説明

胸部圧迫をする人の手と患者の胸との間に置かれる装置

本発明は、心肺蘇生法(CPR)あるいはその訓練において、胸部圧迫(心マッサージ)の際に使用する装置に関し、より詳細には、CPRを行う人と患者あるいはマニキンの胸との間に置かれる装置に関する。この装置は、あらかじめ決められた大きさ以上の力で胸部圧迫が行われると、音を発生し、また、胸部圧迫の望ましい速度を支持する音声指示も出力する。種々の機械的あるいは電気的な実施形態が説明される。この装置が押されたときに電気回路の電源を投入する自動スイッチ、および装置の向きに応じて異なる力により作動する装置の形態を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心肺蘇生法(cardiopulmonary resuscitation、以下「CPR」という)に使用する装置に関する。特に、胸部圧迫(心マッサージ)を行う人間の手と患者の胸との間に配置するための装置に関する。この装置は、CPRの訓練のために使用されてもよい。さらに詳細には、この装置は、胸部圧迫があらかじめ決められた値を超える力で行われた場合に音を発生するように設計されている。あるいは、この装置は胸部圧迫に好適な速度を示す音を発生するように設計されている。さらに詳細には、この装置は請求項1、5、あるいは11のプリアンブル部分で定義される。
【背景技術】
【0002】
多くの調査により、CPR技術の獲得および保持が困難であることを示している。これは、カイエおよびマンチーニにより幅広くレビューされている(カイエ(Kaye W)、マンチーニ(Mancini ME)、「米国における成人蘇生法の教育−再考のとき(Teaching adult resuscitation in the United States -time for a rethink)」、蘇生法(Resuscitation)、第37巻(1998)、pp177−187)。
【0003】
マニキンでの試験の間、圧迫および換気が、ゆっくりと不適当な圧迫深さで、かつ、膨張条件(最も一般的な誤りである)で、正確に行われることはほとんどない。同様に、患者に対するCPRの質を調査すると、胸部圧迫の間における触診可能な脈として定義される適切なCPRを行っていたのは半分以下である。胸部拡張は第2の術者が存在すれば第2の術者が注意することもできるが、正確に脈を触診することのできる一般人はほとんどいない(医療従事者でも正確に脈を触診することができない者もいる)。その結果、一般の救助者は脈の確認を行うように教育されていない(「心肺蘇生法および救急心血管系治療のガイドライン2000(Guidelines 2000 for Cardiopulmonary Resuscitation and Emergency Cardiovascular Care. Supplement to Circulation 2000; 102: I 22-59)」参照)。
【0004】
従って、一般人にも簡単に用いることができる、適正な胸部圧迫を確実に行う手段が要求されている。救助者が胸部圧迫を行わない理由のひとつとして、間違った部位を強く押してしまうことにより患者を傷つける懸念があることが挙げられる。正しい部位を押すことを容易にし、かつ、圧迫が十分であると救助者に知らせる簡単な装置は、この懸念を軽減する一助となる。
【0005】
適正な胸部圧迫は、成人の場合、100回/分の速度で4cmを押すことと定義されている(前述のガイドライン2000参照)。一般的な成人の胸をこの距離だけ押すには、約35kPaの力が必要である。子供の場合、胸を押す距離は2.5cmであり、必要な力は約20kPaである。圧迫および換気のタイミングを改善するための音声的な指示が示されており、CPRの間はこれを用いることが推奨されている(ガイドライン2000)。
【0006】
圧力計を内蔵する装置は古くから用いられてきた。このような装置を患者の胸に当てることにより、救助者は必要な圧力を知ることができる。近年、このような特徴に、胸部圧迫のタイミングをガイドする音声指示という特徴を組み合わせた装置が販売されている(ボイルら(Boyle AJ et al.)、「新型の非侵襲性装置(CPR−Ezy)を用いた外部心圧迫のタイミングおよび効果の改善(Improvement in timing and effectiveness of external cardiac compressions with a new non-invasive device: the CPR Ezy)」、蘇生法(Resuscitation)、54巻(2002)、pp63−67)
【0007】
