説明

能動的取り調べを使用する核分裂性物質の検出のための装置及び方法

【課題】核物質の存在に対して、小包、コンテナ、乗物又は類似の試験物品を取り調べるためのシステムを提供することである。
【解決手段】本システムは、光核分裂エネルギーのソースを典型的に備えており、この光核分裂エネルギーのソースは、上記試験物品を照射し、該試験物品内に存在する核分裂性の又は核分裂可能な物質の核分裂をトリガし、複数の核分裂生成物を発生させるように構成されており、これら複数の核分裂生成物のうちの少なくとも1つは、複数の核分裂中性子を生み出すものである。中性子からガンマ線への変換体物質は、上記複数の核分裂中性子の最大で全てを捕獲し、捕獲後に内部ガンマ線を放射するように構成することができる。ガンマ線検出器は、該内部ガンマ線の少なくとも一部を検出するように典型的に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
米国政府はこの発明の権利を有しており、この発明は、米国国防総省の防衛威嚇緩和機関とヌクセーフ,インコーポレーテッドとの間の契約HDTRA1−05−D−0004に準拠している。
【0002】
この開示は、核物質の検出の分野に関する。より詳細には、この開示は、小包、コンテナ、又は乗物の中の核分裂性物質の上記検出に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
様々な消費者、産業、軍事、及び政府の活動は、小包、コンテナ、又は乗物において不適切に格納又は輸送されることのある核物質というリスクを伴っている。核テロリズムの可能性は、これらリスクに関する関心を高めている。そのような核物質を検出するために様々なシステムが開発されてきたが、核物質及びその包装環境の性質に関する不確定性は、その検出にしばしば悪影響を与えている。従って必要とされるのは、小包、コンテナ、又は乗物の中の核物質を検出するための改良されたシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、ガンマ線検出器と、このガンマ線検出器の少なくとも一部を囲む、中性子からガンマ線への変換体物質とを備えた放射線検出システムを提供する。典型的に、上記中性子からガンマ線への変換体物質の実質的な一部を囲み、且つ上記ガンマ線検出器の少なくとも一部を囲む、鉛遮蔽が存在している。
【0005】
別の実施形態は、核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムを提供する。本システムは、上記試験物品を照射し、上記核分裂可能物質の核分裂をトリガするように構成され、遅発核分裂中性子が発生する、光核分裂エネルギー・ビームを備えている。また、この実施形態の本システムは、(a)複数の上記遅発核分裂中性子の最大で全てを捕獲し、捕獲後に遅発内部ガンマ線を放射するように構成された中性子からガンマ線への変換体物質と、(b)この遅発内部ガンマ線の少なくとも一部を検出するように構成されたガンマ線検出器とを備えている。
【0006】
また提供するのは、試験物品中の核分裂可能物質の存在を検出する方法である。一実施形態において、本方法は、上記試験物品内に存在する上記核分裂可能物質の少なくとも一部の核分裂を誘導するのに十分なエネルギーで該試験物品を照射するステップであって、外部の遅発ガンマ線と遅発核分裂中性子とが生み出される、ステップを含んでいる。更に本方法は、典型的に、これら遅発核分裂中性子の少なくとも一部を中性子からガンマ線への変換体物質において捕獲するステップであって、遅発内部ガンマ線が発生する、ステップとを含んでいる。この実施形態の更なるステップは、時間ウィンドウにわたり、第1のエネルギー・レンジにおいて第1の遅発ガンマ線の計数を集めるステップと、この時間ウィンドウにわたり、第2のエネルギー・レンジにおいて第2の遅発ガンマ線の計数を集めるステップとを含んでいる。この実施形態の本方法は、典型的に、この第1のガンマ線の計数とこの第2のガンマ線の計数との組み合わせが、上記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すシグネチャを表すかどうかを評価するステップで終わる。
【0007】
幾つかの実施形態において、上記ガンマ線検出器は、中性子補核物質によって放射される外部ガンマ線の少なくとも一部を検出するように更に構成されており、この中性子補核物質は、核分裂生成物に近接して配置され、複数の上記核分裂中性子の最大で全てを捕獲し、捕獲後に上記外部ガンマ線を放射するものである。幾つかの実施形態において、上記中性子からガンマ線への変換体は、ホウ素入りポリエチレン等のホウ素入りポリマ、又は独特のガンマ線を与える他の何らかの物質を含んでいる。幾つかの実施形態は放射線分析システムを提供し、この放射線分析システムは、複数の遅発核分裂中性子の捕獲及び遅発ガンマ線に実質的に寄与する上記内部及び上記外部の一方又は双方のガンマ線の計数が、ある閾値を越えているかどうかを評価するように構成されており、この閾値は、上記試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を少なくとも一部で示すものである。例えば、2MeV等の何らかのエネルギー・レベルで分かれた、高エネルギーのガンマ線の数の低エネルギーのガンマ線の数とのレシオに対して、閾値を設定することができる。
【0008】
図とともに詳細な説明を参照することによって、様々な利点が明らかとなる。詳細をよりはっきりと示すように、要素はスケールされていない。幾つかの図を通して、同様の参照番号は同様の要素を指摘している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1a】加速器ビームによって生み出される相互作用を描写した図であり、この加速器ビームは、核分裂可能物質と相互作用している。
【図1b】加速器ビームによって生み出される相互作用を描写した図であり、この加速器ビームは、該加速器ビームのエネルギーより下の核分裂閾値エネルギーを有する不活性物質と相互作用している。
【図1c】加速器ビームによって生み出される相互作用を描写した図であり、この加速器ビームは、該加速器ビームのエネルギーより上の核分裂閾値エネルギーを有する不活性物質と相互作用している。
【図2】核物質のための検出システムのやや概略的な図である。
【図3】放射線検出システムの横断面のやや概略的な図である。
【図4】放射線検出システムの代替構成の横断面のやや概略的な図である。
【図5】図2で描写したタイプの放射線検出システムのやや概略的な斜視図である。
【図6】光核分裂イベントに対するタイミング・プロットである。
【図7】コンピュータ・モデルによって予測した検出されるガンマ線のプロットであり、このコンピュータ・モデルは、図1に描写したタイプの検出システムに適用されるものである。
【図8】様々な包装マトリックス内の様々なテスト物質に対しての、計算された光核分裂遅発ガンマ・シグネチャ・レシオの棒グラフを示している。
【図9】様々な包装マトリックス内の様々なテスト物質に対しての、光核分裂中性子捕獲ガンマ線計数の棒グラフを示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
好適な実施形態の以下の詳細な説明において添付の図面に対する参照がなされており、これら添付の図面は本願の一部を形成するものであり、それらの中では、実例として、核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムの特定の実施形態の実施、及び、試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を検出する方法の特定の実施形態の実施が示されている。他の実施形態を利用できること、及び、他の実施形態においては構造上の変更をなすことができプロセスを変形することができることが理解されよう。
【0011】
核分裂性物質の検出は、核物質の存在に対して小包、コンテナ、又は乗物を調べることにおいて、特に関心事である。本明細書で使用するように、用語「核分裂性物質」は、熱(遅い)中性子によって核分裂可能なな任意の物質として定義している。3つの主要な核分裂性物質は、ウラン−233(233U)、ウラン−235(235U)、及びプルトニウム−239(239Pu)である。U−238(238U)は、より大きなエネルギー粒子により核分裂可能である。用語「核分裂可能」は、約20MeV以下のエネルギーによって核分裂を誘導することができる物質を参照している。従って、ウラン−233(233U)、ウラン−235(235U)、プルトニウム−239(239Pu)、及びU−238(238U)は「核分裂可能」である。約20MeV以下のエネルギーで核分裂可能でない物質は、本明細書では「不活性」として参照している。鉛及び鉄を含む多くの物質は核分裂するが、それはより高いエネルギーにおいてのみであり、従って、本明細書において意図された目的に対しては、不活性と考えられることになる。
