説明

脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法

【課題】半導体装置製造に用いられるポジ型フォトレジスト用モノマーあるいは溶解抑止剤などとして有用な、溶解特性、露光感度、解像度、ラフネス、耐熱性等に優れ、特に現像液に対する溶解抑止効果に優れた脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法を提供する。
【解決手段】アダマンタン骨格にコール酸類エステル構造含有基が1つ又は2つ結合した脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法に関し、さらに詳しくは、ポジ型フォトレジストとして機能する脂環式化合物、すなわち、通常はアルカリ溶液への溶解抑止効果を有するが、光酸発生剤などにより酸分解を受けることにより、アルカリ可溶性となりうる脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の微細化が進むに伴い、その製造におけるフォトリソグラフィー工程において、さらなる微細化が要求されており、KrF、ArFあるいはF2エキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応したフォトレジスト材料を用いて、微細パターンを形成させる方法が種々検討されている。そして、前記エキシマレーザー光などの短波長の照射光に対応できる新しいフォトレジスト材料の出現が望まれている。
フォトレジスト材料として、従来はフェノール樹脂をベースとするポリマーが数多く開発されてきたが、これらの材料は芳香族環を含むために光の吸収が大きく、微細化に対応できるだけのパターン精度を得ることができない。
また、溶解抑止効果を有する化合物として、ジアゾナフトキノン(DNQ)に代表されるフェノール系化合物も使用されてはいるが、上記ポリマーと同様に短波長の照射光では光の吸収のため、微細パターンの形成には限界がある。
【0003】
このため、ArFエキシマレーザーによる半導体製造における感光性レジストとしては、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレートのような脂環式骨格を持った重合性化合物を共重合したポリマーが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、微細加工技術の更なる進歩に伴い、現時点では32nm以下の線幅を実現しようとしているものの、従来の技術だけでは、露光感度、解像度、パターン形状、露光深度、表面荒れなどの種々の要求性能をクリアすることができていない。具体的には、LER、LWRと呼ばれるパターン表面の粗さ(ラフネス)やうねりといった平滑性の問題が顕在化してきた。また、近年の液浸露光による方法では、液浸媒体に起因するレジストパターンのディフェクト=欠陥などの現像不良も散見される。さらには、13.5nmの極端紫外線(EUV)を使用した半導体製造工程においては、スループットの向上の為にも、より高感度のレジスト開発が望まれている。
従来技術を駆使することにより、それぞれの要求性能を改善することは可能になってきているものの、互いにトレードオフの関係にある「露光感度、解像度、表面荒れ」を同時に達成することが困難と言われている。その中で、低分子レジストといわれる単分子化合物は、従来のポリマー系化合物と異なり、露光感度と解像度のみならず、その分子サイズに由来する表面荒れが大きく低減できる材料として期待されている。
【0004】
低分子レジストとしては、例えば特許文献2〜7には、リソグラフィーによる半導体製造用材料としてカリックスアレーン、カリックスレゾルシナレンなどのポリフェノール系の低分子化合物が開発されている。これらは合成が容易であるものの、芳香環を有するためにKrFやArFといった短波長の光源には、光の吸収により使用できない。通常、露光に使用できる波長は高圧水銀灯のg線またはi線、あるいは軟X線に限られる。
そこで現行の最先端の量産用露光技術であるArFエキシマレーザーに適用すべく、種々の脂環式低分子化合物がいくつか提案されている(特許文献8〜11参照)。更には本発明者らも全脂環式の低分子化合物を開発している(特許文献12参照)。これらに記載の化合物群は全脂環式化合物であるため高い透明性を有し、任意の光源でのリソグラフィーが可能である。さらには、アダマンタン骨格を有した熱安定性に優れた材料で熱的に余裕のあるプロセスを組むことができる。しかしながら、特定の化合物(特許文献12の化合物番号GR−5参照)においては現像液への溶解性が高く、希釈した現像液を使用する必要があるという課題があった。
一方で既存のポリマー系レジストによるリソグラフィー技術では溶解抑止剤として、各種の低分子化合物が提案されてきた(特許文献13〜14参照)しかしながら、これらの化合物は分子量が小さすぎるため耐熱性が低く、昨今の高温化された半導体製造プロセスには不向きな材料と言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−39665号公報
【特許文献2】米国特許第6,093,517号明細書
【特許文献3】特開2004−191913号公報
【特許文献4】特開2005−075767号公報
【特許文献5】特開2007−197389号公報
【特許文献6】特許第4076789号
【特許文献7】特開2008−089709号公報
【特許文献8】特開2007−191468号公報
【特許文献9】特開2007−193328号公報
【特許文献10】特開2007−210996号公報
【特許文献11】特開2007−316508号公報
【特許文献12】国際公開WO2007/094784号
【特許文献13】特開2001−183839号公報
【特許文献14】特開2005−055864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況下で、フラットパネルディスプレイ(FPD)用溶解抑止剤あるいは層間絶縁膜、半導体装置製造に用いられるポジ型フォトレジスト用モノマーあるいはその他の溶解抑止剤などとして有用な、溶解特性、露光感度、解像度、ラフネス、耐熱性等に優れた脂環式化合物、その製造方法、それを含む組成物及びそれを用いたレジストパターン形成方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、アダマンタン骨格にコール酸類エステル構造含有基が1つ又は2つ結合した脂環式化合物を用いることで、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(1)で表される脂環式化合物、
【化1】

