説明

背板受取装置

【課題】平面部が下方を向く状態への姿勢変更精度が高くしかも背板の傷付きを防止できる背板受取装置を提供する。
【解決手段】平面部30bと円弧部30aとを有する断面略半月状の背板30を受取る背板受取装置である。フック部材31と、フック部材31をその基端部側を中心に揺動させる揺動手段32と、背板30を受ける受け手段33とを備える。フック部材31は平面部31bが略鉛直面をなすように水平状に配設された背板30の下方角部30cに先端フック部31aが下方から係止する。揺動手段32は、フック部材31をその基端部側を中心に揺動させて背板30の平面部30bを下方に向ける。受け手段33は、平面部30bが下方に向いている背板30をフック部材31から受けとる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、背板受取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板材の表裏を反転するための装置として、図4に示すものがある。この図4に示す装置は、第1の搬送装置1と第2の搬送装置2との間に配置されるものであって、板材3を滑らせて搬送するガイド4と、このガイド4の搬送方向の前方かつ下方に設けられた固定傾斜板5とを備える。この場合のガイド4は、上流側から下流側に向かって下傾する第1片部4aと、この第1片部4aの下端縁から上流側に向かって下傾する第2片部4bとを備える。そして、固定傾斜板5が第2片部4bに対して所定間隔をもって略平行に配設される。この場合の板材3は、平面部3bと円弧面部3aとを有する断面略半月形状の背板である。平面部を裏面と呼び、円弧面部を表面と呼ぶ。
【0003】
次に図4に示す装置を使用した反転動作を説明する。第1の搬送装置1から背板3が、その平面部3bが上方を向いた裏向き状態でこの装置に搬送される。この装置では、まずガイド4の第1片部4a上を摺動する。そして、この第1片部4aを摺動した後、固定傾斜板5に衝突する。この衝突によって、背板3がその衝突部を中心に時計廻りに回転して、反転させた後、この固定傾斜板5とガイド4の第2片部4bとで案内されて第2の搬送装置2上に落とすことになる。
【0004】
この方法では、衝突により背板3を反転させるには、衝突時の背板3の速度などが所定の条件を満たす必要がある。板材3はサイズが異なると重量や摩擦抵抗が異なるため、板材3を固定傾斜板5に最適な状態で衝突させることは非常に困難であった。そのために板材3が反転する確率が低いという問題があった。
【0005】
板材3が固定傾斜板5と衝突した時にその衝撃により割れてしまうという問題があった。そのような割れた板材は製品として使用できないために歩留まりの低下を招いていた。割れた板材を除去するためには、製材ラインを停止させる必要があり、生産性の低下を招いていた。
【0006】
そこで、図4に示すような従来の方法を改良するための装置が提案された(特許文献1)。この特許文献1に記載の装置を図5に示す。この装置も図4に示す装置と同様、第1の搬送装置1と第2の搬送装置2との間に配置されるものであって、背板3を搬送する搬送手段10と、背板3を反転させる反転部11とを備える。
【0007】
搬送手段10は、第1の搬送装置1から第2の搬送装置2に向かって下傾するコンベアからなる。反転部11は、受け部材13とこの受け部材13から突設された折り返し部材14とを備え、受け部材13の下部に設けられた軸部15を中心に回転可能となっている。また、反転部11の受け部材13には反転部用の復帰手段16が設けられている。復帰手段16は、支持部材17と、この支持部材17に付設される弾発部材18とを備える。
【0008】
この装置では、背板3が搬送手段10を介して矢印のように搬送されることによって、反転部11の受け部材13に衝突する。この衝突によって、背板3が受け部材13を押圧して、反転部11が仮想線で示すように軸部15を中心に回転する。この際、反転部11の受け部材13がストッパ19に当接してその回転が規制される。
【0009】
反転部11の回転によって、折り返し部材14に受けられている背板3が反転して、第2の搬送装置2へ供給される。また、反転部11が背板3を有さない空の状態となれば、復帰手段16によって、反転部11が実線で示す状態に復帰して、次の背板3を受けることが可能な状態となる。その後は、前記した工程が繰り返されて、第1の搬送装置1からの背板3を順次反転して第2の搬送装置2へ搬送することができる。
