説明

脊椎固定用骨アンカーユニット及び脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法

【課題】部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制するとともに、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止する。
【解決手段】脊椎固定用骨アンカーユニット1は、脊椎100に係合する骨係合部材11と、一端側開口14及び他端側開口15が設けられたハウジング部材13と、ハウジング部材13の内側に配置されてロッド座部21が設けられたインサート部材12とを備える。骨係合部材11における他端側の端部に設けられた頭部11bが一端側開口14から挿入された状態で、頭部11bに対してハウジング部材13における一端側の端部19が係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニット、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、頸椎、胸椎、腰椎といった脊椎に対して係合した状態で配置され、ロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持する脊椎固定用骨アンカーユニットを用い、脊椎を固定する手術が行われている。このような手術において用いられる脊椎固定用骨アンカーユニットとして、特許文献1乃至特許文献9に開示されたものが知られている。
【0003】
特許文献1乃至特許文献7に開示された脊椎固定用骨アンカーユニットには、それぞれ、骨係合部材とハウジング部材とインサート部材とが備えられている。骨係合部材は、脊椎の椎骨に対して一端側が螺合して係合するスクリュータイプとして構成されている。ハウジング部材は、脊椎の近くに配置される側である一端側と脊椎から離れて配置される側である他端側とに開口が設けられて、それらの一端側開口と他端側開口とが連通するように構成されている。インサート部材は、ハウジング部材の内側に配置されて骨係合部材の他端側の頭部に当接するとともに前述のロッド状の部分に当接するように構成されている。そして、骨係合部材はその一端側からハウジング部材の他端側開口に挿入され、骨係合部材の一端側がハウジング部材の一端側開口から突出するように配置される。また、インサート部材及びロッド部材のロッド状の部分もハウジング部材の他端側開口から挿入される。この状態で、ハウジング部材の他端側に係合するとともにロッド状の部分をインサート部材に対して押し付けて固定する固定部材が取り付けられることで、脊椎固定用骨アンカーユニットによりロッド部材が保持されて脊椎が固定される。尚、特許文献1乃至特許文献6に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、骨係合部材がハウジング部材の他端側開口から挿入されてその骨係合部材の頭部がハウジング部材の一端側において直接に係止して抜け止めが図られるように構成されている。一方、特許文献7に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、ハウジング部材の他端側開口から挿入された骨係合部材はインサート部材を介してハウジング部材に対して係止して抜け止めが図られるように構成されている。
【0004】
特許文献8又は特許文献9に開示された脊椎固定用骨アンカーユニットにおいては、骨係合部材、ハウジング部材、及びインサート部材に加えて、ハウジング部材の一端側開口からの骨係合部材の抜け止めを図るためのリング状の部材が更に備えられている。特許文献8又は特許文献9に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、骨係合部材がその他端側に設けられた頭部からハウジング部材の一端側開口に挿入される。また、骨係合部材の頭部とともに上記のリング状の部材もハウジング部材に対して一端側開口から挿入される。そして、このリング状の部材はその周方向における一部が切り欠かれた状態に形成されており、一旦このリング状の部材を縮径させてハウジング部材の一端側開口に挿入した後に拡径させることで、リング状の部材をハウジング部材の内側の溝に一部嵌め込むように取り付ける。これにより、リング状の部材に骨係合部材の頭部が係止してハウジング部材からの骨係合部材の抜け止めが図られるように構成されている。
【0005】
【特許文献1】特許第2510476号公報
【特許文献2】特許第3497512号公報
【特許文献3】特表2001−501109号公報
【特許文献4】特表2001−501110号公報
【特許文献5】特表2001−506907号公報
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0293664A1号明細書
【特許文献7】特許第3792287号公報
【特許文献8】特表2003−508109号公報
【特許文献9】特表2003−502677号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1乃至特許文献7に開示された脊椎固定用骨アンカーユニットにおいては、骨係合部材、ハウジング部材、及びインサート部材の3つの部品で構成されるため、部品点数を少なくすることができ、構造の簡素化を図りやすいという利点がある。しかしながら、これらの脊椎固定用骨アンカーユニットでは、骨係合部材はその一端側からハウジング部材の他端側開口に挿入され、骨係合部材の一端側がハウジング部材の一端側開口から突出するように配置される。このため、骨係合部材における椎骨と係合する一端側の構造が、他端側の頭部の直径寸法よりも小さく形成されるとともに、ハウジング部材を貫通可能なように形成される必要がある。一方、ハウジング部材については、人体内における配置スペースの制約から、より小型であることが要請される。このため、骨係合部材における一端側の構造が、ハウジング部材の寸法構成との関係で大きく制約を受けてしまうという問題がある。
【0007】
一方、特許文献8又は特許文献9に開示された脊椎固定用骨アンカーユニットにおいては、骨係合部材がその他端側に設けられた頭部からハウジング部材の一端側開口に挿入される。このため、骨係合部材における一端側の構造が、ハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止できる。しかしながら、これらの脊椎固定用骨アンカーユニットでは、骨係合部材、ハウジング部材、及びインサート部材に加え、前述したように、骨係合部材の抜け止め用のリング状の部材が更に必要となる。このため、部品点数が増大し、構造の複雑化を招いてしまい易いという問題がある。また、リング状の部材を取り付けるための特殊な構造をハウジング部材に形成する必要があり、ハウジング部材の構造の複雑化も招いてしまい易い。さらに、骨係合部材とともにハウジング部材の一端側にリング状の部材を挿入し、このリング状の部材をハウジング部材の内側に取り付ける工程が必要となるため、工数の増大を招くとともに製造工程が煩雑となるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる脊椎固定用骨アンカーユニットを提供するとともに、その脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための第1発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニットに関する。そして、第1発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、脊椎の椎骨に対して一端側が係合する骨係合部材と、一端側で開口する一端側開口と他端側で開口して前記一端側開口に連通する他端側開口とが設けられるとともに、前記骨係合部材における他端側の端部に設けられた頭部が前記一端側開口から挿入された状態で、前記頭部に対して一端側の端部が係止するハウジング部材と、前記ハウジング部材の内側に配置され、一端側の少なくとも一部が前記頭部に当接するとともに、前記ロッド状の部分に少なくとも一部が当接するロッド座部が他端側に設けられたインサート部材と、を備え、前記骨係合部材が椎骨に係合し、前記他端側開口から挿入された前記ロッド部材の前記ロッド状の部分が前記ロッド座部に当接するように配置され、前記ハウジング部材の他端側に係合するとともに前記ロッド状の部分を前記インサート部材に対して押し付けて固定する固定部材が取り付けられることで、前記ロッド部材を保持して脊椎を固定することを特徴とする。
【0010】
この発明によると、脊椎固定用骨アンカーユニットが、骨係合部材、ハウジング部材、及びインサート部材の3つの部品で構成され、骨係合部材の抜け止め用のリング状の部材を設ける必要がない。このため、部品点数を少なくすることができ、構造の簡素化を図ることができる。そして、リング状の部材がないため、特殊な構造をハウジング部材に設ける必要もなく、ハウジング部材の構造の複雑化を抑制できる。また、上記のように、リング状の部材がないため、リング状の部材を取り付けることに起因するような工数の増大が生じることも防止できる。そして、この脊椎固定用骨アンカーユニットでは、骨係合部材は、その他端側に設けられた頭部からハウジング部材の一端側開口に挿入され、この頭部においてハウジング部材の一端側の端部に係止され、ハウジング部材からの抜け止めが図られる。このため、骨係合部材における椎骨と係合する一端側の構造が、小型化が要請されるハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止できる。また逆に、このことにより、骨係合部材における一端側の構造に応じてハウジング部材を大きくする必要がなくなるため、人体内における配置スペースの制約が大きいハウジング部材の小型化を容易に達成することができる。