(式中、Ra〜Rcのうち、1つ又は2つは、下記一般式(a)で表わされるコール酸類エステル構造含有基を示し、それ以外のRa〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又はハロゲン原子を示す。)
【化2】

(式中、Rd、Re及びRfは、水素原子、水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜30の酸素含有有機基を示し、Rg及びRhは、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、nは、1又は2を示す。Aは、単結合又は炭素数1〜5の二価の炭化水素基を示す。)
【化3】

(式中、Z1は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化4】

(式中、Z2は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化5】

(式中、Z3は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であり、Ri及びRjは、それぞれ独立に、水素原子あるいはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化6】

(式中、Z4は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化7】

(式中、Z5〜Z7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
2.前記一般式(a)におけるRg及びRhが水素原子であり、かつ、Aが単結合である上記1記載の脂環式化合物、
3.前記一般式(a)におけるnが1である上記1又は2記載の脂環式化合物、
4.前記一般式(a)におけるRd、Re及びRfが、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基である上記3記載の脂環式化合物、
5.前記一般式(1)中、Ra〜Rcのうち1つ又は2つが前記一般式(a)で示され、それ以外のRa〜Rcが水素原子である上記4記載の脂環式化合物、
6.前記一般式(a)において、Rd、Re及びRfが、いずれも水酸基である上記5記載の脂環式化合物、
7.下記一般式(c1)〜(c5)のいずれかで示されるコール酸類と、1−ビニルオキシアダマンタン、1−ハロゲノメトキシアダマンタン、1−ビニルオキシメチルアダマンタン及び1−メチルチオメトキシアダマンタンから選択される1種以上とを反応させることを特徴とする上記1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物の製造方法、
【化8】

8.アダマンタン構造含有アルコールを、酸無水物の存在下、アルキルスルホキシドと反応させてアルキルチオアルキルエーテル体を得る工程と、該アルキルチオアルキルエーテル体をハロゲン化剤によりハロゲン化アルキルエーテル体とする工程と、該ハロゲン化アルキルエーテル体とコール酸類とのエステル化反応工程を有する上記1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物の製造方法、
9.少なくとも上記1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物を含有することを特徴とする組成物、
10.さらに溶媒及び酸発生剤を含有する上記9記載の組成物、
11.さらにクエンチャーを含有する上記9又は10記載の組成物、
12.ポジ型レジスト組成物である上記9〜11のいずれかに記載の組成物、及び
13.上記9〜12のいずれかに記載の組成物をポジ型レジストとして用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を露光する工程と、該レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程とを含むレジストパターン形成方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の脂環式化合物は、溶解特性、露光感度、解像度、ラフネス、耐熱性等に優れ、特に現像液に対する溶解抑止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例3及び4並びに比較例1で得られた組成物を用いて、未処理のシリコンウエハー上に形成されたレジスト膜におけるTMAH濃度に対する膜厚の変化を比較する図である。
【図2】実施例3及び4並びに比較例1で得られた組成物を用いて、HMDS処理されたシリコンウエハー上に形成されたレジスト膜におけるTMAH濃度に対する膜厚の変化を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記一般式(1)で表される脂環式化合物を提供する。
【化9】

(式中、Ra〜Rcのうち、1つ又は2つは、下記一般式(a)で表わされるコール酸類エステル構造含有基を示し、それ以外のRa〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又はハロゲン原子を示す。)
上記一般式(1)中、Ra〜Rcのうち1つ又は2つが前記一般式(a)で示され、それ以外のRa〜Rcが水素原子であることが好ましい。
【0011】
【化10】

【0012】
上記一般式(a)におけるRdは、水素原子、水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜30の酸素含有有機基を示し、好ましくは水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜30の酸素含有有機基であり、より好ましくは水酸基又は下記一般式(b1)で示される炭素数2〜15の酸素含有有機基である。
上記一般式(a)におけるRe及びRfは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜30の酸素含有有機基を示し、好ましくは水素原子、水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜15の酸素含有有機基であり、より好ましくは水素原子又は水酸基である。
上記一般式(a)におけるRg及びRhは、それぞれ独立に、水素原子、あるいは、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは水素原子、あるいは、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜6の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であり、より好ましくは水素原子である。
上記一般式(a)におけるnは、1又は2を示し、好ましくは1を示す。
上記一般式(a)におけるAは、単結合又は炭素数1〜5の二価の炭化水素基を示し、好ましくは単結合を示す。
【0013】
上記一般式(a)においてRg及びRhで示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基等の直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の分岐状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環状炭化水素基が挙げられる。Rg及びRhが有するヘテロ原子の具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。
上記一般式(a)においてAで示される炭素数1〜5の二価の炭化水素基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基及びペンタメチレン基が挙げられる。
【0014】
【化11】

【0015】
上記一般式(b1)におけるZ1は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
【0016】
【化12】

【0017】
上記一般式(b2)におけるZ2は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
【0018】
【化13】

【0019】
上記一般式(b3)におけるZ3は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜4の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
上記一般式(b3)におけるRi及びRjは、それぞれ独立に、水素原子あるいはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、水素原子あるいは炭素数1〜5の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
【0020】
【化14】

【0021】
上記一般式(b4)におけるZ4は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜8の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
【0022】
【化15】

