説明

胎児栄養膜の単離

妊婦の子宮腔から得られた粘液検体から胎児栄養膜を単離および精製する方法。粘液検体は、該細胞が生存を保つような移送培地中にて臨床採取施設から実験室へ移送される。粘液検体を、次に、粘液溶解剤またはムチナーゼ、糖加水分解酵素、ヌクレアーゼ、およびプロテアーゼでの処理を含む、胎児細胞を提供するための正確な処理工程に供するが、該細胞の外側表面は、粘膜生体物質が本質的に完全に付着していないため、以前可能であったよりもはるかに多数を単離できる。単離した細胞は、効果的にFISHまたは他の分子診断に直ちに供するための適切な条件におく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、妊娠期の雌哺乳動物から得られる胎児栄養膜(胎盤)細胞の単離法に関し、より詳細には、栄養膜を遊離させるための有用な試薬による頸管粘液検体の処理に関し、およびさらにより詳細には、妊婦から得られた検体を試験施設で受理した後8時間以内のFISHなどによる試験を許容できる、胎児栄養膜の検体を提供するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
胎児由来の細胞は、胎児についての遺伝学的および/または生化学的情報を取得することを可能にする。妊娠初期の栄養膜細胞を単離することによって、これらの細胞を、胎児の遺伝学的および/または生化学的情報を取得するため、詳細には、ヒト胎児の異常を検出するために用いることができる。
【0003】
出生前検診は、長年にわたり、羊水穿刺または絨毛生検(CVS)のどちらかにより採取された胎児の細胞について実施されている。羊水穿刺は通常、妊娠約16週で行われるが、これは、熟練した職員が胎児の羊膜腔に針を挿入して20〜30mlの羊水を取り出すことを要する。羊水は胎児細胞を含み、これに対してその後の試験が行われうる。しかしながら、胎児細胞を取得するこの方法に関連して自然流産を誘発する危険性がある。さらに、もし、この16週期法による胎児細胞の遺伝子診断により異常が明らかになった場合、妊娠中期における妊娠の終結という見通しは心理的にもストレスが大きくかつ母体に対するいくつかのリスクにも関連する可能性がある。
【0004】
絨毛生検もまた、8〜12週齢の胎児の胎盤から少量の生検を採取するために、熟練した職員の関与を要し、かつこれは同様に自然流産を誘発するリスクを有する。しかしながら、いずれの染色体異常についてもより早期に診断することで羊水穿刺よりもCVSはより魅力的である。
【0005】
前記の両手順に対する熟練した職員の必要性や自然流産を誘発する可能性は一般的に、このような出生前の遺伝子診断は、染色体異常のある胎児を妊娠するリスクがかなり高いと考えられる妊婦に対してのみ行われるということを意味してきた。より簡易な手順を提供するための試みには、妊婦の腕静脈または子宮壁から血液を採取する工程、および、通常は胎盤からはがれ落ちる(母体の血流中に存在していることが現在は一般的に認められている)胎児細胞を抽出する工程が含まれる。このような、胎児細胞の非侵襲的単離には、自然流産を誘発するリスクが全くない。
【0006】
米国特許第5,503,981号(特許文献1)は、血液検体と、絨毛性合胞体栄養細胞層および非絨毛性栄養膜細胞層の細胞に特異的な抗体の有効量とを接触させることにより、妊娠期の哺乳動物の血液検体から栄養膜細胞を単離する方法を提供する。該抗体に結合した細胞を検体から分離し、単離された細胞を遺伝学的および/または生化学的情報を取得するために用いる。
【0007】
母体の血液検体からの胎児細胞の同定および単離は、表面上は出生前遺伝子検査のための胎児の遺伝物質を得るための望ましい非侵襲的な代替法を提供しているが、実際は、母体血液中の胎児細胞が極めて少ないという重大な欠点がある。母体の血流中には栄養膜細胞は非常に低濃度でしか存在しないことが分かっており;従って、母体血液からの分離手順には問題がありかつ時間がかかる。進展によって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および蛍光インサイチューハイブリダイゼーション(FISH)を含むいくつかの改良された検出法が利用できるようになったものの、出生前診断のための母体血液の日常的な使用には依然として重大な困難が残っている;これは、真に確実な診断結果をもたらすために、母体の細胞との混合物中に存在するごく少数の胎児細胞を合理的に集めかつ/または単離することができないということである。母体のDNAを含む細胞は多くの診断においてほとんど許容されないため、そのような単離が必要であり;例えば分子診断においては、一般的に実質ゼロ・トレランス(zero tolerance)しか許容されない。
【0008】
結果として、前記の母体血液中の胎児細胞が極めて少ないことにより、母体血液から胎児細胞画分または胎児の遺伝物質を集めかつ/または単離することを試みるために考案されたいくつかの専門的な技術がもたらされた。米国特許第5,432,054号(特許文献2)は、胎児細胞の単離のために勾配遠心分離を用いる濃縮法を開示している。典型的には、前記のような方法は、例えば実質ゼロ・トレランスの、信頼性の高い遺伝子試験で使用できる胎児細胞画分の単離に影響を与えるには感度が十分ではない。
【0009】
母体の細胞成分からの該細胞の分離を行うためにフローサイトメトリーを用いることによって、母体の血液検体から胎児細胞を単離する試みにおいて、米国特許第4,675,286号(特許文献3)に開示された標識抗体アプローチも用いられている。しかしながらまた、フローサイトメトリー選別に固有な制限によって、そのような方法も、該目的のために広く実施されることが妨害されている。そのようなフローサイトメトリー技術に固有な制限とは、該技術に使用される抗体に起因するものである。そのような抗体は、細胞特異的となるように産生されているにも関わらず、検体中ではるかに高い濃度で存在する他の不要な細胞型と交差反応することが多い。結果として、そのような方法は、胎児細胞の型における混合物を集めるのに十分でありうるが、信頼性の高いゼロ・トレランスの胎児細胞単離には使用できないことが多い。
【0010】
米国特許第5,580,724号(特許文献4)には、単核細胞(MNC)を最初に単離するために遠心分離処理を用いることにより母体血液検体から胎児由来の細胞を取得する方法が開示されている。血漿および培地を除いた後、MNCの層を洗浄し、幹細胞因子(SCF)、エリスロポエチン、ならびにIl-3およびIl-6を含む特定の培地中、5%二酸化炭素を含む高湿の大気下で7日間培養する。吸引により非接着細胞を回収して、細胞をプレートに再度播種し、胎児幹細胞の成長に貢献する条件下で14日間培養する。21日後に、細胞を計数してプレートに播き、試験を行う。長時間の遅延およびコストのために、臨床診療としてのその適用は妨げられている。
【0011】
米国特許第6,221,596号(特許文献5)は、検体の一部の拡大像を最初に提供することにより、細胞の混合集団の母体血液の検体から、栄養膜などの希少な細胞型を単離する方法を教示している。細胞集団の中の希少な細胞型は形態学的に同定され、同定された希少な細胞型はマイクロマニピュレーターを用いて回収される。この方法には技術および特別な装置が必要であり、かつ時間がかかる。
【0012】
これらの、少なくとも認識されている欠点のため、子宮腔内に存在する細胞を採取することに特に注目して、他の選択肢が探求されてきている。米国特許第4,675,286号(特許文献3)は、子宮腔からはがれた細胞の検体を採取することを教示しているが、該検体は、子宮内膜および胎盤由来の母体細胞と胎盤由来の胎児細胞との混合物を含むと考えられる。該細胞は、子宮頸管の粘液栓を通して挿入されるスワブまたは他の回収用具により子宮頸管を通じて子宮腔から採取される。次に、細胞混合物を胎児栄養膜に特異的な抗体を有するマイクロスフェアで処理することにより、混合物中の母体細胞から胎児細胞を分離することを試みる。マイクロスフェア上に捕捉された胎児細胞を次に培養培地中で増殖させ、その後、試験のために攪拌することによって、マイクロスフェアから除去する。この概略的な手順は少なくとも1987年という早期に開示されたが、広範な利用が実現しておらず、その改善が求められている。