CPR−Ezyは、処置を行う者の手と患者の胸との間に置いて使用する長方形の装置である。それは、圧力を視覚的に表示するLEDディスプレイを有する。この装置はまた、音声および光を発する電子メトロノームを有する。
【0008】
CPR−Ezyあるいは類似の装置は高価であり(150〜250米ドル)、一般的な救助者が使用するには大きくて扱いにくい。一方、酸素吸入器sは一般的な救助者に広く使用されている。これらは大体2〜15米ドルであり、財布あるいはポケットに収まる大きさである。さらに、CPR−Ezyは電池等の電源が必要である。電池は、使用していなくても放電してしまう。一般人は、その装置を使用する状況に遭遇する前から、何年にも渡ってその装置を財産として有しているかもしれない。その期間により電池は放電してしまい、装置は使用不能になるかもしれない。電池がまだ生きている場合、救助者は、圧迫が十分であるかを確認するために、LEDディスプレイを注視する必要がある。これにより、救助者は胸部圧迫の間の患者の反応を見ることができなくなる。LEDディスプレイは、直射日光下のような明るい場所では見えにくくなる。さらに、救助者は通常、救急隊に電話連絡をする必要が生じる。これにより救助者は、職員から助言を受けることができる。もし、救助者が十分な力で胸部圧迫ができているか否かを電話で確認することができたなら、職員は、よりよい助言を与えることができる。CPR−Ezyでは、圧迫の力を示す音声がないため、職員に貴重な情報を提供することができない。
【0009】
別の先行技術に係る装置が、米国特許第4554910号明細書に示されている。この装置は、患者の胸に当てるための下面と、救助者が押す上面とを有している。これらの面の間には、バネと、矩形のばね鋼でできた筐体が存在する。ばね鋼でできた筐体は、内部に凹部を有する側壁を有する。ばね鋼でできた筐体が圧迫されると、凹部は外側に曲がり、クリック音を生じる。
【0010】
この装置は、必要な圧力が得られたことを通知する機能を有し、電池も不要であるが、サイズが大きく持ち運びに不便でポケットには入らない。音を発生する部分は不恰好な箱型の部材である。それは多くの金属部品を有しているため、製造にはコストがかかり、かつ、重い。これは装置の可用性を低下させる。可用性は非常に重要である。ユーザは、(例えばキーホルダーにつけて)常時その装置を携帯しなければならない。サイズおよび重さの僅かな差が、ユーザが常時その装置を携帯するか引き出しに入れたままにするかの違いを生む。
【0011】
米国特許4863385号明細書は、完全に電子化された装置を開示している。それは見たところ非常に先進的であり、合成音声、指示ランプ、ブザーを有する。それは色々な人のサイズに設定することができ、脈を検出することができる。しかし、それは圧迫圧力の検出機能という重大な特徴を有していない。この先行技術に係る装置は、脈の検出以外は、純粋な「指示マニュアル」である。その目的は、ユーザが装置の電源を投入すると、その装置は、(合成音声により)どういう順番でいつ何をすべきかという指示をユーザに与える。指示ランプは、ユーザに次に何をすべきであるか知らせるために点灯する。この装置は、ユーザが正しい胸部圧迫を行っているか、少なくとも、胸部圧迫が十分な圧力で行われているかを検出する手段を有していない。この装置は、救助者の手と患者の胸の間に置かれることが想定されていない。
【0012】
この装置は、4つの異なる位置に切り替え可能な手動スイッチを有している。従って、ユーザは自分自身で装置の電源を投入するということを覚えておかなければならない。
【0013】
米国特許5496257号明細書もまた、完全に電子化された装置を示している。胸部圧迫はディスプレイに表示される。胸部圧迫の力が大きいか小さいかを示すため、電子音信号が提供される。これらの信号は電子信号であり、胸部圧迫の力は電子的に測定される。したがって、この装置を動作させるには電池が必要である。電池が無ければこの装置はまったく役に立たない。
【0014】
この装置は、2つの位置に切り替える外部スイッチを有している。各位置は、それぞれ異なる電池に接続されており、最初の電池が切れた場合には、別の外部電池が使用可能となる。これは、必要となったときに装置が機能することの重要性を示している。しかし、結果的にこれは、この装置の取り扱いを不便なものとし、価格を高価ななものとしてしまう。
【0015】
