説明

脂肪酸を調製および精製する方法

脂肪酸を精製する方法であって、脂肪酸をリチウム塩と、第1の溶液中および該脂肪酸のリチウム塩の沈殿物を形成させる条件下で反応させる工程;該沈殿物を単離する工程;該沈殿物を第2の溶液中に溶解させ、続いて、そのように形成された有機層と水層とを分離させる工程;ならびに該有機層を蒸発させて、精製された脂肪酸を単離する工程を含む方法が提供される。脂肪酸の長さを増加させる方法、および脂肪酸を精製するためのリチウム塩の使用も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸の調製および精製に関する。脂肪酸は、一般に動物源および植物源に由来する脂肪族モノカルボン酸である。脂肪酸は、エネルギー源であるのみならず、身体において多くの他の重要な役割を果たす。脂肪酸は、健康な脂質レベルを調節するのに役立つことができ、炎症反応に関与する。脂肪酸はまた、血液において重要であり、凝固および血圧を調節する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの脂肪酸は、インビボで身体により合成することができる。しかし、「必須脂肪酸」と呼ばれる一部の脂肪酸は、合成することができない。必須脂肪酸には、短鎖多価不飽和脂肪酸(SC−PUFA)リノール酸およびα−リノレン酸、ならびにこれらのSC−PUFAから調製され得る長鎖多価不飽和脂肪酸(LC−PUFA)が含まれる。これらの2つの分類は、一般にさらに2つの分類、ω−3(または「オメガ3」)脂肪酸およびω−6(または「オメガ6」)脂肪酸に分けられる。代表的なLC−PUFAには、ω−3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサへキサエン酸(DHA)、ならびにω−6脂肪酸のγ−リノレン酸(GLA)、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)およびアラキドン酸(AA)が含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
必須脂肪酸はインビボで身体により合成することができないので、飲食物により提供されなければならない。したがって、これらの必須脂肪酸を単離および精製する方法および技術を開発および改善する必要性がある。個人の所要量を満たすために必要な広範な化合物および栄養補助食品を提供するために、必須脂肪酸を他の脂肪酸に転換する方法を開発および改善する必要性もある。さらに、いくつかのPUFA生成物は、薬学的に活性であるので、精製形態で必要とされる。
【0004】
簡単化された製造および/または純度の増加および/またはプロセスのより容易なスケールアップをもたらし得る、脂肪酸を精製する新規な方法が今や見出された。この新規な精製方法は、調製された脂肪酸に対して単離に使用することができるか、または前記脂肪酸の調製のためのより長いプロセスに組み込むことができる。これらの方法は、脂肪酸から非酸性不純物を除去するのに役立つ。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、脂肪酸を精製するためのリチウム塩の使用を提供する。
【0006】
本発明は、
(a)脂肪酸をリチウム塩と、第1の溶液中および該脂肪酸のリチウム塩の沈殿物を形成させる条件下で反応させる工程;
(b)該沈殿物を単離する工程;
(c)該沈殿物の溶解後に不混和性の2層を生じさせることができる第2の溶液中に、該沈殿物を溶解させる工程であって、該不混和性の2層は有機層および酸性水層である工程;
(d)該沈殿物の溶解後に形成された該不混和性の2層を分離させる工程;ならびに
(e)該有機層を蒸発させて、精製した脂肪酸を単離する工程
を含む、脂肪酸を精製する方法をさらに提供する。
【0007】
(a)式R−CHCH(COH)(式中、Rは、脂肪酸残基である)のマロン酸誘導体を脱炭酸して、式RCHCHCOHの脂肪酸を形成する工程;
(b)このように調製された脂肪酸を、上記のとおりの脂肪酸を精製する方法にかける工程
を含む、脂肪酸を調製する方法も提供される。
【0008】
(a)式R−COHの脂肪酸または式R−COの脂肪酸エステル(式中、Rは脂肪酸残基であり、Rは、C1〜6アルキル基である)を、式R−CHOHのアルコールに還元する工程;
(b)該アルコールをスルホン化して、式R−CHOSO(式中、Rは、C1〜6アルキルまたはC6〜10アリール基である)のスルホネートを形成する工程;
(c)該スルホネートをマロン酸エステル誘導体と反応させ、得られた生成物を加水分解して、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体を形成する工程;
(d)該マロン酸誘導体を脱炭酸して、式R−CHCHCOHの脂肪酸を形成する工程;および
(e)このように調製された脂肪酸を、上記のとおりの脂肪酸を精製する方法にかける工程
を含む、脂肪酸の長さを伸長させる方法がさらに提供される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用される場合、C1〜6アルキル基は、1から6個の炭素原子を有する直鎖または分岐のアルキル基、例えば、1から4個の炭素原子を有するC1〜4アルキル基である。C1〜4アルキル基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチルおよびt−ブチルが含まれる。不明確さを回避するため、2つのアルキル部分が存在する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよい。
