説明

脈波による血管系の診断方法

【課題】 被験者の脈波形を検討し、脈波によって血管系の健康診断を正しく行える脈波による血管系の診断方法を提供するものである。
【解決手段】 脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から微分を求めて、その微分値から波形の鋭さ指数と波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することにした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、体表面より採取した脈波により血管系の健康状態を診断できる脈波による血管系の診断方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、脈波の形状を分析することにより被験者の血管系の健康状態を診断することができるということはすでに公知のことであり、例えば特許第2620497号や特許第3017474号や特開平4−208136等に記載されている。
【0003】即ち、一般に心臓の弁が開くと血液が多量に送られてくるので血管が拡張するが、心臓の弁が閉まると血液の流れが滞るため血管の収縮により血液が押し戻されるので脈波の波形は極大点のピーク後に数回の小波形が現れる波形となるものである。そして、若年者では血管が柔らかいので脈波の形状は鋭く立ち上がった形状となり、年とともに血管は硬化するため、立ち上がりは緩やかになりピーク後の小波形も目立たなくなり、ついには三角波形の如く波の頂部が鈍角状になっていく。
【0004】しかし、実際の脈波分析では、脈波の波高が変化したりベースラインの動揺が起こるために、実測した脈波波形の特徴を定量的に把握することは困難である。そのために、一次微分脈波たる脈波の変化率や二次微分脈波たる加速度脈波等を使って波形の特徴を把握するように工夫してきており、現在、かかる観点から実測した脈波の波形の特徴を定量的に把握するために採用されているのが加速度脈波法である。
【0005】この加速度脈波法は、要するに、脈波の波高の変化や脈波計の増幅率等のように波形測定の任意性たる障害要素を一切排除したパラメータで波形を表現するようにしたことが評価されて採用されている。
【0006】即ち、脈波の波形を二次微分脈波形で表すと、被験者の年齢にかかわらず図10に示すようなa,b,c,d,eの5つの極大部や極小部よりなる基本図形となることは経験的に認識されている。
【0007】従って、脈波の波形分析は、この基本図形を基にしたパターン識別をすることになる。脈波の波形を分析するに際しては、5つの極大部や極小部の値を求めて最初の値aに対する4つの比、即ちb/a,c/a,d/a,e/aで波形の特徴を表現するものであり、かかる手法では上述した波形測定の任意性を一切排除したパラメータで波形を表現することが出来ることになるのである。
【0008】かかる加速度脈波法では、b/aは年齢とともに大きくなり、c/a,d/a,e/aは、年齢とともに小さくなることが知られており、かかる4つの比の解釈により被験者の推定血管年齢(EAG)を算出する方法も案出されており、b/aは血管の拡張しやすさに対応し、d/aは、脈波の伝播速度に関連すると考えられているが、c/a,e/aに関しては未だに血管との関連メカニズムは解明されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】上記した加速度脈波法で着目する4つの比(b/a,c/a,d/a,e/a)のうち推定血管年齢のための指数として重要なものは最初のb/aの値であり、それ以外の比(c/a,d/a,e/a)は血管との関連メカニズムが明白ではなく、推定血管年齢も20才以下の被験者には適用できない等のように、その意義が明白でないという欠点があった。
【0010】例えば、cのピークの来るタイミングは、原波形の最初のピーク(a)の後、不特定時間に来るものであったり、dやeのピークは反射波に起因するため被験者の身長の影響を受けやすい等の問題がある。
【0011】従って、4つの比のうちb/aは脈波形の立ち上がりの挙動が血管の硬さに関連する点をとらえていることからみて有効な指標ではあるが、加速度脈波法は、脈波形の立ち上がりと血管の硬さとの本質的な相関関係を把握していない現象論的波形解釈法に過ぎなかった。
【0012】しかも、かかる加速度脈波法は変化率そのものを見ていないがために、20才〜30才の若年者に対しては特に心身状態を的確に表すことができないという欠点があった。その理由は、現象論的波形解釈法からみると、脈波形の立ち上がりと血管の硬さとの関連は、血管が柔らかいと脈波形の立ち上がりの変化率は大きく、血管が硬いと脈波形の立ち上がりの変化率は小さくなるという本質的な相関関係を把握していないことによると思われる。
