説明

脂肪代謝及び肥満に影響を及ぼすプロバイオティクス

体重増加の抑制、肥満の予防、満腹の増大、飽食の延長、食物摂取の軽減、脂肪蓄積の軽減、エネルギー代謝の改善、インスリン感受性の増強、肥満の処置及びインスリン不感受性の処置に使用される、食品、飼料、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品の製造のための、プロバイオティクス細菌の使用。プロバイオティクス細菌は、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)F19(LMG P−17806)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB 1748又はビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)Bbl2の少なくとも1つである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、体重増加の抑制、肥満の予防、満腹の増大、飽食の延長、食物摂取の軽減、脂肪蓄積の軽減、エネルギー代謝の改善、インスリン感受性の増強、肥満の処置及びインスリン不感受性の処置に使用される、食品、飼料、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品の製造のための、プロバイオティクス細菌の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
健康に影響を与える食品の使用における興味は、研究者、健康専門家及び食品産業において急速に増大している。肥満、腹部脂肪蓄積及び2型糖尿病を含むメタボリック・シンドロームは、ヒトの健康及び健康に対する主な脅威の1つである。今日では、食べる量が少ないために死亡するヒトの数よりも、食べる量が多すぎるために死亡するヒトの数の方が多い。従って、肥満及び体脂肪蓄積の危険を低下させる可能性は、世界中の健康の観点において非常に価値があり、この領域で食品を開発する可能性は、食品産業にとって非常に興味がある。
【0003】
食品産業は既に、低エネルギー密度の製品、例えば低脂肪及び低炭水化物製品を開発することによりこの要求に対応してきた。肥満、脂肪代謝、グルコース代謝及び満腹に影響を及ぼす食品中に天然に存在する又は添加することができる生物活性成分を見つける可能性は、この産業が、すなわち実証された健康効果を有する機能性食品を開発する新規の可能性を開く。最近、ミルク中の高レベルのカルシウムの消費と低いボディー・マス・インデックス(BMI)との間の相関関係を示す試験が発表された。今日では、ミルク中のカルシウム、ミルク製品が、肥満、体脂肪蓄積及びインスリン耐性を低下させるという結論が、多くの総説で出されてきた。カルシウムはそれ自体、それらの特性を有しているようであり、カルシウムに加えて、ミルク中に存在する生物活性成分に対する必要性が存在すると考えられてきた。
【0004】
プロバイオティクスは、追加された「健康に対して有益な効果を有する微生物」として、ILSE(国際生命科学研究所)により定義された。プロバイオティクスは、一般的に、腸の健康、感染及び免疫系に影響を及ぼすために、食品、飼料及び栄養補助食品中で使用される。いくつかのプロバイオティクス株は、全てが試験されたわけではないが、血中コレステロール濃度に影響を及ぼすことも示されており、最近では、タンパク質分解乳酸菌により発酵されるミルク製品の使用により血圧を低下させる可能性が発見された。従って、プロバイオティクスにおける興味は広く、腸の健康及び健康及び免疫系に対する腸管内菌叢の中心的役割は、強く確立されている。
【0005】
ここ数年の間に、しばしばゲノミクス及びニュートリゲノミクスと呼ばれている技術が開発されてきた。それらの技術は、食品、栄養素の健康への影響を試験するための新規の独特な可能性をもたらす。この技術は、同時に多くの遺伝子の遺伝子発現を試験することを可能にする。従って、健康効果に関する新規で予想されない領域が発見され、健康効果の背後のメカニズムが示唆され得る。
【0006】
本出願の基礎は、プロバイオティクス製品が、満腹に影響を及ぼし、脂肪蓄積及び肥満の危険性を低下させることを興味深く示すヒト及びマウスでの試験である。観察された効果の背後の有力なメカニズムは、プロバイオティクス製品の消費後の遺伝子発現の試験から説明された。
【0007】
背景技術の説明
