説明

脈波信号処理装置及び脈波計測装置

【課題】測定部位に関わらず交流成分を安定して抽出することができる技術を提供する。
【解決手段】脈波信号処理装置は、脈波を測定する測定部位に光を発する発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第1信号を出力する第1受光部と、発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第2信号を出力する第2受光部とを有し、第1受光部と第2受光部は、前記第2信号に含まれる交流成分と直流成分との比率が前記第1信号の前記比率よりも小さくなる位置に設けられ、前記第2信号の直流成分が前記第1信号の直流成分の大きさ以下となる条件を満たすように受光量が調整されている。増幅部は、第1受光部から出力される第1信号(I1)と第2受光部から出力される第2信号(I2)との差分信号(I3)を増幅して交流成分を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈波信号処理装置及び脈波計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体、特に人体における脈波の検出方法として、光電変換による脈波測定方法が用いられてきた。この方法は、発光ダイオードなどの発光素子から血液に吸収されやすい波長の光を発光し、生体を透過若しくは生体内に進入後、生体内の組織による散乱によって外部へ出射した後方散乱光をフォトダイオードやフォトトランジスタなどの受光素子によって受光し、電気信号に変換することにより脈波を検出する。下記特許文献1には、生体の動脈血の酸素飽和度の測定に際し、生体の末梢血管の密度が比較的高い額や指などの体表面に光センサーを装着し、酸素飽和度の測定精度を向上させるように光源と光センサーとの距離を設定する技術が開示されている。具体的には、下記特許文献1は、光源と光センサーとの距離によって、光センサーから出力される信号の交流成分(AC成分)と直流成分(DC成分)の比(以下、AC/DC比という)が異なるという特性を利用し、AC/DC比が最も高くなる位置に光センサーを配置し、脈波を表していない直流成分をできるだけ少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−216115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、AC/DC比は、光源と光センサーとの距離に応じて変化するだけでなく、図11に示すように光センサーを装着する生体の部位によっても異なる。この図に示すように、生体の抹消血管の密度が比較的高い指はAC/DC比が大きく、後方散乱光に含まれる脈波を表す交流成分の割合が高い。一方、生体の抹消血管の密度が比較的低い手首や上腕では指と比べてAC/DC比が小さく、後方散乱光に含まれる交流成分の割合が少ない。光センサーから出力された信号は後段の増幅回路において増幅されて交流成分だけが抽出されるが、AC/DC比が小さい場合には直流成分によって増幅回路が飽和状態となり交流成分が抽出できない場合がある。また、AC/DC比が小さい手首などの測定部位で脈波を測定する場合、より多くの交流成分を得るために受光素子の受光面積を大きくしたり光源のパワーを増加させると出力信号全体が大きくなるため、上記と同様に増幅回路が飽和状態となり交流成分を抽出することができない。
本発明は、測定部位に関わらず交流成分を安定して抽出することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る脈波信号処理装置は、脈波を測定する測定部位に光を発する発光部と、前記発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第1信号を出力する第1受光部と、前記発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第2信号を出力する第2受光部と、前記第1受光部から出力される前記第1信号と前記第2受光部から出力される前記第2信号との差分信号を増幅して交流成分を出力する増幅部とを備え、前記第1受光部と前記第2受光部は、前記第2信号の直流成分に対する交流成分の比率が前記第1信号の前記比率よりも小さくなる位置に設けられ、前記第2信号の直流成分が前記第1信号の直流成分の大きさ以下となる条件を満たすように受光量が調整されていることを特徴とする。この構成によれば、測定部位に関わらず交流成分を安定して抽出する技術が提供される。
【0006】
また、本発明に係る脈波信号処理装置は、上記脈波信号処理装置において、前記第1受光部と前記第2受光部は、前記条件を満たすように各々異なる受光面積の受光面を有することを特徴とする。この構成によれば、他の部材を用いて受光量を調整する場合と比べて簡易に受光量を調整することができる。
