説明

胃瘻チューブ用挿入補助具

【課題】胃瘻チューブの先端の略椀状の胃内固定部102に設けられる突部103に形成した係合孔104に先端部が挿入される棒状部材3を備える挿入補助具において、胃瘻チューブに挿入補助具を装着する際に、胃瘻チューブのチューブ本体101を軸方向尾方に強く引張っても何ら問題を生じないようにする。
【解決手段】棒状部材3の外周に、胃瘻チューブへの挿入補助具の装着時に突部103に当接する段部33を設ける。段部33の外径は突部103の周方向幅以下とし、また、段部33から軸方向尾方にのびる外周面を軸方向尾方に向けて縮径するテーパー面32aに形成する。棒状部材を芯棒31とこれに外挿する筒体32とで構成し、筒体32の先端面で段部33を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、瘻孔を介して胃内に胃瘻チューブを挿入する際に使用する胃瘻チューブ用挿入補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食物を経口摂取できない患者のために、体外から胃内に貫通する孔(瘻孔)を患者に穿設し、瘻孔を介して胃内に胃瘻チューブを挿入し、胃瘻チューブを介して直接胃に栄養物を供給することが行われている。
【0003】
胃瘻チューブは、瘻孔を介して先端が胃内に挿入される可撓性を有するチューブ本体と、チューブ本体の先端に設けられた、胃内からのチューブ本体の抜出しを規制する可撓性を有する略椀状の胃内固定部とを備える。そして、従来、特許文献1により、胃内固定部の周壁部の周方向一箇所に径方向内方に突出する突部を設け、この突部に径方向内方に開口する袋孔状の係合孔を形成した胃瘻チューブが知られている。
【0004】
この胃瘻チューブを胃内に挿入する際は、棒状部材を備える挿入補助具を用い、棒状部材の先端部を係合孔に挿入してからチューブ本体を棒状部材に沿わせ、この状態でチューブ本体を棒状部材に対し軸方向尾方に引張る。これによれば、棒状部材の先端が係合孔の孔底に当接して、胃内固定部が係合孔の形成箇所を先頭にして細長く引き伸ばされ、胃瘻チューブを容易に瘻孔に挿入することができる。
【0005】
然し、チューブ本体を軸方向尾方に強く引張りすぎると、棒状部材が係合孔の孔底を突き抜けることがある。こうなると胃内固定部を引き伸ばすことができなくなり、胃瘻チューブは使用不能になる。そのため、チューブ本体を慎重に引張ることが必要になり、操作性が悪くなる。
【特許文献1】特開2006−102195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、胃瘻チューブのチューブ本体を軸方向尾方に強く引張っても何ら問題を生じない操作性の良い胃瘻チューブ用挿入補助具を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、瘻孔を介して先端が胃内に挿入される可撓性を有するチューブ本体と、チューブ本体の先端に設けられた、胃内からのチューブ本体の抜出しを規制する可撓性を有する略椀状の胃内固定部とを備え、胃内固定部の周壁部の周方向一箇所に設けた径方向内方に突出する突部に径方向内方に開口する係合孔が形成された胃瘻チューブを胃内に挿入するための胃瘻チューブ用挿入補助具であって、係合孔に先端部が挿入される棒状部材を備えるものにおいて、棒状部材の先端から軸方向尾方に所定長さ離れた棒状部材の部分の外周に、外径が係合孔の内径より大きな段部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の挿入補助具を用いて胃瘻チューブを胃内に挿入する際は、従来例の場合と同様に、棒状部材の先端部を胃瘻チューブの胃内固定部の突部に形成した係合孔に挿入してから胃瘻チューブのチューブ本体を棒状部材に沿わせ、この状態でチューブ本体を棒状部材に対し軸方向尾方に引張る。ここで、本発明では、棒状部材に設けた段部の外径が係合孔の内径より大きいため、係合孔が開口する胃内固定部の突部に段部が当接し、突部を先頭にして胃内固定部が細長く引き伸ばされる。そして、チューブ本体を軸方向尾方に強く引張っても段部が突部を突き抜けることはない。従って、チューブ本体の引張り力を慎重に加減する必要がなく、操作性が向上する。
【0009】
