説明

脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法

【課題】本発明は、着色が少なく、熱安定性が良好で、経時による色相の変化が少ない脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】尿素の存在下で、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させることで、色相の優れた、熱安定性の良好な、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、着色が少なく色相に優れた、熱安定性が良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、界面活性剤、繊維処理剤、殺菌剤、農薬展着剤、帯電防止剤、塗膜表面処理など、様々な分野において利用されている。特に、脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物は、界面活性剤並びにその原料として広く使用されている。
【0003】
一般的に、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、アルカリ触媒の存在下において脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加させて得られる。しかしながら、これまでの脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、色相が悪く、さらにアルキレンオキサイドの付加モル数が増加するにつれて、着色が顕著になるといった問題がある。また、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は熱安定性が悪く、色相の良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物であっても、経時的に着色が進行するという問題もある。これらの問題から、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、色相を重要視する分野において使用が避けられており、使用分野が制限されてきた。
【0004】
これらの問題を解決するために、低温でエチレンオキサイドを付加させる方法(特許文献1)、金属酸化触媒または酸触媒を用いる方法(特許文献2)、触媒としてテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(またはクロライド)を用いる方法(特許文献3)などがこれまでに提案されている。しかしながら、特許文献1および2に記載の方法では、アルキレンオキサイドの付加モル数が増加するにつれ、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の色相の改善は不十分となる。また、特許文献3に記載の方法では、製造直後の色相および熱安定性は改善されているが、熱安定性試験により着色が見られており、色相が重要とされる分野へ展開するには十分でない。すなわち、色相および熱安定性について、十分満足のいく脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物はこれまで得られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−96186号公報
【特許文献2】特開2005−154370号公報
【特許文献3】特開2007−262251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、アルキレンオキサイド付加モル数が多く、色相が良好で、熱安定性が高く、経時による色相の変化が少ない脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態は、尿素の存在下で、下記化学式1または化学式2で表される脂肪族アミンに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加反応させる工程を含む、下記化学式3または化学式4で表される脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の製造方法である。
【0008】
【化1】

【0009】
式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、AO、AOおよびAOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1を表す。
【0010】
【化2】

【0011】
式中、R、RおよびR、AO、AOおよびAO、並びにp、qおよびrは、上記と同様の定義であり、x、yおよびzは、それぞれ独立して、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2≦p+x≦100、3≦q+r+y+z≦100を満たす。
【0012】
本発明の他の形態は、色相がAPHA(ハーゼン単位色数)300未満である化学式3または化学式4で表される脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、アルキレンオキサイド付加モル数が多く、色相が良好で、熱安定性が高く、経時による色相の変化が少ない脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物およびその製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0015】
本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の製造方法では、尿素の存在下で、下記化学式1または化学式2で表される脂肪族アミンに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加反応させる。これにより、色相の優れた、熱安定性の良好な下記化学式3または化学式4で表される脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
まず、本発明で用いられる原料である脂肪族アミン、アルキレンオキサイドについて、説明する。
【0019】
本発明で用いられる脂肪族アミンは、下記化学式1または化学式2で表される。
【0020】
【化5】

【0021】
化学式1または化学式2において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表す。炭素数1〜24のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、ノナデシル、イコシル、ヘンイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、オクタデセニル、オクタデカジエニルなどの直鎖または分岐の、飽和または不飽和のアルキル基が挙げられる。また、上記のアルキル基の混合物である、牛脂等の動物油や、ヤシ油、パーム油、大豆油等の植物油等から誘導されたアルキル基およびそれらを水素添加したアルキル基もR、RおよびRに含まれる。本発明において、R、RおよびRは、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イコシルなどの炭素数4〜20のアルキル基、および硬化牛脂、ヤシ油、硬化パーム油などの動植物由来のアルキル基が好ましく、ブチル、オクチル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどのアルキル基、および硬化牛脂、ヤシ油などの動植物由来のアルキル基がさらに好ましい。