【0012】
小包、コンテナ、又は乗物の中の核分裂性の又は核分裂可能な物質の検出は、この物質の核分裂を誘導するように、これらの小包、コンテナ、又は乗物を十分なエネルギーの放射線に曝露させることを伴っている。この核分裂のプロセスは、誘導放射線の様々な形態を生じさせ、これら誘導放射線の様々な形態は、上記核分裂性物質の存在を検出するために測定することができる。これら誘導放射線は、存在する特定の核物質に依存して実際はかなり変動し、そのため、しばしば、核分裂性物質の検出を大変困難にしている。核分裂性物質の検出における更なる困難は、上記誘導放射線の部分を吸収するか又はその性質を様変わりさせるかの何れかをする物質に、上記核分裂性物質が包装されうることである。例えば、この核分裂性物質が水素含有中性子捕獲物質(例えば、水、木、又は油)を含む小包の内部に配置された場合、上記核分裂の中性子の少なくとも一部は、捕獲され、約2.2MeVのエネルギーでガンマ線を放射することになる。一方、上記核分裂性物質が中性子透過環境に配置された場合、上記核分裂中性子の実質的に全てが該環境から脱出することになる。最もありそうな状況は、上記核分裂中性子の幾らかが上記核分裂性物質の周りに配置された中性子補核物質によって捕獲され、上記核分裂中性子の幾らかが脱出することになるというものである。
【0013】
本明細書で使用する用語としての「光核分裂」は、能動的取り調べ技法を参照しており、この能動的取り調べ技法においては、高エネルギー(5−20MeV)ガンマ線を使用して「核分裂可能な」(即ち、233U、235U、238U、239Pu)物質における核分裂を誘導している。物質は様々な核分裂生成物を生み出すことによってこの取り調べ用の放射線に対して応答し、これら様々な核分裂生成物は、追加のガンマ線及び中性子を放射するものである。加えて、高エネルギー光子放射線で衝撃を与えられたときには多くの要素が核分裂するのであるが、取り調べの後には「核分裂可能な」物質のみが「遅発」の中性子及び粒子を発生させる。遅発の核分裂時定数及び放射される粒子は、233U、235U、238U、及び239Puに対してよく知られている。これら放射線に対する様々な検出器、及び核分裂可能物質の存在を判定するためのこれら遅発放射を活用するアルゴリズムを、本明細書に記載している。
【0014】
好適実施形態は遅発ガンマ線のガンマ線エネルギー分析及び遅発中性子の検出に基づく光核分裂検出器を組み込んでおり、それらを「二重モード」の検出器にし、かなりの有利な能力を与えている。典型的には、遅発ガンマ検出に対してゲルマニウム酸ビスマス(BGO)シンチレータを使用する。中性子は、それらが10B、又は156Gd、157Gd、若しくは160Gd等の他の中性子捕獲物質によって捕獲されるときに検出される。10Bによる中性子捕獲は、アルファ粒子及び特性478keVガンマ線を発生させる。156Gdによる中性子捕獲は特性6360keVガンマ線を生み出し、157Gdによる中性子捕獲は特性6750keVガンマ線を生み出し、160Gdによる中性子捕獲は特性5320keVガンマ線を生み出すことになる。ガンマ線エネルギー分析は、ホウ素若しくはガドリニウム又は他の中性子捕獲物質における、核分裂及び中性子捕獲からの遅発ガンマ線のエネルギーを求めるために使用できる。遅発の中性子及びガンマ線は、最初の能動的光子取り調べから放出され、次に、先に発生した中性子によって生じる核分裂より、サンプルから内部的に発生する。このサンプルは臨界未満であるので、上記光子取り調べを止めた時点で核分裂は減衰する。収集されるデータは、核分裂可能物質を表すシグネチャのために分析されるスペクトラムから構成される。
【0015】
核分裂生成物によって生み出されるガンマ線は、中性子と同様に重要である。例えば、核分裂可能物質と相互作用する加速器によって発生する核分裂生成物は、図1aに図示するようにガンマ線及び中性子の両方を生み出すことがある。この図示において、加速器のビームからの放射線は、核分裂生成物の最初のグループを発生させる。これら生成物は幾らかの時定数で崩壊し―速い方の崩壊は「即発」であり、遅い方の崩壊は「遅発」である。加速器発生の核分裂からのガンマ線は、ガンマ線測定値の一部である。また、同じ核分裂生成物は中性子(即発及び遅発)を生み出し、この中性子(即発及び遅発)は、減速の程度及びターゲット物質の構成に依存して二次核分裂を発生させる可能性がある。これら二次核分裂は、ガンマ線及びより多くの中性子を放出する核分裂生成物を生み出すことになる。このプロセスは、上記サンプル中の「全ての」自由中性子が吸収又は脱出するまで続くことになる。加速器はパルスされており、このプロセスが終了する時刻まで「オフ」となり、そのため新たな光核分裂は起こらない。述べたように、加速器によって生み出される高エネルギー放射線は、様々な「不活性」物質を核分裂させることが可能であるが、それらの核分裂生成物は、短い時間ガンマ線及び中性子の一方又は双方を放出するものである―「即発」崩壊。中性子捕獲による二次核分裂は存在しない。核分裂及び非核分裂の反応からの即発中性子は、中性子捕獲又は励起の何れかによって、周囲の物質において追加のガンマ線を生み出すことができる。
【0016】
加速器ビームの不活性物質とのある相互作用を、図1b及び1cに描写した。図1bにおいて、この加速器ビームは、該加速器ビームのエネルギーより下の核分裂閾値エネルギーを有する不活性物質と相互作用している。この状況においては、非核分裂の相互作用及び核分裂生成物を生み出すことを含む即発相互作用が起こるが、遅発相互作用は起こらない。図1cにおいて、この加速器ビームは、該加速器ビームのエネルギーより上の核分裂閾値エネルギーを有する不活性物質と相互作用している。この状況においては、即発非核分裂相互作用が起こるが、核分裂生成物は生み出されず、遅発相互作用も起こらない。
【0017】
核物質、特に核分裂性物質の存在に対し試験物品を取り調べるためのシステム10の一実施形態を図2に図示しており、ここでは試験物品12を調べている。試験物品12は、小包、船積みコンテナ、樽、乗物、又は核分裂性物質を含むと疑われることのある任意の物品であることができる。図2に描写した実施形態において、試験物品12は核分裂性物質14を含んでいる。この核分裂性物質14は包装物質16に近接して配置されている。包装物質16は、(a)中性子を実質的に透過する物質(空気等)のみ、(b)中性子を捕獲する、木、水、若しくは油等の物質、又は、(c)(a)と(b)との組み合わせ、若しくは中性子を部分的に透過させる、即ち放射された中性子の部分を捕獲することはできるが全てを捕獲することはできない他の物質若しくはこれら物質の組み合わせを含むことができる。
【0018】
試験物品12の内容を調べるために、図2の実施形態はガンマ線発生器18を使用して試験物品12を取り調べている。ガンマ線発生器18は線形加速器20を備えており、線形加速器20は、電子ビーム22を向けて、薄い(例えば、2.2mmの厚さ)タングステンのターゲット24に15MeV±5MeVの電子のパルスで激突させるものである。各パルスの持続時間は典型的に50ナノ秒であり、このパルスのレートは典型的に15Hzである。しかし、各パルスの上記持続時間は、約10ナノ秒と約100ナノ秒との間で変動することがあり、上記のパルス・レートは約10Hzと約20Hzとの間で変動することある。幾つかの実施形態において、上記のパルス持続時間及び上記のパルス周波数は、上記範囲を越えることができる。パルスあたりの電荷出力は、典型的にパルスあたり約70クーロンと120クーロンとの間である。公称15MeVの各パルスは、最大で15MeVのガンマ線ビーム26を生み出し、ガンマ線ビーム26は、試験物品12へと向けられる。そのようなガンマ線ビームは、光核分裂エネルギー・ビームとして参照される。なお、重要なことであるが、本明細書に記載した様々なパルス・パラメータの大きさは、一実施形態において使用する典型的な値であり、他の実施形態は、異なるパラメータの大きさを用いることができる。
【0019】