【0013】この発明では、被験者の脈波形を検討し、現象論的な波形解釈にとどまらず、循環器モデリングの立場から脈波形の理論解釈を行うことにより、脈波によって血管系の健康診断を正しく行える脈波による血管系の診断方法を提供するものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は、脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から微分を求めて、その微分値から波形の鋭さ指数と波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することを特徴とした脈波による血管系の診断方法を提供するものである。
【0015】また、この発明は、脈波データからベースラインの動揺を除去して脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から一次微分、二次微分を求めて、二次微分の最初の極大点に対応する一次微分の値と脈波立ち上がり時の一次微分最大値との平均値を算出して波形の鋭さ指数を定義し、また二次微分の最初の極小点に対応する原波形の曲率を算出して波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することを特徴とした脈波による血管系の診断方法を提供するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】この発明の実施の態様を具体的に説明すると次のようになる。この発明の要旨は、脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から微分を求めて、その微分値から波形の鋭さ指数と波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することにあり、更には、脈波データからベースラインの動揺を除去して脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から一次微分、二次微分を求めて、二次微分の最初の極大点に対応する一次微分の値と脈波立ち上がり時の一次微分最大値との平均値を算出して波形の鋭さ指数を定義し、また二次微分の最初の極小点に対応する原波形の曲率を算出して波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することにある。
【0017】発明者はかかる発明の開発に際して、現象論的な脈波形解釈と共に循環器モデリングによる脈波形の理論解釈を行うことにより次のような知見を得た。
【0018】すなわち、(1)血管の柔らかさの情報は脈波形の立ち上がり部(ピーク)までを解釈すれば充分である。
(2)脈波形の評価は相対的評価のみが重要であり、波高は常にある値に規格化して変化率として評価すればよい。
【0019】かかる知見にもとづき以下のプロセスで示される脈波形の現象論的解釈を行えば脈波形から血管系の健康状態の診断を行うことができるという結論に達した。
【0020】すなわち、(1)適宜の検出装置で脈波を検出し、検出した脈波データから極小点群を求めるとともに、隣接する極小点間の波形をとり、1波長分の脈波を採取する。
【0021】(2)1波長分の脈波の極小点群における最小のものを最小点とし、1波長分の脈波の波形ピーク点を最大点として、最小点を0、最大点を100とした脈波の規格化を行い、規格化脈波を生成する。
【0022】(3)規格化脈波にもとづいて一次微分脈波を生成する。
【0023】(4)一次微分脈波の最初の極大値を脈波波形の鋭さ指数として定義する。
【0024】(5)一次微分脈波の最初の極大点までの時間をt1とし、一次微分脈波の最初の極大点から0になるまでの時間をt2として、t1/t2とした比率を脈波波形の丸さ指数として定義する。t1/t2の値は、規格化脈波の極大点における曲率を間接的に評価可能な値となっている。
【0025】以上のようにして、定義した脈波波形の鋭さ指数と丸さ指数の2つの指数、すなわち脈波の立ち上がり部における規格化脈波波形の一次微分数値の極大点における波高と、この極大点における曲率との相関関係によって血管の柔軟性を説明できる。
【0026】また、上記のプロセスでは、血管の柔軟性評価を、極めて簡潔な構成で行うことができるが、さらに評価精度を高めるために、以下のようなプロセスとすることもできる。
【0027】(1)適宜の検出装置で脈波を検出し、検出した脈波データを低周波フィルタにかけてベースラインの動揺を除去する。
【0028】(2)ベースラインの動揺を除去した脈波データから極小点群を求めるとともに、隣接する極小点間の波形をとり、1波長分の脈波を採取する。
【0029】(3)1波長分の脈波の極小点群における最小のものを最小点とし、1波長分の脈波の波形ピーク点を最大点として、最小点を0、最大点を100とした脈波の規格化を行い、規格化脈波を生成する。
