説明

脂質膜局在型蛍光プローブ

【課題】脂質膜におけるヒドロキシルラジカルの挙動を正確に捉える蛍光プローブを提供。
【解決手段】ヒドロキシルラジカルと反応して強度又は波長を変化させる機能性蛍光分子ユニットと、蛍光プローブに対して脂質膜局在性を付与するリン脂質構造を含む疎水性分子ユニットをその構造中に有する。該蛍光プローブとしては、例えば次式(A)で表される化合物を挙げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂質膜に局在し、脂質膜中、あるいは脂質膜付近において、計測対象とした生理活性種を検出するための蛍光プローブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生体中に存在する生理活性種の濃度は常に刻々と変化しており、これが生体の恒常性を維持することに繋がっている。従って、生体システムを詳細に理解しようと欲すれば、生物が生きた状態において、生理活性種に関する動的な情報を得ることが必要不可欠となる。
【0003】
生物が生きた状態において、生理活性種に関する動的な情報を得る方法としては蛍光プローブを用いた分析法がある。
【0004】
蛍光プローブを用いた非破壊的分析法は、細胞を破砕した後に活性を測定するという従来の破壊的分析法では得られなかった生理活性種の時間的かつ空間的な情報を得ることが可能であり、近年細胞内における生理活性種の動態を解明するための有力なツールとして、非常に大きな注目を集めている(非特許文献1参照)。
【0005】
蛍光プローブは種々のものが提案されてきているが、蛍光プローブの端緒はCa2+計測用蛍光プローブ(非特許文献2−4参照)であり、以降、金属イオン計測用蛍光プローブを中心に様々な蛍光プローブが開発され、その有用性が証明されている。
【0006】
しかしながら、従来の蛍光プローブ開発においては、細胞質における生理活性種の挙動を捉えることのみに主眼が置かれ、細胞質以外、すなわち脂質膜(細胞膜)等における生理活性種の挙動をとらえることについては注目されていなかった。
【0007】
近年、細胞内プロセスの包括的理解に対する要望は益々高まっており、これに伴い細胞質以外、すなわち脂質膜(細胞膜)等における生理活性種の挙動の解明についても非常に重要性が高まっている。
【0008】
例えば、種々の疾病や老化等と深く関与すると考えられている脂質過酸化反応は脂質膜において進行する反応であり、この脂質過酸化反応に関与している生理活性種の挙動が解明できれば、種々の疾病や老化等のメカニズムを知る一助となる。
【0009】
そして、この脂質過酸化反応はヒドロキシルラジカルが主に誘起していると言われている。しかしながら、既存のヒドロキシルラジカル計測用蛍光プローブとして知られるテレフタル酸(非特許文献5,6参照)、蛍光基標識ニトロキシド(非特許文献7−10参照)、HPF及びAFP(非特許文献11参照)、蛍光基標識DNA(非特許文献12参照)、CCA及びSECCA(非特許文献13−15参照)はいずれも水溶液系におけるヒドロキシルラジカルの計測を目的として開発されたものであり、脂質膜におけるヒドロキシルラジカルの挙動を正確に捉える目的に使用することは困難であった。
【非特許文献1】Zhang,J.,Campbell,R.E.,Ting,A.Y.,Tsien,R.Y.(2002)Nature Reviews Molecular Cell Biology,3,906-918.
【非特許文献2】Tsien,R.Y.(1980) Biochemistry,19,2396-2404.
【非特許文献3】Grynkiewicz,G.,Poenie,M.,Tsien,R.Y.(1985) J.Biol.Chem.,260,3440-3450.
【非特許文献4】Minta,A.,Kao,J.P.Y.,Tsien,R.Y.(1989) J.Biol.Chem.,264,8171-8178.
【非特許文献5】Yan,E.B.,Unthank,J.K.,Castillo-Melendez,M.,Miller,S.L.,Langford,S.J.,Walker,D.W.(2005) J.Appl.Physiol.,98,2304-2310.
【非特許文献6】Qu,X.,Kirschenbaum,L.J.,Borish,E.T.(2000) Photochem.Photobiol.,71,307-313.
【非特許文献7】Pou,S.,Huang,Y-I.,Bhan,A.,Bhadti,V.S.,Hosmane,R.S.,Wu,S.Y.,Cao,G-L.,Rosen,G.M.(1993) Anal.Biochem.,212,85-90.