【0023】
上記一般式(b5)におけるZ5〜Z7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。
【0024】
上記一般式(b1)においてZ1で示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、上記一般式(b2)においてZ2で示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、上記一般式(b3)においてZ3で示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、上記一般式(b4)においてZ4で示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基、及び上記一般式(b5)においてZ5〜Z7で示されるヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デカニル基などの直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の分岐状炭化水素基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデカニル基、デカリル基(パーヒドロナフチル基)、ノルボルニル基、ボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基等の環状炭化水素基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカン環などの単環あるいは多環式アルキルの1価の残基、γ−ブチロラクチル環,4−オキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン,4,8−ジオキサ−トリシクロ[4.2.1.03,7]ノナン−5−オン,4−オキサ−トリシクロ[4.3.1.13,8]ウンデカン−5−オンなどの単環あるいは多環式ラクトンの1価の残基、テトラヒドロフラン,テトラヒドロピラン,1,4−ジオキサンなどの単環あるいは多環式エーテルの1価の残基、およびこれらのパーフルオロ体などが挙げられる。
【0025】
本発明の脂環構造含有化合物は、種々の方法により製造可能であり、代表的な例としては以下の製造方法A〜Dが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
製造方法A:
アダマンタン構造含有アルコールをアルデヒド類の存在下、ハロゲン化水素ガスと反応させることによりハロゲン化アルキルエーテル体を得て、このハロゲン化アルキルエーテル体と、コール酸類とのエステル化反応を行う方法。
製造方法B:
アダマンタン構造含有アルコールを酸無水物の存在下、アルキルスルホキシドと反応させることによりアルキルチオアルキルエーテル体を得て、ハロゲン化剤によりハロゲン化アルキルエーテル体とし、さらに、このハロゲン化アルキルエーテル体と、コール酸類とのエステル化反応を行う方法。
製造方法C:
酸触媒存在下、アダマンタン構造含有ビニルエーテルと、コール酸類とのエステル化反応を行う方法。
製造方法D:
酸素含有有機化合物を用いて、前記製造方法A〜Cで得られた脂環式化合物の水酸基保護反応を行う方法。
【0026】
(製造方法A)
上記製造方法Aにおけるアダマンタン構造含有アルコールとしては、1,3,5−アダマンタントリオール、1,3,5−トリス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1−アダマンタノール、1−(ヒドロキシメチル)アダマンタンなどが挙げられるが、1,3−アダマンタンジオール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1−アダマンタノール、1−(ヒドロキシメチル)アダマンタンが好ましい。
製造方法Aにおけるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド,パラホルムアルデヒド,アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒドなどの直鎖状または分岐状の脂肪族アルデヒドが挙げられる。
製造方法Aにおけるハロゲン化水素ガスとしては、例えば、フッ化水素ガス、塩化水素ガス、臭化水素ガスのような単体ガスまたはこれらの混合ガスが挙げられる。
製造方法Aにおけるコール酸類としては、例えば、下記式(c1)で示されるリトコール酸、下記式(c2)で示されるデオキシコール酸、下記式(c3)で示されるウルソデオキシコール酸、下記式(c4)で示されるケノデオキシコール酸、下記式(c5)で示されるコール酸などの飽和コール酸類縁体が挙げられる。
【0027】
【化16】

