説明

胃食道病理学を処置するための筋由来細胞ならびにその作成法および使用法

本発明により、体組織に移植後、長期生存する筋由来前駆細胞が提供される。これにより、軟部組織の部位に(例えば、注入、移植または植込みにより)導入後、軟部組織を増大することができる。さらに、筋由来前駆細胞の単離方法および遺伝子導入療法のための細胞の遺伝子操作方法が提供される。本発明により、奇形、損傷、衰弱、疾病または機能不全などのさまざまな美容または機能的症状の処置においてヒトなどの哺乳動物の軟部組織の増大および増量のために筋由来前駆細胞含有組成物を使用する方法がさらに提供される。具体的には、本発明により、胃−食道逆流のような胃−食道の病変に関する症状の処置および改善が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋由来前駆細胞(MDC:muscle−derived progenitor cell)およびMDCの組成物ならびに体組織、特に胃組織および食道組織のような軟部組織の増大にこれらを使用することに関する。具体的には、本発明は、軟部組織に導入後、長期生存する筋由来前駆細胞、MDCの単離方法ならびにヒトまたは動物の、胃組織および食道組織などの軟部組織の増大のためにMDC含有組成物を使用する方法に関する。本発明は、胃食道逆流性疾患などの機能的疾患を処置するための筋由来前駆細胞の新しい使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンまたはポリテトラフルオロエチレン(PTFE:polytetrafluoroethylene)などの合成材料を使用する軟部組織の増大が当技術分野で周知である。Arnettの特許文献1では、顔面形成術用シリコーン・インプラントの使用を開示している。しかしながら、そのような合成材料は、宿主組織にとって異物であり、免疫反応を引き起こす。その結果、インプラントが被包され、周囲組織が瘢痕化する。このように、インプラントは、さらに機能的または審美的問題を起こす可能性もある。
【0003】
コラーゲンまたはヒアルロン酸などの生体高分子を使用する軟部組織の増大についても開示されてきた。例えば、Wallaceらの特許文献2では、コラーゲン・インプラント材料を利用した軟部組織の増大方法を開示している。さらに、della Valleらの特許文献3では、美容整形で使用可能なヒアルロン酸エステルを開示している。しかしながら、これらの生体高分子も宿主組織にとって異物であり、免疫反応を引き起こす。その結果、注入された材料が再吸収される。このように、生体高分子は、長期間組織の増大を提供することができない。総合的に、生体高分子または合成材料の使用は、軟部組織を増大する目的において完全に満足のいくものではなかった。
【0004】
細胞ベースの組成物を使用する軟部組織の増大も開発されてきた。Boss,Jr.の特許文献4では、皮膚欠損の美容および審美的処置のための自家皮膚線維芽細胞の使用を開示している。この処置によれば合成材料または生体高分子の植込みまたは注入に固有の問題を避けられるが、結果として別の面倒な問題が生じる。線維芽細胞はコラーゲンを生成するため、この細胞によって植込み部位周囲の組織の硬化および歪みが生じる可能性がある。
【0005】
注入可能な増量剤として自家の脂肪細胞の使用も述べられてきた。(確認用に以下を参照。非特許文献1;American Society of Plastic and Reconstructive Surgery:Report on autologous fat transplantation by the ad hoc committee on new procedures,1987,Chicago:American Society of Plastic and Reconstructive Surgery;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6。しかしながら、注入された脂肪は宿主に再吸収されるため、この脂肪の移植手技は一時的な増大を提供するにすぎない。さらに、脂肪の移植が、小結節形成および組織の非対称性の原因となる可能性がある。
【0006】
胃食道逆流性疾患で苦しむ患者に対して内視鏡による増量材の送達が試みられてきた。しかしながら、最近、FDAの提言によってENTERYX(登録商標)が回収されたため、この疾病のより安全な処置が必要である。
【0007】
筋線維の前駆体である筋芽細胞は、融合して分裂終了多核筋管を形成する単核筋細胞であり、長期間生物活性タンパク質の発現および送達を提供することができる(非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9;非特許文献10;非特許文献11)。
【0008】
培養筋芽細胞には、幹細胞の自己複製する性質をいくらか示す細胞の亜集団が含まれる(非特許文献12)。そのような細胞は、融合して筋管を形成せず、単独で培養されない限り分裂しない。(非特許文献12参照)。筋芽細胞移植(以下を参照)の研究から、移植された細胞の大部分はすぐに死ぬが、少数は生き残り、新しい筋肉の形成を媒介することが示されてきた(非特許文献13)。この少数の細胞は、組織培養中はゆっくりと成長し、移植後に急速に成長するなどの独特な性質を示す。これは、これらの細胞が筋芽細胞の幹細胞である可能性を示唆する(非特許文献13参照)。
【0009】
筋肉に関連したさまざまな疾患および筋肉に関連しないさまざまな疾患の処置に、遺伝子療法の媒体として筋芽細胞が使用されてきた。例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの処置のために、遺伝子操作された筋芽細胞、または遺伝子操作されていない筋芽細胞の移植が使用されてきた(非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18;非特許文献19)。さらに、筋芽細胞は、1型糖尿病の処置のためにプロインスリンを(L.Grosら、1999,Hum.Gen.Ther.10:1207 17);血友病Bの処置のために第IX因子を(M.Romanら、1992,Somat.Cell.MoI.Genet.18:247 58;S.N.Yaoら、1994,Gen.Ther.1 :99 107;J.M.Wangら、1997,Blood 90:1075 82;G.Hortelanoら、1999,Hum.Gene Ther.10:1281 8);アデノシンデアミナーゼ欠損症の処置のためにアデノシンデアミナーゼを(C.M.Lynchら、1992,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:1138 42);慢性貧血の処置のためにエリスロポエチンを(E.Regulierら、1998,Gene Ther.5:1014 22;B.Dalleら、1999,Gene Ther.6:157 61)、成長遅滞の処置のためにヒト成長ホルモンを(K.Anwerら、1998,Hum.Gen.Ther.9:659 70)生成するように遺伝子改変されてきた。
【0010】
Lawらの米国特許第5,130,141号、Blauらの米国特許第5,538,722号およびChancellorらによって1999年4月30日に出願された米国特許出願第09/302,896号で開示されたように、筋芽細胞は、筋組織の損傷または疾病の処置にも使用されてきた。さらに、筋芽細胞移植は心筋機能不全の修復のためにも使用されてきた(C.E.Murryら、1996,J.Clin.Invest.98:2512 23;B.Z.Atkinsら、1999,Ann.Thorac.Surg.67:124 129;B.Z.Atkinsら、1999,J.Heart Lung Transplant.18:1173 80)。
【0011】