尚、本発明の挿入補助具を用いる場合、胃瘻チューブに形成する係合孔は胃内固定部の周壁部の外面に達する貫通孔であっても良い。但し、上記従来例と同様に係合孔が袋孔状に形成されている場合には、段部から棒状部材の先端までの長さ(上記所定長さ)は係合孔の孔深さ以下の長さに設定されることが望ましい。これによれば、棒状部材の先端が係合孔の孔底に強く当接することがなく、孔底が棒状部材によって突き破られることを防止できる。
【0010】
また、本発明において、段部の外径は前記突部の周方向幅以下に設定されることが望ましい。これによれば、段部の存在で瘻孔への胃瘻チューブの挿入抵抗が増加することを防止できる。即ち、胃内固定部をいくら引き伸ばしてもその幅は突部の周方向幅以下には狭まらず、段部の外径が突部の周方向幅以下であれば、胃内固定部を引き伸ばしたときの幅は、棒状部材に段部を設けない場合と同様になる。
【0011】
また、本発明においては、段部から軸方向尾方にのびる外周面が軸方向尾方に向けて縮径するテーパー面に形成されていることが望ましい。これによれば、胃瘻チューブを胃内に挿入した後に挿入補助具を引き抜く際、段部が瘻孔からスムーズに引き抜かれ、患者が受ける苦痛を緩和することができる。
【0012】
また、本発明において、棒状部材は、芯棒と芯棒に外挿した筒体とで構成され、筒体の先端面で前記段部が構成されることが望ましい。比較的大径の棒材を切削加工して段部を形成することも可能であるが、筒体の先端面で段部を構成すれば、面倒な加工が不要になり、コストダウンを図る上で有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の挿入補助具について説明するが、その前に、図1、図2を参照して胃瘻チューブ100について説明する。胃瘻チューブ100は、患者に穿設する瘻孔を介して先端が患者の胃内に挿入されるチューブ本体101と、チューブ本体101の先端に設けられた、胃内からのチューブ本体101の抜出しを規制する略椀状の胃内固定部102とによって構成される。チューブ本体101と胃内固定部102とは可撓性を有する合成樹脂(シリコーン樹脂)によって一体に形成されている。
【0014】
胃内固定部102の周壁部の周方向一箇所には径方向内方に突出する突出部103が形成され、突出部103に胃内固定部102の径方向内方に開口する袋孔状の係合孔104が形成されている。胃内固定部102の周壁部には、更に、突出部103と反対側に位置させて切欠き部105が形成されている。また、胃内固定部102の底部には、チューブ本体101と連通する連通口106が形成されている。
【0015】
図3を参照して、実施形態の挿入補助具1は、合成樹脂製の銃把状の把手2と、把手2の上部から軸方向先方にのびる棒状部材3とを備える。把手2の上端には、胃瘻チューブ100のチューブ本体101の外径より幅狭の溝部21が形成されている。また、溝部21にはチューブ本体101の滑り止めのため複数の突条22が形成されている。
【0016】
棒状部材3は、ステンレス製の芯棒31と、芯棒31に外挿した合成樹脂(ポリプロピレン)製の筒体32とで構成されている。芯棒31は、軸方向尾方側(把手2側)の第1直棒部31aと、第1直棒部31aの先端から下方にクランク状に屈曲する屈曲部31bと、屈曲部31bから軸方向先方にのびる第2直棒部31cとを有する形状に形成されている。そして、第2直棒部31cの先端部が胃瘻チューブ100の係合孔104に挿入可能となっている。
【0017】
筒体32は、芯棒31の第2直棒部31cに外挿固定されている。そして、図4(a)に示す如く、第2直棒部31cの先端部が筒体32の先端から係合孔104の孔深さ以下に設定される所定長さだけ軸方向先方に突出するようにしている。かくして、棒状部材3の先端から軸方向尾方に上記所定長さ離れた棒状部材3の部分の外周に、筒体32の先端面で構成される段部33が設けられることになる。
【0018】
段部33の外径、即ち、筒体32の先端の外径は、係合孔104の内径より大きく、胃内固定部102の突部103の周方向幅W以下に設定されている。また、筒体32の外周面は、筒体32の先端から軸方向尾方に向けて縮径するテーパー面32aに形成されている。筒体32には、更に、テーパー面32aの最小径部と等径で軸方向尾方にのびて芯棒31の屈曲部31bに達する小径部32bが形成されている。