【0007】
また、本発明に係る脈波信号処理装置は、上記脈波信号処理装置において、前記第1受光部又は前記第2受光部は、前記条件を満たすように前記反射光の透過を抑制するフィルターが受光面に設けられていることを特徴とする。この構成によれば、受光面積によって受光量を調整する場合と比べて装置内の空間に規制されずに受光量を調整することができる。
【0008】
また、本発明に係る脈波信号処理装置は、脈波を測定する測定部位に各々異なる波長の光を発する複数の発光部と、前記複数の発光部に対応して設けられ、当該発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第1信号を出力する第1受光部と、当該発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第2信号を出力する第2受光部とを有する複数の受光部と、前記複数の受光部の前記第1受光部と前記第2受光部から出力される前記第1信号と前記第2信号の各差分信号を増幅して交流成分を出力する増幅部とを備え、
前記発光部の各々に対応する前記受光部の前記第1受光部及び前記第2受光部は、当該発光部が発する光の波長ごとに、前記第2信号に含まれる交流成分と直流成分との比率が前記第1信号の前記比率よりも小さくなる位置に設けられ、前記第2信号の直流成分が前記第1信号の直流成分の大きさ以下となるように受光量が調整され、前記発光部と前記受光部の各組は、各波長の光が干渉しない位置に配置されていることを特徴とする。この構成によれば、測定部位に関わらず各波長について交流成分を安定して抽出することができる。
【0009】
また、本発明に係る脈波計測装置は、上記いずれかの脈波信号処理装置と、前記脈波信号処理装置から出力された交流成分に基づいて脈波を示す情報を出力する脈波出力手段と
を備えることを特徴とする。この構成によれば、測定部位に関わらず交流成分を安定して抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態に係る脈波計測装置の構成例を示す図である。
【図2】実施形態における受光部と増幅部の回路構成例を示す図である。
【図3】赤色光の場合の発光素子と受光素子の距離とAC/DC比との関係を表す図である。
【図4】測定部位からの反射光の光路を表す図である。
【図5】実施形態に係る脈波計測装置の動作フローを示す図である。
【図6】(a)は、赤外光の場合の発光素子と受光素子の距離とAC/DC比との関係を表す図である。(b)は、緑色光の場合の発光素子と受光素子の距離とAC/DC比との関係を表す図である。
【図7】変形例(4)における発光部と受光部の配置例を示す図である。
【図8】変形例(5)における受光部と増幅部の回路構成例を示す図である。
【図9】変形例(6)における受光部と増幅部の回路構成例を示す図である。
【図10】変形例(7)における発光部と受光部の配置例を示す図である。
【図11】測定部位と赤色光の場合のAC/DC比の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態に係る脈波計測装置の構成例を示す図である。図1において、脈波計測装置1は、発光部10、受光部11(第1受光部11a、第2受光部11b)、増幅部12、A/D(ANALOG/DIGITAL)変換部13、制御部14、操作部15、及び表示部16を備える。脈波計測装置1は、生体2の脈波を測定する測定部位に光を照射し、測定部位において反射された後方散乱光(反射光)を受光し、受光した光の受光量に基づいて脈波を示す脈波信号を出力する。以下、各構成について説明する。
【0012】
発光部10は、例えば赤色光の波長の光を発するLED(Light Emitting Diode)などの発光素子を有し、発光素子は、発光ピークの波長が600〜780nmの範囲(好ましくは625nm)となるように構成されている。発光部10は、後述の制御部14の制御の下、測定部位である生体2の手首に向けて光を発する。
【0013】
次に、受光部11と増幅部12について説明する。図2は、本実施形態における受光部11と増幅部12の回路構成を示している。第1受光部11a及び第2受光部11bは、赤色光の波長の光を受光するフォトダイオードなどの受光素子111、112を有する。受光素子111と受光素子112は発光素子との距離が異なる位置に設けられ、受光素子112は受光素子111より受光面積が小さく構成されている。図2に示すように、本実施形態では、第1受光部11aの受光素子111のアノードと第2受光部11bの受光素子112のカソードとを直列に接続し、受光素子111のアノードと受光素子112のカソードの接続点p1は増幅部12の入力端子と接続されている。発光部10の発光素子によって発光された光の反射光を受光素子111と受光素子112が受光すると、受光素子111の受光量に応じた電流I1が矢印方向に流れ、受光素子112の受光量に応じた電流I2が矢印方向に流れる。受光素子111と受光素子112の接続点p1には、電流I1から電流I2を差し引いた電流I3が矢印方向に流れる。
