胚幹細胞の増殖用組成物および方法
本発明は、胚幹(ES)細胞など、幹細胞における未分化状態および/または多分化能の維持のための方法、組成物、およびキットに関する。本発明はまた、未分化状態に維持されている幹細胞に関する。本発明は、線維芽細胞のフィーダー層、馴化培地、または白血病抑制因子を使用せずに、TGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはニコチンアミドに富んだ培養培地を用いたこれらの態様を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスレファランス
本出願は、2004年3月10日に出願された特許文献1の出願日の利益を主張し、その全開示の全体が、参照として本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、分子および細胞の生物学の分野に関する。より具体的に、本発明は、培養液中の未分化状態における胚幹細胞の増殖、ならびに細胞過程の研究および医学的に有用な製品のための、このような細胞の利用法に関する。
【背景技術】
【0003】
幹細胞はそれらの多能性のために、多くのヒト疾患にとって高い有望性を示している。どんな細胞型にも分化するかれらの能力により、それらは、多数の異なった細胞型、組織、および器官を冒す疾患および障害に関する研究ならびに治療法の開発にとって、貴重な供給源となっている。したがって、それらの研究、未分化状態におけるそれらの増殖および維持、ならびに治療にとっての関心対象である細胞型生産のためのそれらの分化制御に、現在、強い関心が持たれている。
【0004】
健康や生命にとって重要な物質を産生するものを含めて、欠損した、または喪失した身体組織および器官を置換または補足するために、単離された、あるいは新たな遺伝子の導入または欠失もしくは欠失遺伝子の置換によって修飾された成人幹細胞および胚幹細胞などの幹細胞を用いることができるということが提案されてきた。しかし、このタイプの研究およびそれに続く治療にとって必要であるところの、培養液における未分化多能性幹細胞の維持は、明らかに困難である。補足添加物を含有しない培養液に入れると、未分化細胞は、自然に急速な分化を開始し、次いで、典型的には、分裂が遅くなるか分裂を停止させる。したがって、現在、研究および治療開発に実際に利用できる幹細胞はわずかである。この問題を克服するために、研究者は、分化を阻止する一方、細胞の分裂を続行させる外来物質の添加によって幹細胞を未分化状態で培養する方法の発明を試みている。
【0005】
最も広く研究されている2種の胚幹細胞型は、マウス胚幹細胞(mESC)およびヒト胚幹細胞(hESC)である。マウス胚幹細胞における未分化状態および多能性の維持には、マウス線維芽細胞フィーダー層(mEFs)の存在または白血球阻止因子(LIF)によるSTAT3の活性化が必要である。同様に、hESCは典型的に、mEFs上で、または線維芽細胞の増殖から得られた培地中で培養される。ヒト胚幹細胞系は、つい最近、研究に利用できるようになったために、自己複製および分化に関する細胞内経路は、現時点では大部分が不明である。しかし、hESCの増殖要件は、mESCの増殖要件とは著しく異なっているであろうことが、明らかになりつつある。例えば、mESCでの状況とは異なり、mEFs上で増殖させた場合、またはmEFsからの馴化培地で処理した場合、hESCの分化を阻止するためには、STAT3の活性化では十分ではない。また、本出願に関する優先文書の出願日後に発行された報告において、ノギン(noggin)と共に、塩基性線維芽細胞因子(bFGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)の一タイプがhESCの分化を阻止することが開示された(Xu,R.H.ら、2005年)。したがって、該著者らによれば、培養培地へのbFGFの添加により、フィーダー細胞を必要とせずに、hESCの増殖および維持を継続させることができる。
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/552,318号、2004年3月10日出願
【特許文献2】米国特許第5,853,997号
【特許文献3】米国特許第5,976,853号
【特許文献4】米国特許第5,294,538号
【特許文献5】米国特許第6,004,791号
【特許文献6】米国特許第5,589,375号
【特許文献7】米国特許第5,955,592号
【特許文献8】米国特許第5,958,719号
【特許文献9】米国特許第5,952,212号
【特許文献10】国際公開第8606076号、1986年10月23日出願
【非特許文献1】Murrayら、Nuc.Acids Res.、17頁(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
幹細胞、特に胚幹細胞の培養において、進歩はなされているものの、培養液における、未分化幹細胞の維持および増殖のための実用的で信頼できる方法および材料に対する必要性は依然として存在している。特に、未分化hESCの増殖および維持のための方法および材料に対する必要性が当業界に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、胚幹細胞などの未分化幹細胞の増殖および維持のための方法、組成物、およびキットを提供する。したがって、本発明は、胚幹細胞における未分化状態および/または多能性の維持に関する。該方法、組成物、およびキットは、研究、研究および医療物質の製造、ならびに疾患および障害、特にヒトを冒す疾患および障害の治療に使用するための幹細胞の培養における使用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の態様において、本発明は、未分化幹細胞の増殖および維持のための方法を提供する。一般的に、該方法は、幹細胞を、所望の結果を達成する上で十分な時間、該細胞を未分化状態に維持する上で十分な量におけるアクチビンAなどの形質転換増殖因子β(TGFβ)ファミリーメンバーのタンパク質に曝露することを含んでなる。所望の結果は、限定はしないが、特定物質の産生、培養プレート上の培養物の集密化、新たな培養培地へ移すために十分な数の細胞産生(すなわち、継代接種のために)、または対象への移植のために十分な数の細胞産生などの任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。該方法は、幹細胞を、培養液中、限定はしないが、およそ10継代またはそれ以上の複数継代を通して細胞の増殖および維持を可能にする上で十分な量において、KGF(FGF7としても知られている)などの線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーメンバーのタンパク質に曝露することを含んでなり得る。したがって、本発明の方法の種々の形態は、培養液中で少なくとも10継代、未分化状態における幹細胞の増殖および維持をもたらすことができる。同様に、該方法は、幹細胞を、培養液中、およそ10継代、20継代、30継代、またはそれ以上などの複数継代を通して、細胞の増殖および維持を可能にする上で十分な量において、ニコチンアミド(NIC)に曝露することを含んでなり得る。該方法は、フィーダー細胞、馴化培地、および/または白血球阻止因子(LIF)の不在下で、培養液中の幹細胞の増殖および維持を可能にし得る。実施形態において、該方法は、該細胞を多能性の状態に維持する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、幹細胞を、未分化または多能性の状態において増殖および/または維持するために使用できる組成物を提供する。一般的に、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖または維持させる上で十分な量および形態のアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、もしくはNIC、またはこれらのうちの2種もしくは全ての組み合わせを含んでなる。上記方法の検討にしたがって、所望の結果は、任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。したがって、複数の実施形態において、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖および/または維持させる上で十分な量のKGFを含み得る。複数の実施形態において、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖および/または維持させる上で十分な量のNICを含み得る。種々の実施形態において、該組成物は、アクチビンA、KGF、およびNICのうちの2種以上の組み合わせを含んでなる。本発明の組成物は、一般に、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICに加えて、一成分を含んでなる。追加成分は、幹細胞の増殖、または幹細胞もしくは幹細胞によって産生された物質を動物対象またはヒト対象への導入にとって好適な、またはそれに適合性であることが知られている任意の物質であり得る。複数の実施形態において、それは培養培地である。幹細胞の増殖および維持における本発明の組成物の有用性の点で、本発明の組成物は、それら自身、hESCなどの胚幹細胞を含めて、幹細胞を含み得る。
【0011】
第3の態様において、本発明は、胚幹細胞を、未分化状態または多能性状態において増殖および/または維持させる上で必要な材料の一部または全てを含有するキットを提供する。最も基本的形態において、該キットは、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、培養液中の幹細胞を、増殖および維持させる上で十分な量のTGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNICを含有する少なくとも1つの容器を含んでなる。所望の結果は、特定物質の検出可能な量の産生、培養プレート上の培養物の集密化、対象への移植のために十分な数の細胞産生などの任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。
【0012】
第4の態様において、本発明は、未分化および多能性である幹細胞を提供する。該幹細胞は、本発明の組成物中で増殖および維持される。複数の実施形態において、該幹細胞は、マウス胚のフィーダー層からのフィーダー細胞、馴化培地、および/またはSTAT3活性化を含まない組成物中で提供される。
【0013】
本明細書に組み込まれており、本明細書の一部を構成している添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態の特徴を示しており、文書の説明と一緒になって、本発明の一定の様相を説明する上で役立つものである。
【0014】
次に、本発明の種々の実施形態に対する記述を行う。本発明の一定の実施形態に対する以下の詳細な説明は、決して本発明を限定するものとして考えるべきではなく、当業者に対して、本発明の記述を助けるための種々の実施形態の説明として認識すべきである。
定義:
【0015】
本明細書において別に特に定義されない限り、本文書に用いられる全ての用語は、分子生物学および細胞生物学分野における一般的および慣例的用法にしたがっている。次の用語が以下のように定義される:
【0016】
本明細書に用いられる語の「ある("a","an")」および「該("the")」は、文脈上明らかに別に指示されない限り、単数と複数の双方の意味を含む。
【0017】
本明細書に用いられる用語の「または(もしくは)("or")」は、挙げられた選択肢のうちの1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
本明細書に用いられる用語の「含んでなる("comprising")」が、ある方法におけるステップの記述の前に置かれている場合、該方法が、明記されたステップに追加して、1つまたは複数のステップを包含すること、ならびに、1つまたは複数の追加ステップが、記述されたステップの前、該ステップとの間、および/または後に実施できることを意味する。例えば、ステップa、b、およびcを含んでなる方法は、ステップa、b、x、およびcの方法、ステップa、b、c、およびxの方法、ならびにステップx、a、b、およびcの方法を包含する。さらに、用語の「含んでなる」が、ある方法におけるステップの記述の前に置かれている場合、文脈上明らかに別に指示されない限り、挙げられたステップの連続的実施を必ずしも必要としない。例えば、ステップa、b、cを含んでなる方法は、ステップa、c、bの順序、ステップc、b、aの順序、およびステップc、a、bの順序でステップを実施する方法を包含する。
【0019】
本明細書に用いられる用語の「接触("contacting")」および「曝露("exposing")」は、交換可能に用いられ、細胞および物質に関連して用いられる場合は、「接触」または「曝露」細胞を生成させるために、該物質を、該細胞に接触させることが可能な場所に、および条件下に置くことを意味する。
【0020】
本明細書に用いられる用語の「細胞("cell")」とは、単一の細胞ならびに集団(すなわち、1つ超)の細胞を言う。該集団は、1種の細胞型を含んでなる純粋集団であり得る。あるいは、該集団は、1種超の細胞型を含んでなり得る。本発明において、細胞集団が含み得る細胞型の数に制限はない。さらに、本明細書に用いられる用語の「細胞培養物("cell culture")」とは、細胞の任意のインビトロ培養物を言う。この用語には、連続的細胞系(例えば、不死表現型)、一次細胞培養物、有限細胞系(例えば、非形質転換細胞)、およびインビトロで維持された卵母細胞および胚などの他の任意の細胞集団が含まれる。
【0021】
本明細書に用いられる用語の「混合細胞培養物("mixed cell culture")」とは、2種以上の細胞型の混合物を言う。幾つかの実施形態において、該細胞は、遺伝子設計されていない細胞系であるが、他の実施形態では、該細胞は、遺伝子設計された細胞系である。いくつかの実施形態において、該細胞は、遺伝子設計された分子を含有する。本発明は、限定はしないが、使用された細胞型の全てが遺伝子設計されていない混合細胞培養物、1種以上の細胞型が遺伝子設計されており、残りの細胞型は遺伝子設計されていない混合混合物、および全ての細胞型が遺伝子設計されている混合物を含めて、テラトーマの作製、または欠失、同定、および/またはサンプル中のアポトーシスの定量に好適な細胞型の任意の組み合わせを包含する。
【0022】
本明細書に用いられる用語の「一次細胞("primary cell")」は、培養なしで、ヒトなどの動物の組織(例えば、血液)または器官から直接得られる細胞である。典型的に、しかし必ずしもそうではないが、一次細胞は、老化および/または増殖の停止の前に、インビトロで10以下の継代を経ることができる。対照的に、「培養細胞」は、インビトロで10以上の継代を維持および/または増殖させた細胞である。
【0023】
本明細書に用いられる用語の「培養細胞("cultured cells")」とは、同じ出所の一次細胞に比較して、増殖の停止および/または老化の前に、インビトロでより多数の継代ができる細胞を言う。培養細胞には、「細胞系("cell lines") 」および「一次培養細胞("primary cultured cells")」が含まれる。
【0024】
本明細書に用いられる用語の「細胞系("cell line")」とは、一次細胞系、有限細胞系、連続細胞系、および形質転換細胞系などのインビトロで培養される細胞を言う。該用語は、該細胞が培養において無限回、継代できることを必要としない。細胞系は、自然に、または形質転換によって作製できる。
【0025】
本明細書に用いられる用語の「一次細胞培養物("primary cell culture")」および「一次培養物("primary culture")」とは、動物または昆虫の組織などの細胞からインビボで直接得られた細胞培養物を言う。これらの培養物は成人ならびに胎児の組織に由来し得る。
【0026】
本明細書に用いられる用語の「単層("monolayer")」、「単層培養物("monolayer culture")」、および「単層細胞培養物("monolayer cell culture")」とは、基質に接着していて、1個の細胞の厚さの層として増殖する細胞を言う。単層細胞は、限定はしないが、フラスコ、管、カバーガラス(例えば、シェルバイアル)、ローラーボトルなどの任意のフォーマットにおいて増殖できる。また、単層細胞は、限定はしないが、ビーズなどのマイクロキャリアに結合して増殖できる。
【0027】
本明細書に用いられる用語の「懸濁液("suspension")」および「懸濁培養物("suspension culture")」とは、基質に結合せずに生存し、増殖する細胞を言う。懸濁培養物は、造血細胞、形質転換細胞系、および悪性腫瘍からの細胞を用いて作製できる。
【0028】
本明細書に用いられる用語の「培養培地("culture media")」および「細胞培養培地("cell culture media")」とは、インビトロでの細胞の増殖(すなわち、細胞培養物)を支持する上で好適な培地を言う。例えば、この用語が、特定の培養培地に限定されることは意図されていない。該定義は、増殖培地ならびに維持培地を包含することが意図されている。実際、該用語は、対象の細胞培養物の増殖に好適な培養培地を包含することが意図されている。
【0029】
本明細書に用いられる用語の「インビトロ("in vitro")」とは、人工的環境ならびに人工的環境内で生じる過程または反応を言う。インビトロ環境は、限定はしないが、試験管および細胞培養物によって例示される。
【0030】
本明細書に用いられる用語の「インビボ("in vivo")」とは、自然環境(例えば動物または細胞)ならびに自然環境内で生じる過程または反応を言う。
【0031】
本明細書に用いられる用語の「増殖("proliferation")」または「増加("growth")」は、交換可能に用いられ、細胞数の増加を言う。対照的に、「維持("maintenance")」は、細胞または細胞集団の継続的な生存を意味し、必ずしも細胞数の増加を伴う生存を意味しない。
【0032】
本明細書に用いられる用語の「分化("differentiate")」およびその全ての形態とは、細胞が経る成熟過程であって、それによって、細胞が弁別的特長を発現し、および/または特定の機能を果たし、および/または分裂しにくくなる過程を言う。
【0033】
本明細書に用いられる用語の「単離("isolate")」および「精製("purify")」、ならびにそれらの全ての形態とは、サンプルから少なくとも1種の不純物(タンパク質および/または核酸配列)の量を減少させることを言う。したがって、精製は、サンプル中の所望のタンパク質および/または核酸配列の量の「濃縮("enrichment")」(すなわち、増加)をもたらす。
【0034】
本明細書に用いられる用語の「アミノ酸配列("amino acid sequence")」とは、天然の、または人工のタンパク質分子のアミノ酸配列を言う。「アミノ酸配列」および「ポリペプチド("polypeptide")」、「ペプチド("peptide")」、または「タンパク質("protein")」などの同様な用語は、そのアミノ酸配列を、挙げられたタンパク質分子に関連した完全な天然アミノ酸配列に限定することを意味しない。
【0035】
本明細書に用いられる用語の「受容体タンパク質("receptor proteins")」および「膜受容体タンパク質("membrane receptor proteins")」とは、リガンド(例えば、gp130、微生物分子;LPS、LTAなどのエンドトキシン;dsRNAなど)に結合する膜全域のタンパク質、またはその一部を言う。
【0036】
本明細書に用いられる用語の「リガンド("ligand")」とは、第2の分子に結合する分子を言う。ある特定の分子は、リガンドか第2の分子かのいずれか、または双方を言うことができる。第2の分子の例としては、該リガンドの受容体、該リガンドに結合する抗体が挙げられる。
【0037】
本明細書に用いられる用語の「活性化("activating")」は、生化学的応答(キナーゼ活性など)および/または細胞応答(細胞増殖など)に関する場合、生化学的応答および/または細胞応答の増加を言う。本明細書に用いられる用語の「活性化された」とは、細胞に関する場合、細胞の生理を変化させ、それを生物学的に応答させる方向へ移行させ、生物学的に「活性」になり、したがって、「活性化された」応答を受けた細胞を言う。例えば、単球は活性化されてマクロファージへと成熟する。他に、例えばマクロファージは、エンドトキシン(LPSなど)と接触すると活性化され、該活性化マクロファージは、活性化に関連した分子(例えば、iNOS、MMP−12メタロエラスターゼなど)の濃度増加および/またはタイプを産生し得る。他の例では、未熟樹状細胞が活性化されて、機能的な樹状細胞へと成熟する。「活性化された」細胞は、増加または増殖を経ることはあり得るが、必ずしもそうであるとは限らない。
【0038】
本明細書に用いられる用語の「天然("naturally occurring")」、「野生型("wild-type")」、および「wt」は、分子または組成物(ヌクレオチド配列、アミノ酸配列、細胞、アポトーシスブレブ、外部ホスファチジルセリンなど)に適用される場合、該分子または組成物を天然に見出すことができ、人によって意図的に改変されていないことを意味する。例えば、天然のポリペプチド配列とは、ポリペプチド配列が人によって意図的に改変されていない、天然の供給源から単離できる生物に存在するポリペプチド配列を言う。
【0039】
本明細書に用いられる用語の「に由来する("derived from")」および「から確立した("established from")」とは、本明細書に開示された細胞に関する場合、限定はしないが、ウィルスによる感染、DNA配列のトランスフェクション、例えば、化学物質、放射線などを用いる処理および/または変異誘発、培養親細胞に含有されるいずれかの細胞の選択(連続培養などにより)など、いずれかの操作を用いて、直系卑属における親細胞から得られた(例えば、単離、精製などされた)細胞を言う。誘導細胞は、成長因子、サイトカイン、サイトカイン処理の選択進行、接着、接着欠損、分別処理などに対する応答によって、混合集団から選択できる。
【0040】
本明細書に用いられる用語の「生物学的に活性("biologically active")」とは、インビボで構造的、調節性、および/または生化学的機能を有する分子(例えば、ペプチド、核酸配列、炭水化物分子、有機または無機分子など)を言う。
【0041】
分子の濃度および/または現象に関して、別に定義されない限り、用語の「減少させる"reduce"」、「阻害する("inhibit")」、「減少させる("diminish")」、「抑制する("suppress")」、「減少する("decrease")」、およびそれらの全ての形態は、第2のサンプルに対して、第1のサンプルにおけるいずれかの分子の濃度(例えば、タンパク質、核酸配列、タンパク質配列、増殖、分化速度など)、現象(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、触媒活性、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、細胞分化、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、第1のサンプルにおける分子の量および/または現象が、検出可能な量で、第2のサンプルにおけるものよりも低いことを意味する。
【0042】
分子の濃度および/または現象に関して、別に定義されない限り、用語の「増加させる("increase")」、「上昇させる("elevate")」、「上げる("raise")」、およびそれらの全ての形態は、第2のサンプルに対して、第1のサンプルにおけるいずれかの分子の濃度(例えば、タンパク質、核酸配列、タンパク質配列、増殖、分化速度など)、現象(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、触媒活性、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、細胞分化、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、第1のサンプルにおける分子の量および/または現象が、業界で認められた統計的解析法を用いて、統計的に有意な量で、第2のサンプルにおけるものよりも高いことを意味する。
【0043】
本明細書に用いられる用語の「アポトーシス("apoptosis")」とは、後生動物細胞において、内因性の細胞自殺プログラムの活性化に続いて生じる非壊死的死の過程を言う。アポトーシスは、後生動物の適切な発生およびホメオスタシスにおいて正常な過程であり、通常、細胞死に至る。また、アポトーシスは、微生物感染によって病態的に引き起こされ、アポトーシスに対する感受性の増大および/または完全死をもたらす。アポトーシスは連続的、特徴的な形態学的および生物学的変化を含む。アポトーシスの初期のマーカーの1つは、形質膜ホスファチジルセリンの、内側から外側への反転であり、形質膜の「ゼイオーシス(zeiosis)」と呼ばれる小胞形成を伴い、アポトーシス体として、RNAおよびDNAなどの細胞物質を含有する小胞を放出する。アポトーシス時、細胞拡張に続いて、アポトーシス体の放出による縮化および細胞の溶解、核の崩壊、および内因性ヌクレアーゼの活性化による一定のヌクレオソーム内部位における核染色体の断片化がある。アポトーシス体は、典型的には、他の細胞、特に、単球、マクロファージ、未熟樹状細胞などの免疫細胞によって貪食される。アポトーシスを受ける能力の低下によって、細胞増殖の増加を必ずしも必要とせずに(含んでもよいが)、細胞生存率の増加がもたらされることを、当業者は認識している。したがって、本明細書に用いられる用語の「アポトーシスを減少させる("reduce apoptosis")」と「生存率を増加させる("increase survival")」は等価である。同様に、本明細書に用いられる用語の「アポトーシスを増加させる("increase apoptosis")」と「減少させた生存率(" reduced survival")」は等価である。
【0044】
本明細書に用いられる用語の「細胞応答("cellular response")」とは、細胞による活性の増加または減少を言う。例えば「細胞応答」は、限定はしないが、アポトーシス、死、DNA断片化、小胞形成、増殖、分化、接着、移入、DNA/RNA合成、遺伝子の転写および翻訳および/またはこのような過程のサイトカイン分泌または停止を構成し得る。「細胞応答」は、脱リン酸化、リン酸化、カルシウム流出、標的分子開裂、タンパク質−タンパク質相互作用、核酸−核酸相互作用、および/またはタンパク質/核酸相互作用などの増加または減少を含み得る。本明細書に用いられる用語の「標的分子開裂("target molecule cleavage")」とは、分子の割裂(例えば、アポトーシスの過程、プロカスパーゼの断片への開裂、予想できるサイズの断片へのDNAの開裂などにおける)を言う。本明細書に用いられる用語の「相互作用」は、2種以上の分子の互いに対する相互的な作用または影響を言う。
【0045】
本明細書に用いられる用語の「遺伝子導入("transgenic")」は、細胞に関して用いられる場合、導入遺伝子を含有した、または導入遺伝子の導入によってそのゲノムが変化した細胞を言う。本明細書に用いられる用語の「遺伝子導入」は、組織に関して用いられる場合、導入遺伝子を含有した、または導入遺伝子の導入によってそのゲノムが変化した1種または複数種の細胞を含む組織を言う。遺伝子導入細胞および遺伝子導入組織は、当業者に公知のものなどの人の介入によって、核酸(通常はDNA)を含んでなる「導入遺伝子」を標的細胞内へ導入すること、または導入遺伝子を標的細胞の染色体内へ組み込むことなど、いくつかの方法によって作製できる。
【0046】
本明細書に用いられる用語の「導入遺伝子("transgene")」は、実験的操作によって細胞内へ導入される任意の核酸配列を言う。導入遺伝子は、「内在性DNA配列("endogenous DNA sequence")」または「異種DNA配列("heterologous DNA sequence")」(すなわち、「外来DNA("foreign DNA")」)であり得る。用語の「内在性DNA配列」とは、それが、天然の配列に比較して、何らかの改変(例えば、点変異、選択性マーカー遺伝子の存在など)を含有しない限り、それが導入される細胞内に天然に見られるヌクレオチド配列を言う。用語の「異種DNA配列」とは、天然では結合しない、または天然とは異なる位置に結合する核酸配列に結合する、または結合するように操作されるヌクレオチド配列を言う。異種DNAは、それが導入される細胞にとって内在性でなく、他の細胞から得たものである。また、異種DNAには、何らかの改変を含有する内在性DNA配列も含まれる。一般に、しかし、必ずしもそうとは限らないが、異種DNAは、それが発現される細胞によって、通常は産生されないRNAおよびタンパク質をコードする。異種DNAの例としては、レポーター遺伝子、転写および翻訳調節配列、選択性マーカータンパク質(例えば、薬物耐性を与えるタンパク質)などが挙げられる。
【0047】
本明細書に用いられる用語の「試剤("agent")」、「試験試剤("test agent")」、「分子("molecule")」、「試験分子("test molecule")」、「化合物("compound")」、および「試験化合物("test compound")」は、本明細書において交換可能に用いられ、任意の出所(例えば、植物、動物、原生生物、および環境源など)から得られたか、または任意の方法(例えば、天然分子の精製、化学合成、および遺伝子工学法など)により調製された任意のタイプの分子(例えば、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、有機分子、および無機分子など)任意の組み合わせ分子、例えば糖脂質など)を言う。したがって、これらの用語は、「物質("substance")」という用語と同義である。一実施形態において、用語の「試験試剤」とは、疾患、疾病、病態または身体機能の障害を治療または予防するために使用できる任意の化学物質、薬剤、薬物などを言う。試験試剤は、公知の治療薬と潜在的治療薬との双方を含む。試験試剤は、本発明のスクリーニング法を用いたスクリーニングによって治療用であることを判定できる。「公知の治療薬」とは、このような治療および予防に効果的であることが示された(動物試験またはヒトへの投与による先行経験により)治療薬を言う。言い替えると、公知の治療薬は、疾患(例えば癌)の治療に有効である試剤に限定されない。試剤の例としては、限定はしないが、抗体、リボザイム配列などの核酸配列、および本明細書にさらに記載されている他の試剤が挙げられる。本発明の方法によって同定される、および/または本発明の方法に使用される試験試剤としては、任意の出所(例えば、植物、動物、および環境源など)から得られたか、または任意の方法(例えば、天然分子の精製、化学合成、および遺伝子工学法など)により調製された任意のタイプの分子(例えば、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、有機分子、および無機分子など)が挙げられる。
【0048】
別に示されない限り、「正確に("exactly")」、「精密に("precisely")」、または他の等価な用語により、本明細書に用いられる分子量、反応条件などの成分の量、性質を表す数字は全て、全ての場合に、用語の「約」に変更されるものとして認識すべきであり、したがって、当然、実際に挙げられている数字の10%超または未満までの変更が含まれる。したがって、逆の指示がない限り、本明細書における数値パラメータは、本発明により得られることが求められている所望の性質に依って、変化し得る近似値である。いずれにせよ、各数値パラメータは少なくとも、報告された有意位数の数を考慮に入れ、また、通常の切捨て法を適用して解釈すべきである。本発明の広範囲に記載されている数値範囲および数値パラメータは近似値ではあるが、特定例における数値は、可能な限り精密に報告されている。しかし、いずれの数値も当然、数値の試験測定において見出される誤差から必然的に生じる標準偏差を含む。
【0049】
本明細書に用いられる用語の「変更する("alter")」およびその形態は全て、任意の分子(例えば、核酸配列、タンパク質配列、アポトーシス小胞、外部ホスファチジルセリンなど)の濃度、および/または現象(例えば、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、量が客観的に判定されるか、および/または主観的に判定されるかに関わりなく、該分子の量および/または現象の増加または減少を言う。
【0050】
具体的に呼称された任意のタンパク質(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)に対する本明細書における言及は、何らかの方法によって検出可能な生物学的活性(本明細書に開示された)の少なくとも1つを有する具体的に呼称されたタンパク質のいずれかの、および全ての等価断片、融合蛋白質、および変異体を言う。したがって、タンパク質の呼称は、本明細書に総称されているタンパク質の特定形態を含めて、そのタンパク質の全ての形態を含む。
【0051】
用語の「断片("fragment")」とは、タンパク質(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)に関する場合、4つの連続アミノ酸残基から、アミノ酸残基全体から1つのアミノ酸残基を引いた範囲までのサイズであり得る、そのタンパク質の一部を言う。したがって、「少なくともアミノ酸配列の一部」を含んでなるポリペプチド配列は、「断片」と同等であり、該アミノ酸配列の4つの連続アミノ酸残基からアミノ酸配列全体を含んでなる。
【0052】
本明細書に用いられる用語の「変異体("variant")」および「相同体("homolog")」(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換によって、参照タンパク質と異なるタンパク質を言い、該挿入、欠失、および/または置換は、該参照タンパク質の主要な生物学的機能を変化させないことが好ましい。変異体および相同体としては、参照タンパク質と共通の構造的および機能的特徴を有しているが、異なる種のタンパク質が挙げられる。複数の実施形態において、置換は、1つまたは複数のアミノ酸の保存された変換である。アミノ酸の「保存的置換("conservative substitution")」という用語は、そのアミノ酸を、同様の疎水性、極性、および/または構造を有する他のアミノ酸に置き換えることを言う。例えば、中性の側鎖を有する以下の脂肪族アミノ酸は、他のアミノ酸に保存的に置換できるアミノ酸である:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、およびトレオニン。他のアミノ酸に保存的に置換できる、中性の側鎖を有する芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが挙げられる。システインおよびメチオニンは、他のアミノ酸に保存的に置換できる、イオウ含有アミノ酸である。また、アスパラギンは、グルタミンに保存的に置換でき、その逆もあり得る。双方のアミノ酸とも、ジカルボン酸アミノ酸のアミドだからである。また、アスパラギン酸(アスパルテート)はグルタミン酸(グルタメート)に保存的に置換できる。双方とも酸性の、荷電した(親水性)アミノ酸だからである。また、リジン、アルギニン、およびヒスチジンは、各々、塩基性の、荷電した(親水性)アミノ酸であるため、互いに保存的に置換できる。生物学的および/または免疫学的活性を失わせることなく、どんな、また、どのくらい多くのアミノ酸残基を置換、挿入または欠失できるかを判定する指針は、当業界に良く知られたコンピュータプログラム、例えば、DNAStar(商標)ソフトウェアを用いて見出すことができる。したがって、TGFβファミリーおよびFGFファミリーのメンバーなど、タンパク質ファミリーのメンバーは、該ファミリーの他のメンバーの変異体および相同体を含有する。
【0053】
「TGFβファミリー」は、公知のTGFβファミリーメンバーの構造的および機能的特徴を有するタンパク質を意味する。タンパク質のTGFβファミリーは、構造的側面と機能的側面の双方から十分に特性化されている。それには、TGFβタンパク質系、インヒビン類(インヒビンAおよびインヒビンBなど)、アクチビン類(アクチビンA、アクチビンB、およびアクチビンABなど)、MIS(ミュラー抑制物質)、BMP(骨形成タンパク質)、dpp(デカペンタプレジック)、Vg−1、MNSF(モノクローナル非特異的抑制因子)、および他のものが含まれる。TGFβファミリーメンバーの十分に特性化された種々の活性のうちで、TGFβは、通常の、および形質転換された上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、リンパ系細胞、および他の造血細胞タイプにとって、最も強力な成長因子であると考えられている。このタンパク質ファミリーの活性は、種々の細胞タイプ上の一定の受容体に対する特異的結合に基づいている。このファミリーのメンバーでは、配列の同一性、特にそれらの機能に関連するC末端における配列同一性の領域を共有している。TGFβファミリーには、アミノ酸配列同一性の少なくとも1つの領域を全てが共有している100以上の異なるタンパク質が含まれる。
【0054】
該ファミリーのメンバーとしては、限定はしないが、以下のGenBank登録番号によって同定されるタンパク質が挙げられる:P07995、P18331、P08476、Q04998、P03970、P43032、P55102、P27092、P42917、P09529、P27093、P04088、Q04999、P17491、P55104、Q9WUK5、P55103、O88959、O08717、P58166、O61643、P35621、P09534、P48970、Q9NR23、P25703、P30884、P12643、P49001、P21274、O46564、O19006、P22004、P20722、Q04906、Q07104、P30886、P18075、P23359、P22003、P34821、P49003、Q90751、P21275、Q06826、P30885、P34820、Q29607、P12644、Q90752、O46576、P27539、P48969、Q26974、P07713、P91706、P91699、P27091、O42222、Q24735、P20863、O18828、P55106、Q9PTQ2、O14793、O08689、O42221、O18830、O18831、O18836、O35312、O42220、P43026、P43027、P43029、O95390、Q9R229、O93449、Q9Z1W4、Q9BDW8、P43028、Q7Z4P5、P50414、P17246、P54831、P04202、P01137、P09533、P18341、O19011、Q9Z1Y6、P07200、Q9Z217、095393、P55105、P30371、Q9MZE2、Q07258、Q96S42、P97737、AAA97415.1、NP_776788.1、NP_058824.1、EAL24001.1、1S4Y、NP_001009856.1、NP_032406.1、NP_999193.1、XP_519063.1、AAG17260.1、CAA40806.1、NP_001009458.1、AAQ55808.1、AAK40341.1、AAP33019.1、AAK21265.1、AAC59738.1、CAI46003.1、B40905、AAQ55811.1、AAK40342.1、XP_540364.1、P55102、AAQ55810.1、NP_990727.1、CAA51163.1、AAD50448.1、JC4862、PN0504、BAB17600.1、AAH56742.1、BAB17596.1、CAG06183.1、CAG05339.1、BAB17601.1、CAB43091.1、A36192、AAA49162.1、AAT42200.1、NP_789822.1、AAA59451.1、AAA59169.1、XP_541000.1、NP_990537.1、NP_002184.1、AAC14187.1、AAP83319.1、AAA59170.1、BAB16973.1、AAM66766.1、WFPGBB、1201278C、AAH30029.1、CAA49326.1、XP_344131.1、AAH48845.1、XP_148966.3、I48235、B41398、AAH77857.1、AAB26863.1、1706327A、BAA83804.1、NP_571143.1、CAG00858.1、BAB17599.1、BAB17602.1、AAB61468.1、PN0505、PN0506、CAB43092.1、BAB17598.1、BAA22570.1、BAB16972.1、BAC81672.1、BAA12694.1、BAA08494.1、B36192、C36192、BAB16971.1、NP_034695.1、AAA49160.1、CAA62347.1、AAA49161.1、AAD30132.1、CAA58290.1、NP_005529.1、XP_522443.1、AAM27448.1、XP_538247.1、AAD30133.1、AAC36741.1、AAH10404.1、NP_032408.1、AAN03682.1、XP_509161.1、AAC32311.1、NP_651942.2、AAL51005.1、AAC39083.1、AAH85547.1、NP_571023.1、CAF94113.1、EAL29247.1、AAW30007.1、AAH90232.1、A29619、NP_001007905.1、AAH73508.1、AAD02201.1、NP_999793.1、NP_990542.1、AAF19841.1、AAC97488.1、AAC60038.1、NP_989197.1、NP_571434.1、EAL41229.1、AAT07302.1、CAI19472.1、NP_031582.1、AAA40548.1、XP_535880.1、NP_037239.1、AAT72007.1、XP_418956.1、CAA41634.1、BAC30864.1、CAA38850.1、CAB81657.2、CAA45018.1、CAA45019.1、BAC28247.1、NP_031581.1、NP_990479.1、NP_999820.1、AAB27335.1、S45355、CAB82007.1、XP_534351.1、NP_058874.1、NP_031579.1、1REW、AAB96785.1、AAB46367.1、CAA05033.1、BAA89012.1、1ES7、AAP20870.1、BAC24087.1、AAG09784.1、BAC06352.1、AAQ89234.1、AAM27000.1、AAH30959.1、CAG01491.1、NP_571435.1、1REU、AAC60286.1、BAA24406.1、A36193、AAH55959.1、AAH54647.1、AAH90689.1、CAG09422.1、BAD16743.1、NP_032134.1、XP_532179.1、AAB24876.1、AAH57702.1、AAA82616.1、CAA40222.1、CAB90273.2、XP_342592.1、XP_534896.1、XP_534462.1、1LXI、XP_417496.1、AAF34179.1、AAL73188.1、CAF96266.1、AAB34226.1、AAB33846.1、AAT12415.1、AAO33819.1、AAT72008.1、AAD38402.1、BAB68396.1、CAA45021.1、AAB27337.1、AAP69917.1、AAT12416.1、NP_571396.1、CAA53513.1、AAO33820.1、AAA48568.1、BAC02605.1、BAC02604.1、BAC02603.1、BAC02602.1、BAC02601.1、BAC02599.1、BAC02598.1、BAC02597.1、BAC02595.1、BAC02593.1、BAC02592.1、BAC02590.1、AAD28039.1、AAP74560.1、AAB94786.1、NP_001483.2、XP_528195.1、NP_571417.1、NP_001001557.1、AAH43222.1、AAM33143.1、CAG10381.1、BAA31132.1、EAL39680.1、EAA12482.2、P34820、AAP88972.1、AAP74559.1、CAI16418.1、AAD30538.1、XP_345502.1、NP_038554.1、CAG04089.1、CAD60936.2、NP_031584.1、B55452、AAC60285.1、BAA06410.1、AAH52846.1、NP_031580.1、NP_036959.1、CAA45836.1、CAA45020.1、Q29607、AAB27336.1、XP_547817.1、AAT12414.1、AAM54049.1、AAH78901.1、AAO25745.1、NP_570912.1、XP_392194.1、AAD20829.1、AAC97113.1、AAC61694.1、AAH60340.1、AAR97906.1、BAA32227.1、BAB68395.1、BAC02895.1、AAW51451.1、AAF82188.1、XP_544189.1、NP_990568.1、BAC80211.1、AAW82620.1、AAF99597.1、NP_571062.1、CAC44179.1、AAB97467.1、AAT99303.1、AAD28038.1、AAH52168.1、NP_001004122.1、CAA72733.1、NP_032133.2、XP_394252.1、XP_224733.2、JH0801、AAP97721.1、NP_989669.1、S43296、P43029、A55452、AH32495.1、XP_542974.1、NP_032135.1、AAK30842.1、AAK27794.1、BAC30847.1、EAA12064.2、AAP97720.1、XP_525704.1、AAT07301.1、BAD07014.1、CAF94356.1、AAR27581.1、AAG13400.1、AAC60127.1、CAF92055.1、XP_540103.1、AAO20895.1、CAF97447.1、AAS01764.1、BAD08319.1、CAA10268.1、NP_998140.1、AAR03824.1、AAS48405.1、AAS48403.1、AAK53545.1、AAK84666.1、XP_395420.1、AAK56941.1、AAC47555.1、AAR88255.1、EAL33036.1、AAW47740.1、AAW29442.1、NP_722813.1、AAR08901.1、AAO15420.2、CAC59700.1、AAL26886.1、AAK71708.1、AAK71707.1、CAC51427.2、AAK67984.1、AAK67983.1、AAK28706.1、P07713、P91706、P91699、CAG02450.1、AAC47552.1、NP_005802.1、XP_343149.1、AW34055.1、XP_538221.1、AAR27580.1、XP_125935.3、AAF21633.1、AAF21630.1、AAD05267.1、Q9Z1W4、NP_031585.2、NP_571094.1、CAD43439.1、CAF99217.1、CAB63584.1、NP_722840.1、CAE46407.1、
