説明

胃腸病原菌に対して有用な乳酸菌、及び当該乳酸菌を含む組成物

ヒトにおける胃腸感染症の予防又は治療方法であって、泌尿生殖器及び/又は胃腸の病原菌を殺菌する能力、及び胃腸管上皮細胞内への泌尿生殖器及び/又は胃腸管暴言体の内在化を阻害する能力について選択された、L.アシドフィラス(L. acidophilus)、L.クリスパタス(L. crispatus)、L.ガセリ(L. gasseri)、L.ヘルベチカス(L. helveticus)、及びL.ジェンセニー(L. jensenii)のうちの少なくとも1の治療有効量を、適切な製剤上の担体と組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む方法が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトにおける様々な病原菌により引き起こされる感染性の問題を治療することに関し、より特異的にヒトの胃腸病原菌の予防及び/又は治療に関する。
【背景技術】
【0002】
幾つかの実験及び臨床研究により、特定の胃腸感染症の予防又は治療において特定の乳酸菌の能力が評価され、そして関連する治療がすでに数十年にわたり適用されている。
【0003】
胃腸感染症は、人間集団における一般的な問題のまま残っている。胃腸管上皮に付着する細菌は、胃腸感染症(GII)の開始及び病原進行の重要なメカニズムとして認識されてきた。腸管においてコロニー形成する多くの胃腸病原菌は、宿主因子及び細菌毒性因子に依存して、通常有効な宿主防御メカニズムに抵抗することを可能にする病原特性を発現する。
【0004】
病原菌が胃腸管にコロニー形成することを妨げるために元々存在するマイクロフローラ由来の細菌、例えば乳酸菌を使用することは、かなり大規模に研究されてきた概念である(例えば、Alain Servinの“Antagonist activities of lactobacilli and bifidobacteria against microbial pathogens” FENS Microbiologyの総説(2004年)近刊、http ://www.sciencedirect.com/scienceにおいてオンラインで利用可、を参照のこと)。上記文献において言及された幾つかの乳酸菌株は、胃腸管におけるその効果について強調されており、そして病原菌により引き起こされる様々な問題又は疾病、例えば下痢を治療するのに適した有力な活性物質として示唆された。
【0005】
この関係で使用される場合、乳酸菌は、種々のメカニズム、例えば、病原菌成長阻害、病原菌付着の妨害、乳酸産生並びにバクテリオシン及びH22などのアンタゴニスト作用性の物質の産生、当該バクテリオシン様物質を介した殺菌効果、免役調節、抗炎症性、及び他のメカニズムなどによる局所マイクロフローラの調節に寄与すると信じられている。
【0006】
細菌製剤を用いた治療の主要な目的は、通常の腸管マイクロフローラが再び確立できるときまで病原菌の異常増殖を妨げることであろう。さらに、細菌治療は、「自然」のものと考えられており、そして慣用される化学治療又は薬品治療に比べて副作用を伴わないと考えられている。
【0007】
この関係において、泌尿生殖器感染症の治療において有効性を示した健康なヒトの膣フローラを代表する乳酸菌株(例えば、Medinova AG, CH - Zurichにより2004年10月22日に出願された国際特許出願第PCT/EP2004/011980号を参照のこと)が、胃腸病原菌により開始される胃腸の感染症又は疾病の予防又は治療処置において利用できるものであり、そして結果として当該処置に有用であることが驚くべきことに観察された。
【0008】
さらに、プロバイオティック乳酸菌(LAB)株、その性質及び医薬品の分野におけるその利用可能性についての知識について既になされた成果にも関わらず、より便利でかつより有効なLAB株を医学界に提示する必要性が未だに残っている。
【発明の開示】
【0009】
本発明の目的は、様々な病原菌により引き起こされる感染の治療において、より具体的に、ヒトにおける胃腸感染症の治療において、又は例えば抗生物質を用いて行われた強い薬物療法後のバランスのとれた健常な胃腸管フローラへの修復において、特に効果的で有用なLAB株及び組成物を提供することである。本発明は、特異的に選択されたLAB株を含むこのような感染の新たな予防又は治療処置方法を提供する。
【0010】
本発明
第一目的として、本発明は、ヒトにおける胃腸感染症の予防又は治療法であって、泌尿生殖器及び/又は胃腸病原菌を殺菌する能力、及び胃腸管上皮細胞内において泌尿生殖器及び/又は胃腸病原菌の内在化を阻害する能力について選択されたL.アシドフィラス(L. acidophilus)、L.クリスパタス(L. crispatus)、L.ガセリ(L. gasseri)、L.ヘルベチカス(L. helveticus)、及びL.ジェンセニー(L. jensenii)属のうちの少なくとも1つの治療有効量を、医薬として許容されるか又は食品品質である担体と組み合わせて含む、前記予防又は治療方法に関する。
【0011】
本発明はまた、ヒトの胃腸管における病原菌の付着、コロニー形成及び/又は成長を妨げるか又は阻害する方法であって、少なくとも1の前記LAB株の治療有効量を、医薬として許容されるか又は食品品質の担体と組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法に関する。
【0012】
本発明はさらに、ヒトの胃腸管における健常なフローラを確立、維持、又は修復する方法であって、少なくとも1の前記LAB株の治療有効量を医薬として許容されるか又は食品品質のキャリアと組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法に関する。
【0013】
本発明は、組成物、特に上記の範囲において有用である医薬組成物であって、泌尿生殖器及び/又は胃腸病原菌を殺菌する能力、及び胃腸管上皮細胞内への泌尿生殖器及び/又は胃腸病原菌の内在化を阻害する能力について選択されたL.アシドフィラス、L.クリスパタス、L.ガセリ、L.ヘルベチカス、及びL.ジェンセニー属のうちの少なくとも1のLAB株の治療有効量を、医薬として許容される担体と組み合わせて含む、上記組成物を提供する。
【0014】
結局のところ、本発明は、組成物、より好ましくは上記医薬組成物の製造において当該LAB株のうちの一つを使用することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のLAB株は、モデルとして選択された頸部HeLa又はCaco-2などの上皮細胞に付着する能力について第一に選択された。細胞付着性は、必須の選別特徴である。なぜなら、細胞付着性は、当該LAB株が上皮組織、例えば泌尿生殖管の上皮細胞にコロニー形成し、そうして特定の領域への病原菌の付着に競合、阻害又は排除する能力を条件付けするからである。