米国特許6013041号明細書は、単に胸部圧迫のシミュレーション用のものである。それは、ある圧迫ストロークを提供可能な長い望遠鏡のような形状をしている。この圧迫ストロークは、訓練において現実的な動きを提供すると考えられる。これは、患者に使用するには不適当である。もしこの装置を患者に使用した場合、この装置は駆動の実質的な部分と、救助者の力を吸収してしまう。したがって、救助者は、患者に伝達される駆動の量を制御することができない。この効果は、救助者の手と患者の胸の間にいくつかの枕を置いた場合と似ている。この装置は、その長さにより、制御が困難であり、圧迫の際に横に傾きやすい。さらに、この装置はポケットに入れには大きすぎる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、訓練および患者への使用において、胸部圧迫(心マッサージ)のタイミングおよび効果を改善するものを、一般人が購入し、(好ましくは酸素吸入器とともに)常時持ち運ぶことができる価格およびサイズで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第1の態様において、これは請求項1に記載される新規な特徴により実現される。本発明の第2の態様において、これは請求項5に記載される新規な特徴により実現される。請求項11の新規な特徴は、本発明の第3の態様を定義する。第3の態様において、あらかじめ決められた2つの力を提供する装置が実現される。第3の態様は、第1および第2の態様とともに、あるいは、これらの態様とは別に、実現されてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、CPRフィードバック装置の主要な機能構成要素を含むブロック図であり、機械的音発生部1(例えば、「クリック音発生金属」)、スイッチ2、電源3(例えば、電池(リチウム電池あるいはアルカリ電池のような長寿命電池が望ましい))、マイクロコントローラ4、電子ブザー5(例えば、圧電素子)。必要に応じて、プログラミングコネクタ6を設けてもよい。
【0019】
電池3は、少なくとも部分的にスイッチ2を介して、マイクロコントローラ4に接続されている。マイクロコントローラ4は、電子ブザー5およびプログラミングコネクタ6に接続されている。
【0020】
機械的音発生部1は、スイッチ2と一体化されていてもよい。これにより、CPRフィードバック装置が最初に圧迫されたときに、マイクロコントローラ4に電力を供給するように機械的音発生部がスイッチを切り替える。
【0021】
図2は、CPRフィードバック装置の側面図を示す。この装置は、上部7、下部8、および中間部9から構成される。上部7および下部8は、相対的に硬いプラスチックで形成されることが望ましい。中間部9は、ゴムあるいは曲げやすいプラスチックで形成されることが望ましい。上部7および下部8は、平坦面14および15を有する。装置の側部は符号10および11で示されるように曲線部を有する。上部および下部は以下で説明するように互いに接近するように動くことが可能である。中間部9はガスケットとして形成され、上部7および下部8の溝(図示略)に差し込まれるか、あるいは上部7および下部8にのり付けまたはシールされてもよい。
【0022】
図3は、図2の装置の平面図である。上部7および下部8は、曲線部12および13を有する。曲線の形状は、救助者の手にぴったりとフィットするように形成される。これはまた、患者の皮膚を傷つけないためでもある。長時間継続して使用しても救助者の手を傷つけないため、また、すべり防止のため、上部7および下部8は、ゴムのような感覚のプラスチック材料で形成されることが望ましい。もちろんこの形状は、円盤状、ハート型状など、他の形態としてもよい。
【0023】
図4は、図2および図3の装置の横方向部分断面図である。中間部9は、装置内部を明らかにするために切断されている。プリント回路基板(printed circuit board、以下「PCB」という)16は、下部8の内部表面17に取り付けられている。PCB16には、装置の内部要素が取り付けられている。図4の左から右に、機械的音発生部1、スイッチ2、電池3、マイクロコントローラ4、および電子ブザー5が存在する。
【0024】
機械的音発生部1は、ばね鋼あるいは類似の特性を有する材料で形成されたプレート18を有する。プレート18は、くぼみ19を有する。プレート18は、一端において足台20に取り付けられ、反対の一端は開放されている。上部7の内部表面21上の、プレート18の開放端の直上には、ペグ22が設けられている。プレート18の開放端の直下には、接点23が設けられている。接点23は、PCB16に接続されている。
【0025】
以上あるいは以下の説明において、「上部」「下部」「上」「下」等の語は、図面に従って用いられる(図10は除く。図10は上下逆に描かれている)。もちろん、この装置は、回転してもよく、この向きでも動作する。したがって、種々の部材の向きを示す語は、発明を限定する意味に解するべきでない。
【0026】
本発明に係る装置の全般的な機能について説明する。
【0027】