【0055】
XP_417667.1、BAC53989.1、BAB19659.1、AAM46922.1、AAA81169.1、AAK28707.1、AAL05943.1、AAB17573.1、CAH25443.1、CAG10269.1、BAD16731.1、EAA00276.2、AAT07320.1、AAT07300.1、AAN15037.1、CAH25442.1、AAK08152.2、2009388A、AAR12161.1、CAG01961.1、CAB63656.1、CAD67714.1、CAF94162.1、NP_477340.1、EAL24792.1、NP_001009428.1、AAB86686.1、AAT40572.1、AAT40571.1、AAT40569.1、NP_033886.1、AAB49985.1、AAG39266.1、Q26974、AAC77461.1、AAC47262.1、BAC05509.1、NP_055297.1、XP_546146.1、XP_525772.1、NP_060525.2、AAH33585.1、AAH69080.1、CAG12751.1、AAH74757.2、NP_034964.1、NP_038639.1、O42221、AAF02773.1、NP_062024.1、AAR18244.1、AAR14343.1、XP_228285.2、AAT40573.1、AAT94456.1、AAL35278.1、AAL35277.1、AAL17640.1、AAC08035.1、AAB86692.1、CAB40844.1、BAC38637.1、BAB16046.1、AAN63522.1、NP_571041.1、AAB04986.2、AAC26791.1、AAB95254.1、BAA11835.1、AAR18246.1、XP_538528.1、BAA31853.1、AAK18000.1、XP_420540.1、AAL35276.1、AAQ98602.1、CAE71944.1、AAW50585.1、AAV63982.1、AAW29941.1、AAN87890.1、AAT40568.1、CAD57730.1、AAB81508.1、AAS00534.1、AAC59736.1、BAB79498.1、AAA97392.1、AAP85526.1、NP_999600.2、NP_878293.1、BAC82629.1、CAC60268.1、CAG04919.1、AAN10123.1、CAA07707.1、AAK20912.1、AAR88254.1、CAC34629.1、AAL35275.1、AAD46997.1、AAN03842.1、NP_571951.2、CAC50881.1、AAL99367.1、AAL49502.1、AAB71839.1、AAB65415.1、NP_624359.1、NP_990153.1、AAF78069.1、AAK49790.1、NP_919367.2、NP_001192.1、XP_544948.1、AAQ18013.1、AAV38739.1、NP_851298.1、CAA67685.1、AAT67171.1、AAT37502.1、AAD27804.1、AAN76665.1、BAC11909.1、XP_421648.1、CAB63704.1、NP_037306.1、A55706、AAF02780.1、CAG09623.1、NP_067589.1、NP_035707.1、AAV30547.1、AAP49817.1、BAC77407.1、AAL87199.1、CAG07172.1、B36193、CAA33024.1、NP_001009400.1、AAP36538.1、XP_512687.1、XP_510080.1、AAH05513.1、1KTZ、AAH14690.1、AAA31526.1。
【0056】
「FGFファミリー」とは、公知のFGFファミリーメンバーの構造的かつ機能的と特徴を有するタンパク質を意味する。タンパク質のFGFファミリーは、構造的かつ機能的態様の双方を十分に特徴づけられる。タンパク質のFGFファミリーは、特定のFGFシリーズのタンパク質(FGF1およびFGF2)、K−FGF(カポジ肉腫に見られる)、およびKGFタンパク質など、少なくとも20の異なるメンバー(変異体および相同体を含まず)を含む。今日まで同定されているこのファミリーのメンバーは、30〜70%アミノ酸相同性を示す。
【0057】
該ファミリーのメンバーとしては、限定はしないが、以下のGenBank登録番号により同定されているものが挙げられる:P21781、P79150、P48808、Q9N198、P36363、Q02195、P70492、O15520、O35565、Q9ESS2、Q9HCT0、P36364、P54130、P31371、O43320、Q91875、Q9NP95、O54769、P48801、P36386、P05524、P11487、P48802、Q92915、P12034、P48807、P15656、P70379、P48806、Q8R5L7、P48805、P70377、P48804、Q92913、P61329、Q11184、P10767、Q92914、P21658、P70378、P08620、P61148、Q6I6M7、P48800、P34004、P15655、P13109、P09038、P48803、Q6PBT8、P05230、P03969、Q7SIF8、P20003、P48798、P12226、Q6GLR6、P20002、P03968、Q7M303、P19596、Q60487_3、Q6SJP8、P48799、O76093、O89101、O88182、P11403、O60258、P63075、P37237、Q9N1S8、P55075、Q90722、Q805B2、O35622、O95750、Q9JJN1、Q9NSA1、Q9GZV9、P41444、O10284、Q9EPC2、Q8VI82、O62682、Q9JYA0、Q9JT82、P01030_3、NP_002000.1、AAA67335.1、AAX19003.1、NP_001003237.1、NP_001009235.1、NP_032034.1、S26049、AAF26734.1、BAC39707.1、NP_071518.1、AAL16059.1、AAG31597.1、BAD84165.1、AAH88532.1、AAR87872.1、B46289、C46289、NP_001007762.1、CAB90393.1、D46289、NP_004456.1、XP_526931.1、NP_037083.1、BAB60779.1、AAM46926.1、CAG46489.1、NP_032028.1、BAD74123.1、AAL05875.1、AAK59700.1、NP_001009230.1、AAR37413.1、NP_990027.1、CAB76368.1、CAD29182.1、AAC78789.1、CAG08586.1、NP_878290.1、AAL16959.1、NP_570107.1、NP_075793.1、AAH10956.1、BAC57976.1、AAQ93357.1、AAC25096.1、AAL16963.1、AAO25617.1、AAG29501.1、NP_989730.1、NP_998966.1、CAC17692.1、NP_038546.1、NP_037084.1、NP_003859.1、XP_420304.1、NP_068639.1、BAB71729.1、AAT85804.1、NP_085117.1、CAF99081.1、NP_076451.1、NP_085113.1、BAC34892.1、CAF91044.1、XP_426335.1、CAA87635.1、CAG13262.1、CAA80987.1、AAH81367.1、CAG01370.1、NP_032033.1、NP_570830.1、NP_571366.1、NP_005238.1、AAC06148.1、BAC22069.1、XP_529049.1、AAH76721.1、NP_001001743.1、AAF31398.1、AAO33291.1、AAL16957.1、CAA44480.1、NP_991265.1、AAN16025.1、AAB18918.1、CAI15768.1、NP_034330.2、NP_990108.1、NP_445880.1、AAF31392.1、AAB71606.1、P70379、XP_542656.1、NP_071559.2、NP_997550.1、CAA44479.1、AAL83904.1、NP_001012382.1、NP_001009561.1、AAW69551.1、AAN04097.1、TVHUF5、NP_004455.1、P12034、NP_378668.1、NP_004105.1、AAH85439.1、CAI43189.1、CAI42700.1、CAI42699.1、BAD72887.1、CAG09626.1、NP_001009563.1、XP_534534.1、XP_524019.1、NP_001012380.1、NP_071547.1、NP_034333.1、NP_990219.1、AAF31390.1、XP_549094.1、CAA76422.1、CAG07674.1、NP_004104.3、XP_526425.1、XP_535845.1、XP_521287.1、NP_570827.1、CAH91802.1、AAH22524.1、P48804、AAB71607.1、AAV90630.1、CAF98890.1、AAB53825.2、CAH93046.1、CAG01557.1、H88481、JG0184、AAB18786.3、CAA94240.1、NP_004103.1、XP_511297.1、CAD19830.1、AAC98812.1、BAB88673.1、NP_066276.2、XP_543862.1、CAA45054.1、CAI51960.1、XP_546591.1、XP_485825.1、NP_570829.1、CAG07288.1、CAA35925.1、CAA94239.1、BAC39686.1、BAB63249.1、AAA62261.1、2020426A、NP_571983.1、NP_571710.1、CAG04681.1、CAG09818.1、CAF99854.1、AAL16961.1、CAF99073.1、CAB37648.2、AAP32155.1、1BFG、1IIL、1FQ9、1BLD、1BFC、1BAS、AAH37601.1、BAD24666.1、NP_957054.1、A60721、CAG11711.1、1K5V、NP_001998.1、1JY0、BAD69615.1、CAG00679.1、AAH32697.1、CAI29610.1、BAC22072.1、AAB29057.2、1JQZ、1605206A、CAI43097.1、CAE72484.1、1IJT、A48834、NP_001001398.1、NP_990764.1、AAH74391.1、1P63、CAF94666.1、1JTC、AAA52534.1、A32398、P09038、AAQ73204.1、AAV74297.1、NP_001997.4、AAV70487.1、AAA52532.1、1JT4、1JT3、1BFF、2BFH、NP_062178.1、1E0O、XP_526572.1、NP_032032.1、1HKN、1DZD、1DZC、1EVT、2AXM、XP_544946.1、AAL82819.1、Q7SIF8、1JT5、P48803、CAA42869.1、1PZZ、1M16、S00185、P48798、NP_776481.1、NP_001009769.1、AAV67380.1、XP_533298.1、A40117、1Q03、GKBOB、AAC35912.1、CAA78854.1、JC4268、S31622、BAB40835.1、AAA72209.1、BAA89483.1、AAA57275.1、1JT7、CAA46341.1、AAH74324.1、1Q04、BAC38631.1、1NZK、CAG02426.1、1K5U、1DJS、NP_776480.1、NP_034332.1、BAC22070.1、CAG06239.1、1AFC、BAC22066.1、1201195A、CAA43863.1、Q7M303、NP_999973.1、XP_522091.1、NP_990511.1、CAG02165.1、AAK52308.1、BAC22067.1、Q60487_3、XP_426414.1、XP_540801.1、1BAR、AAV38378.1、NP_032031.1、NP_062072.1、P48799、NP_990045.1、AAK37962.1、CAG04671.1、BAA13958.1、XP_544322.1、NP_446261.1、AAQ89228.1、NP_003858.1、XP_522325.1、XP_528080.1、NP_062071.1、BAC38656.1、AAF75524.1、AAO38854.1、BAD74124.1、XP_396434.1、BAD72875.1、AAP22372.1、CAF90784.1、AAC60303.1、AAF73225.1、CAF90913.1、AAP92385.1、BAB68397.1、NP_034335.1、AAF73226.1、AAH86718.1、CAA71365.1、AAO15593.1、AAG45674.1、AAB82614.1、AAA93298.1、AAM22684.1、Q90722、CAF91385.1、
【0058】
NP_149354.1、NP_579820.1、AAB34255.1、AAM55238.1、AAH48734.1、AAH69106.1、AAN73036.1、BAC02894.1、AAH82344.1、CAB64349.1、AAK52310.1、AAK52309.1、AAA48616.1、AAL16958.1、XP_543982.1、AAO25618.1、CAE11791.1、CAF95430.1、AAD13853.1、EAL29203.1、NP_990005.1、XP_543258.1、XP_547883.1、XP_527117.1、NP_878276.1、BAC03477.1、CAC86028.1、NP_001012379.1、NP_732452.1、NP_732453.1、AAO41473.1、AAC47427.1、NP_001012246.1、XP_522624.1、AAQ89954.1、AAH66859.1、NP_032029.1、YP_164239.1、XP_549294.1、1PWA、BAD06584.1、AAF70374.1、NP_570109.1、AAQ88669.1、AAP36636.1、YP_195014.1、CAG06656.1、NP_570108.1、BAA85130.1、AAQ89444.1、XP_524333.1、NP_064397.1、AAH18404.1、NP_061986.1、BAA85129.1、NP_001009564.2、BAD69717.1、BAC22071.1、AAN28104.1、AAQ88689.1、AAF65566.1、AAB71608.1、XP_540802.1、CAI25614.1、AAC59026.1、AAD15898.1、AAA85394.1、CAG06655.1、CAA41788.1、AAA66662.1、XP_541510.1、CAG01371.1、BAD02829.1、BAC22068.1、XP_425663.1、BAC55965.1、NP_073148.1、XP_421720.1、BAD60785.1、AAC63708.1、O62682、XP_522092.1、NP_570110.1、XP_392106.1、CAG02425.1、AAV97593.1、BAB68346.1、AAL16962.1、YP_164240.1、YP_195015.1、NP_848339.1、CAF99321.1、CAA71967.1、A32484、CAA28029.1、AAL01804.1、AAK85589.1、AAM93422.1、CAA05888.1、AAO27576.1、AAO27575.1、CAH93705.1、AAU00991.1、AAL37368.1、EAL46196.1、NP_701691.1。
【0059】
用語の「テラトーマ("teratoma")」とは、3つの発生学的胚細胞層:外胚葉、中胚葉、および内胚葉の細胞から生じる腫瘍を称す。本明細書に用いられる用語の「発生学的胚細胞層("embryologic germ cell layers")」とは、特殊化され、それらの最終発生形態においてある一定の特徴的形質を発現する胚における細胞層(例えば、外胚葉、中胚葉、および内胚葉)を称す。用語の「内胚葉("endoderm")」とは、腸管内へと発達する内胚葉胚層の細胞を称す。用語の「中胚葉("mesoderm")」とは、血管へと発達する中胚葉胚層の細胞を称す。用語の「外胚葉("ectoderm")」とは、中枢神経および末梢神経内、皮膚の表皮へと発達する外胚葉胚層の細胞を称す。
【0060】
用語の「幹細胞("stem cell")」、「非特殊化細胞("unspecialized cell")」、「非委任細胞("uncommitted cell")」、および「未分化細胞("undifferentiated cell")」とは、細胞自体を再生し、身体の組織および臓器を作り上げる特殊細胞型を生じさせるユニークな能力を有する細胞を称す。幹細胞は、組織特異的構造および組織特異的機能(例えば、心筋細胞、神経細胞など)がない。幹細胞は、胚(例えば、胚幹細胞)、胎児組織、および成人組織に由来し得る。用語の「特殊細胞("specialized")」、「委任細胞("committed")」、および「分化細胞("differentiated")」とは、組織特異的構造および/または組織特異的機能(例えば、心筋細胞、神経細胞など)を有する細胞を称す。用語の「分化」とは、細胞に関する場合、非特殊化細胞が、特殊細胞(例えば、心臓、肝臓、または筋肉細胞)の形質を獲得する過程を称す。
【0061】
用語の「始原細胞("progenitor cell")」とは、胎児組織および/または成人組織における細胞を称し、部分的に特殊化され、分裂でき、分化細胞を生じさせる。
【0062】
用語の「胚幹細胞("embryonic stem cell")」、「ES細胞("ES cell")」、および「多分化能細胞("pluripotent cell")」とは、いずれかの特殊細胞型となる可能性を有する胚の内部細胞塊に由来する未分化細胞を称す。用語の「胚生殖細胞("embryonic germ cell")」とは、例えば、5週から10週の胎児の性腺稜線の始原性細胞などの胎児組織に由来する細胞を称す。
【0063】
用語の「哺乳動物の胚幹細胞("mammalian embryonic stem cell")」とは、哺乳動物に由来するES細胞を称す。それは、幹細胞を供給できる哺乳動物を限定することを意味しておらず、したがって、ヒト(hES)、サル、大型類人猿、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどを含むことができる。
【0064】
用語の「成人幹細胞("adult stem cell")」、「多分化能幹細胞("multipotent stem cell")」、および「体幹細胞("somatic stem cell")」とは、分化組織に見られ、増殖し、分化して起源となる組織の特殊細胞型を生成できる未分化細胞を称す。
【0065】
用語の「クローン性由来幹細胞("clonality derived stem cell")」とは、単一幹細胞の分裂によって発生し、その幹細胞と遺伝的に同一の幹細胞を称す。
【0066】
用語の「分化全能性("totipotent")」、「多能性("pluripotent")」、および「多分化能性("multipotent")」とは、異なる発生段階の細胞を称す。用語の「分化全能性幹細胞("totipotent stem cell")」とは、受精卵の分裂後に形成でき、胚盤胞を形成でき、完全個体へと発達できる細胞(例えば、マウスOct−4+細胞)を称す。用語の「多能性細胞("pluripotent cell")」とは、任意の細胞型に発達する可能性を有する細胞を称す。用語の「多分化能幹細胞("multipotent stem cell")」とは、組織および臓器における古くなった細胞(例えば、血液細胞など)を置き換えるために身体によって形成される少なくとも2種以上の分化派生細胞へと分化する能力を有する成熟組織に見られる細胞を称す。
【0067】
用語の「可塑性("plasticity")」とは、別の組織の分化および特殊細胞型を発生させる、一成人組織からの幹細胞の能力を称す。
【0068】
用語の「フィーダー層("feeder layer")」とは、所望の効果、例えば、多能性幹細胞を維持するために共培養に使用される細胞を称す。
【0069】
用語の「馴化培地("conditioned medium")」とは、生細胞と接触させた培養培地を称し、後続の細胞バッチと接触させて入れられた場合、後続の細胞の増殖または分化を増強し得る一連の細胞由来分子(例えば、成長物質など)を含有する。用語の「非馴化培地("non-conditioned medium")」とは、細胞と接触させていない培養培地を称す。記載のない場合、培地は、非馴化培地を意味していることを解すべきである。
【0070】
用語の「線維芽細胞フィーダー("fibroblast feeder")」とは、線維芽細胞を含んでなるフィーダー層を称す。用語の「線維芽細胞("fibroblast")」とは、コラーゲン線維などの線維を形成でき、結合組織に存在する細胞質過程を有する星状(星型)または紡錘状細胞を称す。用語の「マウス線維芽細胞フィーダー」、および「mEF」とは、マウス線維芽細胞を含んでなるフィーダー層を称し、一方、用語の「マウス線維芽細胞フィーダーの馴化培地」とは、マウス線維芽細胞に曝露させた培養培地を称す。
【0071】
用語の「ラミニン("laminin")」および「LAM」とは、シートへと組み立てて細胞結合物質として作用させ、また成長因子として作用する(例えば、分化誘導など)リガンドとして作用させることのできる多くの機能性ドメインを含有する細胞外マトリックスタンパク質を称す。
【0072】
用語「POU」は、3種の哺乳動物転写因子、脳下垂体特異的Pit−1、オクタマー結合タンパク質Oct−1とOct−2、および線虫からの神経性Unc−86の名称に由来する頭字語である。用語の「POU転写因子("POU transcription factor")」とは、プロモーターまたはエンハンサー領域内で、オクタマーモチーフと呼ばれるオクタマー配列を含有するシス作用性因子を有する遺伝子の転写を活性化できるDNA結合タンパク質である多くのPOU遺伝子ファミリーを称す。
【0073】
用語の「Oct−4POU転写因子("Oct-4 POU transcription factor")」、「オクタマー結合転写因子3("octamer-binding transcription factor 3")」、「Oct−3」、「OCT3」、「オクタマー結合転写因子4("Octamer-binding transcription factor 4"(」、「Oct−4」、「OCT4」、「POU5F1」、「OTF3」、「クラスV POU因子Oct−3("class V POU factor Oct-3")」、および「POUドメイン、クラス5、転写因子1("POU domain, class 5, transcription factor 1")」とは、未分化幹細胞におけるPOU転写因子を称す。
【0074】
用語の「nanog」とは、未分化幹細胞に見られるホメオボックス転写因子を称す。
【0075】
用語の「腫瘍拒絶抗原」、「TRA」、および「ヒト胚性癌腫マーカー抗原("human embryonal carcinoma marker antigen")」とは、ケラチンサルフェート結合抗原を称す。これらは、TRA−1−60、TRA−1−81、TRA−1−85、TRA−2−54、TRA−2−49に関するモノクローナル抗体により検出されたタンパク質を含む。
【0076】
用語の「形成期特異的胚抗原("stage-specific embryonic antigens")」、「SSEA−1」、「SSEA−2」、「SSEA−3」、および「SSEA−4」とは、分化の際に細胞表面の発現が変化する糖質抗原を称す。例えば、マウスES細胞において、未分化マウス多能性細胞は、SSEA−1を発現するが、分化はSSEA−1発現の喪失を特徴とし、幾つかの場合においてSSEA−3およびSSEA−4の出現により達成できる。例えば、ヒトにおいて、未分化ヒトEC、ESおよびEG細胞は、抗原SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60およびTRA−1−81を発現するが、一方、分化ヒトECおよびES細胞は、SSEA−1発現の増加およびSSEA−3およびSSEA−4のダウンレギュレーションを特徴とする。
【0077】
用語の「アクチビンA("Activin A")」、「ACTA」、「ACTa」、および「ACT」とは、「インヒビンベータ−A鎖("inhibin beta-A chain")」または「アクチビンベータ−A鎖("activin beta-A chain")」のホモ二量体を称す。用語の「アクチビンB」とは、「インヒビンベータ−B鎖」のホモ二量体または「アクチビンベータ−B鎖」のホモ二量体を称す。用語の「アクチビンAB」とは、「インヒビンベータ−A鎖およびベータ−B鎖」の二量体を称す。これらのタンパク質は全て、タンパク質のTGFβファミリーのメンバーである、タンパク質のアクチビンタンパク質群のメンバーである。用語の「インヒビン」および「インヒビン類」とは、視床下部および脳下垂体ホルモン分泌、生殖腺ホルモン分泌、幹細胞の発生と成熟、赤芽球分化、インスリン分泌、神経細胞生存、胚軸発生、骨成長などの多様な生物学的機能を阻害するTGFβファミリーのメンバーを称し、それらの機能がサブユニット組成に関連するアクチビンの機能と対立し得る。用語のインヒビンは、インヒビンAとインヒビンBとを含む。
【0078】
用語の「ケラチノサイト成長因子("keratinocyte growth factor")」、「KGF」、「線維芽細胞成長因子−7("Fibroblast growth factor-7")」、「FGF−7」、「HBGF−7」、および「ヘパリン結合成長因子−7("heparin-binding growth factor-7")」とは、ケラチノサイトに対して活性な線維芽細胞成長因子ファミリーの成長因子を称す。用語の「ケラチノサイト」とは、ケラチンを作る細胞を称す。用語の「ケラチン」とは、皮膚、毛髪、爪、および動物の角の上層細胞などの特殊上皮細胞に見られる大型の分子を称す。
【0079】
用語の「白血病抑制因子("leukemia inhibitory factor")」、「LIF」、「白血病抑制因子前駆体("leukemia inhibitory factor precursor")」、「分化刺激因子("differentiation-stimulating factor")」、「D因子」、「黒色腫由来LPL阻害剤("melanoma-derived LPL inhibitor")」、「MLPLI」、「HILDA」、「DA細胞に関するヒトインターロイキン("human interleukin for DA cells)"」、「DA細胞に関する骨髄性成長因子ヒトインターロイキン("myeloid growth factor human interleukin for DA cells")」」とは、幹細胞の分化を阻害し、白血病細胞における終末分化を誘導し、正常な細胞および骨髄性白血病細胞における造血分化を誘導する細胞メッセンジャータンパク質を称す。
【0080】
用語の「胚("embryo")」とは、受精時から、著しい分化が生じるまで、例えば、ヒトでは、胎児として認められるようになる妊娠8週末までの発生中の生物を称す。
【0081】
用語の「STAT」および「シグナルトランスデューサーおよび転写の活性化因子("Signal Transducers and Activators of Transcription")」とは、遺伝子(例えば、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5、STAT6など)を調節するタンパク質のファミリー中の分子を称す。用語の「STAT3」とは、サイクリンD1、c−Myc、bcl−x1などの発現の活性化に関与し、細胞分裂周期の進行促進、細胞形質転換に関与し、アポトーシス防止に関与している癌遺伝子を称す。
【0082】
本明細書に用いられる用語の「タンパク質キナーゼ("protein kinase")」とは、ヌクレオシド三リン酸からタンパク質中のアミノ酸へのリン酸基の付加を触媒するタンパク質を称す。キナーゼ類は、公知の最も大きな酵素のスーパーファミリーを含んでなり、それらの標的タンパク質は種々多様である。キナーゼ類は、チロシン残基をリン酸化する(例えば、ヤヌス(Janus)ファミリーチロシンキナーゼ(JAK)類)タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)類、およびセリンおよび/またはトレオニン残基などをリン酸化するタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ(STK)類として分類できる。
【0083】
本明細書に用いられる用語の「タンパク質ホスファターゼ("protein phosphatase")」とは、タンパク質からホスフェート基を除去するタンパク質を称す。タンパク質ホスファターゼ類は、一般に2つの群、受容体タイプタンパク質と非受容体タイプタンパク質(例えば、細胞内)とに分けられる。さらなる群としては、二重特異性ホスファターゼ類が挙げられる。タンパク質ホスファターゼ類の例としては、限定はしないが、ヒトタンパク質ホスファターゼ(PROPHO)、FIN13、cdc25チロシンホスファターゼ、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)20、PTP 1D、PTP−D1、PTPラムダ、PTP−S31(例えば、特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;および特許文献9を参照されたい;それらの全ては、参照として本明細書に組み込まれている)が挙げられる。タンパク質ホスファターゼに対する標的例は、STAT類である。
【0084】
本明細書に用いられる「対象("subject")」は、限定はしないが、幹細胞または幹細胞を用いて産生された物質を導入できる動物などの生物である。本明細書に用いられる用語の「動物("animal")」には、「非ヒト動物("non-human animals")」との記載によって別に特記しない限りヒトが含まれる。
代表的な実施形態の記載
【0085】
本発明は、幹細胞における未分化状態および/または多能性の維持に関する。具体的な実施形態において、本発明は、線維芽細胞のフィーダー層または白血病阻害因子を使用せずに、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、ケラチノサイト成長因子などのFGFファミリーのメンバー、ニコチンアミド(NIC)、またはこれらのうちの2つまたは全ての組合わせに富んだ培養培地を用いて、ヒト胚幹細胞系などの未分化幹細胞の維持に関する。
【0086】
第1の態様において、本発明は、未分化幹細胞の維持方法を提供し、該方法は、所望の結果を得るために十分な時間量、該細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、TGFβファミリーのタンパク質の1種以上のタンパク質に幹細胞を曝露させることを含んでなる。幾つかの実施形態において、TGFβファミリーのタンパク質のメンバーは、アクチビンAなどのアクチビンである。幾つかの実施形態において、FGFファミリーのメンバーはKGFである。複数の実施形態において、該方法はまた、未分化幹細胞の増殖方法である。該方法は、最初の曝露で用いられた量と同じか、または異なる量でさらなる(すなわち、新たな)TGFβファミリーのタンパク質のメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICとの曝露ステップを反復させることを含むことができる。該方法は、インビトロ法であることが好ましい。
【0087】
上記に検討されたように、幹細胞は、単一細胞あっても細胞集団であってもよい。さらに、該細胞は、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む任意の種に由来し得る。同様に、幹細胞は、天然のものでも組換え体でもよい。一定の実施形態において、幹細胞を準備するために新鮮な生検材料が使用される。他の実施形態において、培養された幹細胞が使用される。後者に関して、本発明が、培養材料の特定の培養法によって限定されることは意図されていない。一実施形態において、該方法に用いられる幹細胞は、無血清の培養培地で培養される。一実施形態において、該方法に用いられる幹細胞は、補足されたDSR培地で培養される(実施例1に記載されるように)。
【0088】
ある一定の実施形態において、本発明は、対象細胞が哺乳動物細胞である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、対象細胞がヒト細胞である方法を提供する。種々の幹細胞型は、限定はしないが、胚細胞および胎児幹細胞よりなる群から選択される幹細胞など、本発明の組成物と方法によって培養できる。本発明は、幹細胞の供給源によって限定されることも意図されていない。したがって、複数の実施形態において、幹細胞は、胚組織に由来する。他の実施形態において、幹細胞は、胎児組織に由来する。一実施形態において、幹細胞は、血液に由来する。
【0089】
上記に検討されたように、該方法は、幹細胞の供給源である種を限定しない。種々の種は、限定はしないが、ヒト、大型猿人、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、キンギョ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュなど、幹細胞の供給源として使用できる。さらに、本発明は、本明細書に開示された種々の物質に曝露される場合、細胞の分化状態に限定されない。したがって、複数の実施形態において、本発明は、対象細胞が未分化である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が未分化である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞がインビボ多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞がインビトロ多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が対象細胞と同じ核型を有する方法を提供する。
【0090】
本発明の方法によれば、曝露は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質を、幹細胞と接触させる任意の作用であり得る。したがって曝露は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質を、幹細胞が存在する培地に単に加えることができる。曝露はまた、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質の前駆体を、前記前駆体をアクチビンAなどの機能性タンパク質に変換できる細胞、タンパク質、または化学物質と共に培地に加えることができる。曝露は、手動で(例えば、人がアクチビンAを幹細胞の培地に加えることにより)または自動的に(例えば、器械により)実施できる。
【0091】
使用され、細胞に曝露されるTGFβファミリーのタンパク質の量は、細胞型、所望の結果、細胞数、細胞が増殖する培地の容量、および結果を得るための所望の速度に依って変わり得る。加える量の変化は、これらおよび他のパラメータに基づいて予想できるが、本発明は、約5ng/mlから約500ng/ml(培地中の最終濃度)のTGFβファミリーメンバーのタンパク質の使用を考慮している。したがって、複数の実施形態において、該方法は、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、12ng/ml、14ng/ml、17ng/ml、20ng/ml、24ng/ml、26ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、85ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、140ng/ml、170ng/ml、200ng/ml、240ng/ml、290ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、または500ng/ml、あるいは5ng/mlと500ng/mlとの間の任意の他の特定量の最終濃度を達成するのに十分な量で少なくとも1種のTGFβファミリーメンバーのタンパク質を加えることを含んでなる。複数の実施形態において、TGFβファミリーメンバーのタンパク質はアクチビンAである。
【0092】
あるいは、TGFβファミリーメンバーのタンパク質は、約0.01nMから約100nMの濃度で培地中に存在できる。したがって、種々の実施形態において、培地は、正確にあるいは凡そ0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、8nM、10nM、16nM、25nM、32nM、45nM、64nM、75nM、85nM、または100nM(または0.01nMと100nMとの間の任意の他の特定量)のアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる。
【0093】
細胞が未分化状態で維持される時間量は、最終的な所望の結果に依って変わる。時間量は、1時間以下から、数日、数週、数年まで変わり得る。例えば、時間量は、約10週以上、約15週以上、約20週以上、約25週以上、約30週以上であり得る。該方法により、細胞に曝露されたTGFβファミリーメンバーのタンパク質の量、曝露時間を調整することによって幹細胞の維持および増殖を実務者が管理でき、曝露が繰り返される。最初の曝露に続く曝露が、少なくとも一部、追加のTGFβファミリーのメンンバーにより実施されることが考慮されている。本発明によれば、先に細胞に曝露させた同じTGFβファミリーメンバーのみを含んでなるTGFβファミリーメンバーを用いた後続の曝露により、元の曝露の単なる拡大が考慮されている。時間量は、培地中に増殖させた細胞の継代数において都合よく発現する。一般に該方法により、1回未満の継代から30回以上の継代の間細胞の維持または増殖が可能になる。したがって、特定の実施形態において、該方法は、1回の継代、2回の継代、3回の継代、4回の継代、5回の継代、6回の継代、7回の継代、8回の継代、9回の継代、10回の継代、11回の継代、12回の継代、13回の継代、14回の継代、15回の継代、16回の継代、17回の継代、18回の継代、19回の継代、20回の継代、21回の継代、22回の継代、23回の継代、24回の継代、25回の継代、26回の継代、27回の継代、28回の継代、29回の継代、30回の継代、またはそれ以上の継代の間、細胞の維持または増殖が可能になる。さらに本発明によれば、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバーへの細胞の曝露は、1/10継代、1/5継代、1/3継代、1/2継代、2/3継代、および4/5継代などの継代の分数の間、細胞の維持または増殖を可能にする。実際には、該方法により、実務者が数日間、数週間、数ヵ月間、数年間幹細胞を維持および/または増殖させることができる。
【0094】
将来の使用のために細胞培養細胞を分割し、保存する標準的な実施を考慮して、本発明は、当該方法に従って処理された細胞を保存することを考慮している。保存は、長期保存のために細胞の凍結を含むものなど、任意の公知の方法により達成できる。
【0095】
細胞の維持および/または増殖を介して得られる所望の結果は、限定はしないが、特定の物質の生産、培養プレート上の培養の集密性、新たな培養培地への移行のために(すなわち、継代のために)十分な細胞数の生産、または対象への移植用に十分な細胞数の生産など、医学的または科学的に関連する結果であり得る。限定はしないが、癌治療後の血液細胞の再増殖、アルツハイマー病およびパーキンソン病などのCNS変性疾患の治療、および糖尿病の治療など、幹細胞に関して多数かつ種々使用法が提案され、実施されている。提案され、実施されている使用法のいずれか、また全ては、本法による好適な所望の結果である。
【0096】
TGFβタンパク質は、天然または組換えで得ることができる。さらに、本発明の方法に関して本明細書に用いられるように、用語のアクチビンAには、下記および上記に定義されるとおり、アクチビンAの断片および誘導体を含む。用語のアクチビンAに包含されている1つの特定のヒトアクチビンAの配列は、配列番号:1に得られる。ヒトアクチビンAの他の非限定例は、配列番号:2〜16で得られ、一方、ヒトアクチビンAをコードする核酸の非限定例は、配列番号33〜34で得られる。
【0097】
該方法は、所望の結果を得るために十分な時間量、細胞の維持および/または増殖を可能にするのに十分な量で、KGFなどのFGFタンパク質ファミリーのメンバーに幹細胞を曝露させることを含み得る。KGFなどのFGFファミリーのメンバーの幹細胞の培地への付加は、これらの細胞の増殖を改善することが判明している。特にFGFファミリーメンバーメンバーの追加は、典型的に幹細胞培養に見られる増殖の減速および休止を防ぐ。実際、KGFなどのFGFファミリーのメンバーの幹細胞培養への添加は、必ずしも10回以上の継代に限定されないが、複数継代の間、培養の維持および増殖を可能にすることが判明している。この効果は、またアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質を含有する培養物で特に明白である。
【0098】
FGFファミリーメンバーのタンパク質が、TGFβファミリーメンバーのタンパク質と共に細胞に曝露される複数の実施形態において、FGFファミリーメンバーのタンパク質は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質への曝露前、曝露と同時に、または曝露後に細胞に曝露できる。
【0099】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質と同じ細胞に曝露されるため、細胞に関する上記の開示は、FGFファミリーメンバーのタンパク質に細胞を曝露することを含んでなる方法にも等しく適用可能であることが明らかである。同様に、望まれ得る結果は、上記に開示されたものと重複し得、当業者により望まれであろう。
【0100】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、上記の検討によれば、所望の結果を達成するのに十分な量において細胞に曝露できる。曝露は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質に関して上記に検討された作用のいずれかによって達成できる。したがって、時間量は、1回の継代、2回の継代、3回の継代、4回の継代、5回の継代、6回の継代、7回の継代、8回の継代、9回の継代、10回の継代、またはそれ以上であり得る。上記の検討によれば、時間量は、30回以上の任意の継代数または部分的な継代であり得る。さらに、1つ以上の継代の任意の部分は、所望の時間量であり得る。したがって、時間量は、1時間未満から1日以上または1週以上の範囲であり得る。時間量は、約5週、約10週、約15週、約20週、約25週、約30週、またはそれ以上であり得、これら代表的な数字の間の任意の具体的な週数を含む。
【0101】
種々の実施形態において、FGFファミリーのタンパク質は、0.5ng/mlから1mg/mlの濃度で細胞を含んでなる培地に存在するような様式で細胞に曝露される。したがって、特定の実施形態において、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質は、正確にまたは凡そ1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、5ng/ml、7.5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、75ng/ml、85ng/ml、100ng/ml、125ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、350ng/ml、または500ng/ml(または0.50ng/mlと1mg/mlとの間の任意の量)の量で存在する。
【0102】
TGFβファミリーメンバーのタンパク質に細胞を曝露させる場合のように、細胞のFGFファミリーメンバーのタンパク質への曝露は、曝露ステップを反復させることを含んでなり得る。FGFファミリーメンバーのタンパク質の細胞への曝露の反復は、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質の細胞への曝露に関して上記に検討された同じパラメータ下で考慮されている。
【0103】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、天然または組替え体から得ることができる。さらに、本発明の方法の特定の実施形態に関して本明細書に用いられるように、用語のKGFは、下記および上記に定義されるとおり、KGFの断片および誘導体ならびにKGFの種として考慮されている分子を含む。用語のKGFにより包含されている1つの特定のヒトKGFの配列は、配列番号:17に得られる。KGFの他の非限定例は、配列番号:18〜24に得られ、一方、KGFをコードする核酸の非限定例は、配列番号25〜31に得られる。
【0104】
本発明の方法は、同様に、複数継代を介して培養における細胞の増殖および維持を可能にするのに十分な量におけるニコチンアミド(NIC)に対して幹細胞の曝露を含むことができる。NIC中の幹細胞の培養は、期間を延長して維持および増殖を可能にすることが判明している。したがって、本法の実施形態によれば、所望の結果は、少なくとも1回、5回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、またはそれ以上の継代(この範囲内の任意の他の継代整数、およびそれらの分数)を介する細胞の継代であり得る。
