説明

脂肪酸の乳化物製造方法およびキャスト塗工紙の製造方法

【課題】水不溶性の乳化物を容易にかつ高い生産性で得られる脂肪酸の乳化物製造方法、及びこの製造方法で得られた乳化物を用いるキャスト塗工紙の製造方法を提供する。
【解決手段】水不溶性の脂肪酸の乳化物製造方法であって、水中で前記脂肪酸に塩基を添加し、前記脂肪酸の塩基性塩水溶液を得る第1工程と、前記脂肪酸の塩基性塩水溶液に乳化剤を添加し、乳化剤含有塩基性塩水溶液を得る第2工程と、前記乳化剤含有塩基性塩水溶液に酸を添加し、前記脂肪酸の乳化物を得る第3工程を備えることを特徴とする乳化物製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸の乳化物製造方法、および該乳化物製造方法により得られた脂肪酸の乳化物を用いるキャスト塗工紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクの液滴を微細なノズルから射出し、被記録体表面上に付着させることにより画像を形成させるインクジェット記録方式は、記録時の騒音が少ないこと、フルカラー画像の形成が容易であること、高速記録が可能であること、および、他の印刷装置より記録コストが安価であることなどの理由により、端末プリンター、ファクシミリ、プロッタ、あるいは帳票印刷等で広く利用されている。
【0003】
インクジェット記録方式に用いる記録体の製造には、キャスト塗工方式が広く用いられている。キャスト塗工方式によれば、ドラム等の光沢面を湿潤状態の塗工層表面に写し取るため、光沢性に優れるキャスト塗工紙が得られる。
キャスト塗工方式における課題の一つに、キャストドラム上で乾燥させた用紙をドラムから離型させる適性、すなわち、離型性と呼ばれる適性がある。離型性が劣るとキャスト層表面がダメージを受け、光沢がなくなったり塗工層や紙が破れたりして、品質のみならず、生産性にも大きな影響を与える。そこで、キャスト塗工方式では、鏡面を写し取る塗工層に離型剤を含有させることが行われている。
【0004】
インクジェット記録方式に用いられるキャスト塗工紙には、記録印字された染料や顔料の色剤を定着する目的で、通常カチオン性の塗工層が設けられる。このようなインクジェット記録用キャスト塗工紙では、最表層であるキャスト塗工層もカチオン性の塗工層であることが好ましい。キャスト塗工層がカチオン性の場合には、カチオンの系にも添加できる物質、例えばカチオン変性したポリエチレンエマルジョン、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド等が使用されていた。
しかし、これらの物質は一般に離型性の効果がやや小さく、添加量が多いと離型性は良好となるが、逆にインクの吸収性が悪化し、充分な離型性と記録適性を両立させることは困難である。そこで、優れた離型性を確保するには、アニオン系の離型剤であるオレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸をカチオン性の塗工層でも容易に使えるようにすることが望まれている。
その場合、アニオン性である脂肪酸は、そのままでは、カチオン性の塗工層に安定して分散させることができないので、予め乳化物としてから、他の塗工層成分と混合することが行われている(特許文献1)。
【0005】
脂肪酸等の水不溶性物質の乳化物の製造方法は、物理的方法と化学的方法の二つに大別される。
前者の物理的方法は、物質に強いせん断力やずり応力を加えることにより微細な粒子を作る方法であり(例えば特許文献2)、後者の化学的方法は、界面活性剤等で保護されたコロイド粒子(球状ミセル)とする方法である(例えば特許文献3)。
化学的方法には転相乳化法、D相乳化法、可溶化転換法、HLB温度乳化法、ゲル乳化法等が挙げられる。
【0006】
転相乳化法は、まず乳化する油分に界面活性剤と少量の水を加え、強撹拌してW/O型のミセルを作り、次いで、強撹拌しながら水を加えていき、相を反転させてO/W型の乳化物を得る方法である。
D相乳化法は、水に界面活性剤と多価アルコールを加え、強撹拌しながら油分を添加していくと、D相と呼ばれる透明ゲルが得られる。これをさらに強撹拌しながら水を加えていくとO/W型の乳化物が得られる。
可溶化転換法は、水に界面活性剤と油分を加え、温度をかけながら強撹拌して可溶化状態とし、これを冷却してO/W型の乳化物を得る方法である。
HLB温度乳化法は、ノニオン系界面活性剤の曇点を利用して、水に曇点を持つノニオン系界面活性剤と油分を加え、曇点以上の温度で強撹拌してW/O型の乳化物を作り、次いで、強撹拌を続けながら系の温度を曇点以下に下げることでO/W型の乳化物を作る方法である。
ゲル乳化法は、水に化学構造上一定の条件を満たす界面活性剤と油分を加え、撹拌してゲルを作り、次いで、これに水を加えてW/O型の乳化物を作る方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−103915号公報
【特許文献2】特開2007−277181号公報
【特許文献3】特開2004−67939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、物理的方法により乳化物を得ようとする場合には特別な装置が必要である。また、製造のために要するエネルギー量が多い。特に、常温で固体の脂肪酸を微細粒子化するためには、多量のエネルギーが必要である。
また、化学的方法による乳化物の製造方法では、何れも強撹拌が必要である。そのため、製造のために要するエネルギー量が多い。また、強撹拌の過程で泡が立ちやすく、作業性が低いだけでなく、製造条件の制御が難しい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、脂肪酸の乳化物を容易にかつ高い生産性で得られる脂肪酸の乳化物製造方法、及びこの製造方法で得られた乳化物を用いるキャスト塗工紙の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
[1]水不溶性の脂肪酸の乳化物製造方法であって、水中で前記脂肪酸に塩基を添加し、前記脂肪酸の塩基性塩水溶液を得る第1工程と、前記脂肪酸の塩基性塩水溶液に乳化剤を添加し、乳化剤含有塩基性塩水溶液を得る第2工程と、前記乳化剤含有塩基性塩水溶液に酸を添加し、前記脂肪酸の乳化物を得る第3工程を備えることを特徴とする乳化物製造方法。
[2]脂肪酸が炭素数12〜30の直鎖脂肪酸である[1]に記載の乳化物製造方法。
[3]前記脂肪酸が、40〜85℃の融点を有する脂肪酸である[1]または[2]に記載の乳化物製造方法。
[4]前記乳化剤がノニオン性である[1]〜[3]の何れかに記載の乳化物製造方法。
[5]さらに、乳化物とされた脂肪酸を微細化する第4工程を備える[1]〜[4]の何れかに記載の乳化物製造方法。
[6][1]〜[5]の何れかに記載の乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層表面に、鏡面体の鏡面を転写する工程を備えることを特徴とするキャスト塗工紙の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の乳化物製造方法によれば、脂肪酸の乳化物を容易にかつ高い生産性で得ることができる。また、この製造方法で得られた乳化物を用いるキャスト塗工紙の製造方法によれば、塗工層がカチオン系かアニオン系かに関わらず、脂肪酸を、容易に離型剤として使用できる。そのため、特にインクジェット記録方式に用いる場合、充分な離型性と記録適性の両立が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<脂肪酸の乳化物製造方法>
本発明の乳化物製造方法は、乳化対象となる脂肪酸を以下の第1〜第3工程で処理するものである。本発明では、必要に応じて、更に第4工程を行ってもよい。
【0012】
[脂肪酸]
本発明で乳化対象となる脂肪酸は、水不溶性の脂肪酸であって、直鎖の飽和脂肪酸の場合は炭素数5以上の脂肪酸である。炭素数が大きくなり脂肪酸の粘度が高くなると、本発明を適用する利益が大きくなるので好ましい。特に、炭素数12以上の直鎖の飽和脂肪酸の様に、脂肪酸が常温下でペースト乃至固体状である場合は、一旦脂肪酸を液状化させて処理を行う本発明の乳化方法を適用する利益は大きい。なお、不飽和脂肪酸の場合は、さらに大きい炭素数でも常温で液体の場合があるが、このような場合でも本発明の乳化方法を用いることができ、乳化物の使用目的に応じて、適宜の不飽和脂肪酸に適用することができる。
一方、炭素数が大きすぎると、第1工程で水溶液とすることが困難になる。したがって、好ましい炭素数としては30以下である。さらに好ましい炭素数は24以下である。
【0013】
キャスト塗工紙の離型剤の働きは、乾燥したキャスト光沢層をドラムなどの表面から剥がすことである。具体的にはドラム表面上に、離型剤の多層膜を形成し、その中間でドラム側と紙側とに別れるようにすることが重要である。その場合、親油基部分に較べて親水基の近傍が余りに大きいと、ドラムの金属表面に離型剤の親水基が配列しても、親油基同士の間隔が充分に密にならず、親油基同士、親水基同士が交互に向き合った多層膜が形成され難くなるものと考えられる。キャスト塗工紙の離型剤として使用する場合には、脂肪酸は、親水基がコンパクトでなおかつ適度な親水性があるため好ましく用いられる。
【0014】
不飽和脂肪酸は、その炭素鎖中に二重結合を含み、分子が屈曲しているためか、飽和脂肪酸に較べてキャストドラム上に層状に配列し難いと考えられる。したがって、キャスト塗工紙の離型剤として使用する場合、直鎖の飽和脂肪酸が好ましい。キャスト塗工紙の製造ではキャストドラム表面の温度で離型剤を溶融させると、良好に離型性を発現させることができるため、離型剤として使用する脂肪酸の融点は40〜85℃であることが好ましく、50〜80℃であることがより好ましい。