【0014】
ここで、発光素子と受光素子との距離に応じて受光素子から出力される信号に含まれるAC成分とDC成分との比(AC/DC比)が異なる点について説明する。図3は、赤色光の波長の光を発する発光素子の中心からの距離とAC/DC比との関係を示している。また、図4は、発光素子との距離が異なる受光素子X、Yで受光される光の光路を表す模式図である。発光素子は赤色光の波長の光を発し、受光素子X、Yは受光素子111、112と同じ特性を有し、受光面積が同程度に構成されている。
【0015】
図4に示すように、発光素子からの距離がL1の受光素子Xは、血管の密度が比較的小さい表皮に近い部分からの後方散乱光が、血管の密度が比較的大きい真皮に近い部分からの後方散乱光よりも多く受光される。また、発光素子からの距離がL2の受光素子Yは、真皮に近い部分からの後方散乱光が表皮に近い部分からの後方散乱光よりも多く受光される。表皮に近い部分からの後方散乱光には、脈波を表すAC成分より脈波を表していないDC成分が多く含まれ、真皮に近い部分からの後方散乱光にはDC成分よりAC成分が多く含まれる。また、発光素子との距離近い受光素子Xには受光素子Yよりも多くの反射光が到達する。そのため、受光素子Xと受光素子Yから出力される信号に含まれるAC成分及びDC成分とAC/DC比の大小関係は以下のようになる。
AC成分 :受光素子X>受光素子Y
DC成分 :受光素子X>>受光素子Y
AC/DC比:受光素子X<受光素子Y
【0016】
つまり、図3に示すように、赤色光の波長の光の場合、発光素子と受光素子の距離がL2に近づくほどAC/DC比は大きくなり、距離L2を境にAC/DC比が小さくなる特性を有する。受光素子XのようにDC成分が大きい信号が初段の増幅回路に入力されると飽和状態となりAC成分が抽出されなくなるため、本実施形態では、発光素子との距離によって異なるAC/DC比を利用し、初段の増幅回路に入力する前にDC成分を小さくするように構成している。具体的には、受光素子111は発光素子との距離がL2となる位置に設けられ、受光素子112は発光素子との距離がL1(<L2)となる位置に設けられている。すなわち、受光素子111に到達する後方散乱光の生体2内の光路より短い光路を経た後方散乱光が受光素子112で受光されるように配置する。このような配置により、第2受光部11bの電流信号(以下、第2信号という)のAC/DC比は、第1受光部11aの電流信号(以下、第1信号という)のAC/DC比よりも小さくなる。
【0017】
また、受光素子112のDC成分が受光素子111のDC成分と同程度となるように、受光素子112の受光面積を受光素子111より小さく構成する。このように構成することで、第1信号のDC成分と同程度のDC成分が含まれ、AC/DC比が第1信号より小さい第2信号が受光素子112から出力され、接続点p1において、第1信号と第2信号のAC成分とDC成分の差分を表す差分信号が出力される。差分信号に含まれるAC成分は第1信号のAC成分よりも小さくなるが、DC成分は、第1信号及び第2信号のDC成分より小さくすることができる。つまり、第1信号、第2信号に含まれるAC成分とDC成分を、(AC1,DC1)、(AC2,DC2)と定義すると、第1信号と第2信号は、DC1≧DC2,AC1/DC1>AC2/DC2の条件を満たす。
【0018】
次に増幅部12について説明する。図2に示すように増幅部12は、抵抗121、NPNトランジスタで構成された第1増幅回路122、コンデンサー123、第2増幅回路124とを有する。第1増幅回路122において、ベースに入力される差分信号の電流I3が抵抗121を流れ、出力点p2においてAC成分とDC成分を含む出力電圧V(I3×hfe×R)が出力される。コンデンサー123において出力電圧VのDC成分Vdcが除去され、AC成分Vacが第2増幅回路124に出力される。第2増幅回路124は、反転増幅回路などで構成され、コンデンサー123からのAC成分Vacを増幅して出力端子に出力する。
【0019】
図1に戻り、説明を続ける。A/D変換部13は、増幅部12から出力された電圧信号を予め定められたサンプリング周波数に基づいて量子化を行う。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)とメモリ(ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を有し、ROMに記憶されている制御プログラムをCPUが実行することにより制御部14と接続されている各部を制御する。具体的には、制御部14は、A/D変換部13から出力された電圧値に基づいて脈波を示す情報を表示部16に表示させる。操作部15は、利用者からの操作を受付けるスイッチや操作キーを有し、利用者によって操作された内容を表す操作信号を制御部14に出力する。表示部16は、液晶ディスプレイを有し、制御部14の制御の下、指示された脈波を示す情報などの各種画像を表示する。