【0030】(4)規格化脈波にもとづいて一次微分脈波を生成する。
【0031】(5)一次微分脈波にもとづいて二次微分脈波を生成する。
【0032】(6)二次微分脈波の最初の極大点に対応する一次微分脈波の値と、一次微分脈波の最初の極大値との平均値を求めて脈波波形の鋭さ指数を定義する。
【0033】(7)二次微分脈波の最初の極小点に対応する規格化脈波の曲率を計算し、波形の丸さ指数を定義する。
【0034】以上のようにして、定義した波形の鋭さ指数と丸さ指数の2つの指数を用いることにより、より精密に血管の柔軟性を評価できる。
【0035】なお、かかる定義した波形の鋭さ指数と丸さ指数の2つの指数の相関関係は、血管の柔軟性以外にも筋肉年齢や疲労度やストレス度などの人間の健康状態に係るいろいろな指数に依存性を有するため上記した波形の鋭さ指数と丸さ指数の2つの指数を知ることにより簡単に自己の体力や疾病を知ることができる。
【0036】
【実施例】〔第1実施例〕以下において、第1実施例の診断方法の実施形態を説明する。第1実施例では検出した脈波データから一次微分脈波のみを生成して診断を行うものである。
【0037】かかる診断処理に必要な脈波データを処理するための処理プログラムは予め適宜のコンピュータに入力しており、例えば図1に示すように、脈波を検出する検出装置1を、データ入力用配線2を介してパーソナルコンピュータ3と接続し、検出装置1で検出した脈波をパーソナルコンピュータ3に入力し、同パーソナルコンピュータ3にインストールしておいた処理プログラムで診断処理を行うべく構成している。
【0038】検出装置1は、指に嵌着可能な円筒状としており、適宜の指に嵌着することにより脈波データを採取するとともに、採取した脈波データを増幅回路(図示せず)などを用いて適宜の増幅し、さらに、A/Dコンバータ(図示せず)でデジタル値に変換してパーソナルコンピュータ3に入力すべく構成している。
【0039】なお、脈波データの採取及び診断処理は、上記の形態で実施するものに限定するものではなく、例えば、図2に示すように、処理プログラムを内蔵した演算部を具備する腕時計4を用いて行ってもよいし、あるいは、図3に示すように、処理プログラムを内蔵した演算部を具備する携帯電話5を用いて行ってもよく、脈波を採取して適宜の処理を行うことができるものであれば何を用いてもよい。
【0040】ちなみに、腕時計4の場合であれば、ベルト部6に設けた検出部7を指で押すことにより脈波の採取を行うようにしており、携帯電話5の場合であれば、本体部8の側縁に設けた検出部9を指で押すことにより脈波の採取を行うようにしている。
【0041】以下に処理プログラムとかかるデータ処理を行う場合のフローチャートを図4に示しながら説明する。
【0042】(1)脈波の採取被験者が指に検出装置1を装着することにより、同検出装置1では自動的に脈波を採取すべく構成している。検出装置1は、上記したように、採取した脈波を適宜増幅し、A/Dコンバータでデジタル変換して、パーソナルコンピュータ3に入力している。
【0043】パーソナルコンピュータ3では、検出装置1から入力された脈波データを取り込み、同パーソナルコンピュータ3のメモリ装置(図示せず)に一旦記憶する。脈波データは、メモリ装置に記憶されることにより処理プログラムによって検出され、同処理プログラムによって処理可能となる(ステップS1)。これが脈波検出手段である。
【0044】(2)規格化脈波の生成処理プログラムは、検出した脈波データからまず極小点群を求め、さらに、隣接する極小点間の波形を取り出して解析し、1波長分の脈波を抽出して解析用脈波とする。解析用脈波は単一の1波長分の脈波データであってもよいし、数波長分の平均値であってもよい。これが脈波抽出手段である。
【0045】そして、抽出した解析用脈波の極小点群の中から最小点を求め、最小点の波高を検出する。これが最小点群検出手段である。
【0046】次いで、抽出した解析用脈波のピークの値、すなわち波高が最も高くなった最大点の波高を検出する。これが最大点群検出手段である。
【0047】次いで、最小点検出手段で求めた最小点の波高を0とし、最大点検出手段で求めた最大点の波高を100として解析用脈波を規格化し、規格化脈波を生成する(ステップS2)。これが規格化脈波生成手段である。
【0048】規格化脈波とすることにより、採取した脈波の増幅の誤差や、脈波採取時の被験者の緊張状態・興奮状態などの影響を取り除くことができ、血管の柔軟性の正しい評価を行うことができる。
【0049】図5(a−1)には、血管が柔らかい、すなわち若者の場合における規格化脈波の一例を示しており、図5(b−1)には、血管が硬い、すなわち高齢者の場合における規格化脈波の一例を示している。
【0050】(3)一次微分脈波の生成規格化脈波生成手段で生成した規格化脈波を微分処理することにより一次微分脈波を生成する(ステップS3)。これが一次微分手段である。
