説明

脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法

【課題】フローテーターでインク、灰分、ピッチ等の異物除去を効率的に行うことができる脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を含有する脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法である。


(式中、R1及びR2は水素原子又はメチル基、R3及びR4は水素、炭素数1〜4のアルキル基等、R5は炭素数1〜22の炭化水素基、Aは炭素数1〜5のアルカンジイル基、Xは第四級アンモニウム基の対イオンを示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、古紙再生処理等の工程において、インク、灰分、ピッチ等を効率的に除去することができる脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び異物量が少なく、パルプの白色度に優れた脱墨パルプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー、省資源の立場から、印刷古紙の再利用が大きな課題となっている。印刷古紙を回収して再利用するために、脱墨工程によって印刷インク等を除去してパルプ繊維を採取し、脱墨パルプ(DIP)が製造されている。
一般に、脱墨パルプの製造方法は、主として離解工程、熟成工程、フローテーション工程、及び脱水・洗浄工程を含んでいる。離解工程は、剥離機を用いて機械的にインクを剥がす工程であり、熟成工程は、化学的にインクを剥がす工程である。これらの剥離及び熟成工程において、一般的に、アルカリ剤、漂白剤等の薬剤と共に、脱墨剤が用いられる。次に、フローテーション工程において、パルプとインクの混合物に気泡を吹き込み、泡にインク等の異物を付着させて浮上分離し、系外にフロス(脱墨パルプを取り出した後の残渣)として排出する。その後、得られたパルプスラリーは脱水・洗浄処理して適度な濃度に調整される。
【0003】
このフローテーション工程は脱墨工程の中でも製品の品質を左右する重要な工程である。フローテーター(浮選機)によれば、一般に粒径5〜20μmの粒子が除去可能であるが、粒径5μm未満の粒子に対する除去性能は低いという問題がある。
フローテーション工程で用いられる脱墨剤としては、アルミニウム化合物等の無機凝集剤、高級アルコール又は脂肪酸のアルキレンオキサイド付加物系の界面活性剤、高級脂肪酸系薬剤の他、架橋したポリジアリルジメチルアンモニウムクロライドを含有する脱墨剤(特許文献1)、水溶性両性アクリルアミド系重合体を含有する異物除去剤(特許文献2)等が知られており、カチオン性化合物、アミン等の存在下に行う脱墨方法(例えば特許文献3)も知られている。
しかしながら、従来の脱墨剤や脱墨方法は、インクの剥離性と除去性についてある程度改善されているものの、インクの凝集性、灰分除去性は十分でない。
このために、古紙再生における、フローテーター用のインク除去性、灰分除去性の優れた異物除去剤、異物除去方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−271284号公報
【特許文献2】特開2002−115191号公報
【特許文献3】特開平10−158985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フローテーターでインク、灰分、ピッチ等の異物除去を効率的に行うことができる脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、特定の第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を用いることにより、フローテーターでの異物除去を効率的に行うことができることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(5)を提供するものである。
(1)下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を含有することを特徴とする脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤。
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、R1及びR2は水素原子又はメチル基を示し、R3及びR4は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ピペラジン基、ピペリジン基又はモルホリン基を示し、R5は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜5のアルカンジイル基を示し、Xは第四級アンモニウム基の対イオンを示す。)
(2)カチオン性単独重合体又は共重合体が、アクリルアミドモノマー由来の構成単位を0〜30モル%を含有するものである、前記(1)のフローテーター用異物除去剤。
(3)カチオン性単独重合体又は共重合体の重量平均分子量が10万〜200万である、前記(1)のフローテーター用異物除去剤。
(4)前記(1)の異物除去剤を、古紙の脱墨処理におけるフローテーション工程又はその前工程に添加することを特徴とする異物除去方法。
(5)脱墨工程のパルプスラリー中に、前記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を添加することを特徴とする脱墨パルプの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法によれば、フローテーターでインク、灰分、ピッチ等の異物除去を効率的に行うことができるため、脱墨パルプの白色度を向上させることができると共に、抄紙工程への異物持込量を低減することができる。
また、本発明の異物除去剤はパルプ繊維や灰分への定着性が低いため、パルプ繊維の歩留り(回収効率)に悪影響を与えることがない。更に、異物低減により排水負荷の低減が可能となり、古紙由来の灰分が除去できるため、抄紙工程における填料の種類、粒径の調整が容易となり、紙品質の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[排水のフローテーター用異物除去剤]
(一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー)
本発明において、フローテーター用異物除去剤に用いられるカチオン性単独重合体又は共重合体は、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有する。この第四級アンモニウム基含有モノマーは重合体又は共重合体にカチオン性を付与するものである。
【0011】
【化2】

