説明

脈動吸収機構

【課題】簡素化、小型化、低コスト化、効果的な脈動吸収、長寿命化を図る。
【解決手段】搬送する液体の脈動を吸収するための脈動吸収機構1であって、液体に直接触れ、収縮することによって脈動を吸収する弾性膜2と、弾性膜2の外側を覆う外側弾性膜3とを設けることで、搬送する液体に直接触れる弾性膜2が収縮して脈動を吸収し、弾性膜2を覆う外側弾性膜3が弾性膜2の収縮を抑える。このように弾性膜2,3を用いることにより、簡素化、小型化、低コスト化を図りつつ、弾性膜2によって効率的な脈動吸収を行うと共に、外側弾性膜3による弾性膜2の収縮抑止によって長寿命化を可能とし、加えて、弾性膜2が破損する事態が発生した場合でも、弾性膜2の外側に配置された外側弾性膜3によって、液体が外部に漏洩することを回避する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動吸収機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプ室内に液体を吸入し排出するポンプ等において、加圧された液体が吐出側に解放されるとき、その圧力が急激に変化することにより音や振動が発生する、いわゆる脈動が生じることがある。このため、ポンプ内の流路と連通する空気室を設け、空気室内に閉じ込められた空気のクッション性により、脈動を吸収する構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−83265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1記載の脈動吸収機構にあっては、ポンプケーシングより成り占有面積が大きい空気室を複数備える必要があるので、脈動吸収機構が複雑化、大型化、高コスト化してしまう。
【0004】
本発明は、このような技術課題を解決するためになされたものであって、簡素化、小型化、低コスト化を図ることができる脈動吸収機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ここで、本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、複雑化、大型化、高コスト化することなく、脈動を良好に吸収できる空気室とするためには、弾性膜により空気室を画成し、当該弾性膜の弾性収縮により脈動吸収するのが好適であると見出した。しかしながら、空気室の内壁の一部は搬送する液体に直接触れるため、例えば有機溶剤系薬液等、搬送する液体の種類によっては、上記弾性膜が軟化し収縮が大きくなる結果、性能が劣化して寿命が短くなり、場合によっては破損し液が漏洩するおそれがある。
【0006】
そこで、本発明に係る脈動吸収機構は、搬送する液体の脈動を吸収するための脈動吸収機構(1)であって、液体に直接触れ、収縮することによって脈動を吸収する第1の弾性膜(2)と、第1の弾性膜(2)の外側を覆う第2の弾性膜(3)とを備えて構成される。
【0007】
このような構成の脈動吸収機構(1)によれば、搬送する液体に直接触れる第1の弾性膜(2)が収縮することにより脈動が吸収され、第1の弾性膜(2)を覆う第2の弾性膜(3)により第1の弾性膜(2)の収縮が抑えられる。このように弾性膜(2,3)を用いることにより、簡素化、小型化、低コスト化を図りつつ、第1の弾性膜(2)によって効率的な脈動吸収が行われると共に、第2の弾性膜(3)による第1の弾性膜(2)の収縮抑止によって長寿命化が可能になり、加えて、第1の弾性膜(2)が破損する事態が発生した場合でも、第1の弾性膜(2)の外側に配置された第2の弾性膜(3)によって、液体が外部に漏洩することが回避される。
【0008】
ここで、脈動吸収機構(1)において、第1の弾性膜(2)と第2の弾性膜(3)との間には空気室(4)が設けられていると、空気の緩衝によって、第1の弾性膜(2)の収縮が抑えられるため、一層第1の弾性膜(2)の長寿命化が可能となる。
【0009】
さらに、脈動吸収機構(1)において、第1の弾性膜(2)に第2の弾性膜(3)を被せ、共締めして成る構成であると、一層容易な構成とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、脈動吸収機構の簡素化、小型化、低コスト化を図りつつ、効率的な脈動吸収及び長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る脈動吸収機構を備えた往復動ポンプを示す断面図である。