【特許文献1】特開2006−150531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前記特許文献1に記載の背板受取装置では、反転部11の受け部材13に衝突時に反転部11が回転し、しかも、反転部11の回転も弾性材からなるストッパ19にて受けることができるため、背板3への衝撃を確かに緩和することができる。しかしながら、図4に示す装置に比べて反転させる確率は高くなるが、背板3の反転は、背板3からの反転部11への衝撃力を利用するものであり、依然その確率が高いとは言えない。しかも、衝撃が緩和されたといえども、反転部11の受け部材13に背板3を激突させるものであるので、背板3が傷付いたり、反転部11が損傷したりするおそれがある。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みて、平面部が下方を向く状態への姿勢変更精度が高くしかも背板の傷付きを防止できる背板受取装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の背板受取装置は、平面部と円弧部とを有する断面略半月状の背板を受取る背板受取装置であって、前記平面部が略鉛直面をなすように水平状に配設された背板の下方角部に先端フック部が下方から係止するフック部材と、フック部材をその基端部側を中心に揺動させて前記背板の平面部を下方に向けるとともに、背板の平面部が下方を向いた状態で前記先端フック部の係止を解除させる揺動手段と、平面部が下方に向いている背板を前記フック部材から受ける受け手段とを備えたものである。
【0013】
本発明の背板受取装置によれば、フック部材の先端フック部にて背板の下方角部を係止することができ、この係止状態において、揺動手段にてフック部材を揺動させることによって、背板をその平面部が下方を向く状態とすることができる。また、背板をその平面部が下方を向く状態となれば、フック部材による係止状態が解除されて、平面部が下方を向く状態のまま受け手段へ渡すことができる。すなわち、背板を他の部材に激突させることなく平面部が下方を向く状態とすることができ、しかも先端フック部が背板に係止したフック部材の揺動による姿勢変更であるので、その変更精度を高めることができる。
【0014】
フック部材と揺動手段と受け手段とを含むユニット構造体を一対構成し、この一対のユニット構造体を相対面するように配置するのが好ましい。
【0015】
受け手段は、平面部が下方を向いている背板をその長手方向に沿って搬送する搬送機構を備えたものとすることができる。この場合、受け台に載置されている背板を他の部材(装置)に移送することができる。
【0016】
受け手段は、背板を受ける受け台と、この受け台への背板の受け渡しをガイドするガイド構造とを備えたものであってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の背板受取装置では、背板を他の部材に激突させることなく平面部が下方を向く状態とすることができるので、背板の傷みを防止でき、生産性の向上を図ることができる。また、背板を受ける側においても、背板からの衝撃による損傷もなくすことができ、この装置の長寿命化を図ることができる。しかも先端フック部が背板に係止したフック部材の揺動による姿勢変更であるので、その変更精度を高めることができ、背板に、平面部が下方を向く姿勢に安定してとらせることができる。
【0018】
一対のユニット構造体を相対面するように配置したものでは、ユニット構造体毎の背板受取動作を行うことができ、作業能率の向上を図ることができる。
【0019】
受け手段が搬送機構とを備えたものでは、受け台に載置されている背板を他の部材(装置)に移送することができるので、姿勢変更から他の部材(装置)への移送までを自動的に行うこができ、作業者(オペレータ)の負担を軽減できる。また、ガイド構造を設けたものでは、背板の受け台への受け渡し(移送)が安定し、この移送によって背板の姿勢が変更されることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る背板受取装置の実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0021】
図1と図2は本発明の背板受取装置を示している。この背板受取装置は、平面部30bと円弧部30aとを有する断面略半月状の背板30を受取るものであり、平面部30bが略鉛直面をなすように水平状に配設された背板30の下方角部30cに先端フック部31aが下方から係止する略J字状のフック部材31と、フック部材31をその基端部側を中心に揺動させて背板30の平面部30bを下方に向ける揺動手段32と、平面部30bが下方に向いている背板30をフック部材31から受ける受け手段33とを備える。この場合、フック部材31と揺動手段32と受け手段33とを含むユニット構造体Mを一対構成し、この一対のユニット構造体M、Mを、枠体40に付設して相対面するように配置している。
【0022】
枠体40は、一対の側枠40a、40bと、前枠40cと、後枠40dとを備える。側枠40a、40bには前記揺動手段32を構成するシリンダ機構41が付設されている。すなわち、側枠40a、40bに支持枠片42が設けられ、この支持枠片42にシリンダ機構41のシリンダ本体41aの基部取付片43がピン44を介して枢結されている。
【0023】
この場合、シリンダ機構41は、図2に示すように、各側枠40a、40bにそれぞれ一対設けられている。また、側枠40a、40bには複数の支持バー46が横架され、この支持バー46に、側枠40a、40bに平行に配設される支持プレート47が付設されている。支持プレート47の下面側には軸受50が設けられ、この軸受50に支持プレート47に沿って配設される軸部材45が支持されている。