直鎖の飽和脂肪酸の場合には、炭素数12〜22であると、融点は40〜85℃の範囲であるため、好ましい。また、不飽和脂肪酸の場合は、さらに大きい炭素数でも低融点であり、常温で液体の場合もあるが、このような場合でも離型剤の使用目的に応じて適宜選択し、組み合わせて使用したり、混合して使用することができる。
【0015】
総炭素数16〜18の脂肪酸は、キャスト塗工方式の離型剤として、特に好ましい。具体的には、ヘキサデカン酸(慣用名パルミチン酸、数値表現16:0)、9−ヘキサデセン酸(パルミトイル酸、16:1)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸、17:0)、オクタデカン酸(ステアリン酸、18:0)、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸、18:1(9))、11オクタデセン酸(バクセン酸、18:1(11))、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸、18:2(9,12))、9,12,15−オクタデカトリエン酸((9,12,15)リノレン酸、18:3(9,12,15))、6,9,12−オクタデカトリエン酸((6,9,12)リノレン酸、18:3(6,9,12,))、9,11,13−オクタデカトリエン酸((9,11,13)リノレン酸、18:3(9,11,13))等が例示される。これらの内、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、cis−9−オクタデセン酸が好ましく、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸が更に好ましく、オクタデカン酸が最も好ましい。
【0016】
[第1工程]
第1工程では、水中で脂肪酸に塩基を添加する。塩基の添加により脂肪酸の塩基性塩が生成する。脂肪酸の塩基性塩は、水溶液、若しくは、ミセルを形成して自己乳化したコロイド溶液となる。本発明では、コロイド溶液を含めて水溶液と称する。
第1工程で用いる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水等が例示される。アンモニア水は加熱により気化する欠点があるが、逆に、過剰なアルカリ成分が系に残りにくいという長所がある。本発明において特に好ましい塩基性物質はアンモニア水である。
【0017】
第1工程において、塩基と反応させるときの脂肪酸の濃度は、水100質量部に対して、2〜15質量部であることが好ましく、3〜10質量部であることがより好ましい。3質量部以上あれば、充分な濃度で乳化物を得ることができ、10質量部以下であれば、粘度が高くなりすぎることが無く、使用が容易である。
第1工程において、脂肪酸と反応させる塩基の量は1.0〜2.0当量が好ましく、1.1〜1.5当量がより好ましい。原理的には1.0当量で全て変換できるが、1.1〜1.2当量であると、反応が確実であるだけでなく、酸の使用量も抑制できるためさらに好ましい。
【0018】
脂肪酸が常温で液体の場合、水の中に塩基と脂肪酸を入れ、ホモジナイザー等で撹拌することで塩基性塩の水溶液が得られる。また、脂肪酸が常温で固体の場合、水の中に塩基と脂肪酸を入れ、ホモジナイザー等で撹拌しながら、その融点以上まで加温することで塩基性塩の水溶液が得られる。
第1工程は、脂肪酸を塩基で中和しながら水溶液を生成する工程であり、中和反応したものは順次溶解或いはミセル化していく。そのため、撹拌は全体を均一にする程度に留め、起泡しない程度に行うことが好ましい。
【0019】
[第2工程]
第2工程では、第1工程で得られた脂肪酸の塩基性塩水溶液に乳化剤を添加し、乳化剤含有塩基性塩水溶液を得る。
第2段階で添加する乳化剤としては、脂肪酸の塩基性塩水溶液がアニオン性であるため、カチオン性乳化剤を用いるのは適当でない。したがって、ノニオン性乳化剤またはアニオン性乳化剤を用いる。
また、キャスト塗工方式でインクジェット記録体を製造する際の離型剤として脂肪酸の乳化物を使用する場合、最終的にカチオンの系に添加することになるので、アニオン性の乳化剤を用いることも適当でない。したがって、キャスト塗工方式の離型剤として脂肪酸の乳化物を使用する場合の乳化剤はノニオン性であることが好ましい。
【0020】
乳化剤は、界面活性剤でもよいし、親水性部分と疎水性部分を有する水溶性高分子でもよい。
ノニオン系の界面活性剤としては、エーテル型やエステル型の界面活性剤が挙げられる。親水基としてエチレンオキサイド単位を持つエーテル型の界面活性剤は、曇点が存在する場合が多い。液温が曇点を越えると界面活性剤としての能力を失うが、本発明の場合、脂肪酸類は水溶性の塩の水溶液になっているため、液温を下げても析出・固化等を起こすことはなく、ほとんどのエーテル型界面活性剤が曇点を越える温度でも使用可能である。
ノニオン性の水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、メチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシエチルプロピルセルローズが挙げられる。
アニオン性の界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル燐酸ナトリウムが挙げられる。
アニオン性の水溶性高分子としては、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルローズが挙げられる。
【0021】
キャスト塗工方式の離型剤として脂肪酸の乳化物を使用する場合、ポリビニルアルコールのような水溶性高分子を選択すると、インク中の染料定着力や顔料の接着力等を増すことができるので好ましい。
本発明では、希望する特性に合わせて、各々の系に最適な界面活性剤や水溶性高分子を自由に選択することができる。
【0022】
第2工程において、添加する乳化剤の量は、乳化される脂肪酸の種類や、使用する乳化剤の種類などによって適宜調節される。脂肪酸の乳化物としての特性や起泡が少ない点から乳化剤量は少ないほうが好ましく、乳化物の安定性のために必要な量を超えて使用しないことが好ましい。一般に脂肪酸量に対して3〜50%であることが好ましく、5〜20%がより好ましい。
撹拌は、液を均一にする程度で充分であり、起泡しない程度の強さに留めることが好ましい。温度は、特に限定されないが、雲点が存在するノニオン系界面活性剤を使用する場合は曇点以下のほうが好ましい。
【0023】
[第3工程]
第3工程では、第2工程で得られた乳化剤含有塩基性塩水溶液に酸を添加する。酸としては、当該脂肪酸より強い酸を用いる。第2工程で得た水溶液に含まれる脂肪酸塩は加水分解されている。これに脂肪酸より強い酸を加え、中和すると、水に不溶性の脂肪酸が析出して乳化物が得られる。
第3工程で添加する酸としては、具体的には、硫酸、塩酸、酢酸、乳酸等が例示できる。塩酸、蟻酸、酢酸等の揮発性の酸は過剰分が気化して系外に出やすいため好ましい。中でも塩酸は異臭を持たず、広く一般的に使われる酸であるために安価で、最も好ましい。
第3工程において添加する酸の量は、第1工程で添加した塩基1当量に対して、1.0〜2.0当量であることが好ましく、1.1〜1.5当量であることがより好ましく、1.1〜1.2当量であることがより好ましい。
原理的には、1.0当量で全塩基性塩を脂肪酸として析出させることができるが、1.1当量以上とすれば、より確実に脂肪酸に変換できる。また、1.1〜1.2当量であれば、脂肪酸への変換を確実に行えると共に、最終的なpHの値を中性付近に近づけることができる。

【0024】
ホモジナイザー等で撹拌しながら酸性物質を点滴していくと、析出した脂肪酸は、周囲に乳化剤が存在するため、ただちに乳化剤によって保護されたコロイド粒子(球状ミセル)となり、乳化物が得られる。このように、析出した脂肪酸が共存する乳化剤によって逐次乳化されていき、最終的に、全ての塩基性水溶性塩が脂肪酸乳化物に変わる。
撹拌は、プロペラミキサーによって液が均一になるよう、ゆっくり撹拌する程度で充分である。そのため、本発明によれば、泡を立てることなく脂肪酸の乳化物を得ることができる。
ゆっくり撹拌して得た脂肪酸類の乳化物は粒子径が大きめで、放置により脂肪酸類の乳化物の層と水層に分離する場合があるが、振蕩により容易に混合することができる。
曇点が存在する界面活性剤を用いる場合は、液温が曇点を越えると界面活性剤としての能力を失うので、雲点以下の温度で第3工程を行う
【0025】
[第4工程]
脂肪酸は、析出後に乳化剤が消費し尽くされるなどの理由で安定性が低下すると、集合・凝集すると考えられる。そのため、必要に応じて、凝集した脂肪酸を微細化する第4工程を行う。
微細化には、ディスパーザーその他のインペラを持った撹拌式ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーなどの衝突式ホモジナイザー、アトライタやサンドグラインダー、ボールミルなどのメディアミルその他を使用することができる。
高圧下で液−液衝突させ、液中の粒子を微細化する装置としては、例えば、ナノマイザーNM2−L200型(吉田機械興業(株)製)等が挙げられる。
第4工程を行うことにより、粒子が一層微細化された乳化物が得られる。
【0026】
<キャスト塗工紙の製造方法>
一般にキャスト加工とは、塗工層を、鏡面を有するキャストドラム(鏡面仕上げした金属等のドラム)、鏡面仕上げした金属板、プラスチックシートやフィルム、ガラス板等に圧接して乾燥し、鏡面を塗工層上に写し取ることにより、平滑で光沢のある塗工層表面を得ることである。