【0105】
NICに対する細胞の曝露は、TGFβファミリーのタンパク質および/またはFGFファミリーのタンパク質に関して上記に検討された作用および要件を用いて達成できる。同様に、該細胞の維持および増殖期間を延長することに加えて、NICは、TGFβファミリーメンバーのタンパク質に関して上記に検討されたものなど、当業者に明らかと思われる多くの理由のうちのいずれかにによって該細胞に曝露することができる。上記に掲げられた該細胞と特性により、反復曝露に関する結果および要件のとおりNICに対する該細胞の曝露を含んでなる実施形態に等しく適用できる。
【0106】
TGFβおよびFGFファミリーのメンバーでの場合のように、細胞に曝露させるNICの量は、所望の結果、細胞量、および他のパラメータに依って変わり得る。一般に、細胞を含有する培地に存在できるNICの量は、約0.5mMから約500mMまで変わり得る。したがって、特定の実施形態において、NICは、正確にまたは凡そ0.5mM、1mM、1.5mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、17mM、20mM、24mM、26mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、60mM、70mM、85mM、100mM、120mM、140mM、170mM、200mM、240mM、290mM、350mM、400mM、450mM、または500mMの濃度で培地中に存在する。
【0107】
上記に検討されたように、NICに対する細胞の曝露により、多能性状態または核型を変化させることなく増殖期間の延長が可能となる。さらに、ある一定の良く知られた表面マーカーは、NICに対する曝露延長後、細胞表面に残る。
【0108】
一般に、本発明の方法は、いずれのフィーダー細胞、馴化培地、または白血病抑制因子(LIF)の不在下で培養物中の幹細胞の増殖および維持を可能にする。複数の実施形態において、該方法は、多能性状態の細胞を維持する。種々の実施形態において、該方法は、未分化幹細胞の分化を阻止するか、または遅延させる方法である。複数の実施形態において、該方法は、未分化幹細胞の喪失を阻止するか、または遅延させる(すなわち、幹細胞のある特定の細胞型への拘束を遅延させる)方法である。
【0109】
上記の開示を考慮して、本発明は、哺乳動物の胚幹細胞(ES)細胞を維持し、および/または増殖する方法を提供することは明らかであって、該方法は:a)i)対象のEs細胞、およびii)アクチビンA、ケラチノサイト成長因子、およびニコチンアミドの1つ以上を提供すること;b)接触ES細胞を生産するために、ES細胞を、アクチビンA、ケラチノサイト成長因子、および/またはニコチンアミドと接触させることを含んでなる。他の中でもとりわけ、このような方法は、未分化幹細胞を維持する手段、細胞分裂による細胞増殖を促進する手段、および未分化細胞数を増加させるために増殖を促進する一方で、未分化状態における細胞を維持する手段を提供する。複数の実施形態において、本法は、該接触がマウスの線維芽細胞フィーダー細胞の不在下にある方法である。さらに他の実施形態において、本発明は、該接触がマウスの線維芽細胞フィーダー細胞による馴化培地の不在下にある方法である。さらなる実施形態において、本発明は、該接触が白血病抑制因子の不在下にある方法である。さらに、維持が達成される実施形態および細胞が、細胞の増殖を可能にするのに十分な時間、アクチビンA、KGF、および/またはNICと接触し続ける実施形態において、接触は、少なくとも部分的にマウス線維芽細胞のフィーダー細胞、マウス線維芽細胞のフィーダー細胞の馴化培地、および/または白血病抑制因子の不在下で実施される。本発明は、幹細胞が維持され、増殖される様式に限定されることを意図していない。
【0110】
特定の実施形態において、本発明は、哺乳動物の胚幹細胞(ES)細胞を維持し、および/または増殖する方法を提供し、該方法は:a)i)対象のEs細胞、およびii)配列番号:1に少なくとも90%の同一性を有する第1のポリペプチドおよび/または配列番号:17に少なくとも90%の同一性を有する第2のポリペプチドのうちの1つ以上を提供すること;b)接触ES細胞を生産するために、ES細胞を第1および第2のポリペプチドと接触させることを含んでなる。複数の実施形態において、本発明は、第1のポリペプチドの濃度が、接触ES細胞を未分化状態に維持する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、第2のポリペプチドの濃度が、接触ES細胞の増殖を維持する方法を提供する。
【0111】
本発明の方法により処理された幹細胞は、正常な核型およびこれらの未分化細胞に対するマーカーを典型的に示し、多能性を典型的に残すことに注意すべきである。
【0112】
本発明の第2の態様において、本発明は、未分化状態または多能性状態の幹細胞を維持および/または増殖するために使用できる組成物、または幹細胞を含んでなる組成物を提供する。一般に、該組成物は、所望の結果を得るために十分な時間量、未分化状態において幹細胞の少なくとも1つの培養の増殖および/または維持を可能にするのに十分な量および形態で、幹細胞および/またはアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNICを含んでなる。上記方法の検討によれば、所望の結果は、保存のための十分な細胞数を調製することを含む、医学的または科学的に関連する結果であり得る。したがって、本発明の態様による組成物は、本発明の方法を実施するのに有用なものである。複数の実施形態において、FGFファミリーメンバーのタンパク質は、基本的な線維芽細胞成長因子(bFGF)ではない。複数の実施形態において、該組成物は、幹細胞、TGFβファミリーメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれら2つ以上の組み合わせを含んでなる製薬組成物である。該組成物は、他の中でもとりわけ幹細胞療法に有用となり得る。
【0113】
TGFβファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のメンバーのタンパク質を含んでもよい。したがって、アクチビンAを含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のタンパク質を含め得る。上記に検討されたように、アクチビンAタンパク質の多数の例は、配列表において得られ、GenBankの登録番号により本明細書に記載されている。また、他のものも包含されている。同様に、未分化状態における幹細胞の維持および増殖を促進するために、配列表に提供されているか、または当業界に公知の配列を有するが、アクチビンAの能力に負の影響を及ぼさない翻訳後の修飾を有するものなどの誘導体は、本発明により包含されている。例えば、本明細書に提供されているか、またはアクチビンA配列として当業界に公知の1つ以上の配列を有するかなりのアミノ酸同一性を有する変異体が包含されている。配列番号:1などの本明細書に開示されている1つ以上の配列と80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を共有するタンパク質を含んでなる組成物は、本発明により包含されている。複数の実施形態において、本発明は、配列番号:1に対して少なくとも90%同一のポリペプチドを含んでなる組換えアクチビンAを含んでなる組成物を提供する。したがって、他の実施形態において、組換えアクチビンAのポリペプチドは、配列番号:1または3〜16のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)の同一性である。特定の実施形態において、本発明は、組換えヒトアクチビンAを含んでなる組成物を提供する。
【0114】
ある一定の実施形態において、該組成物は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバーをコードする核酸を含み得る。これらの実施形態において、該組成物はまた、アクチビンAを発現するために核酸の発現を可能にする他の物質を含んでなる。これらの実施形態において、核酸は、本明細書に開示されているものか、または当業者に公知のものである。核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1種以上のアクチビンAコード化核酸にハイブリダイズする核酸、または80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の同一性など、1種以上のアクチビンAコード化核酸により高い同一性を共有する核酸を含む。
【0115】
FGFファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のメンバーのタンパク質を含むことができる。したがって、KGFを含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のタンパク質を含むことができる。上記に検討されたように、KGFタンパク質の多数の例は、配列表に得られる。その上、限定されていないが、線維芽細胞因子(FGF)などの他のものも包含されている。同様に、未分化状態における幹細胞の維持および増殖を促進するために、上記に掲げた配列表に提供されているか、または当業界に公知の配列を有するが、FGFファミリーメンバーのタンパク質の能力に負の影響を及ぼさない翻訳後の修飾を有するものなどの誘導体は、本発明により包含されている。例えば、本明細書に提供されているか、またはKGF配列として当業界に公知の1つ以上の配列を有するかなりのアミノ酸同一性を有する変異体が包含されている。配列番号:17などの本明細書に開示されている1つ以上の配列と80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を共有するタンパク質を含んでなる組成物が、本発明により包含されている。
【0116】
ある一定の実施形態において、該組成物は、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質をコードする核酸を含むことができる。これらの実施形態において、核酸は、本明細書に開示されているものであるか、または当業者に公知のものである。核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1種以上のFGFファミリーコード化核酸にハイブリダイズする核酸、または80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の同一性など、1種以上のFGFファミリーコード化核酸により高い同一性を共有する核酸を含む。当業者により理解されるように、対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を生産することは有利であり得、該ヌクレオチド配列は、非天然コドンを有する。したがって、幾つかの実施形態において、特定の原核生物宿主または真核生物宿主により好ましいコドン(非特許文献1)は、例えば、発現率増加させるために、または天然配列から生産される転写物よりも長期半減期などの所望の性質を有する組換えRNA転写物を生産するために選択される。本発明は、供給源(例えば、細胞型、組織、動物など)、性質(例えば、細胞抽出物からの合成、組換え、精製など)、および/または対象のヌクレオチド配列および/または対象のタンパク質の配列に限定されない。
【0117】
複数の実施形態において、本発明は、TGFβファミリーのメンバーおよびFGFファミリーのメンバーを含んでなる組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、アクチビンA(ACTa)およびケラチノサイト成長因子(KGF)を含んでなる組成物を提供し、該組成物中のACTaの濃度は、未分化状態において胚幹細胞を維持し、該組成物中のKGFの濃度は、胚幹細胞の増殖を維持する。一実施形態において、本発明は、アクチビンAによる未分化状態の維持、およびケラチノサイト成長因子、NIC、または双方による増殖を増加させるための組成物に関する。
【0118】
複数の実施形態において、アクチビンA、KGF、または双方は組換え体である。
【0119】
一実施形態において、本発明は、配列番号:1に対して少なくとも90%の同一性を有する第1のポリペプチド、および配列番号:17に対して少なくとも90%の同一性を有する第2のポリペプチドを含んでなる組成物を提供し、該組成物中の第1のポリペプチドの濃度は、未分化状態において胚幹細胞を維持するのに十分であり、該組成物中の第2のポリペプチドの濃度は、胚幹細胞の増殖を維持するのに十分である。したがって、他の実施形態において、第1のポリペプチドは、配列番号:1および3〜16のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。同様に、他の実施形態において、第2のポリペプチドは、配列番号:17〜24のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。
【0120】
一実施形態において、アクチビンAおよび/またはKGFの変異体が存在し、各変異体の配列は独立して、開示された配列のうちの1つの配列と少なくとも95%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも70%の同一性、および/または少なくとも65%の同一性を有する。
【0121】
別の実施形態において、本発明は、組換えKGFを含んでなる組成物を提供し、組換えケラチノサイト成長因子は、配列番号:17に対し少なくとも90%同一性のポリペプチドを含んでなる。別の実施形態において、本発明は、ケラチノサイト成長因子が、配列番号:11〜14の1つ以上に由来する組成物を提供する。したがって、他の実施形態において、第2のポリペプチドは、配列番号:17〜24のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。
【0122】
本発明による組成物は、ニコチナミドを含むことができる。NICは、所望の長さの期間、生育能力を維持し、および/または増殖するために幹細胞の少なくとも1つの培養を可能にするのに十分な量で組成物に存在できる。
【0123】
TGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICは、独立して液体または固体(乾燥)形態などの任意の物理形態で提供できる。液体形態で提供された場合、追加の安定化剤を、保存に役立てるように含むことができる。乾燥形態は、乾燥時または再水和時の安定性に役立てるように添加できる、乾燥時に含ませる追加の物質を含むことができる。
【0124】
本発明の組成物は、一般にTGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICに加えて成分を含んでなる。追加の成分は、幹細胞の増殖または幹細胞あるいは幹細胞により生産された物質の動物またはヒト対象への導入に好適であるか、または適合性であることが知られている任意の物質であり得る。例えば、それは、例えば、塩類(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)、および他の成分(例えば、デンハート液、ドライミルク、サケ精子DNAなど)を含むことができる。あるいは、それは、血液あるいは血清または血清成分などの血液製剤を含むことができる。したがって、それは、「KO」血清培地または「KO」血清を含有する培地として当業界に一般に公知の増殖培地を含む増殖(すなわち、培養)培地であり得る。該培養培地は、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバーおよびNIC、あるいはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含むことができる。該組成物の各々および全ての成分も生物学的に適合性である必要はないが、該成分は、生体適合性を評価するために典型的に用いられる多くの評価基準に基づいて、生物学的に適合性であるか、または許容できるレベルまでの該成分の負の生物学的作用を最少にするように十分に低い濃度で存在することが好ましい。TGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICを含んでなる組成物は、無菌(もちろん、組成物に意図して含ませた幹細胞または他の細胞に関するもの以外)であることが好ましい。幹細胞の増殖および維持において本発明の組成物の有用性に鑑みて、本発明の組成物は、それら自体hESCなどの胚幹細胞などの幹細胞を含むことができることは明らかである。
【0125】
直前で述べられたように、一定の実施形態において、該組成物は幹細胞を含んでなる。該幹細胞は、1種以上のTGFβファミリーのメンバー、1種以上のFGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせの存在下で増殖される細胞であり得る。該幹細胞は、未分化状態であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。さらに、組成物中の細胞全てが未分化状態であることが望ましいことが多いが、細胞の増殖と生存における不均質性のため、恐らく所望の特性を有する組成物中の細胞は、100%未満である傾向がることが認められる。この事実は、未分化状態または多能性状態の有意な細胞数(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上)を有する組成物を除外するものとして理解することができない。
【0126】
第3の態様において、本発明は、未分化状態または多能性状態の胚幹細胞を増殖および/または維持するのに必要とされる材料のある部分または全てを含有するキットを提供する。その最も基本的な形態において、該キットは、所望の結果を達成するための十分な時間量、培養中の幹細胞を増殖および維持するのに十分な量でアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含有する少なくとも1つの容器を含んでなる。該細胞は、未分化状態または多分化能状態であることが好ましい。所望の結果としては、特定の物質の検出可能な量の産生、培養プレート上の培養物の集密化、対象への移植のために有意な細胞数の生産などの医学的または科学的に関連する結果であり得る。複数の実施形態において、該キットは、本発明の方法の1つ以上の実施形態を実施するのに必要な全ての成分を含む。本発明に従ってキット中の材料を使用するための取扱い説明書である補助的な部品もまた、キットのある一定の実施形態に含まれる。
【0127】
したがって、ある一定の実施形態において、該キットは、TGFβファミリーのメンバー(アクチビンAなど)、FGFファミリーのメンバー(KGFなど)、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含有する単独の容器を含んでなる。他の実施形態において、該キットは、各々がアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、NICの1つ以上を含有する2つまたは3つの容器を含んでなる。後者の場合において、容器は、組合わせを1つに包装して(すなわち、キット自体であり得るが、必ずしもそうではない単独容器)提供される。すなわち、例えば、アクチビンA、KGF、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含んでなる組成物を、第1の容器に含有し、これらの成分(任意の量で)の1つ以上を独立して含んでなる別の組成物を、第2の異なる容器に含有して、双方とも単一包装に含まれる。本発明による種々の組成物(ならびに本発明に有用な他の組成物)の複数の容器を単独キットに含めることができ、実務者が、本発明の方法を実施する上で種々の容量の材料を使用することを可能にする。この方法において、実務者は、複数キットを得る必要はなく、本発明を複数回または大容量の細胞で実施できる。
【0128】
TGFβおよびFGFファミリーメンバーのタンパク質および/またはNICの量は、所望の時間量で維持または増殖される幹細胞の少なくとも1つの培養を可能にするのに十分であるように独立して選択される。各物質は、それ自体の容器に含有することができるか、または2種以上が単独容器に含有することができる。この方法で、実務者は、適切な物質または必要とされる具体的な適用のための物質の組合わせを選択できる。
【0129】
ある一定の実施形態において、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、およびNICのうちの少なくとも2つは、組み合わせを1つの包装にして一緒に提供される。すなわち、これらのうちの少なくとも2つ、および好ましくは、3つが、キット内の単容器に含まれる。キット内に2つまたは3つを提供することにより、実務者がキットを開封後、それらを組合わせる必要が省かれ、本発明の方法を実施するのに必要な時間を短縮することができるか、または成分を量る誤差、あるいはこぼれなどによる材料の損失を最少にできる。他の実施形態として、本実施形態によるキットは、キット内に複数の容器を含むことができ、各容器は、同じ材料、異なる材料、または容器の幾つかが他と同じ材料を含有する一方、幾つかの容器はユニークな内容物を含有する。
【0130】
複数の実施形態において、1つ以上の個々の成分(例えば、アクチビンA、KGF、およびNIC)の複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の容器がキット内に含まれる。複数の実施形態において、2つ以上の成分の複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の容器がキット内に共に含まれている。複数の実施形態において、手袋および/または他の供給品または試薬(限定はしないが、キットの1つ以上の成分を再水和させるための滅菌水または滅菌水溶液など)も含まれる。
【0131】
上記の検討から見ることができるように、所望の場合、TGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNIC以外をキットに含むことができる。例えば、これら物質用の溶媒または希釈剤を含むことができる。さらに、シリンジ、ピペットなどのキットの成分を量るか、または送達するための材料を含むことができる。これら追加の部品などの各々を、1品目以上の包装で含むことができるか、または別個に無包装の品目として含むことができる。
【0132】
容器は、含有されるTGFβファミリーのタンパク質、FGFファミリーのタンパク質、および/またはNIC、および/または任意の追加の部品に好適なものであり得る。したがって、容器は、限定はしないが、金属、プラスチック、ゴム、サラン、およびガラスで作製されたものなど、チューブ、アンプル、バイアル、缶、バッグ、またはジャーであり得る。複数の実施形態において、容器は、幹細胞を含んでなる培地に成分を供給するのに好適なシリンジまたはピペットなどの送達用具であり得る。容器は、最初の開封後、未使用の内容物を保存するために再密封できるか、または自動的に密封されることが好ましい。容器およびそれらの内容物は、無菌(または開封前に滅菌)であることが好ましい。
【0133】
キットそれら自体は、ボール紙、プラスチック、金属、またはガラスなどの任意の好適な材料から製作できる。ボール紙とプラスチックは、好ましいキット用材料である。
【0134】
キットの1つ以上の成分の使用、または本発明の方法を実施するための取扱い説明書を、キットに含むことができる。取扱い説明書は、紙、カード、プラスチックシートなどの印刷材料など、別個の部品として供給できる。あるいは、取扱い説明書は、キット自体、例えば、キットの側部または上部または底部に提供できる。あるいは、取扱い説明書は、キットの成分用容器に提供できる。
【0135】
第4の態様において、本発明は、未分化および多能性である幹細胞を提供する。幹細胞は、フィーダー細胞、マウス胚フィーダー層により馴化された培地、および/またはSTAT3の活性化処理を含まない組成物中に提供できる。複数の実施形態において、該幹細胞は、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含んでなる組成物中に提供される。複数の実施形態において、該組成物は、アクチビンA、KGF、およびNICを含んでなる。該幹細胞は、上記に開示された任意の細胞であってもよいが、好ましい実施形態において、該細胞は、ヒト胚幹細胞などのヒト幹細胞である。
【0136】
一般に、該幹細胞は、本発明の方法の使用により生産された細胞である。すなわち、本発明の幹細胞は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせに対する幹細胞の暴露により生産されたものである。該幹細胞は、馴化培地、フィーダー細胞、またはLIFの不在下で1種以上のこれらの物質に曝露させる。該幹細胞は、上記のとおり複数回継代させた細胞であり得る。
【実施例】
【0137】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは、本発明を単に例示するものであることが意図されており、決して本発明を限定するものと考えてはならない。
【0138】
実施例1:フィーダー細胞または馴化培地の不在下で幹細胞の多能性の維持
【0139】
本発明は、胚幹(ES)細胞における未分化状態および/または多能性の維持、特にTGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICに富んだ培養培地を用いて、未分化ヒト幹細胞系を維持するための組成物および方法に関する。本実施例は、TGFβファミリーメンバーのアクチビンAの存在下での増殖は、幹細胞の多能性を維持し、FGFファミリーメンバーのケラチノサイト成長因子(KGF)の添加により、細胞が老化に入ることなく増殖できる時間量を延長することが示される。また、培養培地に対するNICの添加により、細胞が老化しないで増殖できる時間量を延長することが示される。
【0140】
マウスESにおける未分化状態および多能性の維持は、マウス線維芽細胞のフィーダー層(mEFs)の存在または白血病抑制因子(LIF)によるSTAT3の活性化1を必要とする。ヒト胚幹細胞系(hES)は、最近、研究2、3用にのみ利用されてきており、自己再生と分化に関する細胞内経路は、この時点で大部分が不明である。最近、本発明者と協力者4ならびに他の研究者5により、STAT3活性化は、mEFsに対して増殖された場合、またはmEFsにより馴化培地で処理された場合、ヒトES細胞系の分化を遮断するのに十分ではないことが示されている。本実施例は、アクチビンAに富んだ培養培地が、フィーダー層、mEFsにより馴化された培地、またはSTAT3の活性化処理を必要とせずに、少なくとも10回の継代の間、未分化状態にhESを維持できることを示している。hES細胞は、OCT−4、nanogおよびTRA−1−60など、未分化状態のマーカーを保持し、テラトーマのインビボ形成により示されるように、多能性を存続した。
【0141】
hESの多分化能は、mEFs2、3、mEFsによる馴化培地6、またはヒトフィーダー層7に対して増殖させた場合にのみ維持されることが公表されている。さらに、フィーダー層から受けたシグナルは、LIF/gp130経路を介して操作されないことが報告されている4、5。したがって、馴化培地(CM)に存在するフィーダー層および/または溶解性因子へのhES細胞の接触によって作動され易い代りの経路が、多能性の維持の原因となっているに違いない。位相差顕微鏡下、組織学的染色法を用いて、本発明者と協力者が以前に示したように4、HSF6の増殖と表現型の特性は、ラミニン被覆皿上で増殖された場合のフィーダー層上およびmEF CM内と同様である。この場合、細胞は互いに異なる未分化コロニー内で増殖する。したがって、フィーダー層によって分泌される溶解性因子は、多能性の維持に役立つように見える。これらの因子が何であるかを判定するために、我々は、ヒト胎児膵臓組織の培養における経験に基づいて成長因子の種々の組合わせを試験した。本発明者らは、予備的実験およびhES細胞における高レベルのb1発現に基づいて接着に関してラミニン1を用いた6。しかしながら、フィブロネクチンおよびコラーゲンなどの接着に関する他の公知の基質も、等しく有効に使用できたことを解すべきである。
【0142】
hES細胞が、アクチビンAおよびKGFの存在下でラミニン上で増殖された場合、それらは、フィーダー層上またはCM内の細胞に対する染色と同等に、幹細胞マーカーTRA−1−60およびOCT−4に対して均一に染色し、10回の継代にわたる連続増殖後、未分化のままであった。oct−4、nanog、およびテロメラーゼのロバスト遺伝子発現もまた、フィーダー層上で増殖するコロニー内で得られたものと同等のレベルで、細胞単層内でRT−PCRにより見られた。形態は、通常のタイトコロニー形成から、元のコロニーに見られるものよりも大きく出現する均一形状細胞の不規則単層まで徐々に変化した。そのままにしておくと、最終的に細胞は、連続単層を形成し、皿上に盛り上がった。しかしながら、これらの形態変化は、可逆性であり;細胞をフィーダー層に戻して置くと、それらは、フィーダー層上で予想された形態と同様のコロニー形成を徐々に再開した。
【0143】
アクチビンAを増殖培地から除くと、細胞形態は、より分化されたタイプに急速に変化した;1週後もはや細胞はnanogを発現せず、免疫反応性TRA−1−60の喪失と、OCT−4タンパク質レベルの減少が同時にあった。アクチビンAをBMP−4で置き換えた場合、細胞は、1週後、未分化表現型を維持することができず、nanog、oct−4、およびテロメラーゼの発現が喪失した;KGFが除去されると、細胞は、未分化表現型を維持したが、増殖速度は減少し、1回の継代を超えて継代培養ができなかった。
【0144】
形質変換成長因子のβファミリーのメンバーであるアクチビンAは、FSH合成および分泌の刺激物質としてブタ濾胞性液8、9から最初に単離された。「アクチビン」、「アクチビンA」、「アクチビンB」、「アクチビンAB」、「赤芽球分化誘導タンパク質」、および「EDF」は、TGF−ベータ−ファミリーのメンバーであり、これは、低体温および脳下垂体ホルモン分泌、生殖腺ホルモン分泌、幹細胞発生および成熟化、赤芽球分化誘導、インスリン分泌、神経細胞生存、胚軸発生、骨成長などの多様な生物学的機能を活性化するが、それらの機能は、サブユニット組成物に関連する。それは、多様な生物学的な機能の自己分泌またはパラ分泌レギュレーターとして多種多様の組織において同定されている(レビューを参照10)。重要なことに、本発明者は、mEFs中にアクチビンA転写体の高発現およびmEFsにより馴化された培地中に豊富な分泌タンパク質を認めた。さらに、HSF6細胞は、フォリスタチン、アクチビンAの天然阻害剤の存在下、mEFsに対して増殖させた場合に分化した10。興味深いことに、アクチビンBは、他の間葉細胞により分泌されることが示され、その分泌は、mEFsに対するhESを培養する際にルーチンに使用されるFGF2によりアップレギュレートされる11。これらのデータを一緒にすると、mEFsにより分泌されるアクチビンAは、hES細胞の「ステムネス("stemness")」の維持の原因となることを意味している。
【0145】
hESにおける分化誘導阻害は、アクチビンAに特異的であった。別のTGFβファミリーのメンバーであるBMP−4は、マウスES細胞における多能性を維持できるが12、hESの場合はそうではない。これは、これら2種の細胞の間の唯一の違いではなく、mESとhEStは、維持のLIFに依存性が異なる4。mES細胞において、BMP−4は、多能性および分化誘導の双方の維持に逆説的な役割を演じ12、13、存在する他の因子または発生段階に極めて依存し易い。hES細胞は、BMP−4およびKGFの存在下で急速に分化し、培養1週後にoct−4、nanog、およびテロメラーゼの発現が喪失した。
【0146】
アクチビンAはまた、mESの中胚葉への分化誘導13、膵臓前駆体細胞のβ細胞への分化誘導14、神経分化誘導の阻害15、16、さらに最近hES細胞における内胚葉の誘導17に関係している。しかしながら、本開示は、未分化状態での幹細胞の維持においてアクチビンAの重要な役割に関し、またmEFsより馴化された培地中のその存在に関する最初の文書資料である。
【0147】
アクチビンAとKGFの存在下、単層で増殖されたhESの移植後のヌードマウスで増殖されたテラトーマは、多くの外肺葉、内胚葉、および中胚葉を示した。さらに、胚葉体からRNAに対して実施されたRT−PCRは、全て3層の胚細胞層に特異的な遺伝子発現を示した。これらのデータは、アクチビンAを含有する培地中のhESの維持は、他の外来細胞またはヒト細胞との共培養の必要がなく、多分化能の維持を可能にすることを示している。
【0148】
非膜内外PTKsは、細胞膜受容体の細胞基質ドメインとのシグナル伝達複合体を形成する。非膜内外PTKsを介してシグナル伝達する受容体としては、サイトカイン(例えば、糖タンパク質130(gp130)ファミリー)、ホルモン、および抗原特異的リンパ球性受容体が挙げられる。多くのPTKsは、PTK活性化によりもはや正常な細胞制御に供されなかった癌細胞の発癌遺伝子産物として最初に同定された。実際、公知の発癌遺伝子の約三分の一は、PTKsをコードする。さらに細胞形質転換(腫瘍形成)は、チロシンリン酸化活性の増加により達成されることが多い22。したがって、PTK活性の調節は、幾つかのタイプの癌を制御するのに重要な戦略となり得る。
【0149】
材料と方法:以下のものは、実施例に用いられる代表的な材料と方法である。
【0150】
幹細胞培養:hES細胞系HSF6は、以前に記載された19、ノックアウト血清リプレーサー、グルタミン、非必須アミノ酸類、0.1mM β−メルカプトエタノール(全てGibcoより、カリフォルニア州カールスバッド;www.invitrogen.com)を含有する高グルコースDMEMからなるDSR培地中、またはラミニン(20μg/ml、Chemicon、www.chemicon.com)被覆皿上、または50ng/mlのヒト組換えアクチビンA(ACT A)、50ng/mlのヒト組換えケラチノサイト成長因子(KGF)(双方ともPreprotech社より、ニュージャージー州ロッキーヒル;www.preprotech.com)を含有するDSR中、37℃、5%CO2でマイトマイシンC処理CF1マウスフィーダー層(mEF)上に維持された。これらの濃度は、ヒト胎児膵細胞培養による以前の実験14、20から決定された。幾つかの実験において、10ng/mlのヒト組換え骨形成タンパク質4(BMP−4;R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、www.RnDSystems.com)は、ACT Aの代りに用いられ、0.4μg/mlのフォリスタチン(R&D Systems)を、製造元の指示に従って50ng/mlのAct Aを中和するのに十分なmEFsに対して増殖されたES細胞に加えた。培地は、mEFs上で増殖される細胞に対して毎日、成長因子によりラミニン上で増殖される細胞に対して1日おきに変えた。細胞は、1:3または1:4希釈で週1回継代培養を行った。
【0151】
あるいは、hES細胞系HSF6は、以前に記載された4DSR中、37℃、5%CO2でマイトマイシンC処理CF1マウスフィーダー層(mEF)上に維持された。本明細書に記載された実験に関して、継代43hES細胞は、10ng/mlの基本的線維芽細胞成長因子(FGF2;Preprotech社より、ニュージャージー州ロッキーヒル;www.preprotech.com)で補足されたmEFsにより馴化された培地(CM)の存在下、ラミニン(20μg/ml、Chemicon、www.chemicon.com)被覆皿上、または50ng/mlのヒト組換えアクチビンA、50ng/mlのヒト組換えKGF(双方ともPreprotechより)、および10mMのニコチンアミド(NIC;Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を含有するDSR培地中ラミニン上で培養された。5ng/ml、50ng/ml、および100ng/mlのアクチビンAを用いてhES細胞による用量応答により、50ng/mlが、未分化状態での細胞を維持するのに最適であることが示された。
【0152】
幾つかの実験において、10ng/mlのヒト組換え骨形成タンパク質4(BMP−4;R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、www.RnDSystems.com)は、アクチビンAの代りに用いられ、2μg/mlの組換えマウスFS−288フォリスタチン(R&D Systems)を、製造元の指示に従って50ng/mlのアクチビンAを中和するのに十分なmEFsに対して増殖されたES細胞に加えた。培地は、mEFs上またはCM内で増殖される細胞に対して毎日、成長因子によりラミニン上で増殖される細胞に対して1日おきに変えた。細胞は、1mg/mlのコラゲナーゼIV(Gibco BRL)で5分間の緩やかな処理によって1:3または1:4希釈で週1回継代培養を行い、次いでかき取った。
【0153】
免疫組織化学:幹細胞培養物を、mEFsで被覆されたカバースリップ上、または4%パラホルムアルデヒドで固定されたラミニン上で増殖し、染色した。幹細胞マーカーTRA−1−60およびOct−4のタンパク質発現を、第一次マウス坑TRA−1−60(Chemicon)およびウサギ坑OCT−4坑血清(U Penn、ハンス・スコーラー(Hans Scholer)博士より恵与)を用いて免疫組織化学により分析した。対照スライドを、マウスIgMおよびウサギIgGと共に温置した。アフィニティ精製ローダミンレッド−複合化ロバ坑マウスIgMおよびフルオレセイン−複合化ロバ坑ウサギIgG(Jackson Immunoresearch)を、第一次抗体に向けた。カバースリップを、フェード防止培地(Biomeda社、カリフォルニア州フォスターシティー;http://biomeda.com)に取り付け、蛍光付属装置が具備されたNikonエクリプスE800顕微鏡(NikonUSA,ニューヨーク州メルビレ;www.nikonusa.com)で観察した。画像は、SPOTデジタルカメラ(Diagnostic Instruments社、ミシガン州スターリングハイツ;www.diaginc.com)で捕捉し、Image Pro Plus4.0(Media Cybernetics、メリーランド州シルバースプリング;www.mediacy,com)を介して獲得した。カラー合成写真は、Adobe Photoshop7.0(Adobe Systems、カリフォルニア州マウンテンビユー;www.adobe.com)を用いて処理された。
【0154】
あるいは、hES細胞培養を、mEFsで被覆されたカバースリップ上、または4%パラホルムアルデヒドで固定されたラミニン上で増殖し、以前に記載された4とおり免疫染色した。幹細胞マーカーTRA−1−60、SSEA−4およびOct−4のタンパク質発現を、第一次マウス坑TRA−1−60IgM(Chemicon)マウス坑SSEA−4IgG3(DSHB、アイオワのU、アイオワ州アイオワシティー)、およびウサギ坑OCT−4坑血清(U Penn、ハンス・スコーラー(Hans Scholer)博士より恵与)を用いて分析した。対照スライドを、マウスIgMまたはIgGおよびウサギIgGと共に温置した。
【0155】
RT−PCR:RNAを、DNアーゼ処理を含むRNeasyミニキット(Qiagen、カリフォルニア州ヴァレンシア;www1.qiagen.com)を用いて精製し、3.2μgのランダムプライマーによるAMV(双方ともRoche、インディアナ州インディアナポリス;www.roche-applied-science.com)および20μLの反応容量中1μgの全RNAを用いて逆転写した。50μLの全容量中、1μLのcDNAを各PCR反応に用いた。β−アクチン発現を、サンプル定量化および比較(すなわち、内部対照として)のために用いた。
【0156】
ヒトoct−4、nanog、およびテロメラーゼに特異的プローブを調製した。実施例に用いられたオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有した:
β−アクチン 順方向:cgcaccactggcattgtcat(配列番号36)
逆方向:ttctccttgatgtcacgcac(配列番号37)
oct−4 順方向:gagcaaaacccggaggagt(配列番号38)
逆方向:ttctctttcgggcctgcac(配列番号39)
nanog 順方向:gcttgccttgctttgaagca(配列番号40)
逆方向:ttcttgactgggaccttgtc(配列番号41)
アクチビンA 順方向:cttgaagaagagacccgat(配列番号42)
逆方向:cttctgcacgctccactac(配列番号43)
神経D: 順方向:gagactatcactgctcagga(配列番号44)
逆方向:gataagcccttgcaaagcgt(配列番号45)
短尾
T遺伝子: 順方向:caaccaccgctggaagtac(配列番号46)
逆方向:ccgctatgaactgggctc(配列番号47)
α−胎児
タンパク質: 順方向:agaacctgtcacaagctgtg(配列番号48)
逆方向:gacagcaagctgaggatgtc(配列番号49)
ALK−4: 順方向:cacgtgtgagacagatggg(配列番号50)
逆方向:ggcggttgtgatagacacg(配列番号51)
ACVR−2: 順方向:gggagctgctgcaaagttg(配列番号52)
逆方向:ccacatcaacactggtgcc(配列番号53)
ACVR−2B:順方向:caccatcgagctcgtaag(配列番号54)
逆方向:gagcccttgtcatggaagg(配列番号55)
hTERT 順方向:cagctcccatttcatcagca(配列番号56)
逆方向:cgacatccctgcgttcttg(配列番号57)
【0157】
PCR産物を、1.2%アガロースゲル(htertに関して1.6%)上に乗せて臭化エチジウムにより染色した。
【0158】
多能性:多能性は、膵島前駆細胞の分化誘導の分析のために以前に記載された21ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植8週後のテラトーマ形成を調べることによってインビボ評価された。短時間に、hESを、ラミニンまたはmFEsから取り出し、Costar Ulgtra Low Cluster皿(Corning社、ニューヨーク州コーニング;www.corning.com)中で一晩、胚葉体を形成させた。それらをペレットに遠心分離し、10μlの陽圧ピペットで採取し、腎嚢下に注意深く挿入した。この方法は、極めて首尾よく実験的に膵島移植され、またhES細胞からのテラトーマ分析に非常に有効である。移植片を取り出し、固定し、ヘマトキシリンとエオシンとで染色した。多分化能は、記載された胚葉体形成後の遺伝子発現を評価することによりインビトロ評価された。
【0159】
あるいは、多能性は、内分泌膵前駆細胞の分化誘導の分析のために以前に記載された20ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植8週後のテラトーマ形成を調べることによってインビボ評価された。移植片を取り出し、固定し、ヘマトキシリンとエオシンとで染色した。多能性は、hES細胞に由来し、17日間培養された胚葉体における遺伝子発現を分析することによりインビトロ評価された。
【0160】
異なる培養条件下で増殖率を定量化するための増殖アッセイ:細胞を、フィーダー層からFGF2補足CMあるいはアクチビンA、KGF、NIC、またはこれら3つの因子の組合わせの存在下、ラミニン上の6ウェルプレート内で培養した。培養物を、新たに補充された培地中、1μCi/ml[メチル3H]チミジン(比放射能6.7Ci/mmol;MP Biomedicals、カリフォルニア州アーバイン;www.mpbio.com)によりパルス化した。16時間後、細胞を収穫し、チミジンの細胞への取込みを以前に記載された23とおり定量化した。手短にDNA含量を蛍光的に測定し、3Hチミジンの取込みは、音波処理細胞のトリクロロ酢酸沈殿の液体シンチレーションカウントすることにより測定された。観察された統計学的有意差は、分散分析およびStatview IV(Abacus Concepts、カリフォルニア州バークレイ)を用いて有意限界として95%レベルを有するフィッシャーの保護最小有意差検定により判定された。
【0161】
フローサイトメトリー分析:フローサイトメトリーは、異なる培養条件下で未分化細胞を定量化するために使用された。細胞を、60分のコラゲナーゼ処理を用いて収穫し、次いで単一細胞懸濁液にせん断し、70ミクロン細胞フィルタを用いてろ過した。各条件から単一細胞を、マウス坑TRA−1−60またはマウスIgM(対照のため)およびFITC−複合化ロバ坑マウスIgM(Jackson Immunoresearch)により標識した。細胞は、Becton Dickinson FACScanを用いて分析し、細胞表面抗原発現は、CellQuestソフトウェアを用いて定量化した。
【0162】
二次元電気泳動:単独またはhES細胞によるフィーダー層として増殖されたmEFsからの非分画性馴化培地は、以前に記載された24等電点電気泳動および二次元電気泳動によりアッセイした。サンプルを、ニトロセルロースに移し、UCSD、スンイチ・シミサキ(Sunichi Shimisaki)博士より恵与のウサギ坑ブタアクチビン抗体によりブロットした。
【0163】
ウェスタンブロッティング:ウェスタンブロッティングは、リン酸化Smad2に用いられ、以前に記載された4HSF6細胞のライセートに実施された。アクチビンAの存在下で培養された細胞を、バナジン酸塩(10μM)およびミクロシスチン(1μM)で補足された緩衝液を含有する界面活性剤で溶解し、ホスホSmad2(ser465/467)抗体(Cell Signaling、cellsignal.com)により最初にブロットされた。次にブロットをストリップし、Smad2抗体(Cell Signaling)により再プローブ化した。
【0164】
核型:核型分析は、標準法(Gバンディング)を用いて我々の実験室で、またはUCSD Cytogenetics Laboratoryにより実施された。少なくとも15種の細胞を各サンプルから調べた。
【0165】
図面に示された結果の記載:
HSF6細胞は、細胞増殖に対するアクチビンAの作用、形態、および幹細胞に対する分化状態を測定するために使用された。本実施例に関連する実験は、上記のとおり実施され、実験から得られた結果を検討し、要約する。この実験結果は、図1の種々の部分およびパネルに示している。
【0166】