上記にもかかわらず、ほとんどの場合、初期の筋芽細胞による処置は、移動および/またはファゴサイトーシスにより移植後の細胞生存率が低かった。この問題を回避するために、Atalaの米国特許第5,667,778号では、アルギン酸などの液体高分子中に懸濁させた筋芽細胞の使用を開示している。この高分子溶液は、注入後に筋芽細胞の移動および/または筋芽細胞がファゴサイトーシスを受けるのを防ぐマトリクスとして働く。しかしながら、高分子溶液は上述の生体高分子と同様の問題をもたらす。さらに、Atala特許では、筋芽細胞の使用を筋組織のみに限っており、他の組織には使用していない。
【0012】
このため、長期間効果があり、宿主組織の広い範囲に適合し、植込み部位周囲の組織に生じる炎症、瘢痕および/または硬化が最小限である、別の異なった軟部組織増大材料が必要である。そこで、軟部組織を増大するための改良された新しい材料として、本発明の筋由来前駆細胞含有組成物を提供する。さらに、移植後、長期生存する筋由来前駆細胞組成物の生成方法ならびに、例えば、皮膚の疾患または外傷および筋肉の衰弱、外傷、疾病または機能不全などのさまざまな審美的欠損および/または機能的欠損を処置するためのMDCおよびMDC含有組成物の使用方法を提供する。
【0013】
注目すべきは、非筋肉軟部組織を増大するために筋芽細胞を使用する以前の試みが成功しなかったことである(Atalaの米国特許第5,667,778号)。このため、本発明による筋由来前駆細胞が、首尾よく上皮組織などの非筋肉軟部組織および筋肉軟部組織に移植され、長期生存を示すことができるという、本明細書で開示された結果は予期しないものであった。結果として、MDCおよびMDC含有組成物を、筋肉軟部組織または非筋肉軟部組織の増大ならびに骨形成のための全般的な増大材料として使用することができる。さらに、本発明の筋由来前駆細胞および組成物は、自己から得ることができるため、増大材料の再吸収ならびに植込み部位周囲の組織の炎症および/または瘢痕などの宿主の免疫学的合併症のリスクを減少させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第5,876,447号明細書
【特許文献2】米国特許第4,424,208号明細書
【特許文献3】米国特許第4,965,353号明細書
【特許文献4】米国特許第5,858,390号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】K.Makら、Otolaryngol.Clin.North.AM.(1994)27:211 22
【非特許文献2】A.Chaichirら、Plast.Reconstr.Surg.(1989)84:921 935
【非特許文献3】R.A.Ersek、Plast.Reconstr.Surg.(1991)87:219 228
【非特許文献4】H.W.Horlら、Ann.Plast.Surg.(1991)26:248 258
【非特許文献5】A.Nguyenら、Plast.Reconstr.Surg.(1990)85:378 389
【非特許文献6】J.Sartynskiら、Otolaryngol.Head Neck Surg.(1990)102:314 321
【非特許文献7】T.A.Partridge and K.E.Davies,Brit.Med.Bulletin(1995)51:123 137
【非特許文献8】J.Dhawanら、Science(1992)254:1509 12
【非特許文献9】A.D.Grinnell、Myology Ed 2,A.G.Engel and C.F.Armstrong,McGraw−Hill,Inc.,(1994)303 304
【非特許文献10】S.Jiao and J.A.Wolff、Brain Research(1992)575:143 7
【非特許文献11】H.Vandenburgh、Human Gene Therapy(1996)7:2195 2200
【非特許文献12】A.Baroffioら、Differentiation(1996)60:47 57
【非特許文献13】J.R.Beuchampら、J.Cell Biol.(1999)144:1113 1122
【非特許文献14】E.Gussoniら、Nature(1992)356:435 8
【非特許文献15】J.Huardら、Muscle & Nerve(1992)15:550 60
【非特許文献16】G.Karpatiら、Ann.Neurol.,(1993)34:8 17
【非特許文献17】J.P.Tremblayら、Cell Transplantation,(1993)2:99 112
【非特許文献18】P.A.Moissetら、Biochem.Biophys.Res.Commun.(1998)247:94 9
【非特許文献19】P.A.Moissetら、Gene Ther.(1998)5:1340 46
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の目的は、移植後、長期生存する新しい筋由来前駆細胞(MDC)およびMDC組成物を提供することである。本発明のMDCおよびMDC含有組成物には、初期の筋細胞の前駆細胞、すなわち、筋由来幹細胞が含まれる。これらは、デスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する。さらに、これらの初期の筋細胞の前駆細胞は、Flk−1、Sca−1、MNFおよびc−met細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない。
【0017】
本発明の別の目的は、開始筋細胞集団から筋由来前駆細胞を単離する方法および濃縮させる方法を提供することである。これらの方法は、結果として、軟部組織の部位への移植または導入後の長期生存性を示すMDCを濃縮することになる。本発明によるMDC集団は、特にデスミン、M−カドヘリン、MyoD、ミオゲニン、CD34およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する細胞とともに濃縮する。このMDC集団は、Flk−1、Sca−1、MNFおよびc−met細胞マーカーも発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、移植のための高分子担体または特別な培地を必要とせず、平滑筋およびさまざまな臓器組織などの筋肉軟部組織または非筋肉軟部組織の増大のためにMDCおよびMDC含有組成物を使用する方法を提供することである。そのような方法には、組織への直接注入または組成物の全身投与などによる軟部組織への導入によってMDC組成物を投与することが挙げられる。軟部組織には、骨以外の体組織が含まれることが好ましい。軟部組織には、横紋筋以外および骨以外の体組織が含まれることがより好ましい。軟部組織には、筋肉以外および骨以外の体組織が含まれることが最も好ましい。本明細書で使用する増大とは、充填、増量、支持、増殖、拡張または体組織の大きさまたは量の増加を指す。
【0019】
本発明の別の目的は、皮膚あるいは内部の軟部組織または内臓の損傷、創傷、手術、外傷、非外傷または結果的に亀裂、開口、陥没、創傷などになるその他の手技後に筋由来または非筋由来の軟部組織のどちらかの軟部組織を増大する方法を提供することである。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、胃食道逆流症状および疾患に対するMDCによる処置を提供することである。胃食道の病変の処置にMDCおよびMDC含有組成物を含む薬剤組成物を使用することもできる。これらの薬剤組成物には、単離されたMDCが含まれる。これらのMDCは、単離後に続いて細胞培養によって増殖されてもよい。本発明の一実施形態では、これらのMDCは、薬剤組成物を必要とする対象への送達に先立って凍結される。
【0021】