【0020】
(動作例)
図5は、脈波計測装置1の動作フロー図である。利用者は、脈波の計測を開始する際に、操作部15を介して脈波の計測開始を指示する操作を行う。制御部14は、操作部15から脈波の計測開始を指示する操作を受付け(ステップS11)、発光部10を制御して脈波の計測を開始し、受光部11から出力される第1信号と第2信号の差分信号について信号処理を行う(ステップS12)。
【0021】
具体的には、制御部14は、ある光強度を示す電流信号を発光部10に出力して発光部10から測定部位に対して光を照射させ、第1受光部11a及び第2受光部11bによりその光の反射光を受光し、受光量に応じた電流を示す第1信号と第2信号とを出力する。第1受光部11aから出力された第1信号と第2受光部11bから出力された第2信号のAC成分とDC成分の差分を含む差分信号は増幅部12の第1増幅回路122に入力される。第1増幅回路122において差分信号が増幅され、電圧信号に変換されてコンデンサー123に入力される。コンデンサー123に入力された電圧信号はDC成分が除去され、第2増幅回路124にAC成分が入力される。第2増幅回路124は入力されたAC成分の電圧信号を増幅してA/D変換部13へ出力する。
【0022】
A/D変換部13は、増幅部12から入力された脈波を表わす交流成分の電圧信号を量子化した電圧値を制御部14へ出力する(ステップS13)。制御部14は、A/D変換部13から出力された電圧値に基づく波形のピークの時間間隔を脈拍間隔、所定時間毎のピークの出現頻度を脈拍数とし、脈波を示す情報として脈拍間隔及び脈拍数を表示部16に出力する(ステップS14)。
【0023】
上述した実施形態では、第1受光部11aの受光素子111と第2受光部11bの受光素子112から出力される電流信号のAC/DC比が異なるように受光素子111と受光素子112とが配置されているので、第1信号と第2信号のDC成分よりも少ないDC成分の差分信号が第1増幅回路122に入力される。その結果、DC成分が原因となる第1増幅回路122の飽和状態が抑制され、第1増幅回路122を安定して動作させることができ、脈波の計測中に交流成分が出力されないなどの不具合を生じにくくすることができる。
【0024】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のように変形させて実施してもよい。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
【0025】
(1)上述した実施形態では、第1受光部11aの受光素子111は、赤色光のAC/DC比がピーク値となる発光素子からの距離L2(図3)に配置し、第2受光部11bの受光素子112は、距離L2よりも小さいL1の位置に配置する例を説明したが、受光素子112は、発光素子からの距離L3(L3>L2)の位置に配置してもよい。要は、受光素子111と受光素子112において受光される光のAC/DC比が異なるように、受光素子111と受光素子112が配置されていればよい。この場合には、受光素子112の受光量は受光素子111よりも小さくなるため、受光素子111と受光素子112のDC成分とが同程度となるように受光素子112の受光面積を受光素子111より大きく構成してもよい。
【0026】
(2)上述した実施形態では、発光素子から赤色光の波長の光を発する例を説明したが、赤外光や緑色光であってもよい。赤外光の場合におけるAC/DC比は、赤色光と同様、図6(a)に示すようにピーク値を有するため、実施形態や上記(1)で説明した各位置に受光素子111と受光素子112とを配置すればよい。また、図6(b)に示すようにAC/DC比のピーク値を有さない緑色光の場合は、AC/DC比が高い距離L2と、それよりAC/DC比が低い距離L1とに受光素子111と受光素子112とを各々配置するようにすればよい。
【0027】
(3)上述した実施形態では、DC成分が同程度となるように受光素子112の受光面積を小さく構成する例を説明したが、例えば、受光素子112の受光面に光の透過を抑制する光学フィルターを設けて受光量を調整するようにしてもよい。また、変形例(1)に例示したように、発光素子からの距離が受光素子111よりも遠い位置に受光素子112を配置する場合には、受光素子111の受光面に上記光学フィルターを設けて受光量を調整するようにしてもよい。