【0022】
化学式1または化学式2において、AO、AOおよびAOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレン、オキシイソブチレンなどの直鎖または分岐のオキシアルキレン基が挙げられる。このとき、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1である。p、qおよびrがそれぞれ0のとき、(AO)、(AO)および(AO)は、それぞれ単結合を表す。化学式1または化学式2において、p、qおよびrが1のとき、AO、AOおよびAOは、前述したオキシアルキレン基を表す。
【0023】
上述の説明からも明らかなように、本発明においては、すでにアルキレンオキサイドが付加した脂肪族アミン(以下、「アルキレンオキサイド付加−脂肪族アミン」とも称する。)を原料として用いてもよいのである。すなわち、化学式1および化学式2において、p、qおよびrがそれぞれ1の場合がこれに相当する。より具体的には、化学式1においては、pは1のとき、アルキレンオキサイド1モル付加物を表し(実施例6を参照)、化学式2においては、qおよびrがそれぞれ1のとき、アルキレンサイド2モル付加物を表す。他の観点から、本発明の色相の優れた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を達成するために、原料として使用する脂肪族アミンおよびアルキレンオキサイド付加−脂肪族アミンは着色の少ない、色相に優れたものであることが好ましい。そのため、原料として用いる脂肪族アミンは、色相がAPHA150未満が好ましく、APHA100未満がさらに好ましく、APHA50未満が特に好ましい。さらに、アルキレンオキサイド付加−脂肪族アミンにおいても、色相に優れていることが好ましい。上述したように、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイド付加モル数を第2級アミンの場合は1モル付加物までとし、第1級アミンの場合は2モル付加物までとしたのはこのためである。かような1〜2モル付加物が原料として用いられうる程度に色相に優れるのは、アミンの水素原子へのアルキレンオキサイドの付加反応は速やかに進行するため、着色の原因となりやすい触媒を使用せずに原料が合成されうるためである。原料として用いるアルキレンオキサイド付加−脂肪族アミンとしても、色相はAPHA150未満が好ましく、APHA100未満がさらに好ましく、APHA50未満が特に好ましい。
【0024】
化学式1または化学式2において、AO、AOおよびAO、並びにp、qおよびrは、(AO)、(AO)および(AO)としては、単結合、オキシエチレン、オキシプロピレン、オキシブチレンが好ましく、単結合、オキシエチレンがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明で用いられる脂肪族アミンは、化学式1または化学式2で表されるものであれば、混合物であってもよい。
【0026】
本発明で用いられる炭素数2〜4のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドが挙げられ、1種または2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドが好ましく、エチレンオキサイドがさらに好ましい。また2種以上のアルキレンオキサイドを用いる場合、ブロック状に付加してもランダム状に付加してもよい。
【0027】
続いて、前記脂肪族アミンに前記アルキレンオキサイドを付加反応させる工程について説明する。
【0028】
本発明において、前記付加反応を、尿素の存在下で行うことで、色相の優れた、熱安定性の良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。
【0029】
本発明で用いられる尿素は、化学式(HN)C=Oで表される。
【0030】
本発明において、前記付加反応は、尿素の量が多いほど、着色の少ない色相に優れた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物が得られる。そのため、色相の優れた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得たい場合は、好ましくは脂肪族アミン100質量%に対して5〜20質量%、さらに好ましくは10〜20質量%の尿素の存在下で行うとよい。しかしながら、尿素の量が多くなると、尿素が分解した際に生じるガスにより、反応系内の圧力が上がってしまうため、付加反応の進行が遅くなる場合がある。そのため、付加反応の進行のしやすさを考慮すると、脂肪族アミン100質量%に対して0.1〜10質量%の尿素の存在下で付加反応を行うのが好ましい。さらに好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは1.0〜5質量%である。前記付加反応において、尿素を0.1質量%以上添加することで、色相の優れた、熱安定性の良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。また、尿素を10質量%添加することで、十分に色相に優れた、熱安定性の良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。
【0031】
本発明において、前記脂肪族アミンへの前記アルキレンオキサイドの付加モル数は、得られる脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の付加モル数で表される。すなわち、化学式1で表される脂肪族アミンを用いた場合、pが0のとき、脂肪族アミン1モルに対して、2〜100モル付加し、pが1のとき、1〜99付加し、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物として、2〜100付加物が得られる。このとき、得られる脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物として、2〜60付加物が好ましい。
【0032】
また、化学式2で表される脂肪族アミンを用いた場合、pが0のとき、脂肪族アミン1モルに対して、3〜100モル付加し、pが1のとき、1〜98付加し、脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物として、3〜100付加物が得られる。このとき、得られる脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物として、3〜60付加物が好ましい。
【0033】