肥満、メタボリック・シンドローム及び2型糖尿病の危険性に寄与する代謝機能は説明されており、一般的な栄養素とそれらの疾患との間の関係も周知である。しかし、それらの疾患を生み出す危険性を減少させる際に、個々の食品及び食品グループの役割を確立させるための食事に基づいた介入研究が必要とされている。この領域の研究においては、エネルギー密度、脂肪及び炭水化物に焦点が当てられてきた。
【0008】
メタボリック・シンドロームにおける重要な因子は、インスリン感受性を含むグルコース代謝である。体脂肪蓄積、インスリン非感受性及び肥満の間には関連性が存在する。満腹及び飽食への関連性も存在する。それらの全ての機能の間の相互作用及び関係は複雑であり、健康又は疾患をもたらす事象の正確な順序を同定することは困難である。
【0009】
エネルギー恒常性に関わる多くの遺伝子及びそれらの対応するタンパク質が説明されてきた。脂肪組織はサイトカインと構造の類似した多くのタンパク質を合成し、それにより、これらはアディポカインと呼ばれている。それらのいくつかは腸でも合成されており、その合成は腸から制御されている。核受容体であるPPARガンマは、例えばアディポネクチンの合成に関係しており、その合成はカロリー摂取量及びレプチンシグナル伝達に関連する。アディポネクチンの合成の増大は、脂肪酸輸送、酸化及び骨格筋中の消費を増大させることにより、及び肝細胞のインスリンに対する感受性を増大させることにより、インスリン感受性を改善する。インスリン感受性に影響を及ぼす別の栄養的に制御された脂肪細胞に由来する因子は、レジスチンである。循環するレジスチン濃度は、肥満症において増大し、一方、レジスチンによるマウスの処理は、グルコース産生の増大及びインスリン作用の低下をもたらした。従って、レジスチンはグルコース恒常性において機能を有し、インスリン作用に対するアンタゴニストとして作用し、インスリン耐性を引き起こす。レジスチン様タンパク質は、胃腸管においても発現している(14)。アポリポタンパク質A−IVは、ヒト及びげっ歯類において、小腸により分泌される。この合成は脂肪摂取により刺激され、このタンパク質は恐らく、脂肪の摂取後に食物摂取量の阻害に関わる。研究は、アポリポタンパク質A−IVが、恐らく、食物摂取量の短期的及び長期的制御に関わることを示した。
【0010】
Hooperら(11)は、バクテロイデス・テトライオタオミクロン(Bacteroides thetraiotaomicron)に暴露したマウスの腸内の遺伝子発現を研究した。彼らは、この実験が腸ミクロフローラと宿主との間の相互作用に対して必須の役割を示すと結論付けた。エネルギー代謝又は肥満への効果は無いことが報告された。小腸粘膜内の遺伝子発現へのプロバイオティクスの影響を、ラクトバチラス・ラムノーザス・GG(Lactobacillus rhamnosus GG)に関して試験した(8)。彼らの結論は、ラクトバチラス・GG(Lactobacillus GG)の投与が、複雑な遺伝子応答に関連するというものである。見られるその主な応答は、免疫系、炎症、アポトーシス、細胞成長及び分化、細胞接着及びシグナル転写及び伝達への効果である。エネルギー代謝、脂肪代謝、グルコース代謝又はインスリン代謝への効果は無いことが報告されている。2005年の第4回NIZO Dairy会議でのW.de Vosによる口頭発表において、乳酸菌、例えばL.プランタラム 299v(L.plantarum 299v)の腸内の遺伝子発現への影響について発表され、結論は、異なる株からの遺伝子発現への効果はかなり変動するというものであった。エネルギー代謝又は脂肪代謝への効果は無いことが報告された。
【0011】
腸管内菌叢を体重増加及び脂肪蓄積と結びつけるいくつかの論文が公表されている。Backehedら(7)は、体重増加及び体脂肪蓄積に対する正常な腸管内菌叢の重要性について研究した。正常な微生物叢が確立されたノトバイオート・マウスが、食物摂取量の減少にも関わらず、14日間の給餌期間において、体脂肪を60%まで増大させ、そしてインスリン耐性を増大させたことが示された。微生物叢がどのようにトリグリセリド蓄積に影響し得るかに関する示唆が示されている。このように、正常な腸管内微生物叢が脂肪代謝に影響することが知られているが、この調査までは、その正常な細菌叢が脂肪代謝に関して変わり得るかどうかは知られていなかった。
【0012】
Aliら(2、3)は、コレステロール代謝に影響するプロバイオティクスを含む又は含まない大豆イソフラボンの影響を試験し、使用したプロバイオティクスがコレステロール又は脂肪蓄積に影響しないことを見出す。他の調査の参考文献は、いくつかのプロバイオティクス株が、血中コレステロール濃度に影響し得ることを示した(1、13)。プロバイオティクス株を比較したこの試験及び他の試験は、異なるプロバイオティクス株は異なる特徴を有し、具体的な健康効果に関して正しい株を選択することが重要であることを示す。