【0011】
従って、本発明によると、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる、脊椎固定用骨アンカーユニットを提供することができる。
【0012】
第2発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第1発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記頭部が前記一端側開口から挿入された後、前記ハウジング部材における一端側の端部が内側にかしめられることで前記頭部に対して当該一端側の端部が係止することを特徴とする。
【0013】
この発明によると、骨係合部材の頭部がハウジング部材の一端側開口から挿入された後、ハウジング部材の一端側の端部が内側にかしめられて骨係合部材の頭部と係止し、骨係合部材の抜け止めが図られる。このため、ハウジング部材に対して一端側開口から挿入された骨係合部材の頭部をかしめにより容易に係止することができる。従って、部品点数の削減を図るとともに構造の複雑化を抑制でき、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる脊椎固定用骨アンカーユニットを、ハウジング部材にかしめ部分を設けることで容易に実現することができる。
【0014】
第3発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第2発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記ハウジング部材における一端側の端部の内周には、当該一端側の端部が内側にかしめられたときに前記頭部の周囲に対向する位置において凹むように形成された頭部対向凹状部分が設けられていることを特徴とする。
【0015】
この発明によると、ハウジング部材の一端側の端部の内周に、かしめられたときに骨係合部材の頭部の周囲に対向する位置において凹む頭部対向凹状部分が形成されている。このため、骨係合部材の頭部に対向する位置でより小さい荷重で容易にかしめることができ、上記の頭部対向凹状部分と骨係合部材の頭部の周囲とをより容易に接触させることができる。これにより、かしめの際に、ハウジング部材の一端側の端部を骨係合部材の頭部に効率よく圧着させることができる。
【0016】
第4発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第3発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記頭部対向凹状部分は、前記ハウジング部材における一端側の端部が内側にかしめられたときに前記頭部の周囲に沿うように当接する曲面部分として設けられていることを特徴とする。
【0017】
この発明によると、頭部対向凹状部分が、かしめられたときに骨係合部材の頭部の周囲に沿うように当接する曲面部分として設けられている。このため、かしめの際に、より小さい荷重で容易に、上記の曲面部分と骨係合部材の頭部の周囲との間でより広い接触面積を確保することができる。これにより、かしめの際に、ハウジング部材の一端側の端部を骨係合部材の頭部に更に効率よく圧着させることができる。
【0018】
第5発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第1発明乃至第4発明のいずれかの脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記ロッド座部は、当接する前記ロッド状の部分の外周の一部に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成され、前記インサート部材の外周には外方に向かって突出するよう形成された凸部が設けられ、前記ハウジング部材には、当該ハウジング部材の内周において凹み形成されて前記凸部が係合する凹み部分と、前記凹み部分に連通するとともに当該ハウジング部材における外周及び一端側の端部の少なくともいずれか一方において開放されるよう形成された開放部分と、を有する凹部が設けられていることを特徴とする。
【0019】
この発明によると、ロッド座部がロッド状の部分の外周に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成されているため、インサート部材に対してロッド部材を安定して支持することができる。このため、脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、ロッド部材をより安定して強固に保持することができる。尚、特許文献5乃至特許文献7に開示された脊椎固定用骨アンカーユニットのインサート部材においても、ロッド座部がロッド状の部分の外周に沿った凹み面を有する溝状に形成されている。
【0020】
しかしながら、特許文献5に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、ハウジング部材の内側におけるインサート部材の位置決めのための機構がとくに設けられておらず、ロッド座部の凹み面をロッド状の部分に適切に嵌めることが難しい。また、特許文献6に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、インサート部材の外周に微細で複雑な形状のバネ突起部を形成し、このバネ突起部をハウジング部材に形成した貫通孔に係止させることで、ハウジング部材の内側においてインサート部材を位置決めするように構成されている。しかしながら、この脊椎固定用骨アンカーユニットでは、インサート部材の位置決めが可能なものの、インサート部材の外周に微細で複雑な形状を加工することが必要となる。そして、上述の微細な形状のバネ突起部と貫通孔との位置を調整しながらインサート部材をハウジング部材の内側に配置する必要があり、インサート部材のハウジング部材内への配置に手間を要するという問題もある。また、特許文献7に開示の脊椎固定用骨アンカーユニットでは、ハウジング部材の壁部の一部に凹んだ穴状の薄肉化した部分を形成するとともに、インサート部材の外周の対応する位置に凹み形成された穴を設け、薄肉化した部分をインサート部材の外周の穴に外側から圧着することで位置決めするように構成されている。しかしながら、この脊椎固定用骨アンカーユニットでは、インサート部材の位置決めが可能なものの、圧着のための特殊な形状をハウジング部材に加工する必要があり、更に、圧着の際にハウジング部材における圧着部分以外の部分まで変形してしまう虞がある。そして、上述の薄肉化した部分とインサート部材の外周の穴との位置を調整しながらインサート部材をハウジング部材の内側に配置する必要があり、インサート部材のハウジング部材内への配置に手間を要するという問題もある。
【0021】
一方、第5発明の脊椎固定用骨アンカーユニットによると、インサート部材の外周に凸部が形成され、ハウジング部材の内周に凹み部分を有する凹部が形成される。そして、凹部には、ハウジング部材の外側に開放されて凹み部分に連通する開放部分が形成されている。このため、インサート部材をハウジング部材の内側に挿入して配置する際に、開放部分を介してハウジング部材の外側から確認しながら、凸部を凹部に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材の内側においてインサート部材の位置決めを行う作業を容易に行うことができ、ハウジング部材が変形してしまう虞もない。そして、インサート部材の外周に凸部を形成し、ハウジング部材の内周に凹部を形成するだけでよいため、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を簡素な構造で形成することができる。従って、本発明によると、第1発明の効果を奏することができる脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、更に、ロッド部材をより安定して強固に保持することができ、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を簡素な構造で形成でき、インサート部材の位置決め作業を容易に行うことができる。
【0022】
第6発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第5発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記インサート部材には、外周側において一端側又は他端側に向かって延び、内側に向かって撓むように弾性変形可能に形成されるとともに、先端側に前記凸部が形成された可撓部が設けられ、前記凹部は、前記開放部分が前記ハウジング部材の外周において開放されるように形成されて、前記ハウジング部材の内周側と外周側とを連通する貫通孔として設けられ、前記インサート部材は、前記ハウジング部材に対して前記一端側開口から挿入され、前記可撓部が内側に撓んだ後に弾性回復して前記凸部が前記凹部に係合することを特徴とする。
【0023】
この発明によると、インサート部材において、その本体部分に対して片持ち状に延びるとともに先端側に凸部が形成された可撓部を設けることで、弾性回復力を利用して凸部を凹部に係合させる構成を簡素な構造で実現することができる。そして、ハウジング部材においても、内周側と外周側とを連通する貫通孔として、簡素な構造の凹部を実現することができる。これにより、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を非常に簡素な構造で形成することができる。そして、インサート部材をハウジング部材の一端側開口から挿入して可撓部を内側に撓ませた後、貫通孔の凹部を介してハウジング部材の外側から確認しながら、可撓部を弾性回復させて凸部を凹部に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材の内側においてインサート部材の位置決めを行う作業を非常に容易に行うことができる。また、ハウジング部材が変形してしまうことがない位置決め機構を実現することができる。