本発明のキャスト塗工紙の製造方法では、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層表面に、鏡面体の鏡面を転写する工程を備える。
中でも、加熱したキャストドラムを利用するドラムキャスト法、プラスチックシートやフィルムの平滑面を転写するフィルム転写法が好ましく、ドラムキャスト法が最も好ましい。
【0027】
[ドラムキャスト法]
ドラムキャスト法は、表面平滑性に優れる傾向があり、かつ生産性やコストの点で有利である場合が多い。ドラムキャスト法としては、ウェットキャスト法、リウェットキャスト法、ゲル化キャスト法、プレキャスト法が挙げられる。
【0028】
ウェットキャスト法は、最表塗工層用塗工液を基材上に塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法である。
本発明のキャスト塗工紙の製造方法で、ウェットキャスト法を採用する場合は、最表塗工層用塗工液に上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有させる。
これにより、基材上に脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層が形成されるので、その後鏡面ドラムに圧接、乾燥した際に、鏡面ドラムからの離型性が得られる。
【0029】
リウェットキャスト法は、基材上に塗工した最表塗工層を一旦乾燥後、その最表塗工層に再湿潤液を塗布することにより再湿潤させて、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法である。
本発明のキャスト塗工紙の製造方法で、リウェットキャスト法を採用する場合は、最表塗工層用塗工液、再湿潤液、又は最表塗工層用塗工液と再湿潤液の双方に、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有させる。
これにより、基材上に脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層が形成されるので、その後鏡面ドラムに圧接、乾燥した際、鏡面ドラムからの離型性が得られる。
【0030】
ゲル化キャスト法は、基材上の最表塗工層をゲル化してゲル状塗工層とし、加熱された鏡面ドラムに圧接、乾燥して仕上げる方法である。ゲル状塗工層を得るためには、互いに反応してゲルを形成する2種の塗工液を、ウェットオンウェットで塗工する方式、最表塗工層を塗工した後、後からゲル化剤を塗布する方式がある。
本発明のキャスト塗工紙の製造方法で、ウェットオンウェット方式のゲル化キャスト法を採用する場合は、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を、2種の塗工液のどちらに含有させてもよいし、双方に含有させてもよい。
また、ゲル化剤を後から塗布する方式のゲル化キャスト法を採用する場合は、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を、最表塗工層用塗工液に含有させておく。
これにより、基材上に脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層(ゲル状塗工層)が形成されるので、その後鏡面ドラムに圧接、乾燥した際、鏡面ドラムからの離型性が得られる
【0031】
プレキャスト法は、加熱された鏡面ドラムに直接最表塗工層用塗工液を塗工し、乾燥させて鏡面ドラム上に該最表塗工層を形成した後、基材上に上記鏡面ドラムを圧接し、上記最表塗工層を転移させて仕上げる方法である。
本発明のキャスト塗工紙の製造方法で、プレキャスト法を採用する場合は、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を、最表塗工層用塗工液に含有させておく。
これにより、鏡面ドラム上に脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層が直接形成されるので、その後に圧接、乾燥した際、鏡面ドラムからの離型性が得られる
【0032】
上記各ドラムキャスト法において、加熱された鏡面ドラムの温度は、50〜150℃であることが好ましく、70〜120℃がより好ましい。
また、上記各ドラムキャスト法において、塗工液を塗工する方法に限定はなく、例えば、ブレードコーター、ブラシコーター、チャンプレックスコーター、バーコーター、グラビアコーター等の公知の塗工装置を用いて塗工することができる。
【0033】
上記各ドラムキャスト法において、鏡面ドラムは、総炭素数16〜18の脂肪酸で、予め処理しておくことが好ましい。
総炭素数16〜18の脂肪酸としては、ヘキサデカン酸(慣用名パルミチン酸、数値表現16:0)、9−ヘキサデセン酸(パルミトイル酸、16:1)、ヘプタデカン酸(マルガリン酸、17:0)、オクタデカン酸(ステアリン酸、18:0)、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸、18:1(9))、11オクタデセン酸(バクセン酸、18:1(11))、cis,cis−9,12−オクタデカジエン酸(リノール酸、18:2(9,12))、9,12,15−オクタデカトリエン酸((9,12,15)リノレン酸、18:3(9,12,15))、6,9,12−オクタデカトリエン酸((6,9,12)リノレン酸、18:3(6,9,12,))、9,11,13−オクタデカトリエン酸((9,11,13)リノレン酸、18:3(9,11,13))等が例示される。これらの内ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、オクタデカン酸(ステアリン酸)、cis−9−オクタデセン酸が好ましく、オクタデカン酸、cis−9−オクタデセン酸が更に好ましく、オクタデカン酸が最も好ましい。
この理由は定かではないが、分子中に二重結合を持たない飽和脂肪酸の方が分子が直線状になりやすく、そのために、鏡面ドラム表面に密に配列しやすくなるものと推測される。
【0034】
処理の方法としては、鏡面ドラム表面に上記の脂肪酸を塗布するだけではなく、塗布して、更にバフを掛けるのが好ましい。また、バフ掛け時には酸化第二鉄、酸化クロム、酸化アルミニウム、炭化珪素、窒化硼素、珪藻土、炭酸カルシウム等の微粉末の研磨材を脂肪酸と混合し、処理するのが更に効果的である。
クロムメッキした鏡面ドラムを表面処理する場合、炭化珪素や窒化硼素は硬すぎてクロムメッキ面の磨耗が強く、珪藻土は粗大な粒子径のものを含んでいる場合があり傷がつく可能性があり、炭酸カルシウムは柔らかいために研磨の効果が小さすぎる。酸化クロムは三価であり安全とされているが、可能であれば代替物を使用するのが好ましい。したがって、酸化第二鉄、酸化アルミニウムの微粉末が特に好ましい。酸化アルミニウムは各種粒子径のものがあり、最も好ましい。
研磨剤と脂肪酸を混合してバフ処理した場合にその効果が大きい理由は定かではないが、上記の研磨材と脂肪酸を混合してバフ処理することにより、鏡面ドラム表面に付着した汚れや酸化皮膜が除去され、活性なクロム表面が現れた瞬間に、脂肪酸の親水基が活性なクロム表面に吸着し、脂肪酸の多層分子膜が鏡面ドラム表面に形成されるためと推測している。
【0035】
[フィルム転写法]
フィルム転写法としては、
(イ)最表塗工層用塗工液を基材上に塗工して、該塗工液が湿潤状態にある間に平滑なフィルムやシートを重ね、乾燥した後、平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方式、
(ロ)平滑なフィルムやシート上に最表塗工層用塗工液を塗工して、貼り合せようとする基材面をある程度湿潤状態にした状態で、その基材面に圧接し、乾燥した後平滑なフィルムやシートを剥離して仕上げる方式、が挙げられる。
何れの方式においても、最表塗工層用塗工液に、上記乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有させればよい。
【0036】
<インクジェット記録体>
以下に、本発明のキャスト塗工紙の製造方法によって得られるインクジエット記録体について説明する。
インクジェット記録体は、基材上に、キャスト法によって光沢発現層を設けることによって得られる。基材は、支持体に、予めインク受容層を設けたものである。
【0037】
[支持体]
インクジェット記録体に用いられる支持体は特に限定されるものではないが、透気性を備える紙、透気性を有する樹脂フィルムまたはシート材を使用することが好ましい。
とりわけ、優れた透気性、記録体としての取り扱い易さ、および廃棄の容易さ等の面から紙を使用することが好ましい。
上記紙の支持体としては、本発明の効果を損なわない範囲で、通常使用される公知の紙支持体を用いることができ、例えば、上質紙、アート紙、コート紙、キャスト塗被紙、クラフト紙、バライタ紙、板紙、含浸紙、蒸着紙が挙げられる。
また、一般の塗工紙等に使用される酸性紙、中性紙等の別も適宜用いられる。
【0038】
紙支持体は、木材パルプを主成分とし、必要に応じて填料、各種助剤等が添加されている。木材パルプとしては、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができる。特に、針葉樹および広葉樹のクラフトパルプ、あるいはこれらクラフトパルプを漂白した針葉樹晒クラフトパルプ(NBKPと称す)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKPと称す)が好ましい。