一実施形態では、MDCおよびその組成物が胃食道逆流を処置するために使用される場合、食道に直接注入される。下部食道括約筋に注入されるのが好ましい。別の実施形態では、MDCおよびその組成物が胃食道逆流性疾患の少なくとも1つの症状を改善するために使用される。これらの症状には、胸やけ、喘息、酸逆流、持続性咽頭炎、嗄れ声、慢性咳、胸痛および咽喉に塊があるような感覚が挙げられる。
【0022】
MDCについては、骨格筋の生検材料から単離する。一実施形態では、生検材料からの骨格筋を、1〜6日間保管してもよい。この実施形態の一態様では、生検材料からの骨格筋を、4℃で保管する。MDCは、その後プレプレーティングまたはシングルプレーティング法を使用して単離する。
【0023】
プレプレーティング法を使用して、骨格筋細胞の懸濁液の線維芽細胞が付着する第一容器に、骨格筋組織からの骨格筋細胞の懸濁液をプレーティングする。次に、付着しなかった細胞を、第二容器に再プレーティングする。この再プレーティングのステップは、約15〜約20%の細胞が第一容器に付着したら行う。この再プレーティングステップを、少なくとも1回は繰り返えさなければならない。これによりMDCを単離し、哺乳類の対象の食道に投与することもできる。
【0024】
シングルプレーティング法を使用して、細胞を切り刻み、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、他の酵素または酵素の組み合わせを使用して消化する。細胞から酵素を洗浄した後、細胞をフラスコ内の培地で約30〜約120分間培養する。この期間中、「急速に付着する細胞」はフラスコまたは容器の壁にくっつくが、「ゆっくりと付着する細胞」またはMDCは懸濁液中に残存する。「ゆっくりと付着する細胞」を第二フラスコまたは容器に移し、そこで1〜3日間培養する。この第二の期間中、「ゆっくりと付着する細胞」またはMDCが第二フラスコまたは容器の壁にくっつく。
【0025】
本発明の別の実施形態では、これらのMDCをかなり多数の細胞にまで増殖する。この実施形態の好ましい態様では、細胞を新しい培地で約10〜20日間増殖する。より好ましくは、細胞を17日間増殖する。
【0026】
MDCは、それが増殖されたものであろうとなかろうと、使用前の期間、輸送または保管のために保存してもよい。一実施形態では、MDCを凍結する。好ましくは、約−20〜−90℃で凍結する。より好ましくは、約−80℃で凍結する。凍結されたMDCは、薬剤組成物として使用される。
【0027】
本発明によって提供されるさらなる目的および利点は、以下の詳述および具体例によって明らかになるであろう。
【0028】
本発明をさらに説明するために、さらにさまざまな態様を明確にすることによりその理解を助けるために添付の図面にある図を提示する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1A】MDC組成物の注入を利用した下部食道軟部組織増大の結果を示す。注入は胃食道接合部になされた。注入後3日目に組織サンプルを採取し、分析の準備をした。MDCは、β−ガラクトシダーゼ染色によって示される。図1Aは、注入された組織を倍率100倍で示す。図1Aから、MDC注入によって注入後3日間下部食道括約筋軟部組織の増大が維持されたことがわかる。
【図1B】MDC組成物の注入を利用した肛門括約筋軟部組織増大の結果を示す。注入は肛門括約筋になされた。注入後3日目に組織サンプルを採取し、分析の準備をした。MDCは、β−ガラクトシダーゼ染色によって示される。図1Bは、注入された組織を倍率40倍で示す。図1Bから、MDC注入によって注入後3日間肛門括約筋軟部組織の増大が維持されたことがわかる。
【図2A】DiI標識ラットMDCの注入1ヶ月後のラット幽門の共焦点蛍光顕微鏡写真を示す。図2Aは、DiI標識顕微鏡写真を示す。
【図2B】DiI標識ラットMDCの注入1ヶ月後のラット幽門の共焦点蛍光顕微鏡写真を示す。図2Bは、左から右に、DiI標識顕微鏡写真、平滑筋アクチン標識顕微鏡写真、組み合わせた顕微鏡写真を示す。
【図2C】DiI標識ラットMDCの注入1ヶ月後のラット幽門の共焦点蛍光顕微鏡写真を示す。図2Cは、左から右に、DiI標識顕微鏡写真、骨格筋ミオシン標識顕微鏡写真、組み合わせた顕微鏡写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
筋由来細胞および組成物
本発明は、体組織、好ましくは軟部組織への移植後、長期生存率を示す初期の前駆細胞(本明細書中で筋由来前駆細胞または筋由来幹細胞とも呼ぶ)からなるMDCを提供する。本発明のMDCを得るために、ドナー動物、好ましくはラット、イヌおよびヒトなどの哺乳動物から筋肉外植片、好ましくは骨格筋を採取する。この外植片は、筋肉前駆体細胞の「残部」を含む構造的および機能的合胞体となる(T.A.Partridgeら、1978,Nature 73:306 8;B.H.Liptonら、1979,Science 205:12924)。
【0031】
線維芽細胞、筋芽細胞、脂肪細胞、造血前駆細胞および筋由来前駆細胞の混合物を含む初期の筋組織から細胞を単離する。例えば、Chancellらの米国特許第6,866,842号などに記載されたように、筋由来集団の前駆細胞は、コラーゲンコートした組織フラスコに対する初期の筋細胞の付着特性が異なることを利用して濃縮させることができる。ゆっくりと付着する細胞は、形態的に球形になり、高レベルでデスミンを発現し、融合して多核筋管に分化する能力を有する傾向がある(Chancellらの米国特許第6,866,842号)。これらの細胞の亜集団は、アルカリホスファターゼ、甲状腺ホルモン依存性の3’,5’−cAMPならびに骨系統および筋系統の濃度増加を示すことにより、in vitroで組換え型ヒト骨形態形成タンパク質−2(rhBMP−2:recombinant human bone morphogenic protein)に反応することが示された(Chancellorらの米国特許第6,866,842号;T.Katagiriら、1994,J.Cell Biol.,127:1755 1766)。
【0032】
本発明の一実施形態では、急速に付着する細胞とゆっくりと付着する細胞(MDC)とを識別するために、プレプレーティング手順を使用することもできる。本発明に従って、急速に付着する細胞(PP1−4)およびゆっくりと付着する球形のMDC(PP6)の集団を、骨格筋外植片から単離・濃縮し、免疫組織化学を使ったさまざまなマーカー発現に関する試験をして、ゆっくりと付着する細胞の中に多能性細胞が存在するかの判定をした(実施例1;Chancellorらの米国特許出願第09/302,896号)。PP6細胞は、デスミン、MyoDおよびミオゲニンなどの筋原性マーカーを発現した。PP6細胞は、筋形成の初期段階で発現する2つの遺伝子c−metおよびMNFも発現した(J.B.Millerら、1999,Curr.Top.Dev.Biol.43:191 219)。PP6については、サテライト細胞特異的マーカーであるM−カドヘリンを発現する細胞の割合は低かったが(A.Irintchevら、1994,Development Dynamics 199:326 337)、筋形成の初期段階の細胞に限定されるマーカーであるBcl−2を発現する細胞の割合は高かった(J.A.Dominovら、1998,J.Cell Biol.142:537 544)。PP6細胞は、ヒト造血前駆細胞ならびに骨髄間質細胞前駆体に関係するマーカーであるCD34も発現した(R.G.Andrewsら、1986,Blood 67:842 845;C.I.Civinら、1984,J.Immunol.133:157 165;L.Finaら、1990,Blood 75:2417 2426;P.J.Simmonsら、1991,Blood 78:2848 2853)。PP6細胞は、幹細胞のような特性がある造血細胞のマーカーとして最近特定されたヒトKDR遺伝子のマウスホモログであるFlk−1も発現した(B.L.Zieglerら、1999,Science 285:1553 1558)。同様に、PP6細胞は、幹細胞のような特性がある造血細胞に存在するマーカーであるSca−1を発現した(M.van de Rijnら、1989,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:4634 8;M.Osawaら、1996,J.Immunol.156:3207 14)。一方、PP6細胞は、造血幹細胞マーカーであるCD45またはc−Kitは発現しなかった(L K.Ashman,1999,Int.J.Biochem.Cell.Biol.31:1037 51;G.A.Koretzky,1993,FASEB J.7:420 426を確認のこと)。