【0024】
第7発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第5発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記凹部は、前記開放部分が前記ハウジング部材の一端側の端部において開放されるように形成され、前記凹み部分が前記ハウジング部材の内周において一端側から他端側に向かって延びる溝状に形成され、前記インサート部材は、前記凸部が前記凹部に対して摺接して移動しながら、前記ハウジング部材に対して前記一端側開口から挿入されることを特徴とする。
【0025】
この発明によると、インサート部材の外周に凸部を形成してハウジング部材の内周に溝状の凹部を形成するだけでよいため、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を非常に簡素な構造で形成することができる。そして、インサート部材は、凸部がハウジング部材において外側に開放された溝状の凹部に対して摺接して移動しながら、ハウジング部材に対して一端側開口から挿入される。このため、ハウジング部材の外側から確認しながら凸部と溝状の凹部とを摺接させるだけで、ハウジング部材の内側においてインサート部材の位置決めを行う作業を極めて容易に行うことができる。また、ハウジング部材が変形してしまうことがない位置決め機構を実現することができる。
【0026】
第8発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第1発明乃至第7発明のいずれかの脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記骨係合部材は、一端側に、椎骨に螺合して係合するスクリュー部が形成されていることを特徴とする。
【0027】
この発明によると、一端側のスクリュー部で椎骨に螺合して係合する骨係合部材を備えた脊椎固定用骨アンカーユニットにおいても、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる。
【0028】
第9発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第8発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記スクリュー部の最外周部分の直径寸法が、前記スクリュー部の軸方向と垂直な方向における前記頭部の最大直径寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0029】
この発明によると、骨係合部材は、スクリュー部の最外周部分の直径寸法が頭部の最大直径寸法よりも大きくなるように形成されている。このため、ハウジング部材に対して一端側開口から挿入されてハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けないスクリュー部を大きく形成できるため、スクリュー部の強度を向上させて破損を抑制でき、更に椎骨への結合強度も向上させることができる。
【0030】
第10発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、第8発明又は第9発明の脊椎固定用骨アンカーユニットにおいて、前記スクリュー部の最外周部分の直径寸法が、前記ハウジング部材における一端側の端部が前記頭部に係止した前記一端側開口の最小直径寸法よりも大きいことを特徴とする。
【0031】
この発明によると、骨係合部材は、スクリュー部の最外周部分の直径寸法がハウジング部材の一端側開口の最小直径寸法よりも大きくなるように形成されている。このため、ハウジング部材に対して一端側開口から挿入されてハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けないスクリュー部を大きく形成できるため、スクリュー部の強度を向上させて破損を抑制でき、更に椎骨への結合強度も向上させることができる。また、スクリュー部の大きさに関わらず、ハウジング部材の径方向の寸法を小さくでき、ハウジング部材の小型化を図ることができる。
【0032】
また、前述の目的を達成するための第11発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法は、少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニットを製造する、脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法に関する。そして、第11発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットは、脊椎の椎骨に対して一端側が係合する骨係合部材を形成する、骨係合部材形成工程と、前記ロッド状の部分に少なくとも一部が当接するロッド座部が設けられたインサート部材を形成する、インサート部材形成工程と、一端側で開口する一端側開口と、他端側で開口して前記一端側開口に連通するとともに前記ロッド部材の前記ロッド状の部分が挿入される他端側開口と、が設けられ、前記ロッド状の部分を前記インサート部材の前記ロッド座部に対して押し付けて固定する固定部材が他端側に係合するように取り付けられるハウジング部材を形成する、ハウジング部材形成工程と、前記インサート部材を前記ハウジング部材の内側に配置するインサート部材配置工程と、前記骨係合部材における他端側の端部に設けられた頭部を前記インサート部材の一端側の少なくとも一部に当接可能なように前記ハウジング部材に前記一端側開口から挿入し、前記ハウジング部材の一端側の端部を内側にかしめることで前記頭部に対して当該一端側の端部を係止するかしめ工程と、を備えていることを特徴とする。
【0033】
この発明によると、骨係合部材、ハウジング部材、及びインサート部材の3つの部品で構成されて骨係合部材の抜け止め用のリング状の部材を設ける必要がない脊椎固定用骨アンカーユニットを製造することができる。このため、部品点数を少なくすることができ、構造の簡素化を図った脊椎固定用骨アンカーユニットを製造することができる。そして、リング状の部材がないため、特殊な構造をハウジング部材に設ける必要もなく、ハウジング部材の構造の複雑化を抑制できる。また、上記のように、リング状の部材がないため、リング状の部材を取り付けることに起因するような工数の増大が生じることも防止できる。そして、この脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法では、骨係合部材の頭部がハウジング部材の一端側開口から挿入された後、ハウジング部材の一端側の端部が内側にかしめられて骨係合部材の頭部と係止し、骨係合部材の抜け止めが図られる。このため、骨係合部材における椎骨と係合する一端側の構造が、小型化が要請されるハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止できる。また逆に、このことにより、骨係合部材における一端側の構造に応じてハウジング部材を大きくする必要がなくなるため、人体内における配置スペースの制約が大きいハウジング部材の小型化を容易に達成することができる。また、ハウジング部材に対して一端側開口から挿入された骨係合部材の頭部をかしめにより容易に係止することができる。
【0034】
従って、本発明によると、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる脊椎固定用骨アンカーユニットを製造することができる。
【0035】
第12発明に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法は、第11発明の脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法において、前記インサート部材形成工程において、前記インサート部材の外周には外方に向かって突出する凸部が形成され、更に、前記ロッド座部は、当接する前記ロッド状の部分の外周の一部に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成され、前記ハウジング部材形成工程において、前記ハウジング部材の内周において凹むように凹み部分が形成されるとともに、前記凹み部分に連通して前記ハウジング部材における外周及び一端側の端部の少なくともいずれか一方に開放される開放部分が形成され、前記インサート部材配置工程において、前記インサート部材は、前記凸部が前記凹部に係合した状態で前記ハウジング部材の内側に配置されることを特徴とする。
【0036】