この装置が最初に使用されるとき、救助者は、患者の胸の上の正しい位置にこの装置をただ置くだけでよい。上部7および下部8の一方あるいは双方の表面14および15には、指示が印刷されている。この指示としては、この装置を置くべき位置と、使用方法が、好ましくは文書、図、記号を用いて記されている。
【0028】
装置が正しい位置に置かれると、救助者は、手で上表面14を押し始める。この圧迫動作により、中間部9(圧縮される)の可撓性に逆らって上部7は下部8に向かって動かされる。ペグ22がプレート18の開放端に触れると、プレート18は接点23に向けて曲げられる。プレート18が接点23に接するのとほぼ同時に、くぼみ19は反対側に曲がりクリック音を発する。接点23とプレート18が導通することにより、電源回路とマイクロコントローラ4が接続される。これは、電源回路を接続するリレーあるいはトランジスタのような電子的な回路によって行われてもよい。必要に応じて、ある時間間隔が経過したときにマイクロコントローラ4への電力供給を自動的に中断するタイマ回路を設けてもよい。
【0029】
電源を投入する手段は、プレート18の最初のクリック音の音響エネルギーを取得し、取得したエネルギーを電源の投入のために入力するマイクロホンあるいは他の圧電素子の形態であってもよい。
【0030】
マイクロコントローラ4は、あらかじめ決められた速度で電子ブザー5を駆動する電子メトロノームを有する。この速度は、固定されていてもよいし、マイクロコントローラ4のプログラミングにより可変であってもよい。
【0031】
このように、この装置は、いったん駆動されると、救助者が患者の胸を押すたびにビープ音を出力する。マイクロコントローラは、必要に応じて、肺拡張のため(例えば15回に1回)ビープ音の発生を中断してもよい。この中断は、2つの肺を拡張するのに必要な時間に適応するように設定された時間であってもよい。
【0032】
別の態様において、この装置が最初に圧迫されたときに、この装置自身の電源を投入し、最初のビープ音を出力してもよい。その後、この装置は、決められた速度でビープ音を14回まで出力し続ける。14回目のビープ音を発生した後、この装置は自動的に自分自身の電源をオフにする。救助者が15回目に圧迫を行っても、ビープ音は出力されない。これは、圧迫を停止する合図として、また、肺拡張を行う合図として用いられる。肺拡張、および可能であればその他の作業が完了すると、圧迫は再開される。この装置(この間はオフである)は、上部と下部とが駆動されると再び電源が投入され、内部スイッチが作動する。最初の圧迫において、この装置は14回のビープ音のうち第1回目のビープ音を発生する。ビープ音は、この装置が再び自動的にオフされるまで出力される。
【0033】
機械的音発生部1は、あらかじめ決められた値以上の力で救助者が装置を圧迫するたび、すなわち、患者の胸を圧迫するたびにクリック音を発生する。あらかじめ決められた値は、有効なCPRを行うために十分な圧迫深さを得るために必要な力から見積もられる。
【0034】
圧迫の力があらかじめ決められた値よりも小さい場合、機械的音発生部1からクリック音は出力されない。こうして救助者は、圧迫の力が足りないと認識することができ、力を強めることができる。機械的音(クリック音)は、メトロノームにより開始されたビープ音とほぼ同じ速度で聞こえることが望ましい(これにより救助者が正確に圧迫を行ってことが示される)。
【0035】
救助者が、十分な力で圧迫していることを示す合図としてのメトロノームのビープ音に反応するのを避けるためメトロノームのビープ音に関して、最初のビープ音は、十分な圧迫強度を示すクリック音が発生した後にのみ出力されてもよい。これは例えば、クリック音を発生するのに十分な力が発生した場合である。これは例えば、クリック音を取得するマイクロホンにより実現されてもよい。救助者が最初のクリック音を聞くと、救助者は、これは十分な力が加えられた合図だと認識することができる。そして救助者は、胸部圧迫を行うたびにこの音を聞くことができる。
【0036】
訓練目的であれば、ビープ音出力部を停止してもよい。これは、十分な胸部圧迫の力のみを訓練する目的の場合に適用できる。アクシデントで外部スイッチが操作されてしまうのを避けるため、ビープ音出力部のオン/オフは、例えば、クリック音が発生するまで押し、この圧力をある時間(例えば、5秒間)維持することにより行ってもよい。この機能を実現するため、適当な電子デバイスが、電子回路をオンするスイッチに接続されてもよい。
【0037】
機械的音を発生させるのに必要な力は、主として中間部9の弾性ならびに設計、およびプレート18の設計および剛性に依存している。プレート18および中間部9の種類によりこの必要な力を変化させることが可能である。このように、例えば、成人用および子供用といったようにバージョンの異なる装置を作成することが可能である。