【0028】
製造方法Aにおけるハロゲン化アルキルエーテル体は、アダマンタン構造含有アルコールをアルデヒド類の存在下、ハロゲン化水素ガスで反応させることにより得られる。このとき、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、有機溶媒を使用する場合には、アダマンタン構造含有アルコールの飽和溶解度以下であれば特に限定はしないが、基質濃度が0.1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が0.1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。
使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン,ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられ、ハロゲン化水素ガスの溶存量が高いハロゲン系溶媒が好ましく、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
また、反応温度は任意の温度をとれるが、高すぎるとハロゲン化水素ガスの溶解度が低下し、低すぎると反応自体の進行が遅くなるので、0℃〜40℃が好ましい。
圧力は任意の圧力をとれるが、加圧条件では副反応の制御も必要となるため、常圧が好ましい。また、圧力が高すぎる場合は特別な耐圧装置が必要となり、経済的でない。
このようにして得られるハロゲン化アルキルエーテル体の具体例としては、1,3−ビス(ハロゲノメトキシ)アダマンタン等が挙げられる。
【0029】
製造方法Aにおけるエステル化反応は、塩基存在下、ハロゲン化アルキルエーテル体と、コール酸類とを反応させることにより行うことができる。反応性の観点から、α−ハロアルキルエーテルと反応させることが好ましい。また、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、有機溶媒を使用する場合には、基質濃度が0.1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が0.1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン,ジメトキシエタン(DME),などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド),ジメチルスルホキシド(DMSO),N−メチル−2−ピロリドン(NMP),ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA),ヘキサメチル亜リン酸トリアミド(HMPT),二硫化炭素などの非プロトン極性溶媒が挙げられ、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。上記塩基としては水素化ナトリウム,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,炭酸ナトリウム,炭酸カリウム,炭酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム,酸化銀,燐酸ナトリウム,燐酸カリウム,燐酸一水素二ナトリウム,燐酸一水素二カリウム,燐酸二水素一ナトリウム,燐酸二水素一カリウム,ナトリウムメトキシド,カリウムt−ブトキシド,トリエチルアミン,トリブチルアミン,トリオクチルアミン,ピリジン,N,N−ジメチルアミノピリジン,1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン(DBN),1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エン(DBU)などの無機塩基および有機アミンが用いられる。
【0030】
上記エステル化反応後、反応生成液は水と有機層に分離し、必要に応じて水層から生成物を抽出する。反応液から溶媒を減圧留去することで、本発明の脂環式化合物が得られる。必要に応じて精製してもよいし、精製することなく反応液を次の反応に供してもよい。精製方法としては、蒸留,抽出洗浄,晶析,再沈,活性炭吸着,シリカゲルカラムクロマトグラフィーなど一般的な精製方法の中から、製造スケール、必要な純度を考慮して、選択することができるが、比較的低温での取扱いが可能であり、一度に多量のサンプルを処理できるため、抽出洗浄、晶析または再沈による方法が好ましい。特に使用した原料を、本発明である脂環式化合物から除去する方法としては種々の方法が採用され得るが、操作性や経済的な視点から、脂環式化合物に対する貧溶媒を用いて原料を洗浄する方法が好ましい。脂環式化合物に対する貧溶媒の中でも、沸点が低いものが好ましく、代表的にはジエチルエーテル、メタノール、エタノール、n−ヘキサン、n−ヘプタンなどが挙げられる。
【0031】
(製造方法B)
上記製造方法Bにおけるアダマンタン構造含有アルコール及びコール酸類としては、前記製造方法Aと同様のものが用いられる。
製造方法Bにおけるアルキルスルホキシドとしては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジ−n−プロピルスルホキシド、ジイソプロピルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド、ジイソブチルスルホキシド、ジ−sec−ブチルスルホキシド、ジ−tert−ブチルスルホキシド、ジイソペンチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、メチル−tert−ブチルスルホキシドなどの対称または非対称の脂肪族スルホキシドが挙げられるが、反応生成物の単一性を考慮すると、好ましくは、対称脂肪族スルホキシドがよく、短鎖長アルキル基のジメチルスルホキシドがより好ましい。
製造方法Bにおける酸無水物としては、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、イソ酪酸無水物、吉草酸無水物、ピバリン酸無水物、安息香酸無水物、クロロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物などの脂肪族または芳香族カルボン酸無水物が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
製造方法Bにおけるハロゲン化剤としては、例えば、塩化チオニル、塩化スルフリル、臭化チオニル、臭化スルフリル、塩化臭化チオニル、塩化臭化スルフリル、などのハロゲン化硫黄化合物や、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、三塩化リン酸、三臭化リン酸、五塩化リン、五臭化リンなどのハロゲン化リン化合物が挙げられる。
【0032】
製造方法Bにおけるアルキルチオアルキルエーテル体は、アダマンタン構造含有アルコールをアルキルスルホキシドおよび酸無水物の存在下、反応させることにより得られる。このとき、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、通常はアルキルスルホキシドおよび酸無水物を反応試剤かつ溶媒として大過剰使用することにより反応は進行する。別途、有機溶媒を使用する場合には、基質濃度が1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,THF(テトラヒドロフラン),ジオキサン,DME(ジメトキシエタン)などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられ、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応温度は任意の温度をとれるが、高すぎると副反応による選択率低下がおき、低すぎると反応自体の進行が遅くなるので、室温〜60℃が好ましい。圧力は任意の圧力をとれるが、加圧条件では副反応の制御も必要となるため、常圧が好ましい。圧力が高すぎる場合は特別な耐圧装置が必要となり、経済的でない。
このようにして得られるアルキルチオアルキルエーテル体の具体例としては、1−メチルチオメトキシアダマンタン、1,3−ビス(メチルチオメトキシ)アダマンタン等が挙げられる。
【0033】
製造方法Bにおけるハロゲン化アルキルエーテル体は、上記アルキルチオアルキルエーテル体をハロゲン化剤と反応させることにより得られる。このとき、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、ハロゲン化剤を反応試剤かつ溶媒として大過剰使用してもよい。別途、有機溶媒を使用する場合には、基質濃度が0.1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が0.1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレンなどの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン,ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられ、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。反応温度は任意の温度をとれるが、高すぎると副反応による選択率低下がおき、低すぎると反応自体の進行が遅くなるので、室温〜100℃が好ましい。圧力は任意の圧力をとれるが、加圧条件では副反応の制御も必要となるため、常圧が好ましい。圧力が高すぎる場合は特別な耐圧装置が必要となり、経済的でない。
このようにして得られるハロゲン化アルキルエーテル体の具体例としては、1,3−ビス(ハロゲノメトキシ)アダマンタン等が挙げられる。
製造方法Bにおけるエステル化反応は、前記製造方法Aにおけるエステル化反応と同様にして行うことができる。
【0034】
(製造方法C)
上記製造方法Cにおけるアダマンタン構造含有ビニルエーテルとしては、例えば、1−ビニルオキシアダマンタン、1−ビニルオキシメチルアダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(ビニルオキシメチル)アダマンタンなどが挙げられる。
製造方法Cにおけるコール酸類としては、上記製造方法Aと同様のものが用いられる。
製造方法Cにおける酸触媒としては、ルイス酸、ブレンステッド酸、アレニウス酸などで定義される任意の有機および無機の酸が挙げられるが、好ましくは、ギ酸、酢酸、塩酸、硫酸、硝酸、メタンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸などのブレンステッド酸が挙げられる。
上記製造方法Cでは、酸触媒存在下、アダマンタン構造含有ビニルエーテルと、コール酸類とを反応させる。このとき、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、有機溶媒を使用する場合には、アダマンタン構造含有ビニルエーテルの飽和溶解度以下であれば特に限定はしないが、基質濃度が0.1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が0.1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。
使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレン,などの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン,ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられ、ハロゲン化水素ガスの溶存量が高いハロゲン系溶媒が好ましく、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
また、反応温度は任意の温度をとれるが、高すぎるとアダマンタン構造含有ビニルエーテル同士が重合する副反応が起きてしまい、低すぎると反応自体の進行が遅くなるので、0℃〜40℃が好ましい。
圧力は任意の圧力をとれるが、加圧条件では副反応の制御も必要となるため、常圧が好ましい。また、圧力が高すぎる場合は特別な耐圧装置が必要となり、経済的でない。
【0035】
(製造方法D)
上記製造方法A〜Cによって得られた脂環式化合物に対して、以下に示す水酸基保護反応を行ってもよい。
製造方法Dに用いられる脂環式化合物としては、下記一般式(1−1)で示されるものが好ましい。
【化17】