【0024】
シリンダ機構41のピストンロッド41bの先端部には連結部材51の基端部がピン48を介して連結されている。この連結部材51の先端部51は前記軸部材45に連結されている。また、軸部材45には前記フック部材31の基端部31bが連結されている。この場合、各軸部材45には6個のフック部材31が配設される。
【0025】
このため、シリンダ機構41、41のピストンロッド41b、41bがシリンダ本体41a、41aに収納された状態では、図1に示すように、相対面するフック部材31,31に先端フック部31a,31aが近接する状態である。この状態からピストンロッド41b、41bが伸びれば、フック部材31はその基端部31bを中心に矢印A方向に揺動して、相対面するフック部材31,31に先端フック部31a,31aが相互に離間する状態となる。そして、この状態からピストンロッド41b、41bが縮めば、フック部材31はその基端部31bを中心に矢印B方向に揺動して、図1に示す状態に戻る。
【0026】
受け手段33は、背板を受ける受け台52と、この受け台52を揺動させて傾斜状とする揺動機構53とを備える。受け台52は、搬送機構Hを構成するベルトコンベア54を備え、その内側縁部には、背板案内枠55が立設されている。なお、背板案内枠55は、受け台52に対して垂直方向に延びる第1部55aと、この第1部55aから上方に向かって斜め方向に延びる第2部55bとからなる。すなわち、図1に示すように、フック部材31の先端フック部31aが相互に接近し、受け台52が水平状態であるときに、第2部55bの先端部(上端部)が先端フック部31aに下方位置に配置される。
【0027】
揺動機構53は上下方向に延びるシリンダ機構56にて構成され、このシリンダ機構56が、側枠40a、40bに付設された支持枠体57,57にそれぞれ支持されている。すなわち、支持枠体57は、上下方向に延びる柱部58と、柱部58と側枠40a(40b)とを連結する上下の連結枠59,60とを備える。そして、下方の連結枠60に支持片61が設けられ、この支持片61にピン62を介してシリンダ機構56のシリンダ本体56aの基端取付片63が連結されている。シリンダ機構56のピストンロッド56bの先端部と受け台52とが連結構造64を介して連結されている。
【0028】
連結構造64は、側枠40a、40bに沿って延びるロッド65と、このロッド65と受け台52の下面とを連結する連結体66と、ロッド65の端部の軸部67を支持する支持部68と、ロッド65側とピストンロッド56bの先端部とを連結する連結片69とを備える。連結片69は、その基端部がピストンロッド56bの先端部にピンを介して連結され、その先端部がロッド65の軸部67に連結されている。
【0029】
このため、シリンダ機構56のピストンロッド56bが伸びた状態では、受け台52が水平状態を維持する。そして、この状態からピストンロッド56bが縮めば、連結片69が揺動し、この揺動に伴ってロッド65が回動して受け台52が図3の図面上の右側の仮想線で示すように、矢印C方向に揺動する。これによって、受け台52が傾斜状となる。また、シリンダ機構56のピストンロッド56bを伸ばせば、受け台52が矢印D方向に揺動して、受け台52が水平状態に戻る。
【0030】
この装置においては、ユニット構造体M、M間に、移動台70が配置される。この移動台70は、基盤71と、この基盤71上に立設される立ち上がり部72とを備え、ガイドレール73上にリニア機構74を介して配置されている。なお、ガイドレール73は脚体75上に配置される。
【0031】
次に前記のように構成された背板受取装置を使用した背板の姿勢制御方法を説明する。
平面部30bが略鉛直面をなすように水平状に配設された背板30を、台70にて搬送して、図2に示すように、フック部材31の先端フック部31aにて背板30の下方角部30cを係止した状態とする。この場合、立ち上がり部72が背板30の平面部30bを受ける(支持する)ことになる。
【0032】
次に、この状態から、揺動手段32のシリンダ機構41のピストンロッド41bを伸ばす。これによって、図3の仮想線で示すように、下方角部30cが先端フック部31aの矢印A方向の揺動に伴って、外側方へ引っ張られて、順次平面部30bが水平状となるように姿勢を変化させていく。すなわち、先端フック部31aが外側方へ引っ張られ、上方角部30dが移動台70の立ち上がり部72にガイドされつつ下降して、さらに、背板案内枠55の第1部55aにガイドされて下降し、先端フック部31aの内縁29が水平状態となったときに、背板30はその平面部30bが水平となる。すなわち、立ち上がり部72と背板案内枠55等で受け台52へ背板30をガイド(案内)するガイド構造Gを構成する。
【0033】