このとき、付加モル数は、付加反応の際に添加するアルキレンオキサイドの量で決定される。得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、原料や副生成物などの不純物を含有していないこと、アミン純度が理論値と近似していることから、反応が理論値と近似して進行していることがわかる。
【0034】
本発明の製造方法によるアルキレンオキサイド付加反応は、オートクレーブ等の圧力反応器で、従来の操作手順および反応条件に準じて行うことができる。
【0035】
本発明において、前記付加反応は、0.5MPa以下の圧力で行うのが好ましい。さらに好ましくは、0.1〜0.45MPaである。0.1〜0.5MPaの圧力で反応を行えば、反応の進行が十分に効率的である。
【0036】
本発明において、前記付加反応は、50〜120℃の温度で行うのが好ましく、さらに好ましくは60〜110℃、特に好ましくは80〜105℃である。温度が50℃未満では反応の進行が遅くなる場合があり、生産性が低下するおそれがある。また、脂肪族アミンへのアルキレンオキサイド付加反応は120℃を超えると着色するおそれがあるため、温度は120℃以下で行うのが好ましい。
【0037】
本発明において、前記付加反応は、触媒を用いて行うことができる。触媒を用いて付加反応を行った場合、反応の進行が効率的である。触媒としては、とくに制限されないが、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシドなどのアルカリ金属触媒や第3級アルキルアミンが好ましく、触媒効果の観点から、アルカリ金属水酸化物が特に好ましい。
【0038】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、水酸化ルビジウムなどが好適に使用できる。アルカリ金属水酸化物の添加量としては脂肪族アミン100質量%に対して0.01〜5質量%が適当である。好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。
【0039】
アルカリ金属アルコキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、セシウムメトキシド、セシウムエトキシドなどが好適に使用できる。アルカリ金属アルコキシドの添加量としては脂肪族アミン100質量%に対して0.01〜5質量%が適当である。好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。触媒としてアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドを使用した場合、アルキレンオキサイドの付加反応後にこれらの触媒を中和することが好ましい。
【0040】
第3級アルキルアミンとしては、炭素数が1〜12のアルキル基、ヒドロキシアルキル基が置換した第3級アミンが好適に使用できる。具体的にはトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジエチルメチルアミンなどが挙げられ、触媒効果の点からトリエチルアミン、トリプロピルアミンなどがより好適に使用できる。第3級アルキルアミンの添加量としては脂肪族アミン100質量%に対して0.01〜5質量%が適当である。好ましくは0.05〜2質量%であり、より好ましくは0.1〜1質量%である。第3アルキルアミンを使用した場合、付加反応後にこれらの触媒を蒸留などの方法で除去してもよい
上述したように、触媒としてアルカリ金属水酸化物またはアルカリ金属アルコキシドを使用した場合、付加反応後に、これらの触媒を失活するため、酸により中和することが好ましい。中和する場合は、酸として、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸などの無機酸や、ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などを用いることができる。中和後の生成する塩の溶解性の観点から、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、ホウ酸などの無機酸が好ましく、リン酸、硫酸が特に好ましい。
【0041】
さらに、本発明において、中和後、中和により生じた水などを除去するため、常圧または減圧下で、脱水を行うのが好ましい。脱水は、80〜150℃の温度で行うのが好ましく、さらに好ましくは90〜130℃の温度で行うのが好ましい。脱水後の水分量は0.1%以下が好ましく、さらに好ましくは0.05%以下である。また、中和・脱水後、反応系内の固形分を濾過により除去することが好ましい。これらの固形分は、触媒と酸の中和により生じる塩が主であり、これらの塩を除去することにより、触媒由来の金属を除去することができる。濾過は、吸引濾過、減圧濾過、加圧濾過のいずれであっても、固形分を除去できればよく、とくに制限されない。脱水後に濾過を行うことで効果的に塩の除去ができるが、その順序に制限はなく、濾過後に脱水を行ってもよい。以上のように、濾過により触媒を除去したほうが好ましいが、中和・濾過を省略した場合においても、本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、色相に優れており、熱安定性が良好である。
【0042】
本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の製造方法は、尿素の存在下で、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させる工程を含むことに特徴を有するが、付加反応を2段階とし、2段階目で尿素を添加してもよい。
【0043】
ここで、2段階の付加反応とは、例えば、1段階目において、付加モル数の少ない脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得た後、2段階目において、さらにアルキレンオキサイドを付加させて、付加モル数の多い脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得る方法である。このとき、化学式1で表される脂肪族アミンを用いた場合、1段階目において、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを1モル付加した後、2段階目に1〜99モル付加させて、2〜100モル付加物の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物とするのが好ましい。また、化学式2で表される脂肪族アミンを用いた場合、1段階目において、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを2モル付加した後、2段階目に1〜98モル付加して、3〜100モル付加物の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物とするのが好ましい。
【0044】
この場合、付加反応の1段階目は、触媒の有無に関わらず付加反応が十分進行するため、触媒は添加してもしなくてもよい。1段階目の付加反応は、50〜120℃、0.1〜0.5Mpaで行うのが好ましい。ここで、前記の範囲であれば、本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の色相および熱安定性に影響はない。
【0045】
