説明

胚体内胚葉細胞の増殖

本明細書中で開示されるのは、増殖した胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物、並びに培養で胚体内胚葉細胞を増殖するための方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、医学及び細胞生物学の分野に関する。特に本発明は、富化、単離及び/又は精製の前又は後に増殖した胚体内胚葉細胞の組成物、並びにこのような細胞を産生及び使用する方法に関する。
【0002】
[関連出願]
本出願は、米国特許仮出願第60/693,317号(表題「単離された胚体内胚葉細胞の増殖」、2005年6月23日出願)の非仮出願であり、それに対する優先権を主張し、そして米国特許仮出願第60/736,598号(表題「胚体内胚葉のマーカー」、2005年11月14日出願)の非仮出願であり、それに対する優先権を主張する;本願は、米国特許法第119条(e)項に基づき、米国特許仮出願第60/587,942号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体」、2004年7月14日出願);米国特許仮出願第60/586,566号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体」、2004年7月9日出願);及び米国特許仮出願第60/532,004号(表題「胚体内胚葉」、2003年12月23日出願)に対する非仮出願として優先権を主張する米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉」、2004年12月23日出願)の一部継続出願であり、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
[背景]
ヒト多能性(pluripotent)幹細胞、例えば胚性幹(ES)細胞及び胚性生殖(EG)細胞は、1994年に線維芽細胞フィーダーを含有しない(Bongso et al., 1994)そして線維芽細胞フィーダーを含有する(Hogan, 1997)培養でまず単離された。後に、Thomson、Reubinoff及びShamblottは、有糸分裂不活性化マウスフィーダー層を用いたヒトES及びEG細胞の連続培養を確立した(Reubinoff et al., 2000;Shamblott et al., 1998;Thomson et al., 1998)。
【0004】
ヒトES及びEG細胞(hESC)は、ヒト発生の早期段階を研究するための、並びにいくつかの疾患状態、例えば真性糖尿病及びパーキンソン病における療法的介入のための独自の機会を提供する。例えばhESC由来のインスリン生産β細胞の使用は、糖尿病の治療のためにドナー膵臓からの細胞を利用する現在の細胞療法手順を上回る膨大な改善を提供する。しかしながら現在、hESCからインスリン生産β細胞を生成する方法は分かっていない。したがって、ドナー膵臓からの島細胞を利用する真性糖尿病のための現在の細胞療法処置は、移植に必要とされる高品質の島細胞の不足により制限される。一人のI型糖尿病患者のための細胞療法は、約8×108個の膵臓島細胞の移植を要する(Shapiro
et al., 2000;Shapiro et al., 2001a;Shapiro et al., 2001b)。したがって、少なくとも2つの健常ドナー器官が、上首尾の移植のために十分な島細胞を得るために必要とされる。ヒト胚性幹細胞は、ヒト細胞療法のための相当量の高品質分化細胞を発生させるための出発材料の供給源を提供する。
【0005】
hESCを細胞療法用途に独特に適合させる2つの特性は、多能性、並びに培養でこれらの細胞を長期間維持する能力である。多能性は、3つの一次胚葉(内胚葉、中胚葉、外胚葉)すべての誘導体に分化し、次に胚体外組織(例えば胎盤)及び生殖細胞のほかに、成熟生物体のすべての体細胞型を形成するhESCの能力により確定される。多能性はhESCに並外れた有用性を付与するが、この特性は、これらの細胞及びそれらの誘導体の研究及び操作のための独特のチャレンジを提起する。hESC培養物を分化するに際して
生じ得る非常に種々の細胞型のために、混合された細胞集団において膨大な数の細胞型が極めて低い効率で産生される。hESCを、細胞療法用途に有用な細胞を生成するための出発材料として用いるために、上記の問題を克服することは有益であろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[発明の概要]
本発明の実施形態は、増殖した胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に関する。本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、培養で富化、単離及び/又は精製された胚体内胚葉細胞を増殖するための方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書中に記載される方法のいくつかは、細胞培養物中での胚体内胚葉細胞の維持、増殖(growth)、継代培養及び/又は増殖(expansion)に関する。このような実施形態では、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物が得られる。次に細胞は単離され、胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかが細胞培養物中の他の細胞の少なくともいくつかから分離され、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を産生する。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団は、胚体内胚葉細胞の増殖を可能にする条件下で培養される。
【0008】
本明細書中に記載される方法のその他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、腸管の細胞又はそれに由来する器官に分化し得る多分化能細胞である。好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞は、ヒト胚性幹細胞(hESC)を分化させることにより得られるヒト胚体内胚葉細胞である。このような実施形態では、胚体内胚葉細胞は、このような細胞を、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子、例えばアクチビンAと接触させることにより、hESCから得られる。他の実施形態では、ヒト及び/又はその他の胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の既存の培養物から得られる。このような実施形態では、培養物の一部分又は全部が、本明細書中に記載される胚体内胚葉細胞の増殖方法に用いられ得る。
【0009】
胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を得るほかに、本明細書中に記載される増殖方法のいくつかの実施形態は、富化された胚体内胚葉細胞集団を産生する工程も含む。いくつかの実施形態では、このような富化された胚体内胚葉細胞集団は、細胞培養物中の他の細胞の少なくともいくつかから胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかを分離することにより産生される。したがって、胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかが、細胞培養物中に残存する他の細胞の少なくともいくつかから単離される。いくつかの実施形態では、単離する工程は、上記の胚体内胚葉細胞中で発現されるマーカーと結合するが、細胞培養物中に存在する上記の他の細胞中で実質的に発現されない試薬を細胞培養物中の細胞に提供することを含む。試薬結合胚体内胚葉細胞は次に、試薬非結合細胞から分離され、それにより富化された胚体内胚葉細胞集団を産生する。いくつかの実施形態では、マーカーはCXCR4であり、そして試薬はCXCR4に対する親和性を有する抗体である。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、蛍光標示式細胞分取(FACS)により分離される。
【0010】
さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかは、培養中の胚体内胚葉細胞を特異的に蛍光標識し、次にFACSにより標識細胞を非標識細胞から分離することにより、培養物中の他の細胞の少なくともいくつかから分離される。いくつかの実施形態では、蛍光は、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)により発生される。いくつかの実施形態では、GFP及び/又はEGFPは、SOX17又はCXCR4プロモーターの制御下で発現される。
【0011】
いくつかの実施形態では、上記のように産生される富化された胚体内胚葉細胞集団は、
胚体内胚葉細胞以外の細胞を実質的に含有しない。他の実施形態では、富化された胚体内胚葉細胞集団は、少なくとも約96%〜少なくとも約100%の胚体内胚葉細胞を含む。
【0012】
本明細書中に記載される方法の付加的な実施形態は、胚体内胚葉細胞に富んだ集団又は当該集団の一部分をプレーティングすることを含む、培養する工程も含む。いくつかの実施形態では、細胞は、ヒトフィブロネクチン及び/又はポリ−オルニチンで被覆された表面でプレーティングされる。他の実施形態では、培養する工程は、約2%(v/v)の血清を含む培地中に富んだ胚体内胚葉細胞集団又はその一部分をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、培地は、少なくとも1つの成長因子も含む。或る特定の実施形態では、少なくとも1つの成長因子は、TGFβスーパーファミリーの一成員、例えばアクチビンAを含む成長因子である。或いは、成長因子は、IGF1、bFGF、EGF又は別の成長因子であり得る。このような実施形態では、成長因子は、約1ng/ml〜約5000ng/mlの範囲の濃度で培地中に存在し得る。いくつかの実施形態では、成長因子の組合せが培地中に存在する。
【0013】
本明細書中に記載される付加的な実施形態は、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を得て、次に胚体内胚葉細胞を継代培養し、それにより胚体内胚葉細胞を含む複数の細胞培養物を産生することにより培養で胚体内胚葉細胞を増殖する方法に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物中で得られる胚体内胚葉細胞は基材、例えば細胞培養フラスコの表面又はマイクロタイタープレートの表面に付着される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は酵素的方法を用いて継代培養される。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は機械的に継代培養される。さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は細胞分散緩衝液を用いて継代培養される。
【0014】
本明細書中に記載されるさらに他の実施形態は、本明細書中に記載される方法により産生される増殖胚体内胚葉細胞の培養物及び/又は集団に関する。このような実施形態では、胚体内胚葉細胞は、腸管の細胞又はそれに由来する器官に分化し得る多分化能細胞である。
【0015】
或る特定の権限において、「〜を含む(comprising)」という用語の任意の一般的に許容可能な定義は存在し得ない。本明細書中で用いる場合、「〜を含む」という用語は、任意の付加的な要素の含入を可能にする「オープン」言語を表すよう意図される。これに留意して、本発明の付加的な実施形態を、以下の番号を付した段落を参照しながら説明する。
【0016】
1. 培養で胚体内胚葉細胞を増殖する方法であって、以下:(a)胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得する工程;(b)上記細胞培養物中の他の細胞のうちの少なくともいくつかから上記胚体内胚葉細胞のうちの少なくともいくつかを単離する工程であって、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を作り出す、工程;及び(c)上記胚体内胚葉細胞の増殖を可能にする条件下で上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を培養する工程を含む、方法。
【0017】
2. 上記胚体内胚葉細胞が腸管の細胞又はそれに由来する器官に分化し得る多分化能細胞である、段落1記載の方法。
【0018】
3. 上記胚体内胚葉細胞がヒト胚体内胚葉細胞である、段落1記載の方法。
【0019】
4. 上記胚体内胚葉細胞がヒト胚性幹細胞(hESC)に由来する、段落3記載の方法。
【0020】
5. 上記取得する工程が、上記hESCのうちの少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞への分化を可能にするために、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子とhESCを接触させることを含む、段落4記載の方法。
【0021】
6. 上記TGFβスーパーファミリーの上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、段落5記載の方法。
【0022】
7. 胚体内胚葉細胞を含む上記細胞培養物を取得する工程が、現存する胚体内胚葉培養物の一部分を取得することをさらに含む、段落1記載の方法。
【0023】
8. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が胚体内胚葉細胞以外の細胞を実質的に含有しない、段落1記載の方法。
【0024】
9. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約96%の胚体内胚葉細胞を含む、段落1記載の方法。
【0025】
10. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約97%の胚体内胚葉細胞を含む、段落1記載の方法。
【0026】
11. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約98%の胚体内胚葉細胞を含む、段落1記載の方法。
【0027】
12. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約99%の胚体内胚葉細胞を含む、段落1記載の方法。
【0028】
13. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が約100%の胚体内胚葉細胞を含む、段落1記載の方法。
【0029】
14. 上記単離する工程が、上記胚体内胚葉細胞中で発現されるマーカーと結合するが、細胞培養物中に存在する上記他の細胞中で実質的に発現されない試薬を上記細胞培養物に提供すること、及び、細胞培養物中に存在する上記他の細胞から上記試薬に結合された上記胚体内胚葉細胞を分離することであって、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を生じることを含む、段落1記載の方法。
【0030】
15. 上記マーカーがCXCR4である、段落14記載の方法。
【0031】
16. 上記試薬が抗体である、段落14記載の方法。
【0032】
17. 上記抗体がCXCR4に対する親和性を有する、段落16の方法。
【0033】
18. 上記試薬に結合される上記胚体内胚葉細胞が蛍光標示式細胞分取(FACS)により細胞培養物中に存在する上記他の細胞から分離される、段落14記載の方法。
【0034】
19. 上記単離する工程が非標識細胞から蛍光標識胚体内胚葉細胞を分離することを含む、段落1記載の方法。
【0035】
20. 上記蛍光標識胚体内胚葉細胞が強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現の結果として標識される、段落19記載の方法。
【0036】
21. EGFPの発現がSOX17プロモーターの制御下にある、段落20記載の方
法。
【0037】
22. EGFPの発現がCXCR4プロモーターの制御下にある、段落20記載の方法。
【0038】
23. 上記蛍光標識胚体内胚葉細胞がFACSにより非標識細胞から分離される、段落19の方法。
【0039】
24. 上記培養する工程が上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をプレーティングすることを含む、段落1記載の方法。
【0040】
25. 上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分がヒトフィブロネクチンで被覆された表面でプレーティングされる、段落24記載の方法。
【0041】
26. 上記表面がポリオルニチンで被覆される、段落25記載の方法。
【0042】
27. 上記培養する工程が約2%(v/v)の血清を含む培地中で上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、段落1記載の方法。
【0043】
28. 上記培養する工程が約2%(v/v)よりも多い血清を含む培地中で上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、段落1記載の方法。
【0044】
29. 上記培養する工程が約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、段落1記載の方法。
【0045】
30. 上記培養する工程が少なくとも1つの成長因子を含む培地中で上記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、段落1記載の方法。
【0046】
31. 上記少なくとも1つの成長因子がTGFβスーパーファミリーの成長因子の一成長因子である、段落30記載の方法。
【0047】
32. 上記TGFβスーパーファミリーの成長因子の少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、段落31記載の方法。
【0048】
33. 上記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、段落32記載の方法。
【0049】
34. 上記少なくとも1つの成長因子がIGF1を含む、段落30記載の方法。
【0050】
35. 上記IGF1が約100ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、段落34記載の方法。
【0051】
36. 上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAとIGF1との組合せを含む、段落30記載の方法。
【0052】
37. 上記少なくとも1つの成長因子がbFGFを含む、段落30記載の方法。
【0053】
38. 上記bFGFが約12ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、段落37記
載の方法。
【0054】
39. 上記少なくとも1つの成長因子がEGFを含む、段落30記載の方法。
【0055】
40. 上記EGFが約10ng/mlの濃度で上記培地中に存在する、段落39記載の方法。
【0056】
41. 上記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAと、bFGFと、EGFとの組合せを含む、段落30記載の方法。
【0057】
42. 段落1記載の方法により産生される増殖した胚体内胚葉細胞集団。
【0058】
43. 培養で胚体内胚葉細胞を増殖する方法であって、以下:(a)胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得する工程、及び(b)上記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程であって、それにより胚体内胚葉細胞を含む複数の細胞培養物を産生する工程を含む、方法。
【0059】
44. 上記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、上記細胞培養物に少なくとも1つの酵素を提供することを含む、段落43記載の方法。
【0060】
45. 上記少なくとも1つの酵素が少なくとも1つのプロテアーゼを含む、段落44記載の方法。
【0061】
46. 上記少なくとも1つのプロテアーゼがトリプシンを含む、段落45記載の方法。
【0062】
47. 上記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、上記胚体内胚葉細胞間の接触を機械的に妨げることを含む、段落43記載の方法。
【0063】
48. 上記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、細胞分散緩衝液中で上記胚体内胚葉細胞をインキュベートすることを含む、段落43記載の方法。
【0064】
49. 上記胚体内胚葉細胞が基材に付着される、段落43記載の方法。
【0065】
50. 上記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、上記基材から上記胚体内胚葉細胞を剥離することを含む、段落49記載の方法。
【0066】
51. 上記基材が組織培養フラスコの表面である、段落50記載の方法。
【0067】
52. 上記基材がマイクロタイタープレートの表面である、段落50記載の方法。
【0068】
53. 段落43記載の方法により産生される増殖した胚体内胚葉細胞集団。
【0069】
上記の方法及び組成物は、in vitroで培養される細胞に関することが理解されよう。しかしながら上記のin vitro分化細胞組成物は、in vivo用途のために用いられ得る。
【0070】
本発明の付加的な実施形態は、米国特許仮出願第60/532,004号(表題「胚体内胚葉」、2003年12月23日出願);米国特許仮出願第60/566,293号(表題「PDX1発現内胚葉」、2004年4月27日出願);米国特許仮出願第60/5
86,566号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体」、2004年7月9日出願);米国特許仮出願第60/587,942号(表題「胚体内胚葉の単離のためのケモカイン細胞表面受容体」、2004年7月14日出願);米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉」、2004年12月23日出願);米国特許出願第11/115,868号(表題「PDX1発現内胚葉」、2005年4月26日出願);米国特許出願第11/165,305号(表題「胚体内胚葉を分化させるための因子の同定方法」、2005年6月23日出願);米国特許仮出願第60/693364号(表題「前原始線条及び中内胚葉細胞;米国特許仮出願第60/693,317号(表題「単離された胚体内胚葉細胞の増殖」、2005年6月23日出願);及び米国特許仮出願第60/736,598号(表題「胚体内胚葉のマーカー」、2005年11月14日出願)(これらの開示はその全体が参照により本明細書に援用される)にも見出され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0071】