この発明によると、ロッド座部がロッド状の部分の外周に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成される。このため、この製造方法によって製造された脊椎固定用骨アンカーユニットにおいては、インサート部材に対してロッド部材を安定して支持することができ、ロッド部材をより安定して強固に保持することができる。そして、この脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法によると、インサート部材の外周に凸部が形成され、ハウジング部材の内周に凹み部分を有する凹部が形成され、更に、凹部にはハウジング部材の外側に開放されて凹み部分に連通する開放部分が形成される。このため、インサート部材配置工程においてインサート部材をハウジング部材の内側に挿入して配置する際に、開放部分を介してハウジング部材の外側から確認しながら、凸部を凹部に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材の内側においてインサート部材の位置決めを行う作業を容易に行うことができ、ハウジング部材が変形してしまう虞もない。そして、インサート部材の外周に凸部を形成し、ハウジング部材の内周に凹部を形成するだけでよいため、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を簡素な構造で形成することができる。従って、本発明によると、第10発明の効果を奏することができる脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法において、ロッド部材をより安定して強固に保持することができる脊椎固定用骨アンカーユニットを製造することができる。そして、本発明では、更に、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構を簡素な構造で形成でき、インサート部材の位置決め作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨係合部材における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる脊椎固定用骨アンカーユニットを提供するとともに、その脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明は、少なくともロッド状の部分を有して脊椎に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニット、及びその脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法に関して広く適用することができるものである。
【0039】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニット1が、脊柱100を構成する脊椎100を固定するために用いられている状態を例示する図である。尚、図1では、胸椎である脊椎100及び脊椎固定用骨アンカーユニット1(以下、単に「骨アンカーユニット1」という)等の部材のみを図示している。この図1に示すように、脊椎100を固定する手術においては、脊椎100の椎骨100aにそれぞれ係合した状態で骨アンカーユニット1が複数配置される。そして、ロッド状の部分101aを有する丸棒状に形成されたロッド部材101が脊柱100に沿って配置され、各骨アンカーユニット1に保持される。ロッド部材101は、例えば、脊柱100に沿ってその両側にそれぞれ配置され、両ロッド部材101はコネクタ102で連結される。そして、ロッド部材101の一方と脊椎100には複数本のワイヤ103が巻き掛けられ、このワイヤ103を締め付けることで脊椎100に対してロッド部材101に沿わせる方向の矯正力が付与される。尚、本実施形態では、ロッド部材101が長手方向の全長に亘ってロッド状の部分101aを有するように構成されているが、必ずしもこの通りでなくてもよい。ロッド部材としては、全長に亘ってロッド状の部分を有する形態に限らず、部分的にロッド状の部分を有するものでもよく、例えば、両端側に平板状のプレート部分を有する部材にロッド状の部分が設けられているものであってもよい。
【0040】
次に、本実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニット1を説明する。図2は、骨アンカーユニット1を示す正面図(図2(a))及び側面図(図2(b))である。図3は、図2(a)のA−A線矢視断面図(図3(a))、及び、図2(b)のB−B線矢視断面図(図3(b))である。図4は、ロッド部材101を保持した状態を示す骨アンカーユニット1の断面図であって、図3(a)に対応する断面を示す断面図(図4(a))、及び、図3(b)に対応する断面を示す断面図(図4(b))である。図5は、骨アンカーユニット1の分解斜視図である。尚、図3(b)は、ロッド部材101とともに図示しており、図4及び図5は、ロッド部材101及び固定ナット(固定部材)104とともに図示している。図2乃至図5に示すように、骨アンカーユニット1は、骨スクリュー11、インサート部材12、及びハウジング部材13の3つの部品を備えて構成されている。そして、脊椎100を固定する手術の際には、ロッド部材101及び固定ナット104とともに用いられる。尚、以下の説明では、各部材において、脊椎100の近く又は脊椎100内に配置される側を一端側として、脊椎100から離れて配置される側を他端側として説明する。
【0041】
図6は、骨スクリュー11の正面図(図6(a))及び断面図(図6(b))である。骨スクリュー11は、一端側にスクリュー部11aが形成され、他端側の端部には頭部11bが形成されている。スクリュー部11aは、椎骨100aに螺合して係合する雄ネジ部として設けられている。頭部11bは、頭頂部分に平坦な面が形成されるとともに、外周が球状面の一部を成すように形成され、スクリュー部11aの他端側と一体に設けられている。これにより、骨スクリュー11は、脊椎100の椎骨100aに一端側が係合する骨係合部材を構成している。
【0042】
図7は、ハウジング部材13の斜視図であり、図7(a)及び図7(b)で向きを変えて示した斜視図である。図8は、ハウジング部材13の平面図(図8(a))、正面図(図8(b))、側面図(図8(c))、及び底面図(図8(d))である。図9は、図8(b)のC−C線矢視断面図(図9(a))、及び図8(c)のD−D線矢視断面図である。尚、図7乃至図9は、骨アンカーユニット1として組み立てられる前の状態におけるハウジング部材13を示したものである。
【0043】
図7乃至図9に示すように、ハウジング部材13は、他端側が二股に分かれた構造の筒状に形成されており、一端側で開口する一端側開口14と他端側で開口する他端側開口15とが設けられている。これらの一端側開口14と他端側開口15とは、ハウジング部材13の中空の内部で連通している。そして、一端側開口14は、ハウジング部材13の一端側の端部で円形状に開口する孔として形成されている。一方、他端側開口15は、ハウジング部材13における他端側の端部から互いに対向する側方部分のそれぞれに亘って開口するよう形成されている。このような他端側開口15が形成されることで、ハウジング部材13の他端側には二股に分かれた形状の二股部分20が設けられている。尚、他端側開口15における二股部分20の間はロッド部材101のロッド状の部分101aが貫通するように配置される領域として構成されており、二股部分20が連続する部分はロッド状の部分101aの外周に対応する半円形状に形成されている。
【0044】
また、ハウジング部材13には、その二股部分20のそれぞれにおいて、脊椎100を固定する手術の際に骨アンカーユニット1をハウジング部材13にて所定の器具によって把持するための貫通孔18が形成されている。また、ハウジング部材13の二股部分20における内周には、ロッド状の部分101aを固定するための固定ナット104(図4、図5参照)に螺合する雌ネジ部16が形成されている。この雌ネジ部16は、図9によく示すように、ネジ溝の断面形状(雌ネジ部16の螺旋中心を含む面における断面の形状)が一端側から他端側に向かって外側に傾斜して傾くように形成されている。そして、図4及び図5に示す固定ナット104は、雌ネジ部16に螺合するネジ山が形成された雄ネジ部材として形成されており、他端側開口15から挿入されてハウジング部材13の他端側の雌ネジ部16に螺合して係合するように構成されている。このように、雌ネジ部16のネジ溝と固定ナット104のネジ山とが一端側から他端側に向かって外側に傾斜するように形成されているため、二股部分20の内周において螺合する固定ナット104がハウジング部材13に対してより強固に固定されることになる。
【0045】
また、ハウジング部材13には、図7及び図9に示すように、凹み部分17aと開放部分17bとを有する凹部17が設けられている。凹み部分17aは、ハウジング部材13の内周において一端側から他端側に向かって延びる溝状に凹み形成されている。尚、この凹み部分17aは、後述するインサート部材12の凸部22が係合するように構成されている。また、開放部分17bは、凹み部分17aに連通するとともにハウジング部材13の一端側の端部19において外側に向かって開放されるように形成されている。
【0046】
また、ハウジング部材13は、図3及び図4に示すように、骨スクリュー11の頭部11bが一端側開口14から挿入された状態で、頭部11bに対して一端側の端部19が係止するように構成されている。そして、このハウジング13においては、頭部11bが一端側開口14から挿入された後、一端側の端部19が内側にかしめられることで頭部11bに対して一端側の端部19が係止するように構成されている。また、図3、図4及び図9に示すように、ハウジング部材13における一端側の端部19の内周には、一端側の端部19が内側にかしめられたときに頭部11bの周囲に沿うように当接する曲面部分19aが形成されている。尚、本実施形態においては、この曲面部分19aが、一端側の端部19が内側にかしめられたときに頭部11bの周囲に対向する位置において凹むように形成された頭部対向凹状部分として設けられている。また、図3によく示すように、骨スクリュー11のスクリュー部11aの最外周部分の直径寸法Raは、ハウジング部材13における一端側の端部19が頭部11bに係止した一端側開口14の最小直径寸法Rbよりも大きくなるように形成されている。
【0047】