【0033】
本発明の一実施形態は、本明細書に記載した特性を有する筋由来前駆細胞のPP6集団である。これらの筋由来前駆細胞は、デスミン、CD34およびBcl−2細胞マーカーを発現する。本発明に従って、PP6細胞は、明細書中(実施例1)に記載の技法によって単離され、移植後の長期生存率を示す筋由来前駆細胞の集団が得られる。PP6筋由来前駆細胞集団には、デスミン、CD34およびBcl−2などの前駆細胞マーカーを発現する細胞がかなりの割合で含まれる。さらに、PP6細胞は、Flk−1およびSca−1細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitマーカーは発現しない。好ましくは、95%を超えるPP6細胞が、デスミン、Sca−1およびFlk−1マーカーを発現するが、CD45またはc−Kitマーカーは発現しない。PP6細胞は、最終プレーティング後約1日または約24時間以内に利用されることが好ましい。
【0034】
好適な実施形態では、急速に付着する細胞およびゆっくりと付着する細胞(MDC)は、シングルプレーティング法を使用してそれぞれ分けられる。そのような一技法を実施例2に記載する。まず、細胞は骨格筋生検材料から得る。生検材料は細胞を約100mg含んでさえいればよい。本発明のプレプレーティングおよびシングルプレーティングの両方法に従った特定の実施形態では、大きさが約50mg〜約500mgの範囲の生検材料が使用される。さらに、本発明のプレプレーティングおよびシングルプレーティングの両方法に従って、50、100、110、120、130、140、150、200、250、300、400および500mgの生検材料を使用してもよい。
【0035】
本発明の好適な実施形態では、生検材料からの組織をその後1〜7日間保管する。この保管の温度はおよそ室温から約4℃である。この待ち時間によって、生検骨格筋組織はストレスを受ける。このストレスは、シングルプレーティング法を使用するMDCの単離に必須なものではないが、待ち時間を取り入れると結果的にMDCの収率がさらに増加するように思われる。
【0036】
生検材料からの組織を切り刻み、遠心分離する。ペレットを、再懸濁し、消化酵素を使用して消化する。使用できる酵素には、コラゲナーゼ、ディスパーゼまたはそれら酵素の組み合わせが挙げられる。消化後、細胞から酵素を洗浄する。急速に付着する細胞を単離するために、細胞をフラスコの培地に移す。多くの培地が使用可能である。特に好ましい培地には、Cambrex内皮増殖培地など内皮細胞を培養するために設計された培地が挙げられる。この培地に、ウシ胎児血清、IGF−1、bFGF、VEGF、EGF、ヒドロコルチゾン、ヘパリンおよび/またはアスコルビン酸などの他の成分を添加してもよい。シングルプレーティング法で使用できる他の培地には、InCeIl M310F培地が挙げられる。この培地には上記のような添加をしてもよいし、添加せずに使用してもよい。
【0037】
急速に付着する細胞を単離するステップでは、フラスコ内での約30〜約120分間の培養を必要とすることもある。急速に付着する細胞は、30、40、50、60、70、80、90、100、110または120分後にフラスコに付着する。細胞の付着後、急速に付着する細胞が付着するフラスコから培地を取り除くことによって、急速に付着する細胞からゆっくりと付着する細胞を分離する。
【0038】
このフラスコから取り除かれた培地を、次に第二フラスコに移す。第二フラスコに移す前に、細胞を遠心分離し、培地に再懸濁してもよい。細胞を、第二フラスコで1〜3日間培養する。好ましくは、細胞を2日間培養する。この期間中、ゆっくりと付着する細胞(MDC)がフラスコに付着する。MDCが付着した後、培地を取り除き、MDCの数を増大できるように新しい培地を加える。MDCを約10〜約20日間培養することにより、数を増大させることもできる。MDCを10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20日間培養することにより、数を増大させてもよい。好ましくは、MDCを培養において17日間増殖させる。
【0039】
本発明のMDCは、プレプレーティングおよびシングルプレーティング法の代替として、MDCによって発現される1つ以上の細胞表面マーカーに対する標識抗体を使用した蛍光標識細胞分取(FACS:fluorescence−activated cell sorting)分析によって単離することができる(C.Websterら、1988,Exp.Cell.Res.174:252 65;J.R.Blantonら、1999,Muscle Nerve 22:43 50)。例えば、FACS分離は、宿主組織に導入された場合に長期生存率を示すPP6様細胞の集団を選択するためにCD34、Flk−1、Sca−1および/または本明細書に記載されるその他細胞表面マーカーを対象とする標識抗体を使用して行うことができる。さらに、種々の細胞マーカータンパク質の抗体検出のために、例えば、フルオレセインまたはローダミンなどの1つ以上の蛍光検出用標識の使用も本発明に包含される。
【0040】
上記のMDC単離方法のいずれかを使用し、輸送されるMDCまたはしばらくの間使用されないMDCを、当技術分野で周知の方向を使用して保存してもよい。より具体的には、単離したMDCを、約−25〜約−90℃の範囲の温度に凍結してもよい。好ましくは、後で使用するため、または輸送のために、MDCをドライアイス上で約−80℃で凍結する。凍結は、当技術分野で周知のいかなる凍結保存用培地で行ってもよい。
【0041】
筋由来細胞による処置
本発明の一実施形態では、MDCは、骨格筋から単離され、対象の筋肉または非筋肉軟部組織部位に導入または移植される。有利には、発明のMDCは、単離され、移植後長期生存する前駆細胞を多数含むように濃縮される。さらに、本発明の筋由来前駆細胞は、デスミン、CD34およびBcl−2などの多くの特徴的な細胞マーカーを発現する。さらに、本発明の筋由来前駆細胞は、Sca−1およびFlk−1細胞マーカーを発現するが、CD45またはc−Kit細胞マーカーは発現しない(実施例1を参照)。
【0042】
筋肉または非筋肉軟部組織の増大によってさまざまな審美的または機能的な状態(例えば、欠損)を修復、処置または改良するために、本発明のMDCおよびMDC含有組成物を使用することができる。特に、胃食道逆流症状または疾患の処置のために上記そのような組成物を軟部組織増量剤として使用することができる。
【0043】