【0013】
国際公開公報第2004/087863号(特許文献6)は例えば、パパニコラウスミアサイトブラシ(Pap smear cytobrush)を用いて妊婦から経頸管的に細胞を採取することによって、および、ペニシリン/ストレプトマイシン抗生剤を含む数ミリリットルの組織培養培地を含んだ試験管の中でブラシを振とうすることによって、、性別および染色体異常の可能性を診断することを提唱している。検体を次に細胞遠心分離に供し、得られたサイトスピン・スライドを、栄養膜抗原に対する抗体(多くの該抗体が記載されている)を用いた免疫染色に供するまで、95%アルコール中で保持する。この染色の後に、例えばスライドを適切な溶液中に浸すことによって細胞の対比染色を行い、栄養膜細胞を標識する。所望の細胞が標識されたら染色を除去してもよく、二色法および直接標識されたプローブを用いてFISH解析を実施する。そのような細胞からのFISHシグナルは、蛍光顕微鏡を用いて見ることができる。この一連の動作により、胎児栄養膜細胞は、胎児細胞および母体細胞の混合物プレートの一部に残っているものの、本質的に単独で解析される。これには、非常に高性能な装置と高度な訓練を受けた技師が必要であり、該理由からこれは好ましくない。
【0014】
米国出願公開2005/0123914号(特許文献7)も、頸管粘液検体を採取することにより、胎児の染色体異常について非侵襲的な出生前診断の予測基盤が提供されると認識している。これには、妊娠の最初の3半期に頸管粘液検体を、例えば経子宮頸部スワブを用いてまず採取することが記載されている。次に粘液を、粘液溶解剤で処理し、続いてコラゲナーゼおよびプロテアーゼで処理し、その後、市販の酵素混合物を用いて粘液物質から細胞を分離することが指示されている。細胞は、洗浄および続いて、上清からの分離のための遠心分離により回収される。洗浄後に残っている胎児細胞と母体細胞の混合物から胎児細胞を単離するために、胎児特異的な抗体による処理を用いる。3つの抗体、すなわち蛍光標識された抗体であるNDOG1、NDOG5、およびFT1.41.1のカクテルで処理することにより、胎児細胞を同定することが提唱されている。胎児細胞を次に、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)、磁気ビーズ分離、マイクロマニピュレーション、ならびに/またはレーザー捕捉および蛍光免疫組織化学を用いて分離する;マイクロマニピュレーションが望ましいと言われている。胎児細胞を採取したら、診断に用いることのできる多くの処理が記載されている。該明細書中に記載されている全処理は、潜在的な遺伝子疾患の出生前診断への魅力的な道筋を本質的には提供しているものの、多様な工程において改善の余地を残している。
【0015】
結果として、単離した栄養膜細胞、および特に、多核栄養膜ではなく単核栄養膜(単核栄養膜は、FISHのような染色体解析に供した場合に、より確実で一貫性のあるデータを生じることが示されたため)の検体を提供するための、より良い方法が引き続き求められている。
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,503,981号
【特許文献2】米国特許第5,432,054号
【特許文献3】米国特許第4,675,286号
【特許文献4】米国特許第5,580,724号
【特許文献5】米国特許第6,221,596号
【特許文献6】国際公開公報第2004/087863号
【特許文献7】米国特許出願公開2005/0123914号
【発明の開示】
【0017】
発明の概要
本発明は、妊婦から得られた栄養膜および母体細胞を含む検体中の胎児栄養膜を単離および精製する方法を提供する。子宮腔から採取した粘液検体を移送チューブ中の選択維持培地に加え、4℃〜20℃の温度で維持する。培地は任意でチューブ内の大気が約4%より濃い酸素を含まないように処置されうる。培地の特徴とは、粘液検体中の栄養膜が生存状態で維持されるようなものであり、よってこれは、臨床採取施設から解析設備を備えた実験室への移送を可能にする。移送の後、粘液検体を、粘液溶解剤またはムチナーゼ、糖加水分解酵素、ヌクレアーゼ、およびプロテアーゼのような酵素による処理を含む正確な処理工程に供する。結果として胎児および母体の細胞の生成物が得られるが、その外面には粘膜生体物質が本質的に全く付着しておらず、よって該検体から以前採取されていたよりも多くの胎児細胞を単離することが可能であり、かつ、該細胞は本質的に全く母体細胞がなく、かつ、FISHまたは他の分子診断に即座に効率的に供することが可能である。
【0018】
ある特定の局面において、本発明は、妊娠期の雌哺乳動物から採取した胎児栄養膜細胞およびその他を有する検体から、胎児栄養膜細胞の染色体解析を、迅速かつ正確に得る方法を提供するが、該方法は以下の工程を含む:(a)妊娠期の雌哺乳動物から、胎児栄養膜細胞および母体細胞を含む頸管粘液の検体を採取する工程であって、該検体が回収器具上に採取されかつ母体細胞とは対照的に栄養膜の保存に好ましい選択的保存培地中に入れられる工程;(b)該器具を該保存培地から取り出し、該検体および回収器具を粘液溶解剤の組み合わせおよび糖加水分解酵素で処理し、35〜40℃でインキュベーションする工程;(c)ヌクレアーゼおよびプロテアーゼの組み合わせで前記の検体を処理し、35〜40℃でインキュベーションする工程;(d)該回収器具を取り出し、任意でEDTAもしくは分離酵素を加え、該検体から細胞および他の生体物質を集めるために遠心分離する工程;(e)該遠心分離に続いて上清を除去する工程;(f)CHO細胞を培養するのに適した栄養培地を加えて混合する工程;(g)該細胞および他の生体物質を再度集めるために遠心分離して上清を除去する工程;(h)アジ化ナトリウムを含む水性緩衝液中の該工程(g)の生成物の懸濁液を、栄養膜細胞に特異的であって母体細胞には見られない捕捉剤で表面をコーティングした回収領域を持つマイクロチャネル装置に流して、母体細胞の実質的な除去に相当するよう効果的に捕捉する、工程;ならびに(i)該捕捉された栄養膜細胞を同定し、同定された細胞を解析する工程。
【0019】
別の特定の局面においては、本発明は、妊娠期の雌哺乳動物から採取した胎児栄養膜細胞などを有する検体から、胎児栄養膜細胞の染色体解析を迅速かつ正確に得る方法を提供するが、該方法は以下の工程を含む:(a)妊娠期の雌哺乳動物から、胎児栄養膜細胞および母体細胞を含む頸管粘液の検体を採取する工程であって、該検体が回収器具上に採取された、工程;(b)粘液溶解剤と糖加水分解酵素の組み合わせで検体を処理し、35〜40℃でインキュベーションする工程;(c)ヌクレアーゼおよびプロテアーゼの組み合わせで検体を処理し、35〜40℃でインキュベーションする工程;(d)検体から細胞および他の生体物質を集めるために遠心分離する工程;(e)任意で安定化剤を含む水性緩衝液中に細胞を再懸濁する工程;ならびに(f)栄養膜の外部表面の抗原に対して特異的な捕捉剤を用いることにより、母体細胞から栄養膜細胞を分離する工程。
【0020】