図10は、インサート部材12の平面図(図10(a))、正面図(図10(b))、及び図10(a)のE−E線矢視断面図(図10(c))である。図3乃至図5と図10とに示すように、インサート部材12は、ハウジング部材13の内側に配置され、一端側が骨スクリュー11の頭部11bに当接するとともに、ロッド部材101のロッド状の部分101aに当接するロッド座部21が他端側に設けられている。ロッド座部21は、当接するロッド状の部分101aの外周の一部に沿って湾曲した凹み面21a(図10参照)を有する溝状に形成されている。一方、インサート部材12の一端側における頭部11bに当接する部分には、頭部11bの外形に沿ったほぼ球状面の一部を成す頭部当接面23が形成されている。また、インサート部材12の外周には外方に向かって突出するように形成された凸部22が設けられている。そして、インサート部材12は、ハウジング部材13の内側に配置される際には、この凸部22がハウジング部材13の凹部17に対して摺接しながら、ハウジング部材13に対して一端側開口14から挿入されることになる。これにより、ハウジング部材13の内側において、所定の位置にインサート部材12が位置決めされることになる。そして、ハウジング部材13の他端側開口15における二股部分20の間にロッド部材101が挿入された際には、インサート部材12におけるロッド座部21の凹み面21aに対してロッド状の部分101aの外周が適切に嵌まり合うように支持されることになる。
【0048】
脊椎100を固定する手術に際しては、図2及び図3(a)に示す状態に組み立てられた骨アンカーユニット1が用いられ、術者は、まず、骨スクリュー11を脊椎100の椎骨100aに螺合して係合させる。そして、ハウジング部材13の他端側開口15からロッド部材101のロッド状の部分101aを挿入し、このロッド状の部分101aをインサート部材12のロッド座部21の凹み面21aに当接するように配置する。この状態で、図4によく示すように、本実施形態の固定部材である固定ナット104をハウジング部材13の他端側の雌ネジ部16に螺合させて係合させることで取り付ける。この固定ナット104により、ロッド状の部分101aをインサート部材12のロッド座部21に押し付けて固定する。これにより、骨アンカーユニット1によって、ロッド部材101が保持されて脊椎100が固定されることになる。
【0049】
次に、骨アンカーユニット1の製造方法、即ち、本発明の実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法について説明する。図11は、本実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法(以下、「骨アンカーユニット1の製造方法」という)を示す工程図である。図11に示すように、骨アンカーユニット1の製造方法としては、骨係合部材形成工程S101、インサート部材形成工程S102、ハウジング部材形成工程S103、インサート部材配置工程S104、及びかしめ工程S105が備えられている。尚、図11においては、骨係合部材形成工程S101、インサート部材形成工程S102、ハウジング部材形成工程S103が順次行われる工程図を例示しているが、これらの各工程(S101、S012、S103)の順序は任意に変更してもよく、また同時に並列的に行われてもよく、どのような順序やタイミングで行われてもよい。
【0050】
骨係合部材形成工程S101では、棒状の部材の一端側にネジ切り加工が施されてスクリュー部11aが形成されるとともに他端側に頭部11bが加工されることで、骨係合部材である骨スクリュー11が形成される。インサート部材形成工程S102では、例えば、外方に向かって突出する凸部22が外周に形成された中空円筒状の部材の一端側に頭部当接面23が形成されるとともに他端側に溝状のロッド座部21の凹み面21aが形成されることで、インサート部材12が形成される。ハウジング部材形成工程S103では、中空円筒状の部材に対して、その一端側の内周において凹む凹み部分17aと一端側の端部19まで開放される開放部分17bとを有する溝状の凹部17が形成される。また、その部材の他端側において二股部分20を形成する他端側開口15が加工され、更に二股部分20にそれぞれ貫通孔18が加工される。そして、このように一端側開口14と他端側開口15とが形成された部材の他端側の内周に、固定ナット104が螺合する雌ネジ部16のネジ切り加工が施され、ハウジング部材12が形成される。
【0051】
インサート部材配置工程S104では、インサート部材12の凸部22がハウジング部材13の凹部17に対して摺接して移動しながら、インサート部材12がハウジング部材13の一端側開口14から挿入される。そして、インサート部材12は、凸部22が凹部17に係合した状態でハウジング部材13の内側に配置される。
【0052】
かしめ工程S105では、インサート部材12が内側に配置されたハウジング部材13の一端側開口14から、骨スクリュー11の頭部11bが挿入される。このとき、頭部11bはインサート部材12の頭部当接面23に嵌まり込んで当接するように配置される。そして、この状態で、ハウジング部材13の一端側の端部19が内側にかしめられることで、骨スクリュー11の頭部11bに対して一端側の端部19が係止される。尚、ハウジング部材13の一端側の端部19を内側にかしめる方法として、例えば、一端側の端部19の外周にローラーを当接させて配置し、このローラーを回転させながら一端側の端部19の外周に対して周方向に沿って押し付けながら移動させるローラー成形加工法を行うことができる。また、ハウジング部材13の内側にインサート部材12及び骨スクリュー11の頭部11bを配置した組立体を所定の回転支持機構に取り付け、この組立体を回転させながら、一端側の端部19に所定の工具を押し付けてかしめる方法を行ってもよい。また、上記の組立体に対してハウジング部材13の一端側の端部19で当接する型を用い、この型に対して組立体を押し付けることで一端側の端部19を内側に変形させてかしめる方法を行ってもよい。このかしめ工程S105まで終了することで、骨アンカーユニット1の製造が完了し、ロッド部材101及び固定ナット104とともに、脊椎100を固定する手術において用いられることになる。
【0053】
以上説明した骨アンカーユニット1によると、骨アンカーユニット1が、骨スクリュー11、ハウジング部材12、及びインサート部材13の3つの部品で構成され、骨スクリュー11の抜け止め用のリング状の部材を設ける必要がない。このため、部品点数を少なくすることができ、構造の簡素化を図ることができる。そして、リング状の部材がないため、特殊な構造をハウジング部材13に設ける必要もなく、ハウジング部材13の構造の複雑化を抑制できる。また、上記のように、リング状の部材がないため、リング状の部材を取り付けることに起因するような工数の増大が生じることも防止できる。そして、この骨アンカーユニット1では、骨スクリュー11は、その他端側に設けられた頭部11bからハウジング部材13の一端側開口14に挿入され、この頭部11bにおいてハウジング部材13の一端側の端部19に係止され、ハウジング部材13からの抜け止めが図られる。このため、骨スクリュー11における椎骨100aと係合する一端側の構造が、小型化が要請されるハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止できる。また逆に、このことにより、骨スクリュー11における一端側の構造に応じてハウジング部材13を大きくする必要がなくなるため、人体内における配置スペースの制約が大きいハウジング部材13の小型化を容易に達成することができる。
【0054】
従って、骨アンカーユニット1によると、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨スクリュー11における椎骨100aと係合する部分の構造がハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる。
【0055】
また、骨アンカーユニット1によると、骨スクリュー11の頭部11bがハウジング部材13の一端側開口14から挿入された後、ハウジング部材13の一端側の端部19が内側にかしめられて骨スクリュー11の頭部11bと係止し、骨スクリュー11の抜け止めが図られる。このため、ハウジング部材13に対して一端側開口14から挿入された骨スクリュー11の頭部11bをかしめにより容易に係止することができる。
【0056】
また、骨アンカーユニット1によると、ハウジング部材13の一端側の端部19の内周に、かしめられたときに骨スクリュー11の頭部11bの周囲に対向する位置で凹むとともにこの頭部11bの周囲に沿うように当接する曲面部分19aが頭部対向凹状部分として形成されている。このため、骨スクリュー11の頭部11bに対向する位置でより小さい荷重で容易にかしめることができ、曲面部分19aと頭部11bの周囲とをより容易に接触させることができる。また、頭部対向凹状部分が曲面部分19aとして設けられていることで、かしめの際に、より小さい荷重で容易に、曲面部分19aと骨スクリュー11の頭部11bの周囲との間でより広い接触面積を確保することができる。これにより、かしめの際に、ハウジング部材13の一端側の端部19を骨スクリュー11の頭部11bに効率よく圧着させることができる。
【0057】
また、骨アンカーユニット1によると、ロッド座部21がロッド状の部分101aの外周に沿って湾曲した凹み面21aを有する溝状に形成されているため、ロッド部材101をより安定して強固に保持することができる。そして、この骨アンカーユニット1によると、インサート部材12をハウジング部材13の内側に挿入して配置する際に、開放部分17bを介してハウジング部材13の外側から確認しながら、凸部22を凹部17に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材13の内側においてインサート部材12の位置決めを行う作業を容易に行うことができ、ハウジング部材13が変形してしまう虞もない。尚、本実施形態では、凹部17が外側に開放された溝状に形成されており、ハウジング部材13の外側から確認しながら凸部22と凹部17とを摺接させるだけで、ハウジング部材13の内側においてインサート部材12の位置決めを行う作業を極めて容易に行うことができる。そして、インサート部材13の外周に凸部22を形成し、ハウジング部材13の内周に溝状の凹み部分17aを有する凹部17を形成するだけでよいため、ハウジング部材13内でのインサート部材12の位置決めのための機構を非常に簡素な構造で形成することができる。