【0010】
本明細書で使用される場合、C〜Cアルケニル基は、適用可能な場合にシスまたはトランス配置の少なくとも1つの二重結合を有し、2から4個の炭素原子を有する、直鎖または分岐のアルケニル基、例えば、−CH=CHまたは−CH−CH=CH、−CH−CH−CH=CH、−CH−CH=CH−CH、−CH=C(CH)−CHおよび−CH−C(CH)=CH、好ましくは、2個の炭素原子を有するCアルケニル基である。不明確さを回避するため、2個のアルケニル基が本発明の化合物中に存在する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよい。
【0011】
本明細書で使用される場合、ハロゲン原子は、典型的には塩素、フッ素、臭素またはヨウ素である。
【0012】
本明細書で使用される場合、C〜Cアルコキシ基またはC〜Cアルケニルオキシ基は、典型的には、それぞれ、酸素原子に結合している、前記C〜Cアルキル基または前記C〜Cアルケニル基である。
【0013】
ハロアルキル、ハロアルケニル、ハロアルコキシまたはハロアルケニルオキシ基は、典型的には、それぞれ、1個または複数の前記ハロゲン原子で置換されている、前記アルキル、アルケニル、アルコキシまたはアルケニルオキシ基である。典型的には、それは、1、2または3個の前記ハロゲン原子で置換されている。好ましいハロアルキルおよびハロアルコキシ基には、ペルハロアルキルおよびペルハロアルコキシ基、例えば、−CXおよび−OCX(式中、Xは、前記ハロゲン原子、例えば、塩素およびフッ素である)が含まれる。
【0014】
本明細書で使用される場合、C〜CアルキルチオまたはC〜Cアルケニルチオ基は、典型的には、それぞれ、硫黄原子に結合している、前記C〜Cアルキル基またはC〜Cアルケニル基、例えば、−S−CHである。
【0015】
本明細書で使用される場合、C〜Cヒドロキシアルキル基は、1個または複数のヒドロキシ基で置換されたC〜Cアルキル基である。典型的には、それは、1、2または3個のヒドロキシ基で置換されている。好ましくは、それは、単一のヒドロキシ基で置換されている。
【0016】
本明細書で使用される場合、C6〜10アリール基は、フェニル基またはナフチル基である。不明確さを回避するため、2個のアリール基が存在する場合、それらは、同じであっても異なっていてもよい。
【0017】
特に断りのない限り、C6〜10アリール基は、非置換であるか、または同じかもしくは異なり、ハロゲン原子、ならびにC1〜4アルキル、C2〜4アルケニル、C1〜4アルコキシ、C2〜4アルケニルオキシ、C1〜4ハロアルキル、C2〜4ハロアルケニル、C1〜4ハロアルコキシ、C2〜4ハロアルケニルオキシ、ヒドロキシル、メルカプト、シアノ、ニトロ、C1〜4ヒドロキシアルキル、C2〜4ヒドロキシアルケニル、C1〜4アルキルチオ、C2〜4アルケニルチオ、および−NR’R”基(ここで、R’およびR”はそれぞれ、同じかまたは異なり、水素またはC1〜4アルキルを表す)から選択される1、2、3もしくは4個の置換基で置換されていることができる。アリール基上の置換基が、フェニル、カルボシクリル、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、−COR、−SO、−CONH、−SONH、−CONHR、−SONHR、−CONRおよび−SONRから選択される場合、好ましくは、1個だけのこのような置換基が存在する。好ましくは、C6〜10アリール基は、非置換であるか、または1もしくは2個、好ましくは1個の非置換置換基で置換されている。好ましい置換基には、C1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、C1〜4アルキルチオおよびヒドロキシル基が含まれる。より好ましい置換基には、ハロゲン原子、ならびにC1〜4アルキル、C1〜2アルコキシおよびヒドロキシ基が含まれる。最も好ましくは、アリール基は非置換である。
【0018】
本明細書で使用される場合、C3〜7炭素環式基は、3から7個の炭素原子を有する、非芳香族の飽和または不飽和炭化水素環である。好ましくは、それは、3から7個の炭素原子を有する、より好ましくは3から6個の炭素原子を有する飽和または一不飽和炭化水素環(すなわち、シクロアルキル部分またはシクロアルケニル部分)である。例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルならびにこれらの一不飽和変形体、より特には、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれる。C3〜7カルボシクリル基または部分には、1個または複数の環炭素原子が、基−C(O)−で置き換えられている以外は上記のC3〜7カルボシクリル基または部分も含まれる。好ましくは、炭素環式基は、基−C(O)−で置き換えられた環炭素原子をもまったく有しない。
【0019】
