説明

脱泡装置

【課題】 大気開放の条件下においても微小な気泡まで除去することのできる脱泡装置を実現する。
【解決手段】 脱泡槽内の液位を一定に保ちながら、大気開放の条件下で脱泡を行い、気泡を除去した測定液を供給する脱泡装置において、測定液を前記脱泡槽内の周方向に向けて流入させる測定液供給手段と、前記脱泡槽から測定液を取り出す測定液取出手段とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定液中に混入した気泡を除去して、濁度計などの測定装置に供給する脱泡装置に関するものである。
さらに詳しくは、脱泡槽内の液位を一定に保ちながら、大気開放の条件下で脱泡を行う脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の脱泡装置の一例を示す構成図である。図において、10は測定液を貯留するとともに、大気開放により、測定液中に混入した気泡を分離させ、脱泡を行う脱泡槽、11は脱泡槽10内の液位(水頭)を一定に維持する堰、12は測定液を脱泡槽10内に流入させる測定液流入口、13は気泡が除去された測定液を取り出す測定液流出口、14は堰11を越えた測定液を排出する排液口である。
【0003】
測定液流入口12から脱泡槽10内に測定液が流入すると、測定液に混入した気泡は、大気開放の圧力下で、測定液内を自然に上昇し、液面に達する。
このようにして、気泡の除去された測定液は、脱泡槽10下部の測定液流出口13から取り出され、後段の濁度計などに供給される。
ここで、堰11により脱泡槽10内の液位(水頭)が一定に保たれているので、測定液は一定流量で濁度計などに供給される。
【0004】
【特許文献1】特開2004−163108号公報(第6頁 第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来装置では、比較的大きな気泡は除去することができるが、微小な気泡は測定液中の動きが遅く、測定液が脱泡槽内に滞留している時間だけでは完全に分離することができず、測定液流出口13から流出する流れに乗って、濁度計などに送られてしまうことがある。
例えば、高感度の濁度計においては、微小な気泡が測定液中の粒子と認識されてしまい、測定誤差の原因となってしまう。
【0006】
本発明は、上記のような従来装置の欠点をなくし、大気開放の条件下においても微小な気泡まで除去することのできる脱泡装置を実現することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記のような目的を達成するために、本発明の請求項1では、脱泡槽内の液位を一定に保ちながら、大気開放の条件下で脱泡を行い、気泡を除去した測定液を供給する脱泡装置において、測定液を前記脱泡槽内の周方向に向けて流入させる測定液供給手段と、前記脱泡槽から測定液を取り出す測定液取出手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2では、請求項1の脱泡装置において、前記脱泡槽は、円筒状の内壁を有することを特徴とする。
【0009】
請求項3では、請求項1または2の脱泡装置において、前記測定液供給手段は、測定液を前記脱泡槽における液面下の上部から流入させることを特徴とする。
【0010】
請求項4では、請求項1乃至3のいずれかの脱泡装置において、前記測定液供給手段は、測定液を水平方向に向けて流入させることを特徴とする。
【0011】
請求項5では、請求項1乃至4のいずれかの脱泡装置において、前記測定液取出手段は、前記脱泡槽下部において中心より外周に寄った位置に配置されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6では、請求項1乃至5のいずれかの脱泡装置において、前記測定液取出手段は、前記脱泡槽内に形成される旋回流に対して下流方向に向かって開口部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
このように、測定液を脱泡槽内の周方向に向けて流入させるように構成すると、脱泡槽内に旋回流(渦)を発生させることができ、この旋回流中心の圧力降下を利用して、測定液中に溶け込んでいる微小な気泡の大気開放への誘導を促進して、微小な気泡までも取り除くことができる。
また、測定液取出手段の開口部を旋回流の下流方向に向けて設けることにより、測定液中の気泡が強制的に測定液取出手段に送り込まれてしまうのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を用いて本発明の脱泡装置を説明する。
【実施例1】
【0015】
図1および図2は、本発明の脱泡装置の一実施例を示す構成図であり、図1は各部の配置状態を示す平面図、図2は断面図である。
図1および図2において、1は円筒状の内壁を有する脱泡槽、2は所定の高さに配置され、脱泡槽1内の測定液の液位を一定に維持する堰である。ここでは、筒状の堰を例示している。3は測定液を脱泡槽1の周方向に向けて流入させる測定液供給手段であり、脱泡槽1における液面下の上部に配置されている。また、図の例では、開口部31は横方向を向いており、測定液を水平方向に流入させている。