【0058】
また、骨アンカーユニット1によると、骨スクリュー11は、スクリュー部11aの最外周部分の直径寸法Raがハウジング部材13の一端側開口14の最小直径寸法Rbよりも大きくなるように形成されている。このため、ハウジング部材13に対して一端側開口14から挿入されてハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けないスクリュー部11aを大きく形成できるため、スクリュー部11aの強度を向上させて破損を抑制でき、更に椎骨100aへの結合強度も向上させることができる。また、スクリュー部11aの大きさに関わらず、ハウジング部材13の径方向の寸法を小さくでき、ハウジング部材13の小型化を図ることができる。
【0059】
また、以上説明した骨アンカーユニット1の製造方法によると、骨スクリュー11、ハウジング部材13、及びインサート部材12の3つの部品で構成されて骨スクリュー11の抜け止め用のリング状の部材を設ける必要がない骨アンカーユニット1を製造することができる。このため、部品点数を少なくすることができ、構造の簡素化を図った骨アンカーユニット1を製造することができる。また、リング状の部材がないため、リング状の部材を取り付けることに起因するような工数の増大が生じることも防止できる。そして、骨アンカーユニット1の製造方法では、骨スクリュー11の頭部11bがハウジング部材13の一端側開口14から挿入された後、ハウジング部材13の一端側の端部19が内側にかしめられて骨スクリュー11の頭部11bと係止し、骨スクリュー11の抜け止めが図られる。このため、骨スクリュー11における椎骨100aと係合する一端側の構造が、小型化が要請されるハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止でき、また逆に、骨スクリュー11における一端側の構造に応じてハウジング部材13を大きくする必要がなく、ハウジング部材13の小型化を容易に達成することもできる。また、骨アンカーユニット1の製造方法によると、ハウジング部材13に対して一端側開口14から挿入された骨スクリュー11の頭部11bをかしめにより容易に係止することができる。
【0060】
従って、骨アンカーユニット1の製造方法によると、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに骨スクリュー11における椎骨100aと係合する部分の構造がハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる骨アンカーユニット1を製造することができる。
【0061】
また、骨アンカーユニット1の製造方法によると、インサート部材12においてロッド状の部分101aの外周に沿って湾曲した凹み面21aを有する溝状のロッド座部21が形成されるため、ロッド部材101をより安定して強固に保持することができる骨アンカーユニット1を製造することができる。そして、骨アンカーユニット1の製造方法によると、インサート部材配置工程S104においてインサート部材12をハウジング部材13の内側に挿入して配置する際に、開放部分17bを介してハウジング部材13の外側から確認しながら、凸部22を凹部17に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材13の内側においてインサート部材12の位置決めを行う作業を容易に行うことができ、ハウジング部材13が変形してしまう虞もない。そして、インサート部材12の外周に凸部22を形成し、ハウジング部材13の内周に凹部17を形成するだけでよいため、ハウジング部材13内でのインサート部材12の位置決めのための機構を簡素な構造で形成することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図12は、本発明の第2実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニット2(以下、単に「骨アンカーユニット2」という)を示す断面図である。骨アンカーユニット2は、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に用いられ、また、骨アンカーユニット1の製造方法と同様の製造方法によって製造される。そして、骨アンカーユニット2は、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に構成され、骨スクリュー11、インサート部材12、及びハウジング部材13を備えて構成されている。但し、骨アンカーユニット2では、骨スクリュー11におけるスクリュー部11a及び頭部11bにおける寸法構成において第1実施形態とは異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0063】
図12に示すように、骨アンカーユニット2の骨スクリュー11においては、スクリュー部11aの最外周部分の直径寸法Raが、スクリュー部11aの軸方向と垂直な方向における頭部11bの最大直径寸法Rcよりも大きくなるように形成されている。このため、骨アンカーユニット2によると、ハウジング部材13に対して一端側開口14から挿入されてハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けないスクリュー部11aを大きく形成できるため、スクリュー部11aの強度を向上させて破損を抑制でき、更に椎骨への結合強度も向上させることができる。
【0064】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニット(以下、単に「第3実施形態の骨アンカーユニット」という)は、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に用いられる。そして、第3実施形態の骨アンカーユニットは、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に構成され、骨スクリュー、インサート部材、及びハウジング部材を備えて構成されている。但し、第3実施形態の骨アンカーユニットは、ハウジング部材内でのインサート部材の位置決めのための機構において第1実施形態とは異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる構成について説明する。
【0065】
第3実施形態の骨アンカーユニットにおいては、第1実施形態の骨スクリュー11と同様の骨スクリューと、図13乃至図15に示すハウジング部材33と、図16及び図17に示すインサート部材32とが備えられている。尚、図13は、ハウジング部材33の斜視図であり、図13(a)及び図13(b)で向きを変えて示した斜視図である。図14は、ハウジング部材33の平面図(図14(a))、正面図(図14(b))、及び側面図(図14(c))である。図15は、図14(b)のF−F線矢視断面図(図15(a))、及び図14(c)のG−G線矢視断面図(図15(b))である。尚、図13乃至図15は、第3実施形態の骨アンカーユニットとして組み立てられる前の状態におけるハウジング部材33を示したものである。
【0066】
図13乃至図15に示すように、ハウジング部材33は、第1実施形態のハウジング部材13と同様に、一端側開口14、他端側開口15、雌ネジ部16、二股部分20などが設けられている。但し、ハウジング部材33には、第1実施形態の凹部17とは異なる形態で、凹部34が設けられている。凹部34は、ハウジング部材33の二股部分20のそれぞれにおいて、内周側と外周側とを連通する円形の貫通孔として設けられている。そして、凹部34において内側に開口した部分が、ハウジング部材33の内周において凹み形成された凹み部分34aを構成している。一方、凹部34において外側に開口した部分が、凹み部分34aに連通するとともにハウジング部材33の外周において開放されるように形成された開放部分34bを構成している。また、この凹部34は、脊椎を固定する手術の際に第3実施形態の骨アンカーユニットをハウジング部材33にて所定の器具によって把持するための貫通孔として兼用されるように構成されている。尚、このハウジング部材33においても、第1実施形態のハウジング部材13と同様に、骨スクリューの頭部が一端側から挿入された後、ハウジング部材33の一端側の端部19が内側にかしめられることで前記頭部に対して一端側の端部19が係止するように構成されている。
【0067】
図16は、インサート部材32の斜視図である。また、図17は、インサート部材32の平面図(図17(a))、正面図(図17(b))、側面図(図17(c))、及び図17(a)のH−H線矢視断面図(図17(d))である。図16及び図17に示すように、インサート部材32は、第1実施形態のインサート部材12と同様に、凹み面21aを有するロッド座部21、頭部当接面23などが設けられ、ハウジング部材33の内側に配置される。但し、インサート部材32は、第1実施形態のインサート部材12とは異なり、可撓部35が設けられ、この可撓部35の先端側にハウジング部材33における凹部34の凹み部分34aに係合する凸部36が設けられている。
【0068】
可撓部35は、ロッド座部21を挟んで対向する位置において一対設けられ、ロッド座部21が設けられた本体部分に対して、それぞれインサート部材32の外周側において他端側に向かって片持ち状に延びるように形成されている。また、各可撓部35における内側には先端側である他端側に向かって外側に傾くテーパ面が設けられている。これにより、各可撓部35は、先端側に向かって厚みが薄く剛性が小さくなるように形成され、少なくとも内側に向かって撓むように弾性変形可能に形成されている。また、ハウジング部材33の凹部34に係合する凸部36は、各可撓部35の先端側の外周において外方に向かって突出するようにそれぞれ形成されている。