本明細書で使用される場合、5または6員のヘテロシクリル基は、炭素原子の1個または複数、例えば、1、2、3または4個が、N、O、S、S(O)およびS(O)から選択される部分で置き換えられており、残りの炭素原子の1個または複数が、基−C(O)−または−C(S)−で場合によって置き換えられている、非芳香族の飽和または不飽和C5〜6炭素環式環である。残りの炭素原子の1個または複数が、基−C(O)−または−C(S)−で置き換えられている場合、好ましくは1または2個(より好ましくは2個)だけのこのような炭素原子が置き換えられている。好適なヘテロシクリル基には、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、フラニル、テトラヒドロチオフェニル、ジヒドロチオフェニル、チオフェニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、チアゾリル、チアゾリニル、イソチアゾリル、イソチアゾリニル、ジオキソラニル、オキサチオラニル、ジチオラニルおよびチオフェニルが含まれる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「塩」という用語は、塩基付加塩、酸付加塩および第四級塩を含む。例示的な塩には、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム;アルカリ土類金属水酸化物、例えば、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化マグネシウムなどの塩基と;有機塩基、例えば、N−メチル−D−グルカミン、コリントリス(ヒドロキシメチル)アミノ−メタン、L−アルギニン、L−リシン、N−エチルピペリジン、ジベンジルアミンなどと形成されるものが含まれる。
【0021】
特に断りのない限り、本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、C4〜26脂肪族モノカルボン酸、より好ましくはC10〜24脂肪族モノカルボン酸、より好ましくはC14〜24脂肪族モノカルボン酸を表す。本明細書で述べられる方法の生成物である脂肪酸は、好ましくは16から24個の炭素原子を有する。脂肪酸は、多くの供給源に由来するか、またはそれらの中に含まれる。例えば、脂肪酸は、動物または植物の脂肪、オイル、またはワックスに由来し得るか、またはそれらの中にエステル型で含まれ得る。それらは、本発明の方法の1つによって他のより短い鎖の脂肪酸からも調製され得る。
【0022】
本発明で用いる脂肪酸は、直鎖または分岐である炭化水素鎖を有する。好ましくは、炭化水素鎖は直鎖である。炭化水素鎖は、その鎖内に、C3〜7カルボシクリルまたは3から7員のヘテロシクリル環も含み得る。しかし、好ましくは、炭化水素鎖は、炭素環式またはヘテロシクリル環を含まない。炭化水素鎖はまた、これらの骨格内に、1個または複数、好ましくは1個の酸素原子を含み得る。しかし、好ましくは、炭化水素鎖は、酸素原子を含まない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸エステル」という用語は、上記の脂肪酸のエステルを表す。好ましくは、脂肪酸エステルは、C1〜6アルキル基であるアルキル基とのアルキルエステルである。したがって、好ましい脂肪酸エステルには、式R−CO(式中、Rは脂肪酸残基であり、RはC1〜6アルキル基である)のエステルが含まれる。好ましくは、Rは非置換である。好ましくは、Rは、C1〜4アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチル基、最も好ましくはエチル基である。
【0024】
本明細書で使用される場合、「脂肪酸残基」という用語は、上記のとおりの脂肪酸のヒドロカルビル尾部を指す。具体的には、脂肪酸残基は、末端カルボン酸基を除く脂肪酸に相当する。したがって、式R−COHの脂肪酸は、脂肪酸残基Rを含む。以下の検討において、脂肪酸残基は、それが由来する脂肪酸に関して記載される。不明確さを回避するため、脂肪酸残基は、式R−CO(式中、Rは、このエステルのアルキル基である)の脂肪酸エステルに由来することもできる。
【0025】
好ましくは、Rは、14から22個の炭素原子、より好ましくは16から22個の炭素原子、最も好ましくは18から20個の炭素原子を有する脂肪酸から形成される脂肪酸残基である。
【0026】
好ましくは、Rは、完全に飽和しているか、または非共役不飽和の1から6つの中心を含む脂肪酸から形成される脂肪酸残基である。非共役不飽和の中心は、オレフィン(−CH=CH−)および/またはアセチレン(−C≡C−)基を表し、これらは、これらの非局在電子が、不飽和の別の中心と共役していないように配置されている。好ましくは、脂肪酸は、非共役不飽和の2、3、4、5または6つ、より好ましくは2、3、4または5つ、より好ましくは2,3または4つ、最も好ましくは3または4つの中心を含む。非共役不飽和の中心は、オレフィン基であることが好ましい。理解されるように、所与の長さのヒドロカルビル鎖について、鎖に沿った非共役不飽和の複数の配置があってもよい。例えば、ω−3(または「オメガ3」)脂肪酸と呼ばれる脂肪酸は、n−3位に末尾の炭素−炭素二重結合を含み、すなわち、脂肪酸のメチル末端から3番目の結合は、炭素−炭素二重結合である。ω−6(または「オメガ6」)脂肪酸と呼ばれる脂肪酸は、n−6位に末尾の炭素−炭素二重結合を含み、すなわち、脂肪酸のメチル末端から6番目の結合は、炭素−炭素二重結合である。好ましくは、Rは、ω−3脂肪酸残基またはω−6脂肪酸残基とも呼ばれる、ω−3またはω−6脂肪酸から形成される脂肪酸残基である。
【0027】