【0012】
一般式(1)において、R1及びR2は水素原子又はメチル基を示し、R3及びR4は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ピペラジン基、ピペリジン基又はモルホリン基を示す。
5は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8の炭化水素基を示し、より具体的には、炭素数1〜5のアルキル基、ベンジル基等が挙げられる。
Aは炭素数1〜5、好ましくは炭素数1〜4のアルカンジイル基を示す。Aの具体例としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が挙げられる。
Xは第四級アンモニウム基の対イオンを示し、具体例としては、塩素イオン、ヨウ素イオン等のハロゲンイオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、リン酸イオン、ホウ酸イオン、又はp−トルエンスルホン酸イオン等の有機酸塩のアニオン等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマーは、対応する第三級アミンと塩化メチル、塩化ベンジル、硫酸メチル等の四級化剤とを公知の方法により反応させることにより得ることができる。その具体例としては、ジアルキルアミノアルカンジイル(メタ)アクリルアミドの塩化メチル四級化物や塩化ベンジル四級化物等が挙げられる。
それらの中では、異物除去性能の観点から、下記一般式(2)で表される第四級アンモニウム基含有モノマーが好ましい。
【0014】
【化3】

【0015】
一般式(2)において、R2は水素原子又はメチル基を示し、R3及びR4はメチル基又はエチル基を示し、R5は炭素数1〜3のアルキル基を示し、nは2又は3である。
その具体例としては、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(DMAPAA)の塩化メチル四級化物(アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)、ジメチルアミノエチルアクリルアミドの塩化メチル四級化物、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドの塩化メチル四級化物、ジメチルアミノエチルメタクリルアミドの塩化メチル四級化物等が挙げられる。
【0016】
(カチオン性共重合体)
本発明において、カチオン性共重合体を用いる場合、一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマーとの共重合モノマーとしては、置換又は無置換のアクリルアミド及び/又はメタクリルアミドが好ましく挙げられる。その置換基としては、アミドの窒素原子に置換する、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましい。
前記共重合モノマーの具体例としては、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−シクロプロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−シクロプロピルメタクリルアミド、N−イソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−N−エチルアクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド等が挙げられる。これらの中では、機能性の観点から、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド等がより好ましい。
カチオン性共重合体は、前記共重合モノマー由来の構成単位を、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下含有する。
【0017】
(カチオン性単独重合体又は共重合体の製造)
一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体の製造は、一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマーを、所望により前記共重合モノマーと共に、水混和性溶媒、例えばイソプロパノール等のアルコールを含む水等の水性媒体中で、既知の重合法を用いて行うことができる。
重合に際しては、前記モノマーを重合開始剤を含む水性媒体中に滴下して行うことが好ましい。
重合開始剤として、少量のラジカル形成物質、例えばペルオクソ二硫酸カリウム又はアンモニウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、アゾビス(イソブチロニトリル)等を用いることができる。
重合温度は特に限定されないが、用いる重合開始剤に応じて、5〜100℃が好ましく、10〜90℃がより好ましい。このようにして、ポリマー含量(固形分濃度)が好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%の重合体又は共重合体のポリマー溶液を得ることができる。
前記重合体又は共重合体の重量平均分子量は、異物除去効果とパルプ歩留りの観点から、10万〜200万が好ましく、15万〜100万がより好ましい。なお、重量平均分子量は、例えば光散乱光度計等を用いた公知の方法により測定することができる。
【0018】
[異物除去方法]
本発明の異物除去方法は、前記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を含有する異物除去剤を、古紙の脱墨処理におけるフローテーション工程又はその前工程に添加することを特徴とし、これにより、パルプ繊維と、インク、灰分、ピッチ等の異物とを効率的に分離、除去することができる。
【0019】
(脱墨処理におけるフローテーション工程への適用)
古紙の脱墨処理においては、前記カチオン性単独重合体又は共重合体を含有する異物除去剤を、フローテーション工程又はその前工程に添加して、フローテーション処理を行う。
脱墨パルプ製造工程の原料は、一般に強いアニオン性を示すSS(懸濁物質)が分散した状態にある。このような強いアニオン性を有するSSに対して、本発明の異物除去剤は、前記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を含有するため、その荷電中和作用、凝結作用により、コロイド状SSの粒子径をフローテーターで処理可能な大きさに成長させることができるため、本発明の優れた効果を得ることができると考えられる。また、本発明の異物除去剤は、パルプ繊維や灰分への定着性が低いため、パルプ繊維の歩留りに影響を与えず、異物成分のみを効率的に排出できる。
【0020】
異物除去剤の添加方法に特に制限はないが、水溶液として添加することが好ましい。
異物除去剤はフローテーターのみならず、その任意の前工程、例えば、パルパー、ニーダー、タワー、パルパーとニーダーの間にある脱水機、又はこれらをつなぐ配管等に添加することができる。
ここで、本発明におけるフローテーターとしては、脱墨を主目的とする一次フローテーターのみならず、一次フローテーターから排出されるフロスを処理する二次フローテーターや、フローテーター後の洗浄工程から排出される排水を処理する回収再利用水系等に設置したフローテーターも含まれる。
【0021】
異物除去剤の添加量に特に制限はないが、フローテーター処理に当たり、前記カチオン性単独重合体又は共重合体を、処理原水に対し、好ましくは0.5〜100mg/L、より好ましくは1〜80mg/L、更に好ましくは5〜60mg/L添加することが望ましい。添加量が前記範囲内であると、異物除去効果は十分であり、パルプ繊維のフロスヘの移行が進み過ぎてパルプの歩留りが低下するという不都合もない。
異物除去剤の添加の際には、得られる脱墨パルプの白色度及び灰分含有量を測定することによって、異物除去剤の添加量を調節することができる。
本発明の異物除去方法は、すでに剥離されたインク、灰分、ピッチ等を凝集させてパルプ繊維から分離する効果に優れているが、更にインク剥離機能に優れた公知の有機脱墨剤(界面活性剤)、起泡剤等の助剤を合わせて添加することができる。