図1は、アクチビンAの不在下でhES細胞の分化を示す。より具体的には、図1aは、位相差顕微鏡(上層)、および免疫組織化学(下層)により観察されたHSF6細胞の形態および分化状態を示す。免疫組織化学分析に関して、ヒト幹細胞マーカーTRA−1−60(細胞質)およびOct−4(核)に対する抗体を用いた。パネルIは、mEFsに対して培養されたHSF6細胞が、幹細胞マーカーに対する均一な染色により典型的なコロニー形成を示している。パネルIIは、アクチビンA、NIC、およびKGF(ANK)の存在下、ラミニン上で培養されたHSF6細胞が、mEFs上で増殖された場合よりも大きな細胞サイズを有する不規則単層として増殖するが、TRA−1−60およびOct−4に対するロバスト染色、未分化状態の証拠を示している。パネルIIIは、mEFsに戻した場合、パネルIIの細胞が、1週後にコロニー形態を再開することを示している。パネルIVは、1週間アクチビンA(NK)の不在下で増殖された場合、パネルIIの細胞が、TRA−1−60に対して染色せず、またOct−4に対して極めて僅かな染色により、分化を示す形態および表現型の明確な変化を示している。パネルVは、1週間(A)KGFおよびNICの不在下で増殖された場合、パネルIIの細胞が、表現型に変化を示さないことを示している。しかしながら、増殖は減少し、それらは、さらに継代培養ができなかった。拡大バー=100μM。
【0167】
図1bは、mFEs(レーン1)上またはラミニン(レーン2〜5)上の種々の培養条件下でoct−4およびnanogに関するhES細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示している。アクチビンの不在下、ラミニン上で1週間培養された細胞において幹細胞マーカーの発現が喪失し(レーン3,5)、未分化表現型を維持するためにアクチビンの必要性を示した。mEF=マウスフィーダー層、ANK=アクチビンA+NIC+KGF、NK=NIC+KGF、BMP=BMP−4、+/−:逆転写酵素。
【0168】
図1cは、FACSを用いる細胞表面の代表的な比較実験を示している。異なる培養条件からの単一細胞懸濁液を、TRA−1−60に関して免疫染色し、Becton Dickinson FacScanおよびCellQuestソフトウェアを用いて分析した。上部パネル:マウス坑TRA−1−60またはマウスIgM(対照)で染色されたANKにより培養された細胞のフローサイトメトリー分析。下部パネル:異なる条件下でのTRA−1−60を発現する細胞のパーセンテージの比較(CM=馴化培地、ANK=アクチビンA+NIC+KGF、NK=NIC+KGF)。細胞は、1週間NKと、また<1週間CM中で(不純物のmEFsを除去するために)、20回の継代のためANKと培養した。
【0169】
図1dは、アクチビンA(A)、NIC(N)、KGF(K)または全て3つ(ANK)の組合わせの存在下、およびFGF2補足CM中、hES細胞の増殖に関する代表的な比較実験を示している。各条件に関する四つ組のウェルを、3Hチミジンにより16時間パルス化した。増殖率は、他の全ての処理と比較してアクチビン処理細胞において減少し、KGF存在下の増殖率は、ANKと同様であり、CMよりも有意に高く、hES細胞の複製におけるKGFの役割を示した。n=4;p<0.0001ANK対A、K対A、CM対A。p<0.005ANK対N、N対A、K対N。p<0.05K対CM。n.s.ANK対K、ANK対CM、N対CM。
【0170】
図2は、HSF6細胞における多分化能のmEF維持に対するアクチビン/フォリスタチンの効果を示している。より具体的には、図2aは、1週間(左パネル)および2週間(右パネル)フォリスタチンの存在下、mEFs上で培養された図1パネルIからのHSF6細胞を示している。1週後、コロニーは、明確な形態変化(上部パネル)を示し、TRA−1−60(細胞質)に関して染色を失い、Oct−4(核)に関して染色を減じた(下部パネル)。フォリスタチンの存在下2週後、コロニーは増殖を続けたが、規定された形状を失い、Oct−4免疫反応性は、完全に消失し、分化を示した。拡大バー=100μM。
【0171】
図2bは、フォリスタチンの存在下および不在下でoct−4およびnanogに関するmEFsに対するHSF6の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示している。幹細胞マーカーの発現は、フォリスタチンの存在下、mEFs上で1週間培養された細胞において無い(nanog)か、または著しく減少(oct−4)し、2週後には完全に喪失し、分化を示した。RT=逆転写酵素。
【0172】
図2cは、CF−1マウスに由来のmEFsにおけるアクチビンA転写体ならびにRT−PCRおよびウェスタンブロットを用いてmEF馴化培地中の前駆体タンパク質の同定を示している。左パネル:アクチビンA発現を示すRT−PCRであってPCR産物サイズは、262bpであり;+/−:逆転写酵素。右パネル:アクチビンA前駆体タンパク質を示すウェスタンブロット。サンプルは、二次元電気泳動、坑アクチビン抗体を用いたウェスタンブロットにより分析された。
【0173】
図2dは、HSF6細胞におけるアクチビン経路シグナル伝達成分の同定を示している。左パネル:HSF6細胞におけるタイプ1受容体ALK−4ならびにタイプII受容体ACVR−2およびACVR−2B転写体。PCR産物サイズは、それぞれ346bp、783bpおよび611bpであり;+/−:逆転写酵素。右パネル:アクチビンAの存在下で増殖されたHSF6細胞においてホスホ−Smad2を示す坑Smad抗体を用いたウェスタンブロット。Smad−2分子量=60kDa。細胞は、バナジン酸塩(10μM)およびミクロシスチン(1μM)で補足された緩衝液を含有する界面活性剤で溶解した。ブロットは、坑ホスホSmad2(ser/465/467)(パネルI)によりプローブ化してから、ストリップし、坑Smad2(パネルII)により再プローブ化した。
【0174】
図3は、アクチビンA、NICおよびKGFで培養されたhES細胞における多分化能の長期維持を示している。より具体的には、図3aは、20回継代のためにアクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたHSF6細胞における幹細胞マーカーの分析を示している。上部パネル:免疫組織化学分析は、TRA−1−60、SSEA−4(赤)およびOct−4(緑)に関してロバスト染色を示している。拡大バー=200μM。下部パネル:oct−4、nanog(26サイクル)およびhTERT(35サイクル;産物=114bp)に関するRTPCR分析。同等の継代数に関してmEFs上で培養された細胞の比較のため、同じアッセイで分析され、全てのマーカーの発現が同等のレベルを示した。
【0175】
図3bは、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を示している。アクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたHSF6細胞の代表的な組織構造は、ヌードマウスの腎嚢下に移植された。8週後、腎臓を取り出し、細胞層の3層全ての証拠を示すテラトーマが観察された。C=軟骨細胞(中胚葉)、PNC=神経周囲(シュワン)細胞(外肺葉)、RE=気道上皮(内肺葉)。拡大バー=100μM。
【0176】
図3cは、アクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたhES細胞に由来する胚様体における系列特異的マーカーのRT−PCR分析を示している。それは、全ての細胞型のRNA発現を示す。神経D=外肺葉、T遺伝子=中肺葉;α−FP=内肺葉、+/−:逆転写酵素。
実施例の要約
【0177】
本試験において、我々は、アクチビンA、ニコチンアミド(NIC)、およびケラチノサイト成長因子(KGF)の存在下、ラミニン上で増殖されたhES細胞は、20回の継代を超えた連続増殖時に未分化のままであることを示す。
【0178】
初期の実験において、我々は、膵内分泌系列への分化誘導を方向付けると思われるhES細胞を培養する培地を開発しようとした。細胞接着に関して、我々は、hES細胞におけるα6 β1発現の高レベルに基づいて6、ラミニン1を用いた。ヒト胎児膵細胞における細胞増殖および分化誘導を調節することが以前に示されている種々の成長因子および化学物質のカクテルを試験した。驚くべきことに、これらの条件下で数週間培養されたhES細胞は、細胞形態に何ら変化を示さなかった。引き続き、各因子を連続して除外され、多分化能は、ヒト幹細胞に関する公知のマーカー:TRA−1−60、nanog、およびOct−4の発現によって評価した(データは示していない)。成長因子と、未分化状態で複製するhES細胞を維持した化学物質との組合わせが、アクチビンA、NIC、およびKGFに狭められたら、これら成長因子の各々が単独または種々組合わせて、実験が繰り返された。全て3つの因子(A、N、K)を含有する培養物の染色は、幹細胞マーカーTRA−1−60およびOct−4(図3a、パネルII)に関して均一であり、フィーダー層(図3a、パネルI)またはmEFsからのCM(示していない)における細胞に対する染色と同等であった。oct−4およびnanogのロバスト遺伝子発現もまた、フィーダー層上で増殖するコロニー内で得られたものと同等のレベルで細胞単層におけるRT−PCRにより観察された(図1b)。
【0179】
幹細胞および「ステムネス」のホールマークは、束ね増殖である。興味深いことに、hES細胞の外観は、通常のタイトコロニー形成から均一形状細胞の不規則な単層まで徐々に変化した。細胞は、元のコロニーで見られたものよりも大きく出現した(図1a、パネルII)。連続増殖に伴い、それらは、最後には連続単層を形成し、皿に盛り上がった。しかしながら、これらの変化は、可逆性であり:細胞をフィーダー層に戻すと、それらは、フィーダー層で以前に観察された(図1a、パネルIII)ものと同様にコロニー形成を再開した。
【0180】
増殖培地からアクチビンの除去により、細胞形態において分化表現型への急激な変化を生じた(図1a、パネルIV);アクチビンAなしの1週後、免疫反応性のTRA−1−60の同時喪失(図1a、パネルIV)と共に、細胞はもはやnanogを発現せず(図1b)、Oct−4タンパク質(図1a、パネルIV)およびメッセージ(図1b)のレベルが減少した。免疫組織化学およびRT−PCRデータは、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原発現の定量化により検証された。ES細胞系H7およびH14におけるTRA−1−60発現における以前の報告25と一致して、mEF馴化培地の存在下、ラミニン上で増殖されたHSF6の60.3%がTRA−1−60を発現した。親細胞と同様のパターンの発現で(図1c)、規定の培地中で増殖された細胞の中で、45.96%が、継代2で発現し、継代10で60.46%、継代20で71.9%発現した。対照的に、アクチビンが、1週間培地から除かれると、発現レベルは3.9%まで減少した(図1c)。
【0181】
規定の培養培地で培養された細胞は、継代20までの多分化能のマーカーに関して調べられ、試験された全てのマーカーを発現することが判明した:TRA−1−60、SSEA−4、Oct−4(免疫組織化学分析)、oct−4nanog、およびテロメラーゼ逆転写酵素(htert)(RT−PCR)(図3a)。
【0182】
培地からKGFおよびNICの除去は、異なる作用を有した;細胞は未分化表現型を維持した(図1a、パネルV、および図1b)。しかしながら、3つの因子(A、N、K)の組み合わせと比較してアクチビン、KGF、またはNIC単独で培養した場合、細胞増殖に有意差があった。アクチビン単独で培養された細胞は、分化しなかった(A:図1a、パネルV;図1b);しかしながら、増殖率は、組合わせ(ANK)、あるいはKGFまたはNIC単独で培養されたものと比較して有意に減少した(図1d、n=4;p<0.0001対ANKまたはKGF、p<0.005対NIC)。対照的に、組み合わせで培養された細胞と比較して、KGFで培養された細胞の増殖率において統計学的差異はなかった。NIC単独で培養された細胞増殖は、中間であったが、KGFまたはANK処理細胞よりも有意に少なく(図1d、n=4;p<0.005)、その率は、アクチビン処理細胞よりも有意に高かった(図1d、n=4;p<0.005)。これらのデータから、アクチビンは重要であり、多能性の維持のために恐らく必要であり、KGF、およびより少ない程度であるがNICは、増殖の維持および連続増殖に役立つと、我々は、結論付けた。NICの不在下でアクチビンおよびKGF(AK)により培養された細胞は、未分化のままで短期間で増殖に成功したが、それらの増殖は、可能性としてその文書化された坑アポトーシス作用のため26、NICを含んだこれらの培養と比較して数回の継代にわたって最適以下であった(データは示していない)。したがって、NICは、20回の継代中に使用される成長因子の組合わせに含まれた。重要なこととして、20回の継代のために未分化細胞のマーカーを維持することに加えて、これらの細胞もまた、正常な核型を保持した(データは示していない)。
【0183】
我々は次に、形質転換成長因子−β(TGFβ)スーパーファミリーの別のメンバーが、多能性を維持できるかどうかを調査した。アクチビンのように、骨形成タンパク質は、hES細胞の栄養外胚葉への分化誘導など28、多くの細胞応答を調節するタンパク質を分泌する27。分化におけるその役割に加えて、BMP−4はまた、mES細胞における多能性を維持することが示されている12。対照的に、アクチビンAが、培地中のBMP−4と置き換わると、hES細胞は、未分化表現型を維持できず、nanogおよびoct−4発現の完全喪失が、1週後に生じた(図1b)。mES細胞において、BMP−4は、恐らく発生の特定の段階に存在する他の成長因子との相互作用のため、また細胞が曝露されるペプチドの濃度のため29、多能性および分化誘導双方の維持において逆説的な役割を演じる12、13。ある一定の条件下でhES細胞のアクチビンA誘導分化が既に示されているので30、同様の状態が、アクチビンAおよびhES細胞に生じ得る。
【0184】
アクチビンAは、多様な生物学的機能の自己分泌または内分泌制御因子として多種多様の組織に同定されている8、10。我々は、mEFsにより馴化された培地中、mEFsにおけるアクチビンA転写体および分泌アクチビンA前駆体タンパク質の高発現を見出したことは重要である(図2c)。さらにHSF6細胞は、タイプIおよびタイプII双方のアクチビン受容体およびロバストSmad2リン酸化の高レベルを発現する(図2d)。さらに、アクチビン阻害剤のフォリスタチンの存在下で2週後、mEFs上で増殖されたHSF6細胞は分化し、規定の培地からアクチビンAの除去により見られた効果(図1a〜b)と同様にESマーカーのTRA−1−60、Oct−4、およびnanogを完全に喪失した(図2a〜b)。これらの実験に用いられたフォリスタチンのイソ体であるFS−288は、アクチビンAに極めて高い親和性であり、BMPファミリーのメンバーに低い親和性であり、TGFβに結合しない10、31。我々は、既にBMP−4細胞が、hES細胞において多能性を維持するのに無効であることを示しており;したがって、我々が見る分化は、恐らく特定のアクチビン/フォリスタチン相互作用から生じると考えられる。
【0185】
アクチビンAは、mESの中胚葉への分化13、ヒト膵前駆体細胞のβ細胞への分化14、神経分化の阻害15、16、より最近、hES細胞における中胚葉の誘導17に関係している。しかしながら、これは、mEFsにより馴化された培地中のアクチビンの存在、引き続く未分化状態での幹細胞の維持において新規な役割についての最初の文書である。我々は、hES細胞における数種のWntの発現を検出した(データは示していない)。したがって、Wntシグナル伝達の活性化を介してhES多能性維持の最近の報告5と共に、我々の知見は、hES細胞における多能性維持のための規定の分子経路を明瞭にさせる可能性がある。
【0186】
アクチビンAに富んだ培地中に維持されたhES細胞の多能性のさらなる証拠は、インビボテラトーマ形成によって提供された。ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植後、移植片は、外胚葉構造、内胚葉構造、および中胚葉構造の証拠を示した(図3b)。さらに、またアクチビンAの存在下で培養された細胞に由来する17日齢の胚葉体に対するRT−PCRによって得られた系列特異的遺伝子発現プロフィルは、全て3層の細胞層に関して同様のパターンの発現を示した(図3c)。これらのデータは、アクチビンAを含有する培地中のhESの維持は、他の外来細胞またはヒトの細胞との共培養を必要としないで多能性維持を可能にする。
【0187】
これらの細胞事象を媒介する上で重要な因子としてアクチビンAの同定は、「ステムネス」の原因となる生物学的な経路を解明させるであろう。臨床適用の可能性のためにヒト幹細胞の産生と培養における効率性の増加により、非政府支持研究に利用でき、最近の報告18における17種の新規に誘導された幹細胞系がタイムリーに得られる。本明細書に報告された知見は、動物またはヒトのフィーダー層を使用することなく、新規なヒト胚幹細胞系の誘導を促進するであろう。
【0188】
種々の変更および変化が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の実施が成され得ることは当業者にとって明白であろう。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書および実施を考慮することにより当業者にとって明らかとなろう。本発明は以下の請求項によって示されるのが真の範囲および精神であって、明細書および実施例は、単に例示するものであるように意図されている。
【0189】
引用文献
本明細書に引用されている他の文献と共に以下の引用文献は、参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
1. スミス,エイ・ジー(Smith,A.G.)「マウスおよびヒトの胎芽由来の幹細胞」、Annu Rev Cell Dev Biol 17、435−462頁 (2001)。
2. トムソン,ジェー・エイ(Thomson,J.A.)ら、「ヒトの胚盤胞に由来する胎芽幹細胞系」、Science 282、1145−1147頁(1998)。
3. ロイビノフ,ビー・エー(Reubinoff,B.E.)、ペラ,エム・エフ(Pera,M.F.)、フォング,シー・ワイ(Fong,C.Y.)、トロウンソン,エイ(Trounson, A.)およびボンソ,エイ(Bongso,A.)「ヒトの胚盤胞に由来する胎芽幹細胞系:インビトロ体細胞分化」、Nat Biotechnol 18,399−404頁(2000)。
4. ハンフレイ,アール(Humphrey,R.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie GM)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,AD)、キング,シー・シー(King CC)、ブケイ,エヌ(Bucay N)、ヘイエク,エイ(Hayek A)「ヒト胎芽幹細胞における多分化能の維持は、独立したSTAT3である」、 Stem Cells 22、522−530 (2004).
5. Sato,N.,Meijer,L., Skaltsounis,L.,Greengard,P.& Brivanlou,A.H.「薬理的GSK−3特異的阻害剤によるWntシグナル伝達の活性化を介して、ヒトおよびマウスの胎芽幹細胞における多分化能の維持」、Nat Med 10、55−63頁(2004)。
6. クスウ,シー(Xu,C.)ら、「未分化ヒト胎芽幹細胞のフィーダー細胞のない増殖」、Nat Biotechnol 19、971−974頁(2001)。
7. リチャーズ,エム(Richards,M.)、フォング,シー・ワイ(Fong,C.Y.)、チャン,ダブリュー・ケイ(Chan,W.K.)、ウォング,ピー・シー(Wong,P.C.)およびボンソ,エイ(Bongso,A.)「ヒト内細胞塊および胎芽幹細胞のヒトフィーダー細胞の支持延長による未分化増殖」、Nat Biotechnol 20、933−936頁(2002)。
8. ヴェール,ダブリュー(Vale,W.)ら、「ブタ卵胞液からタンパク質を放出するFSHの精製と特性化」、Nature 321、776−779頁(1986)。
9. リング,エヌ(Ling,N.)ら、「脳下垂体FSHは、2つの形態のインヒビンからベータ−サブユニットのヘテロダイマーにより放出される」、Nature 321、779−782頁(1986)。
10. ルイシ,エス(Luisi,S.)、フロリオ,ピー(Florio,P.)、 ライス,エフ・エム(Reis,F.M.)およびペトラグリア,エフ(Petraglia,F.)「アクチビンAの発現と分泌:可能な生理的および臨床的な関係」、Eur J Endocrinol 145、 225−236頁(2001)。
11. シャブ−タル,ワイ(Shav−Tal,Y.)およびジポリ,ディー(Zipori,D.)「ホモポイエシスの調節におけるアクチビンAの役割」、Stem Cells 20、493−500頁(2002)。
12. イング,キュー・エル(Ying,Q.L.)、ニコルス,ジェイ(Nichols,J.)、チャンバーズ,アイ(Chambers,I.)およびスミス,エイ(Smith,A.)「Idタンパク質のBMP誘導は分化を抑制して、STAT3と協同で胎芽幹細胞自体の再生を維持する」、Cell 115、281−292頁(2003)。
13. ジョハンソン,ビー・エム(Johansson,B.M.)およびウィレス,エム・ヴィ(Wiles,M.V.)「哺乳動物の中胚葉および造血発達におけるアクチビンAおよび骨形成タンパク質4の関与に関する証拠、Mol Cell Biol 15、141−151頁(1995)。
14. デメテルコ,シー(Demeterco,C.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、ジブ,エス・エイ(Dib,S.A.)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,AD)およびヘイエク,エイ(Hayek A)「ヒト胎児の膵臓細胞の分化および増殖におけるアクチビンAおよびベタセルリンの役割」、J Clin Endocrinol Metab 85、3892−3897頁(2000)。
15. ハシモト,エム(Hashimoto,M.)ら、「神経分化の阻害剤としてのアクチビン/EDF」、Biochem Biophys Res Commun 173、193−200頁(1990)。
16. ハーランド,アール(Harland,R.)「神経誘導」、Curr Opin Genet Dev 10、357−362(2000)。
17. レーベンバーグ,エス(Levenberg,S.)ら、「三次元ポリマー骨格上のヒト胎芽幹細胞の分化」、Proc.Natl.Acad.Sci. 100、12741−12746頁(2003)。
18. コーワン,シー・エイ(Cowan,C.A.)ら、「ヒト胚盤胞から胎芽幹細胞系の誘導」、N Engl J Med 350:1353−1356頁(2004)。
19. アベイタ エム,シー・エイ(Abeyta M,C.A.)、ロドリグエズ,アール(Rodriguez,R.)、ボドナール,エム(Bodnar,M.)、レイジョ ペラ,アール(Reijo Pera R.)、フィルポ,エム・ティー(Firpo, M.T)「独立して誘導されるヒト胎芽幹細胞系のユニークな遺伝子発現の符号」、Human Molecular Genetics 13、in press(2004).
20. モヴァサト,ジェイ(Movassat,J.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,A.D.)、ポルサ,ビー(Portha,B.)およびヘイエク,エイ(Hayek,A.)「ヒト胎児膵臓内分泌前駆体細胞におけるケラチノサイト成長因子およびベータ細胞分化」、Diabetologia 46、822−829頁(2003)。
21. ヘイエク,エイ(Hayek A)およびビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)「ヒト胎児および成人膵島の実験的移植」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 82 8号、2471−2475頁(1997)。
22. カルボノイ,エイチ(Carbonneau,H.)およびトンクス(Tonks)、Annu. Rev. Cell Biol.8:463−93頁、1992年。
23. ヘイエク,エイ(Hayek A)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、シルリ,ヴイー(Cirulli V)ら、「ヒト成人ベータ細胞の成長因子/マトリックス誘導増殖」、Diabetes 44:1458−1460頁(1995)。
24. キング,シー・シー(King CC)、ニュートン,エイ・シー(Newton AC)「アダプタータンパク質grb14は、3−ホスホイノシチド依存キナーゼ−1の局在化を調節する」、 J Biol Chem 279:37518−37527頁(2004)。
25. ヘンダーソン,ジェイ・ケイ(Henderson JK)、ドレイパー,ジェイ・エス(Draper JS)、ベイリー,エイチ・エス(Baillie HS) ら、「移植前ヒト胎芽および胎芽幹細胞は、段階特異的胎芽抗原の比較可能な発現」、Stem Cells 20:329−337頁(2002)。
26. ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、レイボウィッツ,ジー(Leibowitz G)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,A.D.)ら、「培養されたヒト胎児膵臓細胞における細胞死からの保護」、Cell Transplant 9:431−438頁(2000)。
27. イトウ,エス(Itoh S)、イトウ,エフ(Itoh F)、ゴウマンス,エム・ジェイ(Goumans MJ)ら、「smadタンパク質を介する成長因子−ベータファミリーメンバーを形質転換させるシグナル伝達」、Eur J Biochem 267:6954−6967頁(2000)。
28. クスー,アール・エイチ(Xu RH)、チェン,エックス(Chen X)、リー,ディー・エス(Li DS)ら、「Bmp4は、栄養芽細胞へのヒト胎芽幹細胞分化を開始する」、Nat Biotechnol 20:1261−1264頁(2002)。
29. グミエンニイ,ティー・エル(Gumienny TL)、パジェット,アール・ダブリュー(Padgett RW)「tgf−ベータスーパーファミリーシグナル調節の他の側面:細胞外部の思考」、Trends Endocrinol Metab 13:295−299頁(2002)。
30. ミヤザワ,ケイ(Miyazawa K)、シノザキ,エム(Shinozaki M)、ハラ,ティー(Hara T)ら、「tgf−ベータスーパーファミリーシグナル伝達における2つの主要なsmad経路」、Genes Cells 7:1191−1204頁(2002)。
31. シディス,ワイ(Sidis Y)、トルトリエロ,ディー・ヴィー(Tortoriello DV)、ホルメス,ダブリュー・イー(Holmes WE)ら、「フォリスタチン関連タンパク質およびフォリスタチンは、内因性アクチビン対外因性アクチビンを中和する」、Endocrinology 143:1613−1624頁(2002)。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1a】アクチビンAの不在下、hES細胞の分化を示す図である。位相差顕微鏡(上段)および免疫組織化学(下段)によって見られたHSF6細胞の形態および分化状態を示す図である。
【図1b】mEFs(レーン1)またはラミニン(レーン2〜5)における種々の培養条件下でのoct−4およびnanogに関するhES細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示す図である。
【図1c】FACSを用いた細胞表面−抗原発現を比較する代表的実験を示す図である。
【図1d】アクチビンA(A)、NIC(N)、KGF(K)、または3つ全ての組み合わせ(ANK)の存在下、およびCMを添加したFGF2におけるhES細胞の増殖を比較する代表的実験を示す図である。
【図2a】HSF6細胞における多能性のmEF維持に及ぼすアクチビン/フォリスタチンの効果を示す図である。フォリスタチンの1週間(左パネル)および2週間(右パネル)存在下、mEFs上で培養した図1、パネルIのHSF6細胞を示す図である。
【図2b】フォリスタチン存在下ならびに不在下でのoct−4およびnanogに関するmEFs上のHSF6細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示す図である。
【図2c】RT−PCRおよびウェスタンブロット法を用いた、CF−1マウス由来mEFsにおけるアクチビンA転写体ならびにmEF馴化培地における前駆体タンパク質の同定を示す図である。
【図2d】HSF6細胞における成分をシグナル伝達するアクチビン経路の同定を示す図である。
【図3a】アクチビンA NICおよびKGFと共に培養したhES細胞における多能性の長期維持を示す図である。アクチビンA、KGFおよびNICの存在下、20継代培養したHSF6細胞における幹細胞マーカーの分析を示す図である。
【図3b】ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を示す図である。
【図3c】アクチビンA、KGFおよびNICの存在下で培養したhES細胞由来の胚様体における系統特異的マーカーのRT−PCR分析を示す図である。
【0191】
[配列表]
配列番号:01:
インヒビンベータAサブユニット(アクチビンA)ホモサピエンス(PeproTechおよびGenBank X04447)マクロファージ細胞系U937(ATCC CRL 1539))アミノ酸配列:
配列番号:02:
インヒビンベータAサブユニット(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(GenBank X04447)3’−領域マクロファージ細胞系U937(ATCC CRL 1539)核酸配列:
配列番号:03:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(Swiss−Prot P08476)(GenBank M13436)(赤芽球分化誘導タンパク質)(EDF)卵巣アミノ酸配列:
配列番号:04:インヒビンベータBサブユニット−組換えインヒビン
特許文献10(GenBank A14422)アミノ酸配列:
配列番号:05:精巣ホモサピエンスにおけるインヒビンベータBサブユニット(GenBank X72498)アミノ酸配列:
配列番号:06:インヒビンBサブユニット赤芽球分化誘導タンパク質mRNA(EDF)、急性単球性白血病細胞系THP−1、ホモサピエンス(GenBank J03634)アミノ酸配列:
配列番号:07:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot Swiss−Prot Q04998)(GenBank X69619;BC053527)−ハツカネズミ(マウス)アミノ酸配列:
配列番号:08:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P18331)(GenBank M37482)−Rattus norvegicus(ラット)アミノ酸配列:
配列番号:09:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P27092)(GenBank U26946;U42377;M61167;M57407)−Gallus gallus(ニワトリ)アミノ酸配列:
配列番号:10:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P07995)(GenBank U16239;U16238結合;M13274)−Bos taurus(ウシ)アミノ酸配列:
配列番号:11:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P55102)(GenBank D50326)−Equus caballus(ウマ)アミノ酸配列:
配列番号:12:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P03970)(GenBank X03266)−Sus scrofa(ブタ)アミノ酸配列:
配列番号:13:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P43032)(GenBank L19218)−Ovis aries(ヒツジ)アミノ酸配列:
配列番号:14:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Felis catus(ネコ)アミノ酸配列:
配列番号:15:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Danio rerio(ゼブラフィッシュ)アミノ酸配列:
配列番号:16:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Carassius auratus(キンギョ)アミノ酸配列:
配列番号:17:
ケラチノサイト成長因子(PeproTech)−ホモサピエンス(ヒト)アミノ酸配列アミノ酸配列:
配列番号:18:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P21781)(GenBank M60826;S81661)−ホモサピエンス(ヒト)アミノ酸配列:
配列番号:19:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P36363)(GenBank Z22703;U58503;BC052847)−ハツカネズミ(マウス)アミノ酸配列:
配列番号:20:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P79150)(GenBank U80800)−Canis familiaris(イヌ)アミノ酸配列:
配列番号:21:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q9N198)(GenBank AF217463)−Sus scrofa(ブタ)アミノ酸配列:
配列番号:22:
ケラチノサイト成長因子(HBGF−7)(Swiss−Prot Q02195)(GenBank X56551)−Rattus norvegicus(ラット)アミノ酸配列:
配列番号:23:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P48808)(GenBank Z46236)−Ovis aries(ヒツジ)アミノ酸配列:
配列番号:24:
ケラチノサイト成長因子(FGF−7)(GenBank AF420232)−Mustela vison(アメリカミンク)アミノ酸配列:
配列番号:25:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P21781)(GenBank S81661)−ホモサピエンス(ヒト)核酸配列:
配列番号:26:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P36363)(GenBank Z22703)−ハツカネズミ(マウス)核酸配列:
配列番号:27:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P79150)(GenBank U80800)−Canis familiaris(イヌ)核酸配列:
配列番号:28:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q9N198)(GenBank AF217463)−Sus scrofa(ブタ)核酸配列:
配列番号:29:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q02195)(GenBank X56551)−Rattus norvegicus(ラット)核酸配列:
配列番号:30:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P48808)(GenBank Z46236)−Ovis aries(ヒツジ)核酸配列:
配列番号:31:
ケラチノサイト成長因子(FGF−7)(GenBank AF420232)−Mustela vison(アメリカミンク)核酸配列:
配列番号:32:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(GenBank M13436)(赤芽球分化誘導タンパク質)(EDF)卵巣アミノ酸配列:
配列番号:33:
インヒビンBサブユニット−組換えインヒビン
特許文献10(GenBank A14422):
配列番号:34:
精巣ホモサピエンスにおいて成熟サブユニットベータ(A)インヒビンに関してコードする核酸配列(GenBank X72498):
配列番号:35:
ヒト赤芽球分化誘導タンパク質mRNA(EDF)、原資料テキスト:急性単球性白血病細胞系THP−1、ホモサピエンス(GenBank J03634):
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロスレファランス
本出願は、2004年3月10日に出願された特許文献1の出願日の利益を主張し、その全開示の全体が、参照として本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明は、分子および細胞の生物学の分野に関する。より具体的に、本発明は、培養液中の未分化状態における胚幹細胞の増殖、ならびに細胞過程の研究および医学的に有用な製品のための、このような細胞の利用法に関する。
【背景技術】
【0003】
幹細胞はそれらの多能性のために、多くのヒト疾患にとって高い有望性を示している。どんな細胞型にも分化するかれらの能力により、それらは、多数の異なった細胞型、組織、および器官を冒す疾患および障害に関する研究ならびに治療法の開発にとって、貴重な供給源となっている。したがって、それらの研究、未分化状態におけるそれらの増殖および維持、ならびに治療にとっての関心対象である細胞型生産のためのそれらの分化制御に、現在、強い関心が持たれている。
【0004】
健康や生命にとって重要な物質を産生するものを含めて、欠損した、または喪失した身体組織および器官を置換または補足するために、単離された、あるいは新たな遺伝子の導入または欠失もしくは欠失遺伝子の置換によって修飾された成人幹細胞および胚幹細胞などの幹細胞を用いることができるということが提案されてきた。しかし、このタイプの研究およびそれに続く治療にとって必要であるところの、培養液における未分化多能性幹細胞の維持は、明らかに困難である。補足添加物を含有しない培養液に入れると、未分化細胞は、自然に急速な分化を開始し、次いで、典型的には、分裂が遅くなるか分裂を停止させる。したがって、現在、研究および治療開発に実際に利用できる幹細胞はわずかである。この問題を克服するために、研究者は、分化を阻止する一方、細胞の分裂を続行させる外来物質の添加によって幹細胞を未分化状態で培養する方法の発明を試みている。
【0005】
最も広く研究されている2種の胚幹細胞型は、マウス胚幹細胞(mESC)およびヒト胚幹細胞(hESC)である。マウス胚幹細胞における未分化状態および多能性の維持には、マウス線維芽細胞フィーダー層(mEFs)の存在または白血球阻止因子(LIF)によるSTAT3の活性化が必要である。同様に、hESCは典型的に、mEFs上で、または線維芽細胞の増殖から得られた培地中で培養される。ヒト胚幹細胞系は、つい最近、研究に利用できるようになったために、自己複製および分化に関する細胞内経路は、現時点では大部分が不明である。しかし、hESCの増殖要件は、mESCの増殖要件とは著しく異なっているであろうことが、明らかになりつつある。例えば、mESCでの状況とは異なり、mEFs上で増殖させた場合、またはmEFsからの馴化培地で処理した場合、hESCの分化を阻止するためには、STAT3の活性化では十分ではない。また、本出願に関する優先文書の出願日後に発行された報告において、ノギン(noggin)と共に、塩基性線維芽細胞因子(bFGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)の一タイプがhESCの分化を阻止することが開示された(Xu,R.H.ら、2005年)。したがって、該著者らによれば、培養培地へのbFGFの添加により、フィーダー細胞を必要とせずに、hESCの増殖および維持を継続させることができる。
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願第60/552,318号、2004年3月10日出願
【特許文献2】米国特許第5,853,997号
【特許文献3】米国特許第5,976,853号
【特許文献4】米国特許第5,294,538号
【特許文献5】米国特許第6,004,791号
【特許文献6】米国特許第5,589,375号
【特許文献7】米国特許第5,955,592号
【特許文献8】米国特許第5,958,719号
【特許文献9】米国特許第5,952,212号
【特許文献10】国際公開第8606076号、1986年10月23日出願
【非特許文献1】Murrayら、Nuc.Acids Res.、17頁(1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
幹細胞、特に胚幹細胞の培養において、進歩はなされているものの、培養液における、未分化幹細胞の維持および増殖のための実用的で信頼できる方法および材料に対する必要性は依然として存在している。特に、未分化hESCの増殖および維持のための方法および材料に対する必要性が当業界に存在している。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、胚幹細胞などの未分化幹細胞の増殖および維持のための方法、組成物、およびキットを提供する。したがって、本発明は、胚幹細胞における未分化状態および/または多能性の維持に関する。該方法、組成物、およびキットは、研究、研究および医療物質の製造、ならびに疾患および障害、特にヒトを冒す疾患および障害の治療に使用するための幹細胞の培養における使用に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
第1の態様において、本発明は、未分化幹細胞の増殖および維持のための方法を提供する。一般的に、該方法は、幹細胞を、所望の結果を達成する上で十分な時間、該細胞を未分化状態に維持する上で十分な量におけるアクチビンAなどの形質転換増殖因子β(TGFβ)ファミリーメンバーのタンパク質に曝露することを含んでなる。所望の結果は、限定はしないが、特定物質の産生、培養プレート上の培養物の集密化、新たな培養培地へ移すために十分な数の細胞産生(すなわち、継代接種のために)、または対象への移植のために十分な数の細胞産生などの任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。該方法は、幹細胞を、培養液中、限定はしないが、およそ10継代またはそれ以上の複数継代を通して細胞の増殖および維持を可能にする上で十分な量において、KGF(FGF7としても知られている)などの線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーメンバーのタンパク質に曝露することを含んでなり得る。したがって、本発明の方法の種々の形態は、培養液中で少なくとも10継代、未分化状態における幹細胞の増殖および維持をもたらすことができる。同様に、該方法は、幹細胞を、培養液中、およそ10継代、20継代、30継代、またはそれ以上などの複数継代を通して、細胞の増殖および維持を可能にする上で十分な量において、ニコチンアミド(NIC)に曝露することを含んでなり得る。該方法は、フィーダー細胞、馴化培地、および/または白血球阻止因子(LIF)の不在下で、培養液中の幹細胞の増殖および維持を可能にし得る。実施形態において、該方法は、該細胞を多能性の状態に維持する。
【0010】
第2の態様において、本発明は、幹細胞を、未分化または多能性の状態において増殖および/または維持するために使用できる組成物を提供する。一般的に、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖または維持させる上で十分な量および形態のアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、もしくはNIC、またはこれらのうちの2種もしくは全ての組み合わせを含んでなる。上記方法の検討にしたがって、所望の結果は、任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。したがって、複数の実施形態において、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖および/または維持させる上で十分な量のKGFを含み得る。複数の実施形態において、該組成物は、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、幹細胞の少なくとも1種の培養液を、未分化状態において増殖および/または維持させる上で十分な量のNICを含み得る。種々の実施形態において、該組成物は、アクチビンA、KGF、およびNICのうちの2種以上の組み合わせを含んでなる。本発明の組成物は、一般に、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICに加えて、一成分を含んでなる。追加成分は、幹細胞の増殖、または幹細胞もしくは幹細胞によって産生された物質を動物対象またはヒト対象への導入にとって好適な、またはそれに適合性であることが知られている任意の物質であり得る。複数の実施形態において、それは培養培地である。幹細胞の増殖および維持における本発明の組成物の有用性の点で、本発明の組成物は、それら自身、hESCなどの胚幹細胞を含めて、幹細胞を含み得る。
【0011】
第3の態様において、本発明は、胚幹細胞を、未分化状態または多能性状態において増殖および/または維持させる上で必要な材料の一部または全てを含有するキットを提供する。最も基本的形態において、該キットは、所望の結果を達成するために、十分な量の時間、培養液中の幹細胞を、増殖および維持させる上で十分な量のTGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNICを含有する少なくとも1つの容器を含んでなる。所望の結果は、特定物質の検出可能な量の産生、培養プレート上の培養物の集密化、対象への移植のために十分な数の細胞産生などの任意の医学的または科学的な関連結果であり得る。