また、これらのパルプは、その漂白工程で塩素の影響を取り除いた塩素フリーパルプ、例えば、パルプ漂白に塩素そのものを使わずに塩素化合物を使うECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、パルプ漂白に塩素元素が一切入っていない漂白剤を用いるTCF(Total Chlorine Free)パルプ等であることが好ましい。
これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調整するために、叩解機により叩解度を調整でき、その叩解度(フリーネス(CSF:Canadian Standard Freeness))は特に限定しないが、250〜550ml(JIS−P8121)が好ましい。
【0039】
紙支持体に添加される填料は、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライト、シリカ、酸化チタン、タルク等が好ましく用いられる。中でも軽質炭酸カルシウム、焼成カオリン、合成ゼオライトは多孔質のためインクジェットプリンターから吐出されたインク中の溶媒を吸収する能力に優れているために好ましく、その中でも、軽質炭酸カルシウムは白色度が高い紙支持体が得られ、インクジェット記録用シートの光沢感も高まるので好ましい。
紙支持体中の填料の含有率(灰分)は、1〜20質量%程度が好ましい。この範囲であれば、平滑度、透気度、紙力や剛性のバランスがとれ、光沢度や写像性、剛性のバランスに優れた光沢インクジェット記録用シートが得られやすくなる。
【0040】
紙支持体に添加される助剤としては、サイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等が挙げられる。
上記サイズ剤としては、公知のサイズ剤が、例えば、強化ロジン、アルケニル無水コハク酸等が用いられる。
また、このサイズ剤の定着剤として硫酸バンド、定着歩留まり向上剤として澱粉等がサイズ剤に併用されて用いられる。
【0041】
紙支持体には、サイズプレス処理しても良い。サイズプレスの目的は、サイズ度のコントロール、紙力の増強、平滑化等であり、サイズプレス液にはそれぞれの目的に合わせて澱粉類、ポリビニルアルコール類、サイズ剤、各種顔料等、公知公用の材料が使用される。紙支持体のステキヒトサイズ度(JIS−P8122)は1〜300秒程度が好ましく、4〜200秒がより好ましい。サイズ度が1秒未満であると、塗工時に皺が発生する等操業上問題となる虞があり、300秒を越えるとインク吸収性が低下する虞があり、かつ印字後のカールやコックリング(吸収ジワ)が著しくなる虞があり好ましくない。
【0042】
紙支持体の坪量は、特に限定されないが、20〜400g/m程度が好ましい。
紙支持体の王研式透気度(日本TAPPINo.5)は10〜350秒が好ましく、10〜200秒がより好ましく、20〜100秒がさらに好ましい。
この透気度が10秒未満であると、インク受容層用塗工液が紙支持体に過剰に浸透する虞があり、350秒を超えると、キャストドラムに圧接仕上げする際に、操業性が低下する虞があり、好ましくない。
紙支持体は、長網抄紙機などにより製造され、その厚さは、特に限定されないが、用途に応じて20μm〜500μmの範囲で適宜選択される。
【0043】
〔インク受容層〕
このインク受容層は、顔料と、これを保持する接着剤を含む。さらにインク中の染料や顔料をよりよく定着させるためにカチオン性のインク定着剤を含有することが好ましい。
【0044】
(顔料)
インク受容層の顔料としては、中位粒子径が10nm〜3μmの微細2次顔料が用いられる。シリカ、アルミナ、アルミナ水和物から選ばれることが好ましい。これらの顔料のなかでは、シリカが特に好ましく、一次粒子径5nm〜50nm、二次粒子径10nm〜500nmの気相法シリカがより好ましい。
さらに、このシリカは、シリカとカチオン性化合物とを混合して得られるシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子が好ましく、これを粉砕分散して、中位粒子径10nm〜2μmのこの凝集体微粒子として用いられる。このカチオン性化合物およびシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子は、インク定着剤として作用しており、詳しくは、インク定着剤の項で説明する。
この凝集体微粒子は、中位粒子径は30〜500nmの範囲が最も好ましい。この粒子径が10nm未満では、インク吸収性が低下するおそれがあり、2μmを超えると、塗膜の透明性が劣り、印字濃度が著しく低下するおそれがあり、また、平滑性も損なわれるため、高い光沢性を得るために上層の光沢発現層の塗工量を多くする必要があり、結果として、インク吸収性の低下や生産性の低下に繋がるという懸念点がある。
【0045】
なお、本明細書における中位粒子径とは動的光散乱法に基づく装置を使用して測定した数基準粒子径分布に基づく中位粒子径であり、本発明者らは「動的光散乱式粒径分布測定装置LB−500型(株式会社堀場製作所製)」を使用したが、測定原理が同じであれば、装置のモデルが異なっても、ほぼ同じ値が得られる。
【0046】
インク受容層には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記の中位粒子径10nm〜3μmの顔料に併用して通常の記録用紙に使用される公知の顔料を用いることができる。これらの顔料としては、カオリン(含クレー)、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、非晶質シリカ(含コロイダルシリカ)、酸化アルミニウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、合成スメクタイト、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、珪藻土、スチレン系プラスチックピグメント、ハイドロタルサイト、尿素樹脂系プラスチックピグメント、ベンゾグアナミン系プラスチックピグメント等が挙げられ、単独或いは併用で用いられる。
【0047】
(接着剤)
接着剤は水分散系接着剤、水溶性接着剤を単独、併用とも可能である。水分散系接着剤としては、例えば、スチレン−ブタジエン共重合樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系樹脂、アクリル系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等のビニル系樹脂等が挙げられる。この中で、得られる塗膜のインク吸収性および透明性の面で、アクリル系樹脂およびウレタン系樹脂が特に好ましい。これらの水分散系接着剤は、単独で用いても、または2種以上の併用であっても良い。
【0048】
水溶性接着剤としては、カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールを含むポリビニルアルコール類、カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体、水性ポリウレタン樹脂、水性ポリエステル樹脂等が挙げられる。
【0049】
これらの接着剤の中でも表面強度の点からポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
インク受容層に用いられるポリビニルアルコールは、そのケン化度の相違により性状が異なり、目的に応じてそのケン化度を選択することが好ましい。
ケン化度が95%以上、より好ましくは98%以上のポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の強度が強くなるとともに、塗工液調製時に泡立ちが少なく、製造時の作業性が非常に良好である。
また、ケン化度が75〜90%の部分ケン化ポリビニルアルコールを使用すると、塗工層の可撓性に優れ、その折り割れ防止に非常に効果的である。
これらケン化度の異なるポリビニルアルコールは、その目的に応じて、それぞれ単独で用いても、併用して用いても良い。
【0050】
また、上記ポリビニルアルコールは、その重合度が3500以上であることが好ましく、3500〜5000であることが特に好ましい。重合度が3500未満であると、インク受容層の強度が弱いと共に、ひび割れが発生しやすく、かつ断裁時に紙粉が発生する虞があり、5000を超えると、十分なインク吸収性が得られにくいとともに、溶液粘度が高く塗工液調整におけるハンドリング面が困難となる虞があり、好ましくない。
【0051】
インク受容層の接着剤の配合量は、顔料100質量部に対して7〜50質量部であることが好ましく、10〜40質量部であることがより好ましい。この配合量が、7質量部未満であると、塗膜強度が十分でないおそれがあり、50質量部を超えると、インクの吸収性を損なう虞があり好ましくない。
【0052】
(インク定着剤)
上記インク定着剤は、インクジェット記録用インク中の染料色素を定着する作用を有し、これにより印字画像に耐水性を付与する。
このインク定着剤には、カチオン性化合物が用いられ、カチオン性樹脂や低分子カチオン性化合物(例えばカチオン性界面活性剤等)が例示される。
印字濃度向上の点ではカチオン性樹脂が好ましく、一般にインクジェット記録用シートで用いられる各種公知のカチオン性樹脂が使用可能である。
【0053】