ガンマ線ビーム26が核分裂性物質14にぶつかると、この核分裂性物質の少なくとも一部が核分裂し、複数の核分裂生成物28及び放射線30のバーストが発生する。放射線30のこれらバーストは360球面度に向かうが、図示の容易さのため、図2においては放射線30のこれらバーストの一部のみを描写しており、放射線30のこれらバーストのこの一部は、3つの放射線検出器システムのおおまかな方向に向かっている。異なる実施形態において、3より少ない、又は3より多い放射線検出器システムを利用することができる。放射線バースト30は、何らの有意な時間遅延なく核分裂プロセスに付随して起こる即発ガンマ線34を含んでいる。また、放射線バースト30は即発核分裂中性子36を含んでおり、即発核分裂中性子36は、核分裂が起きたときに何らの有意な時間遅延なく放射されるが上記検出器に後で到着し、なぜなら、それらは光速より遅く進み、また部屋の周りで何回も跳ね返る可能性があるからであり、それらが壁や他の存在する物質の核と相互作用するにつれ、ガンマ線が発生する。加えて、放射線30の上記バーストは、核分裂発生の遅発ガンマ線38及び遅発核分裂中性子40を含み、遅発ガンマ線38及び遅発核分裂中性子40は、遅延の後に核分裂生成物28のうちの一つによって放射されるものであり、この遅延は、核分裂が起きた後の数ミリ秒から最大で100秒まで典型的に変動するものである。
【0020】
包装物質16が中性子捕獲物質を含む場合、遅発核分裂中性子40の幾らかは、この中性子捕獲物質によって捕獲されることがあるか、又は、中性子が十分にエネルギッシュな場合、それらは核を励起することがあり、この核は、それから中性子の捕獲なくガンマ線放射によって崩壊することがある。中性子を捕獲すると、上記中性子捕獲物質は、追加の中性子誘導遅発ガンマ線42を放射し、中性子誘導遅発ガンマ線42の一部は、放射線検出器システム32のうちの1つにぶつかることになる。核分裂発生遅発ガンマ線38の一部も、放射線検出器システム32のうちの1つにぶつかることになる。核分裂発生遅発ガンマ線38及び中性子誘導遅発ガンマ線42は、「外部」として参照され、なぜなら、3つの放射線検出器システム32の外部で生成するからである。なお、本明細書で定義したような「遅発外部ガンマ線」は、バックグラウンド・ガンマ線を含んでおらず、このバックグラウンド・ガンマ線は、天然のソースから又は任意の人工的ソースから起こる、(1)核分裂発生遅発ガンマ線38及び(2)中性子誘導遅発ガンマ線42以外のものであり、この中性子誘導遅発ガンマ線42は、核分裂性物質14の核分裂によって生み出される遅発核分裂中性子40の(3つの放射線検出器システム32の外部の)捕獲によって放射されるものである。
【0021】
要約すると、核分裂する物質は、中性子とガンマ線を生み出している。(加速器からの)高エネルギー・ガンマ線+235U、238U、又は239Puは、
・ 即発の中性子及びガンマ線
・ 遅発の中性子及びガンマ線
をもたらすことになる。
【0022】
即発及び遅発の中性子の両方は、追加の核分裂の及び非核分裂の相互作用を通じて、追加のガンマ線及び追加の中性子を生み出す可能性がある。ターゲットの周りの核分裂しない物質は、ガンマ線、及び、それほどではないにせよ、先の発生したガンマ線及び中性子によって生ずる様々な反応を介してより多くの中性子を発生させる可能性がある。核分裂しない物質の主要ターゲットに入射した高エネルギー・ガンマ線に対しては、即発の中性子及びガンマ線のみが生み出される。中性子がこれら核分裂しない物質と反応することよって追加のガンマ線が生み出されるが、このガンマ線は、即発ガンマの時間フレーム内、即ち、加速器パルスの後〜100ナノ秒に未だ存在することになる。
【0023】
図3は、放射線検出システム32の更なる詳細を図示している。放射線検出システム32は、ガンマ線検出器50を含んでいる。ガンマ線検出器50は、典型的にゲルマニウム酸ビスマス(BGO)ガンマ線検出器である。ガンマ線検出器50は、中性子からガンマ線への変換体物質52に取り囲まれている。中性子からガンマ線への変換体物質52は、ホウ素又はガドリニウム等の中性子捕獲物質と、ポリマ樹脂等の水素含有物質とを典型的に含んでいる。ポリエチレン及びホウ素を使用すると、ホウ素/ポリエチレン層を提供するのに一般的に十分であり、このホウ素/ポリエチレン層は、約5重量パーセントの天然のホウ素を該ポリエチレンに拡散させたものを含んでいる。天然のホウ素は15%の10Bを含んでおり、この10Bは入ってくる中性子をガンマ線に変換するために使用するものである。上記ポリエチレンは中性子のエネルギーを減速させ、それらが上記10Bによって捕獲されるであろう見込みを増大させている。
【0024】
一般的に、中性子からガンマ線への変換体物質52は、複数の遅発核分裂中性子40の少なくとも一部を捕獲するように構成されるが、典型的に、中性子からガンマ線への変換体物質52は、これら複数の遅発核分裂中性子40のごくわずかのみを捕獲する。最も広い観点において、中性子からガンマ線への変換体物質52は、これら複数の遅発核分裂中性子40の最大で全てを捕獲するように構成することができる。本明細書で使用するように、用語「最大で全て」は「ゼロ(none)」を含んでいる。従って、上記複数の遅発核分裂中性子40の「最大で全て」は、これら複数の遅発核分裂中性子40が全く捕獲されない実施形態を含んでいる。好適実施形態において、上記中性子からガンマ線への変換体物質は、ホウ素入りポリエチレン又はガドリニウム含有ポリエチレンを含んでいる。水素は上記中性子の熱中性子化を強め、そのためにこのホウ素入りポリエチレン又はガドリニウム含有ポリエチレンにおける中性子捕獲を強めることになる。
【0025】
遅発核分裂中性子40がガンマ線検出システム32に入った場合、中性子からガンマ線への変換体物質52は遅発核分裂中性子40の少なくとも一部を捕獲することがあり、遅発「内部ガンマ線」54を発生させることがあり、遅発「内部ガンマ線」54は、ガンマ線検出器にぶつかることがある。遅発内部ガンマ線54は「内部のもの」として参照され、なぜならそれは放射線検出システム32内部で生成するからである。図3に描写したガンマ線検出器50は、遅発内部ガンマ線54の少なくとも一部を検出するように構成されている。図2に関して先に指摘したように、外部中性子誘導遅発ガンマ線42は、試験物品12内部で生成することがあり、それをガンマ線検出器50によってまた検出することのできる放射線検出システム32に入ることがある。ガンマ線検出器50は、中性子誘導遅発外部ガンマ線42の少なくとも一部を検出するように典型的に構成されており、中性子誘導遅発外部ガンマ線42は、包装物質16内の中性子捕獲物質によって放射されるものであり、包装物質16は、複数の遅発核分裂中性子40の最大で全てを捕獲する(そして、捕獲すると中性子誘導遅発外部ガンマ線42を放射する)ものである。
【0026】
図3に更に図示されているように、多くの実施形態において、ガンマ線検出器50及び中性子からガンマ線への変換体物質52は、鉛遮蔽58に実質的に取り囲まれている。鉛遮蔽58は、典型的に約1インチの厚さであるが、約0.5インチと1.25インチとの間で変動する厚さを使用することができる。幾つかの環境において、特に、高エネルギーのガンマ線(>2MeV)が存在する場合、この鉛の厚さを2インチ以上に増大させることは役立つことになる。鉛遮蔽58は、円筒状部分56と、開口パネル60及び62とを備えている。鉛遮蔽58は、特に、大きな量のバックグラウンド放射線を有することのある環境において、「バックグラウンド」放射線からの制御不能で不明な寄与を除去することが望ましい。鉛の円筒状部分56は、そのような干渉を低減させるために用いることができる。図4に描写された代替構成において、開口パネル60と62との間に鉛のフェース・プレート84を配置することができ、それによってガンマ線検出器50及び中性子からガンマ線への変換体物質52は、鉛のプレートに完全に囲まれることになる。鉛のフェース・プレート84は、サンプルの「受動的な」走査−即ち取り調べより前のサンプルからのガンマ放射の測定においては特に有益である。受動的なスペクトラムは、ターゲットからの自然発生するガンマ放射についての情報をもたらし、この情報は、該ターゲットにおける放射能物質の正体を求めるために使用可能である。第2に、任意の自然発生する放射は、光核分裂レシオの決定に干渉することがあり(本明細書において後で記載する)、従って「光核分裂」スペクトラムから「受動的」スペクトラムを減算することは、上記レシオを計算する前に有用である可能性がある。そうしないと、核分裂可能ターゲットの周りにかなりの放射能物質を含ませることによって、本システムが「だまされる」可能性がある。
【0027】