最も好ましいR基は、16から22個の炭素原子、より好ましくは18から20個の炭素原子を有し、2から5個、より好ましくは2から4個、最も好ましくは3または4個の非共役オレフィン基を含むω−3またはω−6脂肪酸に由来するものである。例示的な脂肪酸残基には、γ−リノレン酸由来のC1729−残基、エイコサペンタエン酸由来のC1929−残基、ステアリドン酸由来のC1727−残基、リノール酸由来のC1731−残基、およびα−リノレン酸由来のC1729−残基が含まれる。好ましい脂肪酸残基は、γ−リノレン酸由来のC1729−残基、エイコサペンタエン酸由来のC1929−残基、およびステアリドン酸由来のC1727−残基である。最も好ましい脂肪酸残基は、γ−リノレン酸由来のC1729−残基、およびエイコサペンタエン酸由来のC1929−残基である。不明確さを回避するため、γ−リノレン酸、エイコサペンタエン酸およびステアリドン酸の構造は以下のとおりである:
【0028】
【化1】

【0029】
本発明の精製方法によって精製される脂肪酸は、好ましくはC16〜24脂肪酸である。それらは好ましくは、式R−COH(式中、Rは、上記の脂肪酸残基である)の脂肪酸から鎖伸長法を介して(例えば、マロン酸鎖伸長法を介して)調製される。したがって、本発明によって精製される脂肪酸は、好ましくは、式R−COHの脂肪酸の鎖伸長法によって生成させた、式R−CH−CH−COHからなる。式R−CH−CH−COHの脂肪酸における基Rは、好ましくは前に記載されたとおりである。
【0030】
本発明の精製方法によって精製されるこれらの脂肪酸は、好ましくは16から24個の炭素原子、より好ましくは20から22個の炭素原子を有し、2、3、4、5または6個、より好ましくは2,3、4または5個、より好ましくは2,3または4個、最も好ましくは3または4個の非共役オレフィン基を含むω−3またはω−6脂肪酸である。例示的な脂肪酸には、ω−6脂肪酸であるジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)およびエイコサジエン酸、ならびにω−3脂肪酸であるドコサペンタエン酸(DPA、ときにDEPAと呼ばれる)、エイコサテトラエン酸(ETA)およびエイコサトリエン酸が含まれる。好ましいω−6脂肪酸は、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)である。好ましいω−3脂肪酸は、ドコサペンタエン酸(DPA)およびエイコサテトラエン酸(ETA)、より好ましくはドコサペンタエン酸(DPA)である。不明確さを回避するため、DGLA(ω−6)、DPA(ω−3)およびETA(ω−3)の構造は以下のとおりであり、炭素原子の番号付けは、情報目的のために含める:
【0031】
【化2】

【0032】
前に記載したように、本発明は、脂肪酸を精製するためのリチウム塩の使用を提供する。
【0033】
典型的には、リチウム塩は、水素化リチウムアルミニウム以外である。好ましくは、リチウム塩は、水素化物生成性(hydride-yielding)ではない。
【0034】
典型的には、脂肪酸は、上に定義されたとおりの単一の脂肪酸であり、すなわち、脂肪酸は、脂肪酸の混合物ではない。したがって、典型的には、リチウム塩は、単一の脂肪酸と非酸性不純物との混合物に添加される。これらの非酸性不純物は、典型的には、例えば、本明細書に記載されるとおりの、脂肪酸を合成するプロセスの間に生成される。したがって、本発明は典型的には、脂肪酸を互いに分離することを含まない。
【0035】
典型的には、リチウム塩は、炭酸水素リチウム、炭酸リチウムまたは水酸化リチウムである。好ましくは、リチウム塩は、水酸化リチウム、より好ましくは水酸化リチウム水和物である。
【0036】
典型的には、脂肪酸は、本明細書で定義されるとおりの非共役不飽和の1から6つの中心を有する。好ましくは、脂肪酸は、ω−3またはω−6脂肪酸である。
【0037】
好ましくは、精製方法は、4つの合成段階の最後の後に行われる:
【0038】
段階1:
リチウム塩および粗脂肪酸を、第1の溶液中で合わせ、脂肪酸のリチウム塩の沈殿物を形成させる条件下で保持する。好適なリチウム塩には、炭酸水素リチウム、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムが含まれる。好ましくは、リチウム塩は水酸化リチウムである。リチウム塩は、水和物、例えば、水酸化リチウム水和物の形態で供給してもよい。リチウム塩は、その水和物形態で第1の溶液に添加してもよいが、好ましくは、最初に水などの適切な溶媒に溶解させる。好ましくは、第1の溶液は、ケトン、より好ましくはアセトンを含有する。反応の温度は、好ましくは約−30℃から約30℃の間である。
【0039】
段階2:
次いで、沈殿したリチウム塩を単離する。溶液から固体の沈殿物を単離するための任意の適切な方法、例えば、ろ過を使用し得る。沈殿物は、さらなる溶媒(例えば、段階1におけるのと同じ溶媒、好ましくはアセトン)で場合によって洗浄し、溶媒はすべて蒸発させる。
【0040】
段階3:
次いで、単離された沈殿物を、第2の溶液に溶解させる。第2の溶液は、沈殿物の溶解後に、不混和性の2層が形成されるように選択する。不混和性の2層は、酸性水層である極性の層、および非極性の有機層である。酸性水層は、好ましくは塩酸などの強鉱酸の水溶液である。非極性有機層は、好適にはエーテルである。非極性層のための好ましいエーテルは、t−ブチルメチルエーテルである。
【0041】
段階4:
この段階で、沈殿物の溶解後に形成された不混和性の2層を分離させる。従来の分離技術(例えば、単純な分離漏斗の使用)を使用し得る。不混和性の2層の分離に続いて、得られた有機層は、場合によって水で洗浄し、乾燥させることができる(例えば、NaSOの使用、続いてろ過)。
【0042】
段階5:
溶媒を蒸発により有機層から除去して、精製された脂肪酸を単離する。精製された脂肪酸は、粗生成物と比較してより高いレベルの純度を有する。例えば、純度は、約1%以上、好ましくは約2%以上、より好ましくは約5%以上増加させ得る。この段階で得られた生成物は、無色であっても着色されていてもよい。例えば、淡黄色の油を得ることができる。生成物は、好適には適当な溶媒中、クロマトグラフィー用シリカを用いて、場合によってさらに脱色させる。例えば、脱色は、ヘキサン中10〜20重量%のクロマトグラフィー用シリカとともに撹拌することによって達成され得る。
【0043】
上記精製方法で用いられる粗脂肪酸は、いくつかの供給源に由来し得る。脂肪酸を調製するための適切な方法の一つは、マロン酸誘導体の脱炭酸を介するものである。例えば、式RCHCH(COH)のマロン酸誘導体は、脱炭酸して、式RCHCHCOHの脂肪酸を形成し得る。次いで、得られた式RCHCHCOHの脂肪酸は、上記の精製方法にかけることができる。
【0044】
上記のマロン酸誘導体は、いくつかの供給源に由来し得る。例えば、それは、前のプロセスから単離および場合によって精製されて、結晶形態で供給され得る。しかし、好ましくは、精製を受けていない粗反応生成物として供給される。例えば、それは、好適にはマロン酸エステル中間体およびその後の加水分解を介して、スルホネートのマロン酸エステル誘導体への反応から供給され得る。
【0045】
本発明はまた、脂肪酸の長さを伸長させる方法を提供する。特に、この方法を使用して、脂肪酸を2個の炭素原子だけ伸長させることができる。2個の炭素原子は、脂肪酸残基Rとカルボン酸基との間に効率的に挿入される。この伸長方法は、4つの別個の段階を含む:
【0046】
段階I
出発脂肪酸は、式R−COHからなる。代替として、式R−CO(式中、Rは、脂肪酸残基であり、Rは、C1〜6アルキル基である)を有する、対応する脂肪酸エステルを用いることができる。好ましいR基は、C1〜4アルキル基、より好ましくはメチルまたはエチル、最も好ましくはエチルである。
【0047】
脂肪酸または脂肪酸エステルを、還元して、対応する式R−CHOHの脂肪アルコールを形成する。適切な還元技術は周知であり、当業者は、容易に適切な還元剤および反応条件を選択することができる。還元剤には、Red−Al(水素化ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウム)、DIBAL(水素化ジイソブチルアルミニウム)および水素化リチウムアルミニウムが含まれる。還元剤は、適切な溶媒とともに用い、好適な不活性溶媒には、エーテルおよび芳香族炭化水素ならびにこれらの誘導体が含まれる。好ましい溶媒には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランおよびトルエンが含まれる。反応の温度は変化してよく、適切な温度範囲は、0から35℃である。出発物質が脂肪酸である場合、この還元反応は水素を発生させる。水素は慎重かつ安全に除去しなければならない。脂肪酸エステル出発物質の使用により、発生した水素のみが過剰な還元剤の分解から生じるので、放出される水素の量は減少する。
【0048】
好ましい還元剤は、水素化リチウムアルミニウムである。これは、様々な形態で、例えば、固体としてまたは溶液中で反応に添加され得る。固体形態での添加は、小規模製造に適切であり得る。スケールアップした方法としては、溶液中に水素化リチウムアルミニウムを用いることが好ましく、改善された、より安全な取扱いをもたらす。
【0049】
段階II
段階Iで調製したアルコールを、次いでスルホン化して、式R−CHOSO(式中、Rは、C1〜6アルキル基またはC6〜10アリール基である)の脂肪酸のスルホネートを形成する。好ましくは、Rは、C1〜6アルキル、より好ましくはC1〜4アルキル、最も好ましくはメチルである。RがC6〜10アリール基である場合、アリール基は、好ましくはフェニルである。アリール基は、前に記載されたとおりに、非置換であるかまたは置換されている。最も好ましい置換基は、メチルである。好適なスルホン化剤は適切に選択され、例えば、メタンスルホニルクロリド、フェニルスルホニルクロリドおよび4−メチルフェニルスルホニルクロリドは、好ましいスルホン化剤であり、メタンスルホニルクロリドは、特に好ましい。好ましくは、反応は、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンまたはトリエチルアミンなどの第三級塩基の存在下で行われる。反応の温度は、好ましくは約0から40℃の間である。
【0050】
反応は、場合によって適切な溶媒中で行う。塩素化溶媒(例えば、ジクロロメタン)は、この種のスルホン化反応で従来用いられている。しかし、塩素化溶媒の使用の最少化または回避が好ましい。塩素化溶媒の使用を減少させまたは回避する方法の一つは、塩基としてピリジンを用いることである。
【0051】
段階III
段階IIで調製されたスルホン化脂肪酸は、その後、マロン酸エステル誘導体と反応させ、その生成物を、加水分解すると、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体が形成される。当初の反応は、好ましくは無水アルコール、例えば、無水エタノール中で行われる。反応の温度は、好ましくは約60〜90℃である。加水分解は、任意の適切な加水分解条件下で、例えば、水性アルコール中、I族金属水酸化物の存在下で行うことができる。反応の温度は、好ましくは約15〜50℃である。