さらに特定の局面においては、本発明は、妊娠期の雌哺乳動物由来の子宮頸管粘液の検体から、胎児栄養膜細胞の染色体解析を迅速かつ正確に得る方法を提供し、該方法は以下の工程を含む:(a)妊娠期の雌哺乳動物から頸管粘液の検体を回収器具上に採取する工程であって、検体が胎児栄養膜細胞および母体細胞を含む、工程;(b)栄養膜細胞は健康な状態で維持されるが相当量の母体細胞が死滅し、それによって内部の胎児栄養膜細胞の割合が増加するような特性を持つ移送培地に、粘液を有する回収器具を加える工程;(c)粘液を有する回収器具を移送培地から取り出し、かつ、回収器具および粘液をチューブ内にて粘液溶解剤、糖加水分解酵素、ヌクレアーゼ、およびプロテアーゼで処理し、かつ、35〜40℃の温度でインキュベーションして、粘液の外来性生体成分を栄養膜細胞の外部表面から分離させる、工程;(d)インキュベーション後に回収器具をチューブから取り出して、器具を第二のチューブに入れる、工程;(e)回収器具および残存粘液を第二のチューブにて粘液溶解剤、糖加水分解酵素、ヌクレアーゼ、およびプロテアーゼで処理し、35〜40℃の温度でインキュベーションし、処理培地を第一および第二のチューブ両方から取り除き、CHO細胞を増殖させるのに適した培養培地中で検体由来の細胞を再懸濁して細胞を洗浄しかつ粘液に由来する外来性生体物質を除去する、工程;(e)細胞を安定化剤およびアジ化ナトリウムを含む水性緩衝液中で再懸濁して、マイクロフロー分離装置に流し入れるのに適した液体を提供する、工程;(f)外部表面および栄養膜細胞上で抗原に結合する捕捉剤の使用によって、マイクロフロー装置中の残存している母体細胞から栄養膜細胞を分離する工程;ならびに(g)その後、分離した栄養膜細胞について染色体解析を実施し、それにより、粘液を有する回収器具が移送培地より取り出されてから8時間以内に解析が完了する、工程。
【0021】
好ましい態様の詳細な説明
基本的に、頸管粘液検体は妊娠期の雌哺乳動物から回収され、栄養膜(胎盤)細胞はそこから単離される。以下に、用いられる工程ならびに、これらの工程を実施するために有用な培地および試薬を記載する。妊娠期の雌哺乳動物由来の頸管粘液検体より胎児細胞を取得する特定の好ましい方法を、この頸管粘液検体からの胎児栄養膜細胞の効果的な単離と共に具体的に記載するが、これによって、FISHまたは他の分子診断により解析可能であるような状態の栄養膜細胞が得られる。
【0022】
胎児および母体の細胞を含む頸管粘液の検体は多様な地域の臨床医によって採取されることが多いが、彼らは次にこれを処理のための実験室へ移送しなくてはならず、そのような検体は、例えば頸管粘液回収用具(例えばサイトブラシ、サイトブルーム、またはスワブ)の適切な部分をの中に入れることにより、蓋をしたバイアルまたはチューブ内の水性の保存培地にて保存されるのが好ましい。栄養膜細胞は、後の処理のためその生存能力を最も高く保つために、移送の間は凍結されるべきではない;代わりに、それらを約4℃で、約20℃以下に維持することが好ましい。
【0023】
栄養膜細胞は、ムコ多糖(同じくグリコサミノグリカン)と呼ばれるタンパク質-多糖複合体および他の高分子からなる頸管粘液中に少なくとも部分的に包埋されているため、ブラシなどで採取される頸管粘液検体を注意深く処理して細胞表面外側からそのような粘膜性生体物質を全て除去する必要がある。
【0024】
以下に記載される粘液検体の処理によって、本質的に全ての非細胞成分が効果的に取り除かれるが、同時に、生存可能な栄養膜細胞の選択も行われる。栄養膜細胞に富む初期の移送培地を使用し、続いて、その後の処理の際に他の培地を使用することは、繊細な栄養膜細胞を保存するのに有用であることが分かっている。同時に、以下に記載される処理方法は、非栄養膜成分を識別的に取り除く一方、並行して、粘着性の生体物質を壊れやすい栄養膜細胞の表面から分離する。
【0025】
解析用実験室への到着時に頸管粘液検体から栄養膜を精製するための一般的な処理手順を以下で説明する。これは、粘液に結合した細胞を処理するためのそのような工程を例証するものであるが、限定する意図は全くない。
【0026】
頸管粘液検体を含む、蓋をした回収チューブ、回収装置、および移送培地が実験室に到着し、実験室のデータ管理システムに記録される。使用される代表的な移送培地は、以下を含む。

【0027】
データ入力および必要な事務処理の後、チューブは検査技師に送られるが、該検査技師は、以下に記載される処理工程においてそのようなヒト生体物質が扱われる場合の、バイオハザード・フードの使用を含む安全ガイドラインに従う。移送培地から回収ブラシを取り出して15mlチューブに入れるが、そのような15mlチューブは、Hams F-12培地などの、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が増殖するよう配合されたタイプの培養培地を含む。このチューブは、以下、検体処理チューブと称される。
【0028】
最初に、回収ブラシおよび粘液検体を含むチューブを、37℃の水浴で30分間インキュベーションして、特定の化学試薬で処理される前に該温度にする。最初の処理は、粘液溶解剤またはムチナーゼと糖加水分解酵素との組み合わせにより行われるべきであることが分かっている。検体チューブ内におけるムチナーゼおよび糖加水分解酵素によるそのような最初の処理は、粘液および糖残基の一部の成分から栄養膜を効果的に遊離させる。
【0029】
N-アセチル-L-システインは、頸管粘液の粘性を減少させるのに有用な粘液溶解剤であり;従ってこれは、回収装置から、処理が行われる場である処理チューブ内の培地への、ムチンの物理的な放出を助ける。N-アセチル-L-システインは、ムコ多糖(同じくグリコサミノグリカン)を分解してより小さな分子サブユニットとすることにより、粘液を液化する。N-アセチル-L-システインは好ましい粘液溶解剤であるが、ジチオスレイトール(DTT)、塩酸ブロムヘキシン、L-システイン、ならびに、ヒアルロン酸リアーゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、およびヒアルロノグルクロニダーゼなどのヒアルロニダーゼを含む、他の公知のムチナーゼを代わりに用いて頸管粘液を加水分解しても良い。
【0030】
β-ガラクトシダーゼは、好ましい糖加水分解酵素であり;これは、粘液中で栄養膜細胞を囲む糖質鎖を開裂するのに有用である。β-ガラクトシダーゼは、グルコースとガラクトースの間のβ-ガラクトシダーゼ結合を加水分解し、細胞を粘液中の糖タンパク質から解放する。例えばインバーターゼのような他の糖加水分解酵素を代わりに用いて糖残基を加水分解しても良い。
【0031】
少なくとも1つのムチナーゼおよび少なくとも1つの糖加水分解酵素を検体処理チューブに加えた後、塩化カルシウムの水溶液を加え、酵素を活性化させるために検体を適切な期間、すなわち少なくとも約10分間、好ましくは約30分間、35〜40℃の温度で、好ましくは37℃で、試験管振とう機にてインキュベーションする。粘液溶解剤および糖加水分解酵素とのこのインキュベーションの後、酵素の組み合わせをチューブに加え、試験管振とう機にて数分間インキュベーションする;使用される酵素混合物は、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、および好ましくは追加量の糖加水分解酵素、好ましくはβ-ガラクトシダーゼを含む。
【0032】