中性子誘導遅発外部ガンマ線42は、開口64を通って放射線検出システム32に入ることがあり、中性子誘導外部ガンマ線42は、ガンマ線検出器50によって検出することができる。また、遅発核分裂中性子40は、開口64を通って放射線検出システム32に入ることがある。更にまた、鉛は(さほど厚くない場合)中性子に対して実質的に透明であるので、鉛遮蔽58(及び図4に示すオプションの鉛フェース・プレート84)は、典型的に、中性子の通路が任意の方向から放射線検出システム32に入ることをさほど妨げないことができる。従って、放射線検出システム32にぶつかる遅発核分裂中性子40の多くを、中性子からガンマ線への変換体物質52によって捕獲して、遅発内部ガンマ線54を生み出すことができ、遅発内部ガンマ線54は、ガンマ線検出器50によって検出することができる。
【0028】
中性子を捕獲する様々な物質の間で特に興味深いのは、水素(及び水素化合物)を含む物質、及びホウ素(及びホウ素化合物)又はガドリニウムのような他の物質を含む物質である。水素原子が中性子を捕獲すると、2.2MeVのガンマ線が放射される。ホウ素原子が中性子を捕獲すると、約478KeVのエネルギー・レベルでガンマ線が放射される。ガドリニウムが中性子を捕獲すると、合理的な高い確率で、最大で5から7MeVのエネルギー・レベルでガンマ線が放射される。478KeVのガンマ線を検出するために、ガンマ線検出器50は典型的にゲルマニウム酸ビスマス(BGO)ガンマ線検出器であり、このゲルマニウム酸ビスマス(BGO)ガンマ線検出器は、250keVから600keVまでの領域における約9−12%の半値全幅(FWHM)解像度を伴っている。中性子捕獲ガンマ「ピーク」を見つけるためには十分な解像度が必要であるが、この検出器は精密な解像度を必要としない。また、注意すべき重要なことは、478KeV、若しくは2.2MeV、又はより高いエネルギーのガンマ線の検出は、上記検出器に積もるそれらエネルギー・レベルと正確に関わらなくてよいことである。
【0029】
あるエネルギー・ポイントより上で検出されるエネルギーと下で検出されるエネルギーとレシオは、核分裂性物質が存在するかを判定する強力な方法であると証明されている。そのようなガンマ線は、一般的にガウス分布にわたる、幾分より低いか又はより高いエネルギー・レベルを積もらせる(又は、積もらせたために観測する)ことができる。主として、主なガンマ線エネルギーの検出器外のエネルギー損失のため、並びに、ガンマ線と検出器の物質との相互作用により生み出される電荷の統計的な揺動、パルス処理エレクトロニクスにより導入される変動、及びガンマ線のその生成ポイントから検出器までの通路におけるエネルギーの損失のうちの1つ以上のために、検出されるエネルギー・レベルにおいて統計的な変動が生じる。そのため、(例えば)2.2MeVのガンマ線を検出するように構成されたガンマ線検出器に対する本明細書における参照は、統計的変動の範囲内で2.2MeVのピーク・エネルギー・レベルを検出するよう構成された検出器を参照している。
【0030】
放射線を測定するために、放射線検出システム32は、ガンマ線検出器50に接続された放射線分析システム66を典型的に備えている。放射線分析システム66は、一般的には0.1MeVから最大で約8MeVまでの様々なエネルギー・レベルでガンマ線を検出し測定するように典型的に構成されている。
【0031】
図4は、異なる鉛遮蔽82を備えた放射線検出システム80の代替構成の幾分概略的な横断面図である。鉛遮蔽82は、約0.5から1.25インチの厚さの鉛フェース・プレート84を備えている。結果として、ガンマ線検出器50及び中性子からガンマ線への変換体物質52は鉛遮蔽82に本質的に取り囲まれることになり、遮蔽されていない面は、上記の遮蔽要素の間の小さな間隙の結果のみである。先に指摘したように、遅発核分裂中性子40等の中性子は、(それらのエネルギーの幾らかが失われることはあるものの)鉛の小さな厚みを容易に貫通し、そのため遅発核分裂中性子40は、中性子からガンマ線への変換体物質52へ達することにおいて鉛遮蔽58によってさほど弱められることはない。しかし、円筒部分56、開口パネル60及び62、並びにフェース・プレート84によって、ガンマ線検出器50へ達することから即発ガンマ線34及び中性子誘導遅発外部ガンマ線42を実質的に遮蔽することができる。高レベルの環境(バックグラウンド)ガンマ線の存在において動作する、核物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムは、ガンマ線検出器50を実質的に囲む鉛遮蔽82等の鉛遮蔽の使用から恩恵を受けることができる。ガンマ線検出器50としてプラスチック・シンチレータ検出器を使用するとき、鉛フェース・プレート84等の前面鉛遮蔽は、遅発内部ガンマ線54等の中性子捕獲によって放射されるガンマ線(特に低エネルギーのガンマ線)の検出を強めるために有用であることができる。幾つかの実施形態において、少なくとも1つの(図3に描写したタイプの)放射線検出システム32と、少なくとも1つの(図4に描写したタイプの)放射線検出システム80との組み合わせは、核物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムにおいて組み合わせることができる。
【0032】
図5は、図3に描写したような放射線検出システム32の斜視図である。鉛遮蔽58の開口64は、放射線検出システム32に入る外部ガンマ線(例えば、図1、2、及び3の中性子誘導遅発外部放射線42)のためのアクセスを提供する。
【0033】
図6は、図2のシステム10のコンピュータ・モデルによって予測した、検出されるガンマ線のプロット100であり、図2のシステム10は、核物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのものであり、図3に描写した放射線分析システム66とともに、放射線検出システム32と類似の放射線検出システムを使用したものである。プロット100は、核分裂性物質(例えばウランのブロック)が空気に囲まれ、この試験物品がコンクリートの部屋に入っている構成に基づいている。そのため、検出器に入るガンマ線は、この核分裂性物質(ウランのブロック)、及び上記コンクリートにおける核との中性子相互作用から来る可能性がある。しかし、支配的なガンマ線の領域は、上記ウランのブロックからのものである。
【0034】
外部ガンマ線は最小であるので、プロット100は、放射線検出システム80に基づくコンピュータ・モデルによって予測した検出されるガンマ線も表しており、この放射線検出システム80は、図4に描写した放射線分析システム66を備えたものである。(即ち、上記モデルは、放射される中性子−誘導遅発外部ガンマ線42が存在しないことを仮定しているので、鉛フェース・プレート84の存在又は不存在は無関係である。)プロット100は、上記検出器に入る即発(<約0.01秒)及び遅発のガンマ線(>約0.01秒)を示しており、ここで、これらガンマ線は約0.1MeVより上のエネルギーを有している。一実施形態においては、0.015秒の遅延が最良の分析を提供し、一般的には、テスト環境に依存して遅延の量を調節することが有益である。また、上記の即発及び遅発のガンマ線の様々な成分を示している。このデータはヒストグラムの形態であり、これらヒストグラムの中間点のみをプロットしている。また、上記の即発及び遅発のガンマ線の両方に対する第1のデータ・ポイントは、0に等しい時刻で実際に開始しているが、このプロットにおいて描写していない。
【0035】
図6に図示するように、開始とともに、核分裂性物質を光核分裂エネルギーに曝露させた後の1マイクロ秒未満で、即発ガンマ線102のバーストが検出されている。このことは、上記光核分裂エネルギーのバーストの後の約10分の1秒まで継続する即発中性子誘導ガンマ線の信号104に続いている。遅発の中性子及びガンマ線は、時刻ゼロでプロット100の水平軸に関して現れ始めている。遅発ガンマ線は、それらが上記検出器の近くにあり、光速で進むために、それらの放射後極めて短期間の範囲内で見られることになる。遅発中性子は上記ウランのブロック、壁の中の上記コンクリート、及び上記検出器内の物質と相互作用して、追加のガンマ線を生み出す。プロット100に見られるように、遅発ガンマ線は、何百秒の時間帯の外まで見られている。
【0036】