【0012】
第4の態様において、本発明は、未分化および多能性である幹細胞を提供する。該幹細胞は、本発明の組成物中で増殖および維持される。複数の実施形態において、該幹細胞は、マウス胚のフィーダー層からのフィーダー細胞、馴化培地、および/またはSTAT3活性化を含まない組成物中で提供される。
【0013】
本明細書に組み込まれており、本明細書の一部を構成している添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態の特徴を示しており、文書の説明と一緒になって、本発明の一定の様相を説明する上で役立つものである。
【0014】
次に、本発明の種々の実施形態に対する記述を行う。本発明の一定の実施形態に対する以下の詳細な説明は、決して本発明を限定するものとして考えるべきではなく、当業者に対して、本発明の記述を助けるための種々の実施形態の説明として認識すべきである。
定義:
【0015】
本明細書において別に特に定義されない限り、本文書に用いられる全ての用語は、分子生物学および細胞生物学分野における一般的および慣例的用法にしたがっている。次の用語が以下のように定義される:
【0016】
本明細書に用いられる語の「ある("a","an")」および「該("the")」は、文脈上明らかに別に指示されない限り、単数と複数の双方の意味を含む。
【0017】
本明細書に用いられる用語の「または(もしくは)("or")」は、挙げられた選択肢のうちの1つ、またはそれらの2つ以上の組み合わせを意味する。
【0018】
本明細書に用いられる用語の「含んでなる("comprising")」が、ある方法におけるステップの記述の前に置かれている場合、該方法が、明記されたステップに追加して、1つまたは複数のステップを包含すること、ならびに、1つまたは複数の追加ステップが、記述されたステップの前、該ステップとの間、および/または後に実施できることを意味する。例えば、ステップa、b、およびcを含んでなる方法は、ステップa、b、x、およびcの方法、ステップa、b、c、およびxの方法、ならびにステップx、a、b、およびcの方法を包含する。さらに、用語の「含んでなる」が、ある方法におけるステップの記述の前に置かれている場合、文脈上明らかに別に指示されない限り、挙げられたステップの連続的実施を必ずしも必要としない。例えば、ステップa、b、cを含んでなる方法は、ステップa、c、bの順序、ステップc、b、aの順序、およびステップc、a、bの順序でステップを実施する方法を包含する。
【0019】
本明細書に用いられる用語の「接触("contacting")」および「曝露("exposing")」は、交換可能に用いられ、細胞および物質に関連して用いられる場合は、「接触」または「曝露」細胞を生成させるために、該物質を、該細胞に接触させることが可能な場所に、および条件下に置くことを意味する。
【0020】
本明細書に用いられる用語の「細胞("cell")」とは、単一の細胞ならびに集団(すなわち、1つ超)の細胞を言う。該集団は、1種の細胞型を含んでなる純粋集団であり得る。あるいは、該集団は、1種超の細胞型を含んでなり得る。本発明において、細胞集団が含み得る細胞型の数に制限はない。さらに、本明細書に用いられる用語の「細胞培養物("cell culture")」とは、細胞の任意のインビトロ培養物を言う。この用語には、連続的細胞系(例えば、不死表現型)、一次細胞培養物、有限細胞系(例えば、非形質転換細胞)、およびインビトロで維持された卵母細胞および胚などの他の任意の細胞集団が含まれる。
【0021】
本明細書に用いられる用語の「混合細胞培養物("mixed cell culture")」とは、2種以上の細胞型の混合物を言う。幾つかの実施形態において、該細胞は、遺伝子設計されていない細胞系であるが、他の実施形態では、該細胞は、遺伝子設計された細胞系である。いくつかの実施形態において、該細胞は、遺伝子設計された分子を含有する。本発明は、限定はしないが、使用された細胞型の全てが遺伝子設計されていない混合細胞培養物、1種以上の細胞型が遺伝子設計されており、残りの細胞型は遺伝子設計されていない混合混合物、および全ての細胞型が遺伝子設計されている混合物を含めて、テラトーマの作製、または欠失、同定、および/またはサンプル中のアポトーシスの定量に好適な細胞型の任意の組み合わせを包含する。
【0022】
本明細書に用いられる用語の「一次細胞("primary cell")」は、培養なしで、ヒトなどの動物の組織(例えば、血液)または器官から直接得られる細胞である。典型的に、しかし必ずしもそうではないが、一次細胞は、老化および/または増殖の停止の前に、インビトロで10以下の継代を経ることができる。対照的に、「培養細胞」は、インビトロで10以上の継代を維持および/または増殖させた細胞である。
【0023】
本明細書に用いられる用語の「培養細胞("cultured cells")」とは、同じ出所の一次細胞に比較して、増殖の停止および/または老化の前に、インビトロでより多数の継代ができる細胞を言う。培養細胞には、「細胞系("cell lines") 」および「一次培養細胞("primary cultured cells")」が含まれる。
【0024】
本明細書に用いられる用語の「細胞系("cell line")」とは、一次細胞系、有限細胞系、連続細胞系、および形質転換細胞系などのインビトロで培養される細胞を言う。該用語は、該細胞が培養において無限回、継代できることを必要としない。細胞系は、自然に、または形質転換によって作製できる。
【0025】
本明細書に用いられる用語の「一次細胞培養物("primary cell culture")」および「一次培養物("primary culture")」とは、動物または昆虫の組織などの細胞からインビボで直接得られた細胞培養物を言う。これらの培養物は成人ならびに胎児の組織に由来し得る。
【0026】
本明細書に用いられる用語の「単層("monolayer")」、「単層培養物("monolayer culture")」、および「単層細胞培養物("monolayer cell culture")」とは、基質に接着していて、1個の細胞の厚さの層として増殖する細胞を言う。単層細胞は、限定はしないが、フラスコ、管、カバーガラス(例えば、シェルバイアル)、ローラーボトルなどの任意のフォーマットにおいて増殖できる。また、単層細胞は、限定はしないが、ビーズなどのマイクロキャリアに結合して増殖できる。
【0027】
本明細書に用いられる用語の「懸濁液("suspension")」および「懸濁培養物("suspension culture")」とは、基質に結合せずに生存し、増殖する細胞を言う。懸濁培養物は、造血細胞、形質転換細胞系、および悪性腫瘍からの細胞を用いて作製できる。
【0028】
本明細書に用いられる用語の「培養培地("culture media")」および「細胞培養培地("cell culture media")」とは、インビトロでの細胞の増殖(すなわち、細胞培養物)を支持する上で好適な培地を言う。例えば、この用語が、特定の培養培地に限定されることは意図されていない。該定義は、増殖培地ならびに維持培地を包含することが意図されている。実際、該用語は、対象の細胞培養物の増殖に好適な培養培地を包含することが意図されている。
【0029】
本明細書に用いられる用語の「インビトロ("in vitro")」とは、人工的環境ならびに人工的環境内で生じる過程または反応を言う。インビトロ環境は、限定はしないが、試験管および細胞培養物によって例示される。
【0030】
本明細書に用いられる用語の「インビボ("in vivo")」とは、自然環境(例えば動物または細胞)ならびに自然環境内で生じる過程または反応を言う。
【0031】
本明細書に用いられる用語の「増殖("proliferation")」または「増加("growth")」は、交換可能に用いられ、細胞数の増加を言う。対照的に、「維持("maintenance")」は、細胞または細胞集団の継続的な生存を意味し、必ずしも細胞数の増加を伴う生存を意味しない。
【0032】
本明細書に用いられる用語の「分化("differentiate")」およびその全ての形態とは、細胞が経る成熟過程であって、それによって、細胞が弁別的特長を発現し、および/または特定の機能を果たし、および/または分裂しにくくなる過程を言う。
【0033】
本明細書に用いられる用語の「単離("isolate")」および「精製("purify")」、ならびにそれらの全ての形態とは、サンプルから少なくとも1種の不純物(タンパク質および/または核酸配列)の量を減少させることを言う。したがって、精製は、サンプル中の所望のタンパク質および/または核酸配列の量の「濃縮("enrichment")」(すなわち、増加)をもたらす。
【0034】
本明細書に用いられる用語の「アミノ酸配列("amino acid sequence")」とは、天然の、または人工のタンパク質分子のアミノ酸配列を言う。「アミノ酸配列」および「ポリペプチド("polypeptide")」、「ペプチド("peptide")」、または「タンパク質("protein")」などの同様な用語は、そのアミノ酸配列を、挙げられたタンパク質分子に関連した完全な天然アミノ酸配列に限定することを意味しない。
【0035】
本明細書に用いられる用語の「受容体タンパク質("receptor proteins")」および「膜受容体タンパク質("membrane receptor proteins")」とは、リガンド(例えば、gp130、微生物分子;LPS、LTAなどのエンドトキシン;dsRNAなど)に結合する膜全域のタンパク質、またはその一部を言う。
【0036】
本明細書に用いられる用語の「リガンド("ligand")」とは、第2の分子に結合する分子を言う。ある特定の分子は、リガンドか第2の分子かのいずれか、または双方を言うことができる。第2の分子の例としては、該リガンドの受容体、該リガンドに結合する抗体が挙げられる。
【0037】
本明細書に用いられる用語の「活性化("activating")」は、生化学的応答(キナーゼ活性など)および/または細胞応答(細胞増殖など)に関する場合、生化学的応答および/または細胞応答の増加を言う。本明細書に用いられる用語の「活性化された」とは、細胞に関する場合、細胞の生理を変化させ、それを生物学的に応答させる方向へ移行させ、生物学的に「活性」になり、したがって、「活性化された」応答を受けた細胞を言う。例えば、単球は活性化されてマクロファージへと成熟する。他に、例えばマクロファージは、エンドトキシン(LPSなど)と接触すると活性化され、該活性化マクロファージは、活性化に関連した分子(例えば、iNOS、MMP−12メタロエラスターゼなど)の濃度増加および/またはタイプを産生し得る。他の例では、未熟樹状細胞が活性化されて、機能的な樹状細胞へと成熟する。「活性化された」細胞は、増加または増殖を経ることはあり得るが、必ずしもそうであるとは限らない。
【0038】
本明細書に用いられる用語の「天然("naturally occurring")」、「野生型("wild-type")」、および「wt」は、分子または組成物(ヌクレオチド配列、アミノ酸配列、細胞、アポトーシスブレブ、外部ホスファチジルセリンなど)に適用される場合、該分子または組成物を天然に見出すことができ、人によって意図的に改変されていないことを意味する。例えば、天然のポリペプチド配列とは、ポリペプチド配列が人によって意図的に改変されていない、天然の供給源から単離できる生物に存在するポリペプチド配列を言う。
【0039】
本明細書に用いられる用語の「に由来する("derived from")」および「から確立した("established from")」とは、本明細書に開示された細胞に関する場合、限定はしないが、ウィルスによる感染、DNA配列のトランスフェクション、例えば、化学物質、放射線などを用いる処理および/または変異誘発、培養親細胞に含有されるいずれかの細胞の選択(連続培養などにより)など、いずれかの操作を用いて、直系卑属における親細胞から得られた(例えば、単離、精製などされた)細胞を言う。誘導細胞は、成長因子、サイトカイン、サイトカイン処理の選択進行、接着、接着欠損、分別処理などに対する応答によって、混合集団から選択できる。
【0040】
本明細書に用いられる用語の「生物学的に活性("biologically active")」とは、インビボで構造的、調節性、および/または生化学的機能を有する分子(例えば、ペプチド、核酸配列、炭水化物分子、有機または無機分子など)を言う。
【0041】
分子の濃度および/または現象に関して、別に定義されない限り、用語の「減少させる"reduce"」、「阻害する("inhibit")」、「減少させる("diminish")」、「抑制する("suppress")」、「減少する("decrease")」、およびそれらの全ての形態は、第2のサンプルに対して、第1のサンプルにおけるいずれかの分子の濃度(例えば、タンパク質、核酸配列、タンパク質配列、増殖、分化速度など)、現象(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、触媒活性、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、細胞分化、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、第1のサンプルにおける分子の量および/または現象が、検出可能な量で、第2のサンプルにおけるものよりも低いことを意味する。
【0042】
分子の濃度および/または現象に関して、別に定義されない限り、用語の「増加させる("increase")」、「上昇させる("elevate")」、「上げる("raise")」、およびそれらの全ての形態は、第2のサンプルに対して、第1のサンプルにおけるいずれかの分子の濃度(例えば、タンパク質、核酸配列、タンパク質配列、増殖、分化速度など)、現象(例えば、タンパク質−タンパク質相互作用、触媒活性、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、細胞分化、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、第1のサンプルにおける分子の量および/または現象が、業界で認められた統計的解析法を用いて、統計的に有意な量で、第2のサンプルにおけるものよりも高いことを意味する。
【0043】
本明細書に用いられる用語の「アポトーシス("apoptosis")」とは、後生動物細胞において、内因性の細胞自殺プログラムの活性化に続いて生じる非壊死的死の過程を言う。アポトーシスは、後生動物の適切な発生およびホメオスタシスにおいて正常な過程であり、通常、細胞死に至る。また、アポトーシスは、微生物感染によって病態的に引き起こされ、アポトーシスに対する感受性の増大および/または完全死をもたらす。アポトーシスは連続的、特徴的な形態学的および生物学的変化を含む。アポトーシスの初期のマーカーの1つは、形質膜ホスファチジルセリンの、内側から外側への反転であり、形質膜の「ゼイオーシス(zeiosis)」と呼ばれる小胞形成を伴い、アポトーシス体として、RNAおよびDNAなどの細胞物質を含有する小胞を放出する。アポトーシス時、細胞拡張に続いて、アポトーシス体の放出による縮化および細胞の溶解、核の崩壊、および内因性ヌクレアーゼの活性化による一定のヌクレオソーム内部位における核染色体の断片化がある。アポトーシス体は、典型的には、他の細胞、特に、単球、マクロファージ、未熟樹状細胞などの免疫細胞によって貪食される。アポトーシスを受ける能力の低下によって、細胞増殖の増加を必ずしも必要とせずに(含んでもよいが)、細胞生存率の増加がもたらされることを、当業者は認識している。したがって、本明細書に用いられる用語の「アポトーシスを減少させる("reduce apoptosis")」と「生存率を増加させる("increase survival")」は等価である。同様に、本明細書に用いられる用語の「アポトーシスを増加させる("increase apoptosis")」と「減少させた生存率(" reduced survival")」は等価である。
【0044】
本明細書に用いられる用語の「細胞応答("cellular response")」とは、細胞による活性の増加または減少を言う。例えば「細胞応答」は、限定はしないが、アポトーシス、死、DNA断片化、小胞形成、増殖、分化、接着、移入、DNA/RNA合成、遺伝子の転写および翻訳および/またはこのような過程のサイトカイン分泌または停止を構成し得る。「細胞応答」は、脱リン酸化、リン酸化、カルシウム流出、標的分子開裂、タンパク質−タンパク質相互作用、核酸−核酸相互作用、および/またはタンパク質/核酸相互作用などの増加または減少を含み得る。本明細書に用いられる用語の「標的分子開裂("target molecule cleavage")」とは、分子の割裂(例えば、アポトーシスの過程、プロカスパーゼの断片への開裂、予想できるサイズの断片へのDNAの開裂などにおける)を言う。本明細書に用いられる用語の「相互作用」は、2種以上の分子の互いに対する相互的な作用または影響を言う。
【0045】
本明細書に用いられる用語の「遺伝子導入("transgenic")」は、細胞に関して用いられる場合、導入遺伝子を含有した、または導入遺伝子の導入によってそのゲノムが変化した細胞を言う。本明細書に用いられる用語の「遺伝子導入」は、組織に関して用いられる場合、導入遺伝子を含有した、または導入遺伝子の導入によってそのゲノムが変化した1種または複数種の細胞を含む組織を言う。遺伝子導入細胞および遺伝子導入組織は、当業者に公知のものなどの人の介入によって、核酸(通常はDNA)を含んでなる「導入遺伝子」を標的細胞内へ導入すること、または導入遺伝子を標的細胞の染色体内へ組み込むことなど、いくつかの方法によって作製できる。
【0046】
本明細書に用いられる用語の「導入遺伝子("transgene")」は、実験的操作によって細胞内へ導入される任意の核酸配列を言う。導入遺伝子は、「内在性DNA配列("endogenous DNA sequence")」または「異種DNA配列("heterologous DNA sequence")」(すなわち、「外来DNA("foreign DNA")」)であり得る。用語の「内在性DNA配列」とは、それが、天然の配列に比較して、何らかの改変(例えば、点変異、選択性マーカー遺伝子の存在など)を含有しない限り、それが導入される細胞内に天然に見られるヌクレオチド配列を言う。用語の「異種DNA配列」とは、天然では結合しない、または天然とは異なる位置に結合する核酸配列に結合する、または結合するように操作されるヌクレオチド配列を言う。異種DNAは、それが導入される細胞にとって内在性でなく、他の細胞から得たものである。また、異種DNAには、何らかの改変を含有する内在性DNA配列も含まれる。一般に、しかし、必ずしもそうとは限らないが、異種DNAは、それが発現される細胞によって、通常は産生されないRNAおよびタンパク質をコードする。異種DNAの例としては、レポーター遺伝子、転写および翻訳調節配列、選択性マーカータンパク質(例えば、薬物耐性を与えるタンパク質)などが挙げられる。
【0047】
本明細書に用いられる用語の「試剤("agent")」、「試験試剤("test agent")」、「分子("molecule")」、「試験分子("test molecule")」、「化合物("compound")」、および「試験化合物("test compound")」は、本明細書において交換可能に用いられ、任意の出所(例えば、植物、動物、原生生物、および環境源など)から得られたか、または任意の方法(例えば、天然分子の精製、化学合成、および遺伝子工学法など)により調製された任意のタイプの分子(例えば、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、有機分子、および無機分子など)任意の組み合わせ分子、例えば糖脂質など)を言う。したがって、これらの用語は、「物質("substance")」という用語と同義である。一実施形態において、用語の「試験試剤」とは、疾患、疾病、病態または身体機能の障害を治療または予防するために使用できる任意の化学物質、薬剤、薬物などを言う。試験試剤は、公知の治療薬と潜在的治療薬との双方を含む。試験試剤は、本発明のスクリーニング法を用いたスクリーニングによって治療用であることを判定できる。「公知の治療薬」とは、このような治療および予防に効果的であることが示された(動物試験またはヒトへの投与による先行経験により)治療薬を言う。言い替えると、公知の治療薬は、疾患(例えば癌)の治療に有効である試剤に限定されない。試剤の例としては、限定はしないが、抗体、リボザイム配列などの核酸配列、および本明細書にさらに記載されている他の試剤が挙げられる。本発明の方法によって同定される、および/または本発明の方法に使用される試験試剤としては、任意の出所(例えば、植物、動物、および環境源など)から得られたか、または任意の方法(例えば、天然分子の精製、化学合成、および遺伝子工学法など)により調製された任意のタイプの分子(例えば、ペプチド、核酸、炭水化物、脂質、有機分子、および無機分子など)が挙げられる。
【0048】
別に示されない限り、「正確に("exactly")」、「精密に("precisely")」、または他の等価な用語により、本明細書に用いられる分子量、反応条件などの成分の量、性質を表す数字は全て、全ての場合に、用語の「約」に変更されるものとして認識すべきであり、したがって、当然、実際に挙げられている数字の10%超または未満までの変更が含まれる。したがって、逆の指示がない限り、本明細書における数値パラメータは、本発明により得られることが求められている所望の性質に依って、変化し得る近似値である。いずれにせよ、各数値パラメータは少なくとも、報告された有意位数の数を考慮に入れ、また、通常の切捨て法を適用して解釈すべきである。本発明の広範囲に記載されている数値範囲および数値パラメータは近似値ではあるが、特定例における数値は、可能な限り精密に報告されている。しかし、いずれの数値も当然、数値の試験測定において見出される誤差から必然的に生じる標準偏差を含む。
【0049】
本明細書に用いられる用語の「変更する("alter")」およびその形態は全て、任意の分子(例えば、核酸配列、タンパク質配列、アポトーシス小胞、外部ホスファチジルセリンなど)の濃度、および/または現象(例えば、アポト−シス、細胞死、細胞生存、細胞増殖、カスパーゼ開裂、受容体二量化、受容体複合体形成、DNA断片化、分子転位、分子への結合、核酸配列の発現、核酸配列の転写、酵素活性など)に関して、量が客観的に判定されるか、および/または主観的に判定されるかに関わりなく、該分子の量および/または現象の増加または減少を言う。
【0050】
具体的に呼称された任意のタンパク質(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)に対する本明細書における言及は、何らかの方法によって検出可能な生物学的活性(本明細書に開示された)の少なくとも1つを有する具体的に呼称されたタンパク質のいずれかの、および全ての等価断片、融合蛋白質、および変異体を言う。したがって、タンパク質の呼称は、本明細書に総称されているタンパク質の特定形態を含めて、そのタンパク質の全ての形態を含む。
【0051】
用語の「断片("fragment")」とは、タンパク質(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)に関する場合、4つの連続アミノ酸残基から、アミノ酸残基全体から1つのアミノ酸残基を引いた範囲までのサイズであり得る、そのタンパク質の一部を言う。したがって、「少なくともアミノ酸配列の一部」を含んでなるポリペプチド配列は、「断片」と同等であり、該アミノ酸配列の4つの連続アミノ酸残基からアミノ酸配列全体を含んでなる。
【0052】
本明細書に用いられる用語の「変異体("variant")」および「相同体("homolog")」(アクチビンAポリペプチド、KGFなど)は、1つまたは複数のアミノ酸の挿入、欠失、および/または置換によって、参照タンパク質と異なるタンパク質を言い、該挿入、欠失、および/または置換は、該参照タンパク質の主要な生物学的機能を変化させないことが好ましい。変異体および相同体としては、参照タンパク質と共通の構造的および機能的特徴を有しているが、異なる種のタンパク質が挙げられる。複数の実施形態において、置換は、1つまたは複数のアミノ酸の保存された変換である。アミノ酸の「保存的置換("conservative substitution")」という用語は、そのアミノ酸を、同様の疎水性、極性、および/または構造を有する他のアミノ酸に置き換えることを言う。例えば、中性の側鎖を有する以下の脂肪族アミノ酸は、他のアミノ酸に保存的に置換できるアミノ酸である:グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、およびトレオニン。他のアミノ酸に保存的に置換できる、中性の側鎖を有する芳香族アミノ酸としては、フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファンが挙げられる。システインおよびメチオニンは、他のアミノ酸に保存的に置換できる、イオウ含有アミノ酸である。また、アスパラギンは、グルタミンに保存的に置換でき、その逆もあり得る。双方のアミノ酸とも、ジカルボン酸アミノ酸のアミドだからである。また、アスパラギン酸(アスパルテート)はグルタミン酸(グルタメート)に保存的に置換できる。双方とも酸性の、荷電した(親水性)アミノ酸だからである。また、リジン、アルギニン、およびヒスチジンは、各々、塩基性の、荷電した(親水性)アミノ酸であるため、互いに保存的に置換できる。生物学的および/または免疫学的活性を失わせることなく、どんな、また、どのくらい多くのアミノ酸残基を置換、挿入または欠失できるかを判定する指針は、当業界に良く知られたコンピュータプログラム、例えば、DNAStar(商標)ソフトウェアを用いて見出すことができる。したがって、TGFβファミリーおよびFGFファミリーのメンバーなど、タンパク質ファミリーのメンバーは、該ファミリーの他のメンバーの変異体および相同体を含有する。
【0053】
「TGFβファミリー」は、公知のTGFβファミリーメンバーの構造的および機能的特徴を有するタンパク質を意味する。タンパク質のTGFβファミリーは、構造的側面と機能的側面の双方から十分に特性化されている。それには、TGFβタンパク質系、インヒビン類(インヒビンAおよびインヒビンBなど)、アクチビン類(アクチビンA、アクチビンB、およびアクチビンABなど)、MIS(ミュラー抑制物質)、BMP(骨形成タンパク質)、dpp(デカペンタプレジック)、Vg−1、MNSF(モノクローナル非特異的抑制因子)、および他のものが含まれる。TGFβファミリーメンバーの十分に特性化された種々の活性のうちで、TGFβは、通常の、および形質転換された上皮細胞、内皮細胞、線維芽細胞、神経細胞、リンパ系細胞、および他の造血細胞タイプにとって、最も強力な成長因子であると考えられている。このタンパク質ファミリーの活性は、種々の細胞タイプ上の一定の受容体に対する特異的結合に基づいている。このファミリーのメンバーでは、配列の同一性、特にそれらの機能に関連するC末端における配列同一性の領域を共有している。TGFβファミリーには、アミノ酸配列同一性の少なくとも1つの領域を全てが共有している100以上の異なるタンパク質が含まれる。
【0054】
該ファミリーのメンバーとしては、限定はしないが、以下のGenBank登録番号によって同定されるタンパク質が挙げられる:P07995、P18331、P08476、Q04998、P03970、P43032、P55102、P27092、P42917、P09529、P27093、P04088、Q04999、P17491、P55104、Q9WUK5、P55103、O88959、O08717、P58166、O61643、P35621、P09534、P48970、Q9NR23、P25703、P30884、P12643、P49001、P21274、O46564、O19006、P22004、P20722、Q04906、Q07104、P30886、P18075、P23359、P22003、P34821、P49003、Q90751、P21275、Q06826、P30885、P34820、Q29607、P12644、Q90752、O46576、P27539、P48969、Q26974、P07713、P91706、P91699、P27091、O42222、Q24735、P20863、O18828、P55106、Q9PTQ2、O14793、O08689、O42221、O18830、O18831、O18836、O35312、O42220、P43026、P43027、P43029、O95390、Q9R229、O93449、Q9Z1W4、Q9BDW8、P43028、Q7Z4P5、P50414、P17246、P54831、P04202、P01137、P09533、P18341、O19011、Q9Z1Y6、P07200、Q9Z217、095393、P55105、P30371、Q9MZE2、Q07258、Q96S42、P97737、AAA97415.1、NP_776788.1、NP_058824.1、EAL24001.1、1S4Y、NP_001009856.1、NP_032406.1、NP_999193.1、XP_519063.1、AAG17260.1、CAA40806.1、NP_001009458.1、AAQ55808.1、AAK40341.1、AAP33019.1、AAK21265.1、AAC59738.1、CAI46003.1、B40905、AAQ55811.1、AAK40342.1、XP_540364.1、P55102、AAQ55810.1、NP_990727.1、CAA51163.1、AAD50448.1、JC4862、PN0504、BAB17600.1、AAH56742.1、BAB17596.1、CAG06183.1、CAG05339.1、BAB17601.1、CAB43091.1、A36192、AAA49162.1、AAT42200.1、NP_789822.1、AAA59451.1、AAA59169.1、XP_541000.1、NP_990537.1、NP_002184.1、AAC14187.1、AAP83319.1、AAA59170.1、BAB16973.1、AAM66766.1、WFPGBB、1201278C、AAH30029.1、CAA49326.1、XP_344131.1、AAH48845.1、XP_148966.3、I48235、B41398、AAH77857.1、AAB26863.1、1706327A、BAA83804.1、NP_571143.1、CAG00858.1、BAB17599.1、BAB17602.1、AAB61468.1、PN0505、PN0506、CAB43092.1、BAB17598.1、BAA22570.1、BAB16972.1、BAC81672.1、BAA12694.1、BAA08494.1、B36192、C36192、BAB16971.1、NP_034695.1、AAA49160.1、CAA62347.1、AAA49161.1、AAD30132.1、CAA58290.1、NP_005529.1、XP_522443.1、AAM27448.1、XP_538247.1、AAD30133.1、AAC36741.1、AAH10404.1、NP_032408.1、AAN03682.1、XP_509161.1、AAC32311.1、NP_651942.2、AAL51005.1、AAC39083.1、AAH85547.1、NP_571023.1、CAF94113.1、EAL29247.1、AAW30007.1、AAH90232.1、A29619、NP_001007905.1、AAH73508.1、AAD02201.1、NP_999793.1、NP_990542.1、AAF19841.1、AAC97488.1、AAC60038.1、NP_989197.1、NP_571434.1、EAL41229.1、AAT07302.1、CAI19472.1、NP_031582.1、AAA40548.1、XP_535880.1、NP_037239.1、AAT72007.1、XP_418956.1、CAA41634.1、BAC30864.1、CAA38850.1、CAB81657.2、CAA45018.1、CAA45019.1、BAC28247.1、NP_031581.1、NP_990479.1、NP_999820.1、AAB27335.1、S45355、CAB82007.1、XP_534351.1、NP_058874.1、NP_031579.1、1REW、AAB96785.1、AAB46367.1、CAA05033.1、BAA89012.1、1ES7、AAP20870.1、BAC24087.1、AAG09784.1、BAC06352.1、AAQ89234.1、AAM27000.1、AAH30959.1、CAG01491.1、NP_571435.1、1REU、AAC60286.1、BAA24406.1、A36193、AAH55959.1、AAH54647.1、AAH90689.1、CAG09422.1、BAD16743.1、NP_032134.1、XP_532179.1、AAB24876.1、AAH57702.1、AAA82616.1、CAA40222.1、CAB90273.2、XP_342592.1、XP_534896.1、XP_534462.1、1LXI、XP_417496.1、AAF34179.1、AAL73188.1、CAF96266.1、AAB34226.1、AAB33846.1、AAT12415.1、AAO33819.1、AAT72008.1、AAD38402.1、BAB68396.1、CAA45021.1、AAB27337.1、AAP69917.1、AAT12416.1、NP_571396.1、CAA53513.1、AAO33820.1、AAA48568.1、BAC02605.1、BAC02604.1、BAC02603.1、BAC02602.1、BAC02601.1、BAC02599.1、BAC02598.1、BAC02597.1、BAC02595.1、BAC02593.1、BAC02592.1、BAC02590.1、AAD28039.1、AAP74560.1、AAB94786.1、NP_001483.2、XP_528195.1、NP_571417.1、NP_001001557.1、AAH43222.1、AAM33143.1、CAG10381.1、BAA31132.1、EAL39680.1、EAA12482.2、P34820、AAP88972.1、AAP74559.1、CAI16418.1、AAD30538.1、XP_345502.1、NP_038554.1、CAG04089.1、CAD60936.2、NP_031584.1、B55452、AAC60285.1、BAA06410.1、AAH52846.1、NP_031580.1、NP_036959.1、CAA45836.1、CAA45020.1、Q29607、AAB27336.1、XP_547817.1、AAT12414.1、AAM54049.1、AAH78901.1、AAO25745.1、NP_570912.1、XP_392194.1、AAD20829.1、AAC97113.1、AAC61694.1、AAH60340.1、AAR97906.1、BAA32227.1、BAB68395.1、BAC02895.1、AAW51451.1、AAF82188.1、XP_544189.1、NP_990568.1、BAC80211.1、AAW82620.1、AAF99597.1、NP_571062.1、CAC44179.1、AAB97467.1、AAT99303.1、AAD28038.1、AAH52168.1、NP_001004122.1、CAA72733.1、NP_032133.2、XP_394252.1、XP_224733.2、JH0801、AAP97721.1、NP_989669.1、S43296、P43029、A55452、AH32495.1、XP_542974.1、NP_032135.1、AAK30842.1、AAK27794.1、BAC30847.1、EAA12064.2、AAP97720.1、XP_525704.1、AAT07301.1、BAD07014.1、CAF94356.1、AAR27581.1、AAG13400.1、AAC60127.1、CAF92055.1、XP_540103.1、AAO20895.1、CAF97447.1、AAS01764.1、BAD08319.1、CAA10268.1、NP_998140.1、AAR03824.1、AAS48405.1、AAS48403.1、AAK53545.1、AAK84666.1、XP_395420.1、AAK56941.1、AAC47555.1、AAR88255.1、EAL33036.1、AAW47740.1、AAW29442.1、NP_722813.1、AAR08901.1、AAO15420.2、CAC59700.1、AAL26886.1、AAK71708.1、AAK71707.1、CAC51427.2、AAK67984.1、AAK67983.1、AAK28706.1、P07713、P91706、P91699、CAG02450.1、AAC47552.1、NP_005802.1、XP_343149.1、AW34055.1、XP_538221.1、AAR27580.1、XP_125935.3、AAF21633.1、AAF21630.1、AAD05267.1、Q9Z1W4、NP_031585.2、NP_571094.1、CAD43439.1、CAF99217.1、CAB63584.1、NP_722840.1、CAE46407.1、
【0055】
XP_417667.1、BAC53989.1、BAB19659.1、AAM46922.1、AAA81169.1、AAK28707.1、AAL05943.1、AAB17573.1、CAH25443.1、CAG10269.1、BAD16731.1、EAA00276.2、AAT07320.1、AAT07300.1、AAN15037.1、CAH25442.1、AAK08152.2、2009388A、AAR12161.1、CAG01961.1、CAB63656.1、CAD67714.1、CAF94162.1、NP_477340.1、EAL24792.1、NP_001009428.1、AAB86686.1、AAT40572.1、AAT40571.1、AAT40569.1、NP_033886.1、AAB49985.1、AAG39266.1、Q26974、AAC77461.1、AAC47262.1、BAC05509.1、NP_055297.1、XP_546146.1、XP_525772.1、NP_060525.2、AAH33585.1、AAH69080.1、CAG12751.1、AAH74757.2、NP_034964.1、NP_038639.1、O42221、AAF02773.1、NP_062024.1、AAR18244.1、AAR14343.1、XP_228285.2、AAT40573.1、AAT94456.1、AAL35278.1、AAL35277.1、AAL17640.1、AAC08035.1、AAB86692.1、CAB40844.1、BAC38637.1、BAB16046.1、AAN63522.1、NP_571041.1、AAB04986.2、AAC26791.1、AAB95254.1、BAA11835.1、AAR18246.1、XP_538528.1、BAA31853.1、AAK18000.1、XP_420540.1、AAL35276.1、AAQ98602.1、CAE71944.1、AAW50585.1、AAV63982.1、AAW29941.1、AAN87890.1、AAT40568.1、CAD57730.1、AAB81508.1、AAS00534.1、AAC59736.1、BAB79498.1、AAA97392.1、AAP85526.1、NP_999600.2、NP_878293.1、BAC82629.1、CAC60268.1、CAG04919.1、AAN10123.1、CAA07707.1、AAK20912.1、AAR88254.1、CAC34629.1、AAL35275.1、AAD46997.1、AAN03842.1、NP_571951.2、CAC50881.1、AAL99367.1、AAL49502.1、AAB71839.1、AAB65415.1、NP_624359.1、NP_990153.1、AAF78069.1、AAK49790.1、NP_919367.2、NP_001192.1、XP_544948.1、AAQ18013.1、AAV38739.1、NP_851298.1、CAA67685.1、AAT67171.1、AAT37502.1、AAD27804.1、AAN76665.1、BAC11909.1、XP_421648.1、CAB63704.1、NP_037306.1、A55706、AAF02780.1、CAG09623.1、NP_067589.1、NP_035707.1、AAV30547.1、AAP49817.1、BAC77407.1、AAL87199.1、CAG07172.1、B36193、CAA33024.1、NP_001009400.1、AAP36538.1、XP_512687.1、XP_510080.1、AAH05513.1、1KTZ、AAH14690.1、AAA31526.1。
【0056】
「FGFファミリー」とは、公知のFGFファミリーメンバーの構造的かつ機能的と特徴を有するタンパク質を意味する。タンパク質のFGFファミリーは、構造的かつ機能的態様の双方を十分に特徴づけられる。タンパク質のFGFファミリーは、特定のFGFシリーズのタンパク質(FGF1およびFGF2)、K−FGF(カポジ肉腫に見られる)、およびKGFタンパク質など、少なくとも20の異なるメンバー(変異体および相同体を含まず)を含む。今日まで同定されているこのファミリーのメンバーは、30〜70%アミノ酸相同性を示す。
【0057】
該ファミリーのメンバーとしては、限定はしないが、以下のGenBank登録番号により同定されているものが挙げられる:P21781、P79150、P48808、Q9N198、P36363、Q02195、P70492、O15520、O35565、Q9ESS2、Q9HCT0、P36364、P54130、P31371、O43320、Q91875、Q9NP95、O54769、P48801、P36386、P05524、P11487、P48802、Q92915、P12034、P48807、P15656、P70379、P48806、Q8R5L7、P48805、P70377、P48804、Q92913、P61329、Q11184、P10767、Q92914、P21658、P70378、P08620、P61148、Q6I6M7、P48800、P34004、P15655、P13109、P09038、P48803、Q6PBT8、P05230、P03969、Q7SIF8、P20003、P48798、P12226、Q6GLR6、P20002、P03968、Q7M303、P19596、Q60487_3、Q6SJP8、P48799、O76093、O89101、O88182、P11403、O60258、P63075、P37237、Q9N1S8、P55075、Q90722、Q805B2、O35622、O95750、Q9JJN1、Q9NSA1、Q9GZV9、P41444、O10284、Q9EPC2、Q8VI82、O62682、Q9JYA0、Q9JT82、P01030_3、NP_002000.1、AAA67335.1、AAX19003.1、NP_001003237.1、NP_001009235.1、NP_032034.1、S26049、AAF26734.1、BAC39707.1、NP_071518.1、AAL16059.1、AAG31597.1、BAD84165.1、AAH88532.1、AAR87872.1、B46289、C46289、NP_001007762.1、CAB90393.1、D46289、NP_004456.1、XP_526931.1、NP_037083.1、BAB60779.1、AAM46926.1、CAG46489.1、NP_032028.1、BAD74123.1、AAL05875.1、AAK59700.1、NP_001009230.1、AAR37413.1、NP_990027.1、CAB76368.1、CAD29182.1、AAC78789.1、CAG08586.1、NP_878290.1、AAL16959.1、NP_570107.1、NP_075793.1、AAH10956.1、BAC57976.1、AAQ93357.1、AAC25096.1、AAL16963.1、AAO25617.1、AAG29501.1、NP_989730.1、NP_998966.1、CAC17692.1、NP_038546.1、NP_037084.1、NP_003859.1、XP_420304.1、NP_068639.1、BAB71729.1、AAT85804.1、NP_085117.1、CAF99081.1、NP_076451.1、NP_085113.1、BAC34892.1、CAF91044.1、XP_426335.1、CAA87635.1、CAG13262.1、CAA80987.1、AAH81367.1、CAG01370.1、NP_032033.1、NP_570830.1、NP_571366.1、NP_005238.1、AAC06148.1、BAC22069.1、XP_529049.1、AAH76721.1、NP_001001743.1、AAF31398.1、AAO33291.1、AAL16957.1、CAA44480.1、NP_991265.1、AAN16025.1、AAB18918.1、CAI15768.1、NP_034330.2、NP_990108.1、NP_445880.1、AAF31392.1、AAB71606.1、P70379、XP_542656.1、NP_071559.2、NP_997550.1、CAA44479.1、AAL83904.1、NP_001012382.1、NP_001009561.1、AAW69551.1、AAN04097.1、TVHUF5、NP_004455.1、P12034、NP_378668.1、NP_004105.1、AAH85439.1、CAI43189.1、CAI42700.1、CAI42699.1、BAD72887.1、CAG09626.1、NP_001009563.1、XP_534534.1、XP_524019.1、NP_001012380.1、NP_071547.1、NP_034333.1、NP_990219.1、AAF31390.1、XP_549094.1、CAA76422.1、CAG07674.1、NP_004104.3、XP_526425.1、XP_535845.1、XP_521287.1、NP_570827.1、CAH91802.1、AAH22524.1、P48804、AAB71607.1、AAV90630.1、CAF98890.1、AAB53825.2、CAH93046.1、CAG01557.1、H88481、JG0184、AAB18786.3、CAA94240.1、NP_004103.1、XP_511297.1、CAD19830.1、AAC98812.1、BAB88673.1、NP_066276.2、XP_543862.1、CAA45054.1、CAI51960.1、XP_546591.1、XP_485825.1、NP_570829.1、CAG07288.1、CAA35925.1、CAA94239.1、BAC39686.1、BAB63249.1、AAA62261.1、2020426A、NP_571983.1、NP_571710.1、CAG04681.1、CAG09818.1、CAF99854.1、AAL16961.1、CAF99073.1、CAB37648.2、AAP32155.1、1BFG、1IIL、1FQ9、1BLD、1BFC、1BAS、AAH37601.1、BAD24666.1、NP_957054.1、A60721、CAG11711.1、1K5V、NP_001998.1、1JY0、BAD69615.1、CAG00679.1、AAH32697.1、CAI29610.1、BAC22072.1、AAB29057.2、1JQZ、1605206A、CAI43097.1、CAE72484.1、1IJT、A48834、NP_001001398.1、NP_990764.1、AAH74391.1、1P63、CAF94666.1、1JTC、AAA52534.1、A32398、P09038、AAQ73204.1、AAV74297.1、NP_001997.4、AAV70487.1、AAA52532.1、1JT4、1JT3、1BFF、2BFH、NP_062178.1、1E0O、XP_526572.1、NP_032032.1、1HKN、1DZD、1DZC、1EVT、2AXM、XP_544946.1、AAL82819.1、Q7SIF8、1JT5、P48803、CAA42869.1、1PZZ、1M16、S00185、P48798、NP_776481.1、NP_001009769.1、AAV67380.1、XP_533298.1、A40117、1Q03、GKBOB、AAC35912.1、CAA78854.1、JC4268、S31622、BAB40835.1、AAA72209.1、BAA89483.1、AAA57275.1、1JT7、CAA46341.1、AAH74324.1、1Q04、BAC38631.1、1NZK、CAG02426.1、1K5U、1DJS、NP_776480.1、NP_034332.1、BAC22070.1、CAG06239.1、1AFC、BAC22066.1、1201195A、CAA43863.1、Q7M303、NP_999973.1、XP_522091.1、NP_990511.1、CAG02165.1、AAK52308.1、BAC22067.1、Q60487_3、XP_426414.1、XP_540801.1、1BAR、AAV38378.1、NP_032031.1、NP_062072.1、P48799、NP_990045.1、AAK37962.1、CAG04671.1、BAA13958.1、XP_544322.1、NP_446261.1、AAQ89228.1、NP_003858.1、XP_522325.1、XP_528080.1、NP_062071.1、BAC38656.1、AAF75524.1、AAO38854.1、BAD74124.1、XP_396434.1、BAD72875.1、AAP22372.1、CAF90784.1、AAC60303.1、AAF73225.1、CAF90913.1、AAP92385.1、BAB68397.1、NP_034335.1、AAF73226.1、AAH86718.1、CAA71365.1、AAO15593.1、AAG45674.1、AAB82614.1、AAA93298.1、AAM22684.1、Q90722、CAF91385.1、