【0022】
[脱墨パルプの製造方法]
本発明の脱墨パルプの製造方法は、脱墨工程のパルプスラリー中に、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を添加することを特徴とする。
【0023】
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、A、及びXは前記と同様である。)
【0024】
(脱墨パルプの具体的な製造例)
本発明における脱墨パルプの製造は、従来公知の脱墨パルプの製造方法と同様にして行うことができる。例えば、まず水酸化ナトリウム、ケイ酸ナトリウム等のアルカリを含む水に原料古紙を加え、パルパー(パルプ離解装置)で古紙を離解してパルプスラリー化した後、ニーダーでパルプスラリーと脱墨剤(例えばノニオン性界面活性剤)を混練し、印刷インクをパルプから引き剥がす。次いで、過酸化水素を加えたタワーで漂白し、フローテーター(浮選機)でインク、灰分、ピッチ等の異物を浮上分離して、系外にフロスとして排出する。その後、パルプスラリーは、エキストラクタ等で水を除去し、更にパルプを水に再懸濁した後、フィルターでパルプを洗浄して脱墨パルプ(DIP)を得ることができる。本発明の異物除去剤は、フローテーターに添加してもよく、又はその前段階で添加してもよいが、フローテーター直前に添加することが好ましい。
フローテーターでは、パルプスラリーに気泡を吹き込み、泡にインク等の異物を付着させて浮上させ、パルプと分離する。この場合、公知の有機脱墨剤を添加することもできる。
従来技術においては、この状態でフローテーションを行っても、剥離したインク等の異物は分散状態に保たれて分離しにくいが、本発明に係る前記カチオン性単独重合体又は共重合体を添加してフローテーションを行うと、剥離したインク、ピッチ、灰分等の異物が凝集してフロックを形成し、これが気泡に付着して浮上し分離される。このようにしてパルプスラリーのインク、灰分、ピッチ等の異物の除去率が向上すると、得られた脱墨パルプを配合して製造した紙製品の白色度の向上や、異物による欠点、断紙の低減、歩留り、ろ水性の向上、紙強度の向上等の品質改善や、生産性の向上、操業性の改善に繋がる。また、これらの改善点により、脱墨パルプの配合率を高めることができ、製造原価に占めるパルプ原料費を低減することが可能となる。
【0025】
このようにしてインク、ピッチ、灰分等の異物が除去された脱墨パルプは、新聞紙、雑誌紙、OA紙、中質印刷紙、チラシ紙、段ボール紙等を製造する古紙原料として、好適に使用することができる。
【実施例】
【0026】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、フロス量、スラリーの懸濁固形分濃度、ピッチ濃度、及びパルプシートの白色度の測定は以下の方法により行った。
(1)フロス量
パルプスラリーをフローテーターにより処理して、インク等の異物を浮上分離して、系外にフロスとして排出した量を測定した。
(2)スラリーの懸濁固形分濃度
JIS K 0l02に準じて、フローテーション処理後のパルプスラリーの懸濁固形分濃度を測定した。
(3)スラリーのピッチ濃度
フローテーション処理後に採取したパルプスラリーを蒸発乾固し、ジクロロメタンを用いてソックスレー抽出を行い、抽出重量からピッチ(パルプ中に混入した接着剤や合成樹脂等)の濃度を算出した。
(4)パルプシートの白色度
タッピシートマシンを用いて、JIS P 8209に準じてパルプシート2枚を作製し、得られたパルプシートについて、ハンター白色度計を用いて、JIS P 8123に準じて白色度を測定した。白色度は、各シートにつき5点測定し、その平均値を求めた。
なお、白色度は32以上が好ましい。
【0027】
製造例1
ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩(興人株式会社製、DMAPAA−Q、79%水溶液、粘度80〜90cps(25℃))とジメチルアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用)とを25℃で反応させ、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩:ジメチルアクリルアミド(モル比)=99:1の共重合体(重量平均分子量:20万)を得た。
結果を表1に示す。
製造例2
ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(60%水溶液)とジメチルアクリルアミド(和光純薬工業株式会社製、活性アルミナを用いて重合禁止剤を取り除いてから使用)とを25℃で反応させ、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド:ジメチルアクリルアミド(モル比)=30:70の共重合体(重量平均分子量:300万)を得た。
結果を表1に示す。
【0028】
製造例3
ヘキサメチレンジアミン2.36gに脱塩水11gを加え、40重量%ジメチルアミン水溶液70.5g(有効分28.2g)を更に加え、ヘキサメチレンジアミンを溶解させた。エピクロルヒドリン64.8gを滴下ロートに入れ、17〜18℃に保ちつつ、得られたヘキサメチレンジアミン溶液に6時間かけて滴下して反応させた。
得られた反応液を50℃に加熱し、3時間保持した後、90℃まで昇温し、33重量%水酸化ナトリウム水溶液2.4mLを加え、更に90℃で3時間保持し、その後水溶液を30℃まで冷却した。次いで、6N塩酸を加えて水溶液のpHを5.5に調整し、エピクロルヒドリン・ジメチルアミン縮合物(重量平均分子量:25万)を得た。
結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例1及び2
新聞及びチラシを古紙原料として脱墨処理を行っている古紙パルプ製造工程において、2次フローテーター(1次フローテーターのフロス処理用フローテーター)の原水を試料に用いた。
上記試料5Lと、製造例1で得られた(ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩/ジメチルアクリルアミド)の共重合体を表2に示す量で添加し、小型MTフローテーター(株式会社IHI機械システム製)に入れ、30秒間撹拌した。
次に、空気量を3L/minに設定し、4分間のフローテーション処理を行った。
結果を表2に示す。
【0031】
比較例1〜3
実施例1において、異物除去剤として、製造例2で得られた(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド/ジメチルアクリルアミド)の共重合体を表2に示す量で添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
比較例4〜5
実施例1において、異物除去剤として、製造例3で得られたエピクロルヒドリン・ジメチルアミン縮合物を表2に示す量で添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
実施例1及び2では、スラリー中のピッチ濃度が低く、白色度が高いパルプシートが得られた。これに対し、比較例1(異物除去剤無添加)、比較例2〜3(DADMAC系共重合体を添加)においては、スラリー中のピッチ濃度が高く、白色度は低い結果であった。
また、比較例4及び5(エピクロルヒドリン・ジメチルアミン縮合物を添加)においては、白色度については実施例とほぼ同等の結果が得られたものの、スラリー中のピッチ濃度は実施例の結果には及ばなかった。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法によれば、パルプ繊維の歩留り低下を最小限に抑えながら効率的にコロイド粒子を凝集させ、フローテーターでのインク、灰分、ピッチ等の異物除去を効率的に行うことができる。また、本発明の異物除去剤、異物除去方法、及び脱墨パルプの製造方法は、高いpH環境下や、高塩類環境下における古紙処理においても有効である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を含有することを特徴とする脱墨工程におけるフローテーター用異物除去剤。
【化1】