次に、付加反応の2段階目は、尿素の存在下で、さらにアルキレンオキサイドを付加させて、最終的に、付加モル数の多い脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得る。この際、尿素を添加して行うことで、得られる脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の色相および熱安定性を優れたものとすることができる。また、付加反応の2段階目は、触媒存在下で行うのが好ましい。触媒としては、前述したものが適宜使用できる。付加反応の2段階目は、50〜120℃で行うのが好ましく、さらに好ましくは80〜105℃である。また、圧力は0.1〜0.5Mpaで行うのが好ましい。
【0046】
以上のように、尿素の存在下で付加反応を行うことで、色相に優れた、熱安定性の良好な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物が得られる。本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、下記化学式3または化学式4で表される。
【0047】
【化6】

【0048】
化学式3または化学式4において、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表す。これらについては、原料として用いた、化学式1または化学式2で表される脂肪族アミンのR、RおよびRに準ずるため、説明を省略する。
【0049】
化学式3または化学式4において、AO、AOおよびAOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。このとき、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1である。これらについても、原料として用いた、化学式1または化学式2で表される脂肪族アミンのAO、AOおよびAO、並びにp、qおよびrに準ずるため、説明を省略する。
【0050】
化学式3または化学式4において、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表す。これは、原料として用いたアルキレンオキサイドに準ずる。また、x、yおよびzは、それぞれ独立して、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2≦p+x≦100、3≦q+r+y+z≦100を満たす。このとき、前述したように、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1である。p、qおよびr、並びにx、yおよびzは、好ましくは2≦p+x≦60、3≦q+r+y+z≦60である。
【0051】
本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、色相がAPHA300未満であり、色相に優れている。本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物において、色相は、好ましくはAPHA250未満、さらに好ましくはAPHA200未満である。
【0052】
さらに、本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、80℃で14日間保存経過後も、色相がAPHA300未満であり、着色がほとんど認められない。すなわち、熱安定性も良好であるため、長期にわたって色相の変化がない。本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物において、80℃で14日間保存経過後の色相は、好ましくはAPHA250未満、さらに好ましくはAPHA200未満である。
【0053】
本発明において、色相を表すAPHAまたはガードナーは日本工業規格JIS K 1557−5(JIS K 0071−1または2)に基づき測定を行うことができる。
【0054】
さらに、本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物のアミン純度は、好ましくは95.0質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。また、本発明の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の金属含有量は、好ましくは金属含有量0.1〜500質量ppm、さらに好ましくは0.1〜100質量ppm、特に好ましくは0.1〜50質量ppmである。
【0055】
本発明において、アミン純度は中和滴定によるアミン価測定を行うことで得られる。金属含有量の測定は、イオンクロマトグラフィー(IC)を用いて行うことができる。また、イオンクロマトグラフィーを用いて、尿素由来の副生成物として考えられるアンモニアおよび二酸化炭素の定量分析も可能である。さらに、液体クロマトグラフィーを用いて、原料、副生成物、目的物の定量分析が可能である。
【0056】
本発明の製造方法で得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は、色相に優れ、また熱安定性が良好で、色相が長期にわたって変化しないことから、帯電防止剤、繊維処理剤、塗料用改質剤などに好適に使用できる。特に、着色が原因で従来は使用が避けられていた分野でより好適に使用できる。
【0057】
なお、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲の記載に基づいて定められるべきである。例えば、本発明の一形態である脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の製造方法の技術的範囲は、製造された脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の色相(例えば、APHA)その他の物性によって限定されるべきではない。また、本発明の他の形態である脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の技術的範囲は、上述した製造方法によって得られたもののみに限定されることはなく、その他の製造方法によって得られたものもまた、含みうる。
【実施例】
【0058】
以下に、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[色相の測定]
日本工業規格JIS K 1557−5に従い、実施例および比較例で得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物について、色相(APHAまたはガードナー)を測定した。
【0060】
なお、色相値のAPHA300がガードナー色数1とほぼ同等であり、APHA300以下はガードナー色数1以下に相当する。
【0061】
[熱安定性試験]
空気が入らない密閉容器に、実施例および比較例で得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物100gを入れ、窒素置換を行い密閉した。この密閉容器を80℃の恒温槽に静置して14日後に色相を測定した。
【0062】
<実施例1>