【非特許文献8】Pou,S.,Bhan,A.,Bhadti,V.S.,Wu,S.Y.,Hosmane,R.S.,Rosen,G.M.(1995) FASEB J.,9,1085-1090.
【非特許文献9】Yang,X-F.,Guo,X-Q.(2001) Anal.Chim.Acta.,434,169-177.
【非特許文献10】Yang,X-F.,Guo,X-Q.(2001) Analyst,126,1800-1804.
【非特許文献11】Setsukinai,K-I.,Urano,Y.,Kakinuma,K.,Majima,H.J.,Nagano,T.(2003) J.Biol.Chem.,278,3170-3175.
【非特許文献12】Soh,N.,Makihara,K.,Sakoda,E.,Imato,T.(2004) Chem.Commun.,496-497.
【非特許文献13】Makrigiorgos,G.M.,Baranowska-Korttlewicz,J.,Bump,E.,Sahu,S.K.,Berman,R.M.,Kassis,A.I.(1993) Int.J.Radiat.Biol.,63,445-458.
【非特許文献14】Makrigiorgos,G.M.,Folkard,M.,Huang,C.,Bump,E.,Baranowska-Kortylewicz,Sahu,S.K.,Michael,B.D.,Kassis,A.I.(1994) Radiat.Res.,138,177-185.
【非特許文献15】Makrigiorgos,G.M.,Bump,E.,Huang,C.,Baranowska-Kortylewicz,J.,Kassis,A.I.(1995) Free Radical Biol.Med.,18,669-678.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
解決しようとする問題点は、従来の蛍光プローブが、脂質膜における生理活性種、例えばヒドロキシルラジカルの挙動を正確に捉える目的に使用することが困難であったという点である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る蛍光プローブは、生理活性種を捕捉あるいは生理活性種と反応することにより蛍光を変化させる役割を担う機能性蛍光分子ユニットと、蛍光プローブに対して脂質膜局在性を付与する役割を担う疎水性(脂溶性)分子ユニットをその構造中に有することを最も主要な特徴とする。機能性蛍光分子ユニットと疎水性(脂溶性)分子ユニットは直接結合していてもよく、リンカーを介していても良い。リンカーは両者を結合するものであれば、特に限定されない。例えば、置換基を有していても良いC1からC6のアルキル基を挙げることができる。
【0012】
ここで、前記機能性蛍光分子ユニットとしては例えば活性酸素種、更に言えばヒドロキシルラジカルと反応して蛍光強度または波長が変化するものを挙げることができる。ヒドロキシルラジカルと反応して蛍光強度または波長が変化する機能性蛍光分子ユニットとしては、例えばクマリン骨格又はフェノキサゾン(Phenoxazone)骨格を有するものを挙げることができる。
【0013】
また、前記疎水性分子ユニットとしては例えば分子構造中に脂質構造を含むものを挙げることができる。脂質構造を構成する脂質としては単純脂質、複合脂質、イソプレノイド等を挙げることができる。この脂質構造を構成する脂質としては複合脂質が好ましく、複合脂質としては、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質等を挙げることができる。リン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ホスファチジルイノシトール(PI)等を挙げることができる。なお、前記で記した種々の脂質を機能性蛍光分子ユニットと化学的に結合する際には、その結合部位の構造が本来の脂質分子の構造から一部変化する。従って、ここで言う脂質とは、この化学結合に伴い形成される脂質誘導体を含んでいる。
【0014】
すなわち、本発明に係る蛍光プローブとしては、例えば下記の一般式(A):
【化1】

(式中、Rは水素原子又はC1-18アルキル基を示し、かつn = 8〜20)で表される化合物又はその塩が提供される。
【0015】
上記の発明のより好ましい様態として、上記一般式(A)において、Rが水素原子であり、かつn = 14である化合物又はその塩が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る蛍光プローブは、疎水性分子ユニットと脂質膜との疎水性相互作用に基づき、脂質膜に局在し、更に機能性蛍光分子の作用に基づき、計測対象とした生理活性種、例えばヒドロキシルラジカルと反応して蛍光強度または波長が変化するので、脂質膜中またはその付近に存在する生理活性物質を効果的に検出することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