【0016】
当該LAB株は、病原菌、つまり泌尿生殖器及び胃腸病原菌の付着、増殖、及びさらに生存を阻害する更なる能力についてさらに選択された。本明細書の以下の部分に記載されるグラム陰性又はグラム陽性病原菌:サルモネラ属(Salmonella species)、例えばS.エンテリカ血清型チフィムリウム(S. enterica serovar Typhimurium)、大腸菌(E. coli)、及びスタフィロコッカス属(Staphylococcus species)、例えばS.アウレウス(S. aureus)は、付着、増殖、又は病原性活性の点で本発明のLAB株により有意に影響を受ける病原菌を代表する。上記病原菌の列挙は包括的なものではない。
【0017】
本発明のLAB株は、病原菌、つまり泌尿生殖器又は胃腸管グラム陰性又はグラム陽性病原菌の上皮細胞への内在化を阻害する能力を有する。
【0018】
本発明のLAB株は、さらに重要な特徴、つまり、胃腸管粘膜細胞の免役応答を調節する能力、言い換えると、上で言及される病原菌などのグラム陰性病原菌、特に泌尿生殖器病原性大腸菌により感染された際に当該細胞の免役応答を開始するか、刺激するか又は高める能力を示す。その特徴のため、当該LAB株は、病原菌汚染に晒される場合に胃腸管粘膜細胞の炎症反応症候群を阻害する能力を結果として有する。
【0019】
具体的な態様が、2個の異なる経路を用いて、つまり、炎症促進性又は抗炎症性サイトカイン、例えばIL-10、それぞれ、IL-12、TNF、又はIFNの誘導を介して、上で記載される免役応答の調節を行うということが、特に興味深いことである。本発明の幾つかのLAB株、つまり、L.アシドフィラス KS 116.1 (L. acidophilus KS 116.1)及びL.ガセリKS124.3(L. gasseri KS 124.3)が、高いIFNγ誘導能力を示すということがさらに観察された。当該IFNγ誘導能力は、これらのLAB株を抗-病原菌薬として使用することを支持する。
【0020】
この株の特異性は、当業者に、求められる治療法を実行するために最も適した株又は株の組合せを選択する能力を提供する。
【0021】
これらの性質を示すLAB株の中で、本発明に記載される好ましい株が以下に列挙される:L.ジェンセニーKS 109(L. jensenii KS 109)、L.ガセリ KS 114.1(L. gasseri KS 114.1)、L.クリスパタスKS 116.1 (L. crispatus KS 116.1)、L.ジェンセニーKS 119.1(L. jensenii KS 119.1)、L.クリスパタス KS 119.4(L. crispatus KS 119.4)、L.ガセリ KS 120.1(L. gasseri KS 120.1)、L.ジェンセニー KS 121.1(L. jensenii KS 121.1)、L.ジェンセニーKS 122.1(L. jensenii KS 122.1)、L.ガセリKS 123.1(L. gasseri KS 123.1)、L.ガセリ124.3(L. gasseri 124.3)、L.ガセリKS 126.2(L. gasseri KS 126.2)、L.クリスパタス127.1 (L. crispatus 127.1)、L.ジェンセニーKS 129.1(L. jensenii KS 129.1)、L.ジェンセニーKS 130.1(L. jensenii KS 130.1)、L.ヘルベチカスKS 300、及びL.アシドフィラスKS 400 (L. acidophilus KS 400)。これらの株の多くは、健常なヒト膣フローラを代表する。
【0022】
特に好ましい種として、以下の株がさらに挙げられる:
L.ガセリ KS 114.1(CNCM I-3482):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性 - 乳酸生産量 10.5g/l - H22生産量10mg/l
API50CHI試験:GAL、GLU、FRU、MNE、NAG、ESC、SAL、CEL、MAL、SAC、TRE、及びGENに陽性である。
以下の:KON、GLY、ERY、DARA、LARA、RIB、DXYL、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、AMY、ARB、LAC、MEL、INU、MLZ、RAF、AMD、GLYG、XLT、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGに対して陰性である。
【0023】
L.クリスパタス KS 116.1(CNCM I-3483):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陽性 - 乳酸生産量 9.6g/l - H22生産量 2mg/l
API50CHI試験:GAL、FRU、MNE、NAG、ESC、SAL、MAL、及びSACに対して陽性である。
以下の:KON、GLY、ERY、DARA、LARA、RIB、DXYL、LXYL、ADO、MDX、GAL、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、AMY、ARB、CEL、LAC、MEL、TRE、INU、MLZ、RAF、AMD、GLYG、XLT、GEN、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGに対して陰性である。
【0024】
L.ジェンセニー KS 119.1(CNCM I-3217):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性 - 乳酸生産量 7.4g/l - H22生産量 20mg/l
API50CHI試験:GLU、FRU、MNE、NAG、AMY、ESC、SAL、CEL、MAL、MEL、SAC、GEN、及びTAGに対して陽性である。RIBについて擬陽性である。
KON、GLY、ERY、DARA、LARA、DXYL、LXYL、ADO、MDX、GAL、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、ARB、LAC、TRE、INU、MLZ、RAF、AMD、GLYG、XLT、TUR、LYX、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGについて陰性である。
【0025】
L.クリスパタス KS 119.4(CNCM1-3484):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陽性 - 乳酸生産量 10.3 g/l - H22生産なし