ラウリルアミン(ファーミン20D、花王株式会社製)185g(1.0モル)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから100℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド87.7g(1.99モル)を、オートクレーブ内圧が0.4MPa以上にならないようにして4時間かけて徐々に圧入した。この時、約1.5時間の誘導期間(圧入後に圧力低下が見られるまでの時間)が見られた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.3%)と尿素2.73g(ラウリルアミンに対して1.5%)を添加し、乾燥窒素で、置換してから110℃に昇温、窒素流入下で1時間脱水した。この時の水分は0.03%であった。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物479gは、アミン純度 99.6%(アミン価113.2KOH/mg(理論アミン価113.7KOH/mg))であった。また、このラウリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物について、イオンクロマトグラフィーを行ったところ、金属含有量 44ppmであった。さらに、液体クロマトグラフィー(蒸発光散乱検出器、カラム:LiChroCART250−4.0 LiChrospher100NH)を行ったところ、シングルピークが得られ、原料および副生成物のピークは見られなかった。また、このラウリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物の色相はガードナー1以下(APHA50)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0063】
<実施例2>
実施例1と同じ条件で得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.3%)と尿素8.2g(ラウリルアミンに対して4.4%)を添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド528g(12.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように5時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド14モル付加物778gの色相はガードナー1以下(APHA40)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0064】
<実施例3>
オクチルアミン(ファーミン08D、花王株式会社製)129g(1.0モル)を500mlオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから100℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド87.7g(1.99モル)をオートクレーブ内圧が0.4MPa以上にならないようにして4時間かけて徐々に圧入した。この時約1時間の誘導期間が見られた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。得られたオクチルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物216gに水酸化カリウムを0.43g(オクチルアミンに対して0.3%)と尿素2.2g(オクチルアミンに対して1.7%)を添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.42gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたオクチルアミンエチレンオキサイド7モル付加物479gの色相はガードナー1以下(APHA50)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0065】
<実施例4>
硬化牛脂アミン(ファーミン86T、花王株式会社製)259g(1.0モル)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから100℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド87.7g(1.99モル)をオートクレーブ内圧が0.4MPa以上にならないようにして4時間かけて徐々に圧入した。この時約1.5時間の誘導期間が見られた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。得られた硬化牛脂アミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物346gに水酸化カリウムを0.69g(硬化牛脂アミンに対して0.3%)と尿素10.4g(硬化牛脂アミンに対して4.0%)を添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド528g(12.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように5時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.68gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られた硬化牛脂アミンエチレンオキサイド14モル付加物857gの色相はガードナー1以下(APHA70)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0066】
<実施例5>
ステアリルアミン(ファーミン80、花王株式会社製)270g(1.0モル)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから100℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド87.7g(1.99モル)をオートクレーブ内圧が0.4MPa以上にならないようにして4時間かけて徐々に圧入した。この時約1.5時間の誘導期間が見られた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。得られたステアリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物356gに水酸化カリウムを0.71g(ステアリルアミンに対して0.3%)と尿素3.56g(ステアリルアミンに対して1.3%)を添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.7gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたステアリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物563gの色相はガードナー1以下(APHA40)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0067】
<実施例6>