【0028】
(4)上述した実施形態では、1つの波長の光を測定部位に照射し、その反射光を受光する例を説明したが、複数の波長の光を測定部位に照射し、各波長の反射光を受光するように構成してもよい。この場合における各波長に対応する受発光部の配置を図7に示す。受発光部Aは、赤色光の波長の光を発する発光素子を有する発光部100とその反射光を受光する受光素子を有する第1受光部101と第2受光部102とを有する。受発光部Bは、赤外光の波長の光を発する発光素子を有する発光部200とその反射光を受光する受光素子を有する第1受光部201と第2受光部202とを有する。受発光部Cは、緑色光の波長の光を発する発光素子を有する発光部300とその反射光を受光する受光素子を有する第1受光部301と第2受光部302とを有する。
【0029】
第2受光部102、202、302の各受光素子は、第1受光部101、201、301の各受光素子よりも発光素子から離れた位置、すなわち、AC/DC比が高い位置に配置されている。また、第1受光部101、201、301の各受光素子は、対応する第2受光部から出力される第1信号のDC成分と同程度となるように受光面積が小さく構成されている。つまり、各波長の第1信号と第2信号はAC2/DC2>AC1/DC1、DC2≧DC1の条件を満たすように受光量が調整されている。そして、受発光部A、受発光部B、及び受発光部Cの各第1受光部と各第2受光部は、各波長の光が干渉しないように各発光部より外側に配列されている。このように構成することにより、複数の波長の光を用いて脈波を計測することができる。
【0030】
なお、この場合には、一定時間ごとに交互に各発光部を発光させるようにしてもよいし、各発光部から同時に各波長の光を照射するようにしてもよい。後者の場合には、受発光部毎に増幅部12とA/D変換部13とを設けるように構成してもよい。各第1受光部と第2受光部において反射光を受光し、各第1受光部と第2受光部から対応する増幅部12に受光量に応じた第1信号及び第2信号を出力する。そして、各増幅部12において各波長の交流成分を抽出して増幅し、対応するA/D変換部13に出力する。本変形例では、3つ波長の光を照射して受光する例を説明したが、2つ以上の波長の光を照射して受光する構成であればこれに限らない。
【0031】
(5)上述した実施形態において、第1増幅回路122は、図8に示す電流電圧変換回路125で構成されていてもよい。この図において、電流電圧変換回路125は、オペアンプ125aと帰還抵抗125bとを有する。電流電圧変換回路125のオペアンプ125aの正端子は接地されており、受光素子111と受光素子112の接続点P1にオペアンプ125aの負端子が接続されている。電流電圧変換回路125は、受光素子111と受光素子112から出力される第1信号と第2信号の差分信号がオペアンプ125aの負端子に入力されるとその差分信号を電圧信号に変換して反転増幅させて出力する。電流電圧変換回路125から出力された電圧信号はコンデンサー123において直流成分が除去され、その交流成分が第2増幅回路124に入力されて増幅される。
【0032】
(6)上述した実施形態では、第1増幅回路122に第1信号と第2信号の差分信号が入力される例を説明したが、例えば、図9に示すように、受光素子111と受光素子112のアノードをNPNトランジスタを組み合わせた差動増幅回路に接続し、差動増幅回路において入力される第1信号と第2信号の差分を増幅した電圧信号を出力してもよい。この場合には、受光素子111と受光素子112は、AC1/DC1>AC2/DC2、DC1≧DC2の条件を満たすように、発光素子からの距離と受光面積を調整する。また、受光素子112のアノード側にグランドに接続された抵抗を設けて、受光素子112と受光素子111のDC成分とが同程度となるように受光素子111と受光素子112の受光量を調整してもよい。
【0033】
(7)上述した実施形態では、発光部10の発光素子と、第1受光部11a及び第2受光部11bの受光素子111、112とを同一平面上に並べて配置する例を説明したが、受光素子111と受光素子112から出力される第1信号と第2信号のAC/DC比が異なる位置、つまり、測定部位内における光路長が異なる配置であれば、例えば図10に示すような配置でもよい。図10は、本変形例における受発光部の断面を表す図である。この例では、受光素子111と受光素子112は、光を透過する各透明基板23の一方の面において受光面が図の上方向となるように設けられ、受光素子111、112を覆う集光部21、22が設けられている。集光部21、22の内側の面は反射鏡が設けられている。受光素子112が設けられた透明基板23の他方の面には発光素子20が設けられ、図の矢印方向に発光素子20から光が照射される。各透明基板23の受光素子111、112が設けられていない側の両端には支柱24が設けられ、支柱24を介して、生体2の上部に設けられた光を透過させるガラスなどの部材25と透明基板23の間に空間Kが設けられている。この例では、発光素子20との距離が近い受光素子112より受光素子111のAC/DC比が大きくなるように構成され、集光部21、22の大きさや曲率半径を変えることにより各受光量が調整されている。発光素子20から照射された光は、空間Kから部材25を透過して生体2に入射し、生体2の内部において反射されて部材25、空間K、透明基板23を透過して集光部21、22の内側の面で反射され、受光素子111、112で各々受光される。