[詳細な説明]
原腸陥入と呼ばれる初期ヒト発生におけるきわめて重大な段階は、受精後2〜3週間で起こる。原腸陥入は、3つの一次胚葉が最初に特定化され、そして器官形成されるのがこの時期であるため、非常に重要である(Lu et al., 2001;Schoenwolf and Smith, 2000)。外胚葉は、身体の外被及び全神経系の終局的形成を担うが、一方、心臓、血液、骨、骨格筋及びその他の結合組織は中胚葉に由来する。胚体内胚葉は、食道、胃並びに小腸及び大腸を含む全腸管、並びに腸管に由来する器官、例えば肺、肝臓、胸腺、上皮小体及び甲状腺、胆嚢及び膵臓の形成を担う胚葉として定義される(Grapin-Botton and Melton, 2000;Kimelman and Griffin, 2000;Tremblay et al., 2000;Wells and Melton, 1999;Wells and Melton, 2000)。非常に重要な区別は、胚体内胚葉と原始内胚葉と呼ばれる細胞の完全に別個の系統との間でなされるべきである。原始内胚葉は主として、胚体外組織、主に胎盤卵黄嚢の壁側及び臓側内胚葉部分、並びにライヘルト膜の細胞外マトリックス物質の形成を担う。
【0072】
原腸陥入中、胚体内胚葉形成のプロセスは、中内胚葉細胞(中胚葉又は内胚葉を形成するための細胞構成成分)が原始線条と呼ばれる構造を介して移動する細胞移動事象で開始する。胚体内胚葉は、線条の前部分を通して、そして結節(線条の最前領域での特定構造)を通って移動する細胞に由来する。移動が起こると、胚体内胚葉はまず最前腸管に集合し、そして腸管の後端を形成する。
【0073】
胚体内胚葉及びそれに由来する内胚葉細胞は、胚体内胚葉系統由来の最終的分化組織及び/又は器官を構成する細胞の誘導のための重要な多分化能出発点を表す。このような細胞、組織及び/又は器官は、細胞療法に非常に有用である。上首尾の細胞療法用途のためには多数の細胞が通常必要であるため、単一細胞型の多数の細胞を用いて分化手順を開始することが有益である。培養中の胚性幹細胞は胚体内胚葉に分化する場合、すべての胚性幹細胞が胚体内胚葉細胞型に転換されるというわけではない。この問題を克服するために、混合細胞培養物中で増殖中の胚体内胚葉細胞は、本明細書中に記載される方法を用いて、富化され、単離され及び/又は精製され得る。このような富化、単離及び/又は精製後、その結果生じた胚体内胚葉細胞は培養で増殖することが容易でないかもしれない。本明細書中に記載される方法は、富化、単離及び/又は精製された胚体内胚葉細胞が細胞培養物中で増殖(grow)及び増殖(expand)する能力を改良する。胚体内胚葉細胞はここで、富化、単離及び/又は精製後に培養で増殖され得るため、胚体内胚葉細胞由来の細胞、組織及び/又は器官がより多数産生され得る。
【0074】
本発明のいくつかの実施形態は、細胞培養物中で胚体内胚葉細胞を増殖する方法に関する。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、混合細胞培養物中の他の細胞からこれ
らの細胞を分離することにより富化される。富化された胚体内胚葉細胞は次に、それらの増殖を可能にする条件下で培養される。
【0075】
定義
本出願全体を通して用いられるような或る特定のいくつかの用語及び語句は、以下のように提示される意味を有する:
【0076】
本明細書中で用いる場合、「胚性」とは、単一接合子で開始し、発生した配偶子細胞以外の多能性又は全能性細胞をもはや含まない多細胞構造で終わる生物体の一連の発生段階を指す。配偶子融合により得られる胚のほかに、「胚性」という用語は、体細胞核移行により得られる胚を指す。
【0077】
本明細書中で用いる場合、「多分化能」又は「多分化能細胞」は、限られた数の他の特定の細胞型を生じ得る細胞型を指す。
【0078】
本明細書中で用いる場合、「発現」とは、材料又は物質の産生、並びに材料又は物質の産生のレベル又は量を指す。したがって特定マーカーの発現の確定は、発現されるマーカーの相対量又は絶対量の検出、或いは単にマーカーの存在又は非存在の検出を指す。
【0079】
本明細書中で用いる場合、「マーカー」とは、観察され得るか又は検出され得る任意の分子を指す。例えばマーカーとしては、核酸、例えば特定遺伝子の転写物、遺伝子のポリペプチド産物、非遺伝子産物ポリペプチド、糖タンパク質、炭水化物、糖脂質、脂質、リポタンパク質又は低分子(例えば10000amu未満の分子量を有する分子)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
細胞培養物及び/又は細胞集団に関連して用いられる場合、「一部分」という用語は、単一細胞から細胞培養物又は細胞集団の全体までの範囲である任意のゼロでない量の細胞培養物又は細胞集団を意味する。
【0081】
細胞培養物中又は細胞集団中の細胞に関して、「〜を実質的に含有しない」という語句は、細胞培養物又は細胞集団を含有しない特定細胞型が、細胞培養物又は細胞集団中に存在する細胞の総数の約5%未満の量で存在する、ということを意味する。
【0082】
細胞培地に関して、本明細書中で用いる場合、「低血清RPMI」は、所定の時間中に血清濃度が徐々に増大される低血清含有培地を指す。例えば一実施形態では、低血清RPMIは、細胞増殖第1日目に約0.2%のウシ胎仔血清(FBS)、細胞増殖第2日目に約0.5%FBS、そして細胞増殖の第3〜5日目に約2%のFBSの濃度を含む。別の実施形態では、低血清RPMIは、1日目に約0%、2日目に約0.2%、そして3日目及びその後日に約2%の濃度を含む。
【0083】
本明細書中で用いる場合、「bFGF」及び「FGF2」という用語は、互換的に用いられる。
【0084】
胚体内胚葉細胞及びそれらに関連するプロセス
本明細書中に記載する実施形態は、幹細胞のような多能性細胞を、多分化能胚体内胚葉細胞へ分化させることにより培養で胚体内胚葉細胞を産生するための新規の所定のプロセスに関する。上述したように、胚体内胚葉細胞は、外胚葉又は中胚葉から産生される組織へ分化するのではなく、腸管並びに腸管に由来する器官へ分化する。或る特定の好ましい実施形態では、胚体内胚葉細胞は、hESCに由来する。かかるプロセスは、膵臓、肝臓、肺、胃、腸、甲状腺及び胸腺のような組織に由来するヒト内胚葉の効率的な産生に関す
る基盤を提供することができる。例えば、胚体内胚葉の産生は、機能的インスリン生産β細胞への幹細胞の分化における第1の工程であり得る。有用な量のインスリン生産β細胞を得るためには、膵臓島/β細胞運命(fate)に到達する前に起きる分化工程のそれぞれに関して、高効率の分化が望まれる。胚体内胚葉細胞への幹細胞の分化は、機能的膵臓島/β細胞の産生に対しておそらく一番初めの工程を表す(図1に示されるように)ため、この工程での高効率の分化が特に望まれる。
【0085】
胚体内胚葉細胞への多能性細胞の効率的分化の望ましさに鑑みて、本明細書中に記載される分化プロセスのいくつかの態様は、胚体内胚葉細胞への多能性細胞の約50〜80%の転換を生じるin vitro方法に関する。典型的には、このような方法は、所定の且つ一時的に特定化された様式での培養及び成長因子条件の適用を包含する。胚体内胚葉細胞に関する細胞集団のさらなる富化は、胚体内胚葉細胞と特異的に結合する試薬を用いることにより、集団中の他の細胞からの胚体内胚葉細胞の単離及び/又は精製により達成され得る。したがって、本明細書において記載されるいくつかの実施形態は、胚体内胚葉細胞並びにこのような細胞を産生するための方法及び単離するための方法及び/又は精製するための方法に関する。
【0086】
細胞培養物又は細胞集団中の胚体内胚葉細胞の量を確定するためには、培養物中又は集団中の他の細胞からこの細胞型を区別する方法が望ましい。したがって、本明細書中に記載される或る特定の実施形態は、その存在、非存在及び/又は相対発現レベルが胚体内胚葉に特異的である細胞マーカー、並びにこのようなマーカーの発現を検出し、確定するための方法に関する。
【0087】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、マーカーの存在、非存在及び/又は発現レベルは、定量的PCR(Q−PCR)により確定される。例えば或る特定の遺伝子マーカー、例えばSOX17、CXCR4、OCT4、AFP、TM、SPARC、SOX7、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1、CRIP1、並びに本明細書中に記載される他のマーカーにより産生される転写物の量が、定量的Q−PCRにより確定される。他の実施形態では、免疫組織化学を用いて、上記遺伝子により発現されるタンパク質を検出する。さらに他の実施形態では、Q−PCR及び免疫組織化学的技法が、このようなマーカーの量又は相対的な比率を同定すると共に確定するために用いられる。
【0088】
1つ又は複数の適切なマーカーの発現を確定するための上述に記載したような方法を使用することにより、胚体内胚葉細胞を同定すること、並びに細胞培養物又は細胞集団における胚体内胚葉細胞の比率を確定することが可能である。例えば、本発明のいくつかの実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも約2桁大きいレベルでSOX17及び/又はCXCR4遺伝子を発現する。他の実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも2桁を超えるレベルでSOX17及び/又はCXCR4遺伝子を発現する。さらに他の実施形態では、産生される胚体内胚葉細胞又は細胞集団は、非胚体内胚葉細胞型又は細胞集団よりも約2桁以上大きいレベルでSOX17、CXCR4、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの1つ又は複数を発現する。本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、PDX1を実質的に発現しない。
【0089】
本明細書中に記載される実施形態は、胚体内胚葉組成物にも関する。例えばいくつかの実施形態は胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に関するが、一方、他の実施形態は、胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団に関する。いくつかの好ましい実施形態は、培養中の細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞である胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に関す
る。特に好ましい実施形態は、培養中のヒト細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞であるヒト細胞を含む細胞培養物に関する。分化手順の効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞成長条件、成長因子濃度及び培養工程の時期(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手順は、胚体内胚葉細胞への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。他の好ましい実施形態では、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団への多能性細胞集団、例えば幹細胞集団の転換が意図される。
【0090】
本明細書中に記載される組成物及び方法は、いくつかの有用な特徴を有する。例えば胚体内胚葉を含む細胞培養物及び細胞集団、並びにこのような細胞培養物及び細胞集団を産生する方法は、ヒト発生の初期をモデリングするのに有用である。さらに、本明細書中に記載される組成物及び方法は、疾患状態、例えば真性糖尿病における治療的介入にも役立ち得る。例えば胚体内胚葉は限られた数のみの組織のための供給源として役立つため、それは純粋組織又は細胞型の発生に用いられ得る。
【0091】
多能性細胞からの胚体内胚葉の産生
胚体内胚葉を含む細胞培養物及び富化された細胞集団を産生するように多能性細胞を分化させるプロセスは、以下に、また米国特許第11/021,618号(表題「胚体内胚葉」2004年12月23日出願)に記載されている。その開示は、参照により本明細書に全体が援用される。これらのプロセスのいくつかでは、出発材料として使用される多能性細胞は、幹細胞である。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉細胞を含む胚体内胚葉細胞培養物及び富化された細胞集団は、胚性幹細胞から産生される。胚体内胚葉細胞を派生させる好ましい方法は、胚体内胚葉産生のための出発材料として、ヒト胚性幹細胞を利用することである。かかる多能性細胞は、桑実胚に由来する細胞、胚の内部細胞塊又は胚の生殖腺隆起に由来する細胞であり得る。ヒト胚性幹細胞は、当該技術分野で既知の方法を使用して、実質的な分化なしで多能性状態で培養物中に維持されることができる。かかる方法は、例えば米国特許第5,453,357号、同第5,670,372号、同第5,690,926号、同第5,843,780号、同第6,200,806号及び同第6,251,671号に記載されている。これらの開示は参照により本明細書に全体が援用される。
【0092】
胚体内胚葉細胞を産生するためのいくつかのプロセスにおいて、hESCは、フィーダー層上に維持される。このようなプロセスでは、hESCを多能性状態に維持させる任意のフィーダー層が用いられ得る。ヒト胚性幹細胞を培養するために一般的に用いられる1つのフィーダー層は、マウス線維芽細胞の層である。さらに近年、ヒト線維芽細胞フィーダー層が、hESCの培養に用いるために開発された(その開示は参照により本明細書に全体が援用される、米国特許出願第2002/0072117号参照)。胚体内胚葉を産生するための代替的プロセスは、フィーダー層の使用を伴わずに多能性hESCの維持を可能にする。フィーダーを使用しない条件下での多能性hESCの維持方法は、米国特許出願第2003/0175956号に記載されている。その開示は参照により本明細書に全体が援用される。
【0093】
本明細書中で用いられるヒト胚性幹細胞は、血清を含有するか又は含有しない培養物中に維持され得る。いくつかの胚性幹細胞維持手順では、血清代替物が用いられる。他の場合には、無血清培養技法、例えば米国特許出願第2003/0190748号(その開示は参照により本明細書に全体が援用される)に記載される技法が用いられる。
【0094】
幹細胞は、それらが胚体内胚葉へ分化されることを望まれるまで、日常的な継代培養に
より多能性状態で培養で維持される。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉への分化は、胚体内胚葉への分化を促進するのに十分な量でTGFβスーパーファミリーの成長因子を幹細胞培養物へ供給することにより達成される。胚体内胚葉の産生に有用であるTGFβスーパーファミリーの成長因子は、ノーダル/アクチビン又はBMPサブグループから選択される。いくつかの好ましい分化プロセスでは、成長因子は、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4から成る群から選択される。さらに、成長因子Wnt3a及び他のWntファミリー成員は、胚体内胚葉細胞の産生に有用である。或る特定の分化プロセスでは、上述の成長因子のいずれかの組合せが使用され得る。
【0095】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のためのプロセスのいくつかに関しては、胚体内胚葉細胞への幹細胞の少なくとも一部分の分化を促すのに十分な濃度で成長因子が培養物中に存在するように、上記成長因子が細胞に提供される。いくつかのプロセスでは、上記成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で細胞培養物中に存在する。
【0096】
胚体内胚葉細胞への多能性幹細胞の分化のための或る特定のプロセスでは、上記の成長因子は、それらの付加後、細胞培養物から除去される。例えば成長因子は、それらの付加後、約1日、約2日、約3日、約4日、約5日、約6日、約7日、約8日、約9日、又は約10日以内に除去され得る。好ましいプロセスでは、成長因子は、それらの付加後約4日で除去される。
【0097】
胚体内胚葉細胞の培養物は、低血清又は無血清を含有する培地中で増殖され得る。或る特定の培養条件下では、血清濃度は約0.05%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。例えばいくつかの分化プロセスでは、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)未満、約0.1%(v/v)未満、約0.2%(v/v)未満、約0.3%(v/v)未満、約0.4%(v/v)未満、約0.5%(v/v)未満、約0.6%(v/v)未満、約0.7%(v/v)未満、約0.8%(v/v)未満、約0.9%(v/v)未満、約1%(v/v)未満、約2%(v/v)未満、約3%(v/v)未満、約4%(v/v)未満、約5%(v/v)未満、約6%(v/v)未満、約7%(v/v)未満、約8%(v/v)未満、約9%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、又は約15%(v/v)未満又は約20%(v/v)未満であり得る。いくつかのプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、血清を用いずに、又は血清代替物を用いて増殖される。さらに他のプロセスでは、胚体内胚葉細胞はB27の存在下で増殖される。このようなプロセスでは、B27サプリメントの濃度は、約0.1%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。
【0098】
胚体内胚葉への多能性細胞の分化のモニタリング
胚体内胚葉へのhESC培養物の進行は、胚体内胚葉に特徴的なマーカーの発現を確定することによりモニタリングされ得る。いくつかのプロセスでは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーの存在又は非存在を検出することにより確定される。或いは、或る特定のマーカーの発現は、マーカーが細胞培養物又は細胞集団の細胞中に存在するレベルを測定することにより確定され得る。このようなプロセスでは、マーカー発現の測定は、定性的又は定量的であり得る。マーカー遺伝子により産生されるマーカーの発現を定量する一方法は、定量的PCR(Q−PCR)の使用による。Q−PCRを実施する方法は、当該技術分野で既知である。当該技術分野で既知である他の方法も、マーカー遺伝子発現を定
量するために用いられ得る。例えばマーカー遺伝子産物の発現は、目的のマーカー遺伝子産物に特異的な抗体を用いることにより検出され得る。或る特定のプロセスでは、胚体内胚葉に特徴的なマーカー遺伝子の発現並びにhESC及び他の細胞型に特徴的なマーカー遺伝子の有意の発現の欠如が確定される。
【0099】
以下の実施例でさらに記載するように、胚体内胚葉の信頼性の大きいマーカーは、SOX17遺伝子である。したがって、本明細書中に記載するプロセスにより産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17マーカー遺伝子を発現し、それによりSOX17遺伝子産物を産生する。胚体内胚葉の他のマーカーは、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1である。胚体内胚葉細胞は、原始内胚葉及び臓側内胚葉に特徴的であるSOX7マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでSOX17マーカー遺伝子を発現する(表1を参照)ため、いくつかのプロセスでは、SOX17及びSOX7の両方の発現がモニタリングされる。他のプロセスでは、hESCに特徴的であるSOX17マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さらに、胚体内胚葉細胞は、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでSOX17マーカー遺伝子を発現するため、これらの遺伝子の発現もまたモニタリングされ得る。
【0100】
胚体内胚葉の別のマーカーは、CXCR4遺伝子である。CXCR4遺伝子は、細胞表面ケモカイン受容体をコードし、そのリガンドは、化学誘引物質SDF−1である。成体におけるCXCR4受容体保有細胞の主要な役割は、骨髄への造血細胞の遊走、リンパ球輸送並びに様々なB細胞及びマクロファージ血液細胞系統の分化であると考えられる[Kim, C., and Broxmeyer, H.J. Leukocyte Biol. 65, 6-15 (1999)]。CXCR4受容体はまた、T細胞へのHIV−1の進入のための共受容体として機能する[Feng, Y., et al.
Science, 272, 872-877 (1996)]。[McGrath, K.E. et al. Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]により実施された広範囲の一連の研究では、ケモカイン受容体CXCR4及びその特有のリガンドであるSDF−1[Kim, C., and Broxmyer, H., J. Leukocyte Biol. 65, 6-15 (1999)]の発現は、マウスにおいて初期発生及び成体期中に描写された。発生におけるCXCR4/SDF1相互作用は、いずれかの遺伝子がトランスジェニックマウスで破壊される[Nagasawa et al. Nature, 382, 635-638 (1996), Ma, Q., et al Immunmity, 10, 463-471 (1999)]場合、それが後期胚性致死をもたらしたことが実証された際に明らかとなった。McGrath他は、CXCR4は、RNA分解酵素保護及びin situハイブリッド形成方法論の組合せを使用して初期原腸陥入胚(E7.5)中に検出される最も豊富なケモカイン受容体メッセンジャーRNAであることを実証した。原腸陥入胚では、CXCR4/SDF−1シグナル伝達は、原始線条胚葉細胞の遊走を誘導することに主に関与するようであり、この時期に存在する胚体内胚葉、中胚葉及び胚体外中胚葉上で発現される。E7.2−7.8マウス胚では、CXCR4及びα−フェトプロテインは、相互排他的であり、臓側内胚葉における発現の欠如を示している[McGrath, K.E. et al.