【0038】
長年使用せずにおいたせいで、この装置を始めて使用する際に既に電池が切れている、あるいは既に消耗している場合、マイクロコントローラ4はもちろん機能しない。しかし、この装置の最も重要な特徴、すなわち、圧迫圧力が十分であるかを示す特徴はこの場合でも機能する。このように、この装置はたとえ電池が切れたとしても使用することが可能である。
【0039】
図5〜8は、本発明に係る装置の具体的な実施形態を示す図である。実務上の理由により電子的な構成要素の図示は省略したが、当業者にとってこれらの構成要素を装置に取り付ける方法は自明である。
【0040】
図5は、装置内部から見た下部8を示す平面図である。下部8は、両端に一つずつ孔30および31を有している。これらの孔は、上部のネジのスリーブを収容するためのものである(詳細は後述する)。下部8の一端の近くには、クリック音発生プレート18を取り付けるための2つのネジ穴33および34を有するベースソケット32が存在する。ベースソケット32はまた、凹んだくぼみ35を有している。くぼみ19を有するクリック音発生プレート18は、くぼみ38と向かい合うように取り付けられる。くぼみ35は、クリック音発生プレート18がベースソケット32に取り付けられたときに、くぼみ19に圧力がかかるのを防ぐものである。さらに、くぼみ19により、クリック音生成プレートの曲がり軸がくぼみ19を通過するようになる。これにより、クリック音生成プレートが曲げられたときにクリック音が発生しやすくなる。
【0041】
ゴム部材のための溝36は、下部8の各水平辺側に形成されている。孔30および31のある領域には、開放部37および38が存在する。ここにはゴム部材は無い。これらの領域に設けられた開口部を介して、上部および下部が接合されると、プレート18からのクリック音は構造的なものに阻まれることなく放出される。溝36の端部において、ストッパ39はゴム部材が溝の外に滑るのを防ぐ役割と、上部と下部がお互い接近するように動いたときに接合部として機能する。
【0042】
下部8の中央部には、窪んでいる領域40が形成されている。ここには電子部品が収容される。
【0043】
図6は、装置内部から見た上部7を示す平面図である。上部7は、両端にソケット41および42を有する。ソケット41および42は、下部8の孔30および31に挿入されるように構成されている。ソケット41および42には、ネジ止めのための穴43、44が設けられている(図8参照)。上部7の中央部分には、調整ネジのための孔45が設けられている。上部7は、部材を強化するため内面に形成されたリブ7を有している。
【0044】
図7は、本発明に係る装置の分解組立図を示す。図には、上部7および下部8が示されている。上部7および下部8の間には、ゴム部材9、プレート18、プレート18と1組のネジ47をベースソケットに取り付けるためのクランプ46が存在する。1組の組み立てネジ48は、上部と下部とを互いに接合するために用いられる。最後に、調整ネジ49が示されている。
【0045】
図8を参照して、図5〜7に示される装置の組み立てについて説明する。図8は、この装置の横方向断面図を示す。プレート18は、クランプ46およびネジ47を用いて、ベースソケット32にネジ止めされている。プレート18は、平衡状態でくぼみ35の上に延びている。上部7のソケット41および42は、下部の孔30および31に挿入される。ネジ48は、孔30および31に挿入され、ネジ頭がソケット41および42で止まるまで穴43および44にネジ止めされる。ネジ48のネジ頭の半径は、孔30および31の最小半径よりも大きい。図8に示されるように、ネジ48のネジ頭は、上部および下部が互いに接近するように押されたとき、孔30および31の最小半径の位置から移動する。
【0046】
調整ネジ49は、孔45にネジ止めされる。調整ネジを奥までねじ込むと、プレート18からクリック音を発生するのに必要な力は弱くなる。勝手に変更されるのを防ぐため、調整が完了した後で孔45を適当なシール材でシールすることが望ましい。
【0047】
