説明

胡麻含有調味料

【課題】下層分離・ゲル化が抑制でき、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる胡麻含有調味料を提供する。
【解決手段】ラムザンガムを含有する胡麻含有調味料を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は胡麻含有調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のサラダ嗜好の傾向等によりドレッシングなど各種調味料が市場に出回っている。中でも胡麻成分を含有した胡麻含有調味料は、胡麻独特の風味が好まれ、和風調味料の代表的なものとなっており、乳化液状ドレッシング様でガラス瓶やペットボトル等の容器に入れて供給され、生野菜、ゆで野菜、湯通しした肉、魚介類のフライなどにかけて食されている。
【0003】
しかしながら従来の胡麻含有調味料は、保存中に胡麻成分を含む層と容器下部に調味液を含む水溶液の層に分離する、いわゆる下層分離が生じやすく安定性が悪かった。また胡麻成分を含む層がゲル化して胡麻含有調味料が容器の口から出にくくなるなど、その商品価値が著しく損なわれる場合があった。
【0004】
これらの解決方法としてキサンタンガムやセルロース等の増粘多糖類を用いる方法が提案されているが(例えば、特許文献1〜3など参照)、これらの方法を用いても、長期間保存した場合は、下層分離やゲル化が生じることを完全に防止することはできなかった。例えば、キサンタンガムの量が少量であれば、胡麻成分の分離を抑制しきれずに下層分離を起こし、また、比較的多量のキサンタンガムを配合した場合、層分離は抑えられても、胡麻含有調味料全体がゲル化して容器の口から容易に流れ出ない問題が起こっていた。そこで、長期間保存しても、下層分離、ゲル化のいずれも発生しない保存安定性に優れた胡麻含有調味料が求められていた。
【0005】
ラムザンガムは、工業用増粘剤・懸濁化剤、飼料としての用途が知られており、例えば、石油二次・三次回収用増粘剤(特許文献4)、工業用途としての水性澱粉スラリー用懸濁剤(特許文献5)、釉薬にラムザンガムを添加することによる懸濁安定性の良好な釉薬組成物(特許文献6)、養殖鰻用配合飼料(特許文献7)などの用途が検討されている。しかし、ラムザンガムの食品や医薬品分野などの可食性組成物および経口組成物への使用検討はほとんどなされていない。
【0006】
【特許文献1】特開平4−16161号公報
【特許文献2】特開平11−290036号公報
【特許文献3】特開2004−159530号公報
【特許文献4】特開平2−104896号公報
【特許文献5】特許第2660269号公報
【特許文献6】特公平6−67795号公報
【特許文献7】特開平2−109948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みて開発されたものであり、特に本発明は、長期間保存しても下層分離やゲル化が発生しない、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる胡麻含有調味料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねたところ、胡麻含有調味料に安定剤としてラムザンガムを含有することで、長期間保存しても胡麻成分の分離やゲル化が生じず、低粘度で下層分離を抑制することができ、保存安定性に優れた胡麻含有調味料が得られることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
つまり、本発明は、ラムザンガムを安定剤として含有する胡麻含有調味料及び該調味料の保存安定性向上方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、長期間保存しても胡麻成分の分離やゲル化が生じず、低粘度であるので容器から容易に注ぎ出すことができ、下層分離を抑制することができ、保存安定性に優れた胡麻含有調味料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、安定剤としてラムザンガムを含むことを特徴とする胡麻含有調味料に関する。
ラムザンガムは微生物スフィンゴモナス(Sphingomonas)が菌体外に産生する多糖類であり、(1→3)β-D-グルコース、(1→4)β-D-グルクロン酸、(1→4)β-D-グルコース、(1→4)α-L-ラムノース(1→)からなる構成単位(モノマー)が直鎖状に結合した主鎖骨格を有し、側鎖としてグルコース2分子が、1→3結合したグルコースのC6の位置に1→6結合している。
【0012】
本発明の胡麻含有調味料には、ラムザンガムの添加量が0.01〜0.5質量%、好ましくは、0.05〜0.3質量%、更に好ましくは0.1〜0.25質量%となるようにすることが望ましい。
【0013】
通常胡麻含有調味料を安定化するには、安定剤を単品で使用するよりも、複数の安定剤を組みあわせて使用する方が安定化効果が高い場合がある。しかし、本発明で使用するラムザンガムは、単品でも、胡麻含有調味料の安定化に顕著に効果を発揮することができ、特には下層分離を抑制することができる。更には、前述の通り非常に低い添加量でも安定化効果に優れるため、当該調味料を低粘度に調製することができ、容器からも容易に注ぎ出すことが可能となるという効果も有する。
【0014】
本発明に使用される胡麻含有調味料とは、胡麻成分を含有した水中油滴型の乳化液状ドレッシング、タレ様の食品であり、一般的には、胡麻成分、油脂、卵黄又は全卵、及び酸味料からなり、該成分に調味料、香辛料、デンプン、増粘剤、着色料、香料等の食品素材や食品添加物を適宜配合して得られる。卵黄又は全卵の代わりに、食品用乳化剤を用いてもよく、あるいは、これらを併用しても良い。