Dev. Biology 213, 442-456 (1999)]。
【0101】
多能性細胞を分化させることにより産生される胚体内胚葉細胞は、CXCR4マーカー遺伝子を発現するため、胚体内胚葉細胞の産生を追跡するために、CXCR4の発現をモニタリングすることができる。さらに、本明細書中に記載する方法により産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17、MIXL1、GATA4、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1を包含するが、これらに限定されない胚体内胚葉の他のマーカーを発現する。胚体内胚葉細胞は、SOX7マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでCXCR4マーカー遺伝子を発現するため、CXCR4及びSOX7の両方の発現がモニタリングされ得る。他のプロセスでは、CXCR4マーカー遺伝子及びOCT4マーカー遺伝子の両方の発現がモニタリングされる。さら
に、胚体内胚葉細胞は、AFP、SPARC又はトロンボモジュリン(TM)マーカー遺伝子のレベルよりも高いレベルでCXCR4マーカー遺伝子を発現するため、これらの遺伝子の発現もまたモニタリングされ得る。
【0102】
内胚葉細胞におけるCXCR4の発現は、SOX17の発現を妨げないことが理解されよう。したがって、本明細書中に記載するプロセスにより産生される胚体内胚葉細胞は、SOX17及びCXCR4を大いに発現するが、AFP、TM、SPARC又はPDX1を大いには発現するものではない。
【0103】
SOX17及び/又はCXCR4マーカーの発現は、分化条件に応じて、胚体内胚葉細胞において多種多様なレベルにわたって誘導されることが理解されよう。したがって、本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも少なくとも約2倍〜少なくとも約10,000倍高い。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも、少なくとも約4倍高いか、少なくとも約6倍高いか、少なくとも約8倍高いか、少なくとも約10倍高いか、少なくとも約15倍高いか、少なくとも約20倍高いか、少なくとも約40倍高いか、少なくとも約80倍高いか、少なくとも約100倍高いか、少なくとも約150倍高いか、少なくとも約200倍高いか、少なくとも約500倍高いか、少なくとも約750倍高いか、少なくとも約1000倍高いか、少なくとも約2500倍高いか、少なくとも約5000倍高いか、少なくとも約7500倍高いか、或いは少なくとも約10000倍高い。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団(例えば、多能性幹細胞)におけるSOX17マーカー及び/又はCXCR4マーカーの発現よりも飛躍的に高い。
【0104】
同様に、本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの発現は、非胚体内胚葉細胞又は細胞集団におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現と比較して増大されていることが理解されよう。
【0105】
さらに、胚体内胚葉細胞中でのSOX17マーカーの発現レベルと、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルとの間に或る範囲の差が存在することが理解されよう。同様に、胚体内胚葉細胞中でのCXCR4マーカーの発現レベルと、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルとの間に或る範囲の差が存在する。したがって、本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現より少なくとも約2倍〜少なくとも約10000倍高い。他の実施形態では、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現レベルより少なくとも約4倍高い、少なくとも約6倍高い、少なくとも約8倍高い、少なくとも約10倍高い、少なくとも約15倍高い、少なくとも約20倍高い、少なくとも約40倍高い、少なくとも約80倍高い、少なくとも約100倍高い、少なくとも約150倍高い、少なくとも約200倍高い、少なくとも約500倍高い、少なくとも約750倍高い、少なくとも約1000倍高い、少なくとも約2500倍高い、少なくとも約5000倍高い、少なくとも約7500倍高いか又は少なくとも約10000倍高い。いくつかの実施形
態では、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーは、胚体内胚葉細胞中で有意に発現されない。
【0106】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞におけるGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択されるマーカーの発現は、胚体内胚葉細胞におけるOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7の発現と比較して増大されていることが理解されよう。
【0107】
胚体内胚葉の富化、単離及び/又は精製
上述のプロセスのいずれかにより産生される胚体内胚葉細胞は、かかる細胞に特異的である親和性タグを使用することにより、富化、単離及び/又は精製することができる。胚体内胚葉細胞に特異的な親和性タグの例は、胚体内胚葉細胞の細胞表面上に存在するが、本明細書中に記載する方法により産生される細胞培養物中に見出されるであろう他の細胞型上には実質的に存在しないマーカー分子(例えば、ポリペプチド)に特異的である抗体、リガンド又は他の結合剤である。いくつかのプロセスでは、CXCR4に結合する抗体は、胚体内胚葉細胞の富化、単離又は精製用の親和性タグとして使用される。他のプロセスでは、ケモカインSDF−1又はSDF−1に基づく他の分子もまた、親和性タグとして使用され得る。かかる分子としては、SDF−1フラグメント、SDF−1融合体又はSDF−1模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
抗体を作製し、また細胞単離のためにそれらを使用する方法は当該技術分野で既知であり、かかる方法は、本明細書中に記載する抗体及び胚体内胚葉細胞を用いた使用に実施することができる。一プロセスでは、CXCR4に結合する抗体を磁気ビーズへ結合させた後、細胞間接着及び基材接着を低減させるように酵素的に処理した細胞培養物中の胚体内胚葉細胞へ結合させる。続いて、ビーズ結合された胚体内胚葉細胞と未結合細胞を分離するのに使用される可動性磁界へ細胞/抗体/ビーズ複合体を暴露させる。胚体内胚葉細胞が培養中の他の細胞と物理的に分離されると、抗体結合は妨げられて、細胞は、適切な組織培養培地中で再度プレーティングされる。
【0109】
富化、単離又は精製された胚体内胚葉細胞培養物又は集団を得るためのさらなる方法もまた使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、CXCR4抗体を、細胞間接着及び基材接着を低減させるように処理した胚体内胚葉含有細胞培養物とともにインキュベートさせる。続いて、細胞を洗浄して、遠心分離して、再懸濁させる。次に、細胞懸濁液を、一次抗体に結合することが可能な二次抗体(例えば、FITC結合抗体)とともにインキュベートさせる。続いて、細胞を洗浄して、遠心分離して、緩衝液中に再懸濁させる。次に、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を使用して、細胞懸濁液を分析及び選別する。CXCR4陽性細胞を、CXCR4陰性細胞と分離して収集して、それによりかかる細胞型の単離をもたらす。望ましい場合、単離された細胞組成物は、代替的な親和性ベースの方法を使用することにより、或いは胚体内胚葉に特異的な同じか又は異なるマーカーを使用したさらなる一連の選別によりさらに精製することができる。
【0110】
さらに他のプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、CXCR4に結合するリガンド又は他の分子を使用して、富化、単離及び/又は精製される。いくつかのプロセスでは、分子はSDF−1又はそれらのフラグメント、融合体又は模倣物である。
【0111】
本明細書中に記載されるプロセスのいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は蛍光標識され、次に蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いて非標識細胞から単離される。このような実施形態では、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする核酸又は発現可能蛍光マーカー遺伝子をコードする別の核酸を用いて、PDX1陽性細胞を標識する。例えば
いくつかの実施形態では、GFP遺伝子産物又はその生物学的活性断片の発現がSOX17又はCXCR4プロモーターの制御下にあるように、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片の少なくとも1つのコピーが、SOX17又はCXCR4プロモーターの下流の多能性細胞、好ましくはヒト胚性幹細胞中に導入される。いくつかの実施形態では、SOX17又はCXCR4をコードする核酸の全コード領域が、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片により取って代わられる。他の実施形態では、GFPをコードする核酸又はその生物学的活性断片は、SOX17又はCXCR4をコードする核酸の少なくとも一部分とフレーム内で融合され、それにより融合タンパク質を形成する。このような実施形態では、融合タンパク質はGFPと類似の蛍光活性を保有する。
【0112】
蛍光標識する細胞、例えば上記の多能性細胞は、上記のように胚体内胚葉に分化される。胚体内胚葉細胞は蛍光マーカー遺伝子を発現するが、一方、他の細胞型はそうではないため、胚体内胚葉細胞は他の細胞型から分離され得る。いくつかの実施形態では、蛍光標識胚体内胚葉細胞及び非標識非胚体内胚葉細胞の混合物を含む細胞懸濁液は、FACSを用いて分類される。胚体内胚葉細胞は非蛍光細胞と別個に収集され、それにより胚体内胚葉の単離を生じる。所望であれば、単離された細胞組成物は、胚体内胚葉に特異的である同一の又は異なるマーカーを用いて、さらに一連の分類によりさらに精製され得る。
【0113】
好ましいプロセスでは、胚体内胚葉細胞は、幹細胞培養物が胚体内胚葉系統へと分化するように誘導された後、他の非胚体内胚葉細胞から富化、単離及び/又は精製される。上述の富化、単離及び精製手法は、分化の任意の段階でかかる培養物を用いて使用することができることが理解されよう。
【0114】
直ぐ上で記載された手法のほかに、胚体内胚葉細胞は、細胞単離のための他の技法によっても単離され得る。さらに胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の選択的生存又は選択的増殖を促す成長条件で連続継代培養する方法によっても、富化されるか又は単離され得る。
【0115】
本明細書中に記載される方法を用いて、富化、単離及び/又は精製された胚体内胚葉細胞の集団又は組織が、少なくとも何らかの分化を受けた多能性細胞培養物又は細胞集団、例えば幹細胞培養物又は集団からin vitroで産生され得る。いくつかの方法では、細胞は無作為な分化を受ける。しかしながら好ましい方法では、細胞は主に胚体内胚葉に分化するよう指図される。いくつかの好ましい富化、単離及び/又は精製方法は、ヒト胚性幹細胞からの胚体内胚葉のin vitro産生に関する。
【0116】
本明細書中に記載される方法を用いて、細胞集団又は細胞培養物は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2〜約1000倍、胚体内胚葉含量が富化され得る。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約5〜約500倍、富化され得る。他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約10〜約200倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約20〜約100倍、富化され得る。さらに他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約40〜約80倍、富化され得る。或る特定の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、非処理細胞集団又は細胞培養物と比較して、少なくとも約2〜約20倍、富化され得る。
【0117】
胚体内胚葉細胞を含む組成物
上記の方法により産生される細胞組成物としては、胚体内胚葉を含む細胞培養物、並びに胚体内胚葉に富んだ細胞集団が挙げられる。例えば、培養中の細胞の少なくとも約50〜80%が胚体内胚葉細胞である胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物が産生され得る。分化
プロセスの効率は、或る特定のパラメーター、例えば細胞増殖条件、成長因子濃度及び培養工程の時期(これらに限定されない)を修正することにより調整され得るため、本明細書中に記載される分化手順は、胚体内胚葉への多能性細胞の約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約95%より多い転換を生じ得る。胚体内胚葉細胞の単離が用いられるプロセスでは、例えばCXCR4受容体と結合する親和性試薬を用いることにより、実質的に純粋な胚体内胚葉細胞集団が回収され得る。
【0118】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、多能性細胞、例えば幹細胞と、胚体内胚葉細胞との両方を含む細胞集団及び細胞培養物のような組成物に関する。例えば本明細書中に記載される方法を用いて、hESC及び胚体内胚葉細胞の混合物を含む組成物が産生され得る。いくつかの実施形態では、約95個の多能性細胞につき少なくとも約5個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生される。他の実施形態では、約5個の多能性細胞につき少なくとも約95個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生される。さらに、胚体内胚葉細胞対多能性細胞の他の比を含む組成物が意図される。例えば約1,000,000個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約100,000個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約10,000個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約1,000個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約500個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約100個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約10個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約5個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約2個の多能性細胞につき少なくとも約1個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約2個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約5個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約10個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約20個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約50個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約100個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約1,000個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約10,000個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約100,000個の胚体内胚葉細胞、約1個の多能性細胞につき少なくとも約1,000,000個の胚体内胚葉細胞を含む組成物が意図される。いくつかの実施形態では、多能性細胞はヒト多能性幹細胞である。或る特定の実施形態では、幹細胞は、桑実胚、胚の内部細胞塊、又は胚の生殖腺隆起に由来する。或る特定の他の実施形態では、多能性細胞は、胚期が終わって発生した多細胞構造の生殖腺又は胚組織に由来する。
【0119】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態は、少なくとも約5%の胚体内胚葉細胞〜少なくとも約99%の胚体内胚葉細胞から成る細胞培養物又は細胞集団に関する。いくつかの実施形態では、細胞培養物又は細胞集団は、哺乳類細胞を含む。好ましい実施形態では、細胞培養物又は細胞集団はヒト細胞を含む。例えばいくつかの特定の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%〜少なくとも約95%が胚体内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。他の実施形態は、ヒト細胞の少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は90%より多くが胚体内胚葉細胞であるヒト細胞から成る細胞培養物に関する。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0120】
本明細書中に記載されるさらなる実施形態は、ヒト細胞、例えばヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関するが、この場合、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約5%のヒト細胞では、OCT4、SPARC、α−フェトプロテイン(AFP)、トロンボモジュリン(TM)及び/又はSOX7マーカーの発現より多い。他の実施形態では、SOX17マーカー又はCXCR4マーカーの発現は、少なくとも約10%のヒト細胞では、少なくとも約15%のヒト細胞では、少なくとも約20%のヒト細胞では、少なくとも約25%のヒト細胞では、少なくとも約30%のヒト細胞では、少なくとも約35%のヒト細胞では、少なくとも約40%のヒト細胞では、少なくとも約45%のヒト細胞では、少なくとも約50%のヒト細胞では、少なくとも約55%のヒト細胞では、少なくとも約60%のヒト細胞では、少なくとも約65%のヒト細胞では、少なくとも約70%のヒト細胞では、少なくとも約75%のヒト細胞では、少なくとも約80%のヒト細胞では、少なくとも約85%のヒト細胞では、少なくとも約90%のヒト細胞では、少なくとも約95%のヒト細胞では、又は95%より多くのヒト細胞では、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現より多い。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団中のヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0121】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%〜少なくとも約95%を上回るヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0122】
本明細書中に記載するさらに他の実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでSOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約5%のヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約10%のヒト細胞において、少なくとも約15%のヒト細胞において、少なくとも約20%のヒト細胞において、少なくとも約25%のヒト細胞において、少なくとも約30%のヒト細胞において、少なくとも約35%のヒト細胞において、少なくとも約40%のヒト細胞において、少なくとも約45%のヒト細胞において、少なくとも約50%のヒト細胞において、少なくとも約55%のヒト細胞において、少なくとも約60%のヒト細胞において、少なくとも約65%のヒト細胞において、少なくとも約70%のヒト細胞において、少なくとも約75%のヒト細胞において、少なくとも約80%のヒト細胞において、少なくとも約85%のヒト細胞において、少なくとも約90%のヒト細胞において、少なくとも約95%のヒト細胞において、或いは少なくとも約95%を上回るヒト細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0123】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、ヒト胚体内胚葉細胞のようなヒト細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1マーカーの発現は、少なくとも約5%〜少なくとも約95%を上回るヒト細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大