ヌクレアーゼは、細胞外の一本鎖および/または二本鎖のDNAおよびRNAを酵素的に開裂するようはたらく。Duplantier et al. US Pharmacist, 17:34-52 (1992)において報告されたように、細胞外DNAを加水分解するためのヌクレアーゼの使用は、粘膜分泌物を分解することが示されている。エンドヌクレアーゼはDNAを内部の数か所で切断するが、エキソヌクレアーゼはDNA鎖の末端からヌクレオチドを消化するだけであるので、エンドヌクレアーゼはエキソヌクレアーゼよりも好ましい。したがって、エンドヌクレアーゼは、エキソヌクレアーゼと比較して、より全体的な消化をもたらすはずである。しかしながら、特定の環境下において、エキソヌクレアーゼを、エンドヌクレアーゼの代わりにまたはエンドヌクレアーゼに追加して用いることができる。特定の領域を開裂するエンドヌクレアーゼである制限酵素もまた利用可能であり;非特異的エンドヌクレアーゼまたはニッカーゼが好ましい。細胞外DNAを消化するために、好ましくは、一本鎖および二本鎖のDNAを分解するDNaseを用いるが、より好ましくは、ニッカーゼであるDNase Iを検体処理チューブに加える。使用可能なその他のニッカーゼの例は、マング・ビーン・ヌクレアーゼ(一本鎖DNAおよびRNAを消化する)およびBenzonase(登録商標)(多くの形態のDNAおよびRNAを小さなオリゴヌクレオチドへと分解し、かつ、細胞溶解液の粘性の迅速な減少を促進するが、これは超遠心分離に有用である)を含む。Eurogentec USA(San Diego, CA)は、前述の各エンドヌクレアーゼを供給している。子宮頸部由来の粘液検体は、無傷の細胞(母体および胎児の両方)、溶解細胞由来の溶解液、細胞外タンパク質、および細胞外DNAを含む生体物質の異種集団を含有するので、除去されなかった場合に試験結果に悪影響を及ぼしかつ/または検体の処理を困難にする可能性のある外因性DNAを分解するためにヌクレアーゼが最も有用と考えられている。外来性DNAの分解により、関心対象の細胞、すなわち栄養膜が含む表面混入物質はさらに少なくなる。
【0033】
プロテアーゼ(またはプロテイナーゼ)は、粘液のタンパク質部分を加水分解する。頸管粘液検体は細胞外タンパク質を含有するため、細胞外タンパク質に対しタンパク質分解性切断を実施することは、栄養膜細胞をその元々の異種環境からさらに単離してその天然三次元構造を仮定できるように表面抗原を解放することにより、より純粋な検体をもたらす。一例においては、ほとんどあらゆるペプチド結合を切断するプロナーゼのような酵素カクテルが、検体チューブ内の細胞外タンパク質を消化するために用いられる。プロナーゼは、エンドプロテイナーゼおよびエキソプロテイナーゼの両方を含む。タンパク質を加水分解するのに有用な数多くのタンパク質分解化合物が、当技術分野において公知である。トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、およびパパインのようなこれらの化合物の多くを、プロナーゼに加えてまたはその代わりに用いることができる。
【0034】
ヌクレアーゼ(好ましくはDNase I)、プロテアーゼ(好ましくはプロナーゼ)、およびβ-ガラクトシダーゼのこの組み合わせを用いた同時処理は、頸管粘液の粘着性の付着生体物質から栄養膜細胞を完全に遊離させるのに極めて有効であることがわかっている。粘液検体の処理に用いる上述の粘液溶解剤、糖加水分解酵素、ヌクレアーゼ、およびプロテアーゼに加え、他の補足の化学試薬を含めてもよいが、それらは必須とはみなされない。しかしながら、含まれる場合には、特定の酵素は、活性化のためにわずかに高い温度でのインキュベーションを必要としうること、および、一部の酵素は、未確認のまま放置すると、特定の生体成分を分解し過ぎる傾向がありうることを認識するべきである。よって、クエンチングにより、例えば第二の試薬へ曝露することもしくは反応温度の顕著な低下をもたらすことにより、一部の酵素による消化を停止させることが望ましい可能性がある。好ましい手順においては、回収ブラシを、約2分後に第一の処理チューブから取り出し、ラベルされた第二の処理チューブに入れる。しかしながら、第一のチューブのインキュベーションは、この除去後にさらに約10分間継続される。
【0035】
回収ブラシが入っている第二の検体処理チューブは、同等量のHams F-12培地、粘液溶解剤、糖加水分解酵素、および好ましくは塩化カルシウムを含んでおり;チューブおよび内容物は37℃の水浴にて少なくとも10分間、あらかじめ温められている。次に、第二のチューブにおける回収ブラシの処理を、上述と同様に実施する。酵素混合物での処理および約3分間のインキュベーションの後、回収ブラシを第二の検体処理チューブから取り出し、第三の検体処理チューブ(第二の検体処理チューブと類似の内容物を有する)に入れ、前記の処理を繰り返す。第三の検体処理チューブにおける約5分間のインキュベーションの後、回収ブラシを回収し、保管してラベルする。各3本の処理チューブ各々から回収ブラシが取り出されて、更なるインキュベーションが完了したら、各チューブの内容物を、以下に説明するのと同じ様式で処理する。この全処理工程の間に、35〜40℃の範囲の温度を継続的に維持した場合には、はるかに優れた結果が得られることが分かっている。
【0036】
回収ブラシを取り出した後のインキュベーションの完了に続いて、EDTAもしくはEGTA、および/または、例えばAccumax A7089のような分離酵素をチューブに加える。適切な分離酵素を利用できるが、好ましい態様においてはEDTAを用いる。細胞懸濁液と混合した後、EDTAを含むチューブを約37℃で約5分間、遠心分離する。EDTAの添加および遠心分離の後、前記の3本の検体チューブ各々において、チューブ内にはペレットとともに約1/2mlの培地を残し、培地は陰圧吸引する。この時点で細胞は、当初は細胞表面に付着していた粘着性の粘膜成分から非常に効果的に遊離される。次に洗浄操作として、細胞ペレットをHams F-12培地に2回別個に再懸濁して遠心分離する。この二度目の洗浄に続き、ペレットを、栄養膜選択的な抗体を用いるマイクロフロー分離装置を用いたその後の細胞分離工程に用いられうる特性をもつ緩衝液5ml中に再懸濁する。
【0037】
前記の洗浄によって、消化されたまたは部分的に消化された生体分子から栄養膜細胞が分離され、かつその後の遠心分離によって、チューブの底にある細胞と、培地および低分子量の生体分子を含む上清との分離が起こる。本出願を通して栄養膜「細胞」という用語を用いるが、これは、捕捉剤特異的な表面リガンドを同様に有する細胞断片および/または残物を含むと理解されるべきである。遠心分離に続いて、ペレットを乱さないように注意しながら、陰圧吸引によって上清の大部分(たとえば80%以上)を除去し、その後、残ったペレットを次の工程のために再懸濁する。前記のとおり、これら全ての工程は、約37℃の望ましい温度において最も性能を発揮する。
【0038】
3つのチューブ各々において、前記のEDTAの添加、遠心分離、および、大部分の培地を除去するための陰圧吸引を行った後、更なる洗浄操作として細胞ペレットをHams F-12培地に2回別個に再懸濁して遠心分離する。前記の二度目の洗浄に続き、ペレットを、栄養膜選択的な抗体を用いるマイクロフロー装置を用いたその後の細胞分離工程に用いられうる特性をもつ緩衝液5ml中に再懸濁する。
【0039】
用いられる分離緩衝液の組成は、栄養膜を選択的に分離するために検体を処理するための次の工程の特性に従って変動してもよい。分離緩衝液に含まれうる試薬の例は、組織培養培地、酵素、および安定化剤である。例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)を安定化剤として用いても良い。あるいは、ウシ胎仔血清(FBS)、ウシ血清、子ウシ血清、新生仔ウシ血清、ヤギ血清、ウマ血清、ヒト血清、ニワトリ血清、ブタ血清、ヒツジ血清、胚性ウシ(embryonic bovine fluid)体液、ウサギ血清などを用いても良い(上記試薬は全てProliant Biologicalsより入手することができる)。第一のチューブから、ならびに第二のチューブおよび第三のチューブから回収された栄養膜細胞を混合し、合計約1mlの緩衝液中に再懸濁しても良い。最終的な分離工程の前に、細胞を懸濁する水性緩衝液に少量のアジ化ナトリウムを含めることによって、より良い結果が得られることが分かっている。約0.05〜約0.2重量%のアジ化ナトリウムを含めることによって、通常は栄養膜細胞の表面上にある抗原が内在化してしまうかもしれないいかなる傾向も打開されることが分かっており;よって、胎児栄養膜細胞の指標となるこれらの抗原は、捕捉剤に付着できる場所において突き出た状態であり続ける。