脂質膜における生理活性種の挙動を正確に捉えるという目的を、生理活性種に応答する機能性蛍光分子ユニットに疎水性分子ユニットを結合させるという簡単な構成で、機能性蛍光分子ユニットの蛍光応答性を損なわずに実現した。その例として、ヒドロキシルラジカルに応答するクマリン骨格を有する機能性蛍光分子ユニットにホスファチジルエタノールアミン(PE)誘導体を結合した蛍光プローブを開発し、前記目的を達成した。以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
【実施例】
【0018】
(実験1)ヒドロキシルラジカル計測用蛍光プローブ(1,2-dipalmitoylglycerophosphorylethanolamine labeled with coumarin:DPPEC)の合成
〔実験操作〕
Coumarin-3-carboxylic acid(CCA)、1-ethyl-3-(3-dimethylamino- propyl) carbodiimide hydrochloride(EDC)、1-hydroxy-7-azabenzo- triazole(HOAt)をCHCl3とDMFの混合溶媒に溶解し、室温で一時間攪拌した。その後、1,2-dipalmitoylglycerophosphorylethanolamine(DPPE)とtriethylamine(TEA)を反応溶液に添加し、室温で一晩攪拌した。反応溶液をエバポレーターで減圧濃縮した後、抽出、シリカゲルカラムクロマトグラフィー精製により白色固体を得た。
【0019】
〔実験結果〕
1H-NMR測定及び質量分析(MALDI-TOF/MS)測定により、目的としたDPPECが得られたことを確認した。
【0020】
(実験2)DPPECのヒドロキシルラジカル検出能評価(様々な量のヒドロキシルラジカルを発生)
DPPECのヒドロキシルラジカル検出能を評価するため、1, 2-dipalmitoyl-sn-glycerophosphorylcholine(DPPC)のリポソームに導入したDPPECに対し、銅を介するH2O2のレドックス分解反応により発生させたヒドロキシルラジカルを作用させ、蛍光スペクトル測定を行った。
【0021】
〔実験操作〕
DPPC 8.5 mgをCHCl3に溶解し、10 mg/mL DPPEC溶液を50 μL添加した。その後、55℃の水浴中でN2を流しながら溶媒を除去した。0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)を加え、ボルテックスした後、超音波を照射してDPPEC導入リポソームを形成した(100 μM DPPEC/2 mM DPPC)。
【0022】
100 μM DPPEC導入リポソーム溶液250 μLに対し、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)を添加し、励起及び蛍光スペクトル測定を行った(最終濃度: 50 μM DPPEC)。その後、種々濃度のCuSO4水溶液、H2O2水溶液を添加し、タイムコース測定を開始した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 0, 0.1, 1, 5, 10, 50 μM CuSO4, 1 mM H2O2)。測定開始から5分後、アスコルビン酸ナトリウム水溶液を添加した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 0, 0.1, 1, 5, 10, 50 μM CuSO4, 1 mM H2O2, 100 μM アスコルビン酸)。さらに60分後、蛍光スペクトル測定を行った。測定条件は37℃、励起波長400 nm、蛍光波長444 nmとした。
【0023】
〔実験結果〕
DPPEC導入リポソームに対し、種々濃度のヒドロキシルラジカルを作用させた時の蛍光強度比の時間変化を図1に、また蛍光スペクトル測定の結果を図2に示す。図1で示したように、DPPECはアスコルビン酸の添加に伴い直ちに最大蛍光波長における蛍光強度比を増大することが明らかとなった。さらに、この蛍光強度比の増大はCu2+濃度の増大に伴って大きくなることが確認された。また、図2で示したように、Cu2+濃度の増大に伴い蛍光スペクトルの蛍光強度も増大することが確認された。従って、DPPECのクマリン部位がヒドロキシルラジカルとの反応により、強蛍光体である7-ヒドロキシ体を形成したと考えられる。以上の結果から、DPPECがヒドロキシルラジカル検出能を有していることが示された。
【0024】
(実験3)DPPECのヒドロキシルラジカル検出能評価(ヒドロキシルラジカル消去剤を添加)
DMSOはヒドロキシルラジカルの代表的な消去剤として知られている。そこで、DPPECがヒドロキシルラジカルと反応して蛍光変化を起こしていることを確認するため、DPPECを用いたヒドロキシルラジカル検出に対してDMSOが与える影響について評価した。
【0025】
〔実験操作〕