きいことが理解されよう。細胞培養物又は細胞集団がヒトフィーダー細胞を含む実施形態では、上記のパーセンテージは、細胞培養物又は細胞集団におけるヒトフィーダー細胞を考慮せずに算出される。
【0124】
本明細書中に記載するさらなる実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでSOX17又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17又はCXCR4マーカーのいずれかの発現は、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚葉細胞において、或いは少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。
【0125】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1から成る群から選択される1つ又は複数のマーカーの発現は、少なくとも約5%〜少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解されよう。
【0126】
本明細書中に記載するさらなる他の実施形態は、ヒト内胚葉細胞のような哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでSOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約5%の内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。他の実施形態では、SOX17及びCXCR4マーカーの両方の発現は、少なくとも約10%の内胚葉細胞において、少なくとも約15%の内胚葉細胞において、少なくとも約20%の内胚葉細胞において、少なくとも約25%の内胚葉細胞において、少なくとも約30%の内胚葉細胞において、少なくとも約35%の内胚葉細胞において、少なくとも約40%の内胚葉細胞において、少なくとも約45%の内胚葉細胞において、少なくとも約50%の内胚葉細胞において、少なくとも約55%の内胚葉細胞において、少なくとも約60%の内胚葉細胞において、少なくとも約65%の内胚葉細胞において、少なくとも約70%の内胚葉細胞において、少なくとも約75%の内胚葉細胞において、少なくとも約80%の内胚葉細胞において、少なくとも約85%の内胚葉細胞において、少なくとも約90%の内胚葉細胞において、少なくとも約95%の内胚葉細胞において、或いは少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞において、OCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きい。
【0127】
本明細書中に記載するいくつかの実施形態は、哺乳類内胚葉細胞を含む細胞培養物又は細胞集団のような組成物に関し、ここでGATA4、MIXL1、HNF3b、GSC、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1マーカーの発現は、少なくとも約5%〜少なくとも約95%を上回る内胚葉細胞においてOCT4、SPARC、AFP、TM及び/又はSOX7マーカーの発現よりも大きいことが理解さ
れよう。
【0128】
本明細書中に記載される方法を用いて、他の細胞型を実質的に含有しない胚体内胚葉細胞を含む組成物が産生され得る。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、本明細書中に記載される方法により産生される胚体内胚葉細胞集団又は細胞培養物は、OCT4、SOX7、AFP、SPARC、TM、ZIC1又はBRACHマーカー遺伝子を有意に発現する細胞を実質的に含有しない。
【0129】
一実施形態では、マーカー遺伝子の発現に基づいた胚体内胚葉細胞の説明は、SOX17高、MIXL1高、AFP低、SPARC低、トロンボモジュリン低、SOX7低及びCXCR4高である。
【0130】
胚体内胚葉細胞の増殖
本明細書中に記載されるin vitro方法のいくつかによれば、胚体内胚葉細胞は、細胞培養で維持され、増殖され、継代培養され、及び/又は増殖される。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、いかなる有意の分化も伴わずに、維持され、増殖され、継代培養され、及び/又は増殖される。言い換えれば、このような実施形態では、胚体内胚葉細胞は、細胞培養で維持され、増殖され、継代培養され、及び/又は増殖される間、胚体内胚葉表現型を維持する。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書中に記載される増殖方法に用いられる胚体内胚葉細胞は、腸管の細胞又はそれに由来する器官に分化し得る多分化能細胞である。このような細胞としては、膵臓、肝臓、肺、胃、小腸、甲状腺、胸腺、咽頭、胆嚢及び膀胱の細胞、並びにこのような細胞の前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。さらにこれらの細胞は、より高等な構造、例えば組織及び/又は器官にさらに発達し得る。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞はヒト胚体内胚葉細胞である。
【0132】
本明細書中に記載される方法のいくつかの実施形態は、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得する工程を含む。細胞培養物は、胚体内胚葉細胞の純粋培養物、或いは胚体内胚葉細胞並びに他の型の細胞を含む混合細胞培養物であり得る。例えば細胞培養物は、胚体内胚葉細胞及びヒト胚性幹細胞(hESC)の両方を含む培養物であり得る。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞培養物は、hESCのin vitro細胞培養物を分化させることにより得られる。或る特定の実施形態では、hESCは、桑実胚、胚の内部細胞塊又は胚の生殖腺隆起から得られる。或る特定の他の実施形態では、多能性細胞は、胚期が終わって発生した多細胞構造の生殖腺又は胚組織に由来する。
【0133】
ヒト胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を産生するためのhESCの分化方法は、本出願全体に、そして米国特許出願第11/021,618号(表題「胚体内胚葉」、2004年12月23日出願)(この開示は参照により本明細書にその全体が援用される)に記載されている。しかしながら、hESCから、又は他のヒト細胞型からヒト胚体内胚葉細胞を産生するための任意の既知の方法が用いられ得ることが理解されよう。本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、hESCを分化させることにより産生される胚体内胚葉細胞の培養物は、胚体内胚葉細胞及び1つ又は複数の型の他の細胞を含む混合された胚体内胚葉培養物、富化された胚体内胚葉細胞培養物及び/又は精製された胚体内胚葉細胞培養物であり得る。hESCから胚体内胚葉細胞を取得するためのいくつかの方法は、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子とhESCを接触させるか、そうでなければそれらの因子をhESCに提供することを含む。このような成長因子としては、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンBが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、成長因子は、5ng/ml〜5000ng/mlの範囲の濃度でhESCに提供される。或る特定の実施形態では、成長因子は、少なくとも約5ng/m
l、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で培養中のhESCに提供される。
【0134】
本明細書中に記載される方法の他の実施形態では、胚体内胚葉細胞は、胚体内胚葉細胞の既存の培養物から得られる。このような実施形態では、培養物の一部分又は全部が、本明細書中に記載される胚体内胚葉増殖方法に用いられ得る。
【0135】
胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を得るほかに、本明細書中に記載される増殖方法のいくつかの実施形態は、細胞培養物から胚体内胚葉細胞のうちの少なくともいくつかを単離する工程も包含する。このような実施形態では、胚体内胚葉細胞のうちの少なくともいくつかは、細胞培養物中の他の細胞のうちの少なくともいくつかから分離され、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を産生する。いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞のうちの少なくともいくつかは細胞培養物から除去されるが、一方他の細胞のうちの少なくともいくつかは細胞培養物中に残存する。細胞培養物中に存在する他の細胞としては、hESC、原始内胚葉、栄養外胚葉、中胚葉及び外胚葉が挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
本明細書中に記載される他の実施形態では、単離する工程は、上記胚体内胚葉細胞中で発現されるマーカーと結合するが、細胞培養物中に存在する上記他の細胞中では実質的に発現されない試薬を細胞培養物中の細胞に提供することを含む。本明細書中で上記されたように、いくつかの実施形態では、マーカーは、胚体内胚葉細胞に特異的である任意の細胞表面マーカーであり得る。本出願全体に(特に以下の実施例参照)記載されるこのような一マーカーは、CXCR4マーカーである。本明細書中に上記されたように、試薬結合胚体内胚葉細胞は、多数の方法により試薬非結合細胞から分離され得る。例えば胚体内胚葉細胞の表面に選択的に存在するCXCR4受容体に対する抗体は、細胞培養物中の胚体内胚葉細胞に提供され得る。抗体結合胚体内胚葉細胞は次に、例えば蛍光標示式細胞分取(FACS)、抗体を固体支持体に結合すること、或いは磁界で適切にタグされた抗体を単離することにより、培養物中の他の細胞から分離される。いくつかの実施形態では、抗体は、分離プロセス後に胚体内胚葉細胞から放出される。
【0137】
分離の代替的手段として、胚体内胚葉細胞の少なくともいくつかは、培養中の胚体内胚葉細胞を特異的に蛍光標識し、次にFACSにより非標識細胞から標識細胞を分離することにより、培養物中の他の細胞の少なくともいくつかから分離される。上記のようにそして実施例に記載されるように、このような実施形態では、hESCは、胚体内胚葉細胞中で高度に発現されるが、他の細胞型中では有意に発現されないマーカー遺伝子のプロモーターの制御下で、蛍光レポーター遺伝子を含むベクターでトランスフェクトされる。いくつかの実施形態では、蛍光レポーター遺伝子は、緑色蛍光タンパク質(GFP)又は強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)をコードする遺伝子である。いくつかの実施形態では、GFP及び/又はEGFPは、SOX17又はCXCR4プロモーターの制御下で発現される。トランスフェクトされたhESCは次に、胚体内胚葉の産生を特異的に誘導する分化因子の存在下で培養で増殖される。好ましい実施形態では、分化因子はアクチビンAである。他の好ましい実施形態では、アクチビンAは、100ng/mlの濃度で細胞培養物に付加される。
【0138】
本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、単離する工程の結果として産生され
る富化された胚体内胚葉細胞集団は、胚体内胚葉細胞以外の細胞を実質的に含有しない。他の実施形態では、富化された胚体内胚葉細胞集団は、少なくとも約96%〜少なくとも約100%の胚体内胚葉細胞を含む。さらに他の実施形態では、富化された胚体内胚葉細胞集団は、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%並びに少なくとも約100%の胚体内胚葉細胞を含む。
【0139】
本明細書中に記載される増殖方法のさらなる実施形態によれば、細胞培養工程が意図される。例えばいくつかの実施形態は、胚体内胚葉細胞に富んだ集団又は集団の一部分をプレーティングすることを含む、培養する工程を含む。いくつかの実施形態では、細胞はヒトフィブロネクチンで被覆された表面でプレーティングされる。他の実施形態では、プレートは、ポリオルニチンで被覆される。さらに他の実施形態では、プレートはポリオルニチン及びヒトフィブロネクチンで被覆される。好ましい実施形態では、プレートは、ポリオルニチン及びヒトフィブロネクチンの両方で被覆されたIVFプレートである。ヒトフィブロネクチンは本明細書中に記載されるプレートのための好ましいコーティングであり、他の供給源からのフィブロネクチンはプレートをコーティングするために十分であることは理解されよう。
【0140】
他の実施形態では、培養する工程は、約2%(v/v)の血清を含む増殖培地中に富んだ胚体内胚葉細胞集団又はその一部分をインキュベートすることを含む。いくつかの実施形態では、血清濃度は、約0%(v/v)〜約20%(v/v)の範囲であり得る。例えば本明細書中に記載されるいくつかの実施形態では、培地の血清濃度は、約0.05%(v/v)、約0.1%(v/v)、約0.2%(v/v)、約0.3%(v/v)、約0.4%(v/v)、約0.5%(v/v)、約0.6%(v/v)、約0.7%(v/v)、約0.8%(v/v)、約0.9%(v/v)、約1%(v/v)、約2%(v/v)、約3%(v/v)、約4%(v/v)、約5%(v/v)、約6%(v/v)、約7%(v/v)、約8%(v/v)、約9%(v/v)、約10%(v/v)、約15%(v/v)又は約20%(v/v)であり得る。いくつかの実施形態では、血清代替物が培地中に含まれる。
【0141】
本明細書中に記載される増殖方法のさらに他の実施形態では、増殖培地は、少なくとも1つの成長因子も含む。或る特定の実施形態では、少なくとも1つの成長因子は、TGFβスーパーファミリーの一成員を含む成長因子である。このような実施形態では、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子としては、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びこれらの成長因子の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。或いは、いくつかの実施形態では、少なくとも1つの成長因子は、IGF1又はIGFとTGFβスーパーファミリーの一成長因子の組合せであり得る。他の実施形態では、少なくとも1つの成長因子は、bFGF、EGF又は別の成長因子であり得る。さらに他の実施形態では、少なくとも1つの成長因子は、bFGF、EGF及びTGFβスーパーファミリーの一成長因子の組合せであり得る。上記実施形態の各々において、1つ又は複数の成長因子は、約1ng/ml〜5000ng/mlの範囲の濃度で存在し得る。このような実施形態では、培地中の成長因子の濃度は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少なくとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度である。或る特定の実施形態では、成長因子の組合せが培地中に存在する。このような実施形態では、各成長因子は、少なくとも約5ng/ml、少なくとも約10ng/ml、少なくとも約25ng/ml、少なくとも約50ng/ml、少なくとも約75ng/ml、少なくとも約100ng/ml、少な
くとも約200ng/ml、少なくとも約300ng/ml、少なくとも約400ng/ml、少なくとも約500ng/ml、少なくとも約1000ng/ml、少なくとも約2000ng/ml、少なくとも約3000ng/ml、少なくとも約4000ng/ml、少なくとも約5000ng/ml又は約5000ng/mlより高い濃度で培地中に存在する。
【0142】
上記の増殖方法のほかに、いくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、まず、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得し、次に胚体内胚葉細胞を継代培養することによって増殖し、それにより胚体内胚葉細胞を含む複数の細胞培養物を産生する。細胞を継代培養することによる胚体内胚葉細胞のこれらの増殖方法は、このような培養物が得られる方法に関係なく、任意の胚体内胚葉培養物を用いて実施され得る。例えばこれらの方法は、上記の増殖方法において細胞を単離する工程の次に起こる、培養する工程の一部分として実施され得るし、或いはこの方法は、hESCから新たに分化された胚体内胚葉細胞を用いて実施され得る。
【0143】
本明細書中に記載される増殖方法の或る特定の態様に従って、胚体内胚葉細胞を継代培養する工程は、胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物に少なくとも1つの酵素を提供することを含む。例えば少なくとも1つの酵素は、パパイン、プロナーゼ、I型コラゲナーゼ、II型コラゲナーゼ、III型コラゲナーゼ、IV型コラゲナーゼ、トリプシン、ヒアルロニダーゼ、エラスターゼ、DNase I及びディスパーゼから成る群から選択される1つ又は複数の酵素であり得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの酵素は、少なくとも1つのプロテアーゼを含む。好ましい実施形態では、少なくとも1つのプロテアーゼは、トリプシンを含む。例えば或る特定の実施形態では、培養容器中で増殖中の胚体内胚葉細胞は、まず細胞から培地を除去することにより、トリプシンを用いて継代培養される。次に滅菌トリプシン溶液が、室温で数分間、胚体内胚葉細胞に提供される。トリプシン溶液は次に、細胞を撹乱しないよう、静かに除去される。トリプシン溶液が除去された後、胚体内胚葉細胞は2%(v/v)の血清を含有するRPMIのような培地を提供され、そして次に、細胞培養容器を撹拌し、細胞接着を妨げ、細胞懸濁液を生成する。いくつかの実施形態では、細胞培地は、残留トリプシンを不活性化するためにトリプシン阻害剤を含む。
【0144】
トリプシンは種々の滅菌溶液中に提供され得る、例えばトリプシンはハンクス緩衝塩溶液のような平衡塩溶液中の胚体内胚葉細胞に提供され得ることが理解されよう。或いはトリプシンは、例えば低血清RPMI中で、血清を含有するか又は含有しない培地中の胚体内胚葉に提供され得る。
【0145】
本明細書中に記載される増殖方法の他の態様に従って、胚体内胚葉細胞を継代培養する工程は、上記胚体内胚葉細胞間の接触を機械的に妨げることを包含する。このような機械的阻害技法は、細胞接触及び基材を実質的に妨げるのに十分であるべきであるが、しかしながらこれらの技法は細胞生存度に影響を及ぼすほど厳しくあるべきではない。機械的細胞阻害技法、例えば研和(trituration)は、当業者に既知である。
【0146】
本明細書中に記載される増殖方法のさらに他の態様に従って、胚体内胚葉細胞を継代培養する工程は、細胞分散緩衝液中で上記の胚体内胚葉細胞をインキュベートすることを含む。細胞分散緩衝液は、当該技術分野で既知の任意の分散緩衝液、例えば市販の化学解離緩衝液であり得る。
【0147】
本明細書中に記載される増殖方法のいくつかの実施形態では、胚体内胚葉細胞は、細胞培養容器中で増殖される。細胞培養容器としては、例えば組織培養フラスコ及び細胞培養プレート、例えばマイクロタイタープレートが挙げられるが、これらに限定されない。い
くつかの実施形態では、培養中の胚体内胚葉細胞は、基材に付着される。或る特定の実施形態では、上記の胚体内胚葉細胞を継代培養する工程は、基材から上記胚体内胚葉細胞を引き剥がすことを含む。好ましい実施形態では、基材は組織培養フラスコの表面である。他の好ましい実施形態では、基材はマイクロタイタープレートの表面である。
【0148】
以下の実施例の多くは、多能性ヒト細胞の使用を記載する。多能性ヒト細胞の産生方法は当該技術分野で周知であり、そして多数の科学出版物、例えば米国特許第5,453,357号、第5,670,372号、第5,690,926号、第6,090,622号、第6,200,806号及び第6,251,671号、並びに米国特許出願公開第2004/0229350号(これらの開示は参照により本明細書中にその全体が援用される)に記載されている。
【実施例1】
【0149】
ヒトES細胞
内胚葉発生についてのわれわれの研究のために、多能性であり、そして正常核型を維持しながら培養中に外見上無限に分裂し得るヒト胚性幹細胞を用いた。単離のために免疫学的又は機械的方法を用いて、5日齢胚内部細胞塊からES細胞を得た。特にヒト胚性幹細胞株hESCyt−25を、患者によるインフォームドコンセント後に、in vitro受精周期からの過剰凍結胚から得た。解凍時に、ES培地(DMEM、20%FBS、非必須アミノ酸、β−メルカプトエタノール、及びFGF2)中のマウス胚線維芽細胞(MEF)上に孵化胚盤胞をプレーティングした。胚が培養皿に接着し、そして約2週間後、非分化hESCの領域を、MEFとともに新たな皿に移した。機械的に切断し、ディスパーゼで手短に消化し、その後、細胞クラスターを機械的に取り出して、洗浄し、再度プレーティングすることにより移動を成し遂げた。誘導以来、hESCyt−25を、100回にわたって連続継代培養した。胚体内胚葉の産生のための出発物質として、hESCyt−25ヒト胚性幹細胞株を用いた。
【0150】
幹細胞又は他の多能性細胞は本明細書中に記載される分化手順のための出発物質としても用いられ得ることが当業者には理解されよう。例えば当該技術分野で既知の方法により単離され得る胚性生殖腺隆起から得られる細胞は、多能性細胞出発物質として用いられ得る。
【実施例2】
【0151】
hESCyt−25特徴付け