【0013】
PCT特許出願WO04/014403(15)には、食品中の単糖類及び二糖類の量を減少するためのプロバイオティクスの使用、及びそれによる肥満の危険性の処置又は予防について記載されている。米国特許第6696057号において、Bojrab(4)は、消化器疾患、脂質異常症及び自己免疫疾患の処置のための、ヨーグルト細菌、例えばラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)及びストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)の組成物について特許権を得、米国特許第6641808において、Bojrab(5)は、肥満症の処置に対しても同一の組成物の使用について記載している。この発明は、欧州特許出願第1177794号(6)にも記載されている。それらの特許/出願は、消化管の健康、感染及び免疫へのプロバイオティクスの影響に関する長い説明を有しているが、肥満への影響を確認する示された唯一の実験がヒトにおける単回飼育試験である。多くの生物活性成分及び体重減少のためのプロバイオティクスと組み合わせた緑茶又は緑茶抽出物の使用は、米国特許第6383482号(9)及び同第6565847号(10)においてGorsekにより特許されている。両方の特許において、主な活性成分は緑茶及び生物活性成分であり、プロバイオティクスは基礎組成物の一部として添加される。米国特許第6808703号及び日本国特許出願2001−292728号(16)においては、酵母、腸内細菌、乳酸菌、オリゴ糖及び植物繊維を含む肥満処置のための食品を調製する方法が記載されている。肥満の処置に関する実施例又は特許請求の範囲は示されていない。
【発明の開示】
【0014】
本発明の説明
本発明の目的は、体重増加の抑制、肥満の予防、満腹の増大、飽食の延長、食物摂取の軽減、脂肪蓄積の軽減、エネルギー代謝の改善、インスリン感受性の増強、肥満の処置及びインスリン不感受性の処置に使用される、食品、飼料、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品の製造のための、プロバイオティクス細菌の使用である。
【0015】
この目的は、プロバイオティクス細菌が、乳酸菌、特にラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、及びビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)、より好ましくはラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)F19(LMG P−17806)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB 1748、及びビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)Bbl2(この細菌は、ゲントのLMGカルチャー・コレクションに寄託されており、NCFBカルチャー・コレクション及びChr.Hansen Company DKからそれぞれ入手可能である)から成るグループから選択されることにおいて達成される。これらの株は、以下ではLMG P−17806、NCFB 1748及びBbl2と呼ばれる。
【0016】
ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)F19(LMG P−17806)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB 1748、及びビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)Bbl2及びその使用は、既に特許されている(WO99/29833)。この3つの株は、食品中及び消化管を通過する間、十分に生存する。
【0017】
今日の一般的な生活スタイルが、肥満、腹部脂肪蓄積及び2型糖尿病を含むメタボリック・シンドロームの危険性を増大させる過剰の食品摂取を意味するので、本発明の効果は非常に重要である。2型糖尿病は、インスリンの低感受性又はインスリン耐性により引き起こされる。このヒトの健康に対する脅威は、世界中の全ての年齢グループにおいて引き続き増大している。プロバイオティクスとしての乳酸菌は、食品、飼料、天然物、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品として受け入れられている。それらは、それらの送達系において使用するのが容易であり、日常的に容易に消費することができる。それらの最近の日常的な消費は、体重増加の抑制、肥満の予防、満腹の増大、飽食の延長、食物摂取の軽減、脂肪蓄積の軽減、エネルギー代謝の改善、インスリン感受性の増強、肥満の処置及びインスリン不感受性の処置を助け、それによりメタボリック・シンドロームに含まれる疾患の危険性を軽減する。