(式中、Ra〜Rcのうち、1つ又は2つは、それぞれ独立に、下記一般式(a−1)で表わされるコール酸類エステル構造含有基を示し、好ましくは下記一般式(a−2)で表わされるコール酸類エステル構造含有基を示し、それ以外のRa〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又はハロゲン原子を示す。)
【0036】
【化18】

(式中、Rk及びRlは、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基である。)
【0037】
【化19】

【0038】
製造方法Dにおける酸素含有有機化合物は、下記一般式(d1)で示されるカルボン酸ハライド類、下記一般式(d2)で示される炭酸エステル無水物、下記一般式(d3)で示されるハロゲン化アルキルエーテル類、下記一般式(d4)で示されるハロゲン化酢酸エステル類および下記一般式(d5)で示されるシリルハライド類から選択される1種以上が用いられる。
【0039】
【化20】

(式中、Z1は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0040】
【化21】

(式中、Z2は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【0041】
【化22】

(式中、Z3は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であり、Rm及びRnは、それぞれ独立に、水素原子あるいはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0042】
【化23】

(式中、Z4は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
【0043】
【化24】

(式中、Z5〜Z7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。)
上記一般式(d1)〜(d5)におけるZ1〜Z7及びXは、前記(b1)〜(b5)におけるものとそれぞれ同様である。
【0044】
上記製造方法Dにおける水酸基保護反応では、上記製造方法A〜Cで得られた脂環式化合物の水酸基に対して、酸素含有有機化合物を反応させる。このとき、有機溶媒の存在下又は不存在下で行うことができるが、有機溶媒を使用する場合には、脂環式化合物の飽和溶解度以下であれば特に限定はしないが、基質濃度が0.1モル/リットル〜10モル/リットルとなるように調節することが好ましい。基質濃度が0.1モル/リットル以上であると、通常の反応器で必要な量が得られるため、経済的に好ましく、基質濃度が10モル/リットル以下であると、反応液の温度制御が容易となり好ましい。
使用できる有機溶媒としては、ヘキサン,ヘプタン,シクロヘキサン,エチルシクロヘキサン,ベンゼン,トルエン,キシレン,などの炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル,ジブチルエーテル,テトラヒドロフラン(THF),ジオキサン,ジメトキシエタン(DME)などのエーテル系溶媒、ジクロロメタン,四塩化炭素などのハロゲン系溶媒が挙げられ、ハロゲン化水素ガスの溶存量が高いハロゲン系溶媒が好ましく、これらを1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
また、反応温度は任意の温度をとれるが、高すぎると既存のエステル結合やアセタール結合の分解が起きてしまい、低すぎると反応自体の進行が遅くなるので、0℃〜40℃が好ましい。
圧力は任意の圧力をとれるが、加圧条件では副反応の制御も必要となるため、常圧が好ましい。また、圧力が高すぎる場合は特別な耐圧装置が必要となり、経済的でない。
【0045】
本発明はまた、上記本発明の脂環式化合物を含有する組成物も提供する。
本発明の組成物は、さらに溶媒、酸発生剤、クエンチャー、各種添加剤等を含有することが好ましい。
本発明の組成物は、種々の用途、例えば、回路形成材料(半導体製造用レジスト、プリント配線板など)、画像形成材料(印刷版材、レリーフ像など)などに利用できるが、特にフラットパネルディスプレイ(FPD)用溶解抑止剤や層間絶縁膜、フォトレジスト組成物として用いることが好ましく、ポジ型フォトレジスト組成物として用いることがより好ましい。
本発明はさらに、上記本発明の組成物からなるポジ型レジスト組成物をも提供する。
本発明のポジ型レジスト組成物は、本発明の脂環構造含有化合物を含有するものであれば特に限定されないが、本発明のポジ型レジスト組成物の全量基準で、本発明の脂環構造含有化合物を2〜50質量%含有するものが好ましく、5〜15質量%含有するものがより好ましい。
【0046】
本発明のポジ型レジスト組成物は、上記脂環構造含有化合物以外に、光酸発生剤(PAG)や有機アミンなどのクエンチャー、アルカリ可溶性樹脂(例えば、ノボラック樹脂、フェノール樹脂、イミド樹脂、カルボキシル基含有樹脂など)などのアルカリ可溶成分、着色剤(例えば、染料など)、有機溶媒(例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、セロソルブ類、カルビトール類、グリコールエーテルエステル類、これらの混合溶媒など)などを添加することができる。
光酸発生剤としては、露光により効率よく酸を生成する慣用の化合物、例えば、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードヘキサフルオロホスフェートなど)、スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホネートなど)、スルホン酸エステル[例えば、1−フェニル−1−(4−メチルフェニル)スルホニルオキシ−1−ベンゾイルメタン、1,2,3−トリスルホニルオキシメチルベンゼン、1,3−ジニトロ−2−(4−フェニルスルホニルオキシメチル)ベンゼン、1−フェニル−1−(4−メチルフェニルスルホニルオキシメチル)−1−ヒドロキシ−1−ベンゾイルメタンなど]、オキサチアゾール誘導体、s−トリアジン誘導体、ジスルホン誘導体(ジフェニルジスルホンなど)、イミド化合物、オキシムスルホネート、ジアゾナフトキノン、ベンゾイントレートなどが挙げられる。
これらの光酸発生剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。さらにこれらの光酸発生剤は熱酸発生剤としても使用できる。
本発明のポジ型レジスト組成物中における光酸発生剤の使用量は、光照射により生成する酸の強度や前記脂環構造含有化合物の含有量などに応じて適宜選択できるが、例えば、前記脂環構造含有化合物の全量100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜25質量部、さらに好ましくは2〜20質量部の光酸発生剤を含有する。
【0047】
クエンチャーは、脂肪族アミン、環式アミン、芳香族アミン等の公知のものから任意に用いれば良く、なかでも脂肪族アミン、特に第2級脂肪族アミンや第3級脂肪族アミンが好ましい。ここで、脂肪族アミンとは、1つ以上の脂肪族基を有するアミンであり、該脂肪族基は炭素数が1〜20であることが好ましい。
脂肪族アミンとしては、たとえば、アンモニアNH3の水素原子の少なくとも1つを、炭素数20以下のアルキル基またはヒドロキシアルキル基で置換したアミン(アルキルアミンまたはアルキルアルコールアミン)又は環式アミンが挙げられる。
アルキルアミンおよびアルキルアルコールアミンの具体例としては、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン等のモノアルキルアミン;ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ヘプチルアミン、ジ−n−オクチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等のジアルキルアミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘプチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−n−ノニルアミン、トリ−n−デシルアミン、トリ−n−ドデシルアミン等のトリアルキルアミン;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジ−n−オクタノールアミン、トリ−n−オクタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ラウリルジエタノールアミン等のアルキルアルコールアミンが挙げられる。これらの中でも、炭素数5〜10のトリアルキルアミンや、アルキルアルコールアミンが好ましく、トリ−n−ペンチルアミン、ジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミンが特に好ましい。