API50CHI試験:GAL、GLU、FRU、MNE、NAG、ESC、MAL、LAC、SAC、及びAMDについて陽性である。以下の:KON、GLY、ERY、DARA、LARA、RIB、DXYL、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、AMY、ARB、SAL、CEL、MEL、TRE、INU、MLZ、RAF、GLYG、XLT、GEN、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGについて陰性である。
【0026】
L.ガセリ KS 120.1(CNCM1-3218):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性- 乳酸生産量 10.6g/l - H22生産量1mg/l
API50CHI試験:GAL、GLU、FRU、MNE、AMY、ESC、SAL、CEL、MAL、LAC、SAC、TRE、及びAMDについて陽性である。以下の:KON、GLY、ERY、DARA、LARA、RIB、DXYL、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、NAG、ARB、MEL、INU、MLZ、RAF、GLYG、XLT、GEN、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGについて陰性である。
【0027】
L.ジェンセニー KS 121.1(CNCM1-3219):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性- 乳酸生産量10.6g/l -H22生産量 1mg/l
API50CHI試験:GAL、GLU、FRU、MNE、AMY、ARB、ESC、SAL、CEL、MAL、SAC、及びAMDについて陽性である。RIB、NAG、LAC、RAF、及びLFUCについて擬陽性である。KON、GLY、ERY、DARA、LARA、DXYL、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、MEL、TRE、INU、MLZ、GLYG、XLT、GEN、TUR、LYX、TAG、DFUC、DARL、LARL、GNT、2KG、及び5KGについて陰性である。
【0028】
L.ガセリ KS 123.1(CNCM1-3485):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性- 乳酸生産量 8.5g/l - H22生産量10mg/l
API50CHI試験:GLU、MNE、NAG、ESC、MAL、及びSACについて陽性である。RIB及び5KGについて擬陽性である。KON、GLY、ERY、DARA、LARA、DXYL、LXYL、ADO、MDX、GAL、FRU、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、AMY、ARB、SAL、CEL、LAC、MEL、TRE、INU、MLZ、RAF、AMD、GLYG、XLT、GEN、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、及び2KGについて陰性である。
【0029】
L.ガセリ KS 124.3(CNCM1-3220):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陰性- 乳酸生産量17.0g/l - H22生産量20mg/l
API50CHI試験:GAL、GLU、FRU、MNE、NAG、ESC、SAL、MAL、SAC、及びTREについて陽性である。RIB、AMD、GEN、及び5KGについて擬陽性である。KON、GLY、ERY、DARA、LARA、DXYL、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MAN、SOR、MDM、MDG、AMY、ARB、CEL、LAC、MEL、INU、MLZ、RAF、GLYG、XLT、TUR、LYX、TAG、DFUC、LFUC、DARL、LARL、GNT、及び2KGについて陰性である。
【0030】
L.クリスパタス KS 127.1(L. crispatus KS 127.1)(CNCM1-3486):グラム陽性 - カタラーゼ陰性 - オキシダーゼ陽性 - 乳酸生産量16.7g/l-H22生産なし
API50CHI試験:RIB、GAL、GLU、FRU、MNE、MAN、SOR、NAG、AMY、ESC、SAL、CEL、MAL LAC、SAC、TRE、MLZ、AMD、GLYG、GEN、TAG、及びGNTについて陽性である。GLY及びDXYLについて擬陽性である。KON、ERY、DARA、LARA、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MDM、MDG、ARB、MEL、INU、MLZ、RAF、XLT、TUR、LYX、DFUC、LFUC、DARL、LARL、2KG及び5KGについて陰性である。
【0031】
L.ヘルベチカス KS 300(CNCM1-3360):グラム陽性 - 乳酸生産量 10.45 g/kg - H22生産量 1 mg/l
API50CHI試験 :GAL、GLU、FRU、MNE、AMY、ARB5 ESC、SAL、CEL、MAL、LAC、SAC、TRE、及びAMDについて陽性である。RIB、MAN、GLY、SOR、KON、ERY、MLZ、DARA、LARA、LXYL、ADO、MDX、SBE、RHA、DUL、INO、MDM、MDG、MEL、INU、RAF、TAG、GNT、XLT、TUR、LYX、DFUC、LFUC、DARL、LARL、2KG、及び5KGについて陰性である。
【0032】
これらの株を、ブタペスト条約に従ってパスツール研究所(Pasteur Institute、Paris (France))に規定どおりに寄託した。
【0033】
本発明に従って、その特異的な抗病原菌活性のため、当該LAB株は、ヒトにおいて胃腸感染症を予防又は治療するために、及びヒトの胃腸管において病原菌のコロニー形成及び/又は増殖を予防又は阻害するために、つまり、当該LAB株が特に効果的であることが証明される脈絡で有利に使用することができる。
【0034】
また、当該LAB株は、ヒトにおいて健常な胃腸管フローラを維持又は修復するために、より具体的に、抗生物質を用いて行われる治療などの強力な薬品治療の後にバランスがとれた健常な胃腸管フローラを修復するために、かなり効果的な方法で使用することができる。
【0035】
対応する治療又は予防処置は、本発明のLAB株の治療有効量を、医薬として許容されるか又は食品品質である賦形剤、サポート、又は担体であって、そのために設計されたものと組み合わせて投与することにより行われる。
【0036】