【0034】
(8)上述した実施形態では、脈波計測装置を例に説明したが、発光部10、受光部11、及び増幅部12を有する脈波信号処理装置と、A/D変換部13及び制御部14を少なくとも含む制御装置とを別体に構成し、脈波信号処理装置と制御装置とを有線又は無線通信により接続して構成してもよい。この場合には、制御装置は、脈波信号処理装置の増幅部12から出力される交流成分の信号を取得し、取得した交流成分の信号に基づいて脈波を示す情報を外部の表示装置などに出力するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1・・・脈波計測装置、10,100・・・発光部、11・・・受光部、11a,101,201,301・・・第1受光部、11b,102,202,302・・・第2受光部、12・・・増幅部、13・・・A/D変換部、14・・・制御部、15・・・操作部、16・・・表示部、111,112・・・受光素子、121・・・抵抗、122・・・第1増幅回路、123・・・コンデンサー、124・・・第2増幅回路、125・・・電流電圧変換回路、125a・・・オペアンプ、125b・・・帰還抵抗、A,B,C・・・受発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脈波を測定する測定部位に光を発する発光部と、
前記発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第1信号を出力する第1受光部と、
前記発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第2信号を出力する第2受光部と、
前記第1受光部から出力される前記第1信号と前記第2受光部から出力される前記第2信号との差分信号を増幅して交流成分を出力する増幅部とを備え、
前記第1受光部と前記第2受光部は、前記第2信号の直流成分に対する交流成分の比率が前記第1信号の前記比率よりも小さくなる位置に設けられ、前記第2信号の直流成分が前記第1信号の直流成分の大きさ以下となる条件を満たすように受光量が調整されていることを特徴とする脈波信号処理装置。
【請求項2】
前記第1受光部と前記第2受光部は、前記条件を満たすように各々異なる受光面積の受光面を有することを特徴とする請求項1に記載の脈波信号処理装置。
【請求項3】
前記第1受光部又は前記第2受光部は、前記条件を満たすように前記反射光の透過を抑制するフィルターが受光面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の脈波信号処理装置。
【請求項4】
脈波を測定する測定部位に各々異なる波長の光を発する複数の発光部と、
前記複数の発光部に対応して設けられ、当該発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第1信号を出力する第1受光部と、当該発光部から発した光の反射光を受光して受光量に応じた第2信号を出力する第2受光部とを有する複数の受光部と、
前記複数の受光部の前記第1受光部と前記第2受光部から出力される前記第1信号と前記第2信号の各差分信号を増幅して交流成分を出力する増幅部とを備え、
前記発光部の各々に対応する前記受光部の前記第1受光部及び前記第2受光部は、当該発光部が発する光の波長ごとに、前記第2信号に含まれる交流成分と直流成分との比率が前記第1信号の前記比率よりも小さくなる位置に設けられ、前記第2信号の直流成分が前記第1信号の直流成分の大きさ以下となるように受光量が調整され、前記発光部と前記受光部の各組は、各波長の光が干渉しない位置に配置されていることを特徴とする脈波信号処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の脈波信号処理装置と、
前記脈波信号処理装置から出力された交流成分に基づいて脈波を示す情報を出力する脈波出力手段と
を備えることを特徴とする脈波計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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