【0040】
この時点で粘液中の他の生体成分から解放された栄養膜は、好ましくは、2005年1月18日に出願された、係属中の米国特許出願第11/038,920号に開示されたものなどのマイクロチャネル装置内で残りの母体細胞から単離される。マイクロチャネル装置の内部は、横柱(post)様式の回収領域を含む。該領域全体の表面は被覆されており、かつ好ましくは、標的となる関心対象の生体分子に特異的な捕捉剤の直接的または間接的な付着を促進するコーティングが設けられている。
【0041】
捕捉剤という用語は、特定の様式で標的細胞と相互作用して、該細胞を物理的に捕捉することのできる物質を指す。栄養膜に対して好ましい捕捉剤は、栄養膜の表面上の抗原に対する免疫グロブリン(詳しくは抗体)である。しかしながら、複合糖質もしくは合成分子を代わりに用いても良い。
【0042】
回収領域全体への抗体(Ab)などの捕捉剤の付着は、捕捉剤が効果的に機能するような様式で行われ;これは好ましくは、PEG、PPG、または、分子量約3,000〜6,000ダルトンのコポリマーを含み、ウレタン結合によって高分子化されかつ反応性イソシアネート基を含むイソシアネート機能性ポリマーである特定の親水性ヒドロゲル物質の薄層(少なくとも約1μm厚)で、分離表面をコーティングすることにより、達成される。そのようなコーティング物質の配合の詳細は、2004年12月23日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/021,304号に開示されている。
【0043】
捕捉剤は、直接的または間接的にヒドロゲルコーティングに付着することができるが、間接的な固定化が好ましい。それは、コーティングに直接結合する中間の薬剤または物質の採用を意図し;例えば、結合対の一方が、中間の薬剤としてヒドロゲルコーティングに付着しても良い。従って、ストレプトアビジンもしくは別種の抗体に対する抗体(Ab)が付着しても良く;そのような中間物は、その後、ビオチン化されたAbまたは、そのような別種のAbに結合する。例えば、アビジンは、コーティングを行うために用いられる水性ポリウレタンのプレポリマー成分の一部として含まれうる。したがってアビジンは、コーティング中のイソシアネート基と共有結合し、続いて、栄養膜細胞に特異的な所望のビオチン化抗体の付着を容易にする。栄養膜細胞の分離には捕捉剤としてAbを利用するのが好ましく、そのような抗体は、塗布されたコーティング物質内にAbが取り込まれることにより直接結合しうる。例えば、水溶液中の抗体を、遊離イソシアネートまたはポリエーテルイソシアネートなどの同等の基を持つポリウレタンプレポリマーと混合することができ、結果として、回収領域の表面は、そのようなAbの層で被覆されることになる。特に好ましいのは、親水性でポリウレタンベースのヒドロゲル層を重合の際に提供する、遊離イソシアネート基を持つプレポリマーの使用である。
【0044】
分離表面に対してヒドロゲル層を使う代わりに、例えば、最初に2-アミノチオランで処理してAbをチオール化しても良く、得られたチオール化Abを次に、PEG-マレイミドで処理された柱に接合させても良い。あるいは、所望のAbを、反応性イソシアネート基またはチオシアネート基を有する柱表面の適切な親水性コーティングと直接共有結合させても良い。
【0045】
マイクロチャネル装置のパターン化柱の回収領域全体に抗体が付着したら、標的細胞集団を含む緩衝液の懸濁物を、たとえば標準的なシリンジポンプから注入路(inlet passageway)へと注意深く放出するか、または、真空ポンプなどによって注入口における検体レザバーから吸い出すことにより、回収領域に流す。
【0046】
液状検体による装置の通過が完了した後、栄養膜細胞は回収領域内に捕捉されていると考えられる。次に、非特異的結合細胞および全ての残存生体物質を除去するために、緩衝液による洗浄を実施する。有効な緩衝液による洗浄は、そのような非特異的結合物質を除去して、所望の標的細胞のみを回収領域に付着させ続けることにより、該領域を清浄にする。
【0047】
緩衝液による洗浄が完了したら、回収領域を、捕捉された細胞を適切に放出するような化学試薬で満たすのが好ましい。放出は、当技術分野において公知の適切な方法により、例えば化学的に(例えばpHの変化)または酵素的切断剤などの使用により行われる。標的細胞を、回収領域内の表面と結合または連結した付着から放出させるために、例えば、試薬を用いて、捕捉剤を切断するか、または、そのような薬剤と細胞の間の結合を切断する。例えば、細胞が、標的細胞の表面の特徴に特異的な抗体の使用によって捕捉されている場合には、放出は、トリプシン、または、プロテイナーゼKのような別の適切なプロテアーゼを含む溶液で処理することにより行われうる。あるいは、他の捕捉剤からの放出を実施するためにコラゲナーゼを用いても良く、または、捕捉剤を回収表面に付着させるために特異的切断が可能なリンカーを用いても良い。
【0048】
そのような切断の間、マイクロチャネル装置の注入口および排出口は簡易な栓で塞ぐことが好ましく、次に装置を、前記の放出に続いて遠心分離に供する。遠心分離は、約500g程度の速度で約5分間、栓を付けた状態で、遠心力により、回収領域の一表面を形成するスライドガラスの表面に対して標的生体分子に圧力がかかるように装置を向けた状態で、実施できる。遠心分離が完了すると、回収領域に回収された標的栄養膜の実質的に全てが、この時点でスライドの上面に接着している。次に、栄養膜がその上面に配置されたスライドを提供するために装置の分解を注意深く行う。
【0049】
単離された栄養膜をFISH解析に供することが決まっている場合には、栄養膜を最初にメタノールで処理する。スライドの表面に付着している細胞を、どちらも栄養膜起源の細胞に特異的であるサイトケラチン-7およびサイトケラチン-17で染色する。これにより、細胞が栄養膜と同定され、これはその後、FISH技術を用いて容易に解析される。しかしながら、他の種類の遺伝子的なスクリーニング、解析、および試験もまた、本明細書に示された様式で単離された栄養膜に対して実施されうる。
【0050】
本明細書に教示されている濃縮培地および方法論は、頸管粘液検体回収の直後および臨床実験室への移送の間の胎児細胞の保存および生存能力を促進するものであり、臨床実験室における記載された一連の処理において用いられる化学試薬は、共に、単一検体由来の精製され単離された多数の胎児細胞の入手につながる。このことは、FISHまたは分子解析に適した条件で高品質かつ高収率の栄養膜細胞源を提供することにおいて、有意な進歩であることを証明している。
【0051】
以下の実施例から、本発明の態様および多くの利点がより良好に理解されるが、これは、例示であり、限定を意図したものではない。
【0052】
実施例
次の基本材料を用いるのが好ましい:
BSA含有リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4、(Sigma P-3688); 1M Tris-HCl、pH7.5、Cellgro(VWR 45001-066); 1M塩化マグネシウム(Sigma M-1028); リン酸水素ナトリウム二水和物(Sigma 71637); リン酸ナトリウム二水和物(Sigma 71505); プロナーゼ・プロテアーゼ(50,000 U)、(Calbiochem VWR 80601-406); β-ガラクトシダーゼ(1,500 U)、(Roche 0 105 031); N-アセチル-L-システイン、(Sigma A9165-25 g); DNase I(150,000 U)(Sigma D-5033); アジ化ナトリウム(Sigma S-8032); およびHams F-12培地、HyClone(VWR 16777-488)。