100 μM DPPEC導入リポソーム溶液250 μLに対し、種々濃度のDMSOを含んだ0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)、さらにCuSO4水溶液、H2O2水溶液を添加し、タイムコース測定を開始した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 10 μM CuSO4, 1 mM H2O2, 0, 0.1, 1, 10 mM DMSO)。測定開始から5分後、アスコルビン酸ナトリウム水溶液を添加した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 10 μM CuSO4, 1 mM H2O2, 100 μM アスコルビン酸, 0, 0.1, 1, 10 mM DMSO)。測定条件は37℃、励起波長400 nm、蛍光波長444 nmとした。
【0026】
一方、100 μM DPPEC導入リポソーム溶液250 μLに対し、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)、さらにCuSO4水溶液、H2O2水溶液を添加し、タイムコース測定を開始した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 10 μM CuSO4, 1 mM H2O2)。測定開始から5分後、アスコルビン酸ナトリウム水溶液を添加した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 10 μM CuSO4, 1 mM H2O2, 100 μM アスコルビン酸)。さらに、測定開始から7分後、DMSO水溶液を添加した(最終濃度: 50 μM DPPEC, 10 μM CuSO4, 1 mM H2O2, 100 μM アスコルビン酸, 10 mM DMSO)。測定条件は37℃、励起波長400 nm、蛍光波長444 nmとした。
【0027】
〔実験結果〕
測定サンプルに予めDMSOを添加していた場合の結果を図3に示す。これを見るとわかるように、DMSOの影響によりヒドロキシルラジカル発生に伴う蛍光強度比の増大は小さくなることが確かめられた。一方、ヒドロキシルラジカル発生により蛍光強度が増大している途中でDMSOを加えた場合、図4に示すように、添加直後から直ちに蛍光強度比の増大が抑制された。これらの結果は、発生したヒドロキシルラジカルがDMSOによって消去され、DPPECの7-ヒドロキシ体の形成が妨げられたことに起因していると考えられる。以上の結果から、DPPECの蛍光変化がヒドロキシルラジカルとの反応に基づくものであることを確認することができた。
【0028】
(実験4)DPPECのヒドロキシルラジカル選択性評価
DPPECのヒドロキシルラジカルに対する選択性を評価するため、代表的な活性酸素種であるパーオキシナイトライト(ONOO-)、次亜塩素酸イオン(OCl-)、スーパーオキシドアニオン(・O2-)、過酸化水素(H2O2)、一酸化窒素(NO)、ペルオキシラジカル(ROO・)を作用させ、蛍光測定を行った。
【0029】
〔実験操作〕
100 μM DPPEC導入リポソーム溶液250 μLに対し、0.1 M リン酸緩衝液(pH 7.4)を添加し、タイムコース測定を開始した(最終濃度: 50 μM DPPEC)。測定開始から5分後、種々濃度の活性酸素種発生剤を添加した(最終濃度: 50 μM TDFT, {50 μM ONOO-, 50 μM NaOCl (50 μM OCl-), 50 μM KO2 (50 μM ・O2-), 50 μM H2O2, 25 μM NOC 7 (50 μM NO), 25 μM 2, 2’-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride (50 μM ROO・)})。また、同様にして、CuSO4水溶液、H2O2水溶液を添加した5分後にアスコルビン酸ナトリウム溶液を加えてヒドロキシルラジカルを発生させた(最終濃度: 50 μM DPPEC, {[CuSO4]/[H2O2]/[ascorbic acid]: 50 μM/500 μM/25 μM, 50 μM/500 μM/50 μM (50, 100 μM ・OH)})。測定条件は37℃、励起波長400 nm、蛍光波長444 nmとした。
【0030】
〔実験結果〕
様々な活性酸素種を作用させた際のDPPECの蛍光強度比の時間変化を図5に示す。これを見ると明らかなように、DPPECはヒドロキシルラジカル以外の活性酸素種については有意な蛍光変化を示さないことが明らかとなった。これより、DPPECがヒドロキシルラジカルに対して優れた選択性を有することが確認できた。
【0031】
(実験5)脂質膜局在性の評価
DPPECは脂質膜局在性を付与するために疎水性であるリン脂質部位を有している。そこで、新規蛍光プローブであるDPPECと既存のプローブであるCCAが各々ヒドロキシルラジカルとの反応に伴い形成する蛍光体であるDPPEHCと7-OH-CCAを用い、蛍光プローブの細胞膜局在性を評価した。
【0032】
〔実験操作〕