このように、平面部30bが水平となった後、さらにピストンロッド41bを伸ばすことによって、先端フック部31aによる背板30の係止が解除され、背板30はこのままの姿勢、つまり平面部30bが下方を向く状態で、受け台52に載置される。
【0034】
その後、受け台52のベルトコンベア54を駆動させることによって、他の搬送手段(ベルトコンベア)に乗り移して、この装置外へ搬送する。また、受け台52への背板30の受け渡し(移送)が終了すれば、揺動手段32のシリンダ機構41のピストンロッド41bを縮めることによって、フック部材31を矢印B方向に揺動させて、図1や図3の実線で示すように、背板受け可能状態(初期状態)に戻すことになる。
【0035】
本発明では、フック部材31の先端フック部31aにて背板30の下方角部30cを係止することができ、この係止状態において、揺動手段32にてフック部材31を揺動させることによって、背板30をその平面部30bが下方を向く状態とすることができる。また、背板30をその平面部30bが下方を向く状態となれば、フック部材31による係止状態が解除されて、平面部30bが下方を向く状態のまま受け手段へ渡すことができる。すなわち、背板30を他の部材(装置)に激突させることなく平面部30bが下方を向く状態とすることができ、背板30の傷みを防止でき、生産性の向上を図ることができる。また、背板30を受ける側においても、背板30からの衝撃による損傷もなくすことができ、この装置の長寿命化を図ることができる。しかも先端フック部31aが背板30に係止したフック部材31の揺動による姿勢変更であるので、その変更精度を高めることができ、平面部30bが下方を向く姿勢に安定してとらせることができる。
【0036】
一対のユニット構造体M、Mを相対面するように配置したので、ユニット構造体M毎の背板受取動作を行うことができ、作業能率の向上を図ることができる。
【0037】
受け手段33が搬送機構Hとを備えているので、受け台52に載置されている背板30を他の部材(装置)に移送することができるので、姿勢変更から他の部材(装置)への移送までを自動的に行うこができ、作業者(オペレータ)の負担を軽減できる。受け台52へのガイド構造を設けたものでは、背板30の受け台52への移送が安定し、この移送によって背板30の姿勢が変更されることがない。
【0038】
また、前記実施形態では、受け台52を揺動機構53にて傾斜状とすることができるので、平面部30bが下方を向く状態となっていないものを横方向に排出したりすることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能であって、例えば、ユニット構造体Mが一つであってもよい。また、ユニット構造体M毎のフック部材31の数、シリンダ機構41の数の増減は任意である。フック部材31の大きさ、形状等も背板の下方角部に先端フック部が係止して平面部を下方に向けることができ、さらには背板30の平面部30bが下方を向いた状態でその係止が解除するものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態を示す背板受取装置の正面図である。
【図2】前記背板受取装置の平面図である。
【図3】前記背板受取装置の要部拡大図である。
【図4】板材反転装置の簡略図である。
【図5】他の板材反転装置の簡略図である。
【符号の説明】
【0041】
30 背板
30a 円弧部
30b 平面部
30c 下方角部
31 フック部材
31a 先端フック部
32 揺動手段
33 受け手段
G ガイド構造
H 搬送機構
M ユニット構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面部と円弧部とを有する断面略半月状の背板を受取る背板受取装置であって、
前記平面部が略鉛直面をなすように水平状に配設された背板の下方角部に先端フック部が下方から係止するフック部材と、
フック部材をその基端部側を中心に揺動させて前記背板の平面部を下方に向けるとともに、背板の平面部が下方を向いた状態で前記先端フック部の係止を解除させる揺動手段と、
平面部が下方に向いている背板を前記フック部材から受ける受け手段とを備えたことを特徴とする背板受取装置。
【請求項2】
フック部材と揺動手段と受け手段とを含むユニット構造体を一対構成し、この一対のユニット構造体を相対面するように配置したことを特徴とする請求項1に記載の背板受取装置。
【請求項3】
前記受け手段は、平面部が下方を向いている背板をその長手方向に沿って搬送する搬送機構を備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の背板受取装置。
【請求項4】
受け手段は、背板を受ける受け台と、この受け台への背板の受け渡しをガイドするガイド構造とを備えたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の背板受取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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