【0048】
環式アミンとしては、たとえば、ヘテロ原子として窒素原子を含む複素環化合物が挙げられる。該複素環化合物としては、単環式のもの(脂肪族単環式アミン)であっても多環式のもの(脂肪族多環式アミン)であってもよい。
脂肪族単環式アミンとして、具体的には、ピペリジン、ピペラジン等が挙げられる。
脂肪族多環式アミンとしては、炭素数が6〜10のものが好ましく、具体的には、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
芳香族アミンとしては、アニリン、ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピロール、インドール、ピラゾール、イミダゾールまたはこれらの誘導体、ジフェニルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミンなどが挙げられる。
その他の脂肪族アミンとしては、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチルアミン等が挙げられる。
これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明のレジスト組成物中におけるクエンチャーの使用量は、レジストパターン形状、引き置き経時安定性などを向上させるため適宜選択できるが、例えば、前記脂環式化合物100質量部に対して、好ましくは0〜10質量部、より好ましくは0.01〜5.0質量部のクエンチャーを含有する。
本発明のポジ型レジスト組成物は、前記脂環構造含有化合物と光酸発生剤、クエンチャー及び必要に応じて前記有機溶媒等を混合し、必要に応じて夾雑物をフィルターなどの慣用の固体分離手段により除去することにより調製できる。このポジ型レジスト組成物を基材又は基板上に塗布し、乾燥した後、所定のマスクを介して、塗膜(レジスト膜)に光線を露光して(又は、さらに露光後ベークを行い)潜像パターンを形成し、次いで現像することにより、微細なパターンを高い精度で形成できる。
【0050】
本発明は、必要に応じて支持体上に疎水化処理をする工程と、上記ポジ型レジスト組成物を用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を選択露光する工程と、選択露光されたレジスト膜をアルカリ現像処理してレジストパターンを形成する工程とを含むレジストパターン形成方法をも提供する。
上記疎水化処理に使用される疎水化処理剤は、公知のものから任意に用いれば良く、例えば、好ましくはビス(アルキルシリル)アミン、より好ましくはヘキサメチルジシラザン(HMDS)である。
上記支持体としては、シリコンウエハー、金属、プラスチック、ガラス、セラミックなどが挙げられる。フォトレジスト組成物の塗布は、スピンコータ、ディップコータ、ローラコータなどの慣用の塗布手段を用いて行うことができる。塗膜の厚みは、例えば、好ましくは0.01〜20μm、より好ましくは0.05〜1μmである。
レジスト膜を選択露光する工程には、種々の波長の光線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、エキシマレーザー(例えば、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArClなど)、軟X線などが使用される。露光エネルギーは、例えば0.1〜1000mJ/cm2、好ましくは1〜100mJ/cm2程度である。
上記ポジ型レジスト組成物に含まれる脂環式化合物は、アセタール構造を有するため、酸分解機能を有する。従って、上記選択露光により光酸発生剤から酸が生成し、この酸により前記脂環式化合物に基づく構造のうちアセタール構造部分が速やかに脱離して、可溶化に寄与するカルボキシル基や水酸基が生成する。そのため、水又はアルカリ現像液を用いて現像処理を行なうことで、所定のパターンを精度よく形成できる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について実施例及び比較例を示してより具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら制限されるものではない。
なお、各種分析方法は以下に示すようにして行った。
[示差走査熱量分析(DSC)]
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR DSC7020を用いて測定した。
[熱重量/示差熱分析(TG/DTA)]
エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製 EXSTAR TG/DTA7200を用いて測定した。
[膜厚及び規格化膜厚]
光学式膜厚計(フィルメトリクス株式会社製 F20−UV)を用いて膜厚を測定し、現像前の膜厚を1.00として規格化膜厚を算出した。
【0052】
実施例1(コール酸 アダマンタン−1−オキシメチルの合成)
300ミリリットルフラスコに、1−アダマンタノール[式量:152.23,15g,98.5mmol]とジメチルスルホキシド(DMSO)150ミリリットル、無水酢酸75ミリリットルを加え20時間攪拌した。反応混合液に水50ミリリットルとジエチルエーテル100ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。水層に再びジエチルエーテル50ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。これをさらに2回繰り返した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過の後、溶媒を留去すると、目的物である1−メチルチオメトキシアダマンタンの無色液体[20.1g,94.6mmol,単離収率96%]を得た。
50ミリリットル二口フラスコに、上記で合成した1−メチルチオメトキシアダマンタン[式量:212.35,1486mg,7mmol]を入れ、塩化チオニル[式量:118.97,0.6ミリリットル,8.4mmol]をゆっくり滴下した後15分撹拌した。残った塩化チオニルを真空ポンプにて除去した。溶媒を除去した残渣をTHF5ミリリットルに溶かし、テトラヒドロフラン(THF)20ミリリットルに溶かしたコール酸[式量:408.57,3146mg,7.7mmol,1.1当量]とトリエチルアミン[式量:101.19,d=0.726,1.18ミリリットル,8.47mmol,1.1当量]を入れた100ミリリットル二口フラスコにゆっくり滴下すると、速やかに反応液が白濁し、わずかに発熱がみられた。引き続き20時間撹拌の後、水50ミリリットルを加えて反応を止めた。反応混合液にジエチルエーテル100ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。水層に再びジエチルエーテル50ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。これをさらに2回繰り返した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過の後、溶媒を留去した。溶媒を除去した残渣をジエチルエーテル20ミリリットルに溶かし、へキサン500ミリリットルに滴下すると目的物である下記コール酸 アダマンタン−1−オキシメチルの白色固体[3079mg,5.38mmol,単離収率76.8%]を得た。
【0053】
<物性データ>
熱重量/示差熱分析法(TG/DTA): Td5=131.4℃
示差走査熱量分析(DSC):Tg=86.1℃
【化25】