【0053】
具体的な試薬の調製
A. リン酸緩衝液(0.2Mリン酸/1.5M NaCl、pH8.0)
リン酸ナトリウム二水和物7.8 g、リン酸水素ナトリウム二水和物8.9、塩化ナトリウム43.83 g、および滅菌水450 mlを、滅菌500 mlボトルに加える。完全に溶けるまで混合物を磁気スターラーで攪拌する。pHは、5M水酸化ナトリウムで8.0に調整し、容量は滅菌水で500mlに調整する。0.22μmフィルターを通して濾過した後、最終濃度は0.2Mリン酸および1.5M NaClとなる。
【0054】
B. N-アセチル-L-システイン(300 mg/ml):
N-アセチル-L-システイン18.0 gおよび、リン酸緩衝液50 ml(0.2Mリン酸/1.5M NaCl、pH8.0)を、滅菌100 mlボトルに加える。完全に溶けるまで混合物を磁気スターラーで攪拌する。水酸化ナトリウム4.44 gを、ゆっくりと100 mlボトルに加える。pHは、5M水酸化ナトリウムで8.0に調整し、容量はリン酸緩衝液(0.2Mリン酸/1.5M NaCl、pH8.0)で60mlに調整する。0.22μmフィルターを通して濾過した後、6mlアリコートを滅菌15mlコニカルチューブに分注する。
【0055】
C. DNase I保存緩衝液
滅菌水19.58 ml、1M Tris-HCl 400μl、および1M MgCl2 20μlを滅菌チューブに加える。混合物を、0.22μmフィルターで濾過して新しい滅菌チューブの中へ入れ、最終濃度を2OmM Tris-HClおよび1mM MgCl2とし、冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0056】
D. DNase I(lOO単位/μl)
DNase I(150,000単位)を、DNase I保存緩衝液1.5mlに溶解し、冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0057】
E. プロナーゼ(2500単位/ml):
プロナーゼ(50,000 U)を滅菌水20 mlに溶解して最終濃度2500単位/mlとし、冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0058】
F. β-ガラクトシダーゼ
β-ガラクトシダーゼ(1,500 U)を滅菌水3mlに溶解して最終濃度0.5単位/μlとし、冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0059】
G. 酵素混合物 (80反応に十分な量)
DNase(100単位/μl)200μl、β-ガラクトシダーゼ(0.5単位/μl)1040μl、およびプロナーゼ(2500単位/ml)3200μlを、滅菌15 mlコニカルチューブに加える。これを毎日新しく氷上で調製し、逆さにして混合して、使用するまで氷上で保存する。
【0060】
H. ×200アジ化ナトリウム
アジ化ナトリウム200 mgを、滅菌15mlコニカルチューブ内で滅菌水10 mlに溶解することにより、毎日新しく調製する。
【0061】
I. 1%BSA含有PBS
PBSを1リットルの滅菌水に溶解して、0.45μmフィルターを通して濾過し、かつBSAを添加して、0.01M PBS、1%BSAの最終濃度とする。これを冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0062】
J. MEMS緩衝液
1%BSA含有PBS 100 ml、Hams F-12培地400 ml、DNase I(100単位/μl)10μl、およびアジ化ナトリウム2.5 mlを、滅菌500 mlボトルに加え、逆さにして混合し、2単位/mlのDNase Iおよび1×アジ化ナトリウムの最終濃度を得、冷蔵保存する(2〜8℃)。
【0063】
頸管粘液からの典型的な栄養膜単離
全ての作業は、吸引接続部のあるバイオハザード・フードにて行われる。酵素混合物は、上述の通りに調製し、使用するまで氷上で保存する。
【0064】
検体チューブの元の(第一の)セットの処理
粘液検体を有する回収ブラシをそれぞれが含む検体チューブの元の(第一の)セットを、37℃の水浴にて30分間インキュベーションする。これらの検体チューブを水浴から取り出し、以下の試薬を各検体チューブに加える:N-アセチル-L-システイン溶液(300 mg/ml)、pH8.0 22μlにて最終濃度を0.5 mg/mlとする;β-ガラクトシダーゼ溶液(0.5単位/μl)39μlにて最終濃度を1.5単位/mlとする; および、1 M CaCl2 28μl。チューブを37℃インキュベーター中の試験管振とう機に30分間置くことにより、該試薬を混合する。次に、検体チューブの第一のセットをインキュベーターから回収し、冷却した酵素混合物55.5μlを各チューブに加える。チューブを、再び37℃のインキュベーター中の試験管振とう機に2分間置く。
【0065】
2分後、検体チューブの第一のセットの各々から、滅菌ピンセットを用いてサイトブラシを取り出し、以下の通りに調製し、予め温めておいた検体チューブの第二のセットの一つに入れる:
a. 滅菌15 mlコニカルチューブのセットに検体ID番号をラベルする。
b. Hams F-12培地13 mlを各チューブに分注する。
c. N-アセチル-L-システイン溶液(300 mg/ml)pH8.0、22μlを各チューブに加え、最終濃度を0.5 mg/mlとする。
d.β-ガラクトシダーゼ溶液(0.5単位/μl)39μlを各チューブに加え、最終濃度を1.5単位/mlとする。
e. 1M CaCl2 28μlを各チューブに加える。
f.チューブを、37℃の水浴にて少なくとも10分間インキュベーションする。
【0066】
ここから、サイトブラシを有する検体チューブの第二のセットは、検体チューブの第一のセット由来の上清の処理と同時に処理される。
【0067】
検体チューブの第一のセット由来の上清の処理
サイトブラシを取り出した後の上清を含む検体チューブの第一のセットを、37℃インキュベーター中の試験管振とう機に10.5分間置く。次に、0.5M EDTA 13μlを各検体チューブに加え、検体チューブを、37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。次に、各チューブから上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残し、その後に37℃のHams F-12培地によって容量を約13 mlに調整する。チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。各チューブから再度上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残し、37℃のHams F-12培地によって各検体チューブ内の容量を約13 mlに再調整する。チューブを再度37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。各チューブから上清を陰圧吸引し、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残す。細胞を、37℃のマイクロチャネル緩衝液5ml中に再懸濁し、チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。検体チューブの第一のセットの各々から上清を陰圧吸引して、洗浄された細胞を容量約300μlのチャネル緩衝液中に残す。