これらのカチオン性樹脂としては、例えば、(イ)ポリエチレンポリアミンやポリプロピレンポリアミン等のポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、(ロ)第2級または第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル重合体、またはそれらのアクリルアミドの共重合体、(ハ)ポリビニルアミンおよびポリビニルアミジン類、(ニ)ジシアンジアミド−ホルマリン共重合体に代表されるジシアン系カチオン性化合物、(ホ)ジシアンジアミド−ポリエチレンアミン共重合体に代表されるポリアミン系カチオン性化合物、(ヘ)エピクロルヒドリン−ジメチルアミン共重合体、(ト)ジアリルジメチルアンモニウム−SO重縮合体、(チ)ジアリルアミン塩−SO重縮合体、(リ)ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、(ヌ)アリルアミン塩の共重合体、(ル)ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級塩共重合体、(オ)アクリルアミド−ジアリルアミン共重合体、(ワ)5員環アミジン構造を有するカチオン性樹脂等が挙げられる。
これらの定着剤は単独で、また2種以上併用して用いられる。
【0054】
(シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子)
上記カチオン性化合物は、気相法シリカとの混合液中で気相法シリカと凝集し、シリカ−カチオン性化合物凝集体を形成する。このため、このカチオン性化合物は、単体で用いるよりあらかじめ気相法シリカと凝集体を形成して用いることが好ましい。
ところで、シリカ−カチオン性化合物凝集体は、粉砕・分散して中位粒子径0.01〜1μmのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子として、インク受容層用塗工液に用いられる。
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子を形成するために用いる単体の気相法シリカは、平均粒子径が3〜40nmの1次粒子であるが、この凝集体微粒子は、実質的に1次粒子が凝集してできた二次粒子からなっている。
【0055】
シリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子の製造方法の概略を説明する。
カチオン性化合物の添加量としては、気相法シリカ100質量部に対して、1〜30質量部、好ましくは5〜20質量部の範囲で調節される。
気相法シリカ分散液にカチオン性化合物を添加し混合すると、増粘した凝集体分散液が得られる。
このシリカ−カチオン性化合物凝集体粒子を粉砕・分散し、微粒子化する方法としては、機械的手段で強い力を与えるブレーキング・ダウン法(塊状原料を細分化する方法)が採られる。
機械的手段としては、超音波、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体撹拌ミル、ジェットミル、擂解機、サンドグラインダー、ナノマイザー(商品名)、ホモミキサー等が挙げられる。
【0056】
顔料およびインク定着剤としてこのシリカ−カチオン性化合物凝集体微粒子は、1種単独で、あるいは2種以上併用して用いられるが、これを用いることによって、インク受容層の透明性、表面強度、平滑性ならびにインクの吸収性、発色性、耐候性、耐水性等を向上させることができる。
【0057】
インク受容層には、さらに、一般塗工紙の製造において使用される分散剤、増粘剤、消泡剤、帯電防止剤、防腐剤等の各種助剤が適宜添加される。また、インク受容層中に、蛍光染料、着色剤を添加することもできる。
【0058】
なお、インク受容層中には、さらにインクの定着性を高め耐水性を向上させるために、単体のカチオン性化合物を配合してもよい。
カチオン性化合物としては、上記シリカ−カチオン性化合物凝集体で用いたカチオン性化合物が例示でき、その中でも、水溶性樹脂あるいはエマルジョンのものが好ましく用いられる。
また、この単体で配合するカチオン性化合物、特にカチオン性樹脂は、接着剤としての役割も併せて付与させる場合にしばしば用いられる。
【0059】
(インク受容層の形成方法)
インク受容層を形成するためには、例えば、インク受容層用塗工液を塗布すると同時に、または、インク受容層用塗工液を塗布した塗液層の乾燥途中に、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、塗工液を増粘または架橋させて成膜して製造することが有効である。
具体的には、下記(A)〜(C)に挙げる方法が例示でき、適宜採用できるがこれらの方法に限るものではない。
【0060】
例えば、
(A)電子線照射によりハイドロゲルを形成する親水性樹脂を含有し、塗工の直後に、または、塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、電子線照射して塗液層を増粘(ハイドロゲルを形成)させる方法、
(B)インク受容層が接着剤を含有する塗液であり、塗工の直後に、または、塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、接着剤との架橋性を有する化合物で塗料を増粘、架橋させる方法、
(C)例えば接着剤として感温性高分子化合物(特開2003−40916号公報に記載された一定温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す)を含有させ、塗工の直後に塗液層温度を低下させることによって塗液層を増粘させる方法、
等が例示できる。
上記(A)及び(B)の方法で塗工層を形成する場合、接着剤としては、上記の、インクジェット記録体用として使用される公知の接着剤が使用できる。
【0061】
接着剤との架橋性を有する化合物としては、各種公知の架橋剤、ゲル化剤が使用できる。ポリビニルアルコールに対する架橋性を有する化合物としては、グリオキザールなどのアルデヒド系架橋剤、エチレングリコールジグリシジルエーテルなどのエポキシ系架橋剤、ビスビニルスルホニルメチルエーテルなどのビニル系架橋剤、ホウ酸およびホウ砂などのホウ素含有化合物、グリシジル化合物、ジルコニウム化合物、アルミニウム化合物、クロム化合物等などが例示できる。中でも、ホウ素含有化合物は、増粘またはゲル化が早く生じるので特に好ましい。
【0062】
ホウ素含有化合物としては、ホウ素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩のことである。具体例としては、オルトホウ酸、メタホウ酸、次ホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、及びそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。中でも、オルトホウ酸と四ホウ酸二ナトリウムが、塗料を適度に増粘させる効果があるために好ましく用いられる。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜2.0g/m含有されることが好ましい。含有量が2.0g/m以下であることにより、親水性バインダとの架橋密度が高くなりすぎず、塗膜強度を良好なものにできる。一方、含有量が0.01g/m以上であることにより、親水性接着剤との架橋が強まり、塗料のゲル化を促進して塗膜がひび割れしにくいものとなる。
【0063】
インク受容層は、例えば、架橋剤を予めインク受容層に塗布・含浸させておき、インク受容層用塗液を塗布する、または、インク受容層用塗液に架橋剤を配合しておき塗布する、または、インク受容層用塗液を塗布後、架橋剤を塗布する等の方法により製造される。中でも、架橋剤を予め塗布しておくことにより、増粘またはゲル化を均一に起こすことができるため好ましい。
【0064】
インク受容層の乾燥固形分塗工量には、制限はないが、一般に2〜100g/mであることが好ましく、5〜50g/mであることがより好ましい。塗工量が2g/m以上であることにより、高精細・高速のプリンターにおけるインク吸収性が充分なものとなり、塗工量が50g/m以下であることにより塗膜のひび割れが起こりにくくなる。
【0065】
インク受容層は、2層以上形成することもでき、このように2層以上で構成する場合は、それぞれの層を構成するシリカや接着剤は同じでも良いし、異なっていても構わない。
例えば、1層を支持体に設けられインク溶媒を吸収する下塗り層とし、その上にインク染料定着層を設ける構成としても良い。また、1層を支持体にインク溶媒を浸透させない下塗層とし、その上にインク受容層を設ける構成としても良い。
また、同一の層内に2種類以上のシリカや接着剤を混合しても良いし、それらを組み合わせて使用しても良い。
インク受容層を形成するための塗工装置としては、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーターおよびダイコーター等の各種塗工装置が挙げられる。
【0066】
また、スライドビードコーターなどを用い、複数のインク受容層を同時に塗工することもできる。2層以上のインク受容層を塗工する場合は、下層が未乾燥のうちに上層を下層の上に塗工する方法、すなわち、Wet on Wet法を用いることが好ましい。
また、電子線照射を施す方法は、(1)塗工、電子線照射、乾燥を繰り返してもよいし、(2)塗工し電子線照射後に次の層を塗工して乾燥してもよく、(3)多層を同時に塗工し、電子線照射を行ってもよい。
さらに、この塗工したインク受容層に、必要に応じてスーパーカレンダー、ブラシ掛け等の平滑化処理を施しても良い。
【0067】
〔光沢発現層〕
光沢発現層は、コロイド状粒子と接着剤、離型剤を主成分とし、光沢を発現する該記録体の最表部をなす層である。光沢発現層の乾燥塗工量が0.1〜5g/m2であるとき、生産性に優れ、より鮮明な画像を得ることが出来る。
【0068】
(コロイド状粒子)