以下の記載は、本システムが15ヘルツで動作していることを仮定している。他の動作レートも適用可能である。先に指摘したように、15MeVの電子ビーム22(図2)は、タングステンのターゲット24に持続時間約50ナノ秒の電子パルスで激突するように典型的に構成されている。各パルスは、最大で15MeVのエネルギーでガンマ線ビーム26の実質的に同時のバーストを生み出すことになる。各パルスに続いて、典型的には不感時間が存在し、この不感時間は、典型的には持続時間約15ミリ秒から約20ミリ秒までの範囲にわたり、放射線検出器システム32をターン・オンする前に上記即発の中性子及びガンマ線を消失させることを可能としている。次に放射線検出器システム32は、約45ミリ秒の間ターン・オンして、遅発の中性子及びガンマ線を計数する。この約65ミリ秒のサイクル時間は、約15Hzのパルス周波数と一致している。遅発のガンマ線及び中性子誘導ガンマ線106のパターン106(図6)の検出は、試験物品内の核分裂性物質の存在の好適な目安である。
【0037】
図7は、光核分裂システムの一実施形態に対する典型的なタイミング・プロット150を図示している。破線のトレース152は、加速器発生の高エネルギー・ビームがターゲットにぶつかったときの期間の後の短い時間の間に起こる「即発」ガンマ放射(及び該ビーム経路における他の物質からの同様の放射)を表している。滑らかな実線のトレース154は、核分裂可能ターゲット物質からの「遅発」核分裂生成物の積み重ねを表し−その崩壊時定数は加速器パルスの間の期間よりも「はるかに」長く、この成分は、加速器が動作するにつれて平衡値まで時間にわたり積み重なるものである。二次核分裂もここに寄与している。スパイク状のトレース156は核分裂可能ターゲットからの観測されるガンマ放射を示し−即発及び遅発の成分の合計である。(非核分裂可能ターゲットからの観測されるガンマ放射は、即発の放射が減衰してしまったときにゼロまで減少することになる−ここでの点線のトレース152)。バー158は、光核分裂レシオ及び中性子捕獲ピークの計算に使用するために収集されるデータの時間インターバルを表している。典型的に、複数のインターバルからのデータは、十分な統計的精度が得られるまで合計される。なお、より大きな誘導される核分裂及び散乱による二次効果とともに、中性子の放射も同様に図7の一般的なパターンに従うことになる。幾つかの状況において、このことは過度の単純化であるかもしれないが、中性子捕獲ピークのデータを収集するためには、一般的にかなり十分である。
【0038】
典型的に複数のパルスは、核分裂性の又は核分裂可能な核物質の存在に対して試験物品を取り調べるために使用される。光核分裂エネルギーの各パルスは、複数の核分裂生成物を発生させ、複数の核分裂中性子を生み出すことができる。これら核分裂中性子の一部は、中性子捕獲物質によって捕獲することができ、この中性子捕獲物質は、上記核分裂性物質に近接して配置するか、又は中性子からガンマ線への変換体物質としてガンマ線検出器の周りに配置するかの何れかである。捕獲プロセスは、放射されるガンマ線を生じさせる。水素原子が中性子を捕獲すると、2.2MeVのガンマ線が放射される。ホウ素原子が中性子を捕獲すると、約478KeVのエネルギー・レベルでガンマ線が放射される。従って、光核分裂エネルギーの各パルスは、典型的に0.1MeVよりも大きなエネルギーのガンマ線の放射を誘導する。このパルスのレート、パルスの数、及び持続時間は、(a)検出可能信号を生み出すために必要な核分裂光子を取り調べる回数、及び(b)加速器(例えば、図2の20)の能力、等の因子に依存して選ぶことになる。しばしば、これらパルスは、放射線分析システム66とともに数分間続くことがあり、放射線分析システム66は、取り調べの持続時間にわたり、選択した時間ウィンドウの間、これらパルスの計数を合計する。典型的に、これら取り調べのパルスは、約1000秒の全体的なテスト時間にわたって繰り返される。このテスト時間の持続時間は、最良の信号対ノイズの結果を与える時間の長さに調節することができる。放射線分析システム66はガンマ線スペクトロメータを備えることができ、このガンマ線スペクトロメータは、(検出環境について追加の情報を提供する)遅発中性子からのガンマの2.2MeV及び478KeVのエネルギー線を検出し、且つ、遅発中性子の捕獲により生ずる他のガンマ線を検出するように構成されている。加えて、放射線分析システム66は、検出することのできる更なる特性特定核分裂性物質を判別するために、即発中性子ガンマ線信号104のテール・エンドにより生ずるガンマ線の少なくとも一部を計数するように構成することができる。
【0039】
様々な放射線シグネチャは、試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を指摘することができる。核分裂性の又は核分裂可能なターゲットの取り調べからの遅発ガンマ線は、不活性ターゲットからの遅発ガンマ信号よりも、時間にわたりあまり減少しない(即ち、言い換えると、はるかに長く残る)ことがわかっている。この変化は、より低いエネルギーよりもより高いエネルギーでより顕著である。この観測は、核分裂性の又は核分裂可能な物質を識別するために特に有用なシグネチャ・レシオを提供する。そのようなシグネチャの一例は、(1)2MeVより上の積分された遅発ガンマ(10ミリ秒<t<65ミリ秒)の、(2)2MeVより下の積分された遅発ガンマのレシオである。第1のエネルギー・レベルより上の第1のレンジと、第2のエネルギー・レベルより下の第2のレンジとにおいて検出されたエネルギーのレシオは、核分裂性の又は核分裂可能な物質が存在するかを判定する強力な方法であることが証明されている。なお、そのような評価において、第1のエネルギー・レベル及び第2のエネルギー・レベルは、異なるエネルギー・レベルであることができるか、又は同じエネルギー・レベルであることができる。例えば、同じ時間インターバルにわたる、2MeVより上の積分された遅発ガンマ(10ミリ秒<t<65ミリ秒)の、2MeVより下の積分された遅発ガンマとのレシオ比較は、第1のエネルギー・レベルより上と、第2のエネルギー・レベルより下とで検出されるエネルギーのレシオの例である。また、2MeVより上の積分された遅発ガンマ(10ミリ秒<t<65ミリ秒)は、エネルギーの遅発外部ガンマ線の「レンジ」の例であり、2MeVより下の積分された遅発ガンマは、遅発外部ガンマ線エネルギーの「レンジ」の更なる例である。用語「レンジ」は、放射線エネルギーのレンジを参照している。
【0040】
劣化ウラン(核分裂235Uの痕跡量を除いて実質的に全て238Uであるもの)での実験を、式1に列挙するような、より最適のシグネチャを開発するために使用してきた。
【0041】
【数1】

【0042】
ここで、Ctime,energyは、計数対時間及びエネルギーの累積二次元ヒストグラムの「散布図」の内容である。式1は、中間のエネルギー・レンジ(902から3500keV)を上記の計算に特に存在させないで、比較的高エネルギーの遅発ガンマ線の、比較的低エネルギーの遅発ガンマ線に対するレシオを計算している。実際のアラーム閾値は、既知の不活性サンプルの取り調べからの読み取りの、作動中のベースラインと比較して、統計的に有意な逸脱(観測されたレシオにおける高まり)を識別することによって、最良に設定される。また、有意な放射能をともなうターゲットは、定誤差を生じさせる可能性がある。2614keVより高いガンマ放射を伴う天然の放射能が少し存在するので、誤差は核分裂可能物質の検出の見込みを低減させることになる。この場合、ターゲット発生の「バックグラウンド」放射線は、上記レシオの算出に先立ち、関心領域の合計(2KeV−900KeV及び3502keV−8190keV)から減算することが可能である。アラーム閾値を越える光核分裂シグネチャ・レシオは、上記試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を示すシグネチャの例である。
【0043】
核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を指摘することのできるシグネチャの更なる例は、ホウ素又はガドリニウムの中性子捕獲ピーク正味エリアの存在である。例えば、中性子がBGOシンチレータを囲むポリエチレン・リング内の10Bと相互作用したときに生み出される、475keVの中性子捕獲ガンマ線からの遅発中性子信号は、スペクトラムを形成するために、加速器パルス後25ミリ秒から67ミリ秒までの時間領域にわたり、二次元の計数対エネルギー対時間のデータを合計することによって、測定することができる。これらスペクトラムは、上記中性子捕獲光電ピーク正味エリアを算出するために分析することができ、この捕獲ピーク正味エリアは、核分裂可能物質のシグネチャとしての使用のために、試験することができる。アラーム閾値は、既知の不活性サンプルの取り調べからの読み取りの、作動中のベースラインと比較して、統計的に有意な逸脱(475keVピークのあたりの一秒ごとに積分された計数における高まり)を識別することによって、設定することができる。アラーム閾値を越えた中性子捕獲ピーク正味エリアは、上記試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を示すシグネチャの例である。