ヒト胚性幹細胞株hESCyt−25は、培養で18ヶ月にわたって、正常形態学、核型、増殖及び自己再生特性を維持した。この細胞株は、OCT4、SSEA−4及びTRA−1−60抗原(これらはすべて、非分化hESCに特有である)に対する強免疫反応性を示し、そしてアルカリホスファターゼ活性、並びに他の確立されたhESC株と同一の形態学を示す。さらにヒト幹細胞株hESCyt−25は、懸濁液中で培養される場合、胚様体(EB)も容易に形成する。その多能性性質の実証として、hESCyT−25は、3つの主要な胚葉を表す種々の細胞型に分化する。ZIC1に関するQ−PCR、並びにネスチン及びより成熟したニューロンマーカーに関する免疫細胞化学(ICC)により、外胚葉産生を実証した。β−IIIチューブリンに関する免疫細胞化学染色を、初期ニューロンに特徴的な伸長細胞のクラスター中で観察した。予め、レチノイン酸で懸濁液中のEBを処理して、臓側内胚葉(VE)、胚体外系統への多能性幹細胞の分化を誘導した。処理細胞は、高レベルのα−フェトタンパク質(AFP)及びSOX7(VEの2つのマーカー)を54時間の処理により発現した。単層中で分化された細胞は、免疫細胞化学染色により実証されるように、散在性パッチ中でAFPを発現した。以下で記載するように、hESCyT−25細胞株は、AFP発現の非存在下でのSOX17に関するリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)及び免疫細胞化学により立証される
ように、胚体内胚葉も形成し得た。中胚葉への分化を実証するために、分化中のEBを、いくつかの時点でのブラキュリ(Brachyury)遺伝子発現に関して分析した。ブラキュリ発現は、実験経過中に漸進的に増大した。上記に鑑みて、三胚葉を表す細胞を形成する能力により示されるように、hESCyT−25株は多能性である。
【実施例3】
【0152】
SOX17抗体の産生
hESC培養物における胚体内胚葉の同定に対する主要な妨害は、適切なツールの欠如である。したがって、本発明者等は、ヒトSOX17タンパク質に対して産生される抗体の産生に着手した。
【0153】
マーカーSOX17は、それが原腸陥入中に形成する際に胚体内胚葉全体にわたって発現され、その発現は、器官形成の開始まで腸管で維持される(しかし、発現のレベルは、A−P軸に沿って様々である)。SOX17はまた、胚体外内胚葉細胞のサブセットでも発現される。このタンパク質の発現はまた、中胚葉又は外胚葉では観察されていない。SOX17は、胚体外系統を排除するためのマーカーと併用される場合、胚体内胚葉系統に適切なマーカーであることが現在発見されている。
【0154】
本明細書中で詳述するように、SOX17抗体を、SOX17陽性胚体内胚葉細胞の産生を目的とした様々な処理及び分化手順の影響を具体的に検査するのに利用した。AFP、SPARC及びトロンボモジュリンに対して反応性の他の抗体もまた、臓側及び壁側内胚葉(胚体外内胚葉)の産生を除外するのに使用された。
【0155】
SOX17に対する抗体を産生するために、SOX17タンパク質のカルボキシ末端におけるアミノ酸172〜414(配列番号2)に相当するヒトSOX17 cDNA(配列番号1)の一部分(図2)を、抗体産生会社GENOVAC(Freiberg, Germany)にて、そこで開発された手順に従って、ラットにおける遺伝子免疫化に使用した。遺伝子免疫化に関する手順は、米国特許第5,830,876号、同第5,817,637号、同第6,165,993号及び同第6,261,281号、並びに国際特許出願公開第WO00/29442号及び同第WO99/13915号に見出すことができる。それらの開示は参照により本明細書に全体が援用される。
【0156】
遺伝子免疫化に関する他の適切な方法はまた、非特許文献にも記載されている。例えば、Barry他は、Biotechniques 16: 616-620, 1994(その開示が参照により本明細書に全体が援用される)において遺伝子免疫化によるモノクローナル抗体の産生について記載している。特異的タンパク質に対する抗体を産生するための遺伝子免疫化方法の具体例は、例えば、Costaglia et al., (1998) Genetic immunization against the human thyrotropin receptor causes thyroiditis and allows production of monoclonal antibodies recognizing the native receptor, J. Immunol. 160: 1458-1465、Kilpatrick et al (1998) Gene gun delivered DNA-based immunizations mediate rapid production of murine monoclonal antibodies to the Flt-3 receptor, Hybridoma 17: 569-576、Schmolke et al., (1998) Identification of hepatitis G virus particles in human serum by E2-specific monoclonal antibodides generated by DNA immunization, J. Virol. 72: 4541-4545、Krasemann et al., (1999) Generation of monoclonal antibodides against proteins with an unconventional nucleic acid-based immunization strategy, J. Biotechnol. 73: 119-129、及びUlivieri et al, (1996) Generation of a monoclonal antibody to a defined portion of the Heliobacter pylori vacuolating cytotoxin by DNA immunization, J. Biotechnol. 51: 191-194に見出すことができる。それらの開示は参照により本明細書に全体が援用される。
【0157】
SOX7及びSOX18は、図3に示される関係樹状図に表されるようにSOX17に対して最も密接なSoxファミリーである。本発明者等は、遺伝子免疫化により産生されるSOX17抗体がSOX17に特異的であり、またその最も密接なファミリー成員と反応しないことを実証するために、陰性対照としてヒトSOX7ポリペプチドを用いた。特に、SOX7及び他のタンパク質は、ヒト線維芽細胞において発現させ、続いてウェスタンブロット及びICCによりSOX17抗体との交差反応性に関して分析した。例えば、SOX17、SOX7及びEGFP発現ベクターの産生、ヒト線維芽細胞へのそれらのトランスフェクション、並びにウェスタンブロットによる分析に関して以下の方法を利用した。SOX17、SOX7及びEGFPの産生に用いられる発現ベクターは、それぞれpCMV6(OriGene Technologies, Inc., Rockville, MD)、pCMV−SPORT6(Invitrogen, Carlsbad, CA)及びpEGFP−N1(Clonetech, Palo Alto, CA)であった。タンパク質産生に関して、テロメラーゼ不死化MDXヒト線維芽細胞を、リポフェクタミン2000(Invitrogen Carlsbad, CA)の存在下で、スーパーコイルDNAで一過的にトランスフェクトした。総細胞溶解産物は、トランスフェクションの36時間後に、プロテアーゼ阻害剤のカクテル(Roche Diagnostics Corporation, Indianapolis, IN)を含有する50mM TRIS−HCl(pH8)、150mM NaCl、0.1% SDS、0.5%デオキシコール酸中に収集した。NuPAGE(4〜12%勾配ポリアクリルアミド、Invitrogen, Carlsbad, CA)上でのSDS−PAGEにより分離され、且つPDVF膜(Hercules, CA)上へのエレクトロブロッティングにより移動された細胞タンパク質100μgのウェスタンブロット分析は、10mM TRIS−HCl(pH8)、150mM NaCl、10%BSA、0.05%Tween−20(Sigma, St. Louis, MO)中のラットSOX17抗血清の1/1000希釈で、続いてアルカリホスファターゼ結合抗ラットIgG(Jackson ImmunoResearch Laboratories, West Grove, PA)プローブして、ベクターブラックアルカリホスファターゼ染色(Vector Laboratories, Burlingame, CA)により明らかにした。使用されるタンパク質サイズ標準物質は、広範囲の色彩マーカー(Sigma, St. Louis, MO)であった。
【0158】
図4では、SOX17、SOX7又はEGFP cDNAで一過的にトランスフェクトされたヒト線維芽細胞から作製されるタンパク質抽出物を、SOX17抗体によりウェスタンブロットでプローブした。hSOX17トランスフェクト細胞からのタンパク質抽出物のみが、ヒトSOX17タンパク質の予測された46Kda分子量に近い約51Kdaのバンドを生じた。ヒトSOX7又はEGFPトランスフェクト細胞のいずれかから作製される抽出物に対してSOX17抗体の反応性は見られなかった。さらに、SOX17抗体は、hSOX17発現構築物でトランスフェクトしたヒト線維芽細胞の核を明らかに標識したが、EGFPのみでトランスフェクトした細胞は標識しなかった。したがって、SOX17抗体は、ICCによる特異性を示す。
【実施例4】
【0159】
胚体内胚葉のマーカーとしてのSOX17抗体の確証
部分的に分化させたhESCをSOX17及びAFP抗体で同時標識して、SOX17抗体がヒトSOX17タンパク質に特異的であり、さらに胚体内胚葉をマークすることを実証した。SOX17、SOX7(これは、SOX遺伝子ファミリーサブグループFの密接に関連する成員である(図3))及びAFPはそれぞれ、臓側内胚葉で発現されることが実証されている。しかしながら、AFP及びSOX7は、ICCにより検出可能なレベルでは、胚体内胚葉細胞では発現されず、したがってそれらは、真正の胚体内胚葉細胞に関する陰性マーカーとして用いることができる。SOX17抗体は、細胞の別個の分類として存在するか、或いはAFP陽性細胞と混合される細胞の集団を標識することが示された。特に、図5Aは、少数のSOX17細胞がAFPで同時標識されることを示すが、SOX17+細胞の視野においてAFP+細胞がほとんど存在しないか、或いは全く存在しない領域も見られた(図5B)。同様に、壁側内胚葉は、SOX17を発現することが報告
されているため、壁側マーカーSPARC及び/又はトロンボモジュリン(TM)と共にSOX17による抗体同時標識を使用して、壁側内胚葉であるSOX17+細胞を同定することができる。図6A〜図6Cに示されるように、トロンボモジュリン及びSOX17で同時標識された壁側内胚葉細胞は、hES細胞の無作為分化により産生された。
【0160】
上記細胞標識実験を考慮して、胚体内胚葉細胞の同一性は、マーカープロフィールSOX17hi/AFPlo/[TMlo又はSPARClo]により樹立され得る。換言すると、SOX17マーカーの発現は、臓側内胚葉に特徴的であるAFPマーカー、及び壁側内胚葉に特徴的であるTM又はSPARCマーカーの発現よりも多い。したがって、SOX17に関して陽性であるが、AFPに対して陰性であり、且つTM又はSPARCに対して陰性である細胞は、胚体内胚葉である。
【0161】
胚体内胚葉の予測となるようなSOX17hi/AFPlo/TMlo/SPARCloマーカープロフィールの特異性のさらなる徴候として、SOX17及びAFP遺伝子発現が、抗体標識細胞の相対数と定量的に比較された。図7Aに示されるように、レチノイン酸(臓側内胚葉誘導物質)又はアクチビンA(胚体内胚葉誘導物質)で処理したhESCは、SOX17 mRNA発現のレベルにおいて10倍の差をもたらした。この結果は、SOX17抗体標識細胞数における10倍の差を反映している(図7B)。さらに、図8Aに示されるように、hESCのアクチビンA処理は、処理なしと比較して6.8倍分AFP遺伝子発現を抑制した。これは、図8B及び図8Cに示されるように、これらの培養物におけるAFP標識細胞の数の劇的な減少により可視的に反映された。これをさらに定量化するために、AFP遺伝子発現におけるこのおよそ7倍の減少は、フローサイトメトリーにより測定される場合のAFP抗体標識細胞数における同様の7倍の減少の結果であることが実証された(図9A及び図9B)。この結果は、Q−PCRにより観察されるような遺伝子発現の定量的変化は、抗体染色により観察されるような細胞型特定化における変化を反映することを示すという点で極めて重要である。
【0162】
ノーダルファミリー成員(ノーダル、アクチビンA及びアクチビンB−NAA)の存在下でのhESCのインキュベーションは、経時的にSOX17抗体標識細胞の有意な増大をもたらした。連続的なアクチビン処理の5日目までには、50%を超える細胞がSOX17で標識された(図10A〜図10F)。アクチビン処理の5日後にはAFPで標識された細胞はほとんど存在しなかったか、或いは全く存在しなかった。
【0163】
要約すると、ヒトSOX17タンパク質のカルボキシ末端の242個のアミノ酸に対して産生される抗体は、ウェスタンブロットでヒトSOX17タンパク質を同定したが、その最も密接なSoxファミリー類縁体であるSOX7を認識しなかった。SOX17抗体は、主としてSOX17+/AFPlo/-である分化hESC培養物における細胞のサブセット(95%を超える標識細胞)並びにSOX17及びAFP(臓側内胚葉)に関して同時標識する少量パーセント(5%未満)の細胞を認識した。アクチビンによるhESC培養物の処理は、SOX17遺伝子発現並びにSOX17標識細胞の顕著な増大をもたらし、AFP mRNAの発現及びAFP抗体で標識した細胞の数を劇的に抑制した。
【実施例5】
【0164】
Q−PCR遺伝子発現アッセイ
以下の実験では、リアルタイム定量的RT−PCR(Q−PCR)が、hESC分化に対する様々な処理の影響をスクリーニングするのに使用される主要なアッセイであった。特に、遺伝子発現のリアルタイム測定値が、Q−PCRにより多数の時点で多数のマーカー遺伝子に関して分析された。細胞集団の全体的な動態のより良好な理解を得るために、所望の細胞型並びに望ましくない細胞型のマーカー遺伝子の特徴を評価した。Q−PCR分析の長所として、ゲノム配列が容易に入手可能である場合、その極度の感受性及び必要
なマーカーを開発することが比較的容易であることが挙げられる。さらに、Q−PCRの極めて高い感受性により、相当大きな集団内での比較的少数の細胞からの遺伝子発現の検出が可能となる。さらに、非常に低レベルの遺伝子発現を検出する能力は、集団内の「分化の偏り」に関する指標を提供する。これらの細胞の表現型の明白な分化に先立つ特定の分化経路に向かう偏りは、免疫細胞化学的技法を使用して認知することができない。このため、Q−PCRは、分化処理の成功をスクリーニングするための、免疫組織化学的技法に対して少なくとも補完的であり且つ免疫組織化学的技法よりも潜在的に相当優れている分析の方法を提供する。さらに、Q−PCRは、半ハイスループットスケール(semi-high
throughput scale)の分析にて定量的方式で分化プロトコルの成功を評価するメカニズムを提供する。
【0165】
本実施例で採用するアプローチは、Rotor Gene 3000機器(Corbett Research)上でのSYBR Green化学及び2段階RT−PCR方式を使用して相対定量を実施することであった。かかるアプローチにより、今後のさらなるマーカー遺伝子の分析用のcDNAサンプルの積上げが可能となり、このようにして、サンプル間の逆転写効率における可変性を回避した。
【0166】
プライマーは、これが混入ゲノムDNAからの増殖を排除すると実験的に確定されているため、エクソン間境界にわたって存在するか、又は可能であれば少なくとも800bpのイントロンにまたがるように設計された。イントロンを含まないマーカー遺伝子を使用したか、又はマーカー遺伝子が偽遺伝子を保有した場合、RNAサンプルのDNase I処理を実施した。
【0167】
本発明者等は、細胞サンプルにおける遺伝子発現の広範囲のプロフィール描写を提供するために、日常的にQ−PCRを使用して、標的及び非標的細胞型の多数のマーカーの遺伝子発現を測定した。hESC分化の初期(具体的には、外胚葉、中胚葉、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉)に関連し、且つ確証されたプライマー組が利用可能であるマーカーを以下の表1に提供する。これらのプライマー組のヒト特異性もまた実証されている。hESCが多くの場合マウスフィーダー層上で増殖するため、このことは重要な事実である。最も典型的には、三重反復サンプルが各条件に関して採取され、各定量的確定に関連した生物学的可変性を評価するために二重反復で個別に分析した。
【0168】
PCR鋳型を生成するために、総RNAを、RNeasy(Qiagen)を使用して単離して、RiboGreen(Molecular Probes)を用いて定量化した。総RNA 350〜500ngからの逆転写を、オリゴdT及びランダムプライマーのミックスを含有するiScript逆転写酵素キット(BioRad)を使用して実施した。続いて、反応物それぞれ20μLを総容量100μLにまで希釈して、このうち3μLを、それぞれ400nM順方向プライマー及び逆方向プライマー並びに2×SYBR Greenマスターミックス(Qiagen) 5μLを含有するQ−PCR反応物10μLにおいて使用した。2段階サイクリングパラメータは、85〜94℃(具体的には各プライマー組に関するアンプリコンの融点に従って選択される)で5秒の変性、続く60℃での45秒のアニール/伸長を用いて使用した。各伸長段階の最後の15秒の間に、蛍光データを収集した。3点の10倍希釈シリーズを使用して、各実施に関する標準曲線を作成して、サイクル閾値(Ct)をこの標準曲線に基づいて定量値へ変換した。各サンプルに関する定量値は、ハウスキーピング遺伝子性能に対して標準化し、続いて平均値及び標準偏差は、三重反復サンプルに関して算出した。PCRサイクリングの終わりには、融解曲線分析を実施して、反応物の特異性を確かめた。単一の特異的産物は、そのPCRアンプリコンに適したTmでの単一ピークにより示された。さらに、逆転写酵素なしで実施される反応は、陰性対照として役立ち、増殖しない。
【0169】
Q−PCR方法論を確立する際の第1の工程は、実験系における適切なハウスキーピング遺伝子(HG)の検証であった。HGは、RNAインプット、RNA完全性及びRT効率に関してサンプルにわたって標準化するのに使用されるため、標準化が意味のあるものであるためには、HGがすべてのサンプル型において経時的に一定レベルの発現を示すことが重要であった。本発明者等は、分化hESCにおけるサイクロフィリンG、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ1(HPRT)、β−2−ミクログロブリン、ヒドロキシメチルビランシンターゼ(hydroxymethylbiane synthase)(HMBS)、TATA結合タンパク質(TBP)及びグルクロニダーゼβ(GUS)の発現レベルを測定した。本発明者等の結果により、β−2−ミクログロブリン発現レベルが、分化の間に増大されることが示され、したがって本発明者等は、標準化のためにこの遺伝子の使用を排除した。他の遺伝子は、経時的に、並びに複数の処理にわたって一貫した発現レベルを示した。本発明者等は日常的に、サイクロフィリンG及びGUSの両方を使用して、すべてのサンプルに関して標準化因子を算出した。多数のHGの使用は、同時に標準化プロセスに対する固有の可変性を低減し、相対遺伝子発現値の信頼性を増大させる。
【0170】
標準化において使用するための遺伝子を取得した後、続いてQ−PCRを利用して、種々の実験処理を施したサンプルにわたる多くのマーカー遺伝子の相対遺伝子発現レベルを確定した。用いたマーカー遺伝子は、それらが初期胚葉の代表的な特異的集団において富化を示すことから選択されており、特に胚体内胚葉及び胚体外内胚葉で差次的に発現される遺伝子の組に焦点を当てている。これらの遺伝子並びにそれらの関連富化プロフィールを表1に強調している。
【0171】
【表1】

【0172】
多くの遺伝子が、2つ以上の多い胚葉で発現されるため、同じ実験内で多くの遺伝子の発現レベルを定量的に比較することが有用である。SOX17は、胚体内胚葉で、またより程度は低いが、臓側及び壁側内胚葉で発現される。SOX7及びAFPは、この初期発生時点で、臓側内胚葉で発現される。SPARC及びTMは、壁側内胚葉で発現され、ブラキュリは、初期中胚葉で発現される。
【0173】
胚体内胚葉細胞は、高レベルのSOX17 mRNA並びに低レベルのAFP及びSOX7(臓側内胚葉)、SPARC(壁側内胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)を発現すると予測された。さらに、ZIC1は、初期外胚葉の誘導をさらに除外するのに本明細書で使用した。最後に、GATA4及びHNF3bは、胚体及び胚体外内胚葉の両方で発現され、したがって、胚体内胚葉におけるSOX17発現と相関する(表1)。表1に記載する
マーカー遺伝子が、様々なサンプル間でどのように互いに相関するかを実証し、したがって、胚体内胚葉及び胚体外内胚葉への、並びに中胚葉及び神経細胞型への分化の特異的パターンを強調する代表的な実験を図11〜図14に示している。
【0174】
上記データを考慮すると、漸増用量のアクチビンが、SOX17遺伝子発現の増大をもたらしたことが明らかである。さらに、このSOX17発現は、胚体外内胚葉とは対照的に主として胚体内胚葉を表した。この結論は、SOX17遺伝子発現が、AFP、SOX7及びSPARC遺伝子発現と逆相関したという観察から生じる。
【実施例6】
【0175】
胚体内胚葉へのヒトES細胞の定方向分化