【0012】
図1に示すように、往復動ポンプ5は、円柱ブロック状に構成され一軸上に離間して配置された往復動部材30,31と、これらの往復動部材30,31の間に配置され各々の端部がそれぞれ駆動上連結されると共に、駆動源(不図示)に接続された偏心カム32と、前記一軸に沿って延在し往復動部材30,31がそれぞれ内部を往復動するシリンダ部34,35と、これらのシリンダ部34,35内で偏心カム32とは反対側の位置にそれぞれ形成されるポンプ室14,15と、を有するマニホルド9を備えている。このマニホルド9には、吸入口10及び吐出口23が形成され、吸入口10には、吸入口10に連通する共通吸入流路11、吸入流路12及び吸入弁36を介してポンプ室14が連通されると共に、共通吸入流路11、吸入流路13及び吸入弁37を介してポンプ室15が連通され、一方、吐出口23には、吐出口23に連通する共通吐出流路22、吐出流路20及び吐出弁18を介してポンプ室14が連通されると共に、共通吐出流路22、吐出流路21及び吐出弁19を介してポンプ室15が連通される。
【0013】
そして、この往復動ポンプ5は、駆動源が起動されると、往復動部材30,31が、偏心カム32を挟んで一体となってシリンダ部34,35内を往復動し、一方のポンプ室14を減圧する場合には同時に他方のポンプ室15を加圧し、一方のポンプ室14を加圧する場合には同時に他方のポンプ室15を減圧する構成とされている。
【0014】
具体的には、ポンプ室14を減圧し、ポンプ室15を加圧する場合(往復動部材30,31が図示左へ移動する場合)には、ポンプ室14の吸入弁36及び吐出弁18が、それぞれ開及び閉となると共に、ポンプ室15の吸入弁37及び吐出弁19が、それぞれ閉及び開となることで、タンク(不図示)からホース26を介して吸入口10に吸入された液体が、吸入流路11,12を介してポンプ室14へ吸入されると共に、ポンプ室15内の液体が、吐出流路21,22を介して吐出口23から吐出される。他方、ポンプ室14を加圧し、ポンプ室15を減圧する場合(往復動部材30,31が図示右へ移動する場合)には、ポンプ室14の吸入弁36及び吐出弁18が、それぞれ閉及び開となると共に、ポンプ室15の吸入弁37及び吐出弁19が、それぞれ開及び閉となることで、タンクからホース26を介して吸入口10に吸入された液体が、吸入流路11,13を介してポンプ室15へ吸入されると共に、ポンプ室14内の液体が、吐出流路20,22を介して吐出口23から吐出される。このように、一方のポンプ室14で吸入工程と吐出工程とを繰り返すと同時に、他方のポンプ室15で吐出工程と吸入工程とを繰り返すことで、タンク内の液体は吸入口10から吐出口23へと一方向に輸送される。なお、共通吐出流路22を流れる液体の一部は、戻り口24からホース25を介してタンクへ戻される。
【0015】
ここで、特に本実施形態の往復動ポンプ5は、搬送する液体の脈動を効率的に吸収するために、共通吸入流路11の端部に脈動吸収機構1を備えている。
【0016】
この脈動吸収機構1は、管状に形成された共通吸入流路11の開放端部を覆うように被せられた指サック状の弾性膜(第1の弾性膜)2を有している。そして、この弾性膜2の内側に、空気が封入された内側空気室6が形成されている。また、弾性膜2の外側には、指サック状の外側弾性膜(第2の弾性膜)3が被せられており、弾性膜2と外側弾性膜3との間に、空気が封入された外側空気室4が形成されている。そして、弾性膜2及び外側弾性膜3は、共通吸入流路11の端部の外側から環状バンド7で共締めされることで、共通吸入流路11の端部に装着されるという簡易な構成とされている。
【0017】
次に、本実施形態に係る脈動吸収機構1の作用・効果を説明する。
【0018】
上述したように、液体を搬送する際には、吸入工程と吐出工程とを繰り返すため、マニホルド9内部に圧力変動が生じ、共通吸入流路11内を搬送される液体は振動して脈動が発生する。共通吸入流路11内の脈動を有する液体の一部は、内側空気室6へ流入し、内側空気室6を形成する弾性膜2の弾性収縮によって脈動が効果的に吸収されると共に、内側空気室6内の空気のクッション性により脈動が一層吸収される。