【0051】図5(a−2)には、図5(a−1)の規格化脈波の一次微分脈波を示しており、図5(b−2)には、図5(b−1)の規格化脈波の一次微分脈波を示している。
【0052】(4)鋭さ指数の特定図5に示すように、一次微分手段で生成した一次微分脈波における最初の極大点の値、すなわち極大値Tを求め、同極大値Tを脈波波形の鋭さ指数とする(ステップS4)。これが鋭さ定義手段である。
【0053】(5)丸さ指数の特定図5に示すように、一次微分脈波における最初の極大点までの時間t1を求めるとともに、一次微分脈波が最初の極大点から0になるまでの時間t2を求め、t1/t2とした比率を脈波波形の丸さ指数とする(ステップS5)。これが丸さ定義手段である。
【0054】(6)血管の健康状態の診断鋭さ定義手段で得た脈波波形の鋭さ指数Tと、丸さ定義手段で得た脈波波形の丸さ指数t1/t2との相対的な関係から、年齢に対応した血管の健康状態を診断し(ステップS6)、診断結果を出力する(ステップS7)。これが診断手段である。
【0055】予め、パーソナルコンピュータ3には、脈波波形の鋭さ指数Tと血管の健康状態との対照データ、及び脈波波形の丸さ指数t1/t2と血管の健康状態との対照データとを入力しており、かかる対照データに基づいて診断を行っている。具体的には、脈波波形の鋭さ指数Tと血管の健康状態との対照データから得られる回帰曲線と、脈波波形の丸さ指数t1/t2と血管の健康状態との対照データから得られる回帰曲線とを用いて診断しており、それぞれの診断結果から最終的な血管の健康状態の診断を行っている。
【0056】ちなみに、図6は波形の鋭さ指数と実年齢との関係を示し、図7は波形の丸さ指数と実年齢との関係を示す。
【0057】〔第2実施例〕以下において、第2実施例の診断方法の実施形態を説明する。第2実施例では検出した脈波データから一次微分脈波と二次微分脈波を生成して診断を行うものであり、第1実施例の診断方法と比較して診断には多少の時間がかかるものの、精度の高い診断を行うことができる。
【0058】本実施例においても、第1実施例と同様に、診断処理に必要な脈波データを処理するための処理プログラムは予め適宜のコンピュータに入力しており、例えば図1に示すように、脈波を検出する検出装置1を、データ入力用配線2を介してパーソナルコンピュータ3と接続し、検出装置1で検出した脈波をパーソナルコンピュータ3に入力し、同パーソナルコンピュータ3にインストールしておいた処理プログラムで診断処理を行うべく構成している。
【0059】以下に処理プログラムとかかるデータ処理を行う場合のフローチャートを図8に示しながら説明する。
【0060】(1)脈波の採取被験者が指に検出装置1を装着することにより、同検出装置1では自動的に脈波を採取すべく構成している。検出装置1は、採取した脈波を適宜増幅し、適宜のフィルタ回路によってフィルタリングしてベースラインの動揺を除去し、さらに、A/Dコンバータでデジタル変換して、パーソナルコンピュータ3に入力している。
【0061】フィルタ回路を用いて脈波のフィルタリングを行い、ベースラインの動揺を除去することによって、より正確に脈波を採取することができ、診断精度を向上させることができる。
【0062】パーソナルコンピュータ3では、検出装置1から入力された脈波データを取り込み、同パーソナルコンピュータ3のメモリ装置(図示せず)に一旦記憶する。脈波データは、メモリ装置に記憶されることにより処理プログラムによって検出され、同処理プログラムによって処理可能となる(ステップS10)。これが脈波検出手段である。
【0063】(2)規格化脈波の生成規格化脈波の生成は、第1実施例の場合と同じであるが、詳細に説明すると、先ず、処理プログラムは、検出した脈波データからまず極小点群を求め、さらに、隣接する極小点間の波形を取り出して解析し、1波長分の脈波を抽出して解析用脈波とする。解析用脈波は単一の1波長分の脈波データであってもよいし、数波長分の平均値であってもよい。これが脈波抽出手段である。
【0064】そして、抽出した解析用脈波の極小点群の中から最小点を求め、最小点の波高を検出する。これが最小点群検出手段である。
【0065】次いで、抽出した解析用脈波のピークの値、すなわち波高が最も高くなった最大点の波高を検出する。これが最大点群検出手段である。
【0066】次いで、最小点検出手段で求めた最小点の波高を0とし、最大点検出手段で求めた最大点の波高を100として解析用脈波を規格化し、規格化脈波を生成する(ステップS11)。これが規格化脈波生成手段である。
【0067】規格化脈波とすることにより、採取した脈波の増幅の誤差や、脈波採取時の被験者の緊張状態・興奮状態などの影響を取り除くことができ、血管の柔軟性の正しい評価を行うことができる。