MDCによる処置のために、骨格筋外植片は、自家または異なるヒトまたは動物源から採取するのが好ましい。動物またはヒトの自己由来のものがより好ましい。MDC組成物は、次に本明細書に記載のとおりに調製され、単離される。本発明によるMDCおよび/またはMDC含有組成物をヒトまたは動物のレシピエントに導入または移植するためには、単核筋細胞の懸濁液を調製する。そのような懸濁液には、生理学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤中に本発明の筋由来前駆細胞の濃縮物が含まれる。例えば、対象に投与するためのMDCの懸濁液には、ウシ胎児血清の代替物として対象の血清を含むように改良された完全培地の滅菌溶液中に10〜10個の細胞/mlを含めることができる。あるいは、MDCを、凍結保存溶液などの血清を含まない滅菌溶液中に懸濁することもできる(Celox Laboratories,St.Paul,Minn.)。次に、MDC懸濁液を、例えば、注入によってドナー組織の1つ以上の部位に導入することができる。
【0044】
記載された細胞は、生理学的に許容できる担体、賦形剤または希釈剤を含む製薬学的または生理学的に許容できる製剤または組成物として投与することができ、ヒトおよび非ヒト動物など、対象となるレシピエント生物の組織に投与することができる。MDC含有組成物は、滅菌生理食塩水またはその他の生理学的に許容できる注入可能な水性液体などの適した液体あるいは溶液に細胞を再懸濁することによって調製することができる。そのような組成物に使用される成分量は、当業者がルーチン的に決定できる。
【0045】
MDCまたはその組成物は、MDC懸濁液を、吸収性または接着性材料、すなわち、コラーゲンスポンジ基質上に配置することによって、あるいは、MDC含有材料を対象の部位中にまたはその上に挿入することによって投与することができる。あるいは、MDCは、皮下、静脈、筋肉および胸骨内などの非経口経路の注入によって投与することができる。別の投与方法には、以下に限定されるものではないが、鼻腔内、髄腔内、皮内、経皮、腸内および舌下が挙げられる。本発明の一実施形態では、MDCの投与は、内視鏡手術によって行うことができる。
【0046】
注入可能な投与にするためには、組成物を、滅菌溶液または懸濁液中にあるものとするか、または組成物を製薬学的および生理学的に許容可能な水性または油性媒体中に再懸濁してもよく、これらは保存剤、安定剤、および溶液または懸濁液をレシピエントの体液(すなわち、血液)と等張にするための材料を含んでもよい。使用に適した賦形剤の非限定的な例には、水、リン酸緩衝食塩水、pH7.4、0.15Mの塩化ナトリウム水溶液、ブドウ糖、グリセロール、希エタノールなどおよびそれらの混合物が挙げられる。安定剤の具体例は、ポリエチレングリコール、タンパク質、糖類、アミノ酸、無機酸および有機酸であり、単独で使用してもよいし、混合物として使用してもよい。量または分量ならびに使用する投与経路は、個々の基準により決定され、当業者に周知の同様のタイプの投与または指示で使用されている量に相当する。
【0047】
移植の成功を最大限にするために、ドナーとレシピエントの免疫学的適合性をできる限り高いものにすることが望ましい。自家のものが入手できない場合、ドナーとレシピエントのクラスIおよびクラスII組織適合抗原を調べて、最も適合する入手可能なものを決定することができる。これにより免疫拒絶を最小限にするか、それをなくし、免疫抑制または免疫調節療法の必要性を減らす。必要であれば、免疫抑制または免疫調節療法を移植手技前、移植手技中および/または移植手技後に開始してもよい。例えば、シクロスポリンAまたはその他の免疫抑制剤を移植レシピエントに投与してもよい。さらに、移植に先立って当技術分野で周知の別の方法によって免疫寛容を誘導してもよい(D.J.Wattら、1984,Clin.Exp.Immunol.55:419;D.Faustmanら、1991,Science 252:1701)。
【0048】
本発明に従って、MDCは、消化器系(例えば、口、舌、食道、胃、肝臓、膵臓、胆嚢、腸、肛門など)に投与される。
【0049】
内腔の疾患:別の実施形態では、本発明によるMDCおよびその組成物には、動物またはヒトなどの哺乳動物対象の内腔の疾患に対する処置としての効用が別にある。特に、筋由来前駆細胞は、さまざまな生物内腔または体内の間隙の完全または部分的な封鎖、強化、増殖、密閉、修復、増量または充填に使用される。以下に限定されないが、内腔には、腸、胃および食道が含まれる。以下に限定されないが、間隙には、さまざまな組織創傷(例えば、外傷による筋肉および軟部組織量の損失;刺創または銃創などの投射体の貫通による軟部組織の破壊;病気による軟部組織の損失または組織の外科的切徐による組織死)、障害、亀裂、憩室、嚢胞、瘻孔、および動物またはヒトなどの哺乳動物の体内に存在する可能性のあるその他の有害または望ましくない陥没または開口を含むこともできる。内腔の疾患を処置するために、MDCが本明細書に開示したとおりに調製され、次いで、間隙を充填または修復するために、例えば、注射または静脈送達経によって内腔組織に投与される。要求に応じて、導入されるMDCの数は調節され、軟部組織環境の大小の間隙を修復する。
【0050】
括約筋の疾患:本発明によるMDCおよびその組成物を、動物またはヒトなどの哺乳動物の括約筋の損傷、衰弱、疾病または機能不全の処置のために使用することもできる。特に、MDCは、食道、肛門および幽門括約筋の組織を増大するために使用される。好ましくは、括約筋は下部食道括約筋である。より具体的には、本発明は、胃食道逆流症状のための軟部組織増大処置を提供する。括約筋欠損の処置のために、本明細書に記載のとおりにMDCが調製され、次いで、さらに増量、充填または支持を提供するために、例えば、注入によって括約筋に投与される。要求に応じて、導入されるMDCの数を調節し、増量材の量を変える。例えば、胃食道接合部のおよそ5mm領域または肛門括約筋のおよそ5〜10mmの領域で増大させるには、約1〜約5×10のMDCが使用される(実施例3参照)。処置された括約筋領域の筋壁および/または粘膜筋板内に存在するように上記細胞を移植することができる。同じく、下部食道括約筋の処置でも、括約筋の圧力を増加させるために、および/または例えば患部下部食道が約4未満のpHを示した時間率(fraction of time)から判断されるような食道への酸逆流を減少させるために、細胞移植が効果的である可能性がある。
【0051】
筋肉増大および収縮性:本発明のさらに別の実施形態では、MDCおよびその組成物が、ヒトまたは動物対象の筋疾患の処置のために使用される。特に、MDCを、損傷、疾病、不活性、または酸素欠乏もしくは手術により生じた外傷が原因の衰弱または機能不全を処置するための平滑筋増大に使用することができる。
【0052】
筋肉増大または筋肉に関連する疾患の処置のために、上記のとおりMDCが調製され、さらに増量、充填または支持を提供するために、例えば、注入によって筋組織に投与される。当業者であればわかることであるが、必要または要求に応じて、導入されるMDCの数を調節し、増量材の量を変える。
【0053】
さらに、MDCおよびその組成物を、例として胃腸組織および食道組織などの平滑筋組織の収縮性に影響を与えるために使用することができる。筋収縮回復および/または食道、胃および腸の平滑筋などの平滑筋収縮の問題、例えば、胃腸運動の低下などの改善もしくは克服への本発明のMDCの使用も本発明に包含される。以下に限定しないが、本発明のMDCによって改善、減少または矯正できる具体的な疾患例は、胃不全麻痺、すなわち、胃の運動性および排出の低下である。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
プレプレーティング(pre-plating)法によるMDC濃縮、単離および分析