【0016】
4は脱泡槽1内から気泡の除去された測定液を取り出す測定液取出手段であり、脱泡槽1の下部において、中心より外周に寄った位置に配置されるとともに、脱泡槽1内に形成される旋回流に対して、下流方向を向くように開口部41が設けられている。5は大気開放口、6は堰2を越えた測定液を排出する排液口である。
【0017】
このような構成において、測定液供給手段3から脱泡槽1内に測定液が流入すると、測定液は脱泡槽1内で旋回流(渦)を形成するようになる。旋回流(渦)が形成されると、その圧力降下のために、中心部の圧力が低くなり、液面は図示の如く、すり鉢状に中心が下がった状態となる。
【0018】
このため、測定液中に溶け込んでいる微小な気泡も、分離し易くなり、大気開放の条件下においても微小な気泡まで、より確実に除去することができる。
【0019】
ここで、測定液の流入位置を液面下の上部とすることにより、液面への気泡の到達を早めるとともに、脱泡槽1内での測定液の滞留時間を長くして、気泡の分離を助けることができる。
仮に、測定液を液面上から流入させた場合には、流入の衝撃で、液面が波立ったり、泡立ったりしてしまい、脱泡効果が得られなくなってしまう。
【0020】
また、測定液取出手段4を脱泡槽1の下部において、中心より外周に寄った位置に配置することにより、旋回流(渦)の外側に近く、より脱泡の進んだ測定液を取り出すことができる。
さらに、その開口部41を旋回流に対して、下流方向を向くように設けているので、測定液中の気泡が強制的に測定液取出手段4に送り込まれてしまうのを防止することができる。
【0021】
このように、本発明の脱泡装置では、機械的な稼動部などを有することなく、脱泡槽1内に旋回流を発生させ、気泡の開放を促進させて、微小な気泡までも取り除くことができる。
【実施例2】
【0022】
図3および図4は、本発明の脱泡装置の他の実施例を示す構成図であり、図3は各部の配置状態を示す平面図、図4は断面図である。
図3および図4において、前記図1および図2と同様のものは同一符号を付して示す。図に示す実施例は、堰2を越えた測定液の排出口6を脱泡槽1の外側に設けることにより、脱泡槽1の内部をより円筒状に近づけ、旋回流(渦)の発生を促進するように構成したものである。
【0023】
さなわち、脱泡槽1における内壁の一部に、測定液を流出させる窓部21を設け、内壁を堰2に兼用したものである。脱泡槽1内に旋回流(渦)の抵抗となるものがないので、より強い旋回流(渦)が発生して、気泡の除去を促進することができる。
【0024】
なお、上記の説明においては、測定液の流入位置を液面下の上部とし、水平方向に流入させる場合を例示したが、測定液の流入位置およびその方向は、これに限られるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の脱泡装置の一実施例を示す平面図。
【図2】本発明の脱泡装置の一実施例を示す断面図。
【図3】本発明の脱泡装置の他の実施例を示す平面図。
【図4】本発明の脱泡装置の他の実施例を示す断面図。
【図5】従来装置の一例を示す構成図。
【符号の説明】
【0026】
1、10 脱泡槽
2、11 堰
21 窓部
3 測定液流入手段
31 開口部
4 測定液流出手段
41 開口部
5 大気開放口
6、14 排液口
12 測定液流入口
13 測定液流出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱泡槽内の液位を一定に保ちながら、大気開放の条件下で脱泡を行い、気泡を除去した測定液を供給する脱泡装置において、測定液を前記脱泡槽内の周方向に向けて流入させる測定液供給手段と、前記脱泡槽から測定液を取り出す測定液取出手段とを具備したことを特徴とする脱泡装置。
【請求項2】
前記脱泡槽は、円筒状の内壁を有することを特徴とする請求項1に記載の脱泡装置。
【請求項3】
前記測定液供給手段は、測定液を前記脱泡槽における液面下の上部から流入させることを特徴とする請求項1または2に記載の脱泡装置。
【請求項4】
前記測定液供給手段は、測定液を水平方向に向けて流入させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の脱泡装置。
【請求項5】
前記測定液取出手段は、前記脱泡槽下部において中心より外周に寄った位置に配置されたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の脱泡装置。
【請求項6】
前記測定液取出手段は、前記脱泡槽内に形成される旋回流に対して下流方向に向かって開口部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の脱泡装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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