【0044】
相補的なシグネチャの組み合わせを使用して、核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を見積もることができる。例えば、鉛によって核分裂性の又は核分裂可能な物質が遮蔽されている場合、何れの遅発ガンマもこの遮蔽を脱出することができない。しかし、遅発中性子は脱出し、本検出器システム内の中性子からガンマ線への変換体物質によって捕獲することができ、得られたガンマ線は、検出し、先の段落に記載した第2のシグネチャ(ホウ素又はガドリニウムの捕獲正味光電ピーク・エリア)を使用して核分裂性の又は核分裂可能な物質を表すものとして特性付けることができる。核分裂性の又は核分裂可能な物質が水によって遮蔽されている場合、この水によって遅発中性子は捕獲されることがあるが、得られるガンマ線は、検出し、本明細書において先に記載した第1のシグネチャ(レシオ技法)を使用して核分裂性の又は核分裂可能な物質を表すものとして特性付けることができる。
【0045】
核物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムの動作は、この試験物品内に存在する核分裂性の又は核分裂可能な物質の少なくとも一部の核分裂を誘導するのに十分なエネルギーで、該試験物品を照射するステップで始まるプロセスを、典型的に含んでいる。好適実施形態において、光核分裂エネルギーを使用して核分裂を誘導している。核分裂性の又は核分裂可能な物質が存在した場合、核分裂生成物が発生し、これら核分裂生成物の少なくとも1つは、核分裂中性子を生み出すことになる。水素含有中性子捕獲物質を上記核分裂生成物と近接して配置した場合、該核分裂生成物と近接したこの水素含有中性子捕獲物質の少なくとも一部によってこれら核分裂中性子の最大で全てが捕獲されると、0.1MeVより大きなエネルギーの外部ガンマ線を放射することができる。そのような状況において、本プロセスは、0.1MeVよりも大きなエネルギーの外部ガンマ線の最大で全てを計数することによって続き、この0.1MeVよりも大きなエネルギーの外部ガンマ線は、何らかの核分裂中性子がそのように捕獲される場合に、上記核分裂生成物に近接した上記水素含有中性子捕獲物質によってこれら核分裂中性子の最大で全てが捕獲されたときに放射されるものである。
【0046】
上記核分裂生成物に近接した上記水素含有中性子捕獲物質によって何らの核分裂中性子も捕獲されない場合、本プロセスは、典型的に、該核分裂生成物に近接した該水素含有中性子捕獲物質によって捕獲されない上記核分裂中性子の少なくとも一部を捕獲するステップとともに続く。このステップにおいて0.1MeVよりも大きなエネルギーの内部ガンマ線が放射された場合、本プロセスは、0.1MeVよりも大きなエネルギーの内部ガンマ線の最大で全てを計数することによって続く。そして、本プロセスは、上記外部の及び上記内部のガンマ線の組み合わせ計数が閾値を越えていないかどうかを評価することとともに終了し、この閾値は、上記試験物品内の核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を示すものである。本プロセスの幾つかのバリエーションにおいては、遅発核分裂中性子の捕獲から生ずる0.1MeVよりも大きなエネルギーの内部及び外部のガンマ線のみを計数している。
【0047】

物質の光核分裂の検出の様々な態様を評価するために、米国エネルギー省のアイダホ加速器センター(Idaho Accelerator Center)にある線形加速器(LINAC)を使用して実験を行った。光核分裂のために、15MeVの(最大)制動放射エネルギーを選択した。このエネルギーは、ウラニウムの核分裂に対する最大断面積に近く、また、多くの不活性物質に対する核分裂閾値より下である。LINACは、「低」エネルギーで始まり最大で15MeVのシャープ・カットオフである光子を生み出すものである。LINACのエネルギーは、様々な不活性物質において核分裂が生じることを避けるために、増大させなかった。
【0048】
LINACの光核分裂エネルギーを利用して、5つの試料:劣化ウラン、鉄、鉛、ベリリウム、及び「無」(ビーム経路にターゲットが存在しない)を取り調べた。劣化ウラン(実質的に全て238Uであるが、約0.2%の235Uを含むもの)は、235Uのより豊富なサンプルの代用として使用し、この235Uのより豊富なサンプルは、利用不可能であった。238U、235U、及び239Puに対する核分裂断面積の試験は、劣化ウランが申し分のない代用であったことを指摘していた。この劣化ウランのターゲット・サイズは12.1cm×6.83cm×5.72cmであり、質量は8.99kgであった。2つの鉄のターゲット:第1は対をなす2.5cmの厚さ×10cm×12cmのプレートからなるものであり、第2は5cm×15cm×10cmのソリッド・ブロックであるもの、を使用した。上記ベリリウムのターゲットは、約5cmの直径×20cmの高さの円柱であった。上記鉛のターゲットは、「標準的なレンガ(standard brick)」であった(5cm×10cm×20cm(2”×4”×8”)。
【0049】
これらサンプルの各々は、「典型的な」マトリクス物質によって囲まれており、この「典型的な」マトリクス物質は、船積みコンテナにおいて発見されることが予期されるであろうもの:空気、木、水、及び鉛であった。水及び鉛は、核分裂性の又は核分裂可能な物質の存在を覆い隠す試みにおいて使用される場合の、それらの可能性ある影響を評価するために含まれている。
【0050】
水:「小さな」マトリクス:61cm×61cm×91cmの高さ(2’×2’×3’)、及び「大きな」マトリクス:123cm×123cm×91cmの高さ(4’×4’×3’)の水槽を使用した。水は、ディーゼル燃料及び類似の液体の代用と考えることができる。減速体によって囲まれた核分裂可能物質の検出は、遅発中性子測定に基づくシステムにとってはしばしば困難であった。ターゲットは、上記水槽内の乾燥した井戸において吊るされた。
【0051】
鉛:鉛の囲いは、異なる壁の厚さ:2.5cm、5cm、又は7.6cmで、その各々が約40cm×40cm×30.5cmの高さ(16”×16”×12”)である鉛レンガから構築した。これら囲いは、ターゲットへのアクセスのため、上部及び底部で開いたままになっていた。鉛は、遅発ガンマ検出に基づくシステムに対する可能性あるチャレンジを表していた。最大の鉛の囲い−10cmの厚さの壁−は1250ポンドの重さと推定された。
【0052】
木:木のマトリクスは、ソリッドな木のアセンブリ:「小さな」マトリクス:61cm×61cm×91cmの高さ(2’×2’×3’)、及び「大きな」マトリクス:123cm×123cm×91cmの高さ(4’×4’×3’)、の中心にあるターゲットとともに使用した。木のマトリクスは乾燥した松のボードから構築し、インターロッキング層において積み重ねた。木は、典型的な低密度貨物の物質を表していた。
【0053】
「無」:遮蔽されないターゲット(「空気」のマトリックス−−周囲の物質は存在しない)
ガンマ線検出のために、BGOシンチレータ(3”の直径×5”の長さ、サイオニクス(Scionix)より購入)を使用した。プラスチック又はNaI(Tl)の検出器でなくこれらBGOシンチレータの使用は、高エネルギー・ガンマ線の検出において有利であることを証明した。これらBGOシンチレータはポリエチレンの層によって囲まれており、このポリエチレンは、該ポリエチレンに拡散した5重量%の天然のホウ素を含んでいる。天然のホウ素は15%の10Bを含んでおり、入ってくる中性子をガンマ線に変換するために使用される。このポリエチレンは減速体として作用して中性子のエネルギーを減速し、それらが10Bによって捕獲されるであろう見込みを増大させている。このポリエチレンのブランケット及び検出器は1”の厚さの鉛遮蔽に包まれ、該検出器に達する低エネルギーのガンマ線の強度を低減させている。実験のセルの構築において使用される構造物質であるために、鉛はバックグラウンド放射線を低減させることにおいて有用であり、この実験のセルにおいて、概念実験の証明が実行される。これら検出器は、実質的に本明細書の図5に描写したようなものであった。全体で、6つの3”の直径×6”の長さのBGO検出器−を使用した。これら6つのガンマ検出器は、アイダホへの輸送に先立って、及び実験の開始前に1日1回(朝)較正された。輸送に先立っては、Cf−252中性子ソースを使用して較正が行われ、光核分裂のために使用されるターゲット配置と同一の構成における3つのモジュールから24”(61cm)の点のソースを使用した。