【0058】
NP_149354.1、NP_579820.1、AAB34255.1、AAM55238.1、AAH48734.1、AAH69106.1、AAN73036.1、BAC02894.1、AAH82344.1、CAB64349.1、AAK52310.1、AAK52309.1、AAA48616.1、AAL16958.1、XP_543982.1、AAO25618.1、CAE11791.1、CAF95430.1、AAD13853.1、EAL29203.1、NP_990005.1、XP_543258.1、XP_547883.1、XP_527117.1、NP_878276.1、BAC03477.1、CAC86028.1、NP_001012379.1、NP_732452.1、NP_732453.1、AAO41473.1、AAC47427.1、NP_001012246.1、XP_522624.1、AAQ89954.1、AAH66859.1、NP_032029.1、YP_164239.1、XP_549294.1、1PWA、BAD06584.1、AAF70374.1、NP_570109.1、AAQ88669.1、AAP36636.1、YP_195014.1、CAG06656.1、NP_570108.1、BAA85130.1、AAQ89444.1、XP_524333.1、NP_064397.1、AAH18404.1、NP_061986.1、BAA85129.1、NP_001009564.2、BAD69717.1、BAC22071.1、AAN28104.1、AAQ88689.1、AAF65566.1、AAB71608.1、XP_540802.1、CAI25614.1、AAC59026.1、AAD15898.1、AAA85394.1、CAG06655.1、CAA41788.1、AAA66662.1、XP_541510.1、CAG01371.1、BAD02829.1、BAC22068.1、XP_425663.1、BAC55965.1、NP_073148.1、XP_421720.1、BAD60785.1、AAC63708.1、O62682、XP_522092.1、NP_570110.1、XP_392106.1、CAG02425.1、AAV97593.1、BAB68346.1、AAL16962.1、YP_164240.1、YP_195015.1、NP_848339.1、CAF99321.1、CAA71967.1、A32484、CAA28029.1、AAL01804.1、AAK85589.1、AAM93422.1、CAA05888.1、AAO27576.1、AAO27575.1、CAH93705.1、AAU00991.1、AAL37368.1、EAL46196.1、NP_701691.1。
【0059】
用語の「テラトーマ("teratoma")」とは、3つの発生学的胚細胞層:外胚葉、中胚葉、および内胚葉の細胞から生じる腫瘍を称す。本明細書に用いられる用語の「発生学的胚細胞層("embryologic germ cell layers")」とは、特殊化され、それらの最終発生形態においてある一定の特徴的形質を発現する胚における細胞層(例えば、外胚葉、中胚葉、および内胚葉)を称す。用語の「内胚葉("endoderm")」とは、腸管内へと発達する内胚葉胚層の細胞を称す。用語の「中胚葉("mesoderm")」とは、血管へと発達する中胚葉胚層の細胞を称す。用語の「外胚葉("ectoderm")」とは、中枢神経および末梢神経内、皮膚の表皮へと発達する外胚葉胚層の細胞を称す。
【0060】
用語の「幹細胞("stem cell")」、「非特殊化細胞("unspecialized cell")」、「非委任細胞("uncommitted cell")」、および「未分化細胞("undifferentiated cell")」とは、細胞自体を再生し、身体の組織および臓器を作り上げる特殊細胞型を生じさせるユニークな能力を有する細胞を称す。幹細胞は、組織特異的構造および組織特異的機能(例えば、心筋細胞、神経細胞など)がない。幹細胞は、胚(例えば、胚幹細胞)、胎児組織、および成人組織に由来し得る。用語の「特殊細胞("specialized")」、「委任細胞("committed")」、および「分化細胞("differentiated")」とは、組織特異的構造および/または組織特異的機能(例えば、心筋細胞、神経細胞など)を有する細胞を称す。用語の「分化」とは、細胞に関する場合、非特殊化細胞が、特殊細胞(例えば、心臓、肝臓、または筋肉細胞)の形質を獲得する過程を称す。
【0061】
用語の「始原細胞("progenitor cell")」とは、胎児組織および/または成人組織における細胞を称し、部分的に特殊化され、分裂でき、分化細胞を生じさせる。
【0062】
用語の「胚幹細胞("embryonic stem cell")」、「ES細胞("ES cell")」、および「多分化能細胞("pluripotent cell")」とは、いずれかの特殊細胞型となる可能性を有する胚の内部細胞塊に由来する未分化細胞を称す。用語の「胚生殖細胞("embryonic germ cell")」とは、例えば、5週から10週の胎児の性腺稜線の始原性細胞などの胎児組織に由来する細胞を称す。
【0063】
用語の「哺乳動物の胚幹細胞("mammalian embryonic stem cell")」とは、哺乳動物に由来するES細胞を称す。それは、幹細胞を供給できる哺乳動物を限定することを意味しておらず、したがって、ヒト(hES)、サル、大型類人猿、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、マウス、ラットなどを含むことができる。
【0064】
用語の「成人幹細胞("adult stem cell")」、「多分化能幹細胞("multipotent stem cell")」、および「体幹細胞("somatic stem cell")」とは、分化組織に見られ、増殖し、分化して起源となる組織の特殊細胞型を生成できる未分化細胞を称す。
【0065】
用語の「クローン性由来幹細胞("clonality derived stem cell")」とは、単一幹細胞の分裂によって発生し、その幹細胞と遺伝的に同一の幹細胞を称す。
【0066】
用語の「分化全能性("totipotent")」、「多能性("pluripotent")」、および「多分化能性("multipotent")」とは、異なる発生段階の細胞を称す。用語の「分化全能性幹細胞("totipotent stem cell")」とは、受精卵の分裂後に形成でき、胚盤胞を形成でき、完全個体へと発達できる細胞(例えば、マウスOct−4+細胞)を称す。用語の「多能性細胞("pluripotent cell")」とは、任意の細胞型に発達する可能性を有する細胞を称す。用語の「多分化能幹細胞("multipotent stem cell")」とは、組織および臓器における古くなった細胞(例えば、血液細胞など)を置き換えるために身体によって形成される少なくとも2種以上の分化派生細胞へと分化する能力を有する成熟組織に見られる細胞を称す。
【0067】
用語の「可塑性("plasticity")」とは、別の組織の分化および特殊細胞型を発生させる、一成人組織からの幹細胞の能力を称す。
【0068】
用語の「フィーダー層("feeder layer")」とは、所望の効果、例えば、多能性幹細胞を維持するために共培養に使用される細胞を称す。
【0069】
用語の「馴化培地("conditioned medium")」とは、生細胞と接触させた培養培地を称し、後続の細胞バッチと接触させて入れられた場合、後続の細胞の増殖または分化を増強し得る一連の細胞由来分子(例えば、成長物質など)を含有する。用語の「非馴化培地("non-conditioned medium")」とは、細胞と接触させていない培養培地を称す。記載のない場合、培地は、非馴化培地を意味していることを解すべきである。
【0070】
用語の「線維芽細胞フィーダー("fibroblast feeder")」とは、線維芽細胞を含んでなるフィーダー層を称す。用語の「線維芽細胞("fibroblast")」とは、コラーゲン線維などの線維を形成でき、結合組織に存在する細胞質過程を有する星状(星型)または紡錘状細胞を称す。用語の「マウス線維芽細胞フィーダー」、および「mEF」とは、マウス線維芽細胞を含んでなるフィーダー層を称し、一方、用語の「マウス線維芽細胞フィーダーの馴化培地」とは、マウス線維芽細胞に曝露させた培養培地を称す。
【0071】
用語の「ラミニン("laminin")」および「LAM」とは、シートへと組み立てて細胞結合物質として作用させ、また成長因子として作用する(例えば、分化誘導など)リガンドとして作用させることのできる多くの機能性ドメインを含有する細胞外マトリックスタンパク質を称す。
【0072】
用語「POU」は、3種の哺乳動物転写因子、脳下垂体特異的Pit−1、オクタマー結合タンパク質Oct−1とOct−2、および線虫からの神経性Unc−86の名称に由来する頭字語である。用語の「POU転写因子("POU transcription factor")」とは、プロモーターまたはエンハンサー領域内で、オクタマーモチーフと呼ばれるオクタマー配列を含有するシス作用性因子を有する遺伝子の転写を活性化できるDNA結合タンパク質である多くのPOU遺伝子ファミリーを称す。
【0073】
用語の「Oct−4POU転写因子("Oct-4 POU transcription factor")」、「オクタマー結合転写因子3("octamer-binding transcription factor 3")」、「Oct−3」、「OCT3」、「オクタマー結合転写因子4("Octamer-binding transcription factor 4"(」、「Oct−4」、「OCT4」、「POU5F1」、「OTF3」、「クラスV POU因子Oct−3("class V POU factor Oct-3")」、および「POUドメイン、クラス5、転写因子1("POU domain, class 5, transcription factor 1")」とは、未分化幹細胞におけるPOU転写因子を称す。
【0074】
用語の「nanog」とは、未分化幹細胞に見られるホメオボックス転写因子を称す。
【0075】
用語の「腫瘍拒絶抗原」、「TRA」、および「ヒト胚性癌腫マーカー抗原("human embryonal carcinoma marker antigen")」とは、ケラチンサルフェート結合抗原を称す。これらは、TRA−1−60、TRA−1−81、TRA−1−85、TRA−2−54、TRA−2−49に関するモノクローナル抗体により検出されたタンパク質を含む。
【0076】
用語の「形成期特異的胚抗原("stage-specific embryonic antigens")」、「SSEA−1」、「SSEA−2」、「SSEA−3」、および「SSEA−4」とは、分化の際に細胞表面の発現が変化する糖質抗原を称す。例えば、マウスES細胞において、未分化マウス多能性細胞は、SSEA−1を発現するが、分化はSSEA−1発現の喪失を特徴とし、幾つかの場合においてSSEA−3およびSSEA−4の出現により達成できる。例えば、ヒトにおいて、未分化ヒトEC、ESおよびEG細胞は、抗原SSEA−3、SSEA−4、TRA−1−60およびTRA−1−81を発現するが、一方、分化ヒトECおよびES細胞は、SSEA−1発現の増加およびSSEA−3およびSSEA−4のダウンレギュレーションを特徴とする。
【0077】
用語の「アクチビンA("Activin A")」、「ACTA」、「ACTa」、および「ACT」とは、「インヒビンベータ−A鎖("inhibin beta-A chain")」または「アクチビンベータ−A鎖("activin beta-A chain")」のホモ二量体を称す。用語の「アクチビンB」とは、「インヒビンベータ−B鎖」のホモ二量体または「アクチビンベータ−B鎖」のホモ二量体を称す。用語の「アクチビンAB」とは、「インヒビンベータ−A鎖およびベータ−B鎖」の二量体を称す。これらのタンパク質は全て、タンパク質のTGFβファミリーのメンバーである、タンパク質のアクチビンタンパク質群のメンバーである。用語の「インヒビン」および「インヒビン類」とは、視床下部および脳下垂体ホルモン分泌、生殖腺ホルモン分泌、幹細胞の発生と成熟、赤芽球分化、インスリン分泌、神経細胞生存、胚軸発生、骨成長などの多様な生物学的機能を阻害するTGFβファミリーのメンバーを称し、それらの機能がサブユニット組成に関連するアクチビンの機能と対立し得る。用語のインヒビンは、インヒビンAとインヒビンBとを含む。
【0078】
用語の「ケラチノサイト成長因子("keratinocyte growth factor")」、「KGF」、「線維芽細胞成長因子−7("Fibroblast growth factor-7")」、「FGF−7」、「HBGF−7」、および「ヘパリン結合成長因子−7("heparin-binding growth factor-7")」とは、ケラチノサイトに対して活性な線維芽細胞成長因子ファミリーの成長因子を称す。用語の「ケラチノサイト」とは、ケラチンを作る細胞を称す。用語の「ケラチン」とは、皮膚、毛髪、爪、および動物の角の上層細胞などの特殊上皮細胞に見られる大型の分子を称す。
【0079】
用語の「白血病抑制因子("leukemia inhibitory factor")」、「LIF」、「白血病抑制因子前駆体("leukemia inhibitory factor precursor")」、「分化刺激因子("differentiation-stimulating factor")」、「D因子」、「黒色腫由来LPL阻害剤("melanoma-derived LPL inhibitor")」、「MLPLI」、「HILDA」、「DA細胞に関するヒトインターロイキン("human interleukin for DA cells)"」、「DA細胞に関する骨髄性成長因子ヒトインターロイキン("myeloid growth factor human interleukin for DA cells")」」とは、幹細胞の分化を阻害し、白血病細胞における終末分化を誘導し、正常な細胞および骨髄性白血病細胞における造血分化を誘導する細胞メッセンジャータンパク質を称す。
【0080】
用語の「胚("embryo")」とは、受精時から、著しい分化が生じるまで、例えば、ヒトでは、胎児として認められるようになる妊娠8週末までの発生中の生物を称す。
【0081】
用語の「STAT」および「シグナルトランスデューサーおよび転写の活性化因子("Signal Transducers and Activators of Transcription")」とは、遺伝子(例えば、STAT1、STAT2、STAT3、STAT4、STAT5、STAT6など)を調節するタンパク質のファミリー中の分子を称す。用語の「STAT3」とは、サイクリンD1、c−Myc、bcl−x1などの発現の活性化に関与し、細胞分裂周期の進行促進、細胞形質転換に関与し、アポトーシス防止に関与している癌遺伝子を称す。
【0082】
本明細書に用いられる用語の「タンパク質キナーゼ("protein kinase")」とは、ヌクレオシド三リン酸からタンパク質中のアミノ酸へのリン酸基の付加を触媒するタンパク質を称す。キナーゼ類は、公知の最も大きな酵素のスーパーファミリーを含んでなり、それらの標的タンパク質は種々多様である。キナーゼ類は、チロシン残基をリン酸化する(例えば、ヤヌス(Janus)ファミリーチロシンキナーゼ(JAK)類)タンパク質チロシンキナーゼ(PTK)類、およびセリンおよび/またはトレオニン残基などをリン酸化するタンパク質セリン/トレオニンキナーゼ(STK)類として分類できる。
【0083】
本明細書に用いられる用語の「タンパク質ホスファターゼ("protein phosphatase")」とは、タンパク質からホスフェート基を除去するタンパク質を称す。タンパク質ホスファターゼ類は、一般に2つの群、受容体タイプタンパク質と非受容体タイプタンパク質(例えば、細胞内)とに分けられる。さらなる群としては、二重特異性ホスファターゼ類が挙げられる。タンパク質ホスファターゼ類の例としては、限定はしないが、ヒトタンパク質ホスファターゼ(PROPHO)、FIN13、cdc25チロシンホスファターゼ、タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)20、PTP 1D、PTP−D1、PTPラムダ、PTP−S31(例えば、特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;特許文献8;および特許文献9を参照されたい;それらの全ては、参照として本明細書に組み込まれている)が挙げられる。タンパク質ホスファターゼに対する標的例は、STAT類である。
【0084】
本明細書に用いられる「対象("subject")」は、限定はしないが、幹細胞または幹細胞を用いて産生された物質を導入できる動物などの生物である。本明細書に用いられる用語の「動物("animal")」には、「非ヒト動物("non-human animals")」との記載によって別に特記しない限りヒトが含まれる。
代表的な実施形態の記載
【0085】
本発明は、幹細胞における未分化状態および/または多能性の維持に関する。具体的な実施形態において、本発明は、線維芽細胞のフィーダー層または白血病阻害因子を使用せずに、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、ケラチノサイト成長因子などのFGFファミリーのメンバー、ニコチンアミド(NIC)、またはこれらのうちの2つまたは全ての組合わせに富んだ培養培地を用いて、ヒト胚幹細胞系などの未分化幹細胞の維持に関する。
【0086】
第1の態様において、本発明は、未分化幹細胞の維持方法を提供し、該方法は、所望の結果を得るために十分な時間量、該細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、TGFβファミリーのタンパク質の1種以上のタンパク質に幹細胞を曝露させることを含んでなる。幾つかの実施形態において、TGFβファミリーのタンパク質のメンバーは、アクチビンAなどのアクチビンである。幾つかの実施形態において、FGFファミリーのメンバーはKGFである。複数の実施形態において、該方法はまた、未分化幹細胞の増殖方法である。該方法は、最初の曝露で用いられた量と同じか、または異なる量でさらなる(すなわち、新たな)TGFβファミリーのタンパク質のメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICとの曝露ステップを反復させることを含むことができる。該方法は、インビトロ法であることが好ましい。
【0087】
上記に検討されたように、幹細胞は、単一細胞あっても細胞集団であってもよい。さらに、該細胞は、ヒト、マウス、ラット、サル、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ブタなどを含む任意の種に由来し得る。同様に、幹細胞は、天然のものでも組換え体でもよい。一定の実施形態において、幹細胞を準備するために新鮮な生検材料が使用される。他の実施形態において、培養された幹細胞が使用される。後者に関して、本発明が、培養材料の特定の培養法によって限定されることは意図されていない。一実施形態において、該方法に用いられる幹細胞は、無血清の培養培地で培養される。一実施形態において、該方法に用いられる幹細胞は、補足されたDSR培地で培養される(実施例1に記載されるように)。
【0088】
ある一定の実施形態において、本発明は、対象細胞が哺乳動物細胞である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、対象細胞がヒト細胞である方法を提供する。種々の幹細胞型は、限定はしないが、胚細胞および胎児幹細胞よりなる群から選択される幹細胞など、本発明の組成物と方法によって培養できる。本発明は、幹細胞の供給源によって限定されることも意図されていない。したがって、複数の実施形態において、幹細胞は、胚組織に由来する。他の実施形態において、幹細胞は、胎児組織に由来する。一実施形態において、幹細胞は、血液に由来する。
【0089】
上記に検討されたように、該方法は、幹細胞の供給源である種を限定しない。種々の種は、限定はしないが、ヒト、大型猿人、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、キンギョ、アフリカツメガエル、ゼブラフィッシュなど、幹細胞の供給源として使用できる。さらに、本発明は、本明細書に開示された種々の物質に曝露される場合、細胞の分化状態に限定されない。したがって、複数の実施形態において、本発明は、対象細胞が未分化である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が未分化である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞がインビボ多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞がインビトロ多能性である方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、接触細胞が対象細胞と同じ核型を有する方法を提供する。
【0090】
本発明の方法によれば、曝露は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質を、幹細胞と接触させる任意の作用であり得る。したがって曝露は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質を、幹細胞が存在する培地に単に加えることができる。曝露はまた、アクチビンAなどのTGFβファミリーのタンパク質の前駆体を、前記前駆体をアクチビンAなどの機能性タンパク質に変換できる細胞、タンパク質、または化学物質と共に培地に加えることができる。曝露は、手動で(例えば、人がアクチビンAを幹細胞の培地に加えることにより)または自動的に(例えば、器械により)実施できる。
【0091】
使用され、細胞に曝露されるTGFβファミリーのタンパク質の量は、細胞型、所望の結果、細胞数、細胞が増殖する培地の容量、および結果を得るための所望の速度に依って変わり得る。加える量の変化は、これらおよび他のパラメータに基づいて予想できるが、本発明は、約5ng/mlから約500ng/ml(培地中の最終濃度)のTGFβファミリーメンバーのタンパク質の使用を考慮している。したがって、複数の実施形態において、該方法は、5ng/ml、6ng/ml、7ng/ml、9ng/ml、10ng/ml、12ng/ml、14ng/ml、17ng/ml、20ng/ml、24ng/ml、26ng/ml、30ng/ml、35ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、70ng/ml、85ng/ml、100ng/ml、120ng/ml、140ng/ml、170ng/ml、200ng/ml、240ng/ml、290ng/ml、350ng/ml、400ng/ml、450ng/ml、または500ng/ml、あるいは5ng/mlと500ng/mlとの間の任意の他の特定量の最終濃度を達成するのに十分な量で少なくとも1種のTGFβファミリーメンバーのタンパク質を加えることを含んでなる。複数の実施形態において、TGFβファミリーメンバーのタンパク質はアクチビンAである。
【0092】
あるいは、TGFβファミリーメンバーのタンパク質は、約0.01nMから約100nMの濃度で培地中に存在できる。したがって、種々の実施形態において、培地は、正確にあるいは凡そ0.01nM、0.05nM、0.1nM、0.5nM、1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、8nM、10nM、16nM、25nM、32nM、45nM、64nM、75nM、85nM、または100nM(または0.01nMと100nMとの間の任意の他の特定量)のアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる。
【0093】
細胞が未分化状態で維持される時間量は、最終的な所望の結果に依って変わる。時間量は、1時間以下から、数日、数週、数年まで変わり得る。例えば、時間量は、約10週以上、約15週以上、約20週以上、約25週以上、約30週以上であり得る。該方法により、細胞に曝露されたTGFβファミリーメンバーのタンパク質の量、曝露時間を調整することによって幹細胞の維持および増殖を実務者が管理でき、曝露が繰り返される。最初の曝露に続く曝露が、少なくとも一部、追加のTGFβファミリーのメンンバーにより実施されることが考慮されている。本発明によれば、先に細胞に曝露させた同じTGFβファミリーメンバーのみを含んでなるTGFβファミリーメンバーを用いた後続の曝露により、元の曝露の単なる拡大が考慮されている。時間量は、培地中に増殖させた細胞の継代数において都合よく発現する。一般に該方法により、1回未満の継代から30回以上の継代の間細胞の維持または増殖が可能になる。したがって、特定の実施形態において、該方法は、1回の継代、2回の継代、3回の継代、4回の継代、5回の継代、6回の継代、7回の継代、8回の継代、9回の継代、10回の継代、11回の継代、12回の継代、13回の継代、14回の継代、15回の継代、16回の継代、17回の継代、18回の継代、19回の継代、20回の継代、21回の継代、22回の継代、23回の継代、24回の継代、25回の継代、26回の継代、27回の継代、28回の継代、29回の継代、30回の継代、またはそれ以上の継代の間、細胞の維持または増殖が可能になる。さらに本発明によれば、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバーへの細胞の曝露は、1/10継代、1/5継代、1/3継代、1/2継代、2/3継代、および4/5継代などの継代の分数の間、細胞の維持または増殖を可能にする。実際には、該方法により、実務者が数日間、数週間、数ヵ月間、数年間幹細胞を維持および/または増殖させることができる。
【0094】
将来の使用のために細胞培養細胞を分割し、保存する標準的な実施を考慮して、本発明は、当該方法に従って処理された細胞を保存することを考慮している。保存は、長期保存のために細胞の凍結を含むものなど、任意の公知の方法により達成できる。
【0095】
細胞の維持および/または増殖を介して得られる所望の結果は、限定はしないが、特定の物質の生産、培養プレート上の培養の集密性、新たな培養培地への移行のために(すなわち、継代のために)十分な細胞数の生産、または対象への移植用に十分な細胞数の生産など、医学的または科学的に関連する結果であり得る。限定はしないが、癌治療後の血液細胞の再増殖、アルツハイマー病およびパーキンソン病などのCNS変性疾患の治療、および糖尿病の治療など、幹細胞に関して多数かつ種々使用法が提案され、実施されている。提案され、実施されている使用法のいずれか、また全ては、本法による好適な所望の結果である。
【0096】
TGFβタンパク質は、天然または組換えで得ることができる。さらに、本発明の方法に関して本明細書に用いられるように、用語のアクチビンAには、下記および上記に定義されるとおり、アクチビンAの断片および誘導体を含む。用語のアクチビンAに包含されている1つの特定のヒトアクチビンAの配列は、配列番号:1に得られる。ヒトアクチビンAの他の非限定例は、配列番号:2〜16で得られ、一方、ヒトアクチビンAをコードする核酸の非限定例は、配列番号33〜34で得られる。
【0097】
該方法は、所望の結果を得るために十分な時間量、細胞の維持および/または増殖を可能にするのに十分な量で、KGFなどのFGFタンパク質ファミリーのメンバーに幹細胞を曝露させることを含み得る。KGFなどのFGFファミリーのメンバーの幹細胞の培地への付加は、これらの細胞の増殖を改善することが判明している。特にFGFファミリーメンバーメンバーの追加は、典型的に幹細胞培養に見られる増殖の減速および休止を防ぐ。実際、KGFなどのFGFファミリーのメンバーの幹細胞培養への添加は、必ずしも10回以上の継代に限定されないが、複数継代の間、培養の維持および増殖を可能にすることが判明している。この効果は、またアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質を含有する培養物で特に明白である。
【0098】
FGFファミリーメンバーのタンパク質が、TGFβファミリーメンバーのタンパク質と共に細胞に曝露される複数の実施形態において、FGFファミリーメンバーのタンパク質は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質への曝露前、曝露と同時に、または曝露後に細胞に曝露できる。
【0099】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質と同じ細胞に曝露されるため、細胞に関する上記の開示は、FGFファミリーメンバーのタンパク質に細胞を曝露することを含んでなる方法にも等しく適用可能であることが明らかである。同様に、望まれ得る結果は、上記に開示されたものと重複し得、当業者により望まれであろう。
【0100】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、上記の検討によれば、所望の結果を達成するのに十分な量において細胞に曝露できる。曝露は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質に関して上記に検討された作用のいずれかによって達成できる。したがって、時間量は、1回の継代、2回の継代、3回の継代、4回の継代、5回の継代、6回の継代、7回の継代、8回の継代、9回の継代、10回の継代、またはそれ以上であり得る。上記の検討によれば、時間量は、30回以上の任意の継代数または部分的な継代であり得る。さらに、1つ以上の継代の任意の部分は、所望の時間量であり得る。したがって、時間量は、1時間未満から1日以上または1週以上の範囲であり得る。時間量は、約5週、約10週、約15週、約20週、約25週、約30週、またはそれ以上であり得、これら代表的な数字の間の任意の具体的な週数を含む。
【0101】
種々の実施形態において、FGFファミリーのタンパク質は、0.5ng/mlから1mg/mlの濃度で細胞を含んでなる培地に存在するような様式で細胞に曝露される。したがって、特定の実施形態において、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質は、正確にまたは凡そ1ng/ml、2ng/ml、3ng/ml、5ng/ml、7.5ng/ml、10ng/ml、20ng/ml、30ng/ml、40ng/ml、45ng/ml、50ng/ml、55ng/ml、60ng/ml、75ng/ml、85ng/ml、100ng/ml、125ng/ml、150ng/ml、175ng/ml、200ng/ml、250ng/ml、350ng/ml、または500ng/ml(または0.50ng/mlと1mg/mlとの間の任意の量)の量で存在する。
【0102】
TGFβファミリーメンバーのタンパク質に細胞を曝露させる場合のように、細胞のFGFファミリーメンバーのタンパク質への曝露は、曝露ステップを反復させることを含んでなり得る。FGFファミリーメンバーのタンパク質の細胞への曝露の反復は、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質の細胞への曝露に関して上記に検討された同じパラメータ下で考慮されている。
【0103】
FGFファミリーメンバーのタンパク質は、天然または組替え体から得ることができる。さらに、本発明の方法の特定の実施形態に関して本明細書に用いられるように、用語のKGFは、下記および上記に定義されるとおり、KGFの断片および誘導体ならびにKGFの種として考慮されている分子を含む。用語のKGFにより包含されている1つの特定のヒトKGFの配列は、配列番号:17に得られる。KGFの他の非限定例は、配列番号:18〜24に得られ、一方、KGFをコードする核酸の非限定例は、配列番号25〜31に得られる。
【0104】
本発明の方法は、同様に、複数継代を介して培養における細胞の増殖および維持を可能にするのに十分な量におけるニコチンアミド(NIC)に対して幹細胞の曝露を含むことができる。NIC中の幹細胞の培養は、期間を延長して維持および増殖を可能にすることが判明している。したがって、本法の実施形態によれば、所望の結果は、少なくとも1回、5回、9回、10回、11回、12回、13回、14回、15回、16回、17回、18回、19回、20回、またはそれ以上の継代(この範囲内の任意の他の継代整数、およびそれらの分数)を介する細胞の継代であり得る。
【0105】
NICに対する細胞の曝露は、TGFβファミリーのタンパク質および/またはFGFファミリーのタンパク質に関して上記に検討された作用および要件を用いて達成できる。同様に、該細胞の維持および増殖期間を延長することに加えて、NICは、TGFβファミリーメンバーのタンパク質に関して上記に検討されたものなど、当業者に明らかと思われる多くの理由のうちのいずれかにによって該細胞に曝露することができる。上記に掲げられた該細胞と特性により、反復曝露に関する結果および要件のとおりNICに対する該細胞の曝露を含んでなる実施形態に等しく適用できる。
【0106】
TGFβおよびFGFファミリーのメンバーでの場合のように、細胞に曝露させるNICの量は、所望の結果、細胞量、および他のパラメータに依って変わり得る。一般に、細胞を含有する培地に存在できるNICの量は、約0.5mMから約500mMまで変わり得る。したがって、特定の実施形態において、NICは、正確にまたは凡そ0.5mM、1mM、1.5mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、17mM、20mM、24mM、26mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、60mM、70mM、85mM、100mM、120mM、140mM、170mM、200mM、240mM、290mM、350mM、400mM、450mM、または500mMの濃度で培地中に存在する。
【0107】
上記に検討されたように、NICに対する細胞の曝露により、多能性状態または核型を変化させることなく増殖期間の延長が可能となる。さらに、ある一定の良く知られた表面マーカーは、NICに対する曝露延長後、細胞表面に残る。
【0108】
一般に、本発明の方法は、いずれのフィーダー細胞、馴化培地、または白血病抑制因子(LIF)の不在下で培養物中の幹細胞の増殖および維持を可能にする。複数の実施形態において、該方法は、多能性状態の細胞を維持する。種々の実施形態において、該方法は、未分化幹細胞の分化を阻止するか、または遅延させる方法である。複数の実施形態において、該方法は、未分化幹細胞の喪失を阻止するか、または遅延させる(すなわち、幹細胞のある特定の細胞型への拘束を遅延させる)方法である。
【0109】
上記の開示を考慮して、本発明は、哺乳動物の胚幹細胞(ES)細胞を維持し、および/または増殖する方法を提供することは明らかであって、該方法は:a)i)対象のEs細胞、およびii)アクチビンA、ケラチノサイト成長因子、およびニコチンアミドの1つ以上を提供すること;b)接触ES細胞を生産するために、ES細胞を、アクチビンA、ケラチノサイト成長因子、および/またはニコチンアミドと接触させることを含んでなる。他の中でもとりわけ、このような方法は、未分化幹細胞を維持する手段、細胞分裂による細胞増殖を促進する手段、および未分化細胞数を増加させるために増殖を促進する一方で、未分化状態における細胞を維持する手段を提供する。複数の実施形態において、本法は、該接触がマウスの線維芽細胞フィーダー細胞の不在下にある方法である。さらに他の実施形態において、本発明は、該接触がマウスの線維芽細胞フィーダー細胞による馴化培地の不在下にある方法である。さらなる実施形態において、本発明は、該接触が白血病抑制因子の不在下にある方法である。さらに、維持が達成される実施形態および細胞が、細胞の増殖を可能にするのに十分な時間、アクチビンA、KGF、および/またはNICと接触し続ける実施形態において、接触は、少なくとも部分的にマウス線維芽細胞のフィーダー細胞、マウス線維芽細胞のフィーダー細胞の馴化培地、および/または白血病抑制因子の不在下で実施される。本発明は、幹細胞が維持され、増殖される様式に限定されることを意図していない。
【0110】
特定の実施形態において、本発明は、哺乳動物の胚幹細胞(ES)細胞を維持し、および/または増殖する方法を提供し、該方法は:a)i)対象のEs細胞、およびii)配列番号:1に少なくとも90%の同一性を有する第1のポリペプチドおよび/または配列番号:17に少なくとも90%の同一性を有する第2のポリペプチドのうちの1つ以上を提供すること;b)接触ES細胞を生産するために、ES細胞を第1および第2のポリペプチドと接触させることを含んでなる。複数の実施形態において、本発明は、第1のポリペプチドの濃度が、接触ES細胞を未分化状態に維持する方法を提供する。別の実施形態において、本発明は、第2のポリペプチドの濃度が、接触ES細胞の増殖を維持する方法を提供する。
【0111】
本発明の方法により処理された幹細胞は、正常な核型およびこれらの未分化細胞に対するマーカーを典型的に示し、多能性を典型的に残すことに注意すべきである。
【0112】
本発明の第2の態様において、本発明は、未分化状態または多能性状態の幹細胞を維持および/または増殖するために使用できる組成物、または幹細胞を含んでなる組成物を提供する。一般に、該組成物は、所望の結果を得るために十分な時間量、未分化状態において幹細胞の少なくとも1つの培養の増殖および/または維持を可能にするのに十分な量および形態で、幹細胞および/またはアクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNICを含んでなる。上記方法の検討によれば、所望の結果は、保存のための十分な細胞数を調製することを含む、医学的または科学的に関連する結果であり得る。したがって、本発明の態様による組成物は、本発明の方法を実施するのに有用なものである。複数の実施形態において、FGFファミリーメンバーのタンパク質は、基本的な線維芽細胞成長因子(bFGF)ではない。複数の実施形態において、該組成物は、幹細胞、TGFβファミリーメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれら2つ以上の組み合わせを含んでなる製薬組成物である。該組成物は、他の中でもとりわけ幹細胞療法に有用となり得る。
【0113】
TGFβファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のメンバーのタンパク質を含んでもよい。したがって、アクチビンAを含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のタンパク質を含め得る。上記に検討されたように、アクチビンAタンパク質の多数の例は、配列表において得られ、GenBankの登録番号により本明細書に記載されている。また、他のものも包含されている。同様に、未分化状態における幹細胞の維持および増殖を促進するために、配列表に提供されているか、または当業界に公知の配列を有するが、アクチビンAの能力に負の影響を及ぼさない翻訳後の修飾を有するものなどの誘導体は、本発明により包含されている。例えば、本明細書に提供されているか、またはアクチビンA配列として当業界に公知の1つ以上の配列を有するかなりのアミノ酸同一性を有する変異体が包含されている。配列番号:1などの本明細書に開示されている1つ以上の配列と80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を共有するタンパク質を含んでなる組成物は、本発明により包含されている。複数の実施形態において、本発明は、配列番号:1に対して少なくとも90%同一のポリペプチドを含んでなる組換えアクチビンAを含んでなる組成物を提供する。したがって、他の実施形態において、組換えアクチビンAのポリペプチドは、配列番号:1または3〜16のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)の同一性である。特定の実施形態において、本発明は、組換えヒトアクチビンAを含んでなる組成物を提供する。
【0114】
ある一定の実施形態において、該組成物は、アクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバーをコードする核酸を含み得る。これらの実施形態において、該組成物はまた、アクチビンAを発現するために核酸の発現を可能にする他の物質を含んでなる。これらの実施形態において、核酸は、本明細書に開示されているものか、または当業者に公知のものである。核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1種以上のアクチビンAコード化核酸にハイブリダイズする核酸、または80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の同一性など、1種以上のアクチビンAコード化核酸により高い同一性を共有する核酸を含む。
【0115】
FGFファミリーメンバーのタンパク質を含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のメンバーのタンパク質を含むことができる。したがって、KGFを含んでなる組成物は、任意の供給源の任意の形態のタンパク質を含むことができる。上記に検討されたように、KGFタンパク質の多数の例は、配列表に得られる。その上、限定されていないが、線維芽細胞因子(FGF)などの他のものも包含されている。同様に、未分化状態における幹細胞の維持および増殖を促進するために、上記に掲げた配列表に提供されているか、または当業界に公知の配列を有するが、FGFファミリーメンバーのタンパク質の能力に負の影響を及ぼさない翻訳後の修飾を有するものなどの誘導体は、本発明により包含されている。例えば、本明細書に提供されているか、またはKGF配列として当業界に公知の1つ以上の配列を有するかなりのアミノ酸同一性を有する変異体が包含されている。配列番号:17などの本明細書に開示されている1つ以上の配列と80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性を共有するタンパク質を含んでなる組成物が、本発明により包含されている。
【0116】