ヒトES細胞培養物は、それらの未分化状態を能動的に維持しない条件下で培養される場合に、無作為に分化する。この不均一分化は、壁側及び臓側内胚葉の両方から構成される胚体外内胚葉細胞(AFP、SPARC及びSOX7発現)並びにZIC1及びネスチン(外胚葉)及びブラキュリ(中胚葉)発現によりマークされるような初期外胚葉誘導体及び中胚葉誘導体の産生をもたらす。胚体内胚葉細胞出現は、ES細胞培養物における特異的抗体マーカーの欠如に関して検査又は特定されていない。それ自体で、また初期状態で、ES細胞培養物における初期胚体内胚葉産生は、十分研究されていない。胚体内胚葉細胞に関する満足のいく抗体試薬が入手不可能であったため、特性化の大部分が、外胚葉及び胚体外内胚葉に焦点を当ててきた。概して、無作為に分化されたES細胞培養物においてSOX17hi胚体内胚葉細胞と比較して、有意により多数の胚体外細胞型及び神経外胚葉細胞型が存在する。
【0176】
未分化hESCコロニーは線維芽細胞フィーダーの床上で増殖するため、コロニーの縁にある細胞は、コロニーの内部に存在する細胞とは異なった別の形態を呈する。これらの外側の縁細胞の多くが、それらのあまり一様ではない、より大きな細胞体の形態により、またより高いレベルのOCT4の発現により識別され得る。ES細胞が分化し始めると、ES細胞は、未分化ES細胞に対して、OCT4発現のレベルを上方又は下方へ変更させることが記載されている。未分化閾値を上回るか、又は下回るOCT4レベルの変更は、多能性状態から離れた分化の初期段階の表れであり得る。
【0177】
未分化コロニーがSOX17免疫細胞化学により検査される場合、時折SOX17陽性細胞の小さな10〜15個の細胞クラスターが、外縁上の無作為な位置で、また未分化hESCコロニー間の接合部で検出された。上述したように、外側コロニー縁のこれらの散在ポケットは、コロニーのサイズが拡大し、且つより混雑してくるため、古典的なES細胞形態から離れて分化するための第1の細胞のいくつかであるようであった。より若くてより小さな完全未分化コロニー(1mm未満、4〜5日齢)は、コロニー内で又はコロニーの縁でSOX17陽性細胞を示さなかったのに対して、より老齢のより大きなコロニー(直径1〜2mm、5日齢超)は、いくつかのコロニーの外縁で、或いは上述の古典的なhESC形態を示さない縁に対して内部の領域で、SOX17陽性AFP陰性細胞の散発的な単離パッチを有していた。これが有効なSOX17抗体の第1の発達であると考えると、かかる初期「未分化」ES細胞培養物で発生する胚体内胚葉細胞は、これまでに実証されていない。
【0178】
Q−PCRによるSOX17及びSPARC遺伝子発現レベルの逆相関に基づくと、これらのSOX17陽性AFP陰性細胞の大部分が、抗体同時標識による壁側内胚葉マーカーに関して陰性であろう。これは、図15A及び図15Bに示されるように、TM発現壁側内胚葉細胞に関して具体的に実証された。ノーダル因子であるアクチビンA及びBへの暴露は、TM発現の強度及びTM陽性細胞の数の劇的な減少をもたらした。アクチビン処理培養物に関するSOX17、AFP及びTM抗体を使用した三重標識により、AFP及
びTMに関しても陰性であるSOX17陽性細胞のクラスターが観察された(図16A〜図16D)。これらは、分化hESC培養物におけるSOX17陽性胚体内胚葉細胞の第1の細胞標示である(図16A〜図16D及び図17)。
【0179】
上述のSOX17抗体及びQ−PCRツールを用いて、本発明者等は、SOX17hi/AFPlo/SPARC/TMlo胚体内胚葉細胞となるようにhESCを効率的にプログラミングすることが可能な多数の手順を探究してきた。本発明者等は、SOX17遺伝子発現に関してQ−PCRにより集団レベルで、及びSOX17タンパク質の抗体標識により個々の細胞のレベルで測定される場合、これらの細胞の数及び増殖能力を増大させることを目的とした様々な分化プロトコルを適用した。
【0180】
本発明者等はまず、in vitro細胞培養物において胚性幹細胞から胚体内胚葉細胞を創出するのに使用するためのノーダル/アクチビン/BMPのようなTGFβファミリー成長因子の影響を分析及び記載した。通常の実験では、アクチビンA、アクチビンB、BMP又はこれらの成長因子の組合せを未分化ヒト幹細胞系hESCyt−25の培養物へ添加して、分化プロセスを開始させた。
【0181】
図19に示されるように、100ng/mlでのアクチビンAの添加は、分化の4日目までに、未分化hESCに対して、SOX17遺伝子発現の19倍の誘導をもたらした。アクチビンAと共に、アクチビンファミリーの第2の成員であるアクチビンBを添加することにより、併用アクチビン処理の4日目までに、未分化hESCを上回る37倍の誘導がもたらされた。最後に、アクチビンA及びアクチビンBと共に、ノーダル/アクチビン由来のTGFβファミリーの第3の成員、並びにBMPサブグループであるBMP4を添加することにより、未分化hESCの誘導の57倍に誘導を増大させた(図19)。アクチビン及びBMPによるSOX17誘導を、因子なしの培地対照と比較した場合、5倍、10倍及び15倍の誘導が4日目の時点で生じた。アクチビンA、B及びBMPによる三重処理の5日目までに、SOX17は、hESCの70倍より高く誘導された。これらのデータは、ノーダル/アクチビン TGFβファミリー成員のより高い用量及びより長い処理時間がSOX17の増大された発現をもたらすことを示している。
【0182】
ノーダル並びに関連分子アクチビンA、B及びBMPは、in vivo又はin vitroでSOX17の発現及び胚体内胚葉形成を促進する。さらに、BMPの添加は、おそらくノーダル補助受容体であるCriptoのさらなる誘導により、改善されたSOX17の誘導をもたらす。
【0183】
本発明者等は、BMP4と一緒のアクチビンA及びBの組合せが、SOX17誘導、したがって胚体内胚葉形成の相加的増大をもたらすことを実証している。アクチビンA及びBと組み合わせた長期間(4日を超える)のBMP4添加は、壁側及び臓側内胚葉並びに胚体内胚葉においてSOX17を誘導し得る。したがって、本発明のいくつかの実施形態では、添加の4日以内に処理からBMP4を除去することは有益である。
【0184】
個々の細胞レベルでのTGFβ因子処理の影響を確定するために、経時的なTGFβ因子添加を、SOX17抗体標識を使用して検査した。すでに図10A〜図10Fで示したように、経時的にSOX17標識細胞の相対数の劇的な増大が見られた。相対定量化(図20)は、SOX17標識細胞の20倍を超える増大を示す。この結果は、細胞の数並びにSOX17遺伝子発現レベルの両方が、TGFβ因子暴露の時間とともに増大していることを示す。図21に示されるように、ノーダル、アクチビンA、アクチビンB及びBMP4への暴露の4日後に、SOX17誘導のレベルは、未分化hESCに対して168倍に到達した。図22は、SOX17陽性細胞の相対数もまた、用量応答性であったことを示す。100ng/ml又はそれ以上のアクチビンA用量は、SOX17遺伝子発現及び
細胞数を強力に誘導することが可能であった。
【0185】
TGFβファミリー成員のほかに、Wntファミリーの分子が、胚体内胚葉の特定化及び/又は維持において役割を果たし得る。Wnt分子の使用もまた、アクチビン単独を上回るアクチビン+Wnt3aで処理したサンプルにおける増大したSOX17遺伝子発現により示されるように、胚体内胚葉へのhESCの分化に有益であった(図23)。
【0186】
上述の実験はすべて、添加因子を伴って10%血清を含有する組織培養培地を使用して実施した。驚くべきことに、図24A〜図24Cに示されるように、血清の濃度が、添加アクチビンの存在下でSOX17発現のレベルに対して影響することを本発明者等は発見した。血清レベルが10%から2%へ低減すると、SOX17発現は、アクチビンA及びBの存在下で3倍になった。
【0187】
最後に、本発明者等は、アクチビン誘導SOX17+細胞が、図25A〜図25Dに表されるように培養中に分裂することを実証した。矢印は、PCNA/DAPI標識有糸分裂プレートパターン及び位相コントラスト有糸分裂プロフィールにより明らかなように有糸分裂中であるSOX17/PCNA/DAPIで標識された細胞を示す。
【実施例7】
【0188】
ケモカイン受容体4(CXCR4)発現は、胚体内胚葉に関するマーカーと相関し、中胚葉、外胚葉又は臓側内胚葉に関するマーカーとは相関しない
上述したように、hESCは、TGFβファミリー、より具体的にはアクチビン/ノーダルサブファミリーのサイトカインの適用により、胚体内胚葉の胚葉へ分化するように誘導することができる。さらに、本発明者等は、分化培養培地におけるウシ胎児血清(FBS)の比率が、hESCからの胚体内胚葉分化の効率に影響を及ぼすことを示している。この影響は、培地においてアクチビンAの所定濃度で、より高いレベルのFBSが胚体内胚葉への最大限の分化を阻害するようなものである。外因性アクチビンAの非存在下では、胚体内胚葉系統へのhESCの分化は、非常に非効率であり、FBS濃度は、hESCの分化プロセスに対して相当穏やかに影響する。
【0189】
これらの実験では、0.5%、2.0%又は10%FBSを補充し、且つ100ng/mlのアクチビンAを伴うか、又は伴わないRPMI培地(Invitrogen, Carlsbad, CA;cat#61870−036)中で6日間増殖させることにより、hESCを分化させた。さらに、分化の最初の3日間にわたる0.5%〜2.0%に及ぶFBSのグラジエントもまた、100ng/mlのアクチビンAと併用した。6日後に、反復サンプルを各培養条件から収集して、リアルタイム定量的PCRにより相対遺伝子発現に関して分析した。残存細胞は、SOX17タンパク質の免疫蛍光検出用に固定した。
【0190】
CXCR4の発現レベルは、使用した7つの培養条件にわたって劇的に変化した(図26)。概して、CXCR4発現は、アクチビンA処理培養物(A100)では高く、外因性アクチビンAを施さない培養物(NF)では低かった。さらに、A100処理培養物の中でも、CXCR4発現は、FBS濃度が最も低かった場合に最も高かった。相対発現が、アクチビンAを施さない条件(NF)により一致するように、10%FBS条件におけるCXCR4レベルの顕著な低減が見られた。
【0191】
上述したように、SOX17、GSC、MIXL1及びHNF3β遺伝子の発現は、胚体内胚葉としての細胞の特徴づけと一致する。7つの分化条件にわたるこれらの4つの遺伝子の相対発現は、CXCR4の相対発現を反映する(図27A〜図27D)。このことは、CXCR4もまた胚体内胚葉のマーカーであることを実証する。
【0192】
外胚葉及び中胚葉系統は、各種マーカーのそれらの発現により胚体内胚葉と識別することができる。初期中胚葉は、遺伝子ブラキュリ及びMOX1を発現する一方で、新生神経外胚葉は、SOX1及びZIC1を発現する。図28A〜図28Dは、外因性アクチビンAを施さない培養物が、中胚葉及び外胚葉遺伝子発現に関して優先的に富化されたこと、及びアクチビンA処理培養物の中でも、10%FBS条件がまた、中胚葉及び外胚葉マーカー発現の増大レベルを有したことを実証している。これらのパターンの発現はCXCR4のパターンの逆であって、CXCR4が、この発生期間にhESCに由来する中胚葉又は外胚葉中ではそれほど高度に発現されないことを示した。
【0193】
哺乳類発生中の初期に、胚体外系統への分化もまた起こる。ここでは、SOX17を包含する胚体内胚葉と共通して多くの遺伝子の発現を共有する臓側内胚葉の分化が特に関連している。胚体内胚葉を胚体外臓側内胚葉と識別するためには、これらの2つの間を識別できるマーカーを検査するべきである。SOX7は、臓側内胚葉では発現されるが、胚体内胚葉系統では発現されないマーカーを表す。したがって、SOX7発現の非存在下での強健なSOX17遺伝子発現を示す培養条件は、胚体内胚葉を含有し、臓側内胚葉を含有しない可能性が高い。SOX7が、アクチビンAを施さない培養において高度に発現され、SOX7はまた、FBSが10%で包含される場合に、アクチビンAの存在下でさえ増大された発現を示したことが図28Eに示されている。このパターンは、CXCR4発現パターンの逆であり、CXCR4が、臓側内胚葉ではあまり高度に発現されないことを示唆する。
【0194】
上述の分化条件それぞれに存在するSOX17免疫反応性(SOX17+)細胞の相対数もまた確定した。hESCは、高用量アクチビンA及び低FBS濃度(0.5%〜2.0%)の存在下で分化させた場合、SOX17+細胞は、培養物全体にわたって遍在的に分布した。高用量アクチビンAを使用したが、FBSは10%(v/v)で包含された場合、SOX17+細胞は、相当低い頻度で出現し、培養物全体にわたって均一に分布されるのではなく、常に単離クラスターで出現した(図29A及び図29C、並びに図29B及び図29E)。外因性アクチビンAが使用されなかった場合に、SOX17+細胞のさらなる減少が観察された。これらの条件下では、SOX17+細胞はまたクラスターで出現し、これらのクラスターは、高アクチビンA低FBS処理で見出されるものよりも小さく、且つ相当稀であった(図29C及び図29F)。これらの結果は、CXCR4発現パターンが、各条件下で胚体内胚葉遺伝子発現に対応するだけでなく、胚体内胚葉細胞の数にも対応することを実証している。
【実施例8】
【0195】
胚体内胚葉に関して富化する分化条件は、CXCR4陽性細胞の比率を増大させる
アクチビンAの用量はまた、胚体内胚葉がhESCから得られ得る効率に影響を及ぼす。この実施例は、アクチビンAの用量を増大させることにより培養物におけるCXCR4+細胞の比率が増大することを実証する。
【0196】
hESCは、0.5%〜2%FBS(分化の最初の3日にわたって0.5%から1.0%、そして2.0%へ増大される)及び0、10又は100ng/mlのアクチビンAを補充したRPMI培地中で分化させた。分化の7日後に、2%FBS及び2mM(EDTA)を含有するCa2+/Mg2+を伴わないPBS中で、室温で5分間、細胞を解離させた。細胞は、35μmナイロンフィルタに通して濾過して、計数して、ペレット化した。ペレットは、小容量の50%ヒト血清/50%正常ロバ血清中に再懸濁させて、氷上で2分間インキュベートして、非特異的抗体結合部位をブロックした。これに、50μl(およそ105個の細胞を含有する)当たりマウス抗CXCR4抗体(Abcam、cat# ab10403−100)1μlを添加して、標識を氷上で45分間進めた。細胞は、2%ヒト血清を含有するPBS(緩衝液)5mlを添加することにより洗浄して、ペレット化した
。緩衝液5mlによる第2の洗浄を完了させた後、細胞は、105個の細胞当たり緩衝液50μl中に再懸濁させた。二次抗体(FITC結合ロバ抗マウス、Jackson ImmunoResearch、cat# 715−096−151)を最終濃度5μg/mlで添加して、30分間標識させた後、上述のように緩衝液中で2回洗浄を行った。細胞は、緩衝液中に5×106個の細胞/mlで再懸濁させて、フローサイトメトリーの中心的な施設(The Scripps Research Institute)にてスタッフによりFACS Vantage(Beckton Dickenson)を使用して分析及び選別した。細胞は、これに続くリアルタイム定量的PCRによる遺伝子発現分析用の総RNAの単離のために、RLT溶解緩衝液(Qiagen)へ直接収集した。
【0197】
フローサイトメトリーにより確定される場合のCXCR4+細胞の数は、アクチビンAの用量が分化培養培地中で増大されると、劇的に増大することが観察された(図30A〜図30C)。CXCR4+細胞は、R4ゲート内に納まり、このゲートは、事象の0.2%がR4ゲートに位置される二次抗体のみの対照を使用して設定された。劇的に増大するCXCR4+細胞数は、アクチビンA用量が増大される場合に、胚体内胚葉遺伝子発現における強健な増大と相関する(図31A〜図31D)。
【実施例9】
【0198】
CXCR4陽性細胞の単離は、胚体内胚葉遺伝子発現に関して富化し、また中胚葉、外胚葉及び臓側内胚葉のマーカーを発現する細胞を枯渇させる
上記実施例8で同定されるCXCR4+及びCXCR4-細胞を収集して、相対遺伝子発現に関して分析し、母集団の遺伝子発現を同時に確定した。
【0199】
CXCR4遺伝子発現の相対レベルは、アクチビンAの用量の増大に伴って劇的に増大した(図32)。これは、CXCR4+細胞のアクチビンA用量依存的増大と極めて強く相関した(図30A〜図30C)。また、各集団からのCXCR4+細胞の単離は、この集団におけるほぼすべてのCXCR4遺伝子発現を占めたことも明らかである。これは、これらの細胞を収集するためのFACS方法の効率を実証している。
【0200】
遺伝子発現分析により、CXCR4+細胞は、CXCR4遺伝子発現の大部分を含有するだけでなく、CXCR4+細胞はまた、胚体内胚葉の他のマーカーに関する遺伝子発現も含有することが明らかとなった。図31A〜図31Dに示されるように、CXCR4+細胞はさらに、SOX17、GSC、HNF3B及びMIXL1に関して母A100集団を上回って富化した。さらに、CXCR4-画分は、これらの胚体内胚葉マーカーに関して非常に少ない遺伝子発現を含有した。さらに、CXCR4+及びCXCR4-集団は、中胚葉、外胚葉及び胚体外内胚葉のマーカーに関して逆パターンの遺伝子発現を示した。図33A〜図33Dは、CXCR4+細胞が、A100母集団に対してブラキュリ、MOX1、ZIC1及びSOX7の遺伝子発現に関して枯渇したことを示す。このA100母集団は、低用量条件又はアクチビンAなしの条件に対して、これらのマーカーの発現がすでに低かった。これらの結果は、高アクチビンAの存在下で分化されるhESCからのCXCR4+細胞の単離は、胚体内胚葉に関して高度に富化され、且つ実質的に純粋な胚体内胚葉である集団を生じることを示す。
【実施例10】
【0201】
CXCR4を使用した細胞集団における胚体内胚葉細胞の定量
本明細書中ですでに確定されるような、及び2003年12月23日に出願された「胚体内胚葉」と題する米国仮特許出願第60/532,004号(その開示が参照により全体が本明細書に援用される)で確定されるような細胞培養物又は細胞集団中に存在する胚体内胚葉細胞の比率の定量を確認するために、CXCR4及び胚体内胚葉の他のマーカーを発現する細胞をFACSにより分析した。
【0202】
上記実施例に記載されるような方法を使用して、hESCを分化させて、胚体内胚葉を産生した。特に、分化細胞培養物における収率及び純度を増大させるために、培地の血清濃度を以下の通りに制御した:1日目には0.2%FBS、2日目には1.0%FBS及び3〜6日目には2.0%FBS。分化培養物は、3つの細胞表面エピトープであるE−カドヘリン、CXCR4及びトロンボモジュリンを使用して、FACSにより選別した。続いて、選別した細胞集団をQ−PCRにより分析して、胚体及び胚体外内胚葉並びに他の細胞型に関するマーカーの相対発現レベルを確定した。最適に分化させた培養物から採取されるCXCR4選別した細胞は、98%を超える純度の胚体内胚葉細胞の単離をもたらした。
【0203】
表2は、本明細書中に記載する方法を使用してhESCから分化させた胚体内胚葉培養物に関するマーカー分析の結果を示す。
【0204】
【表2】

【0205】
特に、表2は、CXCR4及びSOX17陽性細胞(内胚葉)が細胞培養物における細胞の70〜80%を構成していたことを示す。これらのSOX17発現細胞のうち、2%未満がTM(壁側内胚葉)を発現し、1%未満がAFP(臓側内胚葉)を発現した。TM陽性細胞及びAFP陽性細胞の比率(組み合わせた壁側内胚葉及び臓側内胚葉、総計3%)をSOX17/CXCR4陽性細胞の比率から差し引きした後、細胞培養物の約67%〜約77%が胚体内胚葉であったことが観察され得る。およそ10%の細胞が、hESCに関するマーカーであるE−カドヘリン(ECAD)に関して陽性であり、細胞の約10〜20%が他の細胞型であった。
【0206】
FACS分離前に得られる分化細胞培養物における胚体内胚葉の純度は、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下でFBS濃度を維持することにより、上述の低血清手順と比較して改善させることができることを本発明者等は発見している。しかしながら、5〜6日の分化手順全体にわたって0.5%以下で細胞培養物を維持することはまた、産生される総胚体内胚葉細胞数の低減をもたらす。
【0207】
本明細書中に記載する方法により産生される胚体内胚葉細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも長い間、アクチビンの存在下で培養において維持及び増殖されている。かかる場合では、SOX17、CXCR4、MIXL1、GATA4、HNF3β発現は、培養期間にわたって維持される。さらに、TM、SPARC、OCT4、AFP、SOX7、ZIC1及びBRACHは、これらの培養物では検出されなかった。かかる細胞は、それほどの分化を伴わずに50日よりも実質的に長い間、培養において維持及び増殖させることができる可能性が高い。
【実施例11】
【0208】
胚体内胚葉細胞のさらなるマーカー
以下の実験では、精製胚体内胚葉及びヒト胚性幹細胞集団からRNAを単離した。続いて、遺伝子発現は、各精製集団由来のRNAの遺伝子チップ分析により分析した。Q−PCRも実施して、胚体内胚葉に関するマーカーとして、胚体内胚葉では発現されるが、胚性幹細胞では発現されない遺伝子の可能性をさらに研究した。
【0209】
ヒト胚性幹細胞(hESC)は、20%ノックアウト血清代替物、4ng/mlの組換えヒト塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)、0.1mM 2−メルカプトエタノール、L−グルタミン、非必須アミノ酸及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したDMEM/F12培地中で維持された。hESCは、100ng/mlの組換えヒトアクチビンA、ウシ胎児血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI培地中で5日間培養することにより胚体内胚葉へ分化させた。FBSの濃度は、毎日以下の通りに変化させた:0.1%(1日目)、0.2%(2日目)、2%(3〜5日目)。
【0210】