例えば、上部が上を向いているか下を向いているか等、装置の向きによって異なる機能を持たせるようにしてもよい。例えば、一方の面は成人用で、他方の面は子供用とすることができる。この可能性の実施形態が、図9および図10に示されている。図9および図10は、この発明に係る装置の一部の縦方向断面図を示す。この実施形態は、足台20を用いて下部8に取り付けられた機械的音発生部1およびプレート18を有する。プレート18のくぼみ19も示されている。上部7には、ペグ22が取り付けられている。本実施形態と前述の実施形態との主要な相違点は、距離部材50である。距離部材50は、ピボット51を介して回転可能なようにペグ22に取り付けられている。図9に示されるように、ペグ22を延長するような配置が、距離部材50の第1の位置である。図10に示されるように、ペグ22の側部に回転した配置が、距離部材50の第2の位置である。距離部材50およびペグ22は、距離部材50がペグ22の一方の側面にのみ回転するように設計、構成されている。距離部材50には重り52が取り付けられ、あるいは、重り52が距離部材50と一体となって形成されている。この重りは、装置が図9に示される向き、すなわち、上部が上を向いているときに、距離部材を第1の位置に回転させるように機能する。この装置が逆向き、すなわち、図10に示されるように上部7が下になるように回転されると、この重りは重力により距離部材50を第2の位置に回転させる。距離部材50が第1の位置にあるときは、ペグ22の有効長は、距離部材50が第2の位置にあるときよりも長くなる。これは、上部7を図9に示される配置としたときは、図10に示される配置よりも短い距離となることを意味する。したがって、図9に示される配置では、図10に示される配置よりも弱い力が与えられる。したがって図9に示される配置は子供用の配置として機能し、図10に示される配置は成人用の配置として機能する。
【0048】
この装置を完全に電子化した場合、この機能はマイクロコントローラに接続される構成要素(重力軸を検知する構成要素)により実現されてもよい。このような構成要素としては種々のものが適用可能である。例えば、方向を検知する加速度計、あるいは水銀スイッチのような水平検知スイッチを適用することができる。これは、この装置が、向きにより異なった動作をすることを意味する。
【0049】
上部および下部の外部表面には、ユーザに対し、どの面をどの患者に対し使用すべきかを明確に示す指示が記載されている。
【0050】
この装置はまた、胸の上の位置を維持する手段を有している。これは例えば、粘着性のある表面や、患者の胸と装置との間に僅かな負圧を生じさせる表面形状により実現される。
【0051】
機械的音を発生させる方法は種々のものが可能である。機械的音を発生させる他の方法としては、以下のものがある。
・上部あるいは下部のうち、どちらか一方に2つの支持部材を設けその間に弦をピンと張り、他方にピック(プレクトラム)を取り付ける。これにより、上部と下部とが互いに押されると、ピックが弦を弾く。この態様の変形として、2本(あるいはそれ以上)の弦を異なる高さに、また異なる音階の音を出すように設置してもよい。例えば、高い音は子供用の圧迫圧力を示し、もう一方の音は成人用の圧迫深さを示すという構成としてもよい。

・上部と下部との間の空洞をシールする。これにより、上部と下部とが近づくように動くと、空気が圧縮される。空洞内の圧力があらかじめ決められた値に達すると、バルブが開き、溝などの音発生手段を介して空気が排出される。装置に加えられる力が除かれると、空洞には再び(できれば逆止弁を介して)空気が入る。
・(バイオリンのように)摩擦と共鳴の原理を使用する。あらかじめ決められた大きさの力が加えられたとき、2つの物体が互いに摩擦するようにする。この2つの物体は、摩擦および共鳴により音を発生する。
【0052】
しかし、機械的音を発生させる方法は、ある信頼性を有しており、装置を保存/使用する時間の経過により音を発生するのに必要な力が変化するものでない限り、本質的に重要なことではない。
【0053】
マイクロコントローラの電源をオンするスイッチは、機械的音発生部と一体化されている必要はなく、分離していてもよい。スイッチは装置内部に格納されており、上部および下部を押すことによりスイッチが作動する構成とするのが好ましい。
【0054】
圧迫圧力(厳密に言えば「距離」)が十分であることを示すには機械的音発生部が望ましいが、電子的な音を生成する手段を用いてもよい。これは、圧迫速度を指示するビープ音生成部と同一の回路としてもよいし、別個の回路としてもよい。電子的音生成手段は、電源が必要である。電池の代わりに、圧迫の間の上部と下部との動きにより電力を発生する発電手段を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るCPRフィードバック装置のブロック図である。
【図2】本発明に係る装置の側面図である。
【図3】図2の装置の平面図である。
【図4】図2の装置の縦方向の部分断面図である。
【図5】同装置の下部の詳細な例を示す平面図である。
【図6】同装置の上部の詳細な例を示す平面図である。
【図7】実施形態に係る装置の分解組立図である。
【図8】実施形態に係る横方向断面図である。
【図9】子供および成人の両方に使用可能な別の実施形態に係る横方向の部分断面図である。