【0068】
検体チューブの第二のセットの処理
サイトブラシを含む検体チューブの第二のセットを、37℃のインキュベーター中の試験管振とう機に15分間置く。次に、冷却した酵素混合物55.5μlを、各チューブに加え、チューブを37℃のインキュベーター中の試験管振とう機に3分間置く。
【0069】
次に、検体チューブの第二のセットの各々から、滅菌ピンセットでサイトブラシを取り出し、これを、次の通りに調製し、予め温めておいた検体チューブの第三のセットの一つに入れる:
a. 滅菌15 mlコニカルチューブのセットに検体ID番号をラベルする。
b. Hams F-12培地13 mlを各チューブに分注する。
c. N-アセチル-L-システイン溶液(300 mg/ml)、pH8.0、22μlを各チューブに加え、最終濃度を0.5 mg/mlとする。
d. β-ガラクトシダーゼ溶液(0.5単位/μl)39μlを各チューブに加え、最終濃度を1.5単位/mlとする。
e. 1M CaCl2 28μlを各チューブに加える。
f. チューブを、37℃の水浴にて少なくとも10分間インキュベーションする。
【0070】
サイトブラシを含む検体チューブの第三のセットは、検体チューブの第二のセット由来の上清の処理と同時に処理される。
【0071】
検体チューブの第二のセット由来の上清の処理
サイトブラシを取り出した後の上清を含む検体チューブの第二のセットを、37℃インキュベーター中の試験管振とう機に9.5分間置く。次に、0.5M EDTA 13μlを各検体チューブに加え、検体チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。次に、各チューブから上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残し、その後に37℃のHams F-12培地によって容量を約13 mlに調整する。チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。各チューブから再度上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残し、37℃のHams F-12培地によって各検体チューブの容量を約13 mlに再調整する。チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離し、各チューブから上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残す。細胞を37℃のマイクロチャネル緩衝液5ml中に再懸濁し、チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。検体チューブの第二のセットの各々から上清を陰圧吸引して、洗浄された細胞を容量約300μlのマイクロチャネル緩衝液中に残す。
【0072】
検体チューブの第三のセットの処理
サイトブラシを含む検体チューブの第三のセットを、37℃のインキュベーター中の試験管振とう機に15分間置く。次に、冷却した酵素混合物55.5μlを各チューブに加え、チューブを37℃のインキュベーター中の試験管振とう機に5分間置く。滅菌ピンセットを用いて検体チューブの第三のセットの各々からサイトブラシを取り出し、検体ID番号をラベルした滅菌15 mlチューブに入れる。取り出したサイトブラシは、4℃で保存する。
【0073】
サイトブラシを取り出した後の上清を含む検体チューブの第三のセットを、37℃インキュベーター中の試験管振とう機に9.5分間置く。次に、0.5M EDTA 13μlを各検体チューブに加え、検体チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。次に、各チューブから上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残す。その後に37℃のHams F-12培地によって容量を約13 mlに調整し、チューブを再度37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。各チューブから再度上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残す。各検体チューブにおける37℃のHams F-12培地によって容量を約13 mlに再調整し、チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で再度遠心分離する。各チューブから上清を陰圧吸引して、ペレットを含めて約500μlの容量を培地中に残す。細胞を、37℃のチャネル緩衝液5ml中に再懸濁し、チューブを37℃にて5分間、500g(1466 rpm)で遠心分離する。各検体チューブから上清を陰圧吸引して、洗浄された細胞を容量約300μlのマイクロチャネル緩衝液中に残す。
【0074】
頸管粘液検体由来の残存栄養膜を単離するため、Trop-1およびTrop-2に対する抗体を用いる。マイクロチャネル装置内の回収領域全体の内部表面を、Dow Corning Z-6020の10容量%溶液と共に室温にて30分間インキュベーションすることにより、最初に被覆する。エタノールで洗浄後、薄いカゼインコーティングを作製するため、これを室温にて脱脂乳で約1時間処理する。10%エタノール水溶液で洗浄後、これを、平均分子量約6000の、イソシアネート基でキャッピングされた(isocyanate-capped)PEGトリオールに基づくヒドロゲルでコーティングする。コーティングの準備ができたら、ポリマー1重量部:有機溶媒(すなわちアセトニトリル(Acn)およびDMF)6部で作製されたヒドロゲルプレポリマー溶液を、BSAを含む100mMホウ酸ナトリウム、pH8.0中の1mg/ml抗体溶液と混合する。具体的なコーティング製剤は、Acn/DMF中のプレポリマー100mg;水性ホウ酸緩衝液中の0.25mg/ml抗体混合物350μL;および水性ホウ酸緩衝液中の1 mg/ml BSA 350μLを含み;該コーティング製剤はポリマーを約2重量%含む。前記の水溶液中のチオール化された抗Trop-1およびTrop-2計約5マイクログラム、濃度約0.5mg/mlを、マイクロチャネル装置に供給し、溶液を放置して25℃で2時間インキュベーションする。このインキュベーション期間に続いて、マイクロチャネル装置を1%PBS/BSAで洗い流し、胎児栄養膜細胞の捕捉用に設計された抗体被覆表面を作製する。
【0075】
3つのそのようなマイクロフロー分離装置を並行して用いるのが望ましい場合があるが、その際には、Trop-1およびTrop-2で被覆された各マイクロチャネル装置の排出口のチューブを真空ポンプに接続して、この細胞懸濁液を垂直方向の流入口に供給することにより、装置に約300μlを通す。ポンプは、検体の液体がゆっくりした継続的な流れで装置を室温で通過するよう、好ましくは、約3〜5μl/分の流速で操作される。この期間中、Trop-1およびTrop-2抗体は、検体中に存在する栄養膜を捕捉する。検体全てが各々に供給されたら、1%PBS/BSA水性緩衝液を用いた低速洗浄を実施する。この水性緩衝液約100μlを約10分間にわたって装置に通すが、これにより、装置中のフローチャネルから、全ての非特異的結合生体物質が除去される。完全な除去を確実にするため、約10分間にわたる、各々約100μlの1%PBS+1%BSAによる二回のさらなる洗浄を行う。
【0076】