培養したRAW264細胞に対し、DPPEHCあるいはCCAを添加し、37℃でインキュベートした。その後、遠心分離操作による洗浄を行い、緩衝液を加えてプレートリーダーによる蛍光測定を行った。なお、蛍光プローブを添加しない細胞懸濁溶液をブランクとして用いた。
【0033】
〔実験結果〕
プレートリーダーによる蛍光測定の結果を図6に示す。図6を見るとわかるように、疎水性部位を持たない7-OH-CCAはブランクと同等の蛍光強度を示し、細胞膜局在性を持たないことが確認された。一方で、DPPEHCはより強い蛍光強度を示し、細胞膜に局在していることが明らかとなった。以上のことから、DPPECは優れた細胞膜局在性を有しているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】DPPEC導入リポソームに対して種々濃度のヒドロキシルラジカルを作用させた時の蛍光強度比の時間変化を示すグラフである(発生試薬は硫酸銅(II)、過酸化水素、アスコルビン酸の混合溶液で、添加する硫酸銅(II)の濃度を変化させた)。
【図2】DPPEC導入リポソームに対して種々濃度のヒドロキシルラジカルを作用させた時の蛍光強度と蛍光波長(nm)との関係を示すグラフである(発生試薬は硫酸銅(II)、過酸化水素、アスコルビン酸の混合溶液で、添加する硫酸銅(II)の濃度を変化させた)。
【図3】DPPEC導入リポソームに対してヒドロキシルラジカルを作用させた際の蛍光強度比の時間変化(予めDMSOを添加していた場合)を示すグラフである(発生試薬は硫酸銅(II)、過酸化水素、アスコルビン酸の混合溶液で最後にアスコルビン酸を加えた)。
【図4】DPPEC導入リポソームに対して種々濃度のヒドロキシルラジカルを作用させた際の蛍光強度比の時間変化(途中でDMSOを加えた場合)を示すグラフである(発生試薬は硫酸銅(II)、過酸化水素、アスコルビン酸の混合溶液で最後にアスコルビン酸を加え、これにより観測される蛍光増大の途中でDMSOを加えた)。
【図5】DPPEC導入リポソームに対して様々な活性酸素種を作用させた際の蛍光強度比の時間変化を示すグラフである。
【図6】DPPEHCあるいは7-OH-CCAをRAW264細胞に添加し、その後洗浄した時の細胞懸濁溶液の蛍光強度をプレートリーダーにより測定したグラフである(蛍光プローブを添加しない場合の結果もリファレンスとして示す)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理活性種と反応して蛍光強度または波長が変化する機能性蛍光分子ユニットと、疎水性分子ユニットとを備えた蛍光プローブ。
【請求項2】
前記機能性蛍光分子ユニットが活性酸素種と反応して蛍光強度または波長が変化するものであることを特徴とする請求項1に記載の蛍光プローブ。
【請求項3】
前記機能性蛍光分子ユニットがヒドロキシルラジカルと反応して蛍光強度または波長が変化するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光プローブ。
【請求項4】
前記機能性蛍光分子ユニットがクマリン骨格を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項5】
前記機能性蛍光分子ユニットがフェノキサゾン(Phenoxazone)骨格を有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項6】
前記疎水性分子ユニットが脂質構造を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項7】
前記疎水性分子ユニットが複合脂質構造を含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項8】
前記疎水性分子ユニットがリン脂質構造を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項9】
前記疎水性分子ユニットがホスファチジルエタノールアミン誘導体構造を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の蛍光プローブ。
【請求項10】
下記の一般式(A):
【化1】

(式中、Rは水素原子又はC1-18アルキル基を示し、かつn = 8〜20)で表される化合物又はその塩。
【請求項11】
Rが水素原子であり、かつn = 14である請求項10に記載の化合物又はその塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−209361(P2008−209361A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48847(P2007−48847)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2006年9月6日 社団法人 日本分析化学会発行の「日本分析化学会第55年会講演要旨集」に発表
【出願人】(507066965)
【出願人】(504067505)
【Fターム(参考)】