上記治療を実行するために適した組成物は、通常のLAB増殖因子をさらに含みうる。当該組成物は、好ましくは、摂取可能なカプセル又はジェル(gelules)であって、凍結乾燥された微生物及び必要ならばLAB増殖因子を含む形態であり、又は経口摂取可能な濁液又は乳濁液の形態である。
【0037】
上で記載される組成物は、本発明のLAB株の混合物、並びに従来技術に知られていた1又は幾つかの株と組み合わせた少なくとも1の本発明の株との混合物を含むことができる。また、これらの組成物は、特異的に選択された化学成分などの医薬として活性な追加の成分を含んでもよい。
【0038】
上記組成物は、約106cfu(コロニー形成ユニット)〜約1011cfu/g、好ましくは約108〜約1011cfu/gの範囲である量、又は用量、又はユニットで選択された微生物を、その生存率及び特異性を損なわないで維持する無水形態、例えば凍結乾燥形態で含んでもよい。当該組成物並びにその用量の最終的な詳細は、それらが意図される具体的な適用、患者の年齢又は健康状態、病原菌汚染の性質に最終的に依存するであろう。全ての関連するパラメーターを調節することは、医学界における現在の技術及び知識の範囲内である。
【0039】
従来から知られている基準株(以下の実施例を参照のこと)と比較する場合、本発明のLAB株は、比較のために選ばれた実験モデルに左右されて、同等又はそれより高い抗病原菌活性のいずれかを示した。
【0040】
以下の実施例は、本発明の実施態様の幾つかしか例示せず、そしてその制限を構成するものとして意図されるものではない。
【実施例】
【0041】
【表1】

対照となる付着性乳酸菌は、L.カゼイ ラムノサスGG株(L. casei rhamnosus strain GG)(ATCC受託番号53103)、L.ラムノサスGR-1株(L. rhamnosus strain GR-1)(ATCC受託番号55826)、及びL.ファーメンタムRC-14株(L. fermentum strain RC- 14)(ATCC受託番号55845)である。
【0042】
全ての乳酸菌を、De Man, Rogosa, Sharpe (MRS)培地(Biokar Diagnostic, Beauvais, France)にて37℃で18時間増殖させた。
【0043】
細菌病原菌:サルモネラ・エンテリカ血清型チフィムリウムSL1344株をB.A.D. Stocker (Stanford, California)から頂いた。細菌をLuria培地(Difco Laboratoies)中において37℃で一晩18時間増殖させた。
【0044】
尿路疾患性びまん性付着性大腸菌IH1128及び7372株、並びに下痢性株C1845を、B.Nowichki(テキサス大学、Galvestone)及びS. Moseley(シアトル大学)から頂いた。7372株は、クラスII papG アレル、hly遺伝子(溶血素)及びDrオペロンを有する。IH11128株は、Drオペロンを有する。C1845株はDaaオペロンを有する。全ての細菌株をLBプレート上で維持し、そして感染前に、細菌をLB培地中で37℃で18時間増殖させた。
【0045】
スタフィロコッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)株を、パスツール菌株保存機関(Pasteur culture collection)(Paris)から取得した。細菌をTSA培地(Difco Laboratories)中にて37℃で一晩増殖させた。
【0046】
細菌を、緩衝化塩化ナトリウム-ペプトン溶液(pH7.0)に、約106コロニー形成ユニット(CFU/ml)で懸濁した。500μl又は調製された懸濁液をアガー・プレート上に撒いた。植菌されたプレートを滅菌送風条件下で乾燥させた。次に、アガープレートを、密封嫌気容器(Becton Dickinson, USA)を用いて嫌気条件下で最大36時間37℃でインキュベーションした。使用前に、ガルドネラ バジナリス株(Gardnerella vaginalis strain)を、密封嫌気容器を用いて最大36時間37℃で用いて嫌気条件下で、酵母抽出物、マルトース、及びウマ血清を添加したBHI中で継代培養した。
【0047】
使用前に、細菌培養物を5500×gで5分間4℃で遠心した。培養培地を捨て、そして細菌をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、そしてPBS中に再懸濁した。
【0048】
細胞系列及び培養:以前に記載されたように(14)、ヒト頸部HeLa細胞を、10%熱不活性化(30分、56℃)胎児ウシ血清(FCS;Boehringer、 Mannheim, Germany)を添加したL-グルタミン(Life Technologies)入りRPMI1640中で、5%CO2-95%空気雰囲気下で37℃で培養した。コンフルエントになる前に、つまり培養5日後に細胞を感染アッセイに用いた。
【0049】
用いられたヒト腸細胞系列は、TC7クローン(Caco-2/TC7)であり、Caco-2親細胞系列から樹立した。以前に記載されたように、15%熱不活性化(30分、56℃)ウシ胎児血清(Invitrogen)及び1%非必須アミノ酸(Invitrogen)を添加したダルベッコ改変イーグル最小必須培地(DMEM)(25mMグルコース)(Invitrogen, Cergy, France)中で細胞を通常どおりに成長させた。維持のため、3mM・EDTAを含むPBSであって、Ca2+Mg2+を含まないPBS中に溶解した0.02%トリプシンを用いて毎週継代した。実験及び細胞の維持を、10%CO2/90%の空気雰囲気下で37℃で行った。培養培地を毎日交換した。培養15日後にコンフルエントになった後に(完全に分化した細胞)、S.エンテリカ血清型チフィムリウムの感染アッセイに細胞を用いた。
【0050】
付着アッセイ:頸部HeLa細胞及び腸管Caco-2/TC7細胞上のラクトバチルス株の付着性を、以下のステップに従って試験した:細胞単層をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で2回洗浄した。各付着アッセイについて、0.5mlのラクトバチルス懸濁液(培養液の使用済み上清を伴う細菌)を、DMEM(0.5ml)と混合し、次に組織培養プレート(24ウェル)の各ウェルに加え、次に当該プレートを10%CO2/90%空気中で37℃でインキュベーションした。被験細胞の最終濃度は、1mlあたり1×108、2×108、1×109、及び2×109の細菌である。1時間のインキュベーションの後に、単層を滅菌PBSで5回洗浄し、メタノールで固定し、グラム染色で染色し、そして油浸を用いて顕微鏡で調べた。3回の継代をした細胞を用いて、各付着アッセイを2回行った。各アッセイについて、付着した細菌の数を、20回のランダムの顕微視野で測定した(付着スコアは0〜5である)。さらに、付着した生乳酸菌を、感染細胞単層に付随する細菌の定量的測定により測定した。感染後、細胞を滅菌PBSで2回洗浄し、そして滅菌H2Oで溶解させた。適切な希釈液をトリプティック・ソイ・アガー(TSA)上に撒いて、細菌コロニー計数により生きた細胞付着性細胞の数を測定した。