【図10】子供および成人の両方に使用可能な別の実施形態に係る横方向の部分断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胸部圧迫を行う人の手と患者あるいはマニキンの胸との間に置かれる装置であって、
圧迫が行われると互いに近づくように動くことが可能な第1の部分および第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、圧迫が開放されたときに前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに遠ざける反発手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、あらかじめ決められた大きさを超える力により前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに近づくときに音を生成する機械的音生成手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に設置された電源と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、前記電源に接続され、望ましい圧迫速度を示す音を繰り返し生成する電子的音生成手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、前記第1の部分および前記第2の部分の動きによって作動し、前記電源と前記電子的音生成手段とを接続するスイッチと
を有する装置。
【請求項2】
前記スイッチが、前記機械的音生成手段と一体化されていることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記スイッチが、前記機械的音生成手段により生成された音の音響エネルギーを取得し、取得したエネルギーを用いて前記電源と前記電子的音生成手段とを接続するマイクロホンあるいは圧電手段を有することを特徴とする請求項1または2のいずれかの項に記載の装置。
【請求項4】
前記繰り返しの音の最初の音が、前記機械的音が最初に発生された後に発生されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかの項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1の部分と前記第2の部分とが十分な力で、特定の時間間隔をおいて押されたときに、前記繰り返しの音が発生および停止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかの項に記載の装置。
【請求項6】
胸部圧迫を行う人の手と患者あるいはマニキンの胸との間に置かれる装置であって、
圧迫が行われると互いに近づくように動くことが可能な第1の部分および第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、圧迫が開放されたときに前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに遠ざける反発手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、あらかじめ決められた大きさを超える力により前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに近づくときに音を生成する機械的音生成手段と
を有し、
前記機械的音生成手段が、当該機械音生成手段の一端に取り付けられたプレートであって、このプレートの反対側の一端は開放されており、あらかじめ決められた値以上の力が前記開放端に加えられたときに音を発生するように形成されている
ことを特徴とする装置。
【請求項7】
前記反発手段が、前記第1の部分と前記第2の部分とに沿った形状の柔軟なガスケットであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかの項に記載の装置。
【請求項8】
胸部圧迫を行う人の手と患者あるいはマニキンの胸との間に置かれる装置であって、
圧迫が行われると互いに近づくように動くことが可能な第1の部分および第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、圧迫が開放されたときに前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに遠ざける反発手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間に設置された電源と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、前記電源に接続された電子的音生成手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、前記第1の部分および前記第2の部分の動きによって作動し、前記電源と前記電子的音生成手段とを接続するスイッチと