【0019】
胃瘻チューブ100はこれに上記挿入補助具1を装着した状態で瘻孔を介して胃内に挿入される。胃瘻チューブ100への挿入補助具1の装着に際しては、先ず、図4(a)に示す如く、筒体32の小径部32bを胃瘻チューブ100の胃内固定部102の切欠き部105に入れ込んだ状態で、筒体32の先端から突出する第2直棒部31cの先端部を胃内固定部102の突部103に形成した係合孔104に挿入する。ここで、筒体32の先端の外径は係合孔104の内径より大きく、且つ、筒体32の先端から突出する第2直棒部31cの先端部の長さが係合孔104の孔深さ以下のため、筒体32の先端面で構成される段部33が突部103に当接する。次に、図4(b)に示す如く、胃瘻チューブ100のチューブ本体101を第2直棒部31cに沿わせ、この状態でチューブ本体101を棒状部材3に対し軸方向尾方に引張る。
【0020】
これによれば、段部33が突部103に圧接し、胃内固定部102が、図4(c)に示す如く、突部103を先頭にして細長く引き伸ばされる。ここで、突部103は強度が高いため、チューブ本体101を軸方向尾方に強く引張っても段部33が突部103を突き抜けることはない。また、筒体32の先端から突出する第2直棒部31cの先端部の長さが係合孔104の孔深さ以下のため、第2直棒部31cの先端が係合孔104の孔底に強く当接することはなく、孔底が棒状部材3によって突き破られることも防止される。従って、チューブ本体101の引張り力を慎重に加減する必要がなく、操作性が向上する。
【0021】
上記の如くチューブ本体101を引張って胃内固定部102を引き伸ばすと、この状態で把手2の上端の溝部21にチューブ本体101を押し込む。これによれば、チューブ本体101が引張り状態のまま溝部21に挟持され、胃内固定部102が引き伸ばされた状態に保持される。
【0022】
このようにして胃瘻チューブ100に挿入補助具1を装着した後、把手2を握って棒状部材3を胃瘻チューブ100と共に瘻孔に挿入して、胃瘻チューブ100を瘻孔を介して胃内に挿入する。そして、挿入後、チューブ本体101を把手2の溝部21から取外し、この状態で棒状部材3を瘻孔から引き抜く。この際、胃内固定部102が略椀状の形状に復元して、胃瘻チューブ100の胃内からの抜出しが規制され、胃瘻チューブ100は体内に留まる。
【0023】
ここで、胃内固定部102をいくら引き伸ばしてもその幅は突部103の周方向幅W以下には狭まらない。そして、本実施形態のように段部33の外径が突部103の周方向幅以下であれば、胃内固定部102を引き伸ばしたときの幅は、棒状部材3に段部33を設けない場合と同様になる。従って、棒状部材3に段部33を設けることで瘻孔への挿入抵抗が増加することはない。
【0024】
また、本実施形態では、筒体32の外周面、即ち、段部33から軸方向尾方にのびる棒状部材3の外周面が軸方向尾方に向けて縮径するテーパー面32aに形成されているため、棒状部材3を瘻孔から引き抜く際に段部33が瘻孔内壁面への引掛かりを生ずることなくスムーズに瘻孔から引き抜かれる。従って、患者が受ける苦痛を緩和することができる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、棒状部材3を芯棒31とこれに外挿した筒体32とで構成し、筒体32の先端面で段部33を構成しているが、段部33の外径以上の棒材を切削加工して段部33を形成することも可能である。但し、上記実施形態のように筒体32を用いて段部33を形成した方が面倒な加工が不要になり、コスト的に有利である。
【0026】
また、上記実施形態では、棒状部材3の中間にクランク状の屈曲部31bを形成したが、全長に亘り真直な形状に棒状部材3を形成することも可能である。但し、この場合には、胃瘻チューブ100のチューブ本体101を棒状部材3に対し軸方向尾方に引張っても、チューブ本体101の胃内固定部102寄りの部分が胃内固定部102の厚みの影響で棒状部材3から離れ、瘻孔への挿入抵抗が大きくなる。これに対し、上記実施形態では、棒状部材3の尾端側の第1直棒部31aが先端側の第2直棒部31cに対し屈曲部31bにより偏心し、この偏心で胃内固定部102の厚みの影響が除去されて、チューブ本体101が胃内固定部102寄りの部分に亘って第1直棒部31aに密着する(図4(b)参照)。従って、上記実施形態の方が瘻孔への挿入抵抗を軽減でき、有利である。更に、上記実施形態では、筒体32の尾端が屈曲部31bに達しているため、屈曲部31bが筒体32の芯棒31に対する軸方向尾方へのずれを機械的に阻止するストッパ部としても機能する。従って、筒体32を芯棒31に強固に固定しなくても、チューブ本体101の棒状部材3に対する軸方向尾方への引張り力で筒体32が軸方向尾方にずれることを確実に防止できる。