(式中、R1及びR2は水素原子又はメチル基を示し、R3及びR4は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ピペラジン基、ピペリジン基又はモルホリン基を示し、R5は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜5のアルカンジイル基を示し、Xは第四級アンモニウム基の対イオンを示す。)
【請求項2】
カチオン性単独重合体又は共重合体が、アクリルアミドモノマー由来の構成単位を0〜30モル%を含有するものである、請求項1に記載のフローテーター用異物除去剤。
【請求項3】
カチオン性単独重合体又は共重合体の重量平均分子量が10万〜200万である、請求項1に記載のフローテーター用異物除去剤。
【請求項4】
請求項1に記載の異物除去剤を、古紙の脱墨処理におけるフローテーション工程又はその前工程に添加することを特徴とする異物除去方法。
【請求項5】
脱墨工程のパルプスラリー中に、下記一般式(1)で表される第四級アンモニウム基含有モノマー由来の構成単位を有するカチオン性単独重合体又は共重合体を添加することを特徴とする脱墨パルプの製造方法。
【化2】

(式中、R1及びR2は水素原子又はメチル基を示し、R3及びR4は水素、炭素数1〜4のアルキル基、ピペラジン基、ピペリジン基又はモルホリン基を示し、R5は炭素数1〜22の炭化水素基を示し、Aは炭素数1〜5のアルカンジイル基を示し、Xは第四級アンモニウム基の対イオンを示す。)

【公開番号】特開2011−214199(P2011−214199A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84267(P2010−84267)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】