ある一定の実施形態において、該組成物は、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質をコードする核酸を含むことができる。これらの実施形態において、核酸は、本明細書に開示されているものであるか、または当業者に公知のものである。核酸はまた、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で1種以上のFGFファミリーコード化核酸にハイブリダイズする核酸、または80%、90%、95%、98%、99%、またはそれ以上の同一性など、1種以上のFGFファミリーコード化核酸により高い同一性を共有する核酸を含む。当業者により理解されるように、対象のタンパク質をコードするヌクレオチド配列を生産することは有利であり得、該ヌクレオチド配列は、非天然コドンを有する。したがって、幾つかの実施形態において、特定の原核生物宿主または真核生物宿主により好ましいコドン(非特許文献1)は、例えば、発現率増加させるために、または天然配列から生産される転写物よりも長期半減期などの所望の性質を有する組換えRNA転写物を生産するために選択される。本発明は、供給源(例えば、細胞型、組織、動物など)、性質(例えば、細胞抽出物からの合成、組換え、精製など)、および/または対象のヌクレオチド配列および/または対象のタンパク質の配列に限定されない。
【0117】
複数の実施形態において、本発明は、TGFβファミリーのメンバーおよびFGFファミリーのメンバーを含んでなる組成物を提供する。一実施形態において、本発明は、アクチビンA(ACTa)およびケラチノサイト成長因子(KGF)を含んでなる組成物を提供し、該組成物中のACTaの濃度は、未分化状態において胚幹細胞を維持し、該組成物中のKGFの濃度は、胚幹細胞の増殖を維持する。一実施形態において、本発明は、アクチビンAによる未分化状態の維持、およびケラチノサイト成長因子、NIC、または双方による増殖を増加させるための組成物に関する。
【0118】
複数の実施形態において、アクチビンA、KGF、または双方は組換え体である。
【0119】
一実施形態において、本発明は、配列番号:1に対して少なくとも90%の同一性を有する第1のポリペプチド、および配列番号:17に対して少なくとも90%の同一性を有する第2のポリペプチドを含んでなる組成物を提供し、該組成物中の第1のポリペプチドの濃度は、未分化状態において胚幹細胞を維持するのに十分であり、該組成物中の第2のポリペプチドの濃度は、胚幹細胞の増殖を維持するのに十分である。したがって、他の実施形態において、第1のポリペプチドは、配列番号:1および3〜16のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。同様に、他の実施形態において、第2のポリペプチドは、配列番号:17〜24のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。
【0120】
一実施形態において、アクチビンAおよび/またはKGFの変異体が存在し、各変異体の配列は独立して、開示された配列のうちの1つの配列と少なくとも95%の同一性、少なくとも90%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも70%の同一性、および/または少なくとも65%の同一性を有する。
【0121】
別の実施形態において、本発明は、組換えKGFを含んでなる組成物を提供し、組換えケラチノサイト成長因子は、配列番号:17に対し少なくとも90%同一性のポリペプチドを含んでなる。別の実施形態において、本発明は、ケラチノサイト成長因子が、配列番号:11〜14の1つ以上に由来する組成物を提供する。したがって、他の実施形態において、第2のポリペプチドは、配列番号:17〜24のいずれに対しても少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%(またはそれ以上)同一性である。
【0122】
本発明による組成物は、ニコチナミドを含むことができる。NICは、所望の長さの期間、生育能力を維持し、および/または増殖するために幹細胞の少なくとも1つの培養を可能にするのに十分な量で組成物に存在できる。
【0123】
TGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICは、独立して液体または固体(乾燥)形態などの任意の物理形態で提供できる。液体形態で提供された場合、追加の安定化剤を、保存に役立てるように含むことができる。乾燥形態は、乾燥時または再水和時の安定性に役立てるように添加できる、乾燥時に含ませる追加の物質を含むことができる。
【0124】
本発明の組成物は、一般にTGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICに加えて成分を含んでなる。追加の成分は、幹細胞の増殖または幹細胞あるいは幹細胞により生産された物質の動物またはヒト対象への導入に好適であるか、または適合性であることが知られている任意の物質であり得る。例えば、それは、例えば、塩類(例えば、NaCl)、界面活性剤(例えば、SDS)、および他の成分(例えば、デンハート液、ドライミルク、サケ精子DNAなど)を含むことができる。あるいは、それは、血液あるいは血清または血清成分などの血液製剤を含むことができる。したがって、それは、「KO」血清培地または「KO」血清を含有する培地として当業界に一般に公知の増殖培地を含む増殖(すなわち、培養)培地であり得る。該培養培地は、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバーおよびNIC、あるいはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含むことができる。該組成物の各々および全ての成分も生物学的に適合性である必要はないが、該成分は、生体適合性を評価するために典型的に用いられる多くの評価基準に基づいて、生物学的に適合性であるか、または許容できるレベルまでの該成分の負の生物学的作用を最少にするように十分に低い濃度で存在することが好ましい。TGFβおよびFGFファミリーのメンバーならびにNICを含んでなる組成物は、無菌(もちろん、組成物に意図して含ませた幹細胞または他の細胞に関するもの以外)であることが好ましい。幹細胞の増殖および維持において本発明の組成物の有用性に鑑みて、本発明の組成物は、それら自体hESCなどの胚幹細胞などの幹細胞を含むことができることは明らかである。
【0125】
直前で述べられたように、一定の実施形態において、該組成物は幹細胞を含んでなる。該幹細胞は、1種以上のTGFβファミリーのメンバー、1種以上のFGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせの存在下で増殖される細胞であり得る。該幹細胞は、未分化状態であってもよいが、必ずしもそうでなくてもよい。さらに、組成物中の細胞全てが未分化状態であることが望ましいことが多いが、細胞の増殖と生存における不均質性のため、恐らく所望の特性を有する組成物中の細胞は、100%未満である傾向がることが認められる。この事実は、未分化状態または多能性状態の有意な細胞数(例えば、50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%、またはそれ以上)を有する組成物を除外するものとして理解することができない。
【0126】
第3の態様において、本発明は、未分化状態または多能性状態の胚幹細胞を増殖および/または維持するのに必要とされる材料のある部分または全てを含有するキットを提供する。その最も基本的な形態において、該キットは、所望の結果を達成するための十分な時間量、培養中の幹細胞を増殖および維持するのに十分な量でアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含有する少なくとも1つの容器を含んでなる。該細胞は、未分化状態または多分化能状態であることが好ましい。所望の結果としては、特定の物質の検出可能な量の産生、培養プレート上の培養物の集密化、対象への移植のために有意な細胞数の生産などの医学的または科学的に関連する結果であり得る。複数の実施形態において、該キットは、本発明の方法の1つ以上の実施形態を実施するのに必要な全ての成分を含む。本発明に従ってキット中の材料を使用するための取扱い説明書である補助的な部品もまた、キットのある一定の実施形態に含まれる。
【0127】
したがって、ある一定の実施形態において、該キットは、TGFβファミリーのメンバー(アクチビンAなど)、FGFファミリーのメンバー(KGFなど)、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含有する単独の容器を含んでなる。他の実施形態において、該キットは、各々がアクチビンAなどのTGFβファミリーのメンバー、KGFなどのFGFファミリーのメンバー、NICの1つ以上を含有する2つまたは3つの容器を含んでなる。後者の場合において、容器は、組合わせを1つに包装して(すなわち、キット自体であり得るが、必ずしもそうではない単独容器)提供される。すなわち、例えば、アクチビンA、KGF、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含んでなる組成物を、第1の容器に含有し、これらの成分(任意の量で)の1つ以上を独立して含んでなる別の組成物を、第2の異なる容器に含有して、双方とも単一包装に含まれる。本発明による種々の組成物(ならびに本発明に有用な他の組成物)の複数の容器を単独キットに含めることができ、実務者が、本発明の方法を実施する上で種々の容量の材料を使用することを可能にする。この方法において、実務者は、複数キットを得る必要はなく、本発明を複数回または大容量の細胞で実施できる。
【0128】
TGFβおよびFGFファミリーメンバーのタンパク質および/またはNICの量は、所望の時間量で維持または増殖される幹細胞の少なくとも1つの培養を可能にするのに十分であるように独立して選択される。各物質は、それ自体の容器に含有することができるか、または2種以上が単独容器に含有することができる。この方法で、実務者は、適切な物質または必要とされる具体的な適用のための物質の組合わせを選択できる。
【0129】
ある一定の実施形態において、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、およびNICのうちの少なくとも2つは、組み合わせを1つの包装にして一緒に提供される。すなわち、これらのうちの少なくとも2つ、および好ましくは、3つが、キット内の単容器に含まれる。キット内に2つまたは3つを提供することにより、実務者がキットを開封後、それらを組合わせる必要が省かれ、本発明の方法を実施するのに必要な時間を短縮することができるか、または成分を量る誤差、あるいはこぼれなどによる材料の損失を最少にできる。他の実施形態として、本実施形態によるキットは、キット内に複数の容器を含むことができ、各容器は、同じ材料、異なる材料、または容器の幾つかが他と同じ材料を含有する一方、幾つかの容器はユニークな内容物を含有する。
【0130】
複数の実施形態において、1つ以上の個々の成分(例えば、アクチビンA、KGF、およびNIC)の複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の容器がキット内に含まれる。複数の実施形態において、2つ以上の成分の複数(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ)の容器がキット内に共に含まれている。複数の実施形態において、手袋および/または他の供給品または試薬(限定はしないが、キットの1つ以上の成分を再水和させるための滅菌水または滅菌水溶液など)も含まれる。
【0131】
上記の検討から見ることができるように、所望の場合、TGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、および/またはNIC以外をキットに含むことができる。例えば、これら物質用の溶媒または希釈剤を含むことができる。さらに、シリンジ、ピペットなどのキットの成分を量るか、または送達するための材料を含むことができる。これら追加の部品などの各々を、1品目以上の包装で含むことができるか、または別個に無包装の品目として含むことができる。
【0132】
容器は、含有されるTGFβファミリーのタンパク質、FGFファミリーのタンパク質、および/またはNIC、および/または任意の追加の部品に好適なものであり得る。したがって、容器は、限定はしないが、金属、プラスチック、ゴム、サラン、およびガラスで作製されたものなど、チューブ、アンプル、バイアル、缶、バッグ、またはジャーであり得る。複数の実施形態において、容器は、幹細胞を含んでなる培地に成分を供給するのに好適なシリンジまたはピペットなどの送達用具であり得る。容器は、最初の開封後、未使用の内容物を保存するために再密封できるか、または自動的に密封されることが好ましい。容器およびそれらの内容物は、無菌(または開封前に滅菌)であることが好ましい。
【0133】
キットそれら自体は、ボール紙、プラスチック、金属、またはガラスなどの任意の好適な材料から製作できる。ボール紙とプラスチックは、好ましいキット用材料である。
【0134】
キットの1つ以上の成分の使用、または本発明の方法を実施するための取扱い説明書を、キットに含むことができる。取扱い説明書は、紙、カード、プラスチックシートなどの印刷材料など、別個の部品として供給できる。あるいは、取扱い説明書は、キット自体、例えば、キットの側部または上部または底部に提供できる。あるいは、取扱い説明書は、キットの成分用容器に提供できる。
【0135】
第4の態様において、本発明は、未分化および多能性である幹細胞を提供する。幹細胞は、フィーダー細胞、マウス胚フィーダー層により馴化された培地、および/またはSTAT3の活性化処理を含まない組成物中に提供できる。複数の実施形態において、該幹細胞は、アクチビンAなどのTGFβファミリーメンバーのタンパク質、KGFなどのFGFファミリーメンバーのタンパク質、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせを含んでなる組成物中に提供される。複数の実施形態において、該組成物は、アクチビンA、KGF、およびNICを含んでなる。該幹細胞は、上記に開示された任意の細胞であってもよいが、好ましい実施形態において、該細胞は、ヒト胚幹細胞などのヒト幹細胞である。
【0136】
一般に、該幹細胞は、本発明の方法の使用により生産された細胞である。すなわち、本発明の幹細胞は、TGFβファミリーメンバーのタンパク質、FGFファミリーメンバーのタンパク質、NIC、またはこれらのうちの2つまたは3つ全ての組合わせに対する幹細胞の暴露により生産されたものである。該幹細胞は、馴化培地、フィーダー細胞、またはLIFの不在下で1種以上のこれらの物質に曝露させる。該幹細胞は、上記のとおり複数回継代させた細胞であり得る。
【実施例】
【0137】
本発明は、以下の実施例によりさらに説明されるが、これは、本発明を単に例示するものであることが意図されており、決して本発明を限定するものと考えてはならない。
【0138】
実施例1:フィーダー細胞または馴化培地の不在下で幹細胞の多能性の維持
【0139】
本発明は、胚幹(ES)細胞における未分化状態および/または多能性の維持、特にTGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、および/またはNICに富んだ培養培地を用いて、未分化ヒト幹細胞系を維持するための組成物および方法に関する。本実施例は、TGFβファミリーメンバーのアクチビンAの存在下での増殖は、幹細胞の多能性を維持し、FGFファミリーメンバーのケラチノサイト成長因子(KGF)の添加により、細胞が老化に入ることなく増殖できる時間量を延長することが示される。また、培養培地に対するNICの添加により、細胞が老化しないで増殖できる時間量を延長することが示される。
【0140】
マウスESにおける未分化状態および多能性の維持は、マウス線維芽細胞のフィーダー層(mEFs)の存在または白血病抑制因子(LIF)によるSTAT3の活性化1を必要とする。ヒト胚幹細胞系(hES)は、最近、研究2、3用にのみ利用されてきており、自己再生と分化に関する細胞内経路は、この時点で大部分が不明である。最近、本発明者と協力者4ならびに他の研究者5により、STAT3活性化は、mEFsに対して増殖された場合、またはmEFsにより馴化培地で処理された場合、ヒトES細胞系の分化を遮断するのに十分ではないことが示されている。本実施例は、アクチビンAに富んだ培養培地が、フィーダー層、mEFsにより馴化された培地、またはSTAT3の活性化処理を必要とせずに、少なくとも10回の継代の間、未分化状態にhESを維持できることを示している。hES細胞は、OCT−4、nanogおよびTRA−1−60など、未分化状態のマーカーを保持し、テラトーマのインビボ形成により示されるように、多能性を存続した。
【0141】
hESの多分化能は、mEFs2、3、mEFsによる馴化培地6、またはヒトフィーダー層7に対して増殖させた場合にのみ維持されることが公表されている。さらに、フィーダー層から受けたシグナルは、LIF/gp130経路を介して操作されないことが報告されている4、5。したがって、馴化培地(CM)に存在するフィーダー層および/または溶解性因子へのhES細胞の接触によって作動され易い代りの経路が、多能性の維持の原因となっているに違いない。位相差顕微鏡下、組織学的染色法を用いて、本発明者と協力者が以前に示したように4、HSF6の増殖と表現型の特性は、ラミニン被覆皿上で増殖された場合のフィーダー層上およびmEF CM内と同様である。この場合、細胞は互いに異なる未分化コロニー内で増殖する。したがって、フィーダー層によって分泌される溶解性因子は、多能性の維持に役立つように見える。これらの因子が何であるかを判定するために、我々は、ヒト胎児膵臓組織の培養における経験に基づいて成長因子の種々の組合わせを試験した。本発明者らは、予備的実験およびhES細胞における高レベルのb1発現に基づいて接着に関してラミニン1を用いた6。しかしながら、フィブロネクチンおよびコラーゲンなどの接着に関する他の公知の基質も、等しく有効に使用できたことを解すべきである。
【0142】
hES細胞が、アクチビンAおよびKGFの存在下でラミニン上で増殖された場合、それらは、フィーダー層上またはCM内の細胞に対する染色と同等に、幹細胞マーカーTRA−1−60およびOCT−4に対して均一に染色し、10回の継代にわたる連続増殖後、未分化のままであった。oct−4、nanog、およびテロメラーゼのロバスト遺伝子発現もまた、フィーダー層上で増殖するコロニー内で得られたものと同等のレベルで、細胞単層内でRT−PCRにより見られた。形態は、通常のタイトコロニー形成から、元のコロニーに見られるものよりも大きく出現する均一形状細胞の不規則単層まで徐々に変化した。そのままにしておくと、最終的に細胞は、連続単層を形成し、皿上に盛り上がった。しかしながら、これらの形態変化は、可逆性であり;細胞をフィーダー層に戻して置くと、それらは、フィーダー層上で予想された形態と同様のコロニー形成を徐々に再開した。
【0143】
アクチビンAを増殖培地から除くと、細胞形態は、より分化されたタイプに急速に変化した;1週後もはや細胞はnanogを発現せず、免疫反応性TRA−1−60の喪失と、OCT−4タンパク質レベルの減少が同時にあった。アクチビンAをBMP−4で置き換えた場合、細胞は、1週後、未分化表現型を維持することができず、nanog、oct−4、およびテロメラーゼの発現が喪失した;KGFが除去されると、細胞は、未分化表現型を維持したが、増殖速度は減少し、1回の継代を超えて継代培養ができなかった。
【0144】
形質変換成長因子のβファミリーのメンバーであるアクチビンAは、FSH合成および分泌の刺激物質としてブタ濾胞性液8、9から最初に単離された。「アクチビン」、「アクチビンA」、「アクチビンB」、「アクチビンAB」、「赤芽球分化誘導タンパク質」、および「EDF」は、TGF−ベータ−ファミリーのメンバーであり、これは、低体温および脳下垂体ホルモン分泌、生殖腺ホルモン分泌、幹細胞発生および成熟化、赤芽球分化誘導、インスリン分泌、神経細胞生存、胚軸発生、骨成長などの多様な生物学的機能を活性化するが、それらの機能は、サブユニット組成物に関連する。それは、多様な生物学的な機能の自己分泌またはパラ分泌レギュレーターとして多種多様の組織において同定されている(レビューを参照10)。重要なことに、本発明者は、mEFs中にアクチビンA転写体の高発現およびmEFsにより馴化された培地中に豊富な分泌タンパク質を認めた。さらに、HSF6細胞は、フォリスタチン、アクチビンAの天然阻害剤の存在下、mEFsに対して増殖させた場合に分化した10。興味深いことに、アクチビンBは、他の間葉細胞により分泌されることが示され、その分泌は、mEFsに対するhESを培養する際にルーチンに使用されるFGF2によりアップレギュレートされる11。これらのデータを一緒にすると、mEFsにより分泌されるアクチビンAは、hES細胞の「ステムネス("stemness")」の維持の原因となることを意味している。
【0145】
hESにおける分化誘導阻害は、アクチビンAに特異的であった。別のTGFβファミリーのメンバーであるBMP−4は、マウスES細胞における多能性を維持できるが12、hESの場合はそうではない。これは、これら2種の細胞の間の唯一の違いではなく、mESとhEStは、維持のLIFに依存性が異なる4。mES細胞において、BMP−4は、多能性および分化誘導の双方の維持に逆説的な役割を演じ12、13、存在する他の因子または発生段階に極めて依存し易い。hES細胞は、BMP−4およびKGFの存在下で急速に分化し、培養1週後にoct−4、nanog、およびテロメラーゼの発現が喪失した。
【0146】
アクチビンAはまた、mESの中胚葉への分化誘導13、膵臓前駆体細胞のβ細胞への分化誘導14、神経分化誘導の阻害15、16、さらに最近hES細胞における内胚葉の誘導17に関係している。しかしながら、本開示は、未分化状態での幹細胞の維持においてアクチビンAの重要な役割に関し、またmEFsより馴化された培地中のその存在に関する最初の文書資料である。
【0147】
アクチビンAとKGFの存在下、単層で増殖されたhESの移植後のヌードマウスで増殖されたテラトーマは、多くの外肺葉、内胚葉、および中胚葉を示した。さらに、胚葉体からRNAに対して実施されたRT−PCRは、全て3層の胚細胞層に特異的な遺伝子発現を示した。これらのデータは、アクチビンAを含有する培地中のhESの維持は、他の外来細胞またはヒト細胞との共培養の必要がなく、多分化能の維持を可能にすることを示している。
【0148】
非膜内外PTKsは、細胞膜受容体の細胞基質ドメインとのシグナル伝達複合体を形成する。非膜内外PTKsを介してシグナル伝達する受容体としては、サイトカイン(例えば、糖タンパク質130(gp130)ファミリー)、ホルモン、および抗原特異的リンパ球性受容体が挙げられる。多くのPTKsは、PTK活性化によりもはや正常な細胞制御に供されなかった癌細胞の発癌遺伝子産物として最初に同定された。実際、公知の発癌遺伝子の約三分の一は、PTKsをコードする。さらに細胞形質転換(腫瘍形成)は、チロシンリン酸化活性の増加により達成されることが多い22。したがって、PTK活性の調節は、幾つかのタイプの癌を制御するのに重要な戦略となり得る。
【0149】
材料と方法:以下のものは、実施例に用いられる代表的な材料と方法である。
【0150】
幹細胞培養:hES細胞系HSF6は、以前に記載された19、ノックアウト血清リプレーサー、グルタミン、非必須アミノ酸類、0.1mM β−メルカプトエタノール(全てGibcoより、カリフォルニア州カールスバッド;www.invitrogen.com)を含有する高グルコースDMEMからなるDSR培地中、またはラミニン(20μg/ml、Chemicon、www.chemicon.com)被覆皿上、または50ng/mlのヒト組換えアクチビンA(ACT A)、50ng/mlのヒト組換えケラチノサイト成長因子(KGF)(双方ともPreprotech社より、ニュージャージー州ロッキーヒル;www.preprotech.com)を含有するDSR中、37℃、5%CO2でマイトマイシンC処理CF1マウスフィーダー層(mEF)上に維持された。これらの濃度は、ヒト胎児膵細胞培養による以前の実験14、20から決定された。幾つかの実験において、10ng/mlのヒト組換え骨形成タンパク質4(BMP−4;R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、www.RnDSystems.com)は、ACT Aの代りに用いられ、0.4μg/mlのフォリスタチン(R&D Systems)を、製造元の指示に従って50ng/mlのAct Aを中和するのに十分なmEFsに対して増殖されたES細胞に加えた。培地は、mEFs上で増殖される細胞に対して毎日、成長因子によりラミニン上で増殖される細胞に対して1日おきに変えた。細胞は、1:3または1:4希釈で週1回継代培養を行った。
【0151】
あるいは、hES細胞系HSF6は、以前に記載された4DSR中、37℃、5%CO2でマイトマイシンC処理CF1マウスフィーダー層(mEF)上に維持された。本明細書に記載された実験に関して、継代43hES細胞は、10ng/mlの基本的線維芽細胞成長因子(FGF2;Preprotech社より、ニュージャージー州ロッキーヒル;www.preprotech.com)で補足されたmEFsにより馴化された培地(CM)の存在下、ラミニン(20μg/ml、Chemicon、www.chemicon.com)被覆皿上、または50ng/mlのヒト組換えアクチビンA、50ng/mlのヒト組換えKGF(双方ともPreprotechより)、および10mMのニコチンアミド(NIC;Sigma社、ミズーリ州セントルイス)を含有するDSR培地中ラミニン上で培養された。5ng/ml、50ng/ml、および100ng/mlのアクチビンAを用いてhES細胞による用量応答により、50ng/mlが、未分化状態での細胞を維持するのに最適であることが示された。
【0152】
幾つかの実験において、10ng/mlのヒト組換え骨形成タンパク質4(BMP−4;R&D Systems、ミネソタ州ミネアポリス、www.RnDSystems.com)は、アクチビンAの代りに用いられ、2μg/mlの組換えマウスFS−288フォリスタチン(R&D Systems)を、製造元の指示に従って50ng/mlのアクチビンAを中和するのに十分なmEFsに対して増殖されたES細胞に加えた。培地は、mEFs上またはCM内で増殖される細胞に対して毎日、成長因子によりラミニン上で増殖される細胞に対して1日おきに変えた。細胞は、1mg/mlのコラゲナーゼIV(Gibco BRL)で5分間の緩やかな処理によって1:3または1:4希釈で週1回継代培養を行い、次いでかき取った。
【0153】
免疫組織化学:幹細胞培養物を、mEFsで被覆されたカバースリップ上、または4%パラホルムアルデヒドで固定されたラミニン上で増殖し、染色した。幹細胞マーカーTRA−1−60およびOct−4のタンパク質発現を、第一次マウス坑TRA−1−60(Chemicon)およびウサギ坑OCT−4坑血清(U Penn、ハンス・スコーラー(Hans Scholer)博士より恵与)を用いて免疫組織化学により分析した。対照スライドを、マウスIgMおよびウサギIgGと共に温置した。アフィニティ精製ローダミンレッド−複合化ロバ坑マウスIgMおよびフルオレセイン−複合化ロバ坑ウサギIgG(Jackson Immunoresearch)を、第一次抗体に向けた。カバースリップを、フェード防止培地(Biomeda社、カリフォルニア州フォスターシティー;http://biomeda.com)に取り付け、蛍光付属装置が具備されたNikonエクリプスE800顕微鏡(NikonUSA,ニューヨーク州メルビレ;www.nikonusa.com)で観察した。画像は、SPOTデジタルカメラ(Diagnostic Instruments社、ミシガン州スターリングハイツ;www.diaginc.com)で捕捉し、Image Pro Plus4.0(Media Cybernetics、メリーランド州シルバースプリング;www.mediacy,com)を介して獲得した。カラー合成写真は、Adobe Photoshop7.0(Adobe Systems、カリフォルニア州マウンテンビユー;www.adobe.com)を用いて処理された。
【0154】
あるいは、hES細胞培養を、mEFsで被覆されたカバースリップ上、または4%パラホルムアルデヒドで固定されたラミニン上で増殖し、以前に記載された4とおり免疫染色した。幹細胞マーカーTRA−1−60、SSEA−4およびOct−4のタンパク質発現を、第一次マウス坑TRA−1−60IgM(Chemicon)マウス坑SSEA−4IgG3(DSHB、アイオワのU、アイオワ州アイオワシティー)、およびウサギ坑OCT−4坑血清(U Penn、ハンス・スコーラー(Hans Scholer)博士より恵与)を用いて分析した。対照スライドを、マウスIgMまたはIgGおよびウサギIgGと共に温置した。
【0155】
RT−PCR:RNAを、DNアーゼ処理を含むRNeasyミニキット(Qiagen、カリフォルニア州ヴァレンシア;www1.qiagen.com)を用いて精製し、3.2μgのランダムプライマーによるAMV(双方ともRoche、インディアナ州インディアナポリス;www.roche-applied-science.com)および20μLの反応容量中1μgの全RNAを用いて逆転写した。50μLの全容量中、1μLのcDNAを各PCR反応に用いた。β−アクチン発現を、サンプル定量化および比較(すなわち、内部対照として)のために用いた。
【0156】
ヒトoct−4、nanog、およびテロメラーゼに特異的プローブを調製した。実施例に用いられたオリゴヌクレオチドは、以下の配列を有した:
β−アクチン 順方向:cgcaccactggcattgtcat(配列番号36)
逆方向:ttctccttgatgtcacgcac(配列番号37)
oct−4 順方向:gagcaaaacccggaggagt(配列番号38)
逆方向:ttctctttcgggcctgcac(配列番号39)
nanog 順方向:gcttgccttgctttgaagca(配列番号40)
逆方向:ttcttgactgggaccttgtc(配列番号41)
アクチビンA 順方向:cttgaagaagagacccgat(配列番号42)
逆方向:cttctgcacgctccactac(配列番号43)
神経D: 順方向:gagactatcactgctcagga(配列番号44)
逆方向:gataagcccttgcaaagcgt(配列番号45)
短尾
T遺伝子: 順方向:caaccaccgctggaagtac(配列番号46)
逆方向:ccgctatgaactgggctc(配列番号47)
α−胎児
タンパク質: 順方向:agaacctgtcacaagctgtg(配列番号48)
逆方向:gacagcaagctgaggatgtc(配列番号49)
ALK−4: 順方向:cacgtgtgagacagatggg(配列番号50)
逆方向:ggcggttgtgatagacacg(配列番号51)
ACVR−2: 順方向:gggagctgctgcaaagttg(配列番号52)
逆方向:ccacatcaacactggtgcc(配列番号53)
ACVR−2B:順方向:caccatcgagctcgtaag(配列番号54)
逆方向:gagcccttgtcatggaagg(配列番号55)
hTERT 順方向:cagctcccatttcatcagca(配列番号56)
逆方向:cgacatccctgcgttcttg(配列番号57)
【0157】
PCR産物を、1.2%アガロースゲル(htertに関して1.6%)上に乗せて臭化エチジウムにより染色した。
【0158】
多能性:多能性は、膵島前駆細胞の分化誘導の分析のために以前に記載された21ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植8週後のテラトーマ形成を調べることによってインビボ評価された。短時間に、hESを、ラミニンまたはmFEsから取り出し、Costar Ulgtra Low Cluster皿(Corning社、ニューヨーク州コーニング;www.corning.com)中で一晩、胚葉体を形成させた。それらをペレットに遠心分離し、10μlの陽圧ピペットで採取し、腎嚢下に注意深く挿入した。この方法は、極めて首尾よく実験的に膵島移植され、またhES細胞からのテラトーマ分析に非常に有効である。移植片を取り出し、固定し、ヘマトキシリンとエオシンとで染色した。多分化能は、記載された胚葉体形成後の遺伝子発現を評価することによりインビトロ評価された。
【0159】
あるいは、多能性は、内分泌膵前駆細胞の分化誘導の分析のために以前に記載された20ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植8週後のテラトーマ形成を調べることによってインビボ評価された。移植片を取り出し、固定し、ヘマトキシリンとエオシンとで染色した。多能性は、hES細胞に由来し、17日間培養された胚葉体における遺伝子発現を分析することによりインビトロ評価された。
【0160】
異なる培養条件下で増殖率を定量化するための増殖アッセイ:細胞を、フィーダー層からFGF2補足CMあるいはアクチビンA、KGF、NIC、またはこれら3つの因子の組合わせの存在下、ラミニン上の6ウェルプレート内で培養した。培養物を、新たに補充された培地中、1μCi/ml[メチル3H]チミジン(比放射能6.7Ci/mmol;MP Biomedicals、カリフォルニア州アーバイン;www.mpbio.com)によりパルス化した。16時間後、細胞を収穫し、チミジンの細胞への取込みを以前に記載された23とおり定量化した。手短にDNA含量を蛍光的に測定し、3Hチミジンの取込みは、音波処理細胞のトリクロロ酢酸沈殿の液体シンチレーションカウントすることにより測定された。観察された統計学的有意差は、分散分析およびStatview IV(Abacus Concepts、カリフォルニア州バークレイ)を用いて有意限界として95%レベルを有するフィッシャーの保護最小有意差検定により判定された。
【0161】
フローサイトメトリー分析:フローサイトメトリーは、異なる培養条件下で未分化細胞を定量化するために使用された。細胞を、60分のコラゲナーゼ処理を用いて収穫し、次いで単一細胞懸濁液にせん断し、70ミクロン細胞フィルタを用いてろ過した。各条件から単一細胞を、マウス坑TRA−1−60またはマウスIgM(対照のため)およびFITC−複合化ロバ坑マウスIgM(Jackson Immunoresearch)により標識した。細胞は、Becton Dickinson FACScanを用いて分析し、細胞表面抗原発現は、CellQuestソフトウェアを用いて定量化した。
【0162】
二次元電気泳動:単独またはhES細胞によるフィーダー層として増殖されたmEFsからの非分画性馴化培地は、以前に記載された24等電点電気泳動および二次元電気泳動によりアッセイした。サンプルを、ニトロセルロースに移し、UCSD、スンイチ・シミサキ(Sunichi Shimisaki)博士より恵与のウサギ坑ブタアクチビン抗体によりブロットした。
【0163】
ウェスタンブロッティング:ウェスタンブロッティングは、リン酸化Smad2に用いられ、以前に記載された4HSF6細胞のライセートに実施された。アクチビンAの存在下で培養された細胞を、バナジン酸塩(10μM)およびミクロシスチン(1μM)で補足された緩衝液を含有する界面活性剤で溶解し、ホスホSmad2(ser465/467)抗体(Cell Signaling、cellsignal.com)により最初にブロットされた。次にブロットをストリップし、Smad2抗体(Cell Signaling)により再プローブ化した。
【0164】
核型:核型分析は、標準法(Gバンディング)を用いて我々の実験室で、またはUCSD Cytogenetics Laboratoryにより実施された。少なくとも15種の細胞を各サンプルから調べた。
【0165】
図面に示された結果の記載:
HSF6細胞は、細胞増殖に対するアクチビンAの作用、形態、および幹細胞に対する分化状態を測定するために使用された。本実施例に関連する実験は、上記のとおり実施され、実験から得られた結果を検討し、要約する。この実験結果は、図1の種々の部分およびパネルに示している。
【0166】
図1は、アクチビンAの不在下でhES細胞の分化を示す。より具体的には、図1aは、位相差顕微鏡(上層)、および免疫組織化学(下層)により観察されたHSF6細胞の形態および分化状態を示す。免疫組織化学分析に関して、ヒト幹細胞マーカーTRA−1−60(細胞質)およびOct−4(核)に対する抗体を用いた。パネルIは、mEFsに対して培養されたHSF6細胞が、幹細胞マーカーに対する均一な染色により典型的なコロニー形成を示している。パネルIIは、アクチビンA、NIC、およびKGF(ANK)の存在下、ラミニン上で培養されたHSF6細胞が、mEFs上で増殖された場合よりも大きな細胞サイズを有する不規則単層として増殖するが、TRA−1−60およびOct−4に対するロバスト染色、未分化状態の証拠を示している。パネルIIIは、mEFsに戻した場合、パネルIIの細胞が、1週後にコロニー形態を再開することを示している。パネルIVは、1週間アクチビンA(NK)の不在下で増殖された場合、パネルIIの細胞が、TRA−1−60に対して染色せず、またOct−4に対して極めて僅かな染色により、分化を示す形態および表現型の明確な変化を示している。パネルVは、1週間(A)KGFおよびNICの不在下で増殖された場合、パネルIIの細胞が、表現型に変化を示さないことを示している。しかしながら、増殖は減少し、それらは、さらに継代培養ができなかった。拡大バー=100μM。
【0167】
図1bは、mFEs(レーン1)上またはラミニン(レーン2〜5)上の種々の培養条件下でoct−4およびnanogに関するhES細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示している。アクチビンの不在下、ラミニン上で1週間培養された細胞において幹細胞マーカーの発現が喪失し(レーン3,5)、未分化表現型を維持するためにアクチビンの必要性を示した。mEF=マウスフィーダー層、ANK=アクチビンA+NIC+KGF、NK=NIC+KGF、BMP=BMP−4、+/−:逆転写酵素。
【0168】
図1cは、FACSを用いる細胞表面の代表的な比較実験を示している。異なる培養条件からの単一細胞懸濁液を、TRA−1−60に関して免疫染色し、Becton Dickinson FacScanおよびCellQuestソフトウェアを用いて分析した。上部パネル:マウス坑TRA−1−60またはマウスIgM(対照)で染色されたANKにより培養された細胞のフローサイトメトリー分析。下部パネル:異なる条件下でのTRA−1−60を発現する細胞のパーセンテージの比較(CM=馴化培地、ANK=アクチビンA+NIC+KGF、NK=NIC+KGF)。細胞は、1週間NKと、また<1週間CM中で(不純物のmEFsを除去するために)、20回の継代のためANKと培養した。
【0169】
図1dは、アクチビンA(A)、NIC(N)、KGF(K)または全て3つ(ANK)の組合わせの存在下、およびFGF2補足CM中、hES細胞の増殖に関する代表的な比較実験を示している。各条件に関する四つ組のウェルを、3Hチミジンにより16時間パルス化した。増殖率は、他の全ての処理と比較してアクチビン処理細胞において減少し、KGF存在下の増殖率は、ANKと同様であり、CMよりも有意に高く、hES細胞の複製におけるKGFの役割を示した。n=4;p<0.0001ANK対A、K対A、CM対A。p<0.005ANK対N、N対A、K対N。p<0.05K対CM。n.s.ANK対K、ANK対CM、N対CM。
【0170】
図2は、HSF6細胞における多分化能のmEF維持に対するアクチビン/フォリスタチンの効果を示している。より具体的には、図2aは、1週間(左パネル)および2週間(右パネル)フォリスタチンの存在下、mEFs上で培養された図1パネルIからのHSF6細胞を示している。1週後、コロニーは、明確な形態変化(上部パネル)を示し、TRA−1−60(細胞質)に関して染色を失い、Oct−4(核)に関して染色を減じた(下部パネル)。フォリスタチンの存在下2週後、コロニーは増殖を続けたが、規定された形状を失い、Oct−4免疫反応性は、完全に消失し、分化を示した。拡大バー=100μM。
【0171】
図2bは、フォリスタチンの存在下および不在下でoct−4およびnanogに関するmEFsに対するHSF6の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示している。幹細胞マーカーの発現は、フォリスタチンの存在下、mEFs上で1週間培養された細胞において無い(nanog)か、または著しく減少(oct−4)し、2週後には完全に喪失し、分化を示した。RT=逆転写酵素。
【0172】
図2cは、CF−1マウスに由来のmEFsにおけるアクチビンA転写体ならびにRT−PCRおよびウェスタンブロットを用いてmEF馴化培地中の前駆体タンパク質の同定を示している。左パネル:アクチビンA発現を示すRT−PCRであってPCR産物サイズは、262bpであり;+/−:逆転写酵素。右パネル:アクチビンA前駆体タンパク質を示すウェスタンブロット。サンプルは、二次元電気泳動、坑アクチビン抗体を用いたウェスタンブロットにより分析された。
【0173】
図2dは、HSF6細胞におけるアクチビン経路シグナル伝達成分の同定を示している。左パネル:HSF6細胞におけるタイプ1受容体ALK−4ならびにタイプII受容体ACVR−2およびACVR−2B転写体。PCR産物サイズは、それぞれ346bp、783bpおよび611bpであり;+/−:逆転写酵素。右パネル:アクチビンAの存在下で増殖されたHSF6細胞においてホスホ−Smad2を示す坑Smad抗体を用いたウェスタンブロット。Smad−2分子量=60kDa。細胞は、バナジン酸塩(10μM)およびミクロシスチン(1μM)で補足された緩衝液を含有する界面活性剤で溶解した。ブロットは、坑ホスホSmad2(ser/465/467)(パネルI)によりプローブ化してから、ストリップし、坑Smad2(パネルII)により再プローブ化した。
【0174】
図3は、アクチビンA、NICおよびKGFで培養されたhES細胞における多分化能の長期維持を示している。より具体的には、図3aは、20回継代のためにアクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたHSF6細胞における幹細胞マーカーの分析を示している。上部パネル:免疫組織化学分析は、TRA−1−60、SSEA−4(赤)およびOct−4(緑)に関してロバスト染色を示している。拡大バー=200μM。下部パネル:oct−4、nanog(26サイクル)およびhTERT(35サイクル;産物=114bp)に関するRTPCR分析。同等の継代数に関してmEFs上で培養された細胞の比較のため、同じアッセイで分析され、全てのマーカーの発現が同等のレベルを示した。
【0175】
図3bは、ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を示している。アクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたHSF6細胞の代表的な組織構造は、ヌードマウスの腎嚢下に移植された。8週後、腎臓を取り出し、細胞層の3層全ての証拠を示すテラトーマが観察された。C=軟骨細胞(中胚葉)、PNC=神経周囲(シュワン)細胞(外肺葉)、RE=気道上皮(内肺葉)。拡大バー=100μM。
【0176】
図3cは、アクチビンA、KGF、およびNICの存在下で培養されたhES細胞に由来する胚様体における系列特異的マーカーのRT−PCR分析を示している。それは、全ての細胞型のRNA発現を示す。神経D=外肺葉、T遺伝子=中肺葉;α−FP=内肺葉、+/−:逆転写酵素。
実施例の要約
【0177】
本試験において、我々は、アクチビンA、ニコチンアミド(NIC)、およびケラチノサイト成長因子(KGF)の存在下、ラミニン上で増殖されたhES細胞は、20回の継代を超えた連続増殖時に未分化のままであることを示す。
【0178】
初期の実験において、我々は、膵内分泌系列への分化誘導を方向付けると思われるhES細胞を培養する培地を開発しようとした。細胞接着に関して、我々は、hES細胞におけるα6 β1発現の高レベルに基づいて6、ラミニン1を用いた。ヒト胎児膵細胞における細胞増殖および分化誘導を調節することが以前に示されている種々の成長因子および化学物質のカクテルを試験した。驚くべきことに、これらの条件下で数週間培養されたhES細胞は、細胞形態に何ら変化を示さなかった。引き続き、各因子を連続して除外され、多分化能は、ヒト幹細胞に関する公知のマーカー:TRA−1−60、nanog、およびOct−4の発現によって評価した(データは示していない)。成長因子と、未分化状態で複製するhES細胞を維持した化学物質との組合わせが、アクチビンA、NIC、およびKGFに狭められたら、これら成長因子の各々が単独または種々組合わせて、実験が繰り返された。全て3つの因子(A、N、K)を含有する培養物の染色は、幹細胞マーカーTRA−1−60およびOct−4(図3a、パネルII)に関して均一であり、フィーダー層(図3a、パネルI)またはmEFsからのCM(示していない)における細胞に対する染色と同等であった。oct−4およびnanogのロバスト遺伝子発現もまた、フィーダー層上で増殖するコロニー内で得られたものと同等のレベルで細胞単層におけるRT−PCRにより観察された(図1b)。
【0179】
幹細胞および「ステムネス」のホールマークは、束ね増殖である。興味深いことに、hES細胞の外観は、通常のタイトコロニー形成から均一形状細胞の不規則な単層まで徐々に変化した。細胞は、元のコロニーで見られたものよりも大きく出現した(図1a、パネルII)。連続増殖に伴い、それらは、最後には連続単層を形成し、皿に盛り上がった。しかしながら、これらの変化は、可逆性であり:細胞をフィーダー層に戻すと、それらは、フィーダー層で以前に観察された(図1a、パネルIII)ものと同様にコロニー形成を再開した。
【0180】
増殖培地からアクチビンの除去により、細胞形態において分化表現型への急激な変化を生じた(図1a、パネルIV);アクチビンAなしの1週後、免疫反応性のTRA−1−60の同時喪失(図1a、パネルIV)と共に、細胞はもはやnanogを発現せず(図1b)、Oct−4タンパク質(図1a、パネルIV)およびメッセージ(図1b)のレベルが減少した。免疫組織化学およびRT−PCRデータは、フローサイトメトリーによる細胞表面抗原発現の定量化により検証された。ES細胞系H7およびH14におけるTRA−1−60発現における以前の報告25と一致して、mEF馴化培地の存在下、ラミニン上で増殖されたHSF6の60.3%がTRA−1−60を発現した。親細胞と同様のパターンの発現で(図1c)、規定の培地中で増殖された細胞の中で、45.96%が、継代2で発現し、継代10で60.46%、継代20で71.9%発現した。対照的に、アクチビンが、1週間培地から除かれると、発現レベルは3.9%まで減少した(図1c)。
【0181】
規定の培養培地で培養された細胞は、継代20までの多分化能のマーカーに関して調べられ、試験された全てのマーカーを発現することが判明した:TRA−1−60、SSEA−4、Oct−4(免疫組織化学分析)、oct−4nanog、およびテロメラーゼ逆転写酵素(htert)(RT−PCR)(図3a)。
