬、抗生物質、気管支拡張薬、ステロイドおよびワクチンからなる群より選択される、請求項27に記載の基質。
【請求項29】
皮膚への適用のためのローションまたは潤滑剤をさらに含む、請求項22に記載の基質。
【請求項30】
感染因子の感染性を制限するための有効量の粒子状界面活性物質を含む、請求項22に記載の基質。
【請求項31】
呼吸性疾患を有する個体の粒子の吐出を減少させる方法であって、該個体に有効量の生体適合性非界面活性物質処方物を投与する工程を包含し、該処方物は、表面張力、表面弾性または体積粘性を変化させ、それによりエアロゾル吐出を減少させるために内因性の界面活性物質流体を希釈する、方法。
【請求項32】
前記呼吸性疾患が、結核、SARS、インフルエンザ、サイトメガロウイルス、RSウイルス、アフリカブタ熱、コロナウイルス、ライノウイルス、ツラレミア、腺ペスト、炭疽および口蹄疫を引き起こす因子からなる群より選択される因子による感染である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記呼吸性疾患が、アレルギー、ぜん息、嚢胞性線維症、慢性気管支炎、気腫および急性呼吸促迫症候群からなる群より選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記処方物が、気道管壁流体の表面張力、気道管壁流体の粘度、気道管壁流体の表面弾性、気道管壁流体の表面圧力、気道管壁流体の表面エネルギー、気道管壁流体の容量オスモル濃度、気道細胞型の浸透活性、気道管壁流体の生成、個体内の上気道沈着物の部位から肺実質へのバイオエアロゾルの輸送からなる群より選択される物理的特性を変化させる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記処方物が、気道管壁流体にコーティングを生成する、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記処方物が、溶液または懸濁液として非経口、経口、経直腸、経膣、局所、または吸入により適用される、請求項31に記載の方法。
【請求項37】
前記溶液または懸濁液が、眼の空間に投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記処方物が、建築物、テントまたは他の施設で投与される、請求項33に記載の方法。
【請求項39】
吐出エアロゾルに対する増強された性質を有する動物またはヒトを診断するための方法であって、呼気および吸気の測定、吐出された粒子の数の評価、吐出された粒子の大きさの評価、サンプリングの間の一回換気量および呼吸の頻度の評価からなる群より選択される少なくとも一種の特徴に関してスクリーニングする工程を包含する、方法。
【請求項40】
約10〜約120LPMの呼吸の流速での吐出された粒子数を評価する工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
吐出されたエアロゾルの感染性を評価する工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
細菌感染性またはウイルス感染性を測定する工程を包含する、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
請求項39に記載の方法に従って、吐出された粒子の数および粒子の大きさを測定するためのデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−527430(P2007−527430A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501976(P2007−501976)
【出願日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【国際出願番号】PCT/US2005/006903
【国際公開番号】WO2005/084638
【国際公開日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【出願人】(506299858)プルマトリックス インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】