MDCの濃縮および単離:MDCを記載のとおりに調製した(Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。筋肉外植片を複数の供給源、すなわち3週齢のmdx(ジストロフィー)マウス(C57BL/10ScSn mdx/mdx、Jackson Laboratories)、4 6週齢の雌の正常SD(Sprague Dawley)ラットまたはSCID(重症複合免疫不全症)マウスの後肢から採取した。各動物源の筋組織を、骨を取り除くために解体し、切り刻んでスラリーにした。次いで、このスラリーを、37℃で0.2%XI型コラゲナーゼ、ディスパーゼ(グレードII、240ユニット)および0.1%トリプシンとともに1時間連続的にインキュベーションすることにより消化した。得られた細胞懸濁液を、18、20および22ゲージ針に通過し、3000rpmで5分間遠心分離した。続いて、細胞を濃縮培地(ウシ胎児血清10%、ウマ血清10%、ニワトリ胚抽出物0.5%およびペニシリン/ストレプトマイシン2%を添加したDMEM)に懸濁させた。次いで、細胞をコラーゲンコートフラスコにプレプレーティングした(Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。およそ1時間後、上清をフラスコから取り除き、新しいコラーゲンコートフラスコに再プレーティングした。この1時間のインキュベーション中に急速に付着した細胞は、大部分が線維芽細胞であった(Z.Quら、上記;Chancellorらの米国特許第6,866,842号)。各フラスコに30〜40%の細胞が付着したら、この上清を取り除き、再プレーティングした。およそ5〜6回連続してプレーティングすると、培養物では小さな球形の細胞が濃縮し、これをPP6細胞と呼ぶことにした。これを開始細胞集団から単離して、さらなる研究に使用した。初期のプレーティングで単離された付着細胞をともにプールし、PP1−4細胞とした。
【0055】
細胞マーカーの発現について、mdxPP1−4、mdxPP6、正常PP6および線維芽細胞集団を免疫組織化学法により調べた。その分析結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

mdxPP1−4、mdxPP6、正常PP6および線維芽細胞を、プレプレーティング技術により得て、免疫組織化学法によって調べた。「−」は、2%未満の細胞が発現を示したことを表す;「(−)」;「−/+」は、5〜50%の細胞が発現を示したことを表す;「+/−」は、約40〜80%の細胞が発現を示したことを表す;「+」は、95%を超える細胞が発現を示したことを表す;「nor」は、正常細胞を表す;「na」は、免疫組織化学データが入手不可能であることを表す。
【0057】
なお、mdxでも正常マウスでも、この検査で試験したすべての細胞マーカーが同一の分布を示したことは注意される。このように、mdx変異の存在は、単離されるPP6筋細胞由来集団の細胞マーカー発現に影響を与えない。
【0058】
MDCを、FBS(ウシ胎児血清 FBS:fetal bovine serum)10%、HS(ウマ血清 HS:horse serum)10%、ニワトリ胚抽出物0.5%およびペニシリン/ストレプトマイシン1%入りのDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地 DMEM:Dulbecco’s Modified Eagle Medium)を含む増殖培地で増殖させるか、ウシ胎児血清2%および抗生物質溶液1%を補充したDMEMを含む融合培地で増殖させた。すべての培地製品は、Gibco Laboratories(Grand Island,N.Y.)を通じて購入した。
【0059】
(実施例2)
シングルプレーティング法によるMDC濃縮、単離および分析
急速に付着するMDCおよびゆっくりと付着するMDCの集団を、哺乳類の対象の骨格筋から単離した。この対象は、ヒト、ラット、イヌまたはその他哺乳動物であってもよい。生検材料の大きさは、42〜247mgの範囲であった。
【0060】
骨格筋生検材料の組織を直ちに、冷えた低温培地(硫酸ゲンタマイシン(100ng/ml、Roche)を補充したHypoThermosol(BioLife))に置き、4℃で保管する。3〜7日後、生検材料の組織を、保管庫から取り出し、生成を開始する。任意の結合組織または非筋組織を生検材料サンプルから切離する。単離に使用される残りの筋組織の重さを量る。組織をハンクス平衡塩類溶液(HBSS:Hank’s Balanced Salt Solution)中で切り刻み、コニカルチューブに移して、遠心分離する(2,500×g、5分)。次いで、ペレットを消化酵素溶液(リベラーゼブレンザイム(Liberase Blendzyme)4(0.4〜1.0U/mL、Roche))に再懸濁する。生検材料組織100mgあたり2mLの消化酵素溶液を使用して、回転板上で37℃で30分間インキュベートする。次いで、サンプルを遠心分離する(2,500×g、5分)。ペレットを培地に再懸濁して、70μm細胞ストレーナー(cell strainer)に通す。本実施例に記載の手順に使用した培養培地は、Cambrexの内皮増殖培地EGM−2基本培地に以下の成分を添加したものとした:(i)ウシ胎児血清10%(v/v)、(ii)Cambrex EGM−2 SingleQuotキット、これには、以下が含まれる:インスリン増殖因子−1(IGF−1:Insulin Growth Factor−1)、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF:Basic Fibroblast Growth Factor)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF:Vascular Endothelial Growth Factor)、上皮細胞増殖因子(EGF:Epidermal Growth Factor)、ヒドロコルチゾン、ヘパリンおよびアスコルビン酸。次いで、濾過した細胞溶液をT25培養フラスコに移し、5%CO中で37℃で30〜120分間インキュベートする。このフラスコに接着する細胞は、「急速に付着する細胞」である。
【0061】
インキュベーション後、細胞培養物の上清をT25フラスコから取り除き、15mLコニカルチューブに入れる。T25培養フラスコを2mLの温めた培地ですすぎ、上述の15mLコニカルチューブに移す。15mLコニカルチューブを遠心分離する(2,500×g、5分)。培地にペレットを再懸濁して、新しいT25培養フラスコに移した。このフラスコを、5%CO中で37℃で約2日間インキュベートする(このフラスコに接着する細胞は、「ゆっくりと付着する細胞」である)。インキュベーション後、細胞培養物の上清を吸引して、新しい培地をフラスコに加える。次いで、増殖させるために、このフラスコをインキュベーターに戻す。その後の培養フラスコ内の細胞密集度を50%未満に維持するために標準的な培養継代を行う。継代中にフラスコから付着細胞を剥がすためにトリプシン−EDTA(0.25%、Invitrogen)を使用する。「ゆっくりと付着する細胞」の一般的な増殖には、生細胞数の平均合計が3700万細胞に到達するのに(生成を開始した日から始めて)平均17日間かかる。
【0062】
所望の細胞数に達すると、トリプシン−EDTAを使用して細胞をフラスコから回収し、遠心分離する(2,500×g、5分)。ペレットをBSS−P溶液(ヒト血清アルブミン(2% v/v、Sera Care Life)を添加したHBSS)に再懸濁し、カウントする。次いで、細胞溶液を再び遠心分離し(2,500×g、5分)、所望の細胞濃度まで凍結保存用培地(ヒト血清アルブミン(2% v/v、Sera Care Life Sciences)を添加したCryoStor (Biolife))に再懸濁し、低温保管用に適当なバイアルに詰める。凍結バイアルを冷凍容器に入れ、−80℃の冷凍庫に入れる。細胞は、凍結細胞懸濁液を同量の生理食塩水によって室温で解凍してから投与され、(追加の操作はせずに)直接注入される。ゆっくりと付着する細胞集団の系統のキャラクタリゼーションを以下に示す:筋原細胞(87.4% CD56+、89.2% デスミン+)、内皮細胞(0.0% CD31+)、造血細胞(0.3% CD45+)および線維芽細胞(6.8% CD90+/CD56−)。