【0018】
以下の試験が本発明に含まれる:
試験は、プロバイオティクス製品がヒトにおいて体重増加を低下させることができることを示す。更に、試験は、プロバイオティクスを与えられたヒトが、プロバイオティクスを含まない同じ酸乳又は偽薬を与えられたヒトよりも高い満腹を報告し、より長い満腹を有することを示した。プロバイオティクスを与えたマウスは、プロバイオティクスを与えられないマウスよりも、総エネルギー摂取が低く、脂肪組織中の脂肪蓄積が小さく、総体重増加が低かった。遺伝子発現試験は、観察された効果の背後の機構が、エネルギー、脂肪、糖及びインスリン代謝及び満腹に関わる遺伝子のクラスターへの影響であることを確認する。
【実施例】
【0019】
1)ヒトにおける体重制御
二重盲検プラセボ対照試験において、ヒトは、プロバイオティクス(LMG P−17806及びNCFB 1748)を含む酸乳又はプロバイオティクスを含まない同一の酸乳又はカルシウム錠剤のいずれかが与えられた。それらのグループは、それぞれ15、14及び10人のヒトから成る。プロバイオティクス細菌は、5×10E7 CFU/mlの最終濃度で製品に添加され、細菌の数は、実験時間の間、製品中で安定であった。参加者は、2×2.5dlの製品を毎日食べた。含まれるヒトは、少し超過体重(BMI 25〜30)であった。この試験の目的は、プロバイオティクスのコレステロール代謝への効果を試験することであり、管理基準として体重増加を測定した。体重管理に関するアドバイスは与えられなかったが、参加者は、試験後に体重減少処置が提供された。細菌は消化管内の通過を生き残り、因子5により参加者からの糞便中に見出される乳酸菌の数は増大した。4週間後に、3つのグループの間の体重増加における驚くべきであるが顕著な差異が存在した。体重増加の平均値は、プロバイオティクス製品を受けたグループにおいては0.25kgであり、プロバイオティクスを含まない酸乳を受けたグループにおいては0.75kgであり、錠剤を受けたグループでは1.4kgであった。図1を参照のこと。
【0020】
2)ヒトにおける満腹及び飽食
二重盲検プラセボ対照試験において、2つの異なる用量のプロバイオティクスを含む酸乳又はプロバイオティクスを含まない同じ酸乳から成る偽薬no 1又は乳酸菌を全く含まない酸乳から成る偽薬no 2のいずれかをヒトに与えた。プロバイオティクス微生物であるLMG P 17806、NCFB 1748及びBb 12を、各株について1×10E6 CFU/ml及び5×10E7 CFU/mlの最終濃度で製品中に添加した。3dlの4つの製品のいずれかを含む管理された標準的な朝食の後、参加者は、食事の直後及び連続して30分おきに4時間、満腹及び空腹をVASスケール(視覚アナログ尺度)で示すように求められた。全部で10人のヒトがこの試験に含まれ、全ての参加者には全ての4つの製品が異なる時に与えられ、相対的差異が計算された。食事の直後に、それらの製品間において満腹のスコアにわずかな相違が存在した。5×10E7 CFU/ml及び1×10E6の濃度のプロバイオティクスを有する酸乳は最も高いスコア(それぞれ6.6及び6.4の相対的なVASスコア)を与え、偽薬no 1は中間のスコア(6.2の相対的なVASスコア)を有し、偽薬no 2は最も低いスコア(5.9の相対的なVASスコア)を有した。満腹スコアは、3.5時間後に、それぞれ3.1、3.0、2.5及び2.2まで低下した。これらの相違は小さいが、製品間の相違は持続し、飽食への影響は、2つの異なる濃度の細菌を含むプロバイオティクス製品に対して観察された。空腹に関しては、反対の状況が見られた。すなわち、プロバイオティクス製品は、2つの偽薬製品よりも低い空腹を与えた。食事の直後に、2つのプロバイオティクス製品は、両方の製品ともVASスケールで0.4の空腹スコアをもたらし、偽薬no 1は中間(0.9のVASスコア)であり、偽薬no 2は空腹に関して1.1のVASスコアを与えた。4時間後に、それらの値は、それぞれ6.0、6.2、7.0及び6.9であった。
【0021】