【0054】
検出器モジュールは鉛遮蔽における「ウィンドウ」(本明細書において開口64として記載した)を含んでおり、それは遅発核分裂ガンマ線の減弱を避けるために含まれているものである。実験の間、上記「ウィンドウ」を1”の厚さの鉛プレートで覆ったことは、天然のバックグラウンドからの検出されるガンマ線を低減させ、光核分裂からのガンマ線の検出に対する信号対ノイズのレシオを改善したものと信じられていた。この遮蔽されたバージョンは、本願において図4に描写されている。特に高エネルギーのガンマ線(>2MeV)が存在するとき、上記検出器及び鉛のコリメータを囲むこの1”の厚さの鉛遮蔽は、バックグラウンド放射線を十分に低減させず、この遮蔽のジオメトリは上記検出器の視野を制限するのに恐らく有効でないことが後でわかった。この遮蔽の厚さは、増大させて上記検出器の視野を制限するのに実質的に有効なようにする必要がある可能性がある。上記検出器はガンマ及び中性子の検出の二重のモードで動作するため、追加の遮蔽は同様に中性子を吸収することになる。そのような遮蔽ジオメトリは、商業上の走査用機器における能動的取り調べに先立つ予備の受動的走査に対して有効でありそうである。
【0055】
BGO検出器からの光電子増倍管出力は、前置増幅器(オルテック296(ORTEC 296))、高速増幅器(オルテック579(ORTEC 579))によって処理され、高速アナログ・デジタル変換器(ADC、ファストコムテック7072(FastComtec 7072))によってスペクトラムにデジタル化された。ファストコムテック(FastComtec)SPA−3複数チャネル分析器を使用して、ヒストグラムのデータを収集し、計数対エネルギー×時間−二次元ヒストグラム−として記憶した。この分析器は、上記LINACのパルス後のガンマ・データ対時間を記録するために、製造業者によって修正された(リアルタイム・クロックのオプション)。ファストコムテック(Fast Comtec)のMPA−3ソフトウェアは、MCAを動作させるために使用した。ファストコムテック(FastComtec)のMPA−3ソフトウェア・アプリケーションを使用して、標準的なPCがデータを記憶し、表示した。増幅器の時定数は、できる限り高速な計数が可能なように最小値に設定した。このことは、より高速な計数率を達成するために受け入れられた、より貧弱なスペクトラム解像度(個別の検出器に対して〜12%)という結果をもたらした。
【0056】
実験のタイミングは、経験的な最適化を伴うモデル結果に基づいていた。LINACは、15Hzの繰り返しレートを伴うパルス・モードで動作した。パルス幅は〜50ナノ秒であり、パルスあたりの電荷出力は、パルスあたり70から120ナノ・クーロンまで変動した。(パルスあたり100ナノ・クーロンがターゲット電荷であったが、LINACはこのレベルを連続して達成不可能であった)。この加速器のパルス後の遅発放射のみが核分裂可能物質の特性であったため、該加速器パルスに続く遅延の後に、データは取得した。
【0057】
機器類は、加速器のパルス及びエネルギーの後に、計数対時間の二次元配列のガンマ・スペクトラムの結果を蓄積した。レンジは、時間レンジに対して0−67msであり、エネルギー・レンジに対して0−8MeVであった。上記複数チャネル分析器がライブ時間プリセット、普通は1000−4000sに達するまで、複数の67msのインターバルにわたり、この二次元ヒストグラムにデータを追加した。加速器の制御システムから機器類に「スタート」時間パルスを提供して、上記時間ヒストグラムをLINAC動作と同期させた。
【0058】
データ分析は、オリジナルのヒストグラムの領域の選択と、エネルギ−及び時間の一方又は双方のスペクトラムを生み出すことを伴っていた。ガンマの時間依存データは、グロス計数率対時間及び幾つかのエネルギー・レンジにわたるレート対時間の両方として蓄積した。中性子の放射時間依存データは、10B(n,α)Li反応からの475keV捕獲ガンマを検出することによって蓄積し、それは上記記録されたガンマ・スペクトラムにおける光電ピークを発生させた。
【0059】
様々なマトリクス物質によって囲まれた様々なターゲット物質の各々に対して、光核分裂シグネチャ・レシオを(式1ついて)計算した。これら結果は、図8に要約している。上記の核分裂可能ターゲット(劣化ウラン−図2においてU−238とラベルが付けられたもの)に対するレシオは、上記鉛の囲いを除いた全ての遮蔽物質に対して、上記の不活性物質に対するレシオより大きな大きさのオーダーである。1”の厚さの鉛の囲いをもってしても、このレシオは、上記不活性物質によって確立されたレシオより約5倍高いものであった。5cm(2”)の厚さの鉛の中の核分裂可能ターゲットの検出は、可能なようである。上記劣化ウランが10cm(4”の厚さ)の鉛によって囲まれている場合のみ、上記光核分裂シグネチャ・レシオは、核分裂性の又は核分裂可能な物質を検出しそうにない。このレシオの方法は、上記の大きな水槽内の核分裂可能ターゲットを成功裏に検出しており、このことは、核分裂性の又は核分裂可能な物質が水又は燃料のトラックにおいて運ばれるという可能性ある密輸のシナリオに対応するものである。
【0060】
上記レシオ計算に対する幾つかの可能性ある強化を試験した。1つの変形において、各ヒストグラムのビンにおける計数は、エネルギーによって重み付けされた。別の変形において、散乱又は天然の放射の指標として、中間ROI(902keVから3500keV)の可能性ある使用を評価した。核分裂可能なと不活性との間のターゲットのより良い識別の観点において、そのような追加の因子を含めることに由来する追加の複雑さを相殺するであろう、有意な利点は見つからなかった。
【0061】
次に、遅発中性子の信号を核分裂可能物質のシグネチャの第2のタイプとして評価した。この遅発中性子の信号は、上記BGOシンチレータを囲む上記ポリエチレンのリング内の10Bと中性子が相互作用したときに生み出される、475keVの中性子捕獲ガンマを使用して測定されたものである。スペクトラムを形成するために、加速器パルス後25ミリ秒から67ミリ秒までの時間領域にわたり、二次元の計数対エネルギー対時間のデータを合計した。中性子捕獲ピーク正味エリアを算出するために、これらスペクトラムを分析した。核分裂可能物質のシグネチャとしての使用のために、この捕獲光電ピーク正味エリアを試験した。図9に図示するように、核分裂可能な及び不活性のターゲットに対する上記遅発放射中性子捕獲ピーク・エリアにおいて、大きな差が識別された。中性子捕獲ピーク正味エリアのこの差は、4’×4’×3’の水槽のマトリクスを除く全てのマトリクスにおいて、上記の核分裂可能な劣化ウランのターゲットの存在をはっきりと指摘した。上記4”の厚さの囲いを含む上記鉛の囲いに対して、核分裂可能ターゲットと不活性ターゲットとの間の良好な区別を見ることが可能であり、この場合、上記光核分裂シグネチャ・レシオはさほど成功していなかった。
【0062】
不活性ターゲットにおける中性子捕獲の少量の検出は、天然のトリウムに起因する遅発放射によるものであることがあり、この天然のトリウムは、テストを行う施設を構築するために使用された充填材料内のものである。その結果、不活性ターゲットに対する正味光電ピーク計数率は、「開放」環境において配置されたシステムにおいてはより小さくなることがある。施設に関係すると考えられる別の現象は、IACバックグラウンド・スペクトラムにおけるガンマ光電ピークの存在であり、それは、中性子捕獲光電ピークに干渉するものであった。干渉するピーク・エリアは中性子捕獲光電ピークよりも小さく、そのため、「裸のターゲット」の測定値に干渉しなかった。しかし、水のマトリクス等、多くの中性子の放射が吸収された測定値に対して、この干渉は、中性子捕獲光電ピーク・エリアを正確に取得するために、適合重なり光電ピークを必要とした。この組み合わせ干渉及びゲイン・シフトは、自動的な光電ピーク適合を困難にするものである。中性子捕獲光電ピーク・エリアは、ローカル線形ベースラインでガウシアンを全てのデータに対して適合させることによって計算した。一般的に、中性子捕獲光電ピーク及び干渉光電ピークは、データに対して適合される。適合は、ファストコムテック(FastComtec)「MPA−3」ソフトウェア及び観測「手動適合」の両方によって計算した。干渉光電ピークを含むスペクトラムに対し、手動適合を使用してより良い結果を取得した。結果として、この光電ピーク適合は、ここに提示したデータに対して手動で行った。