【0054】
実施例2(ジコール酸 アダマンタン−1,3−ジオキシメチルの合成)
300ミリリットルフラスコに、1,3−アダマンタノール[式量:168.23,10g,59.4mmol]とジメチルスルホキシド(DMSO)150ミリリットル、無水酢酸75ミリリットルを加え50時間攪拌した。反応混合液に水50ミリリットルとジエチルエーテル100ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。水層に再びジエチルエーテル50ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。これをさらに2回繰り返した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過の後、溶媒を留去すると、目的物である1,3−ジメチルチオメトキシアダマンタンの無色液体[16.28g,56.4mmol,単離収率95%]を得た。
50ミリリットル二口フラスコに、上記で合成した1,3−ジメチルチオメトキシアダマンタン[式量:288.47,1442mg,5mmol]を入れ、塩化チオニル[式量:118.97,0.44ミリリットル,6mmol]をゆっくり滴下した後15分撹拌した。残った塩化チオニルを真空ポンプにて除去した。溶媒を除去した残渣をTHF5ミリリットルに溶かし、テトラヒドロフラン(THF)25ミリリットルに溶かしたコール酸[式量:408.57,4903mg,12mmol,1.2当量]とトリエチルアミン[式量:101.19,d=0.726,2ミリリットル,14.4mmol,1.2当量]を入れた100ミリリットル二口フラスコにゆっくり滴下すると、速やかに反応液が白濁し、わずかに発熱がみられた。引き続き20時間撹拌の後、水50ミリリットルを加えて反応を止めた。反応混合液にジエチルエーテル100ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。水層に再びジエチルエーテル50ミリリットルを加え、震とう,静置の後、水層と有機層を分けた。これをさらに2回繰り返した。得られた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過の後、溶媒を留去した。溶媒を除去した残渣をTHF10ミリリットルに溶かし、ジエチルエーテル500ミリリットルに滴下すると目的物である下記ジコール酸 アダマンタン−1,3−ジオキシメチルの白色固体[3650mg,3.62mmol,単離収率72.3%]を得た。
【0055】
<物性データ>
熱重量/示差熱分析法(TG/DTA): Td5=120.3℃
示差走査熱量分析(DSC):Tg=80.4℃
【化26】