遺伝子発現分析のためにhESC及び胚体内胚葉の精製集団を得るために、細胞を蛍光標示式細胞分取(FACS)により単離した。免疫精製は、hESCに関してはSSEA4抗原(R&D Systems、cat#FAB1435P)を使用して、また胚体内胚葉に関してはCXCR4(R&D Systems、cat#FAB170P)を使用して達成した。細胞は、トリプシン/EDTA(Invitrogen、cat#25300−054)を使用して解離させて、2%ヒト血清を含有するリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で洗浄して、氷上で10分間100%ヒト血清中に再懸濁させて、非特異的結合をブロックした。染色は、ヒト血清800μl中で5×106個の細胞にフィコエリトリン結合抗体200μlを添加することにより氷上で30分間実施した。細胞をPBS緩衝液8mlで2度洗浄して、同1ml中に再懸濁させた。FACS単離は、FACS Vantage(BD Biosciences)を使用して、The Scripps Research Instituteの中心的な施設により実施された。細胞は、RLT溶解緩衝液へ直接収集して、RNAは、製造業者の指示書に従ってRNeasy(Qiagen)により単離した。
【0211】
精製RNAは、Affymetrixプラットフォーム及びU133 Plus 2.0高密度オリゴヌクレオチドアレイを使用して、発現プロフィールデータの作成のためにExpression Analysis(Durham, NC)へ二連で提出した。提示されたデータは、2つの集団、すなわちhESCと胚体内胚葉の間で差次的に発現する遺伝子を同定する群の比較である。hESCに見出される発現レベルを上回る発現レベルの頑強な上方変化を示す遺伝子は、胚体内胚葉に高度に特徴的な新たな候補マーカーとして選択された。選択遺伝子は、上述のようにQ−PCRによりアッセイして、遺伝子チップ上に見られる遺伝子発現変化を確証し、またhESC分化の経時変化中のこれらの遺伝子の発現パターンを研究した。
【0212】
図34A〜図34Mは、或る特定のマーカーに関する遺伝子発現の結果を示す。結果は、100ng/mlアクチビンAの添加の1日後、3日後及び5日後に分析した細胞培養物、5日目の分化手順の終わりに精製されたCXCR4発現性胚体内胚葉細胞(CXDE)に関して、及び精製hESCにおいて表示される。図34C及び図34G〜図34Mの比較により、6つのマーカー遺伝子、すなわちFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、互いにほぼ一致し、且つまたCXCR4の発現のパターン及びSOX17/SOX7の比と同一である発現パターンを示す。上述したように、SOX17は、胚体内胚葉並びにSOX7発現胚体外内胚葉の両方において発現される。SOX7は胚体内胚葉で発現されないため、SOX17/SOX7の比は、全体として集団において証明されるSOX17発現への胚体内胚葉の寄与の信頼性の高い推定を提供する。パネルCに対するパネルG〜L及びMの類似性は、FGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1が、胚体内胚葉のマーカーである可能性
が高いこと、及びそれらが胚体外内胚葉細胞で有意に発現されないことを示す。
【0213】
本明細書中に記載されるQ−PCRの結果は、ICCによりさらに確認することができることが理解されよう。
【実施例12】
【0214】
SOX17プロモーター−EGFPトランスジェニックhESC系統及びCXCR4プロモーター−EGFPトランスジェニックhESC系統の産生
CXCR4特異的抗体を用いる胚体内胚葉の精製の代替方法として、SOX17又はCXCR4プロモーターとのEGFP融合が用いられ得る。特に本実施例は、SOX17調節領域の制御下でのレポーター遺伝子を含むレポーターカセットを含むベクターの構築を記載する。さらに、CXCR4調節領域の制御下でのレポーター遺伝子を含むレポーターカセットを含むベクターの構築が記載される。本実施例は、これらのベクターのうちの1つ又は複数でトランスフェクトされた細胞、例えばヒト胚性幹細胞、並びにそのゲノムに結合されるこれらのレポーターカセットのこの一方又は両方を有する細胞の調製も記載する。
【0215】
レポーター遺伝子で遺伝的に標識されたSOX17発現胚体内胚葉細胞系統及びCXRC4発現胚体内胚葉細胞系統を、それぞれSOX17遺伝子又はCXCR4遺伝子の調節領域(プロモーター)の制御下にGFPレポーター遺伝子を置くことにより構築する。まず、EGFP発現がヒトSOX17又はCXCR4遺伝子プロモーターにより駆動されるプラスミド構築物を、ベクターpEGFP−N1(Clonetech)のCMVプロモーターをヒトSOX17又はCXCR4制御領域と取り替えることにより作製する。これらの制御領域はSOX17又はCXCR4遺伝子の特性化調節エレメントを含有し、そしてそれらはトランスジェニックマウスにおけるこれらの遺伝子の正常発現パターンを付与するのに十分である。その結果生じるベクターでは、EFGPの発現はSOX17プロモーター又はCXCR4プロモーターにより駆動される。いくつかの実験において、このベクターをhESC中にトランスフェクトし得る。
【0216】
SOX17プロモーター/EGFPカセット又はCXCR4プロモーター/EGFPカセットを上記のベクターから切り出し、次に、ホスホグリセレートキナーゼ−1プロモーターの制御下でネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子を含有する選択ベクター中にサブクローニングする。カセットの除去を可能にするために、選択カセットは、flpリコンビナーゼ認識部位に隣接する。この選択ベクターを直線化し、次に標準リポフェクション方法を用いてhESC中に導入する。G418における選択の10〜14日後、非分化トランスジェニックhESCクローンを単離し、増殖させる。
【0217】
レポーターがFACSによる細胞分離を可能にするという条件で、GFP又はEGFP以外のレポーター遺伝子が上記の構築物のいずれかで用いられ得ることが理解されよう。
【実施例13】
【0218】
胚体内胚葉の代替的単離
以下の実施例は、SOX17又はCXCR4プロモーター/EGFPカセットを含むhESCが胚体内胚葉細胞に分化し、次に蛍光標示式細胞分取(FACS)によりその後単離される、ということを実証する。
【0219】
SOX17又はCXCR4プロモーター/EGFPトランスジェニックhESCを、100ng/mlのアクチビンAを含有し、血清を含有しない増殖培地中で約6、12及び18時間分化させる。次に分化細胞をトリプシン消化により収穫し、Becton DickinsonFACS Divaで直接RNA溶解緩衝液又はPBS中に分類する。単一生細胞の試料を
EGFPに関するゲーティングなしに採取し、そして単一生細胞をEGFP陽性及びGFP陰性集団にゲーティングする。別個の実験で、蛍光強度(高低)によってEGFP陽性画分を2つの等サイズ集団に分離する。
【0220】
分類後、Q−PCR及び免疫細胞化学により、細胞集団を分析する。Q−PCR分析のために、QiagenRNeasyカラムを用いてRNAを調製し、次にcDNAに転換する。前記のようにQ−PCRを実行する。免疫細胞化学分析のために、細胞をPBS中に分類し、4%パラホルムアルデヒド中で10分間固定し、Cytospin遠心分離を用いてガラススライドに接着させる。一次抗体はSOX17又はCXCR4である。FITC(緑色)又はローダミン(赤色)に結合される適切な二次抗体を用いて、第1の抗体の結合を検出する。
【0221】
分類細胞をさらにQ−PCR分析に付す。分化細胞は、EGFP蛍光と内因性SOX17又はCXCR4発現遺伝子発現との相関を示す。非蛍光細胞と比較して、EGFP陽性細胞は、SOX17又はCXCR4発現レベルの2倍より大きい増大を示す。高及び低EGFP強度細胞の分離は、EGFP発現レベルがSOX17又はCXCR4発現レベルと相関する、ということを示す。SOX17又はCXCR4 mRNA分析のほかに、分類細胞をSOX17又はCXCR4ポリペプチドの免疫細胞化学分析に付す(CXCR4/EGFP融合体を用いる実施形態では、SOX17ポリペプチド発現を分析し、そしてSOX17/EGFP融合体を用いる場合には、CXCR4ポリペプチド発現を分析する)。SOX17又はCXCR4ポリペプチドの実質的発現は、富化EGFP陽性画分で観察され得る。それに対して、EGFP陰性画分中では、SOX17又はCXCR4ポリペプチドの発現はほとんど観察されない。
【0222】
これらの結果を考えると、分類前に分化細胞培養物中に存在する細胞の少なくとも約5%は、SOX17/CXCR4陽性胚体内胚葉細胞である。分類細胞集団中の細胞の少なくとも約90%は、SOX17/CXCR4陽性胚体内胚葉細胞である。
【実施例14】
【0223】
培養での胚体内胚葉細胞の継代培養
本実施例は、本明細書中に記載される胚体内胚葉細胞が細胞培養で維持されて、さらなる分化を伴わずに継代培養され得る、ということを実証する。
【0224】
低血清RMPI中の100ng/mlのアクチビンAの存在下で、CyT25 hESC系統の2つの関連継代培養(EB及びEVと呼ばれる)から、胚体内胚葉細胞を分化させた。低血清RPMIは、0%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)を1日目に、0.2%(v/v)FBSを2日目に、そして2%血清をそれ以後の各日目に含有した。4日間の分化後、分化の誘導から測定して合計で36日間、100ng/mlのアクチビンAの存在下又は非存在下で培養で細胞を維持した。36日間の培養期間中、胚体内胚葉細胞を2回、継代培養した。さらに29〜36日目に、EVと呼ばれる群の細胞をさらに50mg/mlのEGFと接触させた。培養の4、9、23、29及び36日目に、Q−PCRを用いて、胚体内胚葉を示すマーカー遺伝子の発現を測定した。
【0225】
図35A〜図35Dは、100ng/mlのアクチビンAを提供された細胞培養物中で、hESCからの胚体内胚葉細胞の誘導(4〜36日目)後、32日間の培養期間中、胚体内胚葉マーカーSOX17、GSC、MIXL1及びCXCR4の発現が維持された、ということを示す。アクチビンAの非存在下で増殖した細胞培養物中では、これらのマーカーの発現はほとんど観察されなかった。50ng/mlのEGFの付加は、胚体内胚葉マーカーのいずれの発現も有意に増大するように見えなかった。
【実施例15】
【0226】
精製胚体内胚葉細胞の増殖
本実施例は、本明細書中に記載される胚体内胚葉細胞がhESCから分化され、精製され、次に再増殖されて、細胞培養で増殖され得る、ということを実証する。
【0227】
図36は、胚体内胚葉精製/増殖実験の計画を示す。特に、低血清RMPI中で100ng/mlのアクチビンAの存在下で、hESC系統CyT25の96回目の継代培養から、胚体内胚葉細胞を分化させた。低血清RPMIは、0%(v/v)ウシ胎仔血清(FBS)を1日目に、0.2%(v/v)FBSを2日目に、そして2%血清をそれ以後の各日目に含有した。5日間の分化後、上記実施例に記載したように、CXCR4に対する抗体を用いて、細胞をFACS精製に付した。次に精製細胞集団を、以下の4つの成長因子条件のうちの1つの下で、2%FBSを含有するRPMI中でポリオルニチン及び10μg/mlヒトフィブロネクチンで被覆されたIVF皿上で培養した:因子添加なし(NF);100ng/mlのアクチビンA(A);100ng/mlのアクチビンA及び100ng/mlのIGF1(AI);又は100ng/mlのアクチビンA、12ng/mlのbFGF及び10ng/mlのEGF(AFE)。11日目に、標準トリプシン処理法を用いて、増殖胚体内胚葉細胞を継代培養した。次に細胞培養物の各々を、継代培養後さらに10日間増殖させた(アクチビンAとの最初の接触後、全体で21日)。図36に示すように、mRNAの試料を、0、5、11及び21日目に得た。
【0228】
図37A〜図37Eは、培養条件の各々に関して試料時点の各々での種々の胚性細胞型に関するマーカー遺伝子の発現を示す。図37A及び図37Bに示すように、胚体内胚葉マーカーSOX17及びGSCは、5日齢非精製胚体内胚葉培養物中で高度に発現されたが、hESC中では発現されなかった。この発現は、hESCマーカーOCT4の発現と対照を成す(図37C)。胚体内胚葉細胞の精製の6日後(11日目)、SOX17の発現及びGSC発現は、成長因子(単数又は複数)で処理された細胞培養物の各々においては高度に残存したが、アクチビンAの非存在下で増殖した細胞培養物中には残存しなかった(図37A及び図37B)。継代培養の10日後(21日目)に、これらのマーカーに関して類似の発現パターンを観察した(図37A及び図37B)。hESC(OCT4)、中胚葉(ブラキュリ)又は外胚葉(ZIC1及びSOX1)のマーカーに関するmRNAの発現は、精製後の細胞培養物のいずれにおいても観察されなかった。この結果は、アクチビンAの非存在下でさえ、精製胚体内胚葉細胞がhESC又は他の2つの胚性細胞系統の細胞を形成しない、ということを示す(図37C〜図37F)。
【0229】
本明細書中に記載される方法、組成物及び装置は、目下、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。その変更及びその他の使用は当業者に思い付かれ、これらは本発明の精神に包含され、そして開示の範囲により規定される。したがって本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、本明細書に開示される発明に種々の置換及び修正がなされ得るということは、当業者には明らかである。
【0230】
添付の特許請求の範囲及び本開示全体を通して用いられる場合、「本質的に〜から成る」という語句は、当該語句の後ろに列挙される任意の要素を含むことを意味し、列挙した要素に関する開示において特定される活性又は作用を妨害しないか又は寄与しない他の要素に限定される。したがって「本質的に〜から成る」という語句は、列挙した要素が必要とされるか又は必須であるが、他の要素は任意であり、それらが列挙した要素の活性又は作用に影響を及ぼすか否かによって、存在してもよいし存在しなくてもよい、ということを示す。
【0231】
[参考文献]
多数の文献及び特許参考文献を、本特許出願中で引用してきた。本特許出願で引用され
る参考文献のそれぞれ及び全てが、参照として本明細書中に全体が援用される。
【0232】
いくつかの参考文献に関しては、全引用が文書の本文中に存在する。他の参考文献に関しては、文書の本文中における引用は著者及び年で示しているが、全引用を以下に示す:
【0233】
【表3−1】

【表3−2】

【表3−3】

【表3−4】

【表3−5】

【表3−6】

【図面の簡単な説明】
【0234】
【図1】hESCからのβ細胞の産生のための提案された分化経路の模式図である。当該経路の第1の工程は、ES細胞を胚体内胚葉細胞系列に関係付け(commit)、そして膵臓内胚葉、内分泌性内胚葉又は島/β細胞へのES細胞のさらなる分化における既知の最も初期の工程のうちの1つを表す。この移行を媒介するために有用ないくつかの因子は、TGFβファミリーの成員であり、例としては、アクチビン及びノーダルが挙げられるが、これらに限定されない。胚体内胚葉標的細胞を規定するための例示的マーカーは、SOX17、GATA4、HNF3b、MIX1及びCXCR4である。
【図2】保存モチーフの位置を表示し、且つGENOVACによる免疫化手順に使用される領域を強調するヒトSOX17 cDNAの略図である。
【図3】SOX17が、SOX7に、また幾分劣るがSOX18に最も密接に関連することを示す相関系統樹である。SOX17タンパク質は、同種内のSOX F群サブファミリーの他の成員に対するよりも種相同体間でより密接に関連する。
【図4】ラット抗SOX17抗体でプローブしたウェスタンブロットである。このブロットは、線維芽細胞において過剰発現されるヒトSOX17タンパク質に関するこの抗体の特異性(レーン1)及びEGFPとの免疫反応性の欠如(レーン2)或いは最も密接に関連するSOXスーパーファミリー成員であるSOX7(レーン3)を実証する。
【図5】図5A及び図5Bは、相当数のAFP+同時標識細胞を表示するSOX17+細胞のクラスター(A)を示す顕微鏡写真である。これは、AFP+細胞がほとんど又は全く観察されない他のSOX17+クラスター(B)と著しい対比を成す。
【図6】図6A〜図6Cは、壁側内胚葉及びSOX17を示す顕微鏡写真である。パネルAは、hES細胞の無作為に分化された培養物における壁内胚葉細胞の細胞表面上に位置するヒトトロンボモジュリン(TM)タンパク質に関する免疫細胞化学を示す。パネルBは、TM及びSOX17に関して二重標識されたAで示されるのと同一視野である。パネルCは、DAPI標識された核を伴う同一視野の位相コントラスト画像である。DAPI標識された核とSOX17ラベリングの完全な相関に留意されたい。
【図7】図7A及び図7Bは、定量的PCR(Q−PCR)によるSOX17遺伝子発現及びSOX17特異的抗体による抗SOX17陽性細胞を示す棒グラフである。パネルAは、未分化対照培地(SR20)と比較して、アクチビンAがSOX17遺伝子発現を増大させる一方で、レチノイン酸(RA)はSOX17発現を強力に抑制することを示す。パネルBは、これらの変化の同一パターン並びに類似した規模が、SOX17+細胞数に反映されることを示しており、SOX17遺伝子発現のQ−PCR測定は、単一細胞レベルでの変化を大きく反映することを示す。
【図8】図8Aは、アクチビンAの存在下での分化hESCの培養は、低レベルのAFP遺伝子発現を維持するのに対して、10%ウシ胎児血清(FBS)中で無作為に分化することが可能とされる細胞は、AFPの強力なアップレギュレーションを示すことを示す棒グラフである。発現レベルの差異は、およそ7倍である。図8B及び図8Cは、10%FBS単独(上)に対するアクチビンA処理状態(下)で観察されるAFP+細胞の非常に希少且つ小さなクラスターにより示されるように、アクチビンAによるAFP発現の抑制もまた単一細胞レベルで明白であることを示す2つの顕微鏡写真の画像である。
【図9】図9A及び図9Bは、フローサイトメトリーを使用したAFP+細胞数の定量化を示す比較画像である。この図は、アクチビンAの存在(右パネル)及び非存在(左パネル)下でのAFP遺伝子発現の変化の規模(図8A)がAFP+細胞の数に正確に対応することを実証し、さらに個々の細胞レベルで起こる変化を示すためのQ−PCR分析の有用性を支持する。
【図10】図10A〜図10Fは、ノーダル、アクチビンA及びアクチビンB(NAA)へのhESCの暴露が、5日間にわたってSOX17+細胞の数の著しい増大をもたらすことを示す顕微鏡写真である(A〜C)。DAPI染色された核により示されるように(D〜F)、SOX17+細胞の相対存在量を、各視野に存在する細胞の総数と比較することにより、すべての細胞のおよそ30〜50%が、NAAによる5日の処理後にSOX17に対して免疫反応性であることがわかる。
【図11】アクチビンA(0、10、30又は100ng/ml)は、分化hESCにおけるSOX17遺伝子発現を用量依存的に増大させることを実証する棒グラフである。増大された発現は、接着培養物上での3日間の処理後にすでに強健であり、同様に続く1、3及び5日の懸濁培養まで継続する。
【図12】図12A〜図12Cは、MIXL1(パネルA)、GATA4(パネルB)及びHNF3b(パネルC)の発現に対するアクチビンAの影響を実証する棒グラフである。アクチビンA用量依存的増大はまた、胚体内胚葉の3つの他のマーカーであるMIXL1、GATA4及びHNF3bに関しても観察される。アクチビン用量に応答した増大された発現の規模は、SOX17に関して観察される規模と際立って類似しており、アクチビンAが、4つすべての遺伝子(SOX17+、MIXL1+、GATA4+及びHNF3b+)を同時発現する細胞の集団を特定していることを強力に示している。
【図13】図13A〜図13Cは、AFP(パネルA)、SOX7(パネルB)及びSPARC(パネルC)の発現に対するアクチビンAの影響を実証する棒グラフである。臓側内胚葉マーカーAFPの発現においてアクチビンA用量依存的減少が見られる。原始内胚葉(SOX7)及び壁側内胚葉(SPARC)のマーカーは、未変化のままであるか、或いはいくつかの時点で抑制を示すことから、アクチビンAが、これらの胚体外内胚葉細胞型を特定するように作用しないことを示している。このことはさらに、SOX17、MIXL1、GATA4及びHNF3bの増大された発現が、アクチビンAに応答した胚体内胚葉細胞の数の増大に起因し得るという事実を支持する。
【図14】図14A及び図14Bは、ZIC1(パネルA)及びブラキュリ発現(パネルB)に対するアクチビンAの影響を示す棒グラフである。神経マーカーZIC1の一貫した発現は、神経分化に対するアクチビンAの用量依存的影響が見られないことを実証する。ブラキュリの減少された発現により示されるように、100ng/mlのアクチビンA処理により媒介される中胚葉分化の顕著な抑制が見られる。これは、中内胚葉前駆体からの胚体内胚葉の増大された特異化の結果である可能性が高い。より低レベルのアクチビンA処理(10及び30ng/ml)は、未処理対照培養物に対して分化のより後期の時点でブラキュリの発現を維持する。
【図15】図15A及び図15Bは、アクチビンによる処理に応答した減少された壁側内胚葉分化を示す顕微鏡写真である。TMhi壁側内胚葉の領域は、血清単独中で分化される場合、培養物の至るところで見られる(A)のに対して、アクチビンが包含される場合、TM+細胞への分化は乏しく(B)、TM免疫反応性の全体的な強度はより低い。
【図16】図16A〜図16Dは、アクチビンA及びアクチビンBによる処理に応答したマーカー発現を示す顕微鏡写真である。hESCは、アクチビンA及びアクチビンBにより連続4日間処理して、SOX17、AFP及びTM抗体で三重標識した。パネルA−SOX17、パネルB−AFP、パネルC−TM及びパネルD−相/DAPI。AFP(B)及びTM(C)免疫反応性の完全な非存在と関連した無数のSOX17陽性細胞(A)に注目されたい。
【図17】hESCからのin vitroでの胚体内胚葉及び臓側内胚葉の出現を示す顕微鏡写真である。臓側内胚葉の領域は、AFPhi/SOX17lo/-により同定される一方で、胚体内胚葉は、完全に反対のプロフィールであるSOX17hi/AFPlo/-を示す。この視野は、これらの2つの領域の互いに対する近接性に起因して選択的に選択された。しかしながら、何度もSOX17hi/AFPlo/-領域がAFPhi細胞の任意の領域からの絶対的な単離で観察され、これは臓側内胚葉細胞とは別個の胚体内胚葉細胞の起源を示唆する。