上記の標準的な朝食後で、満腹及び空腹に関するデータが観察された4時間後に、参加者は標準的な昼食を食べるように指示された。参加者は、心地よく満足し、それぞれの異なる朝食後と同じレベルの膨満が得られるよう試みることを要求された。プロバイオティクス製品を食べた後に、昼食時のエネルギー摂取量は、高レベルのプロバイオティクスを含む製品に関しては3690KJであり、低レベルのプロバイオティクスに関しては3810KJであった。偽薬no 1に関しては3850KJであり、偽薬no 2に関しては3995KJであった。これは、プロバイオティクス製品が、朝食の一部としてプロバイオティクス製品を食べた後の食事におけるエネルギー摂取量を減少させ得ることを示す。
【0022】
3)マウスの食物摂取量
Swiss Webster系統の正常フローラマウスに、LMG P−17806又はNCFB 1748のいずれかを含む酸乳、あるいは同一の組成であるがプロバイオティクスを含まない偽薬製品を10日間与えた。マウスは、投与の開始時に6〜8週齢であった。プロバイオティクスが与えられたグループは、各グループにおいて7匹のマウスを含み、偽薬グループは5匹の動物から成った。プロバイオティクス微生物は、1×10E8 CFU/mlの濃度で製品に添加され、細菌の数は給餌期間中、製品中で安定であった。マウスは、2つの標準的な1日投与量の製品が与えられ、1つは経口強制給餌により与えられ、1つは舌下注入により与えられた。両方のプロバイオティクス細菌は、消化管の通過の際も生き残り、マウスの小腸及び大腸において相当な数で存在した。プロバイオティクス製品及び偽薬製品に加えて、マウスは随意に精製成分食事にアクセスした(Research Diets Inc.,New Jersey,USA からのD12450B)。毎日の食事摂取量を、乳酸菌株を受けるマウスの2つのグループとマウスの偽薬グループとの間で比較した。これらの製品は、マウスにより十分に許容された。
【0023】
第二の部分の給餌期間中、偽薬製品を受けるグループと比較して、食事摂取量は、プロバイオティクスが与えられた動物のグループにおいて顕著に減少した。図2を参照のこと。
【0024】
4)マウスにおける腹部脂肪の蓄積
正常フローラマウスは、LMG P−17806を含む酸乳プロバイオティクス製品又は同じ組成であるがプロバイオティクスを含まない偽薬製品のいずれかが与えられ、或いは酸乳を含まない2つの他のグループと同じ飼料が与えられた対照グループとされた。選ばれたマウス系統は、食餌誘導性肥満に対して感受性のC57B16(チャールズ・リバー)であった。異なるグループに含まれる動物の数は、酸乳が与えられたグループはそれぞれ15匹であり、対照グループは3匹であった。これらのマウスは、それらが9週齢のときに試験に導入された。プロバイオティクス細菌の数は、1×10E8 CFU/mlであり、マウスは、週に5日、合計で12週間随意に製品を食べることが許された。急速な体重増加のために、マウスには、高脂肪食餌(最初の5週間は、36%の脂肪を含むResearch Diets Inc.New Jersey,USAからのD12309、その後、試験の残りの週は、同一の会社からのD12492(35%の脂肪))が給餌された。12週間後に、マウスは屠殺され、体重増加、食物消費量及び腹部脂肪の量に関するデータが分析された。酸乳製品が与えられたマウスは、酸乳を受けていない対照マウスよりも体重増加が少なかった。プロバイオティクスを含む酸乳が与えられたマウスも、プロバイオティクスを含まない酸乳を受けたグループ及び酸乳を全く受けていない対照グループと比較して、腹部脂肪の蓄積が低かった。
【0025】
5)マウスにおける遺伝子発現
Swiss Webster系統の無菌で正常フローラのマウスに、LMG P−17806又はNCFB 1748のいずれかを含む酸乳、あるいは同一の組成であるがプロバイオティクスを含まない偽薬製品を10日間与えた。マウスは、投与の開始時に6〜8週齢であった。プロバイオティクスが与えられたグループは、各グループにおいて6匹のマウスを含み、偽薬グループは4匹の動物から成った。プロバイオティクス微生物は、1×10E8 CFU/mlの濃度で製品に添加され、細菌の数は給餌期間中、製品中で安定であった。マウスは、毎日経口強制給餌により製品が与えられた。試験期間中、マウスは随意に精製成分食事にアクセスした(Research Diets Inc.,New Jersey,USA からのD12450B)。両方のプロバイオティクス細菌は、消化管中の通過を生き残り、マウスの小腸及び大腸中で相当な数で存在した。マウスは屠殺され、小腸における遺伝子発現を、オリゴヌクレオチドマイクロアレイ技術により分析した。免疫系への予想された効果に加えて、エネルギー代謝及び恒常性に関連する多くの遺伝子の発現への予想されない効果が、2つのプロバイオティクスグループと比較して、偽薬グループにおいて異なることが見出された。