【0068】図9(a−1)には、血管が柔らかい、すなわち若者の場合における規格化脈波の一例を示しており、図9(b−1)には、血管が硬い、すなわち高齢者の場合における規格化脈波の一例を示している。
【0069】(3)一次微分脈波の生成第1実施例の場合と同様に、規格化脈波生成手段で生成した規格化脈波を微分処理することにより一次微分脈波を生成する(ステップS12)。これが一次微分手段である。
【0070】図9(a−2)には、図9(a−1)の規格化脈波の一次微分脈波を示しており、図9(b−2)には、図9(b−1)の規格化脈波の一次微分脈波を示している。
【0071】(4)二次微分脈波の生成ここ以降が第1実施例と異なる部分である。一次微分手段で生成した一次微分脈波を微分処理することにより二次微分脈波を生成する(ステップS13)。これが二次微分手段である。
【0072】図9(a−3)には、図9(a−1)の規格化脈波の二次微分脈波を示しており、図9(b−3)には、図9(b−1)の規格化脈波の二次微分脈波を示している。
【0073】(5)鋭さ指数の特定図9に示すように、二次微分手段で生成した二次微分脈波の最初の極大点に対応する一次微分脈波の値p1と、脈波立ち上がり時の一次微分脈波の最大値p2との平均値、すなわち、(p1+p2)/2を算出して波形の鋭さ指数とする(ステップS14)。これが第2実施例の場合の鋭さ定義手段である。
【0074】(6)丸さ指数の特定図9に示すように、二次微分手段で生成した二次微分脈波の最初の極小点に対応する規格化脈波すなわち原波形の曲率rを算出して脈波波形の丸さ指数とする(ステップS15)。これが丸さ定義手段である。
【0075】(7)血管の健康状態の判定鋭さ定義手段で得た脈波波形の鋭さ指数Tと、丸さ定義手段で得た脈波波形の丸さ指数t1/t2との相対的な関係から、年齢に対応した血管の健康状態を診断し(ステップS16)、診断結果を出力する(ステップS17)。これが診断手段である。
【0076】予め、パーソナルコンピュータ3には、脈波波形の鋭さ指数(p1+p2)/2と血管の健康状態との対照データ、及び脈波波形の丸さ指数rと血管の健康状態との対照データとを入力しており、かかる対照データに基づいて診断を行っている。具体的には、脈波波形の鋭さ指数(p1+p2)/2と血管の健康状態との対照データから得られる回帰曲線と、脈波波形の丸さ指数rと血管の健康状態との対照データから得られる回帰曲線とを用いて診断しており、それぞれの診断結果から最終的な血管の健康状態の診断を行っている。
【0077】
【発明の効果】この発明によれば、脈波の立ち上がりの波形部分で波形の鋭さ指数と波形の丸さ指数を算出できるので、かかる指数をもとにして正確にかつ脈をとりながらリアルタイムで指数に対応する血管の健康状態を知ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】脈波の検出・診断処理機構を示す説明図。
【図2】他実施例としての脈波の検出・診断処理機構を示す説明図。
【図3】他実施例としての脈波の検出・診断処理機構を示す説明図。
【図4】脈波の検出・診断処理ルーチンを示すフローチャート。
【図5】若者と高齢者との規格化脈波及び一次微分脈波を示すグラフ。
【図6】波形の鋭さ指数と実年齢との関係を示すグラフ。
【図7】波形の丸さ指数と実年齢との関係を示すグラフ。
【図8】他実施例としての脈波の検出・診断処理ルーチンを示すフローチャート。
【図9】若者と高齢者との規格化脈波及び一次微分脈波及び二次微分脈波を示すグラフ。
【図10】脈波の二次微分波形を示す説明図。
【符号の説明】
1 検出装置
2 データ入力用配線
3 パーソナルコンピュータ
4 腕時計
5 携帯電話
6 ベルト部
7 検出部
8 本体部
9 検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から微分を求めて、その微分値から波形の鋭さ指数と波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することを特徴とした脈波による血管系の診断方法。
【請求項2】 脈波データからベースラインの動揺を除去して脈波データの極小点群を求め、これらの極小点群と極大点を数値化して脈波を規格化し、この規格化した波形から一次微分、二次微分を求めて、二次微分の最初の極大点に対応する一次微分の値と脈波立ち上がり時の一次微分最大値との平均値を算出して波形の鋭さ指数を定義し、また二次微分の最初の極小点に対応する原波形の曲率を算出して波形の丸さ指数を定義し、これらの波形の鋭さと波形の丸さの各指数の相対的な関係より年齢に対応した血管の健康状態を判断することを特徴とした脈波による血管系の診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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