【0056】
実施例3(組成物の調製)
実施例1で得たコール酸 アダマンタン−1−オキシメチルに対し、光酸発生剤としてトリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート 5質量%を加え、これらが5質量%になるようにシクロヘキサノンで溶解し、レジスト組成物R3を調製した。未処理のシリコンウエハー及びHMDS(ヘキサメチルジシラザン)処理したシリコンウエハー上に、それぞれ調製したレジスト組成物を塗布し、110℃で、60秒間ベークを行い、レジスト膜を形成した。こうして得られたシリコンウエハーを水で希釈したTMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)水溶液(2.38質量%)で30秒間現像した。このときのTMAH濃度に対する膜厚の変化を第1表及び図1に示す。
【0057】
実施例4(組成物の調製)
実施例1で得たコール酸 アダマンタン−1−オキシメチルに代えて、実施例2で得たジコール酸 アダマンタン−1,3−ジオキシメチルを用いてレジスト組成物R4を調製した以外は、実施例3と同様にして行った。TMAH濃度に対する膜厚の変化を第1表及び図1に示す。
【0058】
比較例1(組成物の調製)
実施例1で得たコール酸 アダマンタン−1−オキシメチルに代えて、下記式で示される化合物GR−5を用いてレジスト組成物R5を調製し、シクロヘキサノンの代わりに乳酸エチルを用いた以外は、実施例3と同様にして行った。TMAH濃度に対する膜厚の変化を第1表及び図1に示す。
尚、HMDS処理したシリコンウエハー上にレジスト組成物R5を塗布しても、レジスト組成物R5がはじかれてしまい成膜できなかった。
【0059】
【化27】

【0060】
【表1】

【0061】
このように本発明の実施例3および4は、TMAH標準濃度(2.38質量%)もしくは比較例1より高濃度のTMAH溶液で、膜厚維持の確認ができた。また、シリコンウエハーをHMDS処理した場合には、比較例1では成膜できなかったのに対し、実施例3および4では成膜が可能となり、成膜性の向上を確認できた。比較例1のGR−5を用いた場合HMDS処理したシリコンウエハー上に成膜できない理由については、コール酸の割合が小さく水酸基数の少ない化合物を用いた実施例3および4では化合物の極性が低いが、コール酸の割合が高く水酸基数の多い比較例1のGR−5は極性が高いため、HMDS処理して疎水性になったウエハー上で、比較例1の組成物R5がはじかれてしまい、成膜ができなかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上詳細に説明したように、本発明の脂環式化合物は、ポジ型レジスト組成物用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される脂環式化合物。
【化1】

(式中、Ra〜Rcのうち、1つ又は2つは、下記一般式(a)で表わされるコール酸類エステル構造含有基を示し、それ以外のRa〜Rcは、それぞれ独立に、水素原子、水酸基又はハロゲン原子を示す。)
【化2】

(式中、Rd、Re及びRfは、水素原子、水酸基又は下記一般式(b1)〜(b5)のいずれかで示される炭素数2〜30の酸素含有有機基を示し、Rg及びRhは、それぞれ独立に、水素原子又はヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示し、nは、1又は2を示す。Aは、単結合又は炭素数1〜5の二価の炭化水素基を示す。)
【化3】

(式中、Z1は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化4】

(式中、Z2は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化5】

(式中、Z3は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜9の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基であり、Ri及びRjは、それぞれ独立に、水素原子あるいはヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化6】

(式中、Z4は、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜15の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【化7】

(式中、Z5〜Z7は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を有してもよい炭素数1〜10の直鎖状、分岐状または環状の炭化水素基を示す。)
【請求項2】
前記一般式(a)におけるRg及びRhが水素原子であり、かつ、Aが単結合である請求項1記載の脂環式化合物。
【請求項3】
前記一般式(a)におけるnが1である請求項1又は2記載の脂環式化合物。
【請求項4】
前記一般式(a)におけるRd、Re及びRfが、それぞれ独立に、水素原子又は水酸基である請求項3記載の脂環式化合物。
【請求項5】
前記一般式(1)中、Ra〜Rcのうち1つ又は2つが前記一般式(a)で示され、それ以外のRa〜Rcが水素原子である請求項4記載の脂環式化合物。
【請求項6】
前記一般式(a)において、Rd、Re及びRfが、いずれも水酸基である請求項5記載の脂環式化合物。
【請求項7】
下記一般式(c1)〜(c5)のいずれかで示されるコール酸類と、1−ビニルオキシアダマンタン、1−ハロゲノメトキシアダマンタン、1−ビニルオキシメチルアダマンタン及び1−メチルチオメトキシアダマンタンから選択される1種以上とを反応させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物の製造方法。
【化8】

【請求項8】
アダマンタン構造含有アルコールを、酸無水物の存在下、アルキルスルホキシドと反応させてアルキルチオアルキルエーテル体を得る工程と、該アルキルチオアルキルエーテル体をハロゲン化剤によりハロゲン化アルキルエーテル体とする工程と、該ハロゲン化アルキルエーテル体とコール酸類とのエステル化反応工程を有する請求項1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物の製造方法。
【請求項9】
少なくとも請求項1〜6のいずれかに記載の脂環式化合物を含有することを特徴とする組成物。
【請求項10】
さらに溶媒及び酸発生剤を含有する請求項9記載の組成物。
【請求項11】
さらにクエンチャーを含有する請求項9又は10記載の組成物。
【請求項12】
ポジ型レジスト組成物である請求項9〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
請求項9〜12のいずれかに記載の組成物をポジ型レジストとして用いて支持体上にレジスト膜を形成する工程と、該レジスト膜を露光する工程と、該レジスト膜をアルカリ現像してレジストパターンを形成する工程とを含むレジストパターン形成方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1319(P2011−1319A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146808(P2009−146808)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】