各細胞付着アッセイを、3回の連続細胞継代を用いて少なくとも3回行った。結果を細胞に付着した細菌のCFU/mlとして表した。
【0051】
病原菌増殖に対する活性:MRS(5ml)を含む培養培地及び特定病原菌の培養培地(5ml)を含む培養培地に、0.1mlの培養病原菌及び0.1mlの培養乳酸菌株を植菌した。対照は、0.1mlの培養病原菌及びpH4.5に調節された0.1mlの非培養性MRSを植菌された培養培地であった。指定された時間点で、一定量を採取し、連続希釈し、そしてトリプティック・ソイ・アガー上に撒いて、病原菌の細菌コロニー計数を測定した。各アッセイを少なくとも3回行った。結果をCFU/mlとして表した。
【0052】
病原菌の生存性に対する活性:108CFU/ml病原菌を乳酸菌培地(108CFU/ml、0.5ml)と37℃でインキュベーションすることにより、コロニー計数アッセイを行った。対照は、pH4.5に調節された非培養性MRSであった。最初に、そして予め決められた間隔で、一定量を採取し、連続希釈し、そしてトリプティック・ソイ・アガー上に撒いて、病原菌の細菌コロニー計数を測定した。各アッセイを少なくとも3回行った。結果をCFU/mlとして表した。
【0053】
上皮HeLa細胞上への尿路疾患性大腸菌の付着の阻害:細胞単層感染について、上で記載されるように適切な培養培地中で37℃で18時間培養した。感染前に、24ウェルTPP組織培養プレート(ATGC、Paris, France)に調製された細胞単層をPBSで2回洗浄した。感染性の細菌を培養培地中に懸濁し、そして全体で0.5mlDMEM+0.25ml培養病原菌(1×108CFU/ml)+0.25ml乳酸菌培養物(1.5×109CFU/ml)を、組織培養プレートの各ウェルに加えた。当該プレートを37℃で10%CO2/90%空気中で、指定された感染の様々な時間の間インキュベーションし、次に滅菌PBSで3回洗浄し、そして滅菌H2Oで溶解した。適切な希釈液をトリプティック・ソイ・アガー上に撒いて、細胞に付着した生細菌数を、細菌コロニー計数により測定した。各アッセイを、3回継代させたHeLa細胞を用いて3回行った。
【0054】
分析:結果を、平均±(平均に対する)標準誤差として表す。統計比較について、スチューデントのT検定を行った。
【0055】
結果
実施例1
1. HeLa及びCaco-2/TC7細胞上へのL.ジェンセニーKS 119.1及びKS 130.1、L.クリスパタス KS 116.1、及びL.ガセリKS 124.3の付着能力
当該細胞を4種の濃度の乳酸菌(5×107;5×108;1×109CFU/ウェル)で植菌した後に、上記株の付着レベルを測定した。一般的に、濃度依存性の付着性が観察された。
【0056】
頸部HeLa細胞において、観察された付着レベルにより、全ての被験株が付着性であることが示された。L.ジェンセニー KS 119.1及びKS 130.1株、対照の付着性株であるL.カゼイ ラムノサスGG(L. casei rhamnosus GG)及びL.ラムノサスGR1(L. rhamnosus GR1)株と比べて、最良の付着性を有する株であるようだ(5×108CFU/ウェルで7.5logCFU/ml)。
【0057】
腸Caco-2/TC7細胞では、観察された付着レベルにより、全てのMedinova株が付着することが示された。L.クリスパタスKS 116.1、L.ジェンセニー 119.1、129.1、及びKS 130.1株、Lガセリ124.3株は、対照の付着性株であるL.カゼイ ラムノサスGG(L. casei rhamnosus GG)及びL.ラムノサスGR1(L. rhamnosus GR1)株と比べて、最良の付着性を有する株であるようだ(5×108CFU/ウェルで7.5〜8logCFU/ml)。
【0058】
電子顕微鏡により観察されると、「本発明の乳酸菌菌株」の全てが、HeLa及びCaco-2/TC7細胞に密接に付着していることが分かった。
その付着性質に基づいて、L.クリスパタス KS 116.1及びL.ジェンセニー 119.1を尿路膣及び胃腸病原菌に対する抗細菌活性の以下の研究について選択した。
【0059】
2. 泌尿生殖器及び胃腸の病原菌の増殖に対するKS116.1及びKS119.1の活性
上記の株がスタフィロコッカス・アウレウス、尿路疾患性及び下痢性大腸菌、及び下痢性サルモネラ・エンテリカ血清型チフィムリウム(Salmonella enterica serovar Typhimurium)の増殖に対して活性であるかを試験した。病原菌の生育を5、8、18、及び24時間で計測した。
【0060】
スタフィロコッカス・アウレウスについて、対照L.ラムノサスGR-1株(L. rhamnosus strain GR-1)及びL.ファーメンタムRC14株(L. fermentum strain RC- 14)は、細菌の生育を阻害した。同様に、L.クリスパタス KS 116.1及びL.ジェンセニー KS 119.1は、スタフィロコッカス・アウレウスの増殖を阻害し、そして生菌数を低下させた。乳酸菌株の活性が比較される場合、L.ジェンセニーKS 119.1は、最も活性な株であるようだ。
【0061】
尿路疾患性大腸菌IH1128及び7372株について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC−14は、細菌の生育を阻害した。同様に、L.クリスパタス KS 116.1及びL.ジェンセニー及びKS 119.1は、大腸菌の生育を阻害した。乳酸菌の活性を比較をする場合、L.ジェンセニー119.1が最も活性な株であるようだ。
【0062】
下痢性大腸菌C1845について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株は、細菌の生育を阻害した。同様に、L.クリスパタス KS 116.1及びL.ジェンセニーKS 119.1は、大腸菌の生育を阻害した。乳酸菌の菌株の活性を比較した場合、同程度の活性が被験乳酸菌株の全てについて見られた。
【0063】
下痢性S.エンテリカ血清型チフィムリウムSL1344株(S. enterica serovar TyphimuriumSL1344株)について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株は、細菌の生育を阻害した。同様に、L.ジェンセニー119.1は、S.エンテリカ血清型チフィムリウムの生育を阻害した。 乳酸菌株の活性を比較した場合、同程度の活性が対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株、及びL.ジェンセニーKS119.1株について見られた。対照的に、L.クリスパタスKS116.1は低い活性を示した。