【0052】
適切なマロン酸エステル誘導体は、I族メタロ(metalo)−マロン酸塩であり、ジアルキルマロン酸ナトリウム、NaCH(CO(式中、Rは、C1〜6アルキル基である)が挙げられる。好ましくは、Rは、C1〜4アルキル基、より好ましくはエチルである。この反応は、最初に式R−CHCH(COのエステルを生成し、次いで、これを加水分解して、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体を調製する。加水分解試薬および条件は周知である。例えば、適切な水酸化物(例えば、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム)との反応は、マロン酸誘導体を生成し得る。
【0053】
Rの性質に応じて、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体は、単離および結晶化され得る。しかし、一部のマロン酸誘導体は、容易にまたはまったく結晶化しない。例えば、EPAまたはこのエステル(すなわち、Rが、HC−(CH−CH=CH)−(CH−の場合)から形成されるマロン酸誘導体は、容易に結晶化しない。これらの状況で、精製方法が、非結晶性生成物に対して容易に行うことができない場合、上記のリチウム塩精製方法は、最終脂肪酸の純度を向上させるための都合のよい方法を提供する。リチウム塩精製方法は、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体を結晶化および精製する必要性を回避し、その代わりに最終的な脂肪酸生成物の精製をそれどころか可能にさせる。したがって、前に記載された脂肪酸の長さを伸長させるための方法は、好ましくは、段階IIIからの粗生成物を採用し、そして段階IIIの生成物を最初に精製することなく、これを段階IVの原料として用いる。
【0054】
段階IV
段階IIIで調製されたマロン酸誘導体は、その後に脱炭酸させて、式R−CHCHCOHの脂肪酸を形成する。標準的な脱炭酸技術を用いることができ、発生した二酸化炭素は、反応の過程の間に除去される(例えば、真空によって)。例えば、単純な加熱により、脱炭酸が行われ得る。適切な加熱温度は変わるが、一般的な範囲は、120〜180℃、例えば、130〜170℃、好ましくは140〜160℃を含む。温度は、反応が完了してしまうまで維持されるべきであり、これは、二酸化炭素の放出が減少および最終的に停止することによりすぐわかる。真空を用いることもでき、例えば、約30mb未満の真空が適切である。
【0055】
段階V
段階IVで調製された脂肪酸は、その後に上記のとおりの脂肪酸を精製する方法を使用して精製する。この方法による精製により、脂肪酸から非酸性不純物が除去される。最終的な脂肪酸生成物は、段階IVで形成された脂肪酸と比べてより高いレベルの純度を有する。最終脂肪酸の純度は、段階Iで用いられた当初の脂肪酸(すなわち、式R−COHの脂肪酸)の純度と同様の純度を有し得る。当初の脂肪酸が、非酸性不純物を含んでいた場合、最終脂肪酸の純度はより大きくなる。
(実施例)
【実施例1】
【0056】
DGLA(イコサ−8(Z)、11(Z)、14(Z)−トリエン酸の調製および精製
実施例1a:GLAlcohol(オクタデカ−6(Z)、9(Z)、12(Z)−トリエノール)の調製
窒素下で新鮮な乾燥テトラヒドロフラン(12000部、体積)に、テトラヒドロフラン中水素化リチウムアルミニウム(2.4モーラー、1620部、体積)を添加する。この混合物を0〜5℃に冷却し、乾燥テトラヒドロフラン(2000部、体積)中GLA(γリノレン酸、95〜98%、1112部、重量)を、撹拌しながら窒素流下で温度を約3〜7℃に維持して、30〜40分かけて添加する。次いで、混合物を窒素下、8〜12℃で1時間および12〜18℃で2時間撹拌する。3〜5℃に冷却後、テトラヒドロフラン(500部、体積)中水(152部、体積)の溶液を、窒素の良好な流れ下15〜20分かけて添加する。次いで、水酸化ナトリウムの水溶液(2M、456部、体積)を10〜15分かけて添加する。この混合物を窒素下で密封して10〜15℃で一晩撹拌し、次いで、無水硫酸ナトリウム(500部、重量)を添加し、混合物をさらに30分間撹拌する。ろ過後、無機固形物をテトラヒドロフラン(2000部、体積)で洗浄する。得られたTHF溶液を真空下で蒸発させる。生成物中の水をすべて、2×2000部、体積のトルエンとともに蒸発させることによって除去する。淡黄色の油としてGLAlcohol(1029部、重量、97.4%)が得られる。
【0057】
実施例1b:GLAlcoholメタンスルホネート(オクタデカ−6(Z)、9(Z)、12(Z)−トリエニルメタンスルホネートの調製
窒素下および8〜12℃でGLAlcohol(1000部、重量)およびメタンスルホニルクロリド(456部、重量)の撹拌混合物に、乾燥ピリジン(307部、重量)を、温度を15℃未満に維持して、30〜40分の時間をかけて添加する。この混合物をこの温度で3〜5時間撹拌し、次いで、室温に加温させ、24〜48時間の時間をかけて撹拌する。ピリジン塩酸塩の沈殿物が、混合物中に生じる。次いで、反応混合物をヘキサン(4000部、体積)で希釈し、無水硫酸ナトリウム(200部、重量)を添加し、得られた混合物を1時間撹拌する。沈殿した固形物をろ別し、ヘキサンで洗浄する。ヘキサンをろ液から真空中で除去して、粗メタンスルホネート(約1300部、重量)を得て、これを次の段階に用いることができる。