ジブチルアミンにエチレンオキサイドを1モル付加したジブチルエタノールアミン(アミノアルコール2B、日本乳化剤株式会社製)173.3g(1.0モル)と水酸化カリウムを0.35g(ジブチルエタノールアミンに対して0.2%)と尿素5.20g(ジブチルエタノールアミンに対して3.0%)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド396g(9.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.34gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたジブチルアミンエチレンオキサイド9モル付加物567gの色相はガードナー1以下(APHA80)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0068】
<実施例7>
ラウリルアミン(ファーミン20D、花王株式会社製)185g(1.0モル)と水酸化カリウム0.55g(ラウリルアミンに対して0.3%)と尿素5.56gを1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で、置換してから105℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド616g(14.0モル)をオートクレーブ内圧が0.4MPa以上にならないようにして6時間かけて徐々に圧入した。この時、約1.0時間の誘導期間が見られた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド14モル付加物797gの色相はガードナー1以下(APHA50)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0069】
<実施例8>
実施例1と同じ条件で得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.3%)と尿素27.3g(ラウリルアミンに対して14.7%)を添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド528g(12.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように11時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド14モル付加物766gの色相はガードナー1以下(APHA20)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0070】
<実施例9>
実施例2と同じ条件でエチレンオキサイドを圧入した。付加反応後、中和・濾過を省略し、エチレンオキサイド14モル付加物を得た(中和・濾過なし)。このエチレンオキサイド14モル付加物の色相は、ガードナー1以下(APHA40)であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0071】
<比較例1>
実施例1と同じ条件で得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.2%)添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を130℃に上げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後130℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物の色相はガードナー16であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0072】
<比較例2>
実施例1と同じ条件で得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.2%)添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように5時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド7モル付加物の色相はガードナー9であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0073】
<比較例3>
実施例1と同じ条件で得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物273gに水酸化カリウムを0.55g(ラウリルアミンに対して0.2%)添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド528g(12.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように7時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.54gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド14モル付加物の色相はガードナー15であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0074】
<比較例4>
実施例3と同じ条件で得られたオクチルアミンのエチレンオキサイド1.99モル付加物216gに水酸化カリウムを0.22g(オクチルアミンに対して0.1%)添加し、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した後、同温度で窒素流入下1時間の脱水を行った。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように7時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.42gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたオクチルアミンエチレンオキサイド7モル付加物の色相はガードナー8であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0075】
<比較例5>
ジブチルアミンにエチレンオキサイドを1モル付加したジブチルエタノールアミン(アミノアルコール2B、日本乳化剤株式会社製)173.3g(1.0モル)と水酸化カリウムを0.35g(ジブチルエタノールアミンに対して0.2%)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから110℃に昇温した。窒素流入下で1時間脱水した。温度を100℃に下げてからエチレンオキサイド396g(9.0モル)をオートクレーブ内圧0.4MPa以上にならないように3時間かけて圧入した。圧入終了後100℃でオートクレーブ内圧低下が見られなくなるまで30分反応を行った。温度を50℃まで下げてから89%リン酸0.34gで中和を行った。105℃まで昇温した後、同温度で1時間脱水した後、濾過により触媒の除去を行った。得られたジブチルアミンエチレンオキサイド9モル付加物568gの色相はガードナー8であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0076】