発現の顕著な変化を示す遺伝子は、Scd1、Acrp30、Adn、Thrsp、Car3及びApoa−4であり、それらの全ては、偽薬グループと比較して、プロバイオティクスグループにおいて上方制御され、Retnlbはプロバイオティクスグループにおいて下方制御された。差次的遺伝子発現のパターンは、用いられたプロバイオティクス系統に対して非常に似ていた。無菌マウスにおけるアジプシン(Adn)、アディポネクチン(Acrp 30)、炭酸脱水酵素3(Car3)及びレジスチン様ベータ(Retnlb)遺伝子を、定量的リアルタイムPCR技術により確認した。図3を参照のこと。図4は、定量的リアルタイムPCR法により確認した正常フローラコロニー形成マウスにおけるアポリポタンパク質A−IV(Apoa4)の発現レベルを示す。
【0026】
6)用量
上記の異なる実験におけるプロバイオティクス細菌の個々の株の全用量は、1×10E8〜1×10E9 CFU(マウスの実験)及び2.5×10E8〜2.5×10E10(ヒトの実験)であった。この用量は、部分で又は日用量で投与される必要がある。これは、200〜500mlの量で消費されるヒト用の飲料は、有効性のために0.5×10E6〜1.25×10E8 CFU/mlの個々の株を含む必要があり、カプセルは、カプセル中に約1gの含量で全量の細菌(すなわち、1×10E8〜2.5×10E10)を含む必要があることを意味する。最も高い濃度の細菌については、細菌は凍結乾燥又は噴霧乾燥により濃縮される必要がある。
【0027】
7)製品の調製
プロバイオティクス細菌は、ミルク、シリアル又はフルーツをベースとした製品に添加される必要がある。細菌は、濃縮物、例えば凍結乾燥として添加され、全てのツリー・マトリクス(tree matrix)において生存性が分析された。ミルクベース及びシリアルベースの製品中で、生存性は非常に優れていた。フルーツベースの製品中では、生存性はフルーツのタイプに影響される。凍結乾燥粉末の場合には、水分活性及び酸素への曝露に関して注意が必要である。製品製造からの結果は、表1において見ることができる。
【0028】
異なる種類の培養製品の製造のために、プロバイオティクス細菌は、他の乳酸菌と共にミルクベースの製品に添加することもできる。この環境において、プロバイオティクス細菌は増殖することができ、それらの製品中の低い最終pHの優れた生存性を与える酸環境にも十分に順応するだろう。製品製造からの結果は、表1において見ることができる。
【0029】
表1.百万CFU/gとして測定した異なる製品マトリクス中のプロバイオティクス細菌の生存性。製品は8℃で貯蔵した。
【表1】

【0030】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0031】
(原文記載なし)
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
体重増加の抑制、肥満の予防、満腹の増大、飽食の延長、食物摂取の軽減、脂肪蓄積の軽減、エネルギー代謝の改善、インスリン感受性の増強、肥満の処置及びインスリン不感受性の処置に使用される、食品、飼料、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品の製造のための、プロバイオティクス細菌の使用であって、前記プロバイオティクス細菌が、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)F19(LMG P−17806)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)NCFB 1748又はビフィドバクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lactis)Bbl2の少なくとも1つであることを特徴とする前記使用。
【請求項2】
ミルク、シリアル又はフルーツの少なくとも1つを含んで成る組成物又はそれから得られる組成物中での請求項1の使用。
【請求項3】
食品、飼料、栄養補助食品、栄養製品、自然療法、医薬活性製剤及び医薬品として使用される製品中での請求項1に記載の使用。

【公表番号】特表2009−511469(P2009−511469A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534487(P2008−534487)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001117
【国際公開番号】WO2007/043933
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(508104282)
【Fターム(参考)】