【0182】
培地からKGFおよびNICの除去は、異なる作用を有した;細胞は未分化表現型を維持した(図1a、パネルV、および図1b)。しかしながら、3つの因子(A、N、K)の組み合わせと比較してアクチビン、KGF、またはNIC単独で培養した場合、細胞増殖に有意差があった。アクチビン単独で培養された細胞は、分化しなかった(A:図1a、パネルV;図1b);しかしながら、増殖率は、組合わせ(ANK)、あるいはKGFまたはNIC単独で培養されたものと比較して有意に減少した(図1d、n=4;p<0.0001対ANKまたはKGF、p<0.005対NIC)。対照的に、組み合わせで培養された細胞と比較して、KGFで培養された細胞の増殖率において統計学的差異はなかった。NIC単独で培養された細胞増殖は、中間であったが、KGFまたはANK処理細胞よりも有意に少なく(図1d、n=4;p<0.005)、その率は、アクチビン処理細胞よりも有意に高かった(図1d、n=4;p<0.005)。これらのデータから、アクチビンは重要であり、多能性の維持のために恐らく必要であり、KGF、およびより少ない程度であるがNICは、増殖の維持および連続増殖に役立つと、我々は、結論付けた。NICの不在下でアクチビンおよびKGF(AK)により培養された細胞は、未分化のままで短期間で増殖に成功したが、それらの増殖は、可能性としてその文書化された坑アポトーシス作用のため26、NICを含んだこれらの培養と比較して数回の継代にわたって最適以下であった(データは示していない)。したがって、NICは、20回の継代中に使用される成長因子の組合わせに含まれた。重要なこととして、20回の継代のために未分化細胞のマーカーを維持することに加えて、これらの細胞もまた、正常な核型を保持した(データは示していない)。
【0183】
我々は次に、形質転換成長因子−β(TGFβ)スーパーファミリーの別のメンバーが、多能性を維持できるかどうかを調査した。アクチビンのように、骨形成タンパク質は、hES細胞の栄養外胚葉への分化誘導など28、多くの細胞応答を調節するタンパク質を分泌する27。分化におけるその役割に加えて、BMP−4はまた、mES細胞における多能性を維持することが示されている12。対照的に、アクチビンAが、培地中のBMP−4と置き換わると、hES細胞は、未分化表現型を維持できず、nanogおよびoct−4発現の完全喪失が、1週後に生じた(図1b)。mES細胞において、BMP−4は、恐らく発生の特定の段階に存在する他の成長因子との相互作用のため、また細胞が曝露されるペプチドの濃度のため29、多能性および分化誘導双方の維持において逆説的な役割を演じる12、13。ある一定の条件下でhES細胞のアクチビンA誘導分化が既に示されているので30、同様の状態が、アクチビンAおよびhES細胞に生じ得る。
【0184】
アクチビンAは、多様な生物学的機能の自己分泌または内分泌制御因子として多種多様の組織に同定されている8、10。我々は、mEFsにより馴化された培地中、mEFsにおけるアクチビンA転写体および分泌アクチビンA前駆体タンパク質の高発現を見出したことは重要である(図2c)。さらにHSF6細胞は、タイプIおよびタイプII双方のアクチビン受容体およびロバストSmad2リン酸化の高レベルを発現する(図2d)。さらに、アクチビン阻害剤のフォリスタチンの存在下で2週後、mEFs上で増殖されたHSF6細胞は分化し、規定の培地からアクチビンAの除去により見られた効果(図1a〜b)と同様にESマーカーのTRA−1−60、Oct−4、およびnanogを完全に喪失した(図2a〜b)。これらの実験に用いられたフォリスタチンのイソ体であるFS−288は、アクチビンAに極めて高い親和性であり、BMPファミリーのメンバーに低い親和性であり、TGFβに結合しない10、31。我々は、既にBMP−4細胞が、hES細胞において多能性を維持するのに無効であることを示しており;したがって、我々が見る分化は、恐らく特定のアクチビン/フォリスタチン相互作用から生じると考えられる。
【0185】
アクチビンAは、mESの中胚葉への分化13、ヒト膵前駆体細胞のβ細胞への分化14、神経分化の阻害15、16、より最近、hES細胞における中胚葉の誘導17に関係している。しかしながら、これは、mEFsにより馴化された培地中のアクチビンの存在、引き続く未分化状態での幹細胞の維持において新規な役割についての最初の文書である。我々は、hES細胞における数種のWntの発現を検出した(データは示していない)。したがって、Wntシグナル伝達の活性化を介してhES多能性維持の最近の報告5と共に、我々の知見は、hES細胞における多能性維持のための規定の分子経路を明瞭にさせる可能性がある。
【0186】
アクチビンAに富んだ培地中に維持されたhES細胞の多能性のさらなる証拠は、インビボテラトーマ形成によって提供された。ヌードマウスの腎嚢下にhES細胞の移植後、移植片は、外胚葉構造、内胚葉構造、および中胚葉構造の証拠を示した(図3b)。さらに、またアクチビンAの存在下で培養された細胞に由来する17日齢の胚葉体に対するRT−PCRによって得られた系列特異的遺伝子発現プロフィルは、全て3層の細胞層に関して同様のパターンの発現を示した(図3c)。これらのデータは、アクチビンAを含有する培地中のhESの維持は、他の外来細胞またはヒトの細胞との共培養を必要としないで多能性維持を可能にする。
【0187】
これらの細胞事象を媒介する上で重要な因子としてアクチビンAの同定は、「ステムネス」の原因となる生物学的な経路を解明させるであろう。臨床適用の可能性のためにヒト幹細胞の産生と培養における効率性の増加により、非政府支持研究に利用でき、最近の報告18における17種の新規に誘導された幹細胞系がタイムリーに得られる。本明細書に報告された知見は、動物またはヒトのフィーダー層を使用することなく、新規なヒト胚幹細胞系の誘導を促進するであろう。
【0188】
種々の変更および変化が、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、本発明の実施が成され得ることは当業者にとって明白であろう。本発明の他の実施形態は、本発明の明細書および実施を考慮することにより当業者にとって明らかとなろう。本発明は以下の請求項によって示されるのが真の範囲および精神であって、明細書および実施例は、単に例示するものであるように意図されている。
【0189】
引用文献
本明細書に引用されている他の文献と共に以下の引用文献は、参照としてそれらの全体が本明細書に組み込まれている。
1. スミス,エイ・ジー(Smith,A.G.)「マウスおよびヒトの胎芽由来の幹細胞」、Annu Rev Cell Dev Biol 17、435−462頁 (2001)。
2. トムソン,ジェー・エイ(Thomson,J.A.)ら、「ヒトの胚盤胞に由来する胎芽幹細胞系」、Science 282、1145−1147頁(1998)。
3. ロイビノフ,ビー・エー(Reubinoff,B.E.)、ペラ,エム・エフ(Pera,M.F.)、フォング,シー・ワイ(Fong,C.Y.)、トロウンソン,エイ(Trounson, A.)およびボンソ,エイ(Bongso,A.)「ヒトの胚盤胞に由来する胎芽幹細胞系:インビトロ体細胞分化」、Nat Biotechnol 18,399−404頁(2000)。
4. ハンフレイ,アール(Humphrey,R.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie GM)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,AD)、キング,シー・シー(King CC)、ブケイ,エヌ(Bucay N)、ヘイエク,エイ(Hayek A)「ヒト胎芽幹細胞における多分化能の維持は、独立したSTAT3である」、 Stem Cells 22、522−530 (2004).
5. Sato,N.,Meijer,L., Skaltsounis,L.,Greengard,P.& Brivanlou,A.H.「薬理的GSK−3特異的阻害剤によるWntシグナル伝達の活性化を介して、ヒトおよびマウスの胎芽幹細胞における多分化能の維持」、Nat Med 10、55−63頁(2004)。
6. クスウ,シー(Xu,C.)ら、「未分化ヒト胎芽幹細胞のフィーダー細胞のない増殖」、Nat Biotechnol 19、971−974頁(2001)。
7. リチャーズ,エム(Richards,M.)、フォング,シー・ワイ(Fong,C.Y.)、チャン,ダブリュー・ケイ(Chan,W.K.)、ウォング,ピー・シー(Wong,P.C.)およびボンソ,エイ(Bongso,A.)「ヒト内細胞塊および胎芽幹細胞のヒトフィーダー細胞の支持延長による未分化増殖」、Nat Biotechnol 20、933−936頁(2002)。
8. ヴェール,ダブリュー(Vale,W.)ら、「ブタ卵胞液からタンパク質を放出するFSHの精製と特性化」、Nature 321、776−779頁(1986)。
9. リング,エヌ(Ling,N.)ら、「脳下垂体FSHは、2つの形態のインヒビンからベータ−サブユニットのヘテロダイマーにより放出される」、Nature 321、779−782頁(1986)。
10. ルイシ,エス(Luisi,S.)、フロリオ,ピー(Florio,P.)、 ライス,エフ・エム(Reis,F.M.)およびペトラグリア,エフ(Petraglia,F.)「アクチビンAの発現と分泌:可能な生理的および臨床的な関係」、Eur J Endocrinol 145、 225−236頁(2001)。
11. シャブ−タル,ワイ(Shav−Tal,Y.)およびジポリ,ディー(Zipori,D.)「ホモポイエシスの調節におけるアクチビンAの役割」、Stem Cells 20、493−500頁(2002)。
12. イング,キュー・エル(Ying,Q.L.)、ニコルス,ジェイ(Nichols,J.)、チャンバーズ,アイ(Chambers,I.)およびスミス,エイ(Smith,A.)「Idタンパク質のBMP誘導は分化を抑制して、STAT3と協同で胎芽幹細胞自体の再生を維持する」、Cell 115、281−292頁(2003)。
13. ジョハンソン,ビー・エム(Johansson,B.M.)およびウィレス,エム・ヴィ(Wiles,M.V.)「哺乳動物の中胚葉および造血発達におけるアクチビンAおよび骨形成タンパク質4の関与に関する証拠、Mol Cell Biol 15、141−151頁(1995)。
14. デメテルコ,シー(Demeterco,C.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、ジブ,エス・エイ(Dib,S.A.)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,AD)およびヘイエク,エイ(Hayek A)「ヒト胎児の膵臓細胞の分化および増殖におけるアクチビンAおよびベタセルリンの役割」、J Clin Endocrinol Metab 85、3892−3897頁(2000)。
15. ハシモト,エム(Hashimoto,M.)ら、「神経分化の阻害剤としてのアクチビン/EDF」、Biochem Biophys Res Commun 173、193−200頁(1990)。
16. ハーランド,アール(Harland,R.)「神経誘導」、Curr Opin Genet Dev 10、357−362(2000)。
17. レーベンバーグ,エス(Levenberg,S.)ら、「三次元ポリマー骨格上のヒト胎芽幹細胞の分化」、Proc.Natl.Acad.Sci. 100、12741−12746頁(2003)。
18. コーワン,シー・エイ(Cowan,C.A.)ら、「ヒト胚盤胞から胎芽幹細胞系の誘導」、N Engl J Med 350:1353−1356頁(2004)。
19. アベイタ エム,シー・エイ(Abeyta M,C.A.)、ロドリグエズ,アール(Rodriguez,R.)、ボドナール,エム(Bodnar,M.)、レイジョ ペラ,アール(Reijo Pera R.)、フィルポ,エム・ティー(Firpo, M.T)「独立して誘導されるヒト胎芽幹細胞系のユニークな遺伝子発現の符号」、Human Molecular Genetics 13、in press(2004).
20. モヴァサト,ジェイ(Movassat,J.)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,A.D.)、ポルサ,ビー(Portha,B.)およびヘイエク,エイ(Hayek,A.)「ヒト胎児膵臓内分泌前駆体細胞におけるケラチノサイト成長因子およびベータ細胞分化」、Diabetologia 46、822−829頁(2003)。
21. ヘイエク,エイ(Hayek A)およびビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)「ヒト胎児および成人膵島の実験的移植」、Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 82 8号、2471−2475頁(1997)。
22. カルボノイ,エイチ(Carbonneau,H.)およびトンクス(Tonks)、Annu. Rev. Cell Biol.8:463−93頁、1992年。
23. ヘイエク,エイ(Hayek A)、ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、シルリ,ヴイー(Cirulli V)ら、「ヒト成人ベータ細胞の成長因子/マトリックス誘導増殖」、Diabetes 44:1458−1460頁(1995)。
24. キング,シー・シー(King CC)、ニュートン,エイ・シー(Newton AC)「アダプタータンパク質grb14は、3−ホスホイノシチド依存キナーゼ−1の局在化を調節する」、 J Biol Chem 279:37518−37527頁(2004)。
25. ヘンダーソン,ジェイ・ケイ(Henderson JK)、ドレイパー,ジェイ・エス(Draper JS)、ベイリー,エイチ・エス(Baillie HS) ら、「移植前ヒト胎芽および胎芽幹細胞は、段階特異的胎芽抗原の比較可能な発現」、Stem Cells 20:329−337頁(2002)。
26. ビーティー,ジー・エム(Beattie,G.M.)、レイボウィッツ,ジー(Leibowitz G)、ロペズ,エイ・ディー(Lopez,A.D.)ら、「培養されたヒト胎児膵臓細胞における細胞死からの保護」、Cell Transplant 9:431−438頁(2000)。
27. イトウ,エス(Itoh S)、イトウ,エフ(Itoh F)、ゴウマンス,エム・ジェイ(Goumans MJ)ら、「smadタンパク質を介する成長因子−ベータファミリーメンバーを形質転換させるシグナル伝達」、Eur J Biochem 267:6954−6967頁(2000)。
28. クスー,アール・エイチ(Xu RH)、チェン,エックス(Chen X)、リー,ディー・エス(Li DS)ら、「Bmp4は、栄養芽細胞へのヒト胎芽幹細胞分化を開始する」、Nat Biotechnol 20:1261−1264頁(2002)。
29. グミエンニイ,ティー・エル(Gumienny TL)、パジェット,アール・ダブリュー(Padgett RW)「tgf−ベータスーパーファミリーシグナル調節の他の側面:細胞外部の思考」、Trends Endocrinol Metab 13:295−299頁(2002)。
30. ミヤザワ,ケイ(Miyazawa K)、シノザキ,エム(Shinozaki M)、ハラ,ティー(Hara T)ら、「tgf−ベータスーパーファミリーシグナル伝達における2つの主要なsmad経路」、Genes Cells 7:1191−1204頁(2002)。
31. シディス,ワイ(Sidis Y)、トルトリエロ,ディー・ヴィー(Tortoriello DV)、ホルメス,ダブリュー・イー(Holmes WE)ら、「フォリスタチン関連タンパク質およびフォリスタチンは、内因性アクチビン対外因性アクチビンを中和する」、Endocrinology 143:1613−1624頁(2002)。
【図面の簡単な説明】
【0190】
【図1a】アクチビンAの不在下、hES細胞の分化を示す図である。位相差顕微鏡(上段)および免疫組織化学(下段)によって見られたHSF6細胞の形態および分化状態を示す図である。
【図1b】mEFs(レーン1)またはラミニン(レーン2〜5)における種々の培養条件下でのoct−4およびnanogに関するhES細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示す図である。
【図1c】FACSを用いた細胞表面−抗原発現を比較する代表的実験を示す図である。
【図1d】アクチビンA(A)、NIC(N)、KGF(K)、または3つ全ての組み合わせ(ANK)の存在下、およびCMを添加したFGF2におけるhES細胞の増殖を比較する代表的実験を示す図である。
【図2a】HSF6細胞における多能性のmEF維持に及ぼすアクチビン/フォリスタチンの効果を示す図である。フォリスタチンの1週間(左パネル)および2週間(右パネル)存在下、mEFs上で培養した図1、パネルIのHSF6細胞を示す図である。
【図2b】フォリスタチン存在下ならびに不在下でのoct−4およびnanogに関するmEFs上のHSF6細胞の半定量的RT−PCR(26サイクル)を示す図である。
【図2c】RT−PCRおよびウェスタンブロット法を用いた、CF−1マウス由来mEFsにおけるアクチビンA転写体ならびにmEF馴化培地における前駆体タンパク質の同定を示す図である。
【図2d】HSF6細胞における成分をシグナル伝達するアクチビン経路の同定を示す図である。
【図3a】アクチビンA NICおよびKGFと共に培養したhES細胞における多能性の長期維持を示す図である。アクチビンA、KGFおよびNICの存在下、20継代培養したHSF6細胞における幹細胞マーカーの分析を示す図である。
【図3b】ヌードマウスにおけるテラトーマ形成を示す図である。
【図3c】アクチビンA、KGFおよびNICの存在下で培養したhES細胞由来の胚様体における系統特異的マーカーのRT−PCR分析を示す図である。
【0191】
[配列表]
配列番号:01:
インヒビンベータAサブユニット(アクチビンA)ホモサピエンス(PeproTechおよびGenBank X04447)マクロファージ細胞系U937(ATCC CRL 1539))アミノ酸配列:
配列番号:02:
インヒビンベータAサブユニット(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(GenBank X04447)3’−領域マクロファージ細胞系U937(ATCC CRL 1539)核酸配列:
配列番号:03:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(Swiss−Prot P08476)(GenBank M13436)(赤芽球分化誘導タンパク質)(EDF)卵巣アミノ酸配列:
配列番号:04:インヒビンベータBサブユニット−組換えインヒビン
特許文献10(GenBank A14422)アミノ酸配列:
配列番号:05:精巣ホモサピエンスにおけるインヒビンベータBサブユニット(GenBank X72498)アミノ酸配列:
配列番号:06:インヒビンBサブユニット赤芽球分化誘導タンパク質mRNA(EDF)、急性単球性白血病細胞系THP−1、ホモサピエンス(GenBank J03634)アミノ酸配列:
配列番号:07:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot Swiss−Prot Q04998)(GenBank X69619;BC053527)−ハツカネズミ(マウス)アミノ酸配列:
配列番号:08:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P18331)(GenBank M37482)−Rattus norvegicus(ラット)アミノ酸配列:
配列番号:09:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P27092)(GenBank U26946;U42377;M61167;M57407)−Gallus gallus(ニワトリ)アミノ酸配列:
配列番号:10:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P07995)(GenBank U16239;U16238結合;M13274)−Bos taurus(ウシ)アミノ酸配列:
配列番号:11:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P55102)(GenBank D50326)−Equus caballus(ウマ)アミノ酸配列:
配列番号:12:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P03970)(GenBank X03266)−Sus scrofa(ブタ)アミノ酸配列:
配列番号:13:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(Swiss−Prot P43032)(GenBank L19218)−Ovis aries(ヒツジ)アミノ酸配列:
配列番号:14:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Felis catus(ネコ)アミノ酸配列:
配列番号:15:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Danio rerio(ゼブラフィッシュ)アミノ酸配列:
配列番号:16:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)(GenBank BC056742)−Carassius auratus(キンギョ)アミノ酸配列:
配列番号:17:
ケラチノサイト成長因子(PeproTech)−ホモサピエンス(ヒト)アミノ酸配列アミノ酸配列:
配列番号:18:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P21781)(GenBank M60826;S81661)−ホモサピエンス(ヒト)アミノ酸配列:
配列番号:19:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P36363)(GenBank Z22703;U58503;BC052847)−ハツカネズミ(マウス)アミノ酸配列:
配列番号:20:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P79150)(GenBank U80800)−Canis familiaris(イヌ)アミノ酸配列:
配列番号:21:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q9N198)(GenBank AF217463)−Sus scrofa(ブタ)アミノ酸配列:
配列番号:22:
ケラチノサイト成長因子(HBGF−7)(Swiss−Prot Q02195)(GenBank X56551)−Rattus norvegicus(ラット)アミノ酸配列:
配列番号:23:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P48808)(GenBank Z46236)−Ovis aries(ヒツジ)アミノ酸配列:
配列番号:24:
ケラチノサイト成長因子(FGF−7)(GenBank AF420232)−Mustela vison(アメリカミンク)アミノ酸配列:
配列番号:25:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P21781)(GenBank S81661)−ホモサピエンス(ヒト)核酸配列:
配列番号:26:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P36363)(GenBank Z22703)−ハツカネズミ(マウス)核酸配列:
配列番号:27:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P79150)(GenBank U80800)−Canis familiaris(イヌ)核酸配列:
配列番号:28:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q9N198)(GenBank AF217463)−Sus scrofa(ブタ)核酸配列:
配列番号:29:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot Q02195)(GenBank X56551)−Rattus norvegicus(ラット)核酸配列:
配列番号:30:
ケラチノサイト成長因子(Swiss−Prot P48808)(GenBank Z46236)−Ovis aries(ヒツジ)核酸配列:
配列番号:31:
ケラチノサイト成長因子(FGF−7)(GenBank AF420232)−Mustela vison(アメリカミンク)核酸配列:
配列番号:32:
インヒビンベータA鎖(アクチビンベータ−A鎖)ホモサピエンス(GenBank M13436)(赤芽球分化誘導タンパク質)(EDF)卵巣アミノ酸配列:
配列番号:33:
インヒビンBサブユニット−組換えインヒビン
特許文献10(GenBank A14422):
配列番号:34:
精巣ホモサピエンスにおいて成熟サブユニットベータ(A)インヒビンに関してコードする核酸配列(GenBank X72498):
配列番号:35:
ヒト赤芽球分化誘導タンパク質mRNA(EDF)、原資料テキスト:急性単球性白血病細胞系THP−1、ホモサピエンス(GenBank J03634):
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未分化幹細胞を維持するための方法であって、所望の結果を得るために十分な時間量、前記細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法。
【請求項2】
前記方法が、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、およびNICのうちの2種以上に前記細胞を曝露させることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、およびNICに前記細胞を曝露させることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記FGFファミリーのメンバーが、ケラチノサイト成長因子(KGF)である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記曝露が、前記細胞の増殖をもたらす請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露が、少なくとも1回反復される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の結果が、前記幹細胞を10回以上継代培養することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の結果が、前記幹細胞を30回以上継代培養することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と30%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と80%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と95%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と99%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と30%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と80%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記FGFファミリーメンバーが、配列番号:17と90%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と95%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と99%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項23】
a)培養培地およびb)TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせを含んでなる組成物。
【請求項24】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
幹細胞をさらに含んでなる請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と30%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項31】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と80%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項32】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項33】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と95%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項34】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と99%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項35】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と30%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項36】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と80%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項37】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と90%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項38】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と95%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項39】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と99%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項40】
a)少なくとも1種の精製TGFβタンパク質ファミリーのメンバー、b)少なくとも1種の精製FGFタンパク質ファミリーのメンバー、3)精製NIC、のうちの2種以上の組み合わせを含んでなる組成物。
【請求項41】
幹細胞のための培養培地である請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも10回継代接種された培養物に由来する未分化多能性幹細胞。
【請求項48】
前記培養物が、少なくとも20回継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項49】
前記培養が、少なくとも30回継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項50】
前記幹細胞が、馴化培地、フィーダー細胞、またはLIFの存在下ではなく、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、またはNICを含んでなる培地の存在下で継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項51】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項52】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項53】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項54】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法により生産された幹細胞。
【請求項55】
以下の:
a)TGFβファミリーのメンバー、
b)FGFファミリーのメンバー、
c)NIC、
d)幹細胞、および
e)幹細胞の培養培地、のうちの2種以上を含んでなるキット。
【請求項56】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項55に記載のキット。
【請求項58】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項59】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項60】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項61】
未分化幹細胞を維持する方法であって、所望の結果を得るために十分な時間量、前記細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含んでなり、前記幹細胞を、フィーダー細胞、馴化培地、または白血病阻害因子には曝露させることもない方法。
【請求項62】
組成物が、a)培養培地およびb)TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含んでなるが、フィーダー細胞、馴化培地、またはLIFを含まない組成物。
【請求項63】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞に由来する未分化細胞。
【請求項64】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された胚幹細胞。
【請求項65】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞を含んでなる製薬組成物。
【請求項66】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞に由来する細胞。
【請求項1】
未分化幹細胞を維持するための方法であって、所望の結果を得るために十分な時間量、前記細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法。
【請求項2】
前記方法が、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、およびNICのうちの2種以上に前記細胞を曝露させることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法が、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、およびNICに前記細胞を曝露させることを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記FGFファミリーのメンバーが、ケラチノサイト成長因子(KGF)である請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記曝露が、前記細胞の増殖をもたらす請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記曝露が、少なくとも1回反復される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記所望の結果が、前記幹細胞を10回以上継代培養することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記所望の結果が、前記幹細胞を30回以上継代培養することを含んでなる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と30%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と80%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と95%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と99%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と30%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と80%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記FGFファミリーメンバーが、配列番号:17と90%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と95%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と99%以上の配列同一性を示す請求項1に記載の方法。
【請求項23】
a)培養培地およびb)TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらのうちの2種以上の組み合わせを含んでなる組成物。
【請求項24】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
幹細胞をさらに含んでなる請求項23に記載の組成物。
【請求項27】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と30%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項31】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と80%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項32】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と90%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項33】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と95%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項34】
前記TGFβファミリーのメンバーが、配列番号:1と99%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項35】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と30%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項36】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と80%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項37】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と90%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項38】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と95%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項39】
前記FGFファミリーのメンバーが、配列番号:17と99%以上の配列同一性を示す請求項23に記載の組成物。
【請求項40】
a)少なくとも1種の精製TGFβタンパク質ファミリーのメンバー、b)少なくとも1種の精製FGFタンパク質ファミリーのメンバー、3)精製NIC、のうちの2種以上の組み合わせを含んでなる組成物。
【請求項41】
幹細胞のための培養培地である請求項40に記載の組成物。
【請求項42】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項41に記載の組成物。
【請求項46】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
少なくとも10回継代接種された培養物に由来する未分化多能性幹細胞。
【請求項48】
前記培養物が、少なくとも20回継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項49】
前記培養が、少なくとも30回継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項50】
前記幹細胞が、馴化培地、フィーダー細胞、またはLIFの存在下ではなく、TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、またはNICを含んでなる培地の存在下で継代接種された請求項47に記載の幹細胞。
【請求項51】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項52】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項53】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項47に記載の幹細胞。
【請求項54】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法により生産された幹細胞。
【請求項55】
以下の:
a)TGFβファミリーのメンバー、
b)FGFファミリーのメンバー、
c)NIC、
d)幹細胞、および
e)幹細胞の培養培地、のうちの2種以上を含んでなるキット。
【請求項56】
前記TGFβファミリーのメンバーが、アクチビンAである請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記FGFファミリーのメンバーが、KGFである請求項55に記載のキット。
【請求項58】
前記幹細胞が、哺乳動物の幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項59】
前記幹細胞が、ヒトの幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項60】
前記幹細胞が、胚幹細胞である請求項55に記載のキット。
【請求項61】
未分化幹細胞を維持する方法であって、所望の結果を得るために十分な時間量、前記細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含んでなり、前記幹細胞を、フィーダー細胞、馴化培地、または白血病阻害因子には曝露させることもない方法。
【請求項62】
組成物が、a)培養培地およびb)TGFβファミリーのメンバー、FGFファミリーのメンバー、NIC、またはこれらの2つ以上の組み合わせを含んでなるが、フィーダー細胞、馴化培地、またはLIFを含まない組成物。
【請求項63】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞に由来する未分化細胞。
【請求項64】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された胚幹細胞。
【請求項65】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞を含んでなる製薬組成物。
【請求項66】
細胞を未分化状態に維持するのに十分な量で、形質転換成長因子−ベータ(TGFβ)タンパク質ファミリーのメンバー、線維芽細胞成長因子(FGF)タンパク質ファミリーのメンバー、またはニコチンアミド(NIC)に幹細胞を曝露させることを含む方法によって増殖されたか、または維持された幹細胞に由来する細胞。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図1b】
【図1c】
【図1d】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【公表番号】特表2007−528226(P2007−528226A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502947(P2007−502947)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/007704
【国際公開番号】WO2005/086845
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505093840)リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (1)
【氏名又は名称原語表記】Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA 94607, USA
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/007704
【国際公開番号】WO2005/086845
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505093840)リージェンツ オブ ザ ユニヴァーシティ オブ カリフォルニア (1)
【氏名又は名称原語表記】Regents of the University of California
【住所又は居所原語表記】1111 Franklin Street, 12th Floor, Oakland, CA 94607, USA
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]