【0058】
代替の精製方法(後の段階のより純粋な生成物およびあまり着色していない最終生成物をもたらす)は、以下のとおりである:反応混合物をt−ブチルメチルエーテル(4000部、体積)で希釈し、5〜10℃に冷却する。撹拌しながら窒素下で、水(2000部、体積)を添加し、その水層を濃塩酸でpH=1〜2に調整した。15分後、層を分離させ、水層をt−ブチルメチルエーテル(500部、体積)で抽出する。次いで、合わせた有機層を1M塩酸(1000部、体積)および水(4×500部、体積)で洗浄する。有機層を乾燥させ(無水硫酸ナトリウム、300部、重量)、ろ過し、真空中で蒸発させて、より純粋なメタンスルホネートを得て、次の段階に用いる。
【0059】
実施例1c:2−Carboxy DGLA(2−カルボキシ−イコサ−8(Z)、11(Z)、14(Z)−トリエン酸の調製

無水エタノール(10000部、体積)に、メタノール(1370部、体積)中ナトリウムメトキシド30%w/vを添加した。窒素下、室温で、マロン酸ジエチル(1520部、重量)を速い流れ中10〜15分かけて添加し、この混合物をさらに10〜15分間撹拌する。粗GLAlcoholメタンスルホネート(1300部)を、速い流れ中10〜15分かけて添加し、混合物を窒素下3.5〜4.0時間撹拌し、および還流下で加熱する。室温に冷却後、水(1000部、体積)中水酸化カリウム85%(1900部、重量)を溶解させ、次いで、95%エタノール(13000部、体積)を添加することによって作製した溶液を、窒素下で添加する。発熱が起こり、反応の温度は30〜40℃に達する。混合物を、窒素下、室温で4〜5時間撹拌する。全反応混合物をロータリーエバポレータ中で蒸発させて、エタノールを除去する。蒸発からの残渣を水(10000部、体積)に溶解させ、t−ブチルメチルエーテル(10000部、体積)を添加した。混合物を撹拌し、20%硫酸(約6000部、体積)を用いて窒素下で酸性化する(最高温度20℃)。層を分離させた後、有機層を水(4×2000部、体積)で洗浄し、乾燥させ(無水硫酸ナトリウム)、真空中で蒸発させて、油を得て、これは、掻き取り直後に結晶化して、粗2−Carboxy DGLAを得る(1170〜1220部、重量、88〜92%)。
【0060】
実施例1d:DGLA(イコサ−8(Z)、11(Z)、14(Z)−トリエン酸の調製
粗2−Carboxy DGLA(1200部、重量)を30mb未満の真空下で撹拌しながら140〜160℃で加熱する。二酸化炭素が発生し、真空により除去する。3〜5時間後、二酸化炭素の放出は止まる。フラスコを室温に冷却し、窒素を反応容器中に入れて、油(1000〜1030部、重量、95〜98%)を得る。
【0061】
実施例1e:DGLAの精製
実施例1dの生成物(1000部、重量)をHPLC(または同等物)アセトン(3550〜3600部、体積)に、よく撹拌しながら窒素下で溶解させ、水(975部、体積)中水酸化リチウム水和物(150部、重量)の溶液を30分かけてゆっくり添加する。この混合物をさらに10分間撹拌する。さらにアセトン(3500〜3600部、体積)を撹拌しながら30分かけて添加し、2〜3時間、撹拌を続けて、0から−5℃に冷却する。混合物をこの温度で一晩撹拌させる。沈殿したリチウム塩をろ過し、予め冷却したアセトンで洗浄し、吸引乾燥させる。得られた固形物を、窒素下t−ブチルメチルエーテル(6000部、体積)および1M塩酸(6000部、体積)の撹拌した冷却(0〜10℃)混合物に少しずつ添加する。得られた有機層を分離させ、水(4×500〜750部、体積)で洗浄し、乾燥させる(NaSO)。ろ過後、溶媒を蒸発させ、得られた油を高真空下(50〜60℃、0.1〜1.0mb)で数時間加熱して、微量の溶媒を除去する。淡黄色の油としてDGLAが得られる(760〜800部、重量、76〜80%)。透明な油への脱色は、クロマトグラフィー用シリカ35〜70μm粒径(20重量%)の存在下で10体積のヘキサン中DGLAを1時間撹拌し、ろ過し、溶媒を蒸発させることによって得ることができる。
【実施例2】
【0062】
DPA(ドコサ−7(Z)、10(Z)、13(Z)、16(Z)、19(Z)−ペンタエン酸の調製および精製
出発物質EPAエチルエステル(エイコサペンタエン酸のエチルエステル)から以外は、実施例1におけるDGLAと同様に、DPAを調製した。
【0063】
第1の工程において、EPAlcohol(イコサ−5(Z)、8(Z)、11(Z)、14(Z)、17(Z)−ペンタエノール)は、GLAをEPAエチルエステル(1320部、重量)で置き換えることによって、実施例1aと同様に形成した。
【0064】
第2の工程において、EPAlcoholメタンスルホネート(イコサ−5(Z)、8(Z)、11(Z)、14(Z)、17(Z)−ペンタエニルメタンスルホネート)は、GLAlcoholを前記EPAlcohol(1091部、重量)で置き換えることによって、実施例1bと同様に形成した。
【0065】
第3の工程において、2−Carboxy DPA(2−カルボキシ−ドコサ−7(Z)、10(Z)、13(Z)、16(Z)、19(Z)−ペンタエン酸)は、GLAlcoholメタンスルホネートを前記EPAlcoholメタンスルホネート(1391部、重量)で置き換えることによって、実施例1cと同様に形成した。