【0063】
核分裂可能ターゲットと不活性ターゲット(鉛、鉄、空気、及びベリリウム)との間で正確に区別するために、2つのシグネチャ(上記のレシオの方法及び上記中性子捕獲ピーク正味エリア)の組み合わせを発見し、それは、全ての場合において、核分裂可能な及び不活性の物質に対する遅発のガンマ及び中性子の一方又は双方のシグネチャにおける実質的な差と伴うものである。これらシグネチャは、算出が単純で、システムの変形又は貨物の走査中に予期される干渉によってさほど影響を受けないものである。
【0064】
要約すると、本明細書に開示した実施形態は、核物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム及び方法を提供するものである。実施形態の先の記載は、図示及び解説の目的のために提示してきたものである。それらは、網羅的であること、又は開示した正確な形態に実施形態を限定することを意図したものではない。上記の教示を踏まえると、明らかな修正又は変形が可能である。これら実施形態は、原理及び実際的な適用の最良の図示を提供しようとして、そして、それによって記載したような様々な実施形態を、予期されるその特定の使用に適するような様々な修正を伴って、通常の当業者のうちの1人が可能であるようにしようとして、選び、記載したものである。全てのそのような修正及び変形は、公平に、合法的に、公正に、権利付与される広さに従って解釈されたときの、添付の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガンマ線検出器と、
前記ガンマ線検出器の少なくとも一部を囲む、中性子からガンマ線への変換体物質と、
前記中性子からガンマ線への変換体物質の実質的な一部を囲み、且つ前記ガンマ線検出器の少なくとも一部を囲む、鉛遮蔽と
を備えた、放射線検出システム。
【請求項2】
前記中性子からガンマ線への変換体物質は、減速体物質を含む、請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項3】
前記中性子からガンマ線への変換体物質は、ホウ素及びポリエチレンを含む、請求項1に記載の放射線検出システム。
【請求項4】
前記中性子からガンマ線への変換体物質及び前記ガンマ線検出器は、前記鉛遮蔽によって本質的に囲まれた、請求項1に記載の放射線検出器システム。
【請求項5】
核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステムであって、
前記試験物品を照射し、前記核分裂可能物質の核分裂をトリガするように構成され、遅発核分裂中性子が発生する、光核分裂エネルギー・ビーム・ソースと、
(a)前記遅発核分裂中性子の最大で全てを捕獲し、捕獲後に遅発内部ガンマ線を放射するように構成された中性子からガンマ線への変換体物質と、
(b)前記遅発内部ガンマ線の少なくとも一部を検出するように構成されたガンマ線検出器と
を備えた検出器システムと
を備えた、核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項6】
放射線分析システムを更に備え、前記放射線分析システムは、前記遅発内部ガンマ線の計数が、前記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すシグネチャを表すかどうかを評価するように構成された、請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項7】
放射線分析システムを更に備え、前記放射線分析システムは、前記遅発内部ガンマ線の計数が、中性子捕獲ピーク正味エリアの存在を指摘するかどうかを評価するように構成された、請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項8】
前記光核分裂エネルギー・ビーム・ソースは、前記核分裂可能物質の前記核分裂がトリガされたときに、遅発外部ガンマ線を発生するように更に構成され、
前記ガンマ線検出器は、前記遅発外部ガンマ線を検出するように更に構成された、
請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項9】
前記光核分裂エネルギー・ビーム・ソースは、前記試験物品が照射され前記核分裂可能物質の前記核分裂がトリガされたときに、遅発外部ガンマ線を発生するように更に構成され、
前記ガンマ線検出器は、前記遅発外部ガンマ線を検出するように更に構成され、
前記システムは放射線分析システムを更に備え、前記放射線分析システムは、
(1)第1のエネルギー・レンジにおける前記遅発外部ガンマ線及び前記遅発内部ガンマ線の第1の計数と、
(2)第2のエネルギー・レンジにおける前記遅発外部ガンマ線及び前記遅発内部ガンマ線の第2の計数と
の組み合わせが、前記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すシグネチャを表すかどうかを評価するように構成された、
請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項10】
前記光核分裂エネルギー・ビーム・ソースは、前記試験物品が照射され前記核分裂可能物質の前記核分裂がトリガされたときに、遅発外部ガンマ線を発生するように更に構成され、
前記ガンマ線検出器は、前記遅発外部ガンマ線を検出するように更に構成され、
前記システムは放射線分析システムを更に備え、前記放射線分析システムは、
(1)約3502keVより上の第1のエネルギー・レンジにおける前記遅発外部ガンマ線及び前記遅発内部ガンマ線の第1の計数と、
(2)約900keVより下の第2のエネルギー・レンジにおける前記遅発外部ガンマ線及び前記遅発内部ガンマ線の第2の計数と
のレシオが、前記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すシグネチャを表すかどうかを評価するように構成された、
請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項11】
前記光核分裂エネルギー・ビーム・ソースは、前記核分裂可能物質の前規核分裂がトリガされたときに、遅発外部ガンマ線を発生するように更に構成され、
前記検出器システムは、複数のガンマ線検出器とガンマ線遮蔽物質とを備え、前記ガンマ線遮蔽物質は、閾値レベル未満のエネルギーを有する実質的に全ての外部ガンマ線が、前記複数のガンマ線検出器の少なくとも一部に達することを防ぐように構成された、
請求項5に記載の核分裂可能物質の存在に対して試験物品を取り調べるためのシステム。
【請求項12】
試験物品中の核分裂可能物質の存在を検出する方法であって、
(a) 前記試験物品内に存在する前記核分裂可能物質の少なくとも一部の核分裂を誘導するのに十分なエネルギーで前記試験物品を照射するステップであって、外部の遅発ガンマ線と遅発核分裂中性子とが生み出される、ステップと、
(b) 前記遅発核分裂中性子の少なくとも一部を中性子からガンマ線への変換体物質において捕獲するステップであって、遅発内部ガンマ線が発生する、ステップと、
(c) 時間ウィンドウにわたり、第1のエネルギー・レンジにおいて第1の遅発ガンマ線の計数を集めるステップと、
(d) 前記時間ウィンドウにわたり、第2のエネルギー・レンジにおいて第2の遅発ガンマ線の計数を集めるステップと、
(e) 前記第1のガンマ線の計数と前記第2のガンマ線の計数とがともに、前記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すかどうかを評価するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
中性子捕獲ピーク正味エリアを表す内部ガンマ線の計数を集めるステップと、
前記中性子捕獲ピーク正味エリアを表す内部ガンマ線の前記計数が、前記試験物品内の核分裂可能物質の存在を示すかどうかを評価するステップと
を更に含む、請求項11に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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