【0064】
3.泌尿生殖器及び胃腸の病原菌に対するKS116.1及びKS119.1の殺菌活性
スタフィロコッカス・アウレウス、尿路疾患性及び下痢性大腸菌、及び下痢性サルモネラ・エンテリカ血清型チフィムリウムの生存性について本乳酸菌が活性であるかを試験した。病原菌の生存性についての効果を、2、3、及び4時間で計測した。
【0065】
スタフィロコッカス・アウレウスについて、対照L.ラムノサスGR1株及びL.ファーメンタムRC-14株、及びL.ジェンセニー(KS119.1)は、細菌の生存性を2log低下させた(decreased for 2 logs)。対照的に、L.クリスパタスKS116.1は活性を示さなかった。
【0066】
尿路疾患性大腸菌IH11128及び7372株について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株は、細菌の生存性を4log低下させた。L.クリスパタスKS116.1及びL.ジェンセニーKS119.1は、活性ではなく、細菌の生存性について1logの低下しか示さなかった。
【0067】
下痢性大腸菌C1845株について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株の両者、並びにL.クリスパタスKS116.1及びL.ジェンセニーKS119.1が、C1845細菌の生存性について低い活性(2logの低下)しか示さなかった。
【0068】
下痢性S.エンテリカ血清型チフィムリウムSL1344株について、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株、及びL.クリスパタスKS116.1、及びL.ジェンセニーKS119.1は、SL1344細菌の生存性を低下させること(5logの低下)によって高い活性を示した。
【0069】
4. KS116.1及びKS119.1による尿路疾患性大腸菌IH11128株のHeLa細胞への付着の阻害。
当該乳酸菌が尿路疾患性大腸菌IH11128株のHeLa細胞への付着を阻害することができるかを試験した。対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株、及びL.ジェンセニー119.1及びL.クリスパタスKS116.1を、以下の3つの濃度:1ウェルあたり1×108、5×108、及び1×109の細菌で計測した。
【0070】
IH11128の付着性の30〜40%の阻害は、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株について1ウェルあたり1×108の細菌濃度で見られた。当該濃度において、L.ジェンセニーKS119.1及びL.クリスパタスKS116.1は不活性であった。IH11128の付着阻害は、L.ジェンセニーKS119.1及びL.クリスパタスKS116.1について1ウェルあたり5×108の細菌濃度で有効であり、そして対照のL.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株について同様の阻害が得られた。IH11128の付着阻害の高いレベルが、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株、及びL.ジェンセニーKS119.1、及びL.クリスパタスKS116.1を1ウェルあたりで1×109の細菌濃度で用いて得られた。
【0071】
実施例2
1. 泌尿生殖器及び胃腸病原菌の増殖に対するL.ガセリKS124.3、L.ヘルベチカスKS300、及びL.アシドフィラスKS400の活性
上で記載された株が、スタフィロコッカス・アウレウス、並びに尿路疾患性及び下痢性大腸菌IHI1128株及び7372株の生育に対して活性であるかを試験した。病原菌の生育を、5、8、18、及び24時間で計測した。
【0072】
スタフィロコッカス・アウレウスに関して、対照L.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14株は、細菌の生育を効果的に阻害した。同様に、L.ガセリKS124.3、L.ヘルベチカスKS300、及びL.アシドフィラスKS400は、スタフィロコッカス・アウレウスの生育を阻害し、そして生菌数の減少を示した。乳酸菌株の活性が比較される場合、L.ヘルベチカスKS300は、最も活性な株であるようである。
【0073】
尿路疾患性大腸菌IH11128株では、対照株であるL.ラムノサスGR-1及びL.ファーメンタムRC-14は効果的に細菌の生育を阻害した。同様に、L.ヘルベチカスKS300は、大腸菌の生育を効果的に阻害した。乳酸菌株の活性化が比較される場合、L.ガセリKS124.3及びL.アシドフィラスKS400について低い活性が見られた。
【0074】
尿路疾患性大腸菌7372株では、対照であるL.ラムノサスGR-1及びL.ファーメンタムRC-14株の両方が、細菌生育を阻害した。同様に、L.ヘルベチカスKS300は、当該細菌の生育を阻害した一方、L.アシドフィラスKS400は25時間においてのみ活性であった。
【0075】
2. 泌尿生殖器及び胃腸病原菌に対するKS124.3、KS300、及びKS400の殺菌活性
当該乳酸菌がスタフィロコッカス・アウレウス、尿路疾患性大腸菌IH11128及び7372、及び下痢性大腸菌C1845の生存性について活性であるかを試験した。病原菌の生存性についての効果を、2、3、及び4時間で計測した。
【0076】
スタフィロコッカス・アウレウスについて、対照株であるL.ラムノサスGR-1及びL.ファーメンタムRC-14、及びL.ガセリKS124.3、L.ヘルベチカスKS300、及びL.アシドフィラスKS400は、細菌の生存性を2〜3log低下させた。
【0077】
尿路疾患性大腸菌IH11128、対照株であるL.ラムノサスGR-1株及びL.ファーメンタムRC-14及びL.ヘルベチカスKS300は、3logの低下させた一方、L.アシドフィラスKS400及びL.ガセリKS124.3は同じ条件で活性ではなかった。
【0078】
下痢性大腸菌C1845株では、対照株であるL.ラムノサスGR-1及びL.ファーメンタムRC-14の両者が細菌を殺し、当該細菌の生存性の3logの低下させた。同様の効果をL.ガセリKS124.3について観察した一方、L.アシドフィラスKS400に関して活性が検出されなかった。L.ヘルベチカスKS300は、上記対照株について観察されるより確かに高い殺菌力を示す。
【0079】
実施例3