光沢発現層のコロイド状粒子とは、水中に懸濁分散してコロイド状をなしている無機粒子或いは有機粒子を指し、コロイド状粒子を含有することにより、均一で高い光沢性を得ることが出来る。該コロイド状粒子として、例えば、コロイダルシリカ、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナゾルやコロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、或いは特公昭47−26959号公報に開示されているようなコロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子、等の無機粒子、ポリスチレン、メチルメタクリレート、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル共重合体、マイクロカプセル、尿素樹脂、メラミン等の有機粒子が挙げられる。本発明において好ましいコロイド状粒子としては、コロイダルシリカや無定形シリカを保護コロイドを作る能力のある水溶性化合物の存在下で分散・解砕したものが例示される。無定形シリカとしては、一次粒子径が小さく二次粒子径が大きくて解砕しにくいゲル法シリカより一次粒子径が大きめで解砕しやすい沈降法シリカや気相法シリカがより好ましく、二次粒子径が小さい気相法シリカは更に好ましい。これらのコロイド状粒子は、2種以上併用することも可能である。
【0069】
光沢発現層のコロイド状粒子は、インクを定着させる機能を有するカチオン性コロイド状粒子が好ましい。カチオン性コロイド状粒子は、上述のコロイド状粒子の内、該粒子表面が正に帯電した粒子を指し、例えば、ベーマイト、擬ベーマイト等のアルミナゾルやコロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、コロイド状シリカ粒子表面をアルミナコーティングした粒子等が挙げられる。また、保護コロイドを作る能力のある水溶性化合物としてカチオン性樹脂等を選択し、その存在下で分散・解砕した気相法シリカも、好ましく使用される。
【0070】
(接着剤)
光沢発現層中には、コロイド状粒子等をインク受容層上に固着させる目的で、接着剤を含有する。該接着剤は、上記インク受容層に用いた上述の接着剤のなかから選ばれ、単独であっても、または2種類以上であってもよいが、本発明においてポリビニルアルコールを使用する場合、ケン化度98%以上のものを含有することが好ましい。ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用することによって、ドラムからの離型が容易となり、優れた生産性を得ることができる。
ケン化度98%以上のポリビニルアルコールを使用することでドラムからの離型性が良好となる理由は定かではないが、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは部分ケン化と称されるケン化度98%未満のポリビニルアルコールより水酸基の量が多いため、水との親和性が強く、分子同士の相互作用も強い。そのため、一旦水に溶解したポリビニルアルコールを乾燥し、熱処理した場合、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは結晶化して水に溶解しなくなるが、部分ケン化のポリビニルアルコールは結晶化せず分子は屈曲性を保ったままである。このことが、高温のドラムとの接着性の違いに影響し、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールは水分を失った場合にドラムに対する接着力が落ちやすいのに対し部分ケン化ポリビニルアルコールはドラムへの接着力が落ちず、結果として、ケン化度98%以上のポリビニルアルコールの方がドラムから剥離しやすくなるものと推測される。
【0071】
光沢発現層中のコロイド状粒子がカチオン性である場合や、光沢発現層中にインク定着剤を配合する場合は、カチオン変性した接着剤を使用することが好ましい。
接着剤の配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し1〜200質量部、より好ましくは10〜100質量部の範囲で調節される。
接着剤の配合量が1質量部より少ないと、光沢発現層の固着力が弱くなり、塗工層の欠落が発生する虞があり、200質量部を越えると、インク吸収性が低下し、所望のインクジェット記録適性が得られなくなる虞があり、好ましくない。
【0072】
(離型剤)
離型剤としては、上記本発明の乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を用いる。
さらに、必要に応じて変性ポリエチレンやワックス類、脂肪族アミン類または脂肪酸アミド類のエチレンオキサイド付加物、ノニオン系あるいはカチオン系の界面活性剤を併用しても良い。特に、変性ポリエチレン類の添加は光沢度が向上するため好ましいが、過剰の添加は記録濃度の低下やプリンター給紙時の傷を悪化させる場合がある。変性ポリエチレンの好ましい配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し2〜30質量部、特に好ましい配合量は3〜15質量部である。脂肪族アミン類のエチレンオキサイド付加物としては、Nヒドロキシエチルラウリルアミン、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンステアリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン等が例示される。また、アルキル鎖は植物(例えばヤシ)由来、動物(例えば牛脂)由来のものであっても良く、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミン、ポリオキシエチレン牛脂脂肪酸アミン等が例示される。
脂肪酸アミド類のエチレンオキサイド付加物としては、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、牛脂脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアミド、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸アミド等が例示される。
これらの離型剤の好ましい配合量は、コロイド状粒子100質量部に対し2〜30質量部、特に好ましい配合量は3〜15質量部である。
【0073】
(その他添加剤)
また、この光沢発現層には、必要に応じてインク定着剤、分散剤、架橋剤、増粘剤(流動変成剤)、消泡剤、耐水化剤(印刷適性向上剤)、帯電防止剤、防腐剤、紫外線吸収剤、保存性改良剤、蛍光増白剤、および着色剤等の各種添加剤を適宜添加することができる。
インク定着剤としては、インク受容層に用いた上述のカチオン性樹脂と同様なものが使用される。
【0074】
上記増粘剤および流動変成剤としては、(イ)スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート─ブタジエン共重合体等の合成樹脂共重合体、(ロ)カゼイン、(ハ)大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白質類、(ニ)澱粉や酸化澱粉等の各種澱粉類、(ホ)PVA、(へ)カルボキシメチルセルロースやメチルセルロース等のセルロース誘導体類、(ト)ポリカルボン酸、ポリアクリル酸、アクリル樹脂エマルジョン、ポリアマイド、ポリエステルの合成樹脂重合体、(チ)非イオン界面活性剤、等が適宜使用される。
【0075】
上記耐水化剤および印刷適性向上剤としては、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸亜鉛、硫酸マグネシウム、硫酸第一鉄、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム、第一リン酸ナトリウム、リン酸アンモニウム、リン酸カルシルム、ポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸アンモニウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、モノクロル酢酸ナトリウム、マロン酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム、クエン酸カリウム、乳酸ナトリウム、グルコン酸ナトリウム、アジピン酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等の無機酸や有機酸のアンモニウム塩や金属塩類、さらに、メチルアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジイソプロピルアミン、トリエタノールアミン、メタノールアミン、エタノールアミン等のアミン類、リン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレエーテルリン酸エステル塩、アルキルフェノールエーテルリン酸エステル塩などのリン酸エステル類、ポリオキシメチレン、アルキルエーテル、ポリオキシエチレンやアンモニア水、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルやアジピン酸ジグリシジルエステル等の多官能性エポキシ化合物、尿素─ホルムアルデヒド系化合物、ポリアミド─エピクロロヒドリン系化合物、グリオキザール、等が適宜使用される。
【0076】
上記各種添加剤は、光沢発現層用塗工液中に固形分濃度として0.05〜10部、好ましくは、0.1〜5部の範囲で添加される。
さらに、光沢発現層用塗工液には、その他の添加剤として、アルミナ、コロイダルシリカ、微細シリカ、クレーや炭酸カルシウム等の公知の白色顔料を添加することもできる。