【0066】
第4の工程において、DPA(ドコサ−7(Z)、10(Z)、13(Z)、16(Z)、19(Z)−ペンタエン酸)は、2−Carboxy DGLAを前記2−Carboxy DPAで置き換え、アセトン混合物を−15〜−20℃に冷却することによって、実施例1dと同様に形成した。
【0067】
第5の工程において、DPAは、DGLAを前記DPAで置き換える以外は、実施例1eと同じリチウム塩精製方法を用いて精製する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸を精製するためのリチウム塩の使用。
【請求項2】
前記リチウム塩が、水酸化リチウムである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記脂肪酸が、C14〜24脂肪酸である、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記脂肪酸が、ジホモ−γ−リノレン酸(DGLA)、エイコサジエン酸、ドコサペンタエン酸(DPA)、エイコサテトラエン酸(ETA)またはエイコサトリエン酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
(a)脂肪酸をリチウム塩と、第1の溶液中および前記脂肪酸のリチウム塩の沈殿物を形成させる条件下で反応させる工程;
(b)前記沈殿物を単離する工程;
(c)前記沈殿物の溶解後に不混和性の2層を生じさせることができる第2の溶液中に、前記沈殿物を溶解させる工程であって、前記不混和性の2層は有機層および酸性水層である工程;
(d)前記沈殿物の溶解後に形成された前記不混和性の2層を分離させる工程;ならびに
(e)前記有機層を蒸発させて、精製した脂肪酸を単離する工程
を含む、脂肪酸を精製する方法。
【請求項6】
前記リチウム塩および/または前記脂肪酸が、請求項2から4のいずれか一項に記載のものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(a)式R−CHCH(COH)(式中、Rは、脂肪酸残基である)のマロン酸誘導体を脱炭酸して、式RCHCHCOHの脂肪酸を形成する工程;
(b)このように調製された脂肪酸を、請求項5または6に記載の脂肪酸を精製する方法にかける工程
を含む、脂肪酸を調製する方法。
【請求項8】
(a)式R−COHの脂肪酸または式R−COの脂肪酸エステル(式中、Rは脂肪酸残基であり、Rは、C1〜6アルキル基である)を、式R−CHOHのアルコールに還元する工程;
(b)前記アルコールをスルホン化して、式R−CHOSO(式中、Rは、C1〜6アルキルまたはC6〜10アリール基である)のスルホネートを形成する工程;
(c)前記スルホネートをマロン酸エステル誘導体と反応させ、得られた生成物を加水分解して、式R−CHCH(COH)のマロン酸誘導体を形成する工程;
(d)前記マロン酸誘導体を脱炭酸して、式R−CHCHCOHの脂肪酸を形成する工程;および
(e)このように調製された脂肪酸を、請求項5または請求項6に記載の脂肪酸を精製する方法にかける工程
を含む、脂肪酸の長さを伸長させる方法。
【請求項9】
Rが、14から22個の炭素原子を含む脂肪酸残基である、請求項7または請求項8に記載の方法。
【請求項10】
Rが、18から20個の炭素原子を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
Rが、2から6個の非共役オレフィン基を含む、請求項7から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Rが、ω−3またはω−6脂肪酸残基である、請求項7から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Rが、γ−リノレン酸由来のC1729−残基、エイコサペンタエン酸由来のC1929−残基、ステアリドン酸由来のC1727−残基、リノール酸由来のC1731−残基またはα−リノレン酸由来のC1729−残基である、請求項7から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
工程(a)における前記還元が、水素化リチウムアルミニウムの溶液で行われる、請求項8から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
式R−CHCH(COH)の前記マロン酸誘導体が、精製なしでおよび/または結晶化なしで工程(d)の前記脱炭酸において直接用いられる、請求項8から14のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−518088(P2013−518088A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550509(P2012−550509)
【出願日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際出願番号】PCT/GB2011/000104
【国際公開番号】WO2011/092467
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512171881)ビーエイエスエフ ファーマ(コーラニッシュ)リミテッド (2)
【Fターム(参考)】