【0063】
骨格筋生検材料組織の分離後、培養フラスコへの付着が急速なものまたはゆっくりなものとして、2画分の細胞を回収した。次いで、細胞を増殖培地で培養物中で増殖し、1.5mlエッペンドルフチューブ中の凍結保存用培地(15μl中3×10個の細胞)で凍結した。対照群用に、凍結保存用培地15μlを単独でチューブに入れた。注入まで、これらのチューブを−80℃で保管した。注入の直前に、チューブを保管庫から取り出し、室温で解凍して、15μlの0.9%塩化ナトリウム溶液に再懸濁した。次いで、得られた30μlの溶液を30ゲージ針のついた0.5ccインスリン注射器中に吸い取った。手術と注入を行った研究者には、チューブの中身を知らせないようにした。
【0064】
細胞のカウントおよび生存率は、GuavaフローサイトメーターおよびViacount解析キット(Guava)を使用して測定した。CD56は、PE結合体化抗CD56抗体(1:50、BD Pharmingen)およびアイソタイプコントロールPE結合体化モノクロナール抗体(1:50、BD Pharmingen)を使用してフローサイトメトリー(Guava)によって測定した。デスミンは、パラホルムアルデヒド固定細胞(BD Pharmingen)にデスミンモノクローナル抗体(1:100、Dako)およびアイソタイプコントロールモノクロナール抗体(1:200、BD Pharmingen)を使用してフローサイトメトリー(Guava)によって測定した。蛍光標識は、Cy3結合体化抗マウスIgG抗体(1:250、Sigma)を使用して行った。各ステップの間で、細胞を膜透過緩衝液(BD Pharmingen)で洗浄した。クレアチンキナーゼ(CK:creatine kinase)検査のために、12ウェルプレート中の分化誘導培地に各ウェルあたり1×10の細胞を入れた。4〜6日後、細胞を、トリプシン処理によって回収し、遠心分離してペレットにした。細胞溶解上清については、CK Liqui−UVキット(Stanbio)を使用してCK活性について検査した。
【0065】
(実施例3)
胃−食道接合部および肛門括約筋の軟部組織増大
手術のためにSprague−Dawley(SD)ラットを、標準的な方法を使用してハロタンで麻酔し、手術部位をBetadine(登録商標)溶液で洗浄することによって準備した。正中腹部切開により、胃食道接合部および肛門括約筋を露出させた。実施例1の方法に準じて調製したHBSS(1〜1.5×l0個の細胞)の筋由来前駆細胞懸濁液10μlをHamilton微量注射器を使用して、軟部組織に注入した。注入3日後、各注入部位の周辺部分を切り取って、組織化学検査のために調製し、LacZマーカーを有する細胞の位置および生存率を測定するためにβ−ガラクトシダーゼを染色し、顕微鏡によって調べ、写真を撮った。これらの実験の結果により、MDC組成物を胃食道逆流または便失禁症状あるいは状態の処置のための食道および肛門括約筋の増量材(図1Aおよび1B)として使用できることが明らかになった。
【0066】
(実施例4)
胃−食道逆流疾患(GERD:Gastro−Esophageal Reflux Disorder)の処置のための下部食道括約筋へのMDC植込み
手術が検討されているGERDの患者の大半は、下部食道括約筋(LES:lower esophageal sphincter)の圧力が低い。本発明者らは、骨格筋由来細胞(MDC)をLESに自家移植することにより、理想的な増量治療(bulking therapy)を提供できる可能性があるとの仮説を立てた。これを調べるために次のような実験を行った。GI平滑筋性括約筋への骨格筋移植に関する生物学上のさらなる知識を得るために、胃腸平滑筋内でMDCが生存および分化する可能性を試験し、さらに内視鏡による大型動物モデルへのMDC注入の安全性および実行可能性を試験した。
【0067】
成熟雄Sprague−Dawley(SD)ラットおよび成熟雄ビーグル犬を使用した。ラット由来およびイヌ由来MDCを、実施例2に記載した技法と同様のシングルプレーティング法を使用して単離した。宿主組織の細胞を可視化することができるように、移植前にMDCを、細胞全体にわたって拡散する親油性の膜染料であるDiI(Invitrogen/分子プローブ)で標識した。移植された細胞の分化を、平滑筋の表現型(平滑筋アクチン)および骨格筋の表現型(骨格筋ミオシン)のマーカーに対する特異的抗体を使用して免疫蛍光法により評価した。
【0068】
ラット実験。DiI標識ラット由来MDCを、10μlHamilton注射器を使用してラットの幽門の壁の両側に注入し、移植1ヶ月後に生存および分化について評価した。移植された細胞は、DiI蛍光により可視化され、図2Aに示すとおり、筋肉壁内および粘膜筋板に局在していることがわかった。免疫蛍光法分析により、図2B(平滑筋アクチン)および図2C(骨格筋ミオシン)に示したとおり、移植されたMDCの骨格筋ミオシンが弱発現し、平滑筋アクチンは発現しなかったことが明らかになった。MDCは生存することができ、GI平滑筋への組み込みが可能であり、GERDなどのさまざまな疾患の処置に期待が持てる。
【0069】
GERDイヌモデルへのMDC移植。一連の進行中の実験の最初に、4.0×10の標識イヌMDCを、内視鏡により送達され標準的な静脈瘤硬化療法用針を使用してビークル犬のLESに注入した。イヌを、毎日シクロスポリンで処置し、2週間後にpHモニタリングを繰り返して、食道を組織学的に調べた。pH<4の時間率が26.5%から1.5%へ減少し、酸逆流の著しい減少が観察された。移植されたMDCが、下部食道部分の体積を増したことが(免疫蛍光染色により)わかり、周囲組織、特に粘膜筋板に良好に組み込まれた。
【0070】
本発明に関する技術の状況をさらに十分に説明するために、本明細書中で引用された特許出願、特許、文書および文献はすべて、参照によってそれら全体が本明細書に組み込まれたものとする。
【0071】
記載された本発明の範囲および精神から逸脱することなく、上記の方法および組成物のさまざまな変更を行うことができるため、上記記載に含まれるか、添付の図面に示されるか、または添付の特許請求の範囲で定義される主題はすべて、例示として解釈されるものとし、限定するためのものではないことが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胃食道逆流性疾患の処置を必要とする哺乳類の対象の処置方法であって、前記方法は:
(a)前記ヒト対象から骨格筋細胞を単離するステップと、
(b)10℃未満の温度に前記細胞を冷却し、前記細胞を1〜7日間保管するステップと;
(c)ヒト骨格筋細胞を第一細胞培養容器に30〜120分間懸濁するステップと;
(d)前記第一細胞培養容器から第二細胞培養容器に培地をデカントするステップと;
(e)前記培地中の残りの細胞を前記第二細胞培養容器の壁に接着させるステップと;
(f)前記細胞を前記第二細胞培養容器の前記壁から単離するステップであって、前記単離された細胞がMDCであるステップと;
(g)その数を増大させるために前記細胞を培養するステップと;
(h)前記MDCを−30℃より低い温度に凍結するステップと;
(i)前記MDCを解凍して、前記哺乳類の対象の食道に前記MDCを投与するステップを含み、それにより胃食道逆流性疾患の処置を必要とする哺乳類の対象を処置する、
方法。
【請求項2】
前記骨格筋細胞が、前記哺乳類の対象で前記胃食道逆流性疾患が発症する前に前記哺乳類の対象から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記骨格筋細胞が、前記哺乳類の対象で前記胃食道逆流性疾患が発症した後に前記哺乳類の対象から単離される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記MDCが、それを前記食道に注入することにより投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記MDCが、前記下部食道括約筋に注入される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