【図18】TGFβファミリーのリガンド及び受容体を表す略図である。AR Smad及びBR Smadを活性化する因子は、ヒト胚性幹細胞からの胚体内胚葉の産生に有用である(J Cell Physiol. 187: 265-76を参照)。
【図19】個々のTGFβ因子及びTGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17発現の誘導を示す棒グラフである。
【図20】TGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17+細胞数の増大を示す棒グラフである。
【図21】TGFβ因子の組合せによる処理の結果として、経時的にSOX17発現の誘導を示す棒グラフである。
【図22】アクチビンAが、SOX17+細胞数の用量依存的増大を誘導することを示す棒グラフである。
【図23】アクチビンA及びアクチビンB処理培養物へのWnt3aの添加が、アクチビンA及びアクチビンB単独により誘導されるレベルを上回ってSOX17発現を増大させることを示す棒グラフである。
【図24】図24A〜図24Cは、胚体内胚葉への分化が低FBS条件で増強されることを示す棒グラフである。2%FBSを含有する培地中(2AA)でのアクチビンA及びBによるhESCの処理は、10%FBS培地(10AA)中での同じ処理と比較して、2〜3倍高いレベルのSOX17発現をもたらす(パネルA)。胚体内胚葉マーカーMIXL1の誘導(パネルB)はまた、同じ方法で影響を及ぼされ、AFP(臓側内胚葉)の抑制(パネルC)は、10%FBS条件よりも2%FBSにおいて高い。
【図25】図25A〜図25Dは、SOX17+細胞が培養中に分裂していることを示す顕微鏡写真である。SOX17免疫反応性細胞は、hESCコロニーの分化の瀬戸際(edge)に存在し(C、D)、増殖細胞核抗原(PCNA)で標識される(パネルB)が、OCT4では共同標識されていない(パネルC)。さらに、明確な有糸分裂の形が、SOX17+細胞(矢印)並びにOCT4+の未分化hESC(矢じり)の両方において核のDAPIラベリングにより観察することができる(D)。
【図26】様々な培地条件下での分化hESCにおけるCXCR4の相対発現レベルを示す棒グラフである。
【図27】図27A〜図27Dは、胚体内胚葉マーカーのパネルが、どのようにして図26で示されるのと同じ分化処理にわたってCXCR4と非常に類似した発現のパターンを共有するかを示す棒グラフである。
【図28】図28A〜図28Eは、中胚葉(ブラキュリ、MOX1)、外胚葉(SOX1、ZIC1)及び臓側内胚葉(SOX7)に関するマーカーが、どのようにして図26で示されるのと同じ処理にわたってCXCR4発現に対する逆相関を示すかを示す棒グラフである。
【図29】図29A〜図29Fは、図26〜図28で示される3つの培地条件にわたってSOX17免疫反応性細胞における相対的な差異を示す顕微鏡写真である。
【図30】図30A〜図30Cは、分化培地に添加されるアクチビンAの増大濃度によるCXCR4+細胞数の増大を実証するフローサイトメトリードットプロットである。
【図31】図31A〜図31Dは、高用量アクチビンA処理から単離されるCXCR4+細胞(A100−CX+)が、母集団(A100)よりも胚体内胚葉マーカーに関してさらに一層富化されることを示す棒グラフである。
【図32】蛍光標示式細胞分取(FACS)を使用して単離されるCXCR4+細胞及びCXCR4-細胞からの遺伝子発現、並びに母集団における遺伝子発現を示す棒グラフである。これは、CXCR4+細胞が各母集団に存在する本質的にすべてのCXCR4遺伝子発現を含有し、またCXCR4-集団がCXCR4遺伝子発現をほとんど含有しないか、或いは全く含有しないことを実証する。
【図33】図33A〜図33Dは、これらの非胚体内胚葉マーカーの発現においてすでに抑制されている高用量アクチビンA処理から単離されるCXCR4+細胞における中胚葉(ブラキュリ、MOX1)、外胚葉(ZIC1)及び臓側内胚葉(SOX7)遺伝子発現の欠乏を実証する棒グラフである。
【図34−1】図34A〜図34Mは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーであるFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現分析は、それぞれパネルG〜Lに示される。これまでに記載した系統マーキング遺伝子であるSOX17、SOX7、SOX17/SOX7、TM、ZIC1及びMOX1の発現分析は、それぞれパネルA〜Fに示される。パネルMは、CXCR4の発現分析を示す。パネルA〜Mそれぞれに関して、hESCと標識した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加なし)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
【図34−2】図34A〜図34Mは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーであるFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現分析は、それぞれパネルG〜Lに示される。これまでに記載した系統マーキング遺伝子であるSOX17、SOX7、SOX17/SOX7、TM、ZIC1及びMOX1の発現分析は、それぞれパネルA〜Fに示される。パネルMは、CXCR4の発現分析を示す。パネルA〜Mそれぞれに関して、hESCと標識した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加なし)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
【図34−3】図34A〜図34Mは、胚体内胚葉細胞を同定するのに使用することができるマーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーであるFGF17、VWF、CALCR、FOXQ1、CMKOR1及びCRIP1の発現分析は、それぞれパネルG〜Lに示される。これまでに記載した系統マーキング遺伝子であるSOX17、SOX7、SOX17/SOX7、TM、ZIC1及びMOX1の発現分析は、それぞれパネルA〜Fに示される。パネルMは、CXCR4の発現分析を示す。パネルA〜Mそれぞれに関して、hESCと標識した欄は、精製ヒト胚性幹細胞からの遺伝子発現を示し、2NFは、2%FBSで処理した細胞(アクチビン添加なし)を示し、0.1A100は、0.1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、1A100は、1%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示し、2A100は、2%FBS、100ng/mlアクチビンAで処理した細胞を示す。
【図35】図35A〜図35Dは、種々の増殖条件下で36日間維持された細胞培養物中の胚体内胚葉マーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。胚体内胚葉マーカーSOX17、GSC、MIXL1及びCXCR4の発現分析を、それぞれパネルA〜Dに示す。EB及びEVは、hCyT25 hESC系列から各々細胞集団を分離することを意味するために使用される。略号NFはアクチビンAの非存在下での細胞成長を示し、一方、A100は、100ng/mlのこの因子の存在下での細胞増殖を示す。EGFは、50ng/mlの上皮細胞成長因子を示す。
【図36】胚体内胚葉細胞に関する細胞分化、単離及び増殖手順を示す線図である。略号は以下の通りである:hESCはヒト胚性幹細胞を指す;d5 hESC−DEは非精製胚体内胚葉細胞を指す;d6 FACS−DEはCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞を指す;そしてp1 d10 FACS−DEは、1回継代培養され、そして継代培養後さらに10日間増殖した精製胚体内胚葉細胞を指す。RNA試料を採取し、指定日の各々でマーカー発現に関して分析した。
【図37】図37A〜図37Fは、胚体内胚葉に分化され、次にその後CXCR4抗体を蛍光標示式細胞分取(FACS)と共に用いて精製された細胞培養物中の種々の胚性細胞系統マーカー遺伝子の発現パターンを示す棒グラフである。略号は以下の通りである:p96 hESCは、CyT25ヒト胚性幹細胞の96回目の継代培養からのmRNAを指す;d5 DEは、p96 hESCからの分化の5日目の非精製胚体内胚葉細胞からのmRNAを指す;NF d6−FACSは、アクチビンAの非存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞から分化後11日目に採取されたmRNAを指す;Aは、100ng/mlアクチビンAの存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの分化後11日目に採取されたmRNAを指す;AIは、100ng/mlアクチビンA及び100ng/mlのIGF1の存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの分化後11日目に採取されたmRNAを指す;AFEは、100ng/mlアクチビンA、12ng/mlのbFGF及び10ng/mlのEGFの存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの分化後11日目に採取されたmRNAを指す;NF p1−d10−FACSは、アクチビンAの非存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞の継代培養後10日目に採取されたmRNAを指す;Aは、100ng/mlアクチビンAの存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの継代培養後10日目に採取されたmRNAを指す;AIは、100ng/mlアクチビンA及び100ng/mlのIGF1の存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの継代培養後10日目に採取されたmRNAを指す;そしてAFEは、100ng/mlアクチビンA、12ng/mlのbFGF及び10ng/mlのEGFの存在下でインキュベートされたCXCR4抗体/FACS精製胚体内胚葉細胞からの継代培養後10日目に採取されたmRNAを指す。パネルA−SOX17;B−GSC;C−OCT4;D−ブラキュリ;E−ZIC1;F−SOX1。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養で胚体内胚葉細胞を増殖する方法であって、以下:
(a)胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得する工程;
(b)前記細胞培養物中の他の細胞のうちの少なくともいくつかから前記胚体内胚葉細胞のうちの少なくともいくつかを単離する工程であって、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を作り出す、工程;及び
(c)前記胚体内胚葉細胞の増殖を可能にする条件下で前記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を培養する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記胚体内胚葉細胞が腸管の細胞又はそれに由来する器官に分化し得る多分化能細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記胚体内胚葉細胞がヒト胚体内胚葉細胞である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記胚体内胚葉細胞がヒト胚性幹細胞(hESC)に由来する、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記取得する工程が、前記hESCのうちの少なくともいくつかの胚体内胚葉細胞への分化を可能にするために、TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子とhESCを接触させることを含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記TGFβスーパーファミリーの前記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
胚体内胚葉細胞を含む前記細胞培養物を取得する工程が、現存する胚体内胚葉培養物の一部分を取得することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が胚体内胚葉細胞以外の細胞を実質的に含有しない、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約96%の胚体内胚葉細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が少なくとも約98%の胚体内胚葉細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団が約100%の胚体内胚葉細胞を含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記単離する工程が、前記胚体内胚葉細胞中で発現されるマーカーと結合するが、細胞培養物中に存在する前記他の細胞中で実質的に発現されない試薬を前記細胞培養物に提供すること、及び、細胞培養物中に存在する前記他の細胞から前記試薬に結合された前記胚体内胚葉細胞を分離することであって、それにより胚体内胚葉細胞に富んだ細胞集団を生じることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記マーカーがCXCR4である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記試薬が抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記試薬に結合された前記胚体内胚葉細胞が蛍光標示式細胞分取(FACS)により細胞培養物中に存在する前記他の細胞から分離される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記単離する工程が非標識細胞から蛍光標識胚体内胚葉細胞を分離することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項17】
前記蛍光標識胚体内胚葉細胞が強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)の発現の結果として標識される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
EGFPの発現がSOX17プロモーターの制御下にある、請求項17記載の方法。
【請求項19】
EGFPの発現がCXCR4プロモーターの制御下にある、請求項17記載の方法。
【請求項20】
前記培養する工程が、前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をプレーティングすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項21】
前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分がヒトフィブロネクチンで被覆された表面でプレーティングされる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記表面がポリオルニチンで被覆される、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記培養する工程が、約2%(v/v)の血清を含む培地中で前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項24】
前記培養する工程が、約2%(v/v)よりも多い血清を含む培地中で前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項25】
前記培養する工程が、約2%(v/v)未満の血清を含む培地中で前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項26】
前記培養する工程が、少なくとも1つの成長因子を含む培地中で前記胚体内胚葉細胞に富んだ集団又はその一部分をインキュベートすることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1つの成長因子がTGFβスーパーファミリーの成長因子の一成長因子である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
前記TGFβスーパーファミリーの少なくとも1つの成長因子がアクチビンAを含む、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記アクチビンAが約100ng/mlの濃度で前記培地中に存在する、請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記少なくとも1つの成長因子がIGF1を含む、請求項26記載の方法。
【請求項31】
前記IGF1が約100ng/mlの濃度で前記培地中に存在する、請求項30記載の方法。
【請求項32】
前記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAとIGF1との組合せを含む、請求項26記載の方法。
【請求項33】
前記少なくとも1つの成長因子がbFGFを含む、請求項26記載の方法。
【請求項34】
前記bFGFが約12ng/mlの濃度で前記培地中に存在する、請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記少なくとも1つの成長因子がEGFを含む、請求項26記載の方法。
【請求項36】
前記EGFが約10ng/mlの濃度で前記培地中に存在する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記少なくとも1つの成長因子がアクチビンAと、bFGFと、EGFとの組合せを含む、請求項26記載の方法。
【請求項38】
請求項1記載の方法により産生される増殖した胚体内胚葉細胞集団。
【請求項39】
培養で胚体内胚葉細胞を増殖する方法であって、以下:
(a)胚体内胚葉細胞を含む細胞培養物を取得する工程、及び
(b)前記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程であって、それにより胚体内胚葉細胞を含む複数の細胞培養物を産生する工程を含む、方法。
【請求項40】
前記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、前記細胞培養物に少なくとも1つの酵素を提供することを含む、請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記少なくとも1つの酵素が少なくとも1つのプロテアーゼを含む、請求項40記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つのプロテアーゼがトリプシンを含む、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、前記胚体内胚葉細胞間の接触を機械的に妨げることを含む、請求項39記載の方法。
【請求項44】
前記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、細胞分散緩衝液中で前記胚体内胚葉細胞をインキュベートすることを含む、請求項39記載の方法。
【請求項45】
前記胚体内胚葉細胞が基材に付着される、請求項39記載の方法。
【請求項46】
前記胚体内胚葉細胞を継代培養する工程が、前記基材から前記胚体内胚葉細胞を剥離することを含む、請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記基材が組織培養フラスコの表面である、請求項46記載の方法。
【請求項48】
前記基材がマイクロタイタープレートの表面である、請求項46記載の方法。
【請求項49】
請求項39記載の方法により産生される増殖した胚体内胚葉細胞集団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図9】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34−1】
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【図34−2】
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【図34−3】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図10】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図25】
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【図29】
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【公表番号】特表2008−525040(P2008−525040A)
【公表日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−548592(P2007−548592)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【国際出願番号】PCT/US2005/047175
【国際公開番号】WO2006/071911
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(503431792)サイセラ,インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】