洗浄の完了後、装置の内部を0.25%トリプシン溶液で満たし、また、装置への注入口および装置からの排出口を栓で塞ぐ。装置は水平に置いて、27℃で約20分間インキュベーションする。この期間の完了時に、装置を遠心分離機に設置して500gで約5分間回転させ、この時点で分離している(now-detached)細胞を、遠心力によって、ヒドロゲル被覆水平スライド表面に押しつける。遠心分離の終了時に、水性トリプシン溶液を装置から排出し、装置を乾燥させる。装置の本体を、下にある平面スライドから注意深く外す。スライドの表面に付着している細胞を、栄養膜起源の細胞に特異的であるサイトケラチン-7およびサイトケラチン-17で染色し、これにより、後にFISH技術を用いてより容易に解析される栄養膜細胞を同定する。
【0077】
本発明は、本発明の実行に関して、現時点で発明者が知るところの最善の様式となる特定の好ましい態様について記載しているが、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨から逸脱することなく、当業者にとって明らかであるような多様な変更および修正がなされうることが理解されるべきである。例えば、検体の精製に用いるための特定の好ましい試薬が記載されているが、当技術分野において本目的に適していることが周知のその他の物質を使用しても良い。概して、栄養膜を捕捉することにより、頸管粘液の抽出物から胎児栄養膜を分離することに重点が置かれているものの、そのような検体は、その後捕捉される不要な細胞群を標的とするために負の濃縮にて処理されうることが理解されるべきである。
【0078】
本明細書において具体的に特定されているすべての米国特許および出願の開示は、参照により本明細書に明確に組み入れられる。本発明の具体的な特徴は、添付の特許請求の範囲において強調されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) 頸管粘液から採取した検体を含む混合物をヌクレアーゼおよびプロテアーゼとインキュベーションする工程;ならびに
(b) 胎児栄養膜細胞を該混合物から単離する工程
を含む、頸管粘液から胎児栄養膜細胞を単離する方法。
【請求項2】
混合物をヌクレアーゼおよびプロテアーゼとインキュベーションする前に、混合物を粘液溶解剤および糖加水分解酵素とインキュベーションする工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
混合物が約35℃〜約40℃の温度でインキュベーションされる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
混合物が約37℃でインキュベーションされる、請求項1記載の方法。
【請求項5】
混合物が約2分間〜約5分間インキュベーションされる、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
混合物が、粘液溶解剤および糖加水分解酵素と約35℃〜約40℃の温度でインキュベーションされる、請求項2記載の方法。
【請求項7】
混合物が、粘液溶解剤および糖加水分解酵素と約37℃でインキュベーションされる、請求項2記載の方法。
【請求項8】
混合物が、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼと約10分間〜約15分間インキュベーションされる、請求項6または7記載の方法。
【請求項9】
ヌクレアーゼが、エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ、制限酵素、DNase、DNase I、マング・ビーン・ヌクレアーゼ、またはBenzonase(登録商標)である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
プロテアーゼが、ディスパーゼ、プロナーゼ、トリプシン、キモトリプシン、ペプシン、またはパパインである、請求項1記載の方法。
【請求項11】
ヌクレアーゼがDNase Iであり、プロテアーゼがプロナーゼである、請求項1記載の方法。
【請求項12】
粘液溶解剤が、N-アセチルシステイン、ジチオスレイトール、塩酸ブロムヘキシン、L-システイン、ヒアルロン酸リアーゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、ヒアルロノグルコサミニダーゼ、またはヒアルロニダーゼである、請求項2記載の方法。
【請求項13】
粘液溶解剤がN-アセチルシステインであり、糖加水分解酵素がβ-ガラクトシダーゼである、請求項2記載の方法。
【請求項14】
ヌクレアーゼがDNase Iであり、プロテアーゼがプロナーゼであり、粘液溶解剤がN-アセチルシステインであり、糖加水分解酵素がβ-ガラクトシダーゼである、請求項2記載の方法。
【請求項15】
混合物を、EDTA、EGTA、または分離酵素と接触させる工程を更に含む、請求項1記載の方法。
【請求項16】
(a) 細胞を集めるために混合物を遠心分離する工程;
(b) 細胞を再懸濁する工程;
(c) 細胞を遠心分離する工程;
(d) 細胞を再懸濁する工程;および
(e) 細胞を遠心分離する工程
を更に含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
以下の工程を更に含む、請求項1記載の方法:
固体表面上の結合物質により、母体細胞から胎児栄養膜細胞を単離する工程であって、結合物質が胎児栄養膜細胞に特異的に結合する、工程。
【請求項18】
結合物質がマイクロチャネル装置の表面上にある、請求項17記載の方法。
【請求項19】
結合物質が抗体である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
ヌクレアーゼ;および
プロテアーゼ;および
頸管粘液から胎児栄養膜細胞を単離するためのキットの使用を記載した、取扱説明書一式
を含む、頸管粘液から胎児栄養膜細胞を単離するためのキット。
【請求項21】
粘液溶解剤;および
糖加水分解酵素
を更に含む、請求項20記載のキット。
【請求項22】
胎児栄養膜細胞に特異的に結合する結合物質
を更に含む、請求項20または21記載のキット。
【請求項23】
(a) 頸管粘液から採取された検体を、母体細胞に対して胎児栄養膜細胞を選択的に保存する培地中に入れる工程;
(b) 培地から検体を取り出す工程;
(c) 頸管粘液から採取された検体を含む混合物を、粘液溶解剤および糖加水分解酵素と共に、約35℃〜約40℃の温度で、約10分間〜約15分間インキュベーションする工程;
(d) 該混合物を、ヌクレアーゼおよびプロテアーゼと共に、約35℃〜約40℃の温度で約2分間〜約5分間インキュベーションする工程;
(e) 該混合物をEDTAと接触させる工程;
(f) 細胞を集めるために該混合物を遠心分離する工程;ならびに
(g) CHO細胞を増殖させるよう調製された培地中で細胞を再懸濁する工程
を含む、頸管粘液から胎児栄養膜細胞を単離する方法。
【請求項24】
(a) 細胞を遠心分離する工程;
(b) アジドを含む水性緩衝液中で細胞を再懸濁する工程;および
(c) マイクロチャネル装置の表面上の抗体を用いて母体細胞から胎児栄養膜細胞を単離する工程であって、該抗体が胎児栄養膜細胞に特異的に結合する工程
を更に含む、請求項23記載の方法。

【公表番号】特表2009−531033(P2009−531033A)
【公表日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−501741(P2009−501741)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/064705
【国際公開番号】WO2007/112281
【国際公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(507240956)バイオセプト インコーポレイティッド (8)
【Fターム(参考)】