【0019】
このとき、弾性膜2の外側に被せられた外側弾性膜3の弾性収縮によって弾性膜2の収縮が抑えられて制限されるので、弾性膜2が弾性性能を超えて収縮するのが防止され、その結果、弾性膜2の長寿命化が図られる。同様に、弾性膜2と外側弾性膜3との間に形成された外側空気室4内の空気の緩衝によって弾性膜2の収縮が抑えられて制限されるので、弾性膜2が弾性性能を超えて収縮するのが防止され、その結果、弾性膜2の長寿命化が一層図られる。
【0020】
特に有機溶剤系薬液等を搬送した場合には、弾性膜2の一部が直接液に触れるため、使用により弾性膜2が軟化して性能が劣化したり、破損する等の事態が発生する場合が想定されるが、弾性膜2が軟化した場合でも外側弾性膜3の弾性収縮及び外側空気室4内の空気の緩衝によって、弾性膜2の収縮を抑えて制限することができるため、性能劣化を回避することができると共に、弾性膜2が破損した場合であっても、弾性膜2の外側に外側弾性膜3が被せられているため、搬送する液体が外部に漏洩することを回避できる。
【0021】
以上、本実施形態に係る脈動吸収機構1によれば、搬送する液体に直接触れる弾性膜2が収縮することにより脈動が吸収され、弾性膜2を覆う外側弾性膜3により弾性膜2の収縮が抑えられる。このように弾性膜2,3を用いることにより、簡素化、小型化、低コスト化を図りつつ、弾性膜2によって効率的な脈動吸収が行われると共に、外側弾性膜3による弾性膜2の収縮抑止によって長寿命化が可能になり、加えて、弾性膜2が破損する事態が発生した場合でも、弾性膜2の外側に配置された外側弾性膜3によって、液体が外部に漏洩することが回避される。
【0022】
また、脈動吸収機構1において、弾性膜2と外側弾性膜3との間には外側空気室4が設けられているので、空気の緩衝によって、弾性膜2の収縮が抑えられ、一層弾性膜2の長寿命化が可能となる。
【0023】
以上、本発明の好適な実施形態について具体的に説明したが、上記実施形態は本発明に係る脈動吸収機構の一例を示すものであり、本発明に係る脈動吸収機構は、上記実施形態に係る脈動吸収機構に限られるものではない。
【0024】
例えば、上記実施形態では、ポンプに対して適用する場合を説明したが、本発明の脈動吸収機構1は、発生する脈動を吸収することが必要な種々の機器に対して適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る脈動吸収機構を有する往復動ポンプを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1…脈動吸収機構、2…弾性膜(第1の弾性膜)、3…外側弾性膜(第2の弾性膜)、4…外側空気室(空気室)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送する液体の脈動を吸収するための脈動吸収機構(1)であって、
前記液体に直接触れ、収縮することによって脈動を吸収する第1の弾性膜(2)と、
前記第1の弾性膜(2)の外側を覆う第2の弾性膜(3)と、
を備えることを特徴とする脈動吸収機構(1)。
【請求項2】
前記第1の弾性膜(2)と前記第2の弾性膜(3)との間には空気室(4)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脈動吸収機構(1)。
【請求項3】
前記第1の弾性膜(2)に前記第2の弾性膜(3)を被せ、共締めして成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の脈動吸収機構(1)。

【図1】
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【公開番号】特開2009−91960(P2009−91960A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−262481(P2007−262481)
【出願日】平成19年10月5日(2007.10.5)
【出願人】(000141174)株式会社丸山製作所 (134)
【Fターム(参考)】