【0069】
インサート部材32は、ハウジング部材33の内側に配置される際には、ハウジング部材33の周方向において凹部34の位置に凸部36の位置を対応させた状態で、一端側から(即ち、可撓部35の先端側から)ハウジング部材33に対して一端側開口14に挿入される。インサート部材32が一端側開口14から挿入されると、まず、凸部36がハウジング部材33の内周と干渉するため、可撓部35が内側に撓むことになる。そして、インサート部材32が一端側開口14から更に他端側に向かって挿入されると、可撓部35が内側に撓んだ後に弾性回復して凸部36が凹部34に係合することになる。これにより、ハウジング部材33の内側において、所定の位置にインサート部材32が位置決めされることになる。そして、ハウジング部材33の他端側開口15における二股部分20の間にロッド部材が挿入された際には、インサート部材32におけるロッド座部21の凹み面21aに対してロッド状の部分の外周が適切に嵌まり合うように支持されることになる。
【0070】
尚、第3実施形態の骨アンカーユニットは、第1実施形態の骨アンカーユニット1の製造方法と同様の製造方法により製造される。但し、第3実施形態の骨アンカーユニットの製造方法においては、ハウジング部材形成工程では、凹部34が円形の貫通孔として設けられたハウジング部材33が形成され、インサート部材形成工程では、先端側に凸部36が設けられた可撓部35を備えるインサート部材32が形成される。
【0071】
以上説明した第3実施形態の骨アンカーユニットによると、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制できるとともに、骨スクリューにおける椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材33の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる。
【0072】
また、第3実施形態の骨アンカーユニットによると、インサート部材32において、その本体部分に対して片持ち状に延びるとともに先端側に凸部36が形成された可撓部35を設けることで、弾性回復力を利用して凸部36を凹部34に係合させる構成を簡素な構造で実現することができる。そして、ハウジング部材33においても、内周側と外周側とを連通する貫通孔として、簡素な構造の凹部34を実現することができる。これにより、ハウジング部材33内でのインサート部材32の位置決めのための機構を非常に簡素な構造で形成することができる。そして、インサート部材32をハウジング部材33の一端側開口14から挿入して可撓部35を内側に撓ませた後、貫通孔の凹部34を介してハウジング部材33の外側から確認しながら、可撓部35を弾性回復させて凸部36を凹部34に対して容易に係合させることができる。これにより、ハウジング部材33の内側においてインサート部材32の位置決めを行う作業を非常に容易に行うことができる。また、ハウジング部材33が変形してしまうことがない位置決め機構を実現することができる。
【0073】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。図18は、本発明の第4実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニット4(以下、単に「骨アンカーユニット4」という)を示す分解斜視図である。骨アンカーユニット4は、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に、脊柱に沿って配置されるロッド部材101を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する手術において用いられる。そして、骨アンカーユニット4は、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様に、骨係合部材、インサート部材12、及びハウジング部材13を備えて構成されている。但し、骨アンカーユニット4では、骨係合部材が骨スクリューとしてではなく骨フック41として構成されている点において、第1実施形態とは異なっている。以下、第1実施形態と同様の構成については図面において同一の符号を付して説明を省略し、第1実施形態と異なる骨フック41について説明する。
【0074】
図18に示すように、骨係合部材である骨フック41は、一端側にフック部41aが形成され、他端側の端部には頭部41bが形成されている。頭部41bは、第1実施形態の骨スクリュー11の頭部11bと同様に形成されている。そして、頭部41bがハウジング部材13の一端側開口14から挿入された後、ハウジング部材13における一端側の端部19が内側にかしめられることで頭部41bに対して一端側の端部19が係止するように構成されている。一方、フック部41aは、脊椎の椎骨に対してこの椎骨を挟んだ状態で係合する鉤爪状に形成されている。フック部41aは、頭部41bよりも全体的に大きな寸法で形成されている。
【0075】
脊椎を固定する手術に際しては、ハウジング部材13の内側にインサート部材12が配置されるとともに骨フック41の頭部41bがハウジング部材13の一端側の端部19にかしめられた状態に組み立てられた骨アンカーユニット4が用いられる。そして、術者は、まず、骨フック41を脊椎の椎骨に対してフック部41aで挟み込んで係合させる。その後は、第1実施形態と同様に、ハウジング部材13の他端側開口15からロッド部材101のロッド状の部分101aを挿入し、このロッド状の部分101aをインサート部材12のロッド座部21の凹み面21aに当接するように配置する。この状態で、固定ナット104をハウジング部材13の他端側の雌ネジ部16に螺合させて取り付けるとともに、ロッド状の部分101aをロッド座部21に押し付けて固定する。これにより、骨アンカーユニット4によって、ロッド部材101が保持されて脊椎100が固定されることになる。
【0076】
尚、骨アンカーユニット4は、第1実施形態の骨アンカーユニット1の製造方法と同様の製造方法により製造される。但し、骨アンカーユニット4の製造方法においては、骨係合部材形成工程では、フック部41aが設けられた骨フック41が形成される。
【0077】
以上説明した骨アンカーユニット4においても、第1実施形態の骨アンカーユニット1と同様の効果を奏することができる。即ち、骨アンカーユニット1よると、骨フック41、インサート部材12、及びハウジング部材13の3つの部品で構成でき、部品点数の削減を図って構造の複雑化を抑制することができる。そして、骨アンカーユニット4によると、骨フック41における椎骨と係合する部分の構造がハウジング部材13の寸法構成との関係で制約を受けてしまうことを防止することができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、次のように変更して実施してもよい。
【0079】
(1)ハウジング部材における一端側の端部において複数のスリットを形成し、かしめ易く構成してもよい。また、ハウジング部材における一端側の端部において折り曲げ加工される爪部を形成し、骨係合部材の頭部を一端側開口から挿入した後に爪部を折り曲げることで、骨係合部材の頭部に対してハウジング部材の一端側の端部が係止するものであってもよい。また、ハウジング部材の一端側の端部の内周に設けられる頭部対向凹状部分については、曲面部分として設けられているものでなくてもよく、溝状の部分や窪み状の部分等種々の形状を選択することができる。
【0080】
(2)骨係合部材における一端側の構造については、スクリュー部やフック部以外の構造で脊椎に係合するものであってもよい。例えば、骨係合部材の一端側において、二重スクリュー構造や骨セメント注入構造、或いはバネを用いた構造が備えられることで、椎骨内に骨係合部材の一端側を埋入させた後に椎骨の内部に存在する部分の寸法を拡大させて椎骨と係合させるものであってもよい。
【0081】
(3)インサート部材については、ハウジング部材に対して、必ずしも一端側開口から挿入されるものに限らず、他端側開口から挿入されるものであってもよい。また、インサート部材の凸部とハウジング部材の凹部については、適宜形状や位置を変更して実施してもよい。また、凸部及び凹部については、複数設けられていてもよい。また、第3実施形態において、インサート部材に設けられる可撓部については、インサート部材の本体部分から他端側に向かって延びるものに限らず、一端側に向かって延びるように形成されるものであってもよい。
【0082】
(4)ハウジング部材については、ナット部材として形成された固定部材と内周側で係合する構成でなくてもよく、ナット部材以外の形態の固定部材と係合する構成や外周側で係合する構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニット、及びその製造方法として、広く適用することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の第1実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットが脊椎を固定するために用いられている状態を示す図である。
【図2】図1に示す脊椎固定用骨アンカーユニットの正面図及び側面図である。
【図3】図2に示す脊椎固定用骨アンカーユニットの断面図である。
【図4】図2に示す脊椎固定用骨アンカーユニットのロッド部材を保持した状態を示す断面図である。
【図5】図2に示す脊椎固定用骨アンカーユニットの分解斜視図である。
【図6】図5に示す脊椎固定用骨アンカーユニットにおける骨スクリューの正面図及び断面図である。