【0015】
本発明の胡麻成分とは、白胡麻、金胡麻、黒胡麻、茶胡麻などの胡麻種子をミル等で流動性の認められる程度まですり潰したペースト状のものをいい、練り胡麻などが該当する。これに煎り胡麻や煎り胡麻を擦ったものを加えたものでも良い。胡麻成分の配合量は、たとえば、調味料の全体量に対して、0.1〜30質量%の範囲で用いることが出来る。0.1質量%未満では、胡麻特有の風味に乏しく胡麻含有調味料として物足りなさを感じ、30質量%を超えると胡麻含有調味料の粘度が増大して、乳化液状ドレッシング様を呈さなくなってしまい容器の口から流れ出にくくなる。好ましくは5〜20質量%である。
【0016】
なお、前述のラムザンガム以外の安定剤を本発明の効果に影響を与えない程度に添加することが出来る。例えば、グァーガム、タラガム、ローカストビーンガム、カラギナン、ペクチン、プルラン、カシアガム、脱アシル型ジェランガム、ネイティブ型ジェランガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、ゼラチン、トラガントガム、カラヤガム、アラビアガム、マクロホモプシスガム、キサンタンガム、寒天、アルギン酸類(アルギン酸、アルギン酸塩)、カードラン、ガティガム、微結晶セルロース、発酵セルロース、微小繊維状セルロース等のセルロース類およびメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ハイドロキシプロピルセルロース、ハイドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体、コンニャク粉、コンニャクグルコマンナン、水溶性ヘミセルロース、大豆多糖類、加工・化工澱粉、未加工・未化工澱粉(生澱粉)などの中から選ばれる1種または2種以上を併用することも可能である。中でも、微結晶セルロース、グァーガム、タマリンドシードガム、大豆多糖類、HMペクチン、アラビアガム、ジェランガム、プルラン、発酵セルロースの中から選ばれる1種または2種以上を併用するのが好ましい。
【0017】
その他、本発明の胡麻含有調味料に配合するその他の原料としては、通常使用される原料、例えば、油脂、調味料(酢、醤油、食塩など)、乳化剤、糖類、高甘味度甘味料(スクラロース、ソーマチン、アセスルファムカリウム、アスパルテーム、ステビアなど)、果汁、酸味料、香辛料、化学調味料等や、香料、着色料、保存料、日持ち向上剤、酸化防止剤などを挙げることができる。
【0018】
更には、油脂として、植物油脂あるいはこれらの分別油脂、硬化油脂、エステル交換油脂、動物油脂等の中から一種又は二種以上を併用することができる。植物油脂の例としては、大豆油、菜種油、綿実油、コーン油、米油、ひまわり油、オリーブ油、サフラワー油、パーム油、パーム核油及びヤシ油を挙げることができる。
【0019】
乳化剤としては、グリセリン脂肪酸エステル(蒸留モノグリセライド、反応モノグリセライド、ジ・トリグリセライド、有機酸モノグリセライド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル等)及び、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ユッカ抽出物、サポニン、ステアロイル乳酸塩(ナトリウムもしくはカルシウム)、ポリソルベート及び大豆レシチン、卵黄レシチン、酵素処理レシチン等を挙げることができる。また、ビタミン、カルシウム、鉄、DHAの栄養剤等を併用することも可能である。
【0020】
更には、胡麻以外の固形物を分散させても良い。分散させる固形物としては、スパイス、ハーブ、コショウ、ガーリック、乾燥こんにゃく加工品、抹茶、緑茶などの粉末茶、リンゴなどの果実やダイコン、ショウガ、タマネギなどの野菜のカット品、おろし、ピューレ、パルプ、さのうなどや、カットゼリーなど特に限定されない。これらから選ばれる1種以上を使用することが出来る。
【0021】
本発明の胡麻含有調味料の製造方法としては、前記のラムザンガムを使用する以外は常法により製造することができる。例えば、ラムザンガム及びその他の粉末原料を水に添加して攪拌溶解した後、食酢、調味料などを添加し、更に攪拌混合した後、ホモミキサーなどの攪拌機を使用して油脂と前記溶液とを混合して、乳化を行い、脱気後、容器充填する方法などを挙げることができる。撹拌は減圧下で行うことも可能である。溶解や殺菌の目的で加熱しても良い。
【実施例】
【0022】
以下、本発明の内容を以下の実験例および実施例で具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。なお、処方中、特に記載のない限り単位は質量部とし、文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、文中「※」印は三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標を示す。
【0023】
実施例1〜5:胡麻だれの調製(1)
下記表1に掲げる処方のうち、80℃に加熱したイオン交換水に増粘剤を加え、2000rpmにて10分撹拌溶解した後、撹拌しながら淡口醤油、酢、食塩、砂糖を加え、練り胡麻を加えて3分撹拌を続ける。ホモミキサーにて6000rpm、5min処理した後、撹拌しながら90℃まで加熱し、達温後容器にホットパック充填して冷却し、胡麻だれを調製した。
【0024】
調製1日後の粘度を測定し、更には、25℃180日間保存した後の、また、ゲル化の有無及び下層分離の状態を目視にて評価した。結果を表1にあわせて示す。
【0025】
【表1】