胃食道逆流性疾患に関連する症状の改善を必要とする哺乳類の対象の症状の少なくとも1つを改善する方法であって、前記方法は:
(a)骨格筋細胞を前記ヒト対象から単離するステップと、
(b)ヒト骨格筋細胞を第一細胞培養容器に30〜120分間懸濁するステップと;
(c)前記第一細胞培養容器から第二細胞培養容器に培地をデカントするステップと;
(d)前記培地中の残りの細胞を前記第二細胞培養容器の壁に接着させるステップと;
(e)前記細胞を前記第二細胞培養容器の前記壁から単離するステップであって、前記単離された細胞がMDCであるステップと;
(f)前記哺乳類の対象の食道に前記MDCを投与するステップを含み、それにより胃食道逆流性疾患に関連する症状の改善を必要とする哺乳類の対象の症状の少なくとも1つを改善する、
方法。
【請求項8】
前記症状は、胸やけ、喘息、酸逆流、持続性咽頭炎、嗄れ声、慢性咳、胸痛および咽喉に塊があるような感覚からなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記MDCが、それを前記食道に注入することにより投与される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記MDCが、前記下部食道括約筋に注入される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳動物がヒトである、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記MDCが、前記哺乳類の対象の食道に投与される前にその数を増大させるために培養される、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
胃食道逆流性疾患の処置を必要とする哺乳類の対象の処置方法であって、前記方法は:
(a)骨格筋組織からの骨格筋細胞の懸濁液を、前記骨格筋細胞の懸濁液の線維芽細胞が付着する第一容器にプレーティングするステップと、
(b)ステップ(a)からの非付着細胞を第二容器に再プレーティングするステップであって、前記再プレーティングのステップが、約15〜約20%の細胞が前記第一容器に付着した後であるステップと;
(c)少なくとも1回ステップ(b)を繰り返すステップと;
(d)前記骨格筋由来MDCを単離し、前記MDCを前記哺乳類の対象の食道に投与するステップを含み、それにより、胃食道逆流性疾患の処置を必要とする哺乳類の対象を処置する、
方法。
【請求項14】
前記骨格筋細胞が、前記哺乳類の対象で前記胃食道逆流性疾患が発症する前に前記哺乳類の対象から単離される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記骨格筋細胞が、前記哺乳類の対象で前記胃食道逆流性疾患が発症した後に前記哺乳類の対象から単離される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記MDCが、それを前記食道に注入することにより投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記MDCが、前記下部食道括約筋に注入される、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記哺乳動物がヒトである、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
胃食道逆流性疾患に関連する症状の改善を必要とする哺乳類の対象の症状の少なくとも1つを改善する方法であって、前記方法は:
(a)骨格筋組織からの骨格筋細胞の懸濁液を、前記骨格筋細胞の懸濁液の線維芽細胞が付着する第一容器にプレーティングするステップと;
(b)ステップ(a)からの非付着細胞を第二容器に再プレーティングするステップであって、前記再プレーティングのステップが、約15〜約20%の細胞が前記第一容器に付着した後であるステップと;
(c)少なくとも1回ステップ(b)を繰り返すステップと;
(d)前記骨格筋由来MDCを単離し、前記MDCを前記哺乳類の対象の食道に投与するステップを含み、それにより胃食道逆流性疾患に関連する症状の改善を必要とする哺乳類の対象の症状の少なくとも1つを改善する、
方法。
【請求項20】
前記症状は、胸やけ、喘息、酸逆流、持続性咽頭炎、嗄れ声、慢性咳、胸痛および咽喉に塊があるような感覚からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記MDCが、それを前記食道に注入することにより投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記MDCが、前記下部食道括約筋に注入される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記哺乳動物がヒトである、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記MDCが、前記哺乳類の対象の食道に投与される前にその数を増大させるために培養される、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
胃食道逆流性疾患(GERD)の処置を必要とする哺乳類の対象の処置方法であって、前記方法は:
前記GERDを処置するために前記哺乳類の対象の食道にMDCを投与するステップを含み、前記MDCが:
(a)骨格筋組織からの骨格筋細胞の懸濁液を、前記骨格筋細胞の懸濁液の線維芽細胞が付着する第一容器にプレーティングするステップと;
(b)ステップ(a)からの非付着細胞を第二容器に再プレーティングするステップであって、前記再プレーティングのステップが、約15〜約20%の細胞が前記第一容器に付着した後であるステップと;
(c)少なくとも1回ステップ(b)を繰り返すステップと;
(d)前記骨格筋由来MDCを単離するステップと、
によって調製される、方法。
【請求項26】
MDCを調製するための方法であって、前記方法は:
(a)GERDの処置を必要とする哺乳類の対象の骨格筋組織からの骨格筋細胞を提供するステップと;
(b)前記骨格筋細胞の懸濁液を、前記骨格筋細胞の懸濁液の線維芽細胞が付着する第一容器にプレーティングするステップと;
(c)ステップ(a)からの非付着細胞を第二容器に再プレーティングするステップであって、前記再プレーティングのステップが、細胞の約15〜約20%が前記第一容器に付着した後であるステップと;
(d)少なくとも1回ステップ(b)を繰り返すステップと;
(e)前記骨格筋由来MDCを単離するステップと、
を含み、
前記対象の食道に投与された場合に、前記MDCが前記哺乳類の対象のGERDを処置する能力を示す、方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【公表番号】特表2010−513505(P2010−513505A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542879(P2009−542879)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2007/025863
【国際公開番号】WO2008/076435
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(504279968)ユニバーシティー オブ ピッツバーグ − オブ ザ コモンウェルス システム オブ ハイヤー エデュケーション (24)
【Fターム(参考)】