<比較例6>
特開2007−262251号公報の実施例3に準拠
ラウリルアミン(ファーミン20D、花王株式会社製)185g(1.0モル)を1Lオートクレーブに仕込み、乾燥窒素で置換してから減圧にし、95℃に昇温した。同温度にてエチレンオキサイド88g(2.0モル)をオートクレーブ内圧が0.3Mpa以上にならないようにして3時間かけて徐々に圧入した。この時、約1.0時間の誘導期間がみられた。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。得られたラウリルアミンエチレンオキサイド2.0モル付加物にテトラメチルアンモニウムヒドロキシド25%水溶液2.0g(ラウリルアミンエチレンオキサイド2.0モル付加物に対して純分0.183%)を空気が混入しないように添加し、95℃にて1時間減圧脱水した。温度を70℃に下げてからエチレンオキサイド220g(5.0モル)をオートクレーブ内圧が0.2Mpa以上にならないようにして温度を70〜90℃に温度コントロールし5時間かけて圧入した。圧入終了後、内圧の低下が見られなくなるまで30分反応を行った。さらに130〜160℃で1時間減圧(20torr)処理を行った。得られたラウリルアミンのエチレンオキサイド7モル付加物の色相はガードナー1であった。得られた化合物の評価を表1に示す。
【0077】
【表1】

【0078】
表1の結果から、実施例において、色相の優れた、熱に対しても色相が変化しない、安定な脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物が得られているのがわかる。
【0079】
実施例2および実施例8は、尿素の量のみを変えて行った反応である。尿素量が多い実施例8は、実施例2に比べて、色相の優れた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物が得られている。また、実施例2は、実施例8に比べてAPHA値が高いが、反応時間は短く、効率的であることがわかる。また、付加反応後に触媒の除去工程である中和・濾過を省略した実施例9においても、色相は良好で、80℃で14日保存した後においても着色の進行がほとんど認められない。
【0080】
一方、比較例では尿素を添加していないため、得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は着色しており、色相は全てAPHA300以上となっている。さらに、熱試験後は色相の悪化が見られ、熱安定性が悪いことがわかる。
【0081】
以上のことから、本発明の製造方法で得られる脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物は製造直後の色相がAPHA300未満であり、80℃で14日保存した後の色相もAPHA300未満を保持していることが特徴である。一方、比較例に示す従来公知の製造方法により得られた脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物では、製造直後でも着色している。
【0082】
以上のように、本発明の製造方法を採用することで、すなわち、尿素の存在下で、脂肪族アミンにアルキレンオキサイドを付加反応させることで、着色が少なく、熱安定性のよい脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素の存在下で、下記化学式1または化学式2で表される脂肪族アミンに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加反応させる工程を含む、下記化学式3または化学式4で表される脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物の製造方法。
【化1】

式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、AO、AOおよびAOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1を表す。
【化2】

式中、R、RおよびR、AO、AOおよびAO、並びにp、qおよびrは、上記と同様の定義であり、x、yおよびzは、それぞれ独立して、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2≦p+x≦100、3≦q+r+y+z≦100を満たす。
【請求項2】
前記尿素の反応系における存在量が、前記脂肪族アミン100質量%に対して0.1〜10質量%である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記付加反応を、50〜120℃の温度で行う、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記付加反応を、0.5MPa以下の圧力で行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記付加反応を、アルカリ金属触媒の存在下で行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記付加反応後の反応混合物に、無機酸を添加して中和を行った後、濾過により精製を行う、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
色相がAPHA300未満である下記化学式3または化学式4で表される脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物。
【化3】

式中、R、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1〜24のアルキル基を表し、AO、AOおよびAOは、それぞれ独立して、炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、p、qおよびrは、それぞれ独立して、0または1であり、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を表し、x、yおよびzは、それぞれ独立して、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、2≦p+x≦100、3≦q+r+y+z≦100を満たす。
【請求項8】
窒素雰囲気下、80℃で14日間保存した場合の色相がAPHA300未満である、請求項7に記載の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物。
【請求項9】
アミン純度95.0質量%以上、金属含有量0.1〜500質量ppmである、請求項7または8に記載の脂肪族アミンアルキレンオキサイド付加物。

【公開番号】特開2011−26228(P2011−26228A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172356(P2009−172356)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(390014856)日本乳化剤株式会社 (26)
【Fターム(参考)】