を有する装置。
【請求項9】
前記電子音生成手段が、望ましい圧迫速度を示す音を繰り返し生成することを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記電子音生成手段が、あらかじめ決められた値を超える力で前記第1の部分および前記第2の部分が動かされたときに音を発生することを特徴とする請求項8または9のいずれかの項に記載の装置。
【請求項11】
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、あらかじめ決められた大きさを超える力により前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに近づくときに音を生成する機械的音生成手段をさらに有する請求項8〜10のいずれかの項に記載の装置。
【請求項12】
前記電源が、前記第1の部分および前記第2の部分の動きにより電力を生成する発電機であることを特徴とする、請求項1〜5、8〜11のいずれかの項に記載の装置。
【請求項13】
滑りおよび傷つけることを防止するため、前記第1の部分および前記第2の部分の表面の少なくとも1部が、高摩擦係数(かつ柔軟性があることが好ましい)の材料で覆われていることを特徴とする請求項1〜12のいずれかの項に記載の装置。
【請求項14】
胸部圧迫を行う人の手と患者あるいはマニキンの胸との間に置かれる装置であって、
圧迫が行われると互いに近づくように動くことが可能な第1の部分および第2の部分と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、圧迫が開放されたときに前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに遠ざける反発手段と、
前記第1の部分と前記第2の部分との間において、あらかじめ決められた大きさを超える力により前記第1の部分と前記第2の部分とが互いに近づくときに音を生成する音生成手段と、
前記第1の部分および前記第2の部分の相対的な向きに応じて、前記第1の部分が前記第2の部分よりも低い位置に位置したときに当該装置を第1の値に設定し、前記第2の部分が前記第1の部分よりも低い位置に位置したときに当該装置を第2の値に設定する方向検知手段と
を有する装置。
【請求項15】
前記方向検知手段が、重力により、第1の位置と第2の位置の間を回転可能なように構成された距離部材であり、
前記第1の位置においては、前記第1の部分と前記第2の部分との可動距離が第1の長さであり、
前記第2の位置においては、前記第1の部分と前記第2の部分との可動距離が第2の長さであり、
前記第2の長さは前記第1の長さよりも短い
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記距離部材が、ペグの一端に取り付けられ、かつ、前記距離部材に取り付けられあるいは一体化された重りを有し、
前記重りが、重力の影響で前記距離部材を前記第1の位置と前記第2の位置との間で回転させる
ことを特徴とする請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記方向検知手段が、方向検知加速度計、あるいは水銀スイッチのような水平検知スイッチであることを特徴とする請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2006−511267(P2006−511267A)
【公表日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562133(P2004−562133)
【出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【国際出願番号】PCT/NO2003/000435
【国際公開番号】WO2004/056303
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(505217882)ラールダル メディカル エーエス (1)
【氏名又は名称原語表記】Laerdal Medical AS
【住所又は居所原語表記】P.O.Box 377, NO−4002 Stavanger, Norway
【Fターム(参考)】