【図7】図5に示す脊椎固定用骨アンカーユニットにおけるハウジング部材の斜視図である。
【図8】図7に示すハウジング部材の平面図、正面図、側面図、及び底面図である。
【図9】図7に示すハウジング部材の断面図である。
【図10】図5に示す脊椎固定用骨アンカーユニットにおけるインサート部材の平面図、正面図、及び断面図である。
【図11】図2に示す脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法を示す工程図である。
【図12】本発明の第2実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの断面図である。
【図13】本発明の第3実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットにおけるハウジング部材の斜視図である。
【図14】図13に示すハウジング部材の平面図、正面図、及び側面図である。
【図15】図13に示すハウジング部材の断面図である。
【図16】本発明の第3実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットにおけるインサート部材の斜視図である。
【図17】図16に示すインサート部材の平面図、正面図、側面図、及び断面図である。
【図18】本発明の第4実施形態に係る脊椎固定用骨アンカーユニットの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0085】
1 脊椎固定用骨アンカーユニット
11 骨スクリュー(骨係合部材)
12 インサート部材
13 ハウジング部材
14 一端側開口
15 他端側開口
19 一端側の端部
21 ロッド座部
100 脊椎
100a 椎骨
101 ロッド部材
101a ロッド状の部分
104 固定ナット(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
脊椎の椎骨に対して一端側が係合する骨係合部材と、
一端側で開口する一端側開口と他端側で開口して前記一端側開口に連通する他端側開口とが設けられるとともに、前記骨係合部材における他端側の端部に設けられた頭部が前記一端側開口から挿入された状態で、前記頭部に対して一端側の端部が係止するハウジング部材と、
前記ハウジング部材の内側に配置され、一端側の少なくとも一部が前記頭部に当接するとともに、前記ロッド状の部分に少なくとも一部が当接するロッド座部が他端側に設けられたインサート部材と、
を備え、
前記骨係合部材が椎骨に係合し、前記他端側開口から挿入された前記ロッド部材の前記ロッド状の部分が前記ロッド座部に当接するように配置され、前記ハウジング部材の他端側に係合するとともに前記ロッド状の部分を前記インサート部材に対して押し付けて固定する固定部材が取り付けられることで、前記ロッド部材を保持して脊椎を固定することを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記頭部が前記一端側開口から挿入された後、前記ハウジング部材における一端側の端部が内側にかしめられることで前記頭部に対して当該一端側の端部が係止することを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項3】
請求項2に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記ハウジング部材における一端側の端部の内周には、当該一端側の端部が内側にかしめられたときに前記頭部の周囲に対向する位置において凹むように形成された頭部対向凹状部分が設けられていることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項4】
請求項3に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記頭部対向凹状部分は、前記ハウジング部材における一端側の端部が内側にかしめられたときに前記頭部の周囲に沿うように当接する曲面部分として設けられていることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記ロッド座部は、当接する前記ロッド状の部分の外周の一部に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成され、
前記インサート部材の外周には外方に向かって突出するよう形成された凸部が設けられ、
前記ハウジング部材には、当該ハウジング部材の内周において凹み形成されて前記凸部が係合する凹み部分と、前記凹み部分に連通するとともに当該ハウジング部材における外周及び一端側の端部の少なくともいずれか一方において開放されるよう形成された開放部分と、を有する凹部が設けられていることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記インサート部材には、外周側において一端側又は他端側に向かって延び、内側に向かって撓むように弾性変形可能に形成されるとともに、先端側に前記凸部が形成された可撓部が設けられ、
前記凹部は、前記開放部分が前記ハウジング部材の外周において開放されるように形成されて、前記ハウジング部材の内周側と外周側とを連通する貫通孔として設けられ、
前記インサート部材は、前記ハウジング部材に対して前記一端側開口から挿入され、前記可撓部が内側に撓んだ後に弾性回復して前記凸部が前記凹部に係合することを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項7】
請求項5に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記凹部は、前記開放部分が前記ハウジング部材の一端側の端部において開放されるように形成され、前記凹み部分が前記ハウジング部材の内周において一端側から他端側に向かって延びる溝状に形成され、
前記インサート部材は、前記凸部が前記凹部に対して摺接して移動しながら、前記ハウジング部材に対して前記一端側開口から挿入されることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記骨係合部材は、一端側に、椎骨に螺合して係合するスクリュー部が形成されていることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項9】
請求項8に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記スクリュー部の最外周部分の直径寸法が、前記スクリュー部の軸方向と垂直な方向における前記頭部の最大直径寸法よりも大きいことを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットであって、
前記スクリュー部の最外周部分の直径寸法が、前記ハウジング部材における一端側の端部が前記頭部に係止した前記一端側開口の最小直径寸法よりも大きいことを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニット。
【請求項11】
少なくともロッド状の部分を有して脊柱に沿って配置されるロッド部材を保持するとともに脊椎に係合した状態で配置されることで脊椎を固定する脊椎固定用骨アンカーユニットを製造する、脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法であって、
脊椎の椎骨に対して一端側が係合する骨係合部材を形成する、骨係合部材形成工程と、
前記ロッド状の部分に少なくとも一部が当接するロッド座部が設けられたインサート部材を形成する、インサート部材形成工程と、
一端側で開口する一端側開口と、他端側で開口して前記一端側開口に連通するとともに前記ロッド部材の前記ロッド状の部分が挿入される他端側開口と、が設けられ、前記ロッド状の部分を前記インサート部材の前記ロッド座部に対して押し付けて固定する固定部材が他端側に係合するように取り付けられるハウジング部材を形成する、ハウジング部材形成工程と、
前記インサート部材を前記ハウジング部材の内側に配置するインサート部材配置工程と、
前記骨係合部材における他端側の端部に設けられた頭部を前記インサート部材の一端側の少なくとも一部に当接可能なように前記ハウジング部材に前記一端側開口から挿入し、前記ハウジング部材の一端側の端部を内側にかしめることで前記頭部に対して当該一端側の端部を係止するかしめ工程と、
を備えていることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法であって、
前記インサート部材形成工程において、前記インサート部材の外周には外方に向かって突出する凸部が形成され、更に、前記ロッド座部は、当接する前記ロッド状の部分の外周の一部に沿って湾曲した凹み面を有する溝状に形成され、
前記ハウジング部材形成工程において、前記ハウジング部材の内周において凹むように凹み部分が形成されるとともに、前記凹み部分に連通して前記ハウジング部材における外周及び一端側の端部の少なくともいずれか一方に開放される開放部分が形成され、
前記インサート部材配置工程において、前記インサート部材は、前記凸部が前記凹部に係合した状態で前記ハウジング部材の内側に配置されることを特徴とする、脊椎固定用骨アンカーユニットの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−99293(P2010−99293A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−273896(P2008−273896)
【出願日】平成20年10月24日(2008.10.24)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】