1. 泌尿生殖器及び胃腸病原菌に対する、L.ジェンセニーKS121.1及びKS122.1、L.ガセリKS120.1、及びL.ヘルベチカスKS300の殺菌活性
当該乳酸菌株が尿路疾患性大腸菌IH11128及びサルモネラ・エンテリカ・チフィムリウムの生存性について活性であるかが試験された。病原菌の生存性についての効果を接触後4時間で計測した。
【0080】
尿路疾患性大腸菌IH11128株について、L.ジェンセニーKS121.1及びKS122.1は、活性を示さない一方、対照的に、L.ガセリKS120.1は、非振盪条件において大腸菌の生存性を効果的に低下させた(4log)。L.ヘルベチカスKS300及びL.ファーメンタムRC-1対照株は、未振盪条件で2logだけしか大腸菌の生存性を低下させない。
【0081】
サルモネラ・チフィムリウムに関して、L.ガセリKS120.1(3log)、L.ジェンセニーKS121.1及びL.ヘルベチカスKS300、及び対照株であるL.ファーメンタムRC-14は、未振盪条件でかなり活性であった(6logの低下)。L.ガセリKS120.1は、振盪条件でさえ活性であった。
【0082】
2. KS120.1、KS121.1、及びKS300による尿路疾患性大腸菌IH11128株のHeLa細胞への付着及び内在化の阻害
宿主の防御メカニズムを免れるために大腸菌などの腸外病原菌(extra-intestinal pathogens)によりしばしば用いられる戦略は、上皮細胞内の局所リザーバー(local reservoir)を確立することであり(M. A. Muvlea in Escherichia coli. Cell Microbiol. 4, 257-271 -2002)、そしてIH11128株による細胞内侵入は、これらの病原菌が尿路に長期間とどまることを促進するためのメカニズムに有効であるようだ。
L.ガセリKS120.1、L.ヘルベチカスKS300の効果、並びに対照株RC-14株及びGG株の効果は、上記尿路疾患性大腸菌に関して試験され;L.ジェンセニー121.1は生きた内在化大腸菌のレベルを2log低下させた一方、L.ガセリ120.1、L.ヘルベチカスKS300、及び両方の対照株は内在化大腸菌のレベルを4log低下させることを示した。
【0083】
実施例4
免役応答の調節(ヒトPBMCを用いたin vivo試験)
以下の株:L.クリスパタスKS116.1、L.ジェンセニー119.1、L.ジェンセニーKS121.1及びKS122.1、L.ガセリ KS 120.1、L.ガセリKS124.3、L.ヘルベチカスKS300、及びL.アシドフィラスKS400を、その免役応答を誘導、調節、又は影響する能力について、より具体的にサイトカインなどの分泌を誘導できる能力について以下に記載される条件で試験された。
【0084】
サイトカイン誘導の検出は、単離末梢血単核細胞(PMBC)のin vitro刺激について試験する手段により行われた。これらの試験の間に誘導されたサイトカインのなかには、インターロイキン10及び12(IL10及びIL12)、γ-インターフェロン(γ-IFN)、及び腫瘍壊死因子α(TNFα)が存在した。
【0085】
実験方法
PBMCの調製:健常な対象(四人のドナー)から得た新鮮血をPBS-Ca(GIBCO)を用いて1:2の比で希釈し、そしてFicoll勾配(GIBCO)上で精製した。20℃で30分間400×gにて遠心した後に、末梢血単核細胞(PMBC)は血清中に界面環状層(Interphase ring lyaer)を形成した。PMBCを注意深く吸い取り、PBD-Caを用いて最終体積50mlの体積に懸濁し、そして20℃で10分間350×gでの遠心ステップを用いて同じ緩衝液中で3回洗浄した。
【0086】
続いて10%w/vのL-グルタミン(GIBCO)及びゲンタマイシン(150μg/ml)(GIBCO)を添加した完全RPMI培地(GIBCOP)を用いて再懸濁した。PBMCを顕微鏡下で計数し、そして2×106細胞/mlの濃度で調節し、そして1mlの分量で24ウェル組織培養プレート(Corning, Inc.)中に分配した。
【0087】
細菌の調製:一晩培養したLAB培養物をPBS緩衝液pH7.2で2回洗浄し、次に2×109cfu/mlの濃度でPBS中に懸濁した。
【0088】
PMBCのインキュベーション:これらの懸濁液から10μlをPMBCプレートのウェルに移し、当該プレートを5%CO2/95%空気の雰囲気下にて37℃でインキュベーションした。24時間のインキュベーション後に上清を吸い取り、2000rpmで遠心し、そして上清を取り、そして-20℃で貯蔵した。対照は、細菌を含まない緩衝液からなった。
【0089】
サイトカインの定量:サイトカインの発現レベルをELISA試験(酵素結合免役吸着アッセイ)により測定した。ELISAプレートを抗サイトカイン抗体で(一晩)被膜し、そして抗体をPBS/BSA1%でブロッキングした。適切な標準を既知の濃度のサイトカインを用いて調製し、15.62〜2000pg/mlの検出範囲をカバーした(一晩インキュベーションした)。
【0090】
基質(TMB Pharmingen)上でストレプトアビジン反応を用いて抗サイトカインの検出及び定量を行った。市販のキット(Pharmingen)を、使用方法に従って使用した。4種のサイトカイン:炎症促進性/Th1サイトカインであるTNFα、IFNγ、IL12、及び抗炎症性/Th2サイトカインであるIL10を測定した。
【0091】
【表2】

【0092】
観察
・全ての被験LAB株について高いレベルのTNFαが誘導された。
・L.ジェンセニーKS121.1についてIFNγのレベルが比較的低かった。
・L.クリスパタスKS116.1及びKS400についてIL10の誘導が最も高かった。
・2種のL.ジェンセニー株と対照的に、特にIL10/IL12比及びTNFα/INFγ比を考慮すると、2種のL.ガセリ株は同様のプロファイルを示した。
上記試験枠の範囲で、サイトカイン誘導プロファイルは株特異的であることが明らかである。
【0093】
実施例5
抗炎症性活性の測定(動物モデルを用いたin vivo試験)
マウスの急性モデルは、Camoglioらのモデルから適用された(Eur. J. Immunol. 2000を参照のこと)。 ここで、当該動物に、-5日目〜+2日目までのあいだ選択された乳酸菌株をマウス1匹あたり1日あたり108細菌数の割合で与えた。次に、急性大腸炎を誘導するために120mg/kgマウスの割合でTNBSを注射し、そして当該動物を+2日目に屠殺し、そして続いて肉眼採点(Wallaceスコア-表1)及び組織学的採点(Amehoスコア-表2)にかけた。
これらの表により、基準株と比較した場合、選択された乳酸菌株がかなりの抗炎症性効果を示すことが示された。
【0094】
実施例6
6.1 経口投与用組成物(食用カプセル)