なお、後述するリウェット処理を行う場合は、上記添加剤中の、分散剤、消泡剤、着色剤、蛍光染料、帯電防止剤、防腐剤等は、リウェット処理に用いる湿潤液に添加しても良い。
【0077】
(乾燥塗工量)
中位粒子径5μm以下、好ましくは0.01〜1μmの顔料をインク受容層中に含有する場合、光沢発現層の乾燥塗工量は、0.1〜5g/m、好ましくは0.3〜2g/mという少ない塗工量で、高い光沢性を得ることが可能である。乾燥塗工量が0.1g/m未満であると、光沢性や印字濃度が劣り、乾燥塗工量が5g/mより多いと、インク吸収性悪化による画像鮮明性の低下、乾燥負荷の増大による生産性の悪化等の問題が生じる。
【0078】
キャスト加工は、上記いずれの方法を用いてもよいが、インクジェット記録体では、ウェットキャスト法を用いることが好ましい。
このウェットキャスト法では、均一な塗工層が形成されやすく、印字濃度が高く、光沢の優れた光沢発現層を得易い。
【0079】
[裏面層]
本発明では、上記の光沢発現層を設けていない基材のもう一方の面側である裏面に、写真の風合いやインクジェット記録体のカール防止及び搬送性などの改良のために、裏面層を設けてもよい。裏面層には、特に限定するものではないが、顔料とバインダ系(例えば、コロイダルシリカとアクリル系エマルション型バインダ等)、有機エマルジョン系(例えば、シリコン系エマルジョン型バインダ、アクリル系エマルジョン型バインダ等)、親水性・疎水性の接着剤系(例えば、澱粉やポリビニルアルコールの塗膜)、ラミネート(例えば、ポリエチレン等)等からなるものが挙げられる。
さらに、裏面にインクジェット記録体や他の記録体を貼り合わせて両面記録体としたり、裏面に粘着剤層を形成してラベルとしたり、磁気カードやICカードの表面に貼り合わせてカードとしたりなど、公知の手段を施すことができる。
【実施例】
【0080】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
また、以下に示す実施例および比較例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、それぞれ水を除く固形分の「質量部」および「質量%」を示す。
【0081】
<脂肪酸類乳化物の製造>
[実施例1]
水310gにアンモニア水(25%)を13mL、デカン酸(カプリン酸、10:0、融点28℃)を10g加え、40℃まで加温、撹拌し、デカン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、デカン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH11.0)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、デカン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のデカン酸乳化物を得た。
【0082】
[実施例2]
水312gにアンモニア水(25%)を11mL、ドデカン酸(ラウリン酸、12:0、融点44℃)を10g加え、50℃まで加温、撹拌し、ドデカン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のドデカン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH10.8)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、ドデカン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のドデカン酸乳化物を得た。
【0083】
[実施例3]
水315gにアンモニア水(25%)を8mL、cis−9−オクタデセン酸(オレイン酸、18:1(9)、融点14℃)を10g加え、40℃まで加温、撹拌し、cis−9−オクタデセン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のcis−9−オクタデセン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH10.8)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、cis−9−オクタデセン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のcis−9−オクタデセン酸乳化物を得た。
【0084】
[実施例4]
水315gにアンモニア水(25%)を8mL、オクタデカン酸(ステアリン酸、18:0、融点70℃)を10g加え、75℃まで加温、撹拌し、オクタデカン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のオクタデカン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH10.6)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、オクタデカン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のオクタデカン酸乳化物を得た。
【0085】
[実施例5]
水317gにアンモニア水(25%)を6mL、ドコサン酸(ベヘン酸、22:0、融点82℃)を10g加え、85℃まで加温、撹拌し、ドコサン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のドコサン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH10.4)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、ドコサン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のドコサン酸乳化物を得た。
【0086】
[実施例6]
水318gにアンモニア水(25%)を5mL、テトラドコサン酸(リグノセリン酸、24:0、融点86℃)を10g加え、90℃まで加温、撹拌し、テトラドコサン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のテトラドコサン酸のアンモニウム塩と界面活性剤が共存する水溶液(pH10.4)を得た。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、テトラドコサン酸アンモニウム塩を中和し、乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のテトラドコサン酸乳化物を得た。
【0087】
[実施例7]
プロノン204の1gの代わりにPVA117(完全鹸化ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)の10%水溶液3gを添加した以外は、実施例4と同様にして乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
これをナノマイザーNM2−L200型(吐出圧50MPaで4回処理)で微細化し、濃度3%のオクタデカン酸乳化物を得た。
【0088】
[実施例8]
プロノン204の1gの代わりにPVAR−1130(シリル変性ポリビニルアルコール、(株)クラレ製)の10%水溶液3gを添加した以外は実施例4と同様にして、オクタデカン酸の乳化物を得た。この乳化物はpH2.5だった。
【0089】
[実施例9]
ナノマイザーNM2−L200型による処理を行わなかった他は、実施例4と同様にして、オクタデカン酸の乳化物を得た。
【0090】
[比較例1]
水325gにオクタデカン酸(ステアリン酸、18:0、融点70℃)を10g加え、75℃まで加温、撹拌し、オクタデカン酸を分散した。
次に、オクタデカン酸の水分散物の温度を30℃まで下げ、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)の1gを添加し、濃度3%のオクタデカン酸の分散物と界面活性剤が共存する水溶液を得ようとした。しかし、温度を下げた時点でオクタデカン酸が凝集してしまい、オクタデカン酸の乳化物を得ることはできなかった。
【0091】
[比較例2]
水315gにアンモニア水(25%)を8mL、オクタデカン酸(ステアリン酸、18:0、融点70℃)を10g加え、75℃まで加温、撹拌し、オクタデカン酸のアンモニウム塩水溶液を得た。
次に、プロノン204(ノニオン系界面活性剤、日油株式会社製)を添加せず、アンモニウム塩水溶液の温度を30℃まで下げた。
これを撹拌しながら希塩酸(10%)を30mL加え、オクタデカン酸アンモニウム塩を中和し、オクタデカン酸の乳化物を得ようとしたが、析出したオクタデカン酸が凝集し、乳化物を得ることはできなかった。
【0092】
[乳化状態の評価]
実施例、比較例の乳化状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
3:均一な乳化物となり、一日放置しても水層と乳化物の層の分離が観察されない。
2:均一な乳化物となるが、一日放置すると水層と乳化物の層の分離が観察され、撹拌すると均一な乳化物に戻る。
1:乳化物が得られなかった。
【0093】
[数平均粒子径]
実施例4と実施例9の乳化物について、光散乱式粒子径測定装置(SALD−2200型、(株)島津製作所製)で数平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
表1に示すように、何れの実施例でも乳化物が得られた。