【0027】
また、上記実施形態の挿入補助具は、胃瘻チューブ100の胃内固定部102に形成した突部103に棒状部材3の段部33を当接させて、胃内固定部102を引き伸ばすものであるため、係合孔104が胃内固定部102の外面に達する貫通孔になっている胃瘻チューブにもこの挿入補助具を適用できる。この場合、突部103に段部33を当接させる上で棒状部材3の先端と段部33との間の長さは制限されないが、棒状部材3の先端が引き伸ばした胃内固定部102の先方に突出することは施術上好ましくない。従って、上記長さは係合孔の長さ以下にすべきである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態の挿入補助具の操作対象となる胃瘻チューブを示す斜視図。
【図2】図1の胃瘻チューブの断面図。
【図3】本発明の実施形態の挿入補助具の斜視図。
【図4】(a)胃瘻チューブへの挿入補助具の装着初期状態を示す断面図、(b)胃瘻チューブへの挿入補助具の装着完了状態を示す側面図、(c)胃瘻チューブへの挿入補助具の装着完了状態の要部の下面図。
【符号の説明】
【0029】
1…挿入補助具、3…棒状部材、31…芯棒、32…筒体、32a…テーパー面、33…段部、100…胃瘻チューブ、101…チューブ本体、102…胃内固定部、103…突部、104…係合孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瘻孔を介して先端が胃内に挿入される可撓性を有するチューブ本体と、チューブ本体の先端に設けられた、胃内からのチューブ本体の抜出しを規制する可撓性を有する略椀状の胃内固定部とを備え、胃内固定部の周壁部の周方向一箇所に設けた径方向内方に突出する突部に径方向内方に開口する係合孔が形成された胃瘻チューブを胃内に挿入するための胃瘻チューブ用挿入補助具であって、係合孔に先端部が挿入される棒状部材を備えるものにおいて、
棒状部材の先端から軸方向尾方に所定長さ離れた棒状部材の部分の外周に、外径が係合孔の内径より大きな段部が設けられていることを特徴とする胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項2】
請求項1記載の胃瘻チューブ用挿入補助具であって、前記係合孔が袋孔状に形成されているものにおいて、前記所定長さは係合孔の孔深さ以下の長さに設定されることを特徴とする請求項1記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項3】
前記段部の外径は前記突部の周方向幅以下に設定されることを特徴とする請求項1又は2記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項4】
前記段部から軸方向尾方にのびる外周面が軸方向尾方に向けて縮径するテーパー面に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。
【請求項5】
前記棒状部材は、芯棒と芯棒に外挿した筒体とで構成され、筒体の先端面で前記段部が構成されることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の胃瘻チューブ用挿入補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−110090(P2008−110090A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295173(P2006−295173)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(390029676)株式会社トップ (106)
【Fターム(参考)】