本発明のLAB株のサンプル(上記を参照のこと)を、上で記載された要件と同様の条件で24時間培養した。培養した株を単離し、洗浄し、そして凍結し、個別にラクトース/MSK粉末混合物中に懸濁し、そして最終的に約108〜109cfu (コロニー形成ユニット)を含む単位用量に分けた。
【0095】
それぞれ約108〜109cfuの選択されたLAB株を含む食用セルロースカプセル(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)は、以下の成分:
・乾燥ヨーグルト粉末
・無水デキストロース
・ポテトスターチ
・微結晶セルロース
・選択された凍結乾燥LAB株
を含む賦形剤を用いて製造した。
【0096】
6.2 経口投与用組成物(ヨーグルト)
いわゆる「ヨーグルト・ネイチャー・ライト」の部分は、以下の過程を用いて製造した:標準1.5%脂肪ミルクのバッチに、3%スキムミルク粉末(MSK)を加え、そしてその全てを90℃で30分間滅菌した。L.ブルガリカス(L. bulgaricus)及びS.サーモフィラス(S. thermophilus)の1%体積の市販のスターターカルチャーを低温滅菌乳汁に加え、次に全体をゆっくり室温で攪拌し、100mlの容器にいれ、当該容器を次に40℃で約4時間インキュベーションして所望のpHにした。
【0097】
次に本発明の凍結乾燥されたLAB株の一部を、ヨーグルト缶あたり約108〜109cfuを有する量になるようにヨーグルト缶に加え、そしてさらに約4.5〜4.7のpHになるまで30分間インキュベーションを行った。これらのヨーグルト部分は、消費するまで4℃で貯蔵できる。
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトにおいて胃腸感染症を予防又は治療する方法であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(L. crispatus KS 116.1)(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(L. crispatus KS 119.4)(CNCM I-3484)、 L.クリスパタス 127.1(L. crispatus 127.1)(CNCM I-3486)、L.ガセリ KS114.1(L. gasseri KS 114.1)(CNCM I-3482)、L.ガセリ KS120.1(L. gasseri KS 120.1)(CNCM I-3218)、L.ガセリ KS123.1(L. gasseri KS 123.1)(CNCM I-3485)、L.ガセリ KS124.3(L.gasseri KS 124.3)(CNCM I-3220)、L.ヘルベチカス KS300(L. helveticus KS 300)(CNCM I-3360)、L.ジェンセニー KS119.1(L. jensenii KS 119.1)(CNCM I-3217)、及びL.ジェンセニー KS121.1(L. jensenii KS 121.1)(CNCM I-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の株の治療有効量を適切な製剤上の担体と組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
ヒトの胃腸管内で病原菌の付着、コロニー形成、及び/又は増殖を妨げるか又は阻害する方法であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の治療有効量を適切な製剤上の担体と組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項3】
特に炎症性症候群及び感染性症候群を阻害するために、膣及び/又は胃腸管レベルで免役の細胞性又は液性免役応答を調節する方法であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の治療有効量を適切な製剤上の担体と組み合わせて含む医薬製剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
前記適切な製剤上の担体が、経口投与用に設計される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ヒトにおいて胃腸感染症を予防又は治療するために有用な医薬組成物であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の治療有効量を含む、前記組成物。
【請求項6】
ヒトの胃腸管内で病原菌の付着、コロニー形成、及び/又は増殖を妨げるか又は阻害するために有用な医薬組成物であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の治療有効量を含む、前記方法。
【請求項7】
特に、炎症性症候群並びに感染性症候群を阻害するために胃腸管レベルで細胞性又は液性免役の調節に有用な医薬組成物であって、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の治療有効量を含む、前記医薬組成物。
【請求項8】
前記医薬組成物がLAB増殖因子をさらに含み、そして経口投与用に設計される、請求項5〜7のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載される医薬組成物の製造のための、以下の:
L.クリスパタス KS116.1(CNCM I-3483)、L.クリスパタス KS119.4(CNCM I-3484)、L.クリスパタス127.1(CNCM I-3486)、L.ガセリKS114.1(CNCMI-3482)、L.ガセリKS120.1(CNCMI-3218)、L.ガセリKS123.1(CNCMI-3485)、L.ガセリKS124.3(CNCMI-3220)、L.ヘルベチカスKS300(CNCMI-3360)、L.ジェンセニーKS119.1(CNCMI-3217)、及びL.ジェンセニーKS121.1(CNCMI-3219)
からなる群から選ばれる少なくとも1の乳酸菌株の使用。

【公表番号】特表2008−517015(P2008−517015A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537180(P2007−537180)
【出願日】平成17年10月17日(2005.10.17)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011151
【国際公開番号】WO2006/045474
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(507132695)メディノバ アクチェンゲゼルシャフト (1)
【Fターム(参考)】