*比較例1の粘度はゲル化したため測定不能。
【0026】
注1)サンエース※*
注2)セオラス RC-N81、旭化成ケミカルズ(株)製
【0027】
結果より、ラムザンガムを使用した実施例1〜5のいずれの胡麻だれも、低粘度で下層分離・ゲル化が抑制でき、良好であった。低粘度であるため、容器から注ぎやすいという利点も有している。(なお、粘度が60rpm時3000mPa・sとなると高粘度で容器から注ぎ出しにくくなる)
【0028】
実施例6〜9:胡麻だれの調製(2)
次にラムザンガムを使用することで安定化できる練り胡麻の含量を調べた。下記表2に掲げる処方で、実施例1〜5と同様の方法で、胡麻だれを調製し、同様の方法にて評価を行った。結果を表2にあわせて示す。
【0029】
【表2】

【0030】
結果より、ラムザンガムを使用し、練り胡麻の添加量を変えた実施例6〜9のいずれの胡麻だれも、下層分離・ゲル化が抑制でき、良好であった。実施例6〜8は低粘度で容易に容器から注ぎ出せたが、実施例9は若干容器から注ぎ出しにくかった。
【0031】
実施例10〜17:胡麻ドレッシングの調製(3)
次にラムザンガムと他の増粘剤との併用による胡麻含有調味料の安定性におよぼす影響を調べた。下記表3又は4に掲げる処方で、実施例1〜5と同様の方法で、胡麻だれを調製し、同様の方法にて評価を行った。結果を表3又は4にあわせて示す。
【0032】
【表3】

【0033】
注2)セオラス RC-N81、旭化成ケミカルズ(株)製
注3)サンアーティスト※PG*
注4)ビストップ※D−20*
注5)ビストップ※D−2032*
【0034】
【表4】

【0035】
注6)SM−666*
注7)SM−1200*
注8)ビストップ※D−2041*
注9)ビストップ※D−822(D)*
注10)ケルコゲル HM*
【0036】
表3及び4より、ラムザンガムとその他の安定剤と併用しても、下層分離・ゲル化が抑制でき、良好であった。また、実施例10〜18のいずれにおいても低粘度で容易に容器から注ぎ出せた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明により、下層分離・ゲル化が抑制でき、保存安定性に優れ、かつ低粘度で容器から容易に注ぎ出すことができる胡麻含有調味料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラムザンガムを含有することを特徴とする胡麻含有調味料。
【請求項2】
ラムザンガムを0.01〜0.5質量%含む請求項1に記載の胡麻含有調味料。
【請求項3】
ラムザンガムを含有することを特徴とする胡麻含有調味料の保存安定性向上方法。