また、微細化のための第4工程を行うことにより、乳化物の安定性が高くなることが確認できた。
これに対して、アンモニウム塩を作る第1工程を省略した比較例1、乳化剤を添加する第2工程を省略した比較例2では、乳化物が得られなかった。
【0096】
<インクジェット記録体への脂肪酸乳化物の添加>
[紙支持体の準備]
木材パルプ(LBKP;ろ水度400mlCSF)100質量部、焼成カオリン(商品名:アンシレックス)5質量部、市販サイズ剤0.05質量部、硫酸バンド1.5質量部、湿潤紙力剤0.5質量部、澱粉0.75質量部よりなる製紙材料を使用し、長網抄紙機にて坪量180g/mの紙支持体を製造した。
【0097】
[インク受容層塗工液Xの調製]
水に分散剤(東亞合成(株)製、商品名:アロンSD−10)を0.5部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:ノプコ1407K)を0.05部、カチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を添加し、更に平均一次粒子径7μmの無定形シリカ(グレースジャパン(株)製、商品名:サイロジェットP407)100部を添加・分散した。
これに加熱・溶解した変性PVA((株)クラレ製、商品名:PVA R−1130)10部を添加し、蛍光染料(住友化学(株)製、商品名:ホワイテックスBP−S)を2部、紫染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Violet XRN)0.1部、青染料(大日精化(株)製、商品名:DC−Blue XB)0.05部を添加し、固形分濃度20%のインク受容層塗工液Xを調製した。
【0098】
[カチオン性シリカ微粒子の調製]
中位粒子径1.0μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA300、平均1次粒子径 約8nm)を用い、ホモミキサにより分散した後、中位粒子径が50nmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、10質量%のシリカの水分散液を調製した。
前記10質量%水分散液100質量部に、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M、分子量30万)10質量部を添加し、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、中位粒子径が0.10μmのシリカ−カチオン性化合物の10質量%水分散液を調製した。
【0099】
[インク受容層塗工液Yの調製]
上記カチオン性シリカ微粒子100部に、接着剤としてPVA((株)クラレ製、商品名:PVA−145、重合度4500、ケン化度99%)10部、消泡剤(サンノプコ(株)製、商品名:SNデフォーマー777)0.1部を混合・撹拌し、固形分濃度12%のインク受容層塗工液Yを調製した。
【0100】
[硼砂液の調製]
水に硼砂(シオノギ製薬(株)製、商品名:硼砂)100部と濡れ剤(ライオン(株)製、商品名:レオックス2160C)0.05部を混合・撹拌し、固形分濃度4%の硼砂液を調製した。
【0101】
[光沢発現層塗工液原液の調製]
水にコロイド状粒子としてコロイダルシリカ(日産化学(株)製、商品名:スノーテックスAK−L、平均粒子径:45nm、1次粒子)100部、接着剤として完全ケン化ポリビニルアルコール(クラレ(株)製、商品名:PVA124、ケン化度=98%)10部、アクリル系樹脂(サイデン化学(株)製、商品名:サイビノールE67)5部、染料定着剤としてカチオン性樹脂(ハイモ(株)製、商品名:ハイマックスSC700M)10部を含有する組成液を混合し、更にゼラチン(新田ゼラチン(株)製、商品名:G−0667K)5部、ポリオキシエチレンラウリルアミン(日本油脂(株)製、商品名:ナイミーンL−207、エチレンオキサイドユニット=7)5部、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(ライオン(株)製、商品名:レオックス2008C)5部を添加・混合し、固形分濃度15%の光沢発現層用塗工液原液を調製した。
【0102】
[鏡面ドラムの処理]
n−オクタデカン酸30%と酸化アルミニウム微粉末(平均粒子径1μm)70%を混合したバフ材を、表面温度を95℃としたキャストドラム(表面材質クロムメッキ)表面に薄く塗布し、羊毛ボンネットで研磨することによって、バフ掛け処理をした。
【0103】
[実施例10〜16]
作製した紙支持体の一方の面側に、インク受容層塗工液Xを乾燥後の塗工量が8g/mになるように塗工・乾燥した後、硼砂液を乾燥後の塗工量が1g/mとなるように塗工・乾燥した。この表面にインク受容層塗工液Yを乾燥後の重量が8g/mとなるように塗工・乾燥した。
さらに、このインク受容層塗工液Yによって得られた層の上に、上記光沢発現層塗工液原液に、実施例1〜9で調製した脂肪酸の乳化物(表2参照)10部を離型剤として添加・混合して得た、固形分濃度6%の光沢発現層用塗工液を塗工した(乾燥塗工量は1g/m)。
この光沢発現層用塗工液を塗工した後、予めバフ掛け処理した表面温度が95℃の鏡面ドラムに直ちに圧接した。
圧接後6秒後に、鏡面ドラムから剥がし、実施例10〜16のインクジェット記録体を得た。
【0104】
[離型性の評価]
圧接後6秒後に、鏡面ドラムからインクジェット記録体を剥がした際、鏡面ドラム表面に、インクジェット記録体の塗工層の残留があるかどうかを下記の基準で評価した。結果を表2に示す。
5:ドラム表面に残留は全く無い。
4:ドラム表面に残留はほとんど無い。
3:ドラム表面に残留がややみられるが通常に生産できる。
2:ドラム表面に残留が多く見られ、記録体の塗工層の一部欠落も視認できる。
1:ドラム表面に塗工層が付着し、記録体の塗工層が欠落している。
【0105】
[インク吸収性(印字斑)の評価]
実施例10〜16のインクジェット記録体に、CANON社製インクジェットプリンター(商標:iP−4500)を用い、印字モードを光沢紙、きれいモードとしてグリーン色インクをベタ印字した。
ベタ印字画像中に斑があるかどうかを目視で観察し、下記の3段階にて評価した。
印字斑は、先に打ち込まれたインクが、インクジェット記録体の塗工層に完全に吸収されないうちに、次のインクが飛来して表面で重なった場合に生ずる現象であり、インク吸収速度が遅くなると、顕著に現れるものである。結果を表2に示す。
5:印字斑は全く見られない。
4:印字斑は少し見られるが、実用上問題ないレベル。
3:印字斑やや多いが、実用上問題ないレベル。
2:印字斑が多く、実用上問題のあるレベル。
1:印字斑が非常に多く、実用不可。
【0106】
[画像の鮮明性(印字濃度)]
実施例10〜16のインクジェット記録体に、CANON社製インクジェットプリンター(商標:iP−4500)を用い、印字モードを光沢紙、きれいモード、マッチングしないとして、黒色インクをベタ印字した。
ベタ印字の色濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Gretag Macbeth RD−19、マクベス社製)で測定した。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
表2から明らかなように、実施例11〜14、16では、高い離型性が得られたのに対して、実施例10と実施例15では、離型性が劣っていた。このことから、離型剤として使用するためには、炭素数12〜22の脂肪酸の乳化物が好ましいことが分かった。
また、実施例10〜15では、高いインク吸収性と画像の鮮明性が得られたのに対して、実施例16では、これらの評価が劣っていた。このことから、インクジェット記録体の離型剤として使用するためには、第4工程を行い、微細化した乳化物を使用することが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明によって得られる脂肪酸の乳化物は、インクジエット記録体等のキャスト塗工紙の製造において、離型剤として使用できる。また、軽剥離粘着テープの離型剤やワックスの成分としても使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性の脂肪酸の乳化物製造方法であって、
水中で前記脂肪酸に塩基を添加し、前記脂肪酸の塩基性塩水溶液を得る第1工程と、
前記脂肪酸の塩基性塩水溶液に乳化剤を添加し、乳化剤含有塩基性塩水溶液を得る第2工程と、
前記乳化剤含有塩基性塩水溶液に酸を添加し、前記脂肪酸の乳化物を得る第3工程
を備えることを特徴とする乳化物製造方法。
【請求項2】
前記脂肪酸が炭素数12〜30の直鎖脂肪酸である請求項1に記載の乳化物製造方法。
【請求項3】
前記脂肪酸が、40〜85℃の融点を有する脂肪酸である請求項1または2に記載の乳化物製造方法。
【請求項4】
前記乳化剤がノニオン性である請求項1〜3の何れかに記載の乳化物製造方法。
【請求項5】
さらに、乳化物とされた脂肪酸を微細化する第4工程を備える請求項1〜4の何れかに記載の乳化物製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の乳化物製造方法により得た脂肪酸の乳化物を含有する湿潤状態の塗工層表面に、鏡面体の鏡面を転写する工程を備えることを特徴とするキャスト塗工紙の製造方法。

【公開番号】特開2010−